有価証券報告書-第64期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/17 13:39
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【項目】
145項目
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①経営成績の状況
当連結会計年度において当社は、新型コロナ感染拡大の影響により、緊急事態宣言発令による各種イベント・競技大会の中止や規模縮小、小売店舗の休業などを受け、特に第1四半期会計期間において、全エリアで厳しいビジネス環境下にありました。下半期は全エリアで新型コロナの影響は小さくなり、復調していたものの、当連結会計年度の売上高は96,862百万円(前年同期比22.2%減)、営業損失は1,806百万円(前年同期は379百万円の営業利益)、経常損失は584百万円(前年同期は456百万円の経常利益)、親会社株主に帰属する当期純利益は5,039百万円(前年同期は2,481百万円の当期純損失)となりました。
②財政状態の状況
当連結会計年度末の資産合計は107,987百万円となり、前連結会計年度末に比べ516百万円減少しました。
流動資産は前連結会計年度末に比べ2,646百万円減少し、65,368百万円となりました。これは主に現金及び預金の増加1,603百万円、受取手形及び売掛金の減少1,734百万円、商品及び製品の減少2,202百万円によるものです。
固定資産は前連結会計年度末に比べ2,130百万円増加し、42,619百万円となりました。これは主に投資有価証券の増加6,943百万円によるものです。
負債合計は前連結会計年度末に比べ6,287百万円減少し、30,024百万円となりました。これは主に支払手形及び買掛金の減少4,875百万円、リース債務(固定)の減少1,380百万円によるものです。
純資産は前連結会計年度末に比べ5,770百万円増加し、77,963百万円となりました。これは主に利益剰余金の増加5,039百万円、退職給付に係る調整累計額の増加559百万円によるものです。
以上の結果、自己資本比率は前連結会計年度末に比べ、5.7%増の72.2%となりました。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末に比べ315百万円減少し、19,244百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、2,393百万円の収入超過(前連結会計年度は2,371百万円の収入超過)となりました。これは増加要因として税金等調整前当期純利益5,565百万円、減価償却費5,201百万円となりEBITDAが10,767百万円増加したことに加え、売掛債権の減少1,720百万円、たな卸資産の減少2,413百万円がありました。一方で、減少要因として仕入債務の減少4,840百万円、持分変動利益6,419百万円などがあったことによるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは、51百万円の収入超過(前連結会計年度は5,949百万円の支出超過)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出1,541百万円、投資有価証券の売却による収入1,822百万円、差入保証金の回収による収入985百万円などによるものです。
財務活動によるキャッシュ・フロ-は、2,586百万円の支出超過(前連結会計年度は4,128百万円の支出超過)となりました。これは主に短期借入金の返済による支出424百万円、リース債務の返済による支出2,130百万円によるなどにより、返済が借入を上回ったためです。
(参考) キャッシュ・フロー関連指標の推移
2017年3月期2018年3月期2019年3月期2020年3月期2021年3月期
自己資本比率(%)66.367.367.866.572.2
時価ベースの自己資本比率
(%)
93.0108.0188.988.3131.5
キャッシュ・フロー対有利子
負債比率(年)
1.00.50.51.10.9
インタレスト・カバレッジ・
レシオ(倍)
55.7135.882.58.127.0

(注) 自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
1.各指標は、いずれも連結ベースの財務諸表数値により算出しております。
2.株式時価総額は、期末株式終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。
3.営業キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
④生産、受注及び販売の実績
(a) 生産実績
当社グループは、生産の状況について、セグメントごとの製品の製造場所等から判断し、日本が大半を占めており、重要性が乏しいため記載を省略しております。
(b) 受注状況
原則として受注生産は行っておりません。
(c) 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)前年同期比(%)
日本47,07982.9
韓国46,15678.7
中国3,39766.3
その他2295.7
合計96,86277.8

(注) 1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3 その他セグメントについては、海外子会社の清算及び株式売却に伴い金額が減少しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりであります。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
