有価証券報告書-第75期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要、これらに関する経営者の視点による認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 経営成績
当連結会計年度における世界経済の状況につきましては、中国・欧州における景気の減速や米中の貿易摩擦に端を発する世界的な貿易量の減少などを背景に、2019年の成長率が金融危機直後であった2009年以来の低い水準に留まったことに加え、世界的に感染が拡大した新型コロナウイルスの影響により、IMFが2020年のマイナス経済成長の見通しを発表するなど、経済への深刻な打撃が見込まれております。
当社グループを取り巻く事業環境につきましては、主要市場である電子産業分野においてメモリー投資の抑制が続いたものの、生産水準は高いレベルで推移し、加えて下期以降、国内・台湾を中心に半導体関連の大規模な設備投資が続くなど想定以上に活発な動きが続きました。また、一般産業分野においても設備投資・生産活動は堅調に推移しました。2020年の年初以降、新型コロナウイルス感染症の拡大につれて主に海外との物流や人の動きに混乱がみられましたが、業績に大きな影響を与えるレベルの投資計画の中止や工場の停止・操業度の低下などは発生しておらず、当連結会計年度の業績に与える影響は限定的なものに留まっております。
当連結会計年度は、2019年度~2021年度を対象とした中期経営計画(以下、「19中計」という。)のもと、「電子産業分野の拡大」「機能商品事業の強化」「新規事業の創出」を重点分野とし、注力してまいりました。その結果、受注高・売上高は2期連続で、営業利益は2007年3月期以来となる、過去最高を更新し、受注高及び営業利益、売上高営業利益率、ROEについては19中計の最終年度である2021年度の目標値を上回る結果となりました。この結果は主に、電子産業分野における売上拡大、プラント事業の収益性改善、ソリューション事業の伸長などによるものであり、当連結会計年度の業績は、当社グループが目指している方向性・戦略が正しい道にあることを示しているものと評価しております。しかしながら、安定した収益構造の確立にはまだ至っていないと認識しており、引き続き、安定的・継続的に好業績を達成できる収益構造の確立を目指してまいります。
セグメント別の経営成績は、次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分方法等を変更しているため、前連結会計年度との比較・分析は変更後の区分に基づいております。
(水処理エンジニアリング事業)
水処理エンジニアリング事業はプラント事業及びソリューション事業から構成されており、電子産業分野、一般産業分野、電力・上下水分野で事業を展開しております。
当事業においては、「電子産業分野の拡大」に向け、日本・台湾・中国における営業・技術・生産・ソリューション体制の強化、米国市場も含めた最先端の半導体ウェットプロセス分野への参入などを重点施策として取り組んでまいりました。また、「新規事業の創出」を目指し、リチウムイオンバッテリー向け精製設備や、バイオ医薬向け高度精製装置、電子材料向け高度精製処理などの事業化に向けて取組みを行ってまいりました。
一方で、当連結会計年度における事業環境は、電子産業分野においてメモリー投資の抑制が続いたほか、中国では米中貿易摩擦の影響による半導体設備投資の減速がみられたものの、国内外で生産水準が高いレベルで推移したことに加え、下期以降、国内・台湾を中心に半導体関連の大規模な設備投資が続くなど想定以上に活発な動きが続きました。また、一般産業分野においても設備投資・生産活動は堅調に推移しました。
その結果、当連結会計年度は受注高86,475百万円(前連結会計年度比1.6%増)、売上高77,921百万円(同5.5%増)、営業利益8,921百万円(同72.3%増)となりました。
受注高については、電子産業分野の設備投資の減速を受け年度の前半で受注が低調に推移しましたが、下期以降は台湾のファウンドリーによる最先端投資や、国内で当社としては過去最大規模となる大型プロジェクトを受注するなど、電子産業分野を中心に想定を大きく上回る結果となりました。これにより、翌期以降の売上高に大きな影響を与える繰越受注残高は前連結会計年度を上回る67,104百万円に達しております。
売上高については、電子産業分野において、大型投資拡大によって台湾での好調な推移がみられたほか、国内において前期受注した大型プラント案件が進捗したことや、重点施策として取り組んでいたソリューションの提案強化が奏功したことなどから、前連結会計年度を上回る売上高を計上いたしました。また一般産業分野におきましても、人手不足を背景とした合理化・省力化投資や、設備の老朽化に伴う維持・更新投資などを中心に堅調に推移したほか、電力・上下水分野では国内のソリューション事業が堅調に推移し前連結会計年度を上回る売上高を計上いたしました。
営業利益につきましては、人件費増加の影響や研究開発投資の拡大、営業・技術体制の強化などにより販売費及び一般管理費が増加しましたが、プラント事業における各プロジェクトの原価低減策の推進や受注採算性の改善への取組み、また、ソリューション事業の売上拡大による増益効果などによって、大きく増加いたしました。
