有価証券報告書-第87期(2022/04/01-2023/03/31)
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)経営成績
①経営成績の概要
当連結会計年度の世界の経済情勢は、各国の中央銀行による利上げ姿勢の維持やインフレの高止まりに加え、欧米の金融市場の混乱により景気後退への懸念が継続しました。米国では、良好な雇用情勢や堅調な個人消費が景気を下支えしていますが、住宅投資の低迷や一部金融機関の経営破綻により経済の先行きに不透明感が高まりました。欧州では、欧州中央銀行(ECB)などの金融引き締めが継続する中、ウクライナ情勢の混迷が景気下押しの要因となっています。中国では、政府の新型コロナウイルス感染症に対する政策転換を受け、経済が回復傾向にありますが、追加の景気刺激策による内需の動向に注視が必要です。日本では、コロナ禍からの正常化が進みつつある一方、物価高による個人消費の不振や外需低迷による輸出の弱含みが景気回復の重しとなっています。
当社グループが属するエレクトロニクス市場の部品需要は、前連結会計年度比で自動車生産台数の増加もありモビリティ向けは増加しましたが、スマートフォンやPCの市場低迷と在庫調整の長期化により全体としては減少しました。
そのような中、当連結会計年度の売上高は、為替変動(前連結会計年度比23円10銭の円安)の影響もあり、樹脂多層基板がスマートフォン向けで増加したほか、リチウムイオン二次電池がパワーツール向けで増加しましたが、積層セラミックコンデンサがコンピュータやスマートフォン向けで減少したことに加え、表面波フィルタや高周波モジュールがスマートフォン向けで減少しました。その結果、当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度比6.9%減の1,686,796百万円となりました。
利益につきましては、円安やコストダウンなどの増益要因はありましたが、操業度の低下や固定費の増加により、営業利益は前連結会計年度比29.8%減の297,887百万円、税引前当期純利益は同27.2%減の314,895百万円、当社株主に帰属する当期純利益は同19.2%減の253,690百万円となりました。
当連結会計年度のROIC(Return on Invested Capital)(税引前)は、棚卸資産や固定資産などの投下資本が増加したのに対し、営業利益が大きく減少したことにより、前連結会計年度比8.0ポイント減の14.6%となりました。
(注)ROIC(税引前)= 営業利益 / 期首・期末平均投下資本(固定資産+棚卸資産+売上債権-仕入
債務)
(参考)事業別セグメントROIC(税引前)
コンポーネント 2022年3月期 34.3% 2023年3月期 24.0%
デバイス・モジュール 2022年3月期 8.7% 2023年3月期 2.5%
事業別セグメントについては、コンポーネントは、積層セラミックコンデンサやインダクタの売上が減少したことにより、売上高が924,387百万円(前連結会計年度比7.4%減)で営業利益が280,121百万円(同21.2%減)、デバイス・モジュールは、リチウムイオン二次電池の売上は増加しましたが、表面波フィルタや高周波モジュールの売上が減少したことにより、売上高が760,986百万円(同6.6%減)で営業利益が20,582百万円(同70.5%減)、その他は売上高が74,564百万円(同4.8%増)で営業損失2,816百万円(前連結会計年度は営業損失1,173百万円)となりました。
なお、当第1四半期連結累計期間から事業別セグメント及び事業別セグメント内の売上高区分を変更しております。詳細については後段「(4)事業別セグメント等の変更について」をご参照ください。また、文中における前連結会計年度との比較については、前連結会計年度の金額を変更後の区分に組み替えた金額で比較分析しております(「②製品又は事業別の売上高概況」以下についても同じであります)。
②製品又は事業別の売上高概況
当連結会計年度の製品又は事業別の売上高を前連結会計年度と比較した概況は、以下のとおりであります。
[コンデンサ]
この区分には、積層セラミックコンデンサなどが含まれます。
当連結会計年度は、積層セラミックコンデンサがモビリティ向けで増加しましたが、コンピュータやスマートフォン向けで減少しました。
その結果、コンデンサの売上高は前連結会計年度に比べ6.3%減の738,841百万円となりました。
[インダクタ・EMIフィルタ]
この区分には、インダクタ、EMI除去フィルタが含まれます。
当連結会計年度は、EMI除去フィルタやインダクタがモビリティ向けで増加しましたが、インダクタがコンピュータやスマートフォン向けで減少しました。
その結果、インダクタ・EMIフィルタの売上高は前連結会計年度に比べ10.4%減の175,324百万円となりました。
