有価証券報告書-第76期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要、これらに関する経営者の視点による認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 経営成績
当連結会計年度(2020年4月1日~2021年3月31日)は、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大に伴い、国内外で人々の移動や経済活動が制限されるなど世界経済が大きく混乱する中で推移いたしました。当社の主力市場である電子産業分野においては、米国・中国による半導体摩擦が本格化する中、5G対応のスマートフォンやデータセンター向けの半導体需要が拡大し増産に向けた投資や最先端分野への投資が増加するなど、国内外で生産・投資とも高い水準で推移いたしました。また、電力・上下水分野は堅調に推移したものの、一般産業分野ではコロナ禍による影響で設備投資を抑制・延期する傾向が続いており、機能商品事業においても顧客の生産水準の低下等の影響で一部商品の販売が減少するなど厳しい状況が続いております。
このような状況の下、当社グループは「電子産業分野の拡大」「ソリューションサービスの強化」「新規事業の創出」を重点分野として掲げ、国内外での移動や事業活動に制約がある中、各種のコミュニケーションツールの導入や、エンジニアリング、ソリューションサービス及び各種の管理業務のデジタル化を進めるなどリモートでの業務推進体制の拡充を図り、感染拡大の防止と事業活動の両立に努めてまいりました。
この結果、受注高は大型案件の受注があった前期を下回ったものの、売上高は国内外において大型案件の工事が順調に進捗したことによって過去最高となる1,000億円を上回る売上を達成し、利益面についても工事案件における各種のコストダウン施策やコロナ禍の影響で旅費交通費などの営業経費を中心に販管費が減少したことによって、最高益であった前期に次ぐ高い水準を達成しております。また、ROE(自己資本当期純利益率)についても期初の計画を上回る結果となりました。
セグメント別の経営成績は、次のとおりであります。
(水処理エンジニアリング事業)

■受注高
受注高は前連結会計年度比11.9%減の76,227百万円となりました。電子産業分野では、米中における半導体摩擦や世界的な半導体不足、先端半導体の開発競争などを背景に台湾・中国で活発な設備投資が続くなど海外では好調に推移いたしましたが、国内において前期に大型案件を受注した反動により減少いたしました。また一般産業分野はコロナ禍によって国内外で設備投資の延期・抑制傾向が続いたことにより受注が減少いたしました。電力・上下水分野は概ね前期並の水準での推移となりました。
■売上高
売上高は前連結会計年度比5.8%増の82,424百万円となりました。電子産業分野では国内で前期に受注した大型案件の工事が順調に進捗したこと、台湾・中国など海外において大型の設備投資が続いたことなどからプラント事業の売上が伸長したことに加え、ソリューション事業についても高い生産水準を背景に堅調な推移がみられました。一般産業分野につきましては前期繰越受注残となった案件の工事は順調に進捗いたしましたが、受注の減少が影響し売上も減少いたしました。電力・上下水分野は受注高と同様、概ね前期並の水準で推移いたしました。
■営業利益
営業利益は前連結会計年度比5.1%減の8,466百万円となりました。売上高が増加する中、営業経費など販管費も減少したものの、前期に比較的採算性の良い案件やコストダウン効果の大きかった案件の売上が集中した反動で総利益率が低下したことが影響しております。

(機能商品事業)

■受注高・売上高
受注高は前連結会計年度比0.9%減の18,336百万円、売上高は前連結会計年度比2.0%減の18,213百万円となりました。
水処理薬品事業は、生産水準の低下が影響した自動車など一般産業向けの販売の低下や、コロナ禍の影響で台湾や中国など海外向けの展開が遅れたことなどが影響いたしましたが、電子産業向けの各種の処理剤や除菌・消臭用の微酸性電解水であるオルプラスなどの販売が好調に推移し、前期比では若干の減少となりました。
標準型水処理機器・フィルタ事業は、医療機関に向けた検査用の純水装置や飲料ディスペンサー用の浄水フィルタなどの販売が減少いたしましたが、研究機関などにラボ用の純水・超純水製造装置の販売が堅調に推移したことにより、前期並の売上を確保しております。
食品事業は外食向けの減少が影響いたしましたが、巣ごもり消費など家庭用食品向けの商品は健闘し、前期比では微減に留まっております。
■営業利益
営業利益は前連結会計年度比12.8%増の1,113百万円となりました。水処理薬品事業、食品事業の売上が減少いたしましたが、製造部門における間接経費や営業経費などの減少によって利益率が改善したことが影響しております。

生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 上記の金額は販売価格をもって表示しております。