当連結会計年度においては、電子産業分野における大型案件を受注・納入することに成功したことや、ソリューション提案強化による売上拡大が実現できたことから、重点分野として取り組んだ「電子産業分野の拡大」は大きな進展がみられました。一方で「新規事業の創出」については、電子材料向け高度精製処理において精製樹脂の販売が拡大するなど一定の成果がみられておりますが、その他のテーマについては事業化に向け時間を要する状況にあるため、引き続き取組みを強化してまいります。


(機能商品事業)
機能商品事業は水処理薬品、標準型水処理機器、食品加工材の3事業を展開しており、設備投資の動向の影響を受けず安定的な売上が期待できる事業分野であります。
そこで、当社グループは19中計の重点分野の一つとして「機能商品事業の強化」を掲げ、新商品の開発及び既存商品のブラッシュアップ、台湾・中国・東南アジアなど海外市場における生産・販売体制の確立などを重点施策として取り組んでまいりました。一方で、当連結会計年度における事業環境は、2019年10月の消費税増税、大型台風等の自然災害が影響したことに加え、2020年2月~3月にかけて新型コロナウイルス感染症の拡大が本格化し、一部の顧客において工場の操業度が低下するなどの影響がみられました。
その結果、当連結会計年度は受注高18,510百万円(前連結会計年度比1.2%減)、売上高18,593百万円(同0.9%増)、営業利益986百万円(同28.5%減)となりました。
水処理薬品分野においては、国内では顧客工場の統廃合や稼働率低下等の影響を受けたものの、海外での拡販が好調に推移し、前連結会計年度を上回る結果となりました。
標準型水処理機器分野においては、一部顧客の工場稼働率の低下による影響を受けたものの、コンビニエンスストア向けの浄水フィルタの販売が伸長したことなどから、前連結会計年度並の売上高を確保いたしました。
食品事業においては、造粒製品の販売が想定よりも伸びず若干の減収となりましたが、堅調な推移となりました。
営業利益につきましては、人件費や新商品開発投資の増加、海外での体制構築などにより売上高以上に売上原価、販売費及び一般管理費が増加した結果減少いたしました。
当連結会計年度においては、新商品の開発及び既存商品のブラッシュアップとして、新たな水処理薬品の開発や医療・研究機関向け製品のリニューアルを進めたほか、台湾・中国において水処理薬品や標準型水処理機器の販売実績を拡大させるなど一定の成果がみられたものの、開発費用や海外での体制構築に伴う販管費の増加を吸収できるほどの売上増加には至っておらず、さらなる売上の拡大、収益性の向上が必要であるものと認識しております。

生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 上記の金額は販売価格をもって表示しております。
2 セグメント間取引については、相殺消去しております。
3 上記の金額には消費税等は含まれておりません。
4 当連結会計年度より、報告セグメントの区分方法を変更しているため、前年同期比については組替え後の数値に基づき算出しております。
② 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 上記の金額には消費税等は含まれておりません。
3 当連結会計年度より、報告セグメントの区分方法を変更しているため、前年同期比については組替え後の数値に基づき算出しております。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 当連結会計年度より、報告セグメントの区分方法を変更しているため、前年同期比については組替え後の数値に基づき算出しております。
3 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合
4 前連結会計年度のソニーセミコンダクタマニュファクチャリング株式会社については、当該割合が100分の10未満のため記載を省略しております。
5 上記の金額には消費税等は含まれておりません。
(2) 財政状態
(資産)
当連結会計年度末における総資産の残高は、前連結会計年度末に比べ190百万円増加し、101,448百万円となりました。
流動資産は、主に大口の売掛金回収による売上債権の減少やリース投資資産の償却による減少があった一方で、現金及び預金の増加、メンテナンスや工事案件の増加に伴う商品及び製品の増加などによって前連結会計年度末に比べ41百万円増加し、76,078百万円となりました。
固定資産は、繰延税金資産の増加などによって前連結会計年度末から148百万円増加し、25,369百万円となりました。
(負債)
当連結会計年度末における負債の残高は、前連結会計年度末に比べ5,871百万円減少し、40,590百万円となりました。
流動負債は、原材料や工事代金の支払が進んだことから支払手形及び買掛金が減少したことに加え、営業活動によるキャッシュ・フローの改善と長期借入金の調達によって短期借入金が減少したことなどから、前連結会計年度末に比べ7,689百万円減少し、32,240百万円となりました。
固定負債は、長期借入金の調達によって前連結会計年度末から1,818百万円増加し、8,349百万円となりました。なお、当連結会計年度末における借入金合計は前連結会計年度末に比べ3,919百万円減少し、9,740百万円となっております。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産の残高は、前連結会計年度末に比べ6,061百万円増加し、60,857百万円となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益の計上等に伴う利益剰余金6,114百万円の増加によるものであります。