[高周波・通信]
この区分には、コネクティビティモジュール、高周波モジュール、表面波フィルタ、樹脂多層基板などが含まれます。
当連結会計年度は、樹脂多層基板が増加しましたが、表面波フィルタや高周波モジュール、コネクティビティモジュールがスマートフォン向けで大きく減少しました。
その結果、高周波・通信の売上高は前連結会計年度に比べ14.1%減の453,646百万円となりました。
[エナジー・パワー]
この区分には、リチウムイオン二次電池、電源モジュールが含まれます。
当連結会計年度は、リチウムイオン二次電池がパワーツール向けで増加しました。
その結果、エナジー・パワーの売上高は前連結会計年度に比べ18.9%増の214,556百万円となりました。
[機能デバイス]
この区分には、センサ、タイミングデバイスなどが含まれます。
当連結会計年度は、センサがモビリティ向けで増加しましたが、センサやタイミングデバイスがコンピュータ向けで減少しました。
その結果、機能デバイスの売上高は前連結会計年度に比べ12.8%減の92,778百万円となりました。
③用途別の売上高概況
当連結会計年度の用途別の売上高を前連結会計年度と比較した概況は、以下のとおりであります。
[通信]
当連結会計年度はスマートフォン向けで樹脂多層基板が増加しましたが、高周波モジュールやコネクティビティモジュール、表面波フィルタ、積層セラミックコンデンサが減少しました。
その結果、通信用途の売上高は前連結会計年度に比べ15.4%減の659,244百万円となりました。
[モビリティ]
当連結会計年度は、円安による増収効果や自動車生産台数の回復もあり、積層セラミックコンデンサやEMI除去フィルタの売上が増加しました。
その結果、モビリティ用途の売上高は前連結会計年度に比べ16.0%増の390,198百万円となりました。
[コンピュータ]
当連結会計年度は、PC向けで積層セラミックコンデンサやインダクタが大きく減少しました。
その結果、コンピュータ用途の売上高は前連結会計年度に比べ24.5%減の224,714百万円となりました。
[家電]
当連結会計年度は、パワーツール向けでリチウムイオン二次電池が増加しました。
その結果、家電用途の売上高は前連結会計年度に比べ8.0%増の197,831百万円となりました。
[産業・その他]
当連結会計年度は、ヘルスケアや産業機器向けで売上が増加しましたが、代理店向けで売上が減少しました。
その結果、産業・その他用途の売上高は前連結会計年度に比べ0.7%減の214,809百万円となりました。
④生産、受注及び販売の実績
イ)生産実績
当連結会計年度のセグメント別の生産実績は、下表のとおりであります。
(注)1.金額は、販売価格で表示しております。
2.以下のセグメント別諸表については、主たる事業である電子部品並びにその関連製品の生産、受注及び販売の実績を記載しております。
ロ)受注実績
当連結会計年度のセグメント別の受注高及び受注残高は、下表のとおりであります。
(注)1.金額は、販売価格で表示しております。
2.コンピュータやスマートフォン向けで積層セラミックコンデンサの受注残高が大きく減少したことにより、コンデンサの「受注残高」が前連結会計年度末比で、大幅な減少となりました。
3.コンピュータやスマートフォン向けでインダクタの受注残高が大きく減少したことにより、インダクタ・EMIフィルタの「受注残高」が前連結会計年度末比で、大幅な減少となりました。
4.スマートフォン向けで高周波モジュール、表面波フィルタの受注残高が大きく減少したことにより、高周波・通信の「受注残高」が前連結会計年度末比で、大幅な減少となりました。
ハ)販売実績
当連結会計年度のセグメント別の販売実績は、下表のとおりであります。
ニ)用途別販売実績
当連結会計年度の用途別の販売実績は、下表のとおりであります。
(注)当社推計値に基づいております。
ホ)最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
(2)財政状態
当連結会計年度末の総資産は、売掛金や現金及び預金は減少しましたが、棚卸資産が増加したことにより、前連結会計年度末に比べ63,592百万円増加し、2,872,763百万円となりました。負債は、未払税金や買掛金の減少により、前連結会計年度末に比べ74,972百万円減少し、470,287百万円となりました。資本は、主に利益剰余金の増加により、前連結会計年度末に比べ138,564百万円増加し、2,402,476百万円となりました。株主資本比率は、前連結会計年度末に比べ3.0ポイント上昇の83.6%となりました。
(3)キャッシュ・フロー
①キャッシュ・フローの状況