2 セグメント間取引については、相殺消去しております。
3 上記の金額には消費税等は含まれておりません。
② 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 上記の金額には消費税等は含まれておりません。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合
3 前連結会計年度のTaiwan Semiconductor Manufacturing Company, Ltd.については、当該割合が100分の10未満のため記載を省略しております。
4 上記の金額には消費税等は含まれておりません。
(2) 財政状態
(資産)
当連結会計年度末における総資産の残高は、前連結会計年度末に比べ13,563百万円増加し、115,011百万円となりました。
流動資産は、主にリース投資資産の償却による減少があった一方で、工事進行基準による売上に伴う売掛金の計上や水処理加工受託用設備の建設に伴う仕掛品の増加などによって前連結会計年度末に比べ13,623百万円増加し、89,702百万円となりました。
固定資産は、株価上昇に伴う投資有価証券の含み益の増加があった一方で、建物の撤去による減少などがあった影響で前連結会計年度末から60百万円減少し、25,308百万円となりました。
(負債)
当連結会計年度末における負債の残高は、前連結会計年度末に比べ7,063百万円増加し、47,654百万円となりました。
流動負債は、工事案件や水処理加工受託用設備に係る仕掛品の増加に伴って原材料等の仕入、それに伴う資金需要が増加したことで、仕入債務や短期借入金が増加いたしました。その結果、前連結会計年度末に比べ8,508百万円増加し、40,749百万円となりました。
固定負債は、主に株価上昇に伴う年金資産の増加による退職給付に係る負債の減少や、長期借入金の約定弁済によって前連結会計年度末から1,444百万円減少し、6,905百万円となりました。なお、当連結会計年度末における借入金合計は前連結会計年度末に比べ6,265百万円増加し、16,005百万円となっております。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産の残高は、前連結会計年度末に比べ6,499百万円増加し、67,357百万円となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益の計上等に伴う利益剰余金5,820百万円の増加によるものであります。
セグメントごとの資産は、次のとおりであります。
水処理エンジニアリング事業の資産の残高は、前連結会計年度末に比べ13,621百万円増加し、91,968百万円となりました。これは主に、売上債権、仕掛品の増加によるものであります。
機能商品事業の資産の残高は、前連結会計年度末に比べ1,004百万円減少し、17,415百万円となりました。これは主に商品及び製品などの棚卸資産の減少によるものであります。
(3) キャッシュ・フロー
(資本の財源及び資金の流動性に係る情報)
当社グループにおける資金の配分方針については、次のとおりであります。
成長投資については、新たな中期経営計画において策定した重点分野に対して経営資源を重点的に配分していく方針であります。いずれの重点分野も戦略の実現には研究開発の強化が必須であるため、連結売上高の2.5%を目途に技術研究費を増加させ、重点分野に集中的に資金を配分する方針であります。設備投資についても同様に重点分野へ集中的に資金の配分を行ってまいります。
株主還元についても、重要な経営課題の一つとして考えており、安定的かつ継続的な配当の実施を基本方針とした上で、収益の状況を勘案した利益配分に努めることとしております。
また、当社グループは事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としており、短期の運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入、設備投資や長期の運転資金は金融機関からの長期借入を基本としております。
これらの資金の配分方針や資金の源泉についての考え方については、新型コロナウイルス感染症が拡大している状況においても基本的な方針に変更はありません。当連結会計年度においては、電子産業分野の拡大や新規の水処理加工受託向けの設備の製作によって資金需要が増加しておりますが、今後もこの傾向は継続すると見込んでおります。なお、当連結会計年度末現在においては、新型コロナウイルス感染症の拡大によって当社グループの資金繰りの状況に重大な影響は顕在化しておりませんが、今後「2 事業等のリスク」に記載したようなリスクが顕在化した場合は、当社グループの資金繰りにも影響を及ぼす可能性があります。
(キャッシュ・フローの状況)