セグメントごとの資産は、次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分方法等を変更しているため、前連結会計年度との比較・分析は変更後の区分に基づいております。
水処理エンジニアリング事業の資産の残高は、前連結会計年度末に比べ867百万円減少し、78,347百万円となりました。これは主に、売上債権、リース投資資産の減少によるものであります。
機能商品事業の資産の残高は、前連結会計年度末に比べ822百万円増加し、18,420百万円となりました。これは主に商品及び製品の増加によるものであります。
(3) キャッシュ・フロー
(資本の財源及び資金の流動性に係る情報)
当社グループにおける資金の配分方針については、次のとおりであります。
成長投資については、新たな中期経営計画において策定した3つの重点分野に対して経営資源を重点的に配分していく方針であります。いずれの重点分野も戦略の実現には研究開発の強化が必須であるため、連結売上高の2.5%を目途に技術研究費を増加させ、重点分野に集中的に資金を配分する方針であります。設備投資についても同様に重点分野へ集中的に資金の配分を行ってまいります。
株主還元についても、重要な経営課題の一つとして考えており、安定的かつ継続的な配当の実施を基本方針とした上で、収益の状況を勘案した利益配分に努めることとしております。
また、当社グループは事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としており、短期の運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入、設備投資や長期の運転資金は金融機関からの長期借入を基本としております。
これらの資金の配分方針や資金の源泉についての考え方については、新型コロナウイルス感染症が拡大している状況においても基本的な方針に変更はありません。今後、当連結会計年度に受注した大型の半導体案件対応の支出など運転資金の需要が増加する見込みであるほか、事業強化に向けた重点分野への研究開発投資や設備投資による支出が増加する見込みでありますが、これらの資金は上記の方針のとおり、自己資金及び金融機関からの借入によって賄う予定であります。なお、当連結会計年度末現在においては、新型コロナウイルス感染症の拡大によって当社グループの資金繰りの状況に重大な影響は顕在化しておりませんが、今後「2 事業等のリスク」に記載したようのリスクが顕在化した場合は、当社グループの資金繰りにも影響を及ぼす可能性があります。
(キャッシュ・フローの状況)
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ2,495百万円増加し、当連結会計年度末には13,772百万円となりました。活動ごとのキャッシュ・フローの状況は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当社グループは、水処理エンジニアリング事業が売上高の80.7%を占めており、同事業のキャッシュ・フローの状況によってグループ全体のキャッシュ・フローが大きく変動します。中でもプラント事業においては長期にわたる大型プラント建設工事を行っており、それらの工事代金の回収時期、原材料・外注費等の支払時期などによって営業活動によるキャッシュ・フローが大きく増減することがあります。また、設備を自らが設置・所有し、顧客にサービスを提供する水処理加工業務においては、設備の製作から資金の回収までが長期にわたるため設備の製作時においては支出が先行する傾向にあります。
当連結会計年度における営業活動によって得られた資金は、前連結会計年度に比べ2,906百万円増加し、8,553百万円となりました。過去最高となる税金等調整前当期純利益9,850百万円を計上したことに加え、国内において大型プラント工事の工事代金の回収が進んだことでキャッシュ・フローが改善いたしました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によって支出された資金は、前連結会計年度に比べ852百万円増加し、1,006百万円となりました。主に有形固定資産の取得781百万円によるものであり、継続的な生産設備の増強、研究開発機能の充実・強化等を目的とした設備投資であります。設備投資の概要については、「第3 設備の状況 1 設備投資等の概要」をご参照ください。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によって支出された資金は、前連結会計年度に比べ2,247百万円増加し、5,007百万円となりました。当連結会計年度はグループの所要資金として、金融機関より長期借入金として3,000百万円の調達を実施したことに加え、営業活動によるキャッシュ・フローが改善したことで短期借入金の返済が進んでおります。また、継続的な増配の実施により配当金の支払額が増加しております。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、連結貸借対照表上の資産、負債の計上額、および連結損益計算書上の収益、費用の計上額に影響を与える見積り及び仮定を使用しております。連結財務諸表に与える影響が大きいと考えられる項目・事象は以下のとおりであります。
