有価証券報告書-第62期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①経営成績の状況
当連結会計年度の売上高は142,443百万円(前年同期比0.9%増)、営業利益は7,935百万円(前年同期比17.3%減)、経常利益は8,458百万円(前年同期比12.8%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は3,944百万円(前年同期比31.7%減)となりました。
報告セグメントの業績は次のとおりであります。
(日本)
日本での売上高は59,656百万円(前年同期比1.7%増)、セグメント利益は2,142百万円(前年同期比37.6%減)となりました。アスレチックカテゴリーにおいては「デサント」、「ルコックスポルティフ」が好調に推移しましたが、「アンブロ」は苦戦しました。ゴルフカテゴリーにおいては「デサント」、「ルコックスポルティフ」が堅調に推移しましたが、「マンシングウェア」は苦戦しました。結果、日本全体として売上高は前年比で増加しましたが、直営店やEコマースへの先行投資などによる販管費の増加が、増収に伴う売上総利益の増加を上回ったことにより、セグメント利益は前年より減少しました。
(アジア)
アジアでの売上高は79,219百万円(前年同期比0.5%増)、セグメント利益は6,447百万円(前年同期比4.2%減)となりました。韓国においては「デサント」が堅調に推移しましたが、「ルコックスポルティフ」、「マンシングウェア」は苦戦しました。香港、シンガポールにおいては「アリーナ」が好調に推移しました。結果、アジア全体として売上高は堅調に推移しましたが、韓国における積極的な直営店の出店などによる販管費の増加により、セグメント利益は前年より減少しました。
(欧米)
欧米での売上高は3,568百万円(前年同期比1.4%減)、セグメント損失は765百万円(前年同期は581百万円のセグメント損失)となりました。DESCENTE ATHLETIC AMERICAS, INC.を設立したことにより「デサント」の売上高は増加しましたが、同社の販管費が増加していることに加え、「DESCENTE MOUNTAIN AMERICAS」「イノヴェイト」が伸び悩んでいることにより、欧米の売上高・セグメント利益とも前年より減少したほか、「イノヴェイト」関連資産の減損損失を特別損失に計上しております(上記の外数)。
取扱商品の品目別売上高の状況は次のとおりであります。
(アスレチックウェア及びその関連商品)
アスレチックウェア及びその関連商品の売上高は89,974百万円(前年同期比0.9%増)となりました。
アスレチックカテゴリーにおいては、「デサント」が国内外で、また「ルコックスポルティフ」が日本で、「アンブロ」が海外で業績を牽引して増収となったものの、国内では「アンブロ」が、海外では「ルコックスポルティフ」「アリーナ」「イノヴェイト」が減収となり、結果、全体として売上高は前年同期より微増となりました。
「デサント」では、2019年1月に広島県で開催された「天皇盃 第24回全国都道府県対抗男子駅伝競走大会」にて全47都道府県チーム別のユニフォームをサプライしました。2019年2月にはブランド最大規模の旗艦店となる「DESCENTE TOKYO」を渋谷・明治通り沿いにオープンしました。当店舗では、スポーツシーンに向けた商品に加え、「デサント」が培ってきた機能を落とし込み、日常でも着用していただける商品カテゴリーも展開しています。今後も直営店の出店や競技団体へのサプライを通して、「デサント」のクラフトマンシップやモノづくりスピリットを発信し、ブランド価値向上を図っていきます。韓国においては、スキーのスイスナショナルチームとのスポンサーシップ40周年を記念したロングダウンなどの限定商品を発売しました。中国では急速に店舗数を拡大しており、12月末時点で118店舗展開しています。
「ルコックスポルティフ」では、国内においてはモデル・タレントのマギーさんとのコラボ商品が好調に推移しております。また、8月以降インドネシアにて3店舗をオープンするなど東南アジアでの事業拡大を図っています。
「アリーナ」においては、8月の「パンパシフィック水泳選手権大会2018」に続き、12月に中国・杭州で開催された「第14回世界水泳選手権大会(25m)」に協賛し、大会を盛り上げるキャンペーンの実施、関連商品の販売など様々なマーケティング活動により、ブランド訴求を図りました。両大会においては契約選手の瀬戸大也選手(所属:ANA/JSS毛呂山)が200mバタフライで金メダルを獲得するなど、ブランド価値向上につながりました。また、2019年7月に開催される「第18回世界水泳選手権大会」に向け、契約選手と共同開発を行ったトップレーシング競泳水着「アルティメット・アクアフォース」を発表しました。
「アンブロ」においては、国内では契約選手である柴崎岳選手、遠藤保仁選手とともに開発・改良を行ったスパイクを発売、韓国においてはアグリーシューズ「BUMPY」の売上が引き続き好調に推移するなどシューズ事業の拡大を進めています。
(ゴルフウェア及びその関連商品)
ゴルフウェア及びその関連商品の売上高は36,206百万円(前年同期比2.4%減)となりました。
ゴルフカテゴリーにおいては、国内外で「デサント」が引き続き好調で増収となりました。また日本では「ルコックスポルティフ」は増収となりましたが、「マンシングウェア」は売上を落としました。海外では「ルコックスポルティフ」、「マンシングウェア」が苦戦し、結果、全体として売上高は前年同期より減少いたしました。