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ968百万円減少し、当連結会計年度末には12,804百万円となりました。活動ごとのキャッシュ・フローの状況は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当社グループは、水処理エンジニアリング事業が売上高の81.9%を占めており、同事業のキャッシュ・フローの状況によってグループ全体のキャッシュ・フローが大きく変動します。中でもプラント事業においては長期にわたる大型プラント建設工事を行っており、それらの工事代金の回収時期、原材料・外注費等の支払時期などによって営業活動によるキャッシュ・フローが大きく増減することがあります。また、設備を自らが設置・所有し、顧客にサービスを提供する水処理加工受託業務においては、設備の製作から資金の回収までが長期にわたるため設備の製作時においては支出が先行する傾向にあります。
当連結会計年度における営業活動によって支出した資金は、4,582百万円となりました(前連結会計年度は8,553百万円の収入)。税金等調整前当期純利益9,695百万円を計上したものの、国内外における大型プラント工事案件や水処理加工受託用設備の製作によって支出が先行いたしました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によって支出された資金は、前連結会計年度に比べ254百万円増加し、1,261百万円となりました。主に有形固定資産の取得965百万円によるものであり、継続的な生産設備の増強、研究開発機能の充実・強化等を目的とした設備投資であります。設備投資の概要については、「第3 設備の状況 1 設備投資等の概要」をご参照ください。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によって得られた資金は、4,927百万円となりました(前連結会計年度は5,007百万円の支出)。営業活動による資金需要が増加したことで短期借入金が増加しました。また、継続的な増配の実施により配当金の支払額が増加しております。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、連結貸借対照表上の資産、負債の計上額、及び連結損益計算書上の収益、費用の計上額に影響を与える見積り及び仮定を使用しております。連結財務諸表に与える影響が大きいと考えられる項目・事象は以下のとおりであります。
なお、以下の見積りを行うにあたり、新型コロナウイルス感染症の影響については、感染状況が収束し世界経済が本格的に回復するまでには今後も時間を要すると見込んでおりますが、現時点で当社グループの業績に大きな影響を与えるレベルの投資案件の中止・延期、工場停止等は発生していないこと、国内・台湾の大型受注残案件は順調に進捗する見通しであること、台湾・中国市場は投資・生産ともに高水準であり、積極的な投資も計画されていることなどから、翌年度の連結財務諸表への影響は限定的なものに留まると仮定した上で、以下の見積りを行っております。
(特に重要な会計上の見積り)
① 工事契約に係る会計処理
「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載しております。なお、工事原価総額の見積りにおける不確実性が大幅に変動した場合は、工事進捗度が変動し売上高及び利益の額に影響が生じることになりますが、大規模工事で大幅な変動があった場合はその影響が大きくなります。また、工事原価総額の見積りは工事損失引当金の金額にも影響します。
(その他の重要な会計上の見積り)
① 棚卸資産の評価
棚卸資産の評価は、原価法(収益性の低下による簿価切下げの方法)によっております。営業循環過程から外れた滞留又は処分見込等の棚卸資産について、合理的に算定された価額によることが困難であるため、過去の実績から見積った年数及び割合を基に規則的に簿価を切り下げております。実際の正味売却価額が切下げ後の簿価と比べて大きく異なる場合は、棚卸資産の期末残高が過小もしくは過大になるほか、売上原価に影響を及ぼします。
② 製品保証引当金
完了した請負工事に係る瑕疵担保に備えるため、将来の保証見込額を製品保証引当金として計上しております。見積りには、個別に見積可能なものについては、その見積額を計上しておりますが、多くの請負工事は個別の見積りが困難であるため、主に過去2年間の実績を基礎に見積りを行っております。しかし、想定を上回る重大な瑕疵や事故等の品質問題が発生した場合は、将来の業績が変動します。
③ 固定資産の減損
当社グループは、固定資産の減損の兆候判定、認識及び測定にあたり、将来の事業計画を基礎とした各資産グループの将来キャッシュ・フローの見積りを行っております。その将来キャッシュ・フローの見積りを修正した場合には、評価の結果が変わり、将来の業績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について定期的に回収可能性を検討し、当該資産の回収が不確実と考えられる部分に対して評価性引当額を計上しております。回収可能性の判断においては、将来の課税所得見込額等を考慮して、将来の税金負担額を軽減する効果を有すると考えられる範囲で繰延税金資産を計上しております。