なお、以下の見積りを行うにあたり、新型コロナウイルス感染症の影響については、長期化は避けられないと想定したものの、現時点で当社グループの業績に大きな影響を与えるレベルの投資案件の中止・延期、工場停止等は発生していないこと、国内・台湾の大型受注残案件は順調に進捗する見通しであること、台湾・中国市場は投資・生産ともに高水準であり、積極的な投資も計画されていることなどから、翌年度の連結財務諸表への影響は限定的なものに留まると仮定した上で、以下の見積りを行っております。
① 工事契約に係る会計処理
工事契約のうち、当連結会計年度末までの進捗部分について成果の確実性が認められる工事については、工事進行基準(工事の進捗率の見積りは原価比例法)により完成工事高及び完成工事原価を計上しております。予想工事総原価の見積りによって進捗率が変動するため、想定していなかった原価の発生等により進捗率が変動した場合は、完成工事高及び完成工事原価が影響を受け、当社グループの業績を変動させる可能性があります。
また、連結会計年度末時点で大幅な損失の発生する可能性が高いと見込まれ、かつ、当該損失額を合理的に見積ることが可能な工事については、翌連結会計年度以降の損失見込額を見積り、工事損失引当金として計上しております。予期しない受注後の仕様の変更、工程遅延、資材価格・工事費等の変動によっては、工事損失引当金が不足し当社グループの業績を変動させる可能性があります。
② 棚卸資産の評価
棚卸資産の評価は、原価法(収益性の低下による簿価切下げの方法)によっております。営業循環過程から外れた滞留又は処分見込等の棚卸資産について、合理的に算定された価額によることが困難であるため、過去の実績から見積った年数及び割合を基に規則的に簿価を切り下げております。実際の正味売却価額が切下げ後の簿価と比べて大きく異なる場合は、棚卸資産の期末残高が過小もしくは過大になるほか、売上原価に影響を及ぼします。
③ 製品保証引当金
完了した請負工事に係る瑕疵担保に備えるため、将来の保証見込額を製品保証引当金として計上しております。見積りには、個別に見積可能なものについては、その見積額を計上しておりますが、多くの請負工事は個別の見積りが困難であるため、主に過去2年間の実績を基礎に見積りを行っております。しかし、想定を上回る重大な瑕疵や事故等の品質問題が発生した場合は、将来の業績が変動します。
④ 固定資産の減損
当社グループは、固定資産の減損の兆候判定、認識及び測定にあたり、将来の事業計画を基礎とした各資産グループの将来キャッシュ・フローの見積りを行っております。その将来キャッシュ・フローの見積りを修正した場合には、評価の結果が変わり、将来の業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について定期的に回収可能性を検討し、当該資産の回収が不確実と考えられる部分に対して評価性引当額を計上しております。回収可能性の判断においては、将来の課税所得見込額等を考慮して、将来の税金負担額を軽減する効果を有すると考えられる範囲で繰延税金資産を計上しております。
将来の課税所得見込額は業績等により変動するため、課税所得の見積りに影響を与える要因が発生した場合や予期しない変化などが生じた場合は、回収可能性の評価の見直しを行うため、当期純損益額が変動する可能性があります。
⑥ 退職給付債務及び費用
当社グループの退職給付債務及び費用は、死亡率、退職率、昇給率や給与の変更及び割引率等の数理計算上で設定される前提条件や年金資産の長期期待運用収益率に基づき算出されています。
割引率は、日本の国債の利回りをもとに、退職給付の支払見込期間及び支払見込期間ごとの金額を反映した単一の加重平均割引率を使用して算出しております。また、長期期待運用収益率については、過去の運用実績と将来収益に対する予測を評価することにより設定しております。
これらの前提条件の見積りは合理的であると判断しておりますが、割引率の低下が数理計算上の退職給付債務の増加をもたらす可能性があるなど、主要な前提条件が実際の結果と異なった場合、退職給付債務及び費用が変動し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 経営成績
当連結会計年度における世界経済の状況につきましては、中国・欧州における景気の減速や米中の貿易摩擦に端を発する世界的な貿易量の減少などを背景に、2019年の成長率が金融危機直後であった2009年以来の低い水準に留まったことに加え、世界的に感染が拡大した新型コロナウイルスの影響により、IMFが2020年のマイナス経済成長の見通しを発表するなど、経済への深刻な打撃が見込まれております。
当社グループを取り巻く事業環境につきましては、主要市場である電子産業分野においてメモリー投資の抑制が続いたものの、生産水準は高いレベルで推移し、加えて下期以降、国内・台湾を中心に半導体関連の大規模な設備投資が続くなど想定以上に活発な動きが続きました。また、一般産業分野においても設備投資・生産活動は堅調に推移しました。2020年の年初以降、新型コロナウイルス感染症の拡大につれて主に海外との物流や人の動きに混乱がみられましたが、業績に大きな影響を与えるレベルの投資計画の中止や工場の停止・操業度の低下などは発生しておらず、当連結会計年度の業績に与える影響は限定的なものに留まっております。