<営業活動によるキャッシュ・フロー>当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、棚卸資産の増加が101,368百万円となりましたが、キャッシュ・フローの源泉となる当期純利益が253,395百万円、減価償却費が161,276百万円となったことなどにより、276,278百万円のキャッシュ・インとなりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは前連結会計年度に比べ145,180百万円の減少となりました。
<投資活動によるキャッシュ・フロー>当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、有価証券及び投資項目の償還及び売却が44,081百万円となりましたが、生産能力増強を中心とした有形固定資産の取得による支出が189,951百万円、有価証券及び投資項目の購入が38,567百万円となったことなどにより、157,850百万円のキャッシュ・アウトとなりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは前連結会計年度に比べ54,450百万円の増加となりました。
<財務活動によるキャッシュ・フロー>当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払いが92,018百万円、自己株式の取得が80,009百万円となったことなどにより、173,708百万円のキャッシュ・アウトとなりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは前連結会計年度に比べ56,203百万円の減少となりました。
②資本の財源及び資金の流動性
イ)財務戦略と経営資源の配分に関する考え方
当社グループは、健全な財務体質と高い資本効率を両立することを目指し、市場環境・競争環境に応じた最適な経営資源配分を行ってまいります。
財務体質については、事業環境の変化に機敏に対応し、持続的な利益成長を達成するとともに、厳しい環境下においても経営の安定を維持し、金融市場の市況悪化等のリスクへ備えるため自己資本の充実に努めております。また、信用格付は「AA+(信用力は極めて高く、優れた要素がある)」(格付投資情報センターによる)を取得し、資金調達が必要な場合に円滑かつ低コストの調達を可能としております。
経営資源の配分につきましては、「中期方針2024」に記載のキャピタル・アロケーション方針に基づき、資本効率と成長性を重視した投資と株主還元を行ってまいります。
資本効率については、継続的な資本効率の改善を目的としてROIC(税引前)20%以上を目標値として設定しております。また、資本コストを投資の意思決定と事業評価に反映しており、当連結会計年度末における当社グループの資本コスト(WACC)は7.5%(当社推計値)となっており、税引後ベースの比較においても安定的にROICが資本コストを上回る構造を維持しております。
株主還元については、長期的な企業価値の拡大と企業体質の強化を図りながら、1株当たり利益を増加させることにより、配当の安定的な増加に努めることを基本方針とし、中期的に配当性向30%程度を目安にDOE(株主資本配当率)4%以上を実現することといたします。また、自己株式の取得につきましても株主還元の手段として、資本効率の改善等を目的として適宜実施することといたします。
ロ)資金調達と手許流動性
当社グループは、設備投資及びその他の事業資金については、自らの事業活動により獲得した内部資金で対応することを基本方針としておりますが、事業の成長に向けた投資や運転資金のために資金需要が生ずる場合には、時々の金融市場の状況を踏まえた適切な手段により外部から調達することとしており、銀行からの借入及び国内普通社債発行による資金調達を適宜実施しております。健全な財務体質を維持し、また主要な取引先金融機関と良好な関係を構築しており、今後の事業資金の調達に関して問題はないと認識しております。
完全子会社の資金需要に対しては、原則として銀行など外部からの資金調達を行わず、当社及び関係会社からのグループファイナンスにより対応しており、資金調達の一元化と資金効率の向上を図っております。
また、当社グループは、事業活動による資金需要への機動的な対応と金融市場の市況悪化等のリスクを最小限に抑えるため、月平均売上高2.5か月~3.5か月を必要な資金流動性の水準とし、確保しております。事業の状況によりこの水準を一時的に超過する場合もありますが、キャピタル・アロケーション方針に基づく資源配分へ資金の充当を進めることにより適正化を図ってまいります。当連結会計年度における現金及び預金、短期投資、有価証券の流動性資金の残高は493,253百万円となり月平均売上高3.5か月相当の流動性を確保しております。事業投資の原資として手許資金を保有しているため、投機目的の運用は行わず、信用リスクが小さいと考えられる銀行への預金など、安全性の高い金融商品に分散して資金を保有しております。なお、当連結会計年度における社債及び借入金等の有利子負債の残高は111,999百万円となっております。また、当連結会計年度における現金及び現金同等物の残高は469,406百万円となっております。