将来の課税所得見込額は業績等により変動するため、課税所得の見積りに影響を与える要因が発生した場合や予期しない変化などが生じた場合は、回収可能性の評価の見直しを行うため、当期純損益額が変動する可能性があります。
⑤ 退職給付債務及び費用
当社グループの退職給付債務及び費用は、死亡率、退職率、昇給率や給与の変更及び割引率等の数理計算上で設定される前提条件や年金資産の長期期待運用収益率に基づき算出されています。
割引率は、日本の国債の利回りを基に、退職給付の支払見込期間及び支払見込期間ごとの金額を反映した単一の加重平均割引率を使用して算出しております。また、長期期待運用収益率については、過去の運用実績と将来収益に対する予測を評価することにより設定しております。
これらの前提条件の見積りは合理的であると判断しておりますが、割引率の低下が数理計算上の退職給付債務の増加をもたらす可能性があるなど、主要な前提条件が実際の結果と異なった場合、退職給付債務及び費用が変動し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 経営成績
当連結会計年度(2020年4月1日~2021年3月31日)は、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大に伴い、国内外で人々の移動や経済活動が制限されるなど世界経済が大きく混乱する中で推移いたしました。当社の主力市場である電子産業分野においては、米国・中国による半導体摩擦が本格化する中、5G対応のスマートフォンやデータセンター向けの半導体需要が拡大し増産に向けた投資や最先端分野への投資が増加するなど、国内外で生産・投資とも高い水準で推移いたしました。また、電力・上下水分野は堅調に推移したものの、一般産業分野ではコロナ禍による影響で設備投資を抑制・延期する傾向が続いており、機能商品事業においても顧客の生産水準の低下等の影響で一部商品の販売が減少するなど厳しい状況が続いております。
このような状況の下、当社グループは「電子産業分野の拡大」「ソリューションサービスの強化」「新規事業の創出」を重点分野として掲げ、国内外での移動や事業活動に制約がある中、各種のコミュニケーションツールの導入や、エンジニアリング、ソリューションサービス及び各種の管理業務のデジタル化を進めるなどリモートでの業務推進体制の拡充を図り、感染拡大の防止と事業活動の両立に努めてまいりました。
この結果、受注高は大型案件の受注があった前期を下回ったものの、売上高は国内外において大型案件の工事が順調に進捗したことによって過去最高となる1,000億円を上回る売上を達成し、利益面についても工事案件における各種のコストダウン施策やコロナ禍の影響で旅費交通費などの営業経費を中心に販管費が減少したことによって、最高益であった前期に次ぐ高い水準を達成しております。また、ROE(自己資本当期純利益率)についても期初の計画を上回る結果となりました。
区 分 | 第75期 2020年3月期 | 第76期 (当連結会計年度) 2021年3月期 | 前連結 会計年度比 | 計画比 | ||
期初計画 | 実績 | |||||
受注高 | (百万円) | 104,986 | 100,000 | 94,563 | △9.9% | △5.4% |
繰越受注残高 | (百万円) | 67,837 | 67,837 | 61,871 | △8.8% | △8.8% |
売上高 | (百万円) | 96,515 | 100,000 | 100,638 | +4.3% | +0.6% |
営業利益 | (百万円) | 9,908 | 7,200 | 9,579 | △3.3% | +33.1% |
売上高営業利益率 | (%) | 10.3 | 7.2 | 9.5 | ― | ― |
経常利益 | (百万円) | 9,929 | 7,100 | 9,900 | △0.3% | +39.4% |
親会社株主に帰属する当期純利益 | (百万円) | 7,162 | 4,700 | 7,074 | △1.2% | +50.5% |
自己資本当期純利益率(ROE) | (%) | 12.4 | 7.5 | 11.1 | ― | ― |
セグメント別の経営成績は、次のとおりであります。
(水処理エンジニアリング事業)

■受注高
受注高は前連結会計年度比11.9%減の76,227百万円となりました。電子産業分野では、米中における半導体摩擦や世界的な半導体不足、先端半導体の開発競争などを背景に台湾・中国で活発な設備投資が続くなど海外では好調に推移いたしましたが、国内において前期に大型案件を受注した反動により減少いたしました。また一般産業分野はコロナ禍によって国内外で設備投資の延期・抑制傾向が続いたことにより受注が減少いたしました。電力・上下水分野は概ね前期並の水準での推移となりました。
■売上高