当連結会計年度は、2019年度~2021年度を対象とした中期経営計画(以下、「19中計」という。)のもと、「電子産業分野の拡大」「機能商品事業の強化」「新規事業の創出」を重点分野とし、注力してまいりました。その結果、受注高・売上高は2期連続で、営業利益は2007年3月期以来となる、過去最高を更新し、受注高及び営業利益、売上高営業利益率、ROEについては19中計の最終年度である2021年度の目標値を上回る結果となりました。この結果は主に、電子産業分野における売上拡大、プラント事業の収益性改善、ソリューション事業の伸長などによるものであり、当連結会計年度の業績は、当社グループが目指している方向性・戦略が正しい道にあることを示しているものと評価しております。しかしながら、安定した収益構造の確立にはまだ至っていないと認識しており、引き続き、安定的・継続的に好業績を達成できる収益構造の確立を目指してまいります。
前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 前期比 | 19中計目標値 | ||
期初計画 | 実績 | (2021年度) | |||
受注高(百万円) | 103,838 | 95,000 | 104,986 | +1.1% | 100,000以上 |
売上高(百万円) | 92,273 | 96,000 | 96,515 | +4.6% | 100,000以上 |
営業利益(百万円) | 6,558 | 6,600 | 9,908 | +51.1% | 7,000以上 |
売上高営業利益率(%) | 7.1 | 6.9 | 10.3 | ― | 7.0以上 |
ROE(%) | 8.4 | 7.8 | 12.4 | ― | 8.0以上 |
セグメント別の経営成績は、次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分方法等を変更しているため、前連結会計年度との比較・分析は変更後の区分に基づいております。
(水処理エンジニアリング事業)
水処理エンジニアリング事業はプラント事業及びソリューション事業から構成されており、電子産業分野、一般産業分野、電力・上下水分野で事業を展開しております。
当事業においては、「電子産業分野の拡大」に向け、日本・台湾・中国における営業・技術・生産・ソリューション体制の強化、米国市場も含めた最先端の半導体ウェットプロセス分野への参入などを重点施策として取り組んでまいりました。また、「新規事業の創出」を目指し、リチウムイオンバッテリー向け精製設備や、バイオ医薬向け高度精製装置、電子材料向け高度精製処理などの事業化に向けて取組みを行ってまいりました。
一方で、当連結会計年度における事業環境は、電子産業分野においてメモリー投資の抑制が続いたほか、中国では米中貿易摩擦の影響による半導体設備投資の減速がみられたものの、国内外で生産水準が高いレベルで推移したことに加え、下期以降、国内・台湾を中心に半導体関連の大規模な設備投資が続くなど想定以上に活発な動きが続きました。また、一般産業分野においても設備投資・生産活動は堅調に推移しました。
その結果、当連結会計年度は受注高86,475百万円(前連結会計年度比1.6%増)、売上高77,921百万円(同5.5%増)、営業利益8,921百万円(同72.3%増)となりました。
受注高については、電子産業分野の設備投資の減速を受け年度の前半で受注が低調に推移しましたが、下期以降は台湾のファウンドリーによる最先端投資や、国内で当社としては過去最大規模となる大型プロジェクトを受注するなど、電子産業分野を中心に想定を大きく上回る結果となりました。これにより、翌期以降の売上高に大きな影響を与える繰越受注残高は前連結会計年度を上回る67,104百万円に達しております。
売上高については、電子産業分野において、大型投資拡大によって台湾での好調な推移がみられたほか、国内において前期受注した大型プラント案件が進捗したことや、重点施策として取り組んでいたソリューションの提案強化が奏功したことなどから、前連結会計年度を上回る売上高を計上いたしました。また一般産業分野におきましても、人手不足を背景とした合理化・省力化投資や、設備の老朽化に伴う維持・更新投資などを中心に堅調に推移したほか、電力・上下水分野では国内のソリューション事業が堅調に推移し前連結会計年度を上回る売上高を計上いたしました。
営業利益につきましては、人件費増加の影響や研究開発投資の拡大、営業・技術体制の強化などにより販売費及び一般管理費が増加しましたが、プラント事業における各プロジェクトの原価低減策の推進や受注採算性の改善への取組み、また、ソリューション事業の売上拡大による増益効果などによって、大きく増加いたしました。
当連結会計年度においては、電子産業分野における大型案件を受注・納入することに成功したことや、ソリューション提案強化による売上拡大が実現できたことから、重点分野として取り組んだ「電子産業分野の拡大」は大きな進展がみられました。一方で「新規事業の創出」については、電子材料向け高度精製処理において精製樹脂の販売が拡大するなど一定の成果がみられておりますが、その他のテーマについては事業化に向け時間を要する状況にあるため、引き続き取組みを強化してまいります。