「マンシングウェア」のブランド強化策として、国内では若手プロをイメージし、デザイン・機能性を追求した「ENVOY」シリーズの商品展開を開始しました。ベトナムにおいては4月にオープンしたハノイ・ロッテ百貨店の1号店に引き続き、2号店を7月にハノイにオープンし、東南アジアでの事業拡大を図っています。また、ブランドアイコンでもあるペンギンを絶滅危機から守るため、地球温暖化や環境悪化の抑制を目的に、「SAVE the PENGUIN」キャンペーンと称し、環境保全を行うNGO団体「WWF」(World Wide Fund for Nature)とのコラボ商品を日本・中国・シンガポールなどアジア各国で展開しています。
「ルコックスポルティフ」においては、韓国において日本人イラストレーターのChocomooさんとのコラボ商品を発売、若者向けの「SUNDAY」シリーズが好調に推移するなど顧客層の拡大に努めています。
「デサント」においては、8月に上海・久光百貨店に中国において初めてとなるゴルフ店舗をオープンし、アスレチックカテゴリーに続き、ゴルフカテゴリーにおいてもブランドの拡大を図っています。2019年2月にはグローバル契約選手のネリー・コルダ選手(米国)が「ISPS HANDA オーストラリア女子オープン」で優勝を果たすなど契約選手が活躍しています。
また、10月に当社初のゴルフ複合業態直営店を三井アウトレットパーク木更津店にオープンしました。当社のゴルフブランド5ブランドに加え、住友ゴム工業株式会社が展開するゴルフギア3ブランドも取り扱い、幅広い層のゴルファーのニーズに応え、さらなるブランドファンの獲得とゴルフビジネスの拡大を目指しています。
(アウトドアウェア及びその関連商品)
アウトドアウェア及びその関連商品の売上高は16,263百万円(前年同期比9.3%増)となりました。
(その他のトピックス)
研究開発の分野では、7月に稼働した大阪府茨木市のアパレルのR&Dセンター(DISC OSAKA)にて、全社横断の夏の重点戦略素材として、衣服内の不要な熱を逃がすことでクーリング機能を発揮する独自開発素材「Coolist D-Tec」を開発しました。また、2019年1月にドイツで開催されたスポーツ用品の国際総合見本市「ISPOミュンヘン2019」において、「デサント」ブランドがグローバルで展開する商品「水沢ダウンジャケット ヴァリアント」がISPOアワードGold Winnerを受賞しました。「デサント」ブランドでのISPOアワードGold Winnerの受賞は、2017年から3年連続となります。今後もDISCが主導するユニークな開発を中心に、重点戦略の一つとして掲げている「モノを創る力」の向上に引き続き努めていきます。
業務提携の分野では、8月に株式会社ワコールホールディングスと包括的業務提携契約を締結し、10月から相互のブランド商品を直営店にて販売開始したことを皮切りに、合同ポップアップストアの展開、Eコマースへの相互送客など具体的な提携が始動しました。今後も引き続き、それぞれの経営資源を相互に活用し、事業基盤の強化・拡充・発展に努めることによって、ファッションとスポーツの事業領域を超えた新しい価値を創造し、両社の事業の拡大とグローバル化の推進を図っていきます。
新規流通開拓の分野では、デサントジャパン株式会社にてB to B事業開拓の一環として、アスクル株式会社と協同し、同社の物流を担う同社100%子会社ASKUL LOGIST株式会社の新ドライバーユニフォームを手掛けました。ドライバーが心身ともにストレスなく活動し、そしてお客様との良好なコミュニケーションを形成するために、スポーツで培ったノウハウを生かして参ります。
(注)上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
②財政状態の状況
当連結会計年度末の資産合計は115,756百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,384百万円減少いたし
ました。負債合計は前連結会計年度末に比べ955百万円減少し、37,310百万円となりました。
純資産は前連結会計年度末に比べ429百万円減少し、78,446百万円となりました。
以上の結果、自己資本比率は前連結会計年度末に比べ、0.4%増の67.8%となりました。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末に比べ140百万円減少し、27,229百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、11,137百万円の収入超過(前連結会計年度は12,523百万円の収入超過)となりました。これは主な減少要因として法人税等の支払額又は還付額1,038百万円がありましたが、税金等調整前当期純利益5,683百万円、減価償却費3,773百万円の計上、減損損失1,817百万円などの増加要因があったことによるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは、8,267百万円の支出超過(前連結会計年度は6,361百万円の支出超過)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出5,863百万円、無形固定資産の取得による支出811百万円などによるものです。
財務活動によるキャッシュ・フローは、2,136百万円の支出超過(前連結会計年度は1,560百万円の支出超過)となりました。これは主に配当金の支払額1,733百万円によるものです。
(参考) キャッシュ・フロー関連指標の推移
(注) 自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
