訂正有価証券報告書-第82期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

【提出】
2022/09/09 15:31
【資料】
PDFをみる
【項目】
63項目
(1)業績等の概要
①業績
当連結会計年度の世界経済情勢は、保護主義的な政策の台頭が懸念されるものの、米国では雇用拡大や個人所得の改善に加え、設備投資にも持ち直しの動きが見られるなど、景気の回復基調が続いています。欧州では雇用環境の改善を受けた個人消費の好調さを背景に、安定した経済成長が継続したほか、中国は輸出の増加により景気が底堅く推移するなど、総じて緩やかな回復を示しました。
当社が属するエレクトロニクス市場は、スマートフォン向けが中国市場で出荷台数が減少しているものの上位機種を中心に高機能化による1台当たりの部品数の増加が堅調に推移しています。さらにカーエレクトロニクス向けで自動車の環境対応や安全性の向上により、電装品の搭載数が飛躍的に増加し、部品需要が大幅に拡大しました。
このように当社は伸びる市場に注力し、当連結会計年度の売上高は、2017年9月1日にソニー株式会社から取得が完了したリチウムイオン二次電池事業が加わったことや、為替変動(前連結会計年度比2円44銭の円安)の影響もあり、前連結会計年度比20.8%増の1,371,842百万円となりました。
利益につきましては、原価低減の取り組みと新製品の継続的な投入を推し進めましたが、技術難度の高い新製品の立ち上げの遅れに伴う製造費用の増加や、新製品の生産拡大に係る建物および生産設備を中心とした減価償却費や、投資関連費用の増加などの減益要因により、営業利益は前連結会計年度比19.4%減の162,146百万円、税引前当期純利益は同16.3%減の167,801百万円、当社株主に帰属する当期純利益は同6.4%減の146,086百万円となりました。
事業別セグメントについては、コンポーネントは売上高が963,901百万円(前連結会計年度比20.8%増)で事業利益(※)が216,786百万円(同7.0%増)、モジュールは売上高が443,865百万円(同19.7%増)で事業損失が11,478百万円(前連結会計年度は39,512百万円の事業利益)、その他は売上高が86,042百万円(前連結会計年度比99.8%増)で事業利益が9,453百万円(同148.1%増)となりました。
(※)「事業利益」は売上高から事業に直接帰属する費用を控除した利益であります。
当連結会計年度の製品別の売上高を前連結会計年度と比較した概況は、以下のとおりです。
[コンデンサ]
この区分には、積層セラミックコンデンサなどが含まれます。
当連結会計年度は、主力の積層セラミックコンデンサについて、通信機器向けがスマートフォンの新モデル向けに新製品が大きく増加したほか、カーエレクトロニクス向けが、自動車の電装化の進展で大きく増加するなど、幅広い用途において需要が拡大し、大幅に増加しました。
その結果、コンデンサの売上高は、前連結会計年度に比べ21.7%増の449,801百万円となりました。
[圧電製品]
この区分には、表面波フィルタ、発振子、圧電センサ、セラミックフィルタなどが含まれます。
当連結会計年度は、中国スマートフォンの生産台数減少及び製品の価格下落の影響により、表面波フィルタが大きく減少しました。
その結果、圧電製品の売上高は、前連結会計年度に比べ10.6%減の152,016百万円となりました。
[その他コンポーネント]
この区分には、コイル、EMI除去フィルタ、コネクタ、センサ、サーミスタ、リチウムイオン二次電池などが含まれます。
当連結会計年度は、カーエレクトロニクス向けでコイルやEMI除去フィルタ、MEMSセンサが伸長したほか、取得が完了したリチウムイオン二次電池が加わったことから、大きく増加しました。
その結果、その他コンポーネントの売上高は、前連結会計年度に比べ45.0%増の322,332百万円となりました。
[通信モジュール]
この区分には、近距離無線通信モジュール、多層モジュール、通信機器用モジュール、樹脂多層基板、多層デバイスなどが含まれます。
当連結会計年度は、多層モジュール、通信機器用モジュールがハイエンドスマートフォン向けで特定顧客向けのシェア減少により振るいませんでしたが、近距離無線通信モジュールがスマートフォン向けやPC向け等で好調だったほか、樹脂多層基板がハイエンドスマートフォンの採用モデルでの員数増加により大きく伸長しました。
その結果、通信モジュールの売上高は、前連結会計年度に比べ21.3%増の395,003百万円となりました。
[電源他モジュール]
この区分には、電源などが含まれます。
当連結会計年度は、電源がOA機器向けなどで増加しました。
その結果、電源他モジュールの売上高は、前連結会計年度に比べ8.3%増の48,851百万円となりました。
②キャッシュ・フロー
<営業活動によるキャッシュ・フロー>当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、たな卸資産の増加が47,268百万円、売上債権の増加が30,135百万円となりましたが、キャッシュ・フローの源泉となる当期純利益が146,052百万円、減価償却費が141,625百万円、仕入債務の増加が24,873百万円となったことなどにより、225,249百万円のキャッシュ・インとなりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ18,671百万円の減少となりました。