(機能商品事業)
機能商品事業は水処理薬品、標準型水処理機器、食品加工材の3事業を展開しており、設備投資の動向の影響を受けず安定的な売上が期待できる事業分野であります。
そこで、当社グループは19中計の重点分野の一つとして「機能商品事業の強化」を掲げ、新商品の開発及び既存商品のブラッシュアップ、台湾・中国・東南アジアなど海外市場における生産・販売体制の確立などを重点施策として取り組んでまいりました。一方で、当連結会計年度における事業環境は、2019年10月の消費税増税、大型台風等の自然災害が影響したことに加え、2020年2月~3月にかけて新型コロナウイルス感染症の拡大が本格化し、一部の顧客において工場の操業度が低下するなどの影響がみられました。
その結果、当連結会計年度は受注高18,510百万円(前連結会計年度比1.2%減)、売上高18,593百万円(同0.9%増)、営業利益986百万円(同28.5%減)となりました。
水処理薬品分野においては、国内では顧客工場の統廃合や稼働率低下等の影響を受けたものの、海外での拡販が好調に推移し、前連結会計年度を上回る結果となりました。
標準型水処理機器分野においては、一部顧客の工場稼働率の低下による影響を受けたものの、コンビニエンスストア向けの浄水フィルタの販売が伸長したことなどから、前連結会計年度並の売上高を確保いたしました。
食品事業においては、造粒製品の販売が想定よりも伸びず若干の減収となりましたが、堅調な推移となりました。
営業利益につきましては、人件費や新商品開発投資の増加、海外での体制構築などにより売上高以上に売上原価、販売費及び一般管理費が増加した結果減少いたしました。
当連結会計年度においては、新商品の開発及び既存商品のブラッシュアップとして、新たな水処理薬品の開発や医療・研究機関向け製品のリニューアルを進めたほか、台湾・中国において水処理薬品や標準型水処理機器の販売実績を拡大させるなど一定の成果がみられたものの、開発費用や海外での体制構築に伴う販管費の増加を吸収できるほどの売上増加には至っておらず、さらなる売上の拡大、収益性の向上が必要であるものと認識しております。

生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 生産高(百万円) | 前年同期比(%) |
水処理エンジニアリング事業 | 71,348 | +4.2 |
機能商品事業 | 8,991 | +9.7 |
合計 | 80,340 | +4.8 |
(注) 1 上記の金額は販売価格をもって表示しております。
2 セグメント間取引については、相殺消去しております。
3 上記の金額には消費税等は含まれておりません。
4 当連結会計年度より、報告セグメントの区分方法を変更しているため、前年同期比については組替え後の数値に基づき算出しております。
② 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 受注高(百万円) | 前年同期比(%) | 受注残高(百万円) | 前年同期比(%) |
水処理エンジニアリング事業 | 86,475 | +1.6 | 67,104 | +14.6 |
機能商品事業 | 18,510 | △1.2 | 733 | △10.1 |
合計 | 104,986 | +1.1 | 67,837 | +14.3 |
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 上記の金額には消費税等は含まれておりません。
3 当連結会計年度より、報告セグメントの区分方法を変更しているため、前年同期比については組替え後の数値に基づき算出しております。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 販売高(百万円) | 前年同期比(%) |
水処理エンジニアリング事業 | 77,921 | +5.5 |
機能商品事業 | 18,593 | +0.9 |
合計 | 96,515 | +4.6 |
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 当連結会計年度より、報告セグメントの区分方法を変更しているため、前年同期比については組替え後の数値に基づき算出しております。
3 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合
相手先 | 前連結会計年度 | 当連結会計年度 | ||
金額(百万円) | 割合(%) | 金額(百万円) | 割合(%) | |
ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング株式会社 | ― | ― | 11,049 | 11.4 |
4 前連結会計年度のソニーセミコンダクタマニュファクチャリング株式会社については、当該割合が100分の10未満のため記載を省略しております。
5 上記の金額には消費税等は含まれておりません。
(2) 財政状態
(資産)
当連結会計年度末における総資産の残高は、前連結会計年度末に比べ190百万円増加し、101,448百万円となりました。
流動資産は、主に大口の売掛金回収による売上債権の減少やリース投資資産の償却による減少があった一方で、現金及び預金の増加、メンテナンスや工事案件の増加に伴う商品及び製品の増加などによって前連結会計年度末に比べ41百万円増加し、76,078百万円となりました。