(a)財政状態の分析
(資産の部)
当連結会計年度末の資産合計は107,987百万円となり、前連結会計年度末に比べ516百万円減少いたしました。減少の主な要因は、流動資産の減少です。
流動資産は前連結会計年度末に比べ2,646百万円減少し、65,368百万円となりました。このうち為替による増加額が180百万円あり、実質2,827百万円の減少となります。主な増加要因は現金及び預金の増加1,603百万円、減少要因は受取手形及び売掛金の減少1,734百万円、商品および製品の減少2,202百万円によるものです。
固定資産は前連結会計年度末に比べ2,130百万円増加し、42,619百万円となりました。これは為替による増加額42百万円を除くと実質2,089百万円の増加となります。これは主に、DCH再編等による投資有価証券の増加6,943百万円が、既存資産の減価償却等による有形固定資産の減少2,461百万円および無形固定資産の減少額755百万円を上回ったことによるものです。
(負債の部)
負債合計は前連結会計年度末に比べ6,287百万円減少し、30,024百万円となりました。このうち為替による増加額31百万円を除くと実質6,318百万円の減少となります。これは主に、未払法人税は1,389百万円増加したものの支払手形及び買掛金の減少4,875百万円と、リース債務(固定)の減少1,380百万円などによるものです。
(純資産の部)
純資産は前連結会計年度末に比べ5,770百万円増加し、77,963百万円となりました。このうち為替による増加額が210百万円あり、実質5,560百万円の増加となります。これは主に利益剰余金の増加5,039百万円によるものです。
以上の結果、自己資本比率は前連結会計年度末に比べ、5.7%増の72.2%となりました。
(b)経営成績の分析
当社は、中期経営計画「D-Summit 2021(ディーサミット2021)」の重点戦略である「アジアへの集中」のため、継続的に損失を計上していた欧米事業を担う子会社の清算を当連結会計年度に実行しました。さらに、2020年11月25日に「日本事業収益改善に向けた構造改革の実施について」で公表したとおり、日本事業の収益改善のために、DTC事業の強化および人員数の適正化のための希望退職の募集などを実施し、2022年3月期以降日本で収益を改善していくための施策を実行しています。中国では、『デサント』ブランドの事業を展開する合弁会社「Descente China Holding Limited」(以下、DCH)の再編を実行し、同事業の更なる拡大のため、当社が保有する同ブランドの中国における商標権をDCHに移管し、DCHへの出資比率を30%から40%に増加させました。その結果、第3四半期会計期間での再編に伴う持分変動利益(特別利益)6,419百万円の計上に加え、第4四半期会計期間から、DCHからの取り込み利益が増加しております。
2021年3月期の実績は、新型コロナの影響を受け、売上高、営業利益、経常利益は前年同期比で減収減益となりましたが、親会社株主に帰属する当期純利益は、前述の『デサント』ブランドの中国事業再編に伴う特別利益の計上もあり、前年を上回りました。
連結実績および連結当初計画
①2021年3月期
実績(百万円)
②2021年3月期
当初計画(百万円)
①-②
目標対比(百万円)
売上高96,862101,000△4,138
営業利益△1,806500△2,306
経常利益△584550△1,134
親会社株主に帰属する当期純利益5,0395,00039


セグメント別売上高実績および当初計画
①2021年3月期
実績(百万円)
②2021年3月期
当初計画(百万円)
①-②
目標対比(百万円)
日本47,07943,6003,479
韓国46,15654,000△7,844
中国3,3973,200197
その他22920029

2020年7月15日に開示した当初計画に対しては、売上高で4,138百万円、営業利益で2,306百万円、経常利益で1,134百万円未達となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、当初の目標を39百万円上回りました。
当初計画では、国内外においての新型コロナ拡大の影響が一定期間にわたり継続し、売上高の低迷が続くと想定していましたが、上半期では、日本事業において7月以降に下げ止まりの傾向が見え始め、売上高で当初見込みを上回りました。しかしながら下半期では、韓国において新型コロナの再拡大および昨年度からの不買運動の影響が継続したことにより売上が低迷し、韓国セグメントの売上高は当初の計画を下回りました。日本セグメントの売上高は当初計画を上回りましたが、韓国の減少分をカバーするには至らず、通期における連結売上高については計画を下回りました。
通期の連結営業利益につきましては、欧米子会社の事業休止による固定費の減少、継続的な取組みによる広告販促等の販管費の削減を見直したことに加え、第3四半期連結会計期間において日本国内向け事業を展開しているデサントジャパン株式会社と中国事業が黒字となりましたが、下半期の売上高が想定よりも減少したこと伴う大幅な売上総利益の減少を販管費の削減でカバーするには至らず、当初計画を下回りました。経常利益につきましては、中国における合弁会社であるDCHの業績が好調であったことから持分法による投資利益は前年対比463百万円増の791百万円となりましたが、営業利益の減少額が大きく、当初計画は未達となりました。
親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、上記の要因に加え第4四半期連結会計期間に日本で実行した希望退職に関わる費用計上がありましたが、DCHの再編に伴う持分変動利益が当初の想定を上回る6,419百万円となったことから、当初計画を達成しました。