1.各指標は、いずれも連結ベースの財務諸表数値により算出しております。
2.株式時価総額は、期末株式終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。
3.営業キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
④生産、受注及び販売の実績
(a) 生産実績
当社グループは、生産の状況について、セグメントごとの製品の製造場所等から判断し、日本が大半を占めており、重要性が乏しいため記載を省略しております。
(b) 受注状況
原則として受注生産は行っておりません。
(c) 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりであります。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づいて作成されています。この連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度における財務状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与えるような見積り、予測を必要としております。当社グループは、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、継続的に見積り、予測を行っております。そのため実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(a)財政状態の分析
(資産の部)
当連結会計年度末の資産合計は115,756百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,384百万円減少いたしました。減少の主な要因は為替の影響によるもので、為替の影響を差し引くと2,482百万円の増加となります。
流動資産は前連結会計年度末に比べ16百万円減少し、78,051百万円となりました。これは為替による影響額△2,683百万円を除くと、実質2,666百万円の増加となります。これは主に、現金及び預金の増加181百万円と、流動資産その他に含まれる未収入金の増加1,558百万円によるものです。
固定資産は前連結会計年度末に比べ1,368百万円減少し、37,705百万円となりました。これは為替による影響額△1,183百万円を除くと実質185百万円の減少となります。これは主に、日本と韓国におけるR&Dセンター開設や売場・システム投資に伴う有形固定資産の増加2,754百万円と、のれんを含む無形固定資産の減損損失等による減少2,377百万円、繰延税金資産の減少1,219百万円によるものです。
(負債の部)
負債合計は前連結会計年度末に比べ955百万円減少し、37,310百万円となりました。これは為替による影響額△1,160百万円を除くと実質204百万円の増加となります。これは主に、支払手形及び買掛金の増加1,118百万円、長期借入金の減少894百万円、繰延税金負債の減少564百万円によるものです。
(純資産の部)
純資産は前連結会計年度末に比べ429百万円減少し、78,446百万円となりました。これは主に利益剰余金の増加2,210百万円、期末レートの円高による為替換算調整勘定の減少2,694百万円によるものです。
以上の結果、自己資本比率は前連結会計年度末に比べ、0.4%増の67.8%となりました。
(b)経営成績の分析
(売上高)
当連結会計年度の売上高は142,443百万円(前年同期比0.9%増)となり、前連結会計年度に比べて百1,319万円増加いたしました。売上高が増加した主な要因は、日本、アジア、欧米すべてのセグメントで「デサント」、また国内において「ルコックスポルティフ」が好調に推移したことによるものです。
(営業利益)
当連結会計年度の営業利益は7,935百万円(前年同期比17.3%減)となり、前連結会計年度に比べて1,661百万円減少いたしました。営業利益が減少した主な理由は、日本における直営店出店や、システムへの投資に伴う販管費の増加、アジアでは積極的な出店による販管費の増加が、売上総利益の増加を上回ったことによるものです。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
営業外収益は、受取利息328百万円などにより799百万円、営業外費用は、支払利息135百万円などにより276百万円となりました。特別損失は、減損損失1,817百万円などにより2,775百万円となり、以上の結果、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は3,944百万円(前年同期比31.7%減)となり、前連結会計年度に比べて1,827百万円減少いたしました。
なお、当連結会計年度にて対象期間が終了した中期3ヶ年計画「Compass 2018」の振り返り及び分析につきましては、下記の通りであります。
当社グループは、2016年5月に策定いたしました2020年度に目指す姿「Vision 2020」において、「付加価値の高いブランドの複数展開により、アジアで事業を拡大し、グローバルスポーツカンパニーへと成長する」ことを目標とし、グループ全体での事業拡大を積極的に進めてまいりました。また、2019年3月期を最終年度とした中期経営計画「Compass 2018」においては、「VISION 2020」に至るマイルストーンとして、下記表内②の数値目標を掲げ、その実現に向け取り組んでまいりました。