(4)事業別セグメント等の変更について
当社グループは、2021年11月公表のVision2030及び中期方針2024において、「3層ポートフォリオ」という名称で当社グループの事業ポートフォリオの考え方を整理しました。それに伴い、当第1四半期連結累計期間より、3層ポートフォリオに合わせて事業別セグメントを変更しております。また、事業別セグメント内の売上高区分と用途別の売上高区分も変更しております。事業別セグメント及び事業別セグメント内の売上高区分並びに用途別の売上高区分の変更内容は以下のとおりです。
<事業別セグメント及び事業別セグメント内の売上高区分の変更>
<用途別の売上高区分の変更>
(5)重要な会計方針及び見積
当社グループの連結財務諸表は、米国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。ただし、関連当事者情報については、連結財務諸表規則に従って開示しております。
連結財務諸表の作成にあたって、連結会計年度末における資産・負債の計上金額、偶発資産・負債の開示情報及び収益・費用の計上金額に影響する見積や仮定を使用する必要があります。
当社グループは、連結財務諸表の作成において以下のものを重要な会計方針と考えておりますが、全ての会計方針の包括的な記載を目的としたものではありません。当社グループの重要な会計方針については連結財務諸表注記事項Ⅰに記載しております。
なお、当社グループを取り巻く環境や状況の変化により、これらの見積や仮定が実際の結果と異なる可能性があります。
イ)棚卸資産
当社グループは、棚卸資産を主として総平均法による低価法により評価しております。棚卸資産の売却可能性や劣化度合いを定期的に見直しており、需要動向及び市況の変化に基づく過剰や長期滞留、陳腐化を考慮して評価減を行っております。実際の需要動向や市況が想定した見積より悪化した場合、追加の評価減が必要となる可能性があります。
ロ)有価証券及び投資有価証券
当社グループは、市場性がなく容易に決定できる公正価値のない持分証券は、同一発行体の同一又は類似取引などの観察できる価格の変動を加減算することで測定、評価損益を純損益に計上しております。売却可能負債証券は、公正価値が取得原価又は償却原価を一定割合又は一定期間下回った場合、価格の下落が一時的でないと判断し、減損処理を行っております。また、未実現損失が一定期間を超えて発生した場合、公正価値が回復するまでに売却する予定や必要性及び発行体の格付などを考慮して、減損処理の必要性を判断しております。発行体の経営状態が悪化した場合、もしくは市場において悪影響を与える事象が発生した場合には、追加の評価損や減損処理が必要となる可能性があります。
ハ)長期性資産の減損及び処分
当社グループは、必要に応じて、事業別資産グループごとの保有及び使用中の長期性資産の帳簿価額と割引前将来見積キャッシュ・フローを比較することにより、減損の要否を判定しております。長期性資産の帳簿価額に減損が生じていると判断した場合、当該資産の帳簿価額が公正価値を超える金額を減損損失として認識しております。また、除却対象の長期性資産については、除却予定時期を期限として耐用年数の見直しを行い、売却予定の長期性資産については、帳簿価額又は売却に要する費用控除後の公正価値のうちいずれか低い価額で評価されます。割引前将来見積キャッシュ・フロー、除却予定時期及び公正価値の変更を要した場合には、追加の損失が発生する可能性があります。
ニ)のれん及びその他の無形資産
当社グループは、のれん及び耐用年数が確定できない無形資産は償却を行わず、年1回及び減損の可能性を示す事象の発生又は状況の変化が生じた時点で減損テストを行うこととしております。全てののれんは、企業結合のシナジー効果から便益を享受する報告単位に配分されます。報告単位の帳簿価額が公正価値を上回る場合、その報告単位に配分されたのれんの帳簿価額を限度とし、当該差額をのれんの減損損失として認識しております。報告単位の公正価値は、主として割引キャッシュ・フロー法により社内で評価しておりますが、必要に応じ、第三者による評価を活用しております。この手法は、将来の見積キャッシュ・フロー、報告単位ごとのリスクを反映した割引率、永久成長率等多くの見積り及び前提を使用しております。また、将来の見積キャッシュ・フローに使用される前提は、当社グループが決定した事業計画に基づいており、過去の経験、製品及び技術動向、市場データ、現在及び見込まれる世界経済の状況を考慮しております。当社グループは、将来キャッシュ・フロー及び公正価値の見積は合理的であると考えておりますが、事業遂行上予測不能の変化に起因して将来キャッシュ・フロー及び公正価値が当初の見積を下回った場合には、のれんの減損損失を追加計上する可能性があります。