セグメント別で見ると、日本では、事業の拡大・販売力強化を目的に自社ECサイト「DESCENTE STORE オンライン」の全面リニューアルを行い、自社EC売上高は前年同期比68%増と好調に推移しています。また、広告販促費などの販管費削減の継続的な取り組みに加え、構造改革として、希望退職の募集による人件費の削減および当社の卸売事業を担う子会社のベンゼネラル株式会社の全事業の譲渡を実施し、直営店およびECビジネスへ経営資源を重点的に配分することで、2022年3月期以降日本において安定した収益をあげる施策を着実に実行しています。韓国では、2022年3月期以降の安定成長を目指し、店舗数を見直すことで主力店舗へ経営資源を集中させました。第4四半期会計期間において、『デサント』および『アンブロ』は前年同期比増収となるなど、2020年2月から続く新型コロナの影響から徐々に復調しています。中国では、セグメント損益に計上される連結子会社の上海デサント商業有限公司および香港デサント貿易有限公司の事業展開においては、不採算店舗の整理を行い、家賃等固定費を減少させたことなどにより販管費の削減を行いました。上海デサント商業有限公司は、第3四半期会計期間以降、内需活性化に伴い、売上高および利益も回復しました。一方、香港では、特に第4四半期会計期間に、新型コロナの再拡大による消費者の購買意欲の低下が顕著になり、香港デサント貿易有限公司の売上高および利益は減少しました。なお、セグメント損益には含まれませんが、前述の通り持分法適用関連会社であるDCHは大幅な増収増益となり、引き続き好調を維持しております。
重点戦略であるモノづくりの強化に則り、グループ全体でこだわりのあるモノづくりを実践しています。日本の「水沢ダウン」や韓国のシューズでカスタムオーダーを実施するなど、お客様のニーズに沿ったモノづくりも進めています。『デサント』のゴルフカテゴリーでは、こだわりのあるモノづくりを象徴する「g-arc(ジーアーク)」シリーズから、商品タグのプリントまでも土に還るというこだわりを持った「土に還るポロシャツ」を発売しました。また、ラグジュアリーブランドである「ディオール」とのコラボ企画商品を世界12か国で販売し、ブランド認知を拡大しました。研究開発拠点であるDISCも最大限活用することで、消費者ニーズに応え、こだわりのある商品開発を継続しています。
サスティナビリティへの取り組みとして、環境負荷低減、スポーツ機会の提供、地域貢献活動に取り組んでおります。第4四半期会計期間では、国内のコロナ禍における社会貢献の一環として、『ルコックスポルティフ』より「ONE SHOES, ONE SMILE Campaign(ワンシューズワンスマイルキャンペーン)」を実施しました。新型コロナの感染拡大で厳しい環境が続く中、最前線の医療現場にて活躍を続けてくださる医療従事者の皆様への支援と、敬意と感謝の意を表するため、期間中に販売したシューズの売上の一部を日本赤十字社へ寄付をいたしました。今後もスポーツを通して人々の身体と心を豊かにし、健全なライフスタイルを創造する取り組みを続けていきます。
2021年3月期は、売上高、営業利益、経常利益において前年および当初計画を下回る結果となりましたが、日本事業では構造改革をスタートし、2022年3月期以降の収益改善のための施策の実行段階に移っており、各事業エリアでの下半期の復調等、来期以降の黒字化に向けた明るい兆しも見えております。2021年3月期は3ヵ年の中期経営計画「D-Summit 2021」の2年目ではありましたが、重点戦略として掲げている「アジアへの集中」は完了し、2022年3月期では「日本事業の収益改善」も施策の立案から実行段階に移ります。この2年間で経営環境も大きく変わり、また当社の経営戦略も施策の実行段階に移行することから、「D-Summit 2021」は1年前倒して終了し、2022年3月期から2024年3月期までの3か年計画として新たな中期経営計画「D-Summit 2023」を策定しました。「日本・韓国・中国 地域別戦略の実行」「日本事業の収益改善」「モノづくりの強化」を重点戦略として掲げ、3つの市場で安定的に収益を上げることを目指します。
2022年3月期の連結業績につきましては、売上高1,030億円、営業利益31億円、経常利益43億円、親会社株主に帰属する当期純利益30億円を計画しています。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
キャッシュ・フローの状況の分析
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローは、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
資本の財源及び資金の流動性
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、商品の仕入のほか、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、店舗等への設備投資、子会社への増資等によるものであります。また、必要な運転資金及び設備投資につきましては、自己資金または銀行借入により調達するものとしております。なお、新型コロナの影響が資金繰りに波及することを防ぐため、2021年4月、取引銀行4行と借入枠について期限を更新しました。これにより十分な運転資金が確保でき、資金繰り面についての懸念を払拭しております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。