<投資活動によるキャッシュ・フロー>当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、短期投資の減少が98,424百万円、有価証券及び投資項目の償還及び売却が57,131百万円となりましたが、設備投資が306,608百万円、事業の取得が33,648百万円、有価証券及び投資項目の購入が13,016百万円となったことなどにより、194,165百万円のキャッシュ・アウトとなりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ8,532百万円の増加となりました。
<財務活動によるキャッシュ・フロー>当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払いが51,058百万円、短期借入金の減少が32,618百万円となったことなどにより、83,585百万円のキャッシュ・アウトとなりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ71,856百万円の減少となりました。
③生産、受注及び販売の実績
イ)生産実績
当連結会計年度の製品別の生産実績は、下表のとおりであります。
生産実績
(2017年4月1日~2018年3月31日)
金額(百万円)構成比(%)前連結会計
年度比(%)
コンデンサ472,21633.228.0
圧電製品152,52710.7△14.3
その他コンポーネント343,68124.156.7
コンポーネント計968,42468.026.4
通信モジュール407,88628.628.8
電源他モジュール47,9953.46.4
モジュール計455,88132.026.0
1,424,305100.026.3

(注)1.金額は、販売価格で表示しております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3.以下の製品別諸表については、主たる事業である電子部品並びにその関連製品の生産、受注及び販売の実績を記載しております。ソニー株式会社より譲渡された電池事業を当第2四半期連結会計期間より「その他コンポーネント」に含めたことから、その他コンポーネントの「生産実績」、「受注高」、「受注残高」及び「販売実績」が前連結会計年度比で、大幅な増加となりました。
ロ)受注実績
当連結会計年度の製品別の受注高及び受注残高は、下表のとおりであります。
受注高
(2017年4月1日~2018年3月31日)
受注残高
(2018年3月31日現在)
金額
(百万円)
構成比
(%)
前連結会
計年度比
(%)
金額
(百万円)
構成比
(%)
前連結会
計年度比
(%)
コンデンサ535,85936.534.9148,54253.3137.7
圧電製品153,15310.5△0.419,7917.16.1
その他コンポーネント336,07622.948.762,31922.4176.0
コンポーネント計1,025,08869.931.9230,65282.8122.4
通信モジュール390,74826.617.338,79413.9△9.9
電源他モジュール50,8303.510.19,0643.327.9
モジュール計441,57830.116.447,85817.2△4.5
1,466,666100.026.8278,510100.081.0

(注)1.金額は、販売価格で表示しております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3.スマートフォン、カーエレクトロニクス向けを中心とした幅広い用途における電子部品の需要拡大により、コンデンサの「受注高」及び「受注残高」が前連結会計年度比で、大幅な増加となりました。
ハ)販売実績
当連結会計年度の製品別の販売実績は、下表のとおりであります。
販売実績
(2017年4月1日~2018年3月31日)
金額(百万円)構成比(%)前連結会計
年度比(%)
コンデンサ449,80132.921.7
圧電製品152,01611.1△10.6
その他コンポーネント322,33223.645.0
コンポーネント計924,14967.621.3
通信モジュール395,00328.921.3
電源他モジュール48,8513.58.3
モジュール計443,85432.419.7
1,368,003100.020.8

(注)上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積
当社グループの連結財務諸表は、米国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。ただし、関連当事者情報については、連結財務諸表規則に従って開示しております。
連結財務諸表の作成にあたって、連結会計年度末における資産・負債の計上金額、偶発資産・負債の開示情報及び収益・費用の計上金額に影響する見積や仮定を使用する必要があります。
当社グループは、連結財務諸表の作成において以下のものを重要な会計方針と考えておりますが、全ての会計方針の包括的な記載を目的としたものではありません。当社グループの重要な会計方針については連結財務諸表注記事項Ⅰに記載しております。
なお、当社グループを取り巻く環境や状況の変化により、これらの見積や仮定が実際の結果と異なる可能性があります。
イ)たな卸資産