ホ)退職給付
当社グループは、従業員の退職給付費用及び退職給付債務は、数理計算を行う際に使用する基礎率に基づいて算出しております。基礎率には、割引率及び年金資産の長期運用利回りや、最新の統計データに基づく退職率・死亡率・昇給率が含まれます。割引率は長期国債及び優良社債の利回りを参考に決定しております。また、年金資産の長期運用利回りは、投資対象資産の資産区分ごとの将来収益に対する予測や過去の運用実績に加えて、長期国債の利回りなどを考慮して決定しております。基礎率の変更は、当社グループの財政状態、業績及びキャッシュ・フローに影響を与えます。割引率の低下は、退職給付債務を増加させ、数理計算上の差異の償却により翌期以降の退職給付費用を増加させます。また、年金資産の長期運用利回りの低下は、期待運用収益の減少により退職給付費用を増加させます。
へ)繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について、その実現可能性を将来の課税所得及び慎重かつ実現可能性の高い継続的なタックス・スケジュール等を検討することで判断しており、繰延税金資産の全部又は一部を将来実現できないと判断した場合、相応の評価性引当金を計上しております。将来の利益計画が実現できない等の要因に基づき繰延税金資産の実現可能性が低下した場合、評価性引当金の追加計上が必要となる可能性があります。
(1)経営成績
①経営成績の概要
当連結会計年度の世界の経済情勢は、各国の中央銀行による利上げ姿勢の維持やインフレの高止まりに加え、欧米の金融市場の混乱により景気後退への懸念が継続しました。米国では、良好な雇用情勢や堅調な個人消費が景気を下支えしていますが、住宅投資の低迷や一部金融機関の経営破綻により経済の先行きに不透明感が高まりました。欧州では、欧州中央銀行(ECB)などの金融引き締めが継続する中、ウクライナ情勢の混迷が景気下押しの要因となっています。中国では、政府の新型コロナウイルス感染症に対する政策転換を受け、経済が回復傾向にありますが、追加の景気刺激策による内需の動向に注視が必要です。日本では、コロナ禍からの正常化が進みつつある一方、物価高による個人消費の不振や外需低迷による輸出の弱含みが景気回復の重しとなっています。
当社グループが属するエレクトロニクス市場の部品需要は、前連結会計年度比で自動車生産台数の増加もありモビリティ向けは増加しましたが、スマートフォンやPCの市場低迷と在庫調整の長期化により全体としては減少しました。
そのような中、当連結会計年度の売上高は、為替変動(前連結会計年度比23円10銭の円安)の影響もあり、樹脂多層基板がスマートフォン向けで増加したほか、リチウムイオン二次電池がパワーツール向けで増加しましたが、積層セラミックコンデンサがコンピュータやスマートフォン向けで減少したことに加え、表面波フィルタや高周波モジュールがスマートフォン向けで減少しました。その結果、当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度比6.9%減の1,686,796百万円となりました。
利益につきましては、円安やコストダウンなどの増益要因はありましたが、操業度の低下や固定費の増加により、営業利益は前連結会計年度比29.8%減の297,887百万円、税引前当期純利益は同27.2%減の314,895百万円、当社株主に帰属する当期純利益は同19.2%減の253,690百万円となりました。
当連結会計年度のROIC(Return on Invested Capital)(税引前)は、棚卸資産や固定資産などの投下資本が増加したのに対し、営業利益が大きく減少したことにより、前連結会計年度比8.0ポイント減の14.6%となりました。
前連結会計年度 (2021年4月1日~2022年3月31日) | 当連結会計年度 (2022年4月1日~2023年3月31日) | 増 減 | ||||
金額 (百万円) | 百分比 (%) | 金額 (百万円) | 百分比 (%) | 金額 (百万円) | 増減率 (%) | |
売上高 | 1,812,521 | 100.0 | 1,686,796 | 100.0 | △125,725 | △6.9 |
営業利益 | 424,060 | 23.4 | 297,887 | 17.7 | △126,173 | △29.8 |
税引前当期純利益 | 432,702 | 23.9 | 314,895 | 18.7 | △117,807 | △27.2 |