売上高は前連結会計年度比5.8%増の82,424百万円となりました。電子産業分野では国内で前期に受注した大型案件の工事が順調に進捗したこと、台湾・中国など海外において大型の設備投資が続いたことなどからプラント事業の売上が伸長したことに加え、ソリューション事業についても高い生産水準を背景に堅調な推移がみられました。一般産業分野につきましては前期繰越受注残となった案件の工事は順調に進捗いたしましたが、受注の減少が影響し売上も減少いたしました。電力・上下水分野は受注高と同様、概ね前期並の水準で推移いたしました。
■営業利益
営業利益は前連結会計年度比5.1%減の8,466百万円となりました。売上高が増加する中、営業経費など販管費も減少したものの、前期に比較的採算性の良い案件やコストダウン効果の大きかった案件の売上が集中した反動で総利益率が低下したことが影響しております。

(機能商品事業)

■受注高・売上高
受注高は前連結会計年度比0.9%減の18,336百万円、売上高は前連結会計年度比2.0%減の18,213百万円となりました。
水処理薬品事業は、生産水準の低下が影響した自動車など一般産業向けの販売の低下や、コロナ禍の影響で台湾や中国など海外向けの展開が遅れたことなどが影響いたしましたが、電子産業向けの各種の処理剤や除菌・消臭用の微酸性電解水であるオルプラスなどの販売が好調に推移し、前期比では若干の減少となりました。
標準型水処理機器・フィルタ事業は、医療機関に向けた検査用の純水装置や飲料ディスペンサー用の浄水フィルタなどの販売が減少いたしましたが、研究機関などにラボ用の純水・超純水製造装置の販売が堅調に推移したことにより、前期並の売上を確保しております。
食品事業は外食向けの減少が影響いたしましたが、巣ごもり消費など家庭用食品向けの商品は健闘し、前期比では微減に留まっております。
■営業利益
営業利益は前連結会計年度比12.8%増の1,113百万円となりました。水処理薬品事業、食品事業の売上が減少いたしましたが、製造部門における間接経費や営業経費などの減少によって利益率が改善したことが影響しております。

生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 生産高(百万円) | 前年同期比(%) |
水処理エンジニアリング事業 | 79,125 | +10.9 |
機能商品事業 | 8,688 | △3.4 |
合計 | 87,814 | +9.3 |
(注) 1 上記の金額は販売価格をもって表示しております。
2 セグメント間取引については、相殺消去しております。
3 上記の金額には消費税等は含まれておりません。
② 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 受注高(百万円) | 前年同期比(%) | 受注残高(百万円) | 前年同期比(%) |
水処理エンジニアリング事業 | 76,227 | △11.9 | 61,014 | △9.1 |
機能商品事業 | 18,336 | △0.9 | 857 | +16.9 |
合計 | 94,563 | △9.9 | 61,871 | △8.8 |
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 上記の金額には消費税等は含まれておりません。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 販売高(百万円) | 前年同期比(%) |
水処理エンジニアリング事業 | 82,424 | +5.8 |
機能商品事業 | 18,213 | △2.0 |
合計 | 100,638 | +4.3 |
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合
相手先 | 前連結会計年度 | 当連結会計年度 | ||
金額(百万円) | 割合(%) | 金額(百万円) | 割合(%) | |
ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング株式会社 | 11,049 | 11.4 | 12,371 | 12.3 |
Taiwan Semiconductor Manufacturing Company, Ltd. | - | - | 10,820 | 10.8 |
3 前連結会計年度のTaiwan Semiconductor Manufacturing Company, Ltd.については、当該割合が100分の10未満のため記載を省略しております。
4 上記の金額には消費税等は含まれておりません。
(2) 財政状態
(資産)
当連結会計年度末における総資産の残高は、前連結会計年度末に比べ13,563百万円増加し、115,011百万円となりました。
流動資産は、主にリース投資資産の償却による減少があった一方で、工事進行基準による売上に伴う売掛金の計上や水処理加工受託用設備の建設に伴う仕掛品の増加などによって前連結会計年度末に比べ13,623百万円増加し、89,702百万円となりました。