しかし「Compass 2018」につきましては、その初年度の2017年3月期から前年実績を下回る水準となり苦しいスタートとなりました。2年目の2018年3月期、および最終年度の2019年3月期は、売上高こそ前年を超えて進捗し、過去最高記録を更新したものの、当初の目標からは売上高で276億円、経常利益で56億円、親会社株主に帰属する当期純利益で61億円の乖離となりました。
売上高をセグメント別で見ると、アジアでは、特に韓国において、市況停滞や競合の激化の影響などもあり「デサント」「ルコックスポルティフ」ブランドで当初の目標から大幅に乖離した結果、「Compass 2018」の数値目標に対し、売上高で206億円の未達となりました。日本では「デサント」ブランドにおいて積極的な直営店出店や競技団体・選手へのサプライを通じて業績を大きく伸長させた一方、「マンシングウェア」ブランドにおいては百貨店における消費の停滞など事業環境の変化も相まって苦戦した他、「アンブロ」ブランドにおいても低迷が継続しており、売上高で46億円の未達となりました。欧米においても2015年に買収した「イノヴェイト」ブランドが、当初想定していた成長軌道を描くことが出来なかったことも相まって、売上高で25億円の未達となりました。
また上記の売上高の未達に伴い「Compass 2018」における経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益の数値目標も未達となりました。ROEについても、売上高当期純利益率が2016年3月期の5.8%から2019年3月期の2.8%に低下したことと、販売効率の低下に伴って総資産回転率が同じく133.8%から122.3%に低下したことにより、当初の目標である12%から大幅に乖離しました。
主力市場である韓国で外部環境の変化により成長モメンタムが下振れた際に、中期経営計画の期間内に、日本をはじめとする他の地域でカバーしたり、新たな収益源を創出するなどの、強靭さやスピードに欠けていたことは否めず、有効な対策が打ち切れなかったことについて、大変重く受け止めております。
一方で「Compass 2018」で掲げた「重点戦略」と「エリア別戦略」については、将来の成長に直結する一定の成果を上げることが出来たものと考えております。
「重点戦略」の1つである「当社の競争力の源泉である「モノを創る力」を向上」については、グローバル市場に向けた高機能商材の開発を目的としたR&Dセンターを大阪(アパレル)、韓国・釜山(シューズ)に設立し、素材開発研究に向けて新たにスタートすることが出来ました。特にシューズのR&Dセンターは、アパレル製品を中心に成長してきた我々にとって、ゲームチェンジャーとなり得るシューズ事業の拡大のための礎となるものです。
また「グローバルでの成長を支える経営インフラとロジスティクス体制を整備」については、ローカルの子会社との求心力、遠心力のバランス経営を目指し2017年4月にグループ組織再編(会社分割)によりグローバル本社を立ち上げ、日本事業の運営組織をデサントジャパンとして分社化することにより、財務規律を強化することが出来ました。日本事業単体での制度会計による実績が可視化されることで、ホームグラウンドである日本の収益力向上につながっていくものと捉えております。
「エリア別戦略」についても、中国を日本・韓国に次ぐ第3の柱とするべく、「デサントチャイナ有限公司」、「アリーナ上海実業有限公司」をジョイントベンチャーとして設立し、事業拡大の地盤固めを行うことが出来ました。特にデサントチャイナ有限公司は、2016年の設立から3年目の2018年末には118店舗を開店するなど、順調に事業が拡大しており、ごく近い将来に中国事業が第3の柱となり、さらには日本・韓国を超える事業規模になりうるポテンシャルを秘めております。
ただし、現時点では、2016年5月に策定いたしました2020年度(2021年3月期)に目指す姿「Vision 2020」の数値目標の期限内での達成はきわめて困難であるものと見込んでおります。新たな中期経営計画につきましては、「Compass 2018」の結果の振り返り、変化の激しい昨今の市場環境を勘案し、新経営陣のもとで現在発表内容を策定中です。公開が可能となった段階で、速やかに開示いたします。
(c)資本の財源および資金の流動性
当連結会計年度における現金及び現金同等物の期末残高は、(以下、「資金」という。)前連結会計年度末に比べ140百万円減少し、27,229百万円となりました。これは営業活動により得られた資金11,137百万円に対し、有形固定資産の取得5,863百万円等による投資活動により支出した資金が8,267百万円、配当金の支払1,733百万円等による財務活動により支出した資金が2,136百万円によるものです。
なお、当社グループは、必要な運転資金及び設備投資につきましては、自己資金または銀行借入により調達するものとしております。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①経営成績の状況
当連結会計年度の売上高は142,443百万円(前年同期比0.9%増)、営業利益は7,935百万円(前年同期比17.3%減)、経常利益は8,458百万円(前年同期比12.8%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は3,944百万円(前年同期比31.7%減)となりました。
報告セグメントの業績は次のとおりであります。
(日本)