当社グループは、たな卸資産の売却可能性や劣化度合いを定期的に見直しており、需要動向及び市況の変化に基づく過剰又は長期滞留や陳腐化を考慮して評価減を行っております。実際の需要動向又は市況が想定した見積より悪化した場合、追加の評価減が必要となる可能性があります。
ロ)有価証券及び投資有価証券の減損
当社グループは、保有する株式及び債券について、公正価値が取得原価又は償却原価の一定割合以上下落又は一定期間継続して下落した場合に、価値の下落が一時的でないと判断し、減損処理を行っております。また、債券については一定期間を超えて未実現損失が発生した場合に、売却する予定、公正価値が償却原価まで回復する前に売却する必要性及び発行体の格付等を勘案し、減損処理の必要性を判断しております。発行体の経営状態が悪化した場合、もしくは市場において悪影響を与える事象が発生した場合には、追加の減損処理が必要となる可能性があります。
ハ)長期性資産の減損
当社グループは必要に応じて、保有又は使用中の長期性資産の帳簿価額と将来の見積キャッシュ・フローに基づき算定された公正価値とを比較し、長期性資産が減損したと判断した場合、当該資産の帳簿価額が公正価値を超える金額を減損額として計上しております。また、除却対象の長期性資産については、除却予定時期を期限として耐用年数の見直しを行い、売却予定の長期性資産については、見積売却価額に基づき減損額を計上しております。将来の見積キャッシュ・フロー、公正価値及び除却予定時期並びに見積売却価額の修正がなされた場合には、評価の結果が変わり利益を減少させる可能性があります。
ニ)のれん及びその他の無形資産
当社グループは、のれん及び耐用年数を見積もることができない無形資産は償却を行わず、年1回及びその帳簿価額が公正価値を上回るような状況の変化が生じた場合に減損テストを行うこととしております。また、耐用年数の見積可能な無形資産については、その見積耐用年数に亘って償却されますが、耐用年数が不確定であると判断した場合には償却を停止し、減損テストを行うこととしております。当該資産の公正価値は、当社グループが決定した事業計画に基づき、将来キャッシュ・フローを見積った上で算定されます。当社グループは、将来キャッシュ・フロー及び公正価値の見積は合理的であると考えておりますが、予測不能な要素により将来キャッシュ・フロー及び公正価値が当初の見積を下回った場合には、当該資産の減損処理が必要となる可能性があります。
ホ)退職給付
従業員の退職給付費用及び退職給付債務は、数理計算を行う際に使用する基礎率に基づいて算出しております。基礎率には、割引率及び年金資産の長期運用利回りや、最新の統計データに基づく退職率・死亡率・昇給率が含まれます。割引率は長期国債の利回りを参考に決定しております。また、年金資産の長期運用利回りは、投資対象資産の資産区分ごとの将来収益に対する予測や過去の運用実績に加えて、長期国債の利回りなどを考慮して決定しております。基礎率の変更は、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与えます。割引率の低下(上昇)は、退職給付債務を増加(減少)させ、数理計算上の差異の償却により翌期以降の退職給付費用を増加(減少)させます。また、年金資産の長期運用利回りの低下(上昇)は、期待運用収益の減少(増加)により退職給付費用を増加(減少)させます。
へ)繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について、その実現可能性を将来の課税所得及び慎重かつ実現可能性の高い継続的なタックス・スケジュールを検討することで判断しており、繰延税金資産の全部又は一部を将来実現できないと判断した場合、相応の評価性引当金を計上しております。将来の利益計画が実現できないもしくは達成できない場合、又はその他の要因に基づき繰延税金資産の実現可能性が低下した場合、利益を減少させる可能性があります。
②当連結会計年度の経営成績等の分析
イ)経営成績
経営成績については、「第2事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)業績等の概要」をご参照下さい。
ロ)財政状態
当連結会計年度末の総資産は、主に有形固定資産、たな卸資産、売掛金の増加、短期投資、現金及び預金の減少により、前連結会計年度末に比べ162,014百万円増加し、1,797,013百万円となりました。負債は、主に買掛金、未払費用及びその他の流動負債の増加、短期借入金の減少により前連結会計年度末に比べ60,132百万円増加し、339,797百万円となりました。資本は、主に利益剰余金の増加により、前連結会計年度末に比べ101,882百万円増加し、1,457,216百万円となりました。
当連結会計年度末の株主資本比率は、前連結会計年度末に比べ1.8ポイント低下し81.1%となりました。
ハ)キャッシュ・フローの状況
キャッシュ・フローの状況については、「第2事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)業績等の概要」をご参照下さい。
ニ)資本の財源及び資金の流動性
当社グループでは、翌連結会計年度において340,000百万円の設備投資を計画しており、この設備投資及びその他の事業資金につきましては手許資金及び外部からの資金調達により対応します。
なお、当連結会計年度における借入金等の有利子負債の残高は14,487百万円となっております。また当連結会計年度における現金及び現金同等物の残高は187,910百万円となっております。