固定資産は、株価上昇に伴う投資有価証券の含み益の増加があった一方で、建物の撤去による減少などがあった影響で前連結会計年度末から60百万円減少し、25,308百万円となりました。
(負債)
当連結会計年度末における負債の残高は、前連結会計年度末に比べ7,063百万円増加し、47,654百万円となりました。
流動負債は、工事案件や水処理加工受託用設備に係る仕掛品の増加に伴って原材料等の仕入、それに伴う資金需要が増加したことで、仕入債務や短期借入金が増加いたしました。その結果、前連結会計年度末に比べ8,508百万円増加し、40,749百万円となりました。
固定負債は、主に株価上昇に伴う年金資産の増加による退職給付に係る負債の減少や、長期借入金の約定弁済によって前連結会計年度末から1,444百万円減少し、6,905百万円となりました。なお、当連結会計年度末における借入金合計は前連結会計年度末に比べ6,265百万円増加し、16,005百万円となっております。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産の残高は、前連結会計年度末に比べ6,499百万円増加し、67,357百万円となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益の計上等に伴う利益剰余金5,820百万円の増加によるものであります。
セグメントごとの資産は、次のとおりであります。
水処理エンジニアリング事業の資産の残高は、前連結会計年度末に比べ13,621百万円増加し、91,968百万円となりました。これは主に、売上債権、仕掛品の増加によるものであります。
機能商品事業の資産の残高は、前連結会計年度末に比べ1,004百万円減少し、17,415百万円となりました。これは主に商品及び製品などの棚卸資産の減少によるものであります。
(3) キャッシュ・フロー
(資本の財源及び資金の流動性に係る情報)
当社グループにおける資金の配分方針については、次のとおりであります。
成長投資については、新たな中期経営計画において策定した重点分野に対して経営資源を重点的に配分していく方針であります。いずれの重点分野も戦略の実現には研究開発の強化が必須であるため、連結売上高の2.5%を目途に技術研究費を増加させ、重点分野に集中的に資金を配分する方針であります。設備投資についても同様に重点分野へ集中的に資金の配分を行ってまいります。
株主還元についても、重要な経営課題の一つとして考えており、安定的かつ継続的な配当の実施を基本方針とした上で、収益の状況を勘案した利益配分に努めることとしております。
また、当社グループは事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としており、短期の運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入、設備投資や長期の運転資金は金融機関からの長期借入を基本としております。
これらの資金の配分方針や資金の源泉についての考え方については、新型コロナウイルス感染症が拡大している状況においても基本的な方針に変更はありません。当連結会計年度においては、電子産業分野の拡大や新規の水処理加工受託向けの設備の製作によって資金需要が増加しておりますが、今後もこの傾向は継続すると見込んでおります。なお、当連結会計年度末現在においては、新型コロナウイルス感染症の拡大によって当社グループの資金繰りの状況に重大な影響は顕在化しておりませんが、今後「2 事業等のリスク」に記載したようなリスクが顕在化した場合は、当社グループの資金繰りにも影響を及ぼす可能性があります。
(キャッシュ・フローの状況)
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ968百万円減少し、当連結会計年度末には12,804百万円となりました。活動ごとのキャッシュ・フローの状況は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当社グループは、水処理エンジニアリング事業が売上高の81.9%を占めており、同事業のキャッシュ・フローの状況によってグループ全体のキャッシュ・フローが大きく変動します。中でもプラント事業においては長期にわたる大型プラント建設工事を行っており、それらの工事代金の回収時期、原材料・外注費等の支払時期などによって営業活動によるキャッシュ・フローが大きく増減することがあります。また、設備を自らが設置・所有し、顧客にサービスを提供する水処理加工受託業務においては、設備の製作から資金の回収までが長期にわたるため設備の製作時においては支出が先行する傾向にあります。