日本での売上高は59,656百万円(前年同期比1.7%増)、セグメント利益は2,142百万円(前年同期比37.6%減)となりました。アスレチックカテゴリーにおいては「デサント」、「ルコックスポルティフ」が好調に推移しましたが、「アンブロ」は苦戦しました。ゴルフカテゴリーにおいては「デサント」、「ルコックスポルティフ」が堅調に推移しましたが、「マンシングウェア」は苦戦しました。結果、日本全体として売上高は前年比で増加しましたが、直営店やEコマースへの先行投資などによる販管費の増加が、増収に伴う売上総利益の増加を上回ったことにより、セグメント利益は前年より減少しました。
(アジア)
アジアでの売上高は79,219百万円(前年同期比0.5%増)、セグメント利益は6,447百万円(前年同期比4.2%減)となりました。韓国においては「デサント」が堅調に推移しましたが、「ルコックスポルティフ」、「マンシングウェア」は苦戦しました。香港、シンガポールにおいては「アリーナ」が好調に推移しました。結果、アジア全体として売上高は堅調に推移しましたが、韓国における積極的な直営店の出店などによる販管費の増加により、セグメント利益は前年より減少しました。
(欧米)
欧米での売上高は3,568百万円(前年同期比1.4%減)、セグメント損失は765百万円(前年同期は581百万円のセグメント損失)となりました。DESCENTE ATHLETIC AMERICAS, INC.を設立したことにより「デサント」の売上高は増加しましたが、同社の販管費が増加していることに加え、「DESCENTE MOUNTAIN AMERICAS」「イノヴェイト」が伸び悩んでいることにより、欧米の売上高・セグメント利益とも前年より減少したほか、「イノヴェイト」関連資産の減損損失を特別損失に計上しております(上記の外数)。
取扱商品の品目別売上高の状況は次のとおりであります。
(アスレチックウェア及びその関連商品)
アスレチックウェア及びその関連商品の売上高は89,974百万円(前年同期比0.9%増)となりました。
アスレチックカテゴリーにおいては、「デサント」が国内外で、また「ルコックスポルティフ」が日本で、「アンブロ」が海外で業績を牽引して増収となったものの、国内では「アンブロ」が、海外では「ルコックスポルティフ」「アリーナ」「イノヴェイト」が減収となり、結果、全体として売上高は前年同期より微増となりました。
「デサント」では、2019年1月に広島県で開催された「天皇盃 第24回全国都道府県対抗男子駅伝競走大会」にて全47都道府県チーム別のユニフォームをサプライしました。2019年2月にはブランド最大規模の旗艦店となる「DESCENTE TOKYO」を渋谷・明治通り沿いにオープンしました。当店舗では、スポーツシーンに向けた商品に加え、「デサント」が培ってきた機能を落とし込み、日常でも着用していただける商品カテゴリーも展開しています。今後も直営店の出店や競技団体へのサプライを通して、「デサント」のクラフトマンシップやモノづくりスピリットを発信し、ブランド価値向上を図っていきます。韓国においては、スキーのスイスナショナルチームとのスポンサーシップ40周年を記念したロングダウンなどの限定商品を発売しました。中国では急速に店舗数を拡大しており、12月末時点で118店舗展開しています。
「ルコックスポルティフ」では、国内においてはモデル・タレントのマギーさんとのコラボ商品が好調に推移しております。また、8月以降インドネシアにて3店舗をオープンするなど東南アジアでの事業拡大を図っています。
「アリーナ」においては、8月の「パンパシフィック水泳選手権大会2018」に続き、12月に中国・杭州で開催された「第14回世界水泳選手権大会(25m)」に協賛し、大会を盛り上げるキャンペーンの実施、関連商品の販売など様々なマーケティング活動により、ブランド訴求を図りました。両大会においては契約選手の瀬戸大也選手(所属:ANA/JSS毛呂山)が200mバタフライで金メダルを獲得するなど、ブランド価値向上につながりました。また、2019年7月に開催される「第18回世界水泳選手権大会」に向け、契約選手と共同開発を行ったトップレーシング競泳水着「アルティメット・アクアフォース」を発表しました。
「アンブロ」においては、国内では契約選手である柴崎岳選手、遠藤保仁選手とともに開発・改良を行ったスパイクを発売、韓国においてはアグリーシューズ「BUMPY」の売上が引き続き好調に推移するなどシューズ事業の拡大を進めています。
(ゴルフウェア及びその関連商品)
ゴルフウェア及びその関連商品の売上高は36,206百万円(前年同期比2.4%減)となりました。
ゴルフカテゴリーにおいては、国内外で「デサント」が引き続き好調で増収となりました。また日本では「ルコックスポルティフ」は増収となりましたが、「マンシングウェア」は売上を落としました。海外では「ルコックスポルティフ」、「マンシングウェア」が苦戦し、結果、全体として売上高は前年同期より減少いたしました。
「マンシングウェア」のブランド強化策として、国内では若手プロをイメージし、デザイン・機能性を追求した「ENVOY」シリーズの商品展開を開始しました。ベトナムにおいては4月にオープンしたハノイ・ロッテ百貨店の1号店に引き続き、2号店を7月にハノイにオープンし、東南アジアでの事業拡大を図っています。また、ブランドアイコンでもあるペンギンを絶滅危機から守るため、地球温暖化や環境悪化の抑制を目的に、「SAVE the PENGUIN」キャンペーンと称し、環境保全を行うNGO団体「WWF」(World Wide Fund for Nature)とのコラボ商品を日本・中国・シンガポールなどアジア各国で展開しています。
「ルコックスポルティフ」においては、韓国において日本人イラストレーターのChocomooさんとのコラボ商品を発売、若者向けの「SUNDAY」シリーズが好調に推移するなど顧客層の拡大に努めています。