固定資産は、繰延税金資産の増加などによって前連結会計年度末から148百万円増加し、25,369百万円となりました。
(負債)
当連結会計年度末における負債の残高は、前連結会計年度末に比べ5,871百万円減少し、40,590百万円となりました。
流動負債は、原材料や工事代金の支払が進んだことから支払手形及び買掛金が減少したことに加え、営業活動によるキャッシュ・フローの改善と長期借入金の調達によって短期借入金が減少したことなどから、前連結会計年度末に比べ7,689百万円減少し、32,240百万円となりました。
固定負債は、長期借入金の調達によって前連結会計年度末から1,818百万円増加し、8,349百万円となりました。なお、当連結会計年度末における借入金合計は前連結会計年度末に比べ3,919百万円減少し、9,740百万円となっております。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産の残高は、前連結会計年度末に比べ6,061百万円増加し、60,857百万円となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益の計上等に伴う利益剰余金6,114百万円の増加によるものであります。
セグメントごとの資産は、次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分方法等を変更しているため、前連結会計年度との比較・分析は変更後の区分に基づいております。
水処理エンジニアリング事業の資産の残高は、前連結会計年度末に比べ867百万円減少し、78,347百万円となりました。これは主に、売上債権、リース投資資産の減少によるものであります。
機能商品事業の資産の残高は、前連結会計年度末に比べ822百万円増加し、18,420百万円となりました。これは主に商品及び製品の増加によるものであります。
(3) キャッシュ・フロー
(資本の財源及び資金の流動性に係る情報)
当社グループにおける資金の配分方針については、次のとおりであります。
成長投資については、新たな中期経営計画において策定した3つの重点分野に対して経営資源を重点的に配分していく方針であります。いずれの重点分野も戦略の実現には研究開発の強化が必須であるため、連結売上高の2.5%を目途に技術研究費を増加させ、重点分野に集中的に資金を配分する方針であります。設備投資についても同様に重点分野へ集中的に資金の配分を行ってまいります。
株主還元についても、重要な経営課題の一つとして考えており、安定的かつ継続的な配当の実施を基本方針とした上で、収益の状況を勘案した利益配分に努めることとしております。
また、当社グループは事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としており、短期の運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入、設備投資や長期の運転資金は金融機関からの長期借入を基本としております。
これらの資金の配分方針や資金の源泉についての考え方については、新型コロナウイルス感染症が拡大している状況においても基本的な方針に変更はありません。今後、当連結会計年度に受注した大型の半導体案件対応の支出など運転資金の需要が増加する見込みであるほか、事業強化に向けた重点分野への研究開発投資や設備投資による支出が増加する見込みでありますが、これらの資金は上記の方針のとおり、自己資金及び金融機関からの借入によって賄う予定であります。なお、当連結会計年度末現在においては、新型コロナウイルス感染症の拡大によって当社グループの資金繰りの状況に重大な影響は顕在化しておりませんが、今後「2 事業等のリスク」に記載したようのリスクが顕在化した場合は、当社グループの資金繰りにも影響を及ぼす可能性があります。
(キャッシュ・フローの状況)
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ2,495百万円増加し、当連結会計年度末には13,772百万円となりました。活動ごとのキャッシュ・フローの状況は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当社グループは、水処理エンジニアリング事業が売上高の80.7%を占めており、同事業のキャッシュ・フローの状況によってグループ全体のキャッシュ・フローが大きく変動します。中でもプラント事業においては長期にわたる大型プラント建設工事を行っており、それらの工事代金の回収時期、原材料・外注費等の支払時期などによって営業活動によるキャッシュ・フローが大きく増減することがあります。また、設備を自らが設置・所有し、顧客にサービスを提供する水処理加工業務においては、設備の製作から資金の回収までが長期にわたるため設備の製作時においては支出が先行する傾向にあります。