当連結会計年度における営業活動によって支出した資金は、4,582百万円となりました(前連結会計年度は8,553百万円の収入)。税金等調整前当期純利益9,695百万円を計上したものの、国内外における大型プラント工事案件や水処理加工受託用設備の製作によって支出が先行いたしました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によって支出された資金は、前連結会計年度に比べ254百万円増加し、1,261百万円となりました。主に有形固定資産の取得965百万円によるものであり、継続的な生産設備の増強、研究開発機能の充実・強化等を目的とした設備投資であります。設備投資の概要については、「第3 設備の状況 1 設備投資等の概要」をご参照ください。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によって得られた資金は、4,927百万円となりました(前連結会計年度は5,007百万円の支出)。営業活動による資金需要が増加したことで短期借入金が増加しました。また、継続的な増配の実施により配当金の支払額が増加しております。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、連結貸借対照表上の資産、負債の計上額、及び連結損益計算書上の収益、費用の計上額に影響を与える見積り及び仮定を使用しております。連結財務諸表に与える影響が大きいと考えられる項目・事象は以下のとおりであります。
なお、以下の見積りを行うにあたり、新型コロナウイルス感染症の影響については、感染状況が収束し世界経済が本格的に回復するまでには今後も時間を要すると見込んでおりますが、現時点で当社グループの業績に大きな影響を与えるレベルの投資案件の中止・延期、工場停止等は発生していないこと、国内・台湾の大型受注残案件は順調に進捗する見通しであること、台湾・中国市場は投資・生産ともに高水準であり、積極的な投資も計画されていることなどから、翌年度の連結財務諸表への影響は限定的なものに留まると仮定した上で、以下の見積りを行っております。
(特に重要な会計上の見積り)
① 工事契約に係る会計処理
「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載しております。なお、工事原価総額の見積りにおける不確実性が大幅に変動した場合は、工事進捗度が変動し売上高及び利益の額に影響が生じることになりますが、大規模工事で大幅な変動があった場合はその影響が大きくなります。また、工事原価総額の見積りは工事損失引当金の金額にも影響します。
(その他の重要な会計上の見積り)
① 棚卸資産の評価
棚卸資産の評価は、原価法(収益性の低下による簿価切下げの方法)によっております。営業循環過程から外れた滞留又は処分見込等の棚卸資産について、合理的に算定された価額によることが困難であるため、過去の実績から見積った年数及び割合を基に規則的に簿価を切り下げております。実際の正味売却価額が切下げ後の簿価と比べて大きく異なる場合は、棚卸資産の期末残高が過小もしくは過大になるほか、売上原価に影響を及ぼします。
② 製品保証引当金
完了した請負工事に係る瑕疵担保に備えるため、将来の保証見込額を製品保証引当金として計上しております。見積りには、個別に見積可能なものについては、その見積額を計上しておりますが、多くの請負工事は個別の見積りが困難であるため、主に過去2年間の実績を基礎に見積りを行っております。しかし、想定を上回る重大な瑕疵や事故等の品質問題が発生した場合は、将来の業績が変動します。
③ 固定資産の減損
当社グループは、固定資産の減損の兆候判定、認識及び測定にあたり、将来の事業計画を基礎とした各資産グループの将来キャッシュ・フローの見積りを行っております。その将来キャッシュ・フローの見積りを修正した場合には、評価の結果が変わり、将来の業績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について定期的に回収可能性を検討し、当該資産の回収が不確実と考えられる部分に対して評価性引当額を計上しております。回収可能性の判断においては、将来の課税所得見込額等を考慮して、将来の税金負担額を軽減する効果を有すると考えられる範囲で繰延税金資産を計上しております。
将来の課税所得見込額は業績等により変動するため、課税所得の見積りに影響を与える要因が発生した場合や予期しない変化などが生じた場合は、回収可能性の評価の見直しを行うため、当期純損益額が変動する可能性があります。
⑤ 退職給付債務及び費用
当社グループの退職給付債務及び費用は、死亡率、退職率、昇給率や給与の変更及び割引率等の数理計算上で設定される前提条件や年金資産の長期期待運用収益率に基づき算出されています。
割引率は、日本の国債の利回りを基に、退職給付の支払見込期間及び支払見込期間ごとの金額を反映した単一の加重平均割引率を使用して算出しております。また、長期期待運用収益率については、過去の運用実績と将来収益に対する予測を評価することにより設定しております。
これらの前提条件の見積りは合理的であると判断しておりますが、割引率の低下が数理計算上の退職給付債務の増加をもたらす可能性があるなど、主要な前提条件が実際の結果と異なった場合、退職給付債務及び費用が変動し、業績に影響を及ぼす可能性があります。