「デサント」においては、8月に上海・久光百貨店に中国において初めてとなるゴルフ店舗をオープンし、アスレチックカテゴリーに続き、ゴルフカテゴリーにおいてもブランドの拡大を図っています。2019年2月にはグローバル契約選手のネリー・コルダ選手(米国)が「ISPS HANDA オーストラリア女子オープン」で優勝を果たすなど契約選手が活躍しています。
また、10月に当社初のゴルフ複合業態直営店を三井アウトレットパーク木更津店にオープンしました。当社のゴルフブランド5ブランドに加え、住友ゴム工業株式会社が展開するゴルフギア3ブランドも取り扱い、幅広い層のゴルファーのニーズに応え、さらなるブランドファンの獲得とゴルフビジネスの拡大を目指しています。
(アウトドアウェア及びその関連商品)
アウトドアウェア及びその関連商品の売上高は16,263百万円(前年同期比9.3%増)となりました。
(その他のトピックス)
研究開発の分野では、7月に稼働した大阪府茨木市のアパレルのR&Dセンター(DISC OSAKA)にて、全社横断の夏の重点戦略素材として、衣服内の不要な熱を逃がすことでクーリング機能を発揮する独自開発素材「Coolist D-Tec」を開発しました。また、2019年1月にドイツで開催されたスポーツ用品の国際総合見本市「ISPOミュンヘン2019」において、「デサント」ブランドがグローバルで展開する商品「水沢ダウンジャケット ヴァリアント」がISPOアワードGold Winnerを受賞しました。「デサント」ブランドでのISPOアワードGold Winnerの受賞は、2017年から3年連続となります。今後もDISCが主導するユニークな開発を中心に、重点戦略の一つとして掲げている「モノを創る力」の向上に引き続き努めていきます。
業務提携の分野では、8月に株式会社ワコールホールディングスと包括的業務提携契約を締結し、10月から相互のブランド商品を直営店にて販売開始したことを皮切りに、合同ポップアップストアの展開、Eコマースへの相互送客など具体的な提携が始動しました。今後も引き続き、それぞれの経営資源を相互に活用し、事業基盤の強化・拡充・発展に努めることによって、ファッションとスポーツの事業領域を超えた新しい価値を創造し、両社の事業の拡大とグローバル化の推進を図っていきます。
新規流通開拓の分野では、デサントジャパン株式会社にてB to B事業開拓の一環として、アスクル株式会社と協同し、同社の物流を担う同社100%子会社ASKUL LOGIST株式会社の新ドライバーユニフォームを手掛けました。ドライバーが心身ともにストレスなく活動し、そしてお客様との良好なコミュニケーションを形成するために、スポーツで培ったノウハウを生かして参ります。
(注)上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
②財政状態の状況
当連結会計年度末の資産合計は115,756百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,384百万円減少いたし
ました。負債合計は前連結会計年度末に比べ955百万円減少し、37,310百万円となりました。
純資産は前連結会計年度末に比べ429百万円減少し、78,446百万円となりました。
以上の結果、自己資本比率は前連結会計年度末に比べ、0.4%増の67.8%となりました。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末に比べ140百万円減少し、27,229百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、11,137百万円の収入超過(前連結会計年度は12,523百万円の収入超過)となりました。これは主な減少要因として法人税等の支払額又は還付額1,038百万円がありましたが、税金等調整前当期純利益5,683百万円、減価償却費3,773百万円の計上、減損損失1,817百万円などの増加要因があったことによるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは、8,267百万円の支出超過(前連結会計年度は6,361百万円の支出超過)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出5,863百万円、無形固定資産の取得による支出811百万円などによるものです。
財務活動によるキャッシュ・フローは、2,136百万円の支出超過(前連結会計年度は1,560百万円の支出超過)となりました。これは主に配当金の支払額1,733百万円によるものです。
(参考) キャッシュ・フロー関連指標の推移
2015年3月期 | 2016年3月期 | 2017年3月期 | 2018年3月期 | 2019年3月期 | |
自己資本比率(%) | 68.4 | 64.8 | 66.3 | 67.3 | 67.8 |
時価ベースの自己資本比率 (%) | 117.8 | 116.1 | 93.0 | 108.0 | 188.9 |
キャッシュ・フロー対有利子 負債比率(年) | 0.3 | 0.6 | 1.0 | 0.5 | 0.5 |
インタレスト・カバレッジ・ レシオ(倍) | 593.9 | 136.3 | 55.7 | 135.8 | 82.5 |
(注) 自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
1.各指標は、いずれも連結ベースの財務諸表数値により算出しております。