当連結会計年度における営業活動によって得られた資金は、前連結会計年度に比べ2,906百万円増加し、8,553百万円となりました。過去最高となる税金等調整前当期純利益9,850百万円を計上したことに加え、国内において大型プラント工事の工事代金の回収が進んだことでキャッシュ・フローが改善いたしました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によって支出された資金は、前連結会計年度に比べ852百万円増加し、1,006百万円となりました。主に有形固定資産の取得781百万円によるものであり、継続的な生産設備の増強、研究開発機能の充実・強化等を目的とした設備投資であります。設備投資の概要については、「第3 設備の状況 1 設備投資等の概要」をご参照ください。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によって支出された資金は、前連結会計年度に比べ2,247百万円増加し、5,007百万円となりました。当連結会計年度はグループの所要資金として、金融機関より長期借入金として3,000百万円の調達を実施したことに加え、営業活動によるキャッシュ・フローが改善したことで短期借入金の返済が進んでおります。また、継続的な増配の実施により配当金の支払額が増加しております。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、連結貸借対照表上の資産、負債の計上額、および連結損益計算書上の収益、費用の計上額に影響を与える見積り及び仮定を使用しております。連結財務諸表に与える影響が大きいと考えられる項目・事象は以下のとおりであります。
なお、以下の見積りを行うにあたり、新型コロナウイルス感染症の影響については、長期化は避けられないと想定したものの、現時点で当社グループの業績に大きな影響を与えるレベルの投資案件の中止・延期、工場停止等は発生していないこと、国内・台湾の大型受注残案件は順調に進捗する見通しであること、台湾・中国市場は投資・生産ともに高水準であり、積極的な投資も計画されていることなどから、翌年度の連結財務諸表への影響は限定的なものに留まると仮定した上で、以下の見積りを行っております。
① 工事契約に係る会計処理
工事契約のうち、当連結会計年度末までの進捗部分について成果の確実性が認められる工事については、工事進行基準(工事の進捗率の見積りは原価比例法)により完成工事高及び完成工事原価を計上しております。予想工事総原価の見積りによって進捗率が変動するため、想定していなかった原価の発生等により進捗率が変動した場合は、完成工事高及び完成工事原価が影響を受け、当社グループの業績を変動させる可能性があります。
また、連結会計年度末時点で大幅な損失の発生する可能性が高いと見込まれ、かつ、当該損失額を合理的に見積ることが可能な工事については、翌連結会計年度以降の損失見込額を見積り、工事損失引当金として計上しております。予期しない受注後の仕様の変更、工程遅延、資材価格・工事費等の変動によっては、工事損失引当金が不足し当社グループの業績を変動させる可能性があります。
② 棚卸資産の評価
棚卸資産の評価は、原価法(収益性の低下による簿価切下げの方法)によっております。営業循環過程から外れた滞留又は処分見込等の棚卸資産について、合理的に算定された価額によることが困難であるため、過去の実績から見積った年数及び割合を基に規則的に簿価を切り下げております。実際の正味売却価額が切下げ後の簿価と比べて大きく異なる場合は、棚卸資産の期末残高が過小もしくは過大になるほか、売上原価に影響を及ぼします。
③ 製品保証引当金
完了した請負工事に係る瑕疵担保に備えるため、将来の保証見込額を製品保証引当金として計上しております。見積りには、個別に見積可能なものについては、その見積額を計上しておりますが、多くの請負工事は個別の見積りが困難であるため、主に過去2年間の実績を基礎に見積りを行っております。しかし、想定を上回る重大な瑕疵や事故等の品質問題が発生した場合は、将来の業績が変動します。
④ 固定資産の減損
当社グループは、固定資産の減損の兆候判定、認識及び測定にあたり、将来の事業計画を基礎とした各資産グループの将来キャッシュ・フローの見積りを行っております。その将来キャッシュ・フローの見積りを修正した場合には、評価の結果が変わり、将来の業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について定期的に回収可能性を検討し、当該資産の回収が不確実と考えられる部分に対して評価性引当額を計上しております。回収可能性の判断においては、将来の課税所得見込額等を考慮して、将来の税金負担額を軽減する効果を有すると考えられる範囲で繰延税金資産を計上しております。
将来の課税所得見込額は業績等により変動するため、課税所得の見積りに影響を与える要因が発生した場合や予期しない変化などが生じた場合は、回収可能性の評価の見直しを行うため、当期純損益額が変動する可能性があります。
⑥ 退職給付債務及び費用
当社グループの退職給付債務及び費用は、死亡率、退職率、昇給率や給与の変更及び割引率等の数理計算上で設定される前提条件や年金資産の長期期待運用収益率に基づき算出されています。
割引率は、日本の国債の利回りをもとに、退職給付の支払見込期間及び支払見込期間ごとの金額を反映した単一の加重平均割引率を使用して算出しております。また、長期期待運用収益率については、過去の運用実績と将来収益に対する予測を評価することにより設定しております。
これらの前提条件の見積りは合理的であると判断しておりますが、割引率の低下が数理計算上の退職給付債務の増加をもたらす可能性があるなど、主要な前提条件が実際の結果と異なった場合、退職給付債務及び費用が変動し、業績に影響を及ぼす可能性があります。