2.株式時価総額は、期末株式終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。
3.営業キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
④生産、受注及び販売の実績
(a) 生産実績
当社グループは、生産の状況について、セグメントごとの製品の製造場所等から判断し、日本が大半を占めており、重要性が乏しいため記載を省略しております。
(b) 受注状況
原則として受注生産は行っておりません。
(c) 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前年同期比(%) |
日本 | 59,656 | 101.7 |
アジア | 79,219 | 100.5 |
欧米 | 3,568 | 98.6 |
合計 | 142,443 | 100.9 |
(注) 1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりであります。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づいて作成されています。この連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度における財務状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与えるような見積り、予測を必要としております。当社グループは、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、継続的に見積り、予測を行っております。そのため実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(a)財政状態の分析
(資産の部)
当連結会計年度末の資産合計は115,756百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,384百万円減少いたしました。減少の主な要因は為替の影響によるもので、為替の影響を差し引くと2,482百万円の増加となります。
流動資産は前連結会計年度末に比べ16百万円減少し、78,051百万円となりました。これは為替による影響額△2,683百万円を除くと、実質2,666百万円の増加となります。これは主に、現金及び預金の増加181百万円と、流動資産その他に含まれる未収入金の増加1,558百万円によるものです。
固定資産は前連結会計年度末に比べ1,368百万円減少し、37,705百万円となりました。これは為替による影響額△1,183百万円を除くと実質185百万円の減少となります。これは主に、日本と韓国におけるR&Dセンター開設や売場・システム投資に伴う有形固定資産の増加2,754百万円と、のれんを含む無形固定資産の減損損失等による減少2,377百万円、繰延税金資産の減少1,219百万円によるものです。
(負債の部)
負債合計は前連結会計年度末に比べ955百万円減少し、37,310百万円となりました。これは為替による影響額△1,160百万円を除くと実質204百万円の増加となります。これは主に、支払手形及び買掛金の増加1,118百万円、長期借入金の減少894百万円、繰延税金負債の減少564百万円によるものです。
(純資産の部)
純資産は前連結会計年度末に比べ429百万円減少し、78,446百万円となりました。これは主に利益剰余金の増加2,210百万円、期末レートの円高による為替換算調整勘定の減少2,694百万円によるものです。
以上の結果、自己資本比率は前連結会計年度末に比べ、0.4%増の67.8%となりました。
(b)経営成績の分析
(売上高)
当連結会計年度の売上高は142,443百万円(前年同期比0.9%増)となり、前連結会計年度に比べて百1,319万円増加いたしました。売上高が増加した主な要因は、日本、アジア、欧米すべてのセグメントで「デサント」、また国内において「ルコックスポルティフ」が好調に推移したことによるものです。
(営業利益)
当連結会計年度の営業利益は7,935百万円(前年同期比17.3%減)となり、前連結会計年度に比べて1,661百万円減少いたしました。営業利益が減少した主な理由は、日本における直営店出店や、システムへの投資に伴う販管費の増加、アジアでは積極的な出店による販管費の増加が、売上総利益の増加を上回ったことによるものです。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
営業外収益は、受取利息328百万円などにより799百万円、営業外費用は、支払利息135百万円などにより276百万円となりました。特別損失は、減損損失1,817百万円などにより2,775百万円となり、以上の結果、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は3,944百万円(前年同期比31.7%減)となり、前連結会計年度に比べて1,827百万円減少いたしました。
なお、当連結会計年度にて対象期間が終了した中期3ヶ年計画「Compass 2018」の振り返り及び分析につきましては、下記の通りであります。
当社グループは、2016年5月に策定いたしました2020年度に目指す姿「Vision 2020」において、「付加価値の高いブランドの複数展開により、アジアで事業を拡大し、グローバルスポーツカンパニーへと成長する」ことを目標とし、グループ全体での事業拡大を積極的に進めてまいりました。また、2019年3月期を最終年度とした中期経営計画「Compass 2018」においては、「VISION 2020」に至るマイルストーンとして、下記表内②の数値目標を掲げ、その実現に向け取り組んでまいりました。
①2019年3月期 実績 | ②Compass 2018 数値目標 | ①-② 目標対比 | ③Vision 2020 数値目標 | ①/③ 進捗状況 | |
売上高 | 1,424億円 | 1,700億円 | △276億円 | 2,000億円 | 71.2% |
経常利益 | 84億円 | 140億円 | △56億円 | 160億円 | 52.5% |
親会社株主に帰属する当期純利益 | 39億円 | 100億円 | △61億円 | - | - |
ROE | 5% | 12%以上 | △7% | - | - |
しかし「Compass 2018」につきましては、その初年度の2017年3月期から前年実績を下回る水準となり苦しいスタートとなりました。2年目の2018年3月期、および最終年度の2019年3月期は、売上高こそ前年を超えて進捗し、過去最高記録を更新したものの、当初の目標からは売上高で276億円、経常利益で56億円、親会社株主に帰属する当期純利益で61億円の乖離となりました。
売上高をセグメント別で見ると、アジアでは、特に韓国において、市況停滞や競合の激化の影響などもあり「デサント」「ルコックスポルティフ」ブランドで当初の目標から大幅に乖離した結果、「Compass 2018」の数値目標に対し、売上高で206億円の未達となりました。日本では「デサント」ブランドにおいて積極的な直営店出店や競技団体・選手へのサプライを通じて業績を大きく伸長させた一方、「マンシングウェア」ブランドにおいては百貨店における消費の停滞など事業環境の変化も相まって苦戦した他、「アンブロ」ブランドにおいても低迷が継続しており、売上高で46億円の未達となりました。欧米においても2015年に買収した「イノヴェイト」ブランドが、当初想定していた成長軌道を描くことが出来なかったことも相まって、売上高で25億円の未達となりました。
また上記の売上高の未達に伴い「Compass 2018」における経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益の数値目標も未達となりました。ROEについても、売上高当期純利益率が2016年3月期の5.8%から2019年3月期の2.8%に低下したことと、販売効率の低下に伴って総資産回転率が同じく133.8%から122.3%に低下したことにより、当初の目標である12%から大幅に乖離しました。
主力市場である韓国で外部環境の変化により成長モメンタムが下振れた際に、中期経営計画の期間内に、日本をはじめとする他の地域でカバーしたり、新たな収益源を創出するなどの、強靭さやスピードに欠けていたことは否めず、有効な対策が打ち切れなかったことについて、大変重く受け止めております。
一方で「Compass 2018」で掲げた「重点戦略」と「エリア別戦略」については、将来の成長に直結する一定の成果を上げることが出来たものと考えております。
「重点戦略」の1つである「当社の競争力の源泉である「モノを創る力」を向上」については、グローバル市場に向けた高機能商材の開発を目的としたR&Dセンターを大阪(アパレル)、韓国・釜山(シューズ)に設立し、素材開発研究に向けて新たにスタートすることが出来ました。特にシューズのR&Dセンターは、アパレル製品を中心に成長してきた我々にとって、ゲームチェンジャーとなり得るシューズ事業の拡大のための礎となるものです。
また「グローバルでの成長を支える経営インフラとロジスティクス体制を整備」については、ローカルの子会社との求心力、遠心力のバランス経営を目指し2017年4月にグループ組織再編(会社分割)によりグローバル本社を立ち上げ、日本事業の運営組織をデサントジャパンとして分社化することにより、財務規律を強化することが出来ました。日本事業単体での制度会計による実績が可視化されることで、ホームグラウンドである日本の収益力向上につながっていくものと捉えております。
「エリア別戦略」についても、中国を日本・韓国に次ぐ第3の柱とするべく、「デサントチャイナ有限公司」、「アリーナ上海実業有限公司」をジョイントベンチャーとして設立し、事業拡大の地盤固めを行うことが出来ました。特にデサントチャイナ有限公司は、2016年の設立から3年目の2018年末には118店舗を開店するなど、順調に事業が拡大しており、ごく近い将来に中国事業が第3の柱となり、さらには日本・韓国を超える事業規模になりうるポテンシャルを秘めております。
ただし、現時点では、2016年5月に策定いたしました2020年度(2021年3月期)に目指す姿「Vision 2020」の数値目標の期限内での達成はきわめて困難であるものと見込んでおります。新たな中期経営計画につきましては、「Compass 2018」の結果の振り返り、変化の激しい昨今の市場環境を勘案し、新経営陣のもとで現在発表内容を策定中です。公開が可能となった段階で、速やかに開示いたします。
(c)資本の財源および資金の流動性
当連結会計年度における現金及び現金同等物の期末残高は、(以下、「資金」という。)前連結会計年度末に比べ140百万円減少し、27,229百万円となりました。これは営業活動により得られた資金11,137百万円に対し、有形固定資産の取得5,863百万円等による投資活動により支出した資金が8,267百万円、配当金の支払1,733百万円等による財務活動により支出した資金が2,136百万円によるものです。
なお、当社グループは、必要な運転資金及び設備投資につきましては、自己資金または銀行借入により調達するものとしております。