当社株主に帰属する 当期純利益 | 314,124 | 17.3 | 253,690 | 15.0 | △60,434 | △19.2 |
ROIC(税引前) (%) | 22.6 | - | 14.6 | - | △8.0 | - |
対米ドル平均為替レート(円) | 112.38 | - | 135.48 | - | 23.10 | - |
(注)ROIC(税引前)= 営業利益 / 期首・期末平均投下資本(固定資産+棚卸資産+売上債権-仕入
債務)
(参考)事業別セグメントROIC(税引前)
コンポーネント 2022年3月期 34.3% 2023年3月期 24.0%
デバイス・モジュール 2022年3月期 8.7% 2023年3月期 2.5%
事業別セグメントについては、コンポーネントは、積層セラミックコンデンサやインダクタの売上が減少したことにより、売上高が924,387百万円(前連結会計年度比7.4%減)で営業利益が280,121百万円(同21.2%減)、デバイス・モジュールは、リチウムイオン二次電池の売上は増加しましたが、表面波フィルタや高周波モジュールの売上が減少したことにより、売上高が760,986百万円(同6.6%減)で営業利益が20,582百万円(同70.5%減)、その他は売上高が74,564百万円(同4.8%増)で営業損失2,816百万円(前連結会計年度は営業損失1,173百万円)となりました。
なお、当第1四半期連結累計期間から事業別セグメント及び事業別セグメント内の売上高区分を変更しております。詳細については後段「(4)事業別セグメント等の変更について」をご参照ください。また、文中における前連結会計年度との比較については、前連結会計年度の金額を変更後の区分に組み替えた金額で比較分析しております(「②製品又は事業別の売上高概況」以下についても同じであります)。
②製品又は事業別の売上高概況
当連結会計年度の製品又は事業別の売上高を前連結会計年度と比較した概況は、以下のとおりであります。
[コンデンサ]
この区分には、積層セラミックコンデンサなどが含まれます。
当連結会計年度は、積層セラミックコンデンサがモビリティ向けで増加しましたが、コンピュータやスマートフォン向けで減少しました。
その結果、コンデンサの売上高は前連結会計年度に比べ6.3%減の738,841百万円となりました。
[インダクタ・EMIフィルタ]
この区分には、インダクタ、EMI除去フィルタが含まれます。
当連結会計年度は、EMI除去フィルタやインダクタがモビリティ向けで増加しましたが、インダクタがコンピュータやスマートフォン向けで減少しました。
その結果、インダクタ・EMIフィルタの売上高は前連結会計年度に比べ10.4%減の175,324百万円となりました。
[高周波・通信]
この区分には、コネクティビティモジュール、高周波モジュール、表面波フィルタ、樹脂多層基板などが含まれます。
当連結会計年度は、樹脂多層基板が増加しましたが、表面波フィルタや高周波モジュール、コネクティビティモジュールがスマートフォン向けで大きく減少しました。
その結果、高周波・通信の売上高は前連結会計年度に比べ14.1%減の453,646百万円となりました。
[エナジー・パワー]
この区分には、リチウムイオン二次電池、電源モジュールが含まれます。
当連結会計年度は、リチウムイオン二次電池がパワーツール向けで増加しました。
その結果、エナジー・パワーの売上高は前連結会計年度に比べ18.9%増の214,556百万円となりました。
[機能デバイス]
この区分には、センサ、タイミングデバイスなどが含まれます。
当連結会計年度は、センサがモビリティ向けで増加しましたが、センサやタイミングデバイスがコンピュータ向けで減少しました。
その結果、機能デバイスの売上高は前連結会計年度に比べ12.8%減の92,778百万円となりました。
③用途別の売上高概況
当連結会計年度の用途別の売上高を前連結会計年度と比較した概況は、以下のとおりであります。
[通信]
当連結会計年度はスマートフォン向けで樹脂多層基板が増加しましたが、高周波モジュールやコネクティビティモジュール、表面波フィルタ、積層セラミックコンデンサが減少しました。
その結果、通信用途の売上高は前連結会計年度に比べ15.4%減の659,244百万円となりました。
[モビリティ]
当連結会計年度は、円安による増収効果や自動車生産台数の回復もあり、積層セラミックコンデンサやEMI除去フィルタの売上が増加しました。
その結果、モビリティ用途の売上高は前連結会計年度に比べ16.0%増の390,198百万円となりました。
[コンピュータ]
当連結会計年度は、PC向けで積層セラミックコンデンサやインダクタが大きく減少しました。
その結果、コンピュータ用途の売上高は前連結会計年度に比べ24.5%減の224,714百万円となりました。
[家電]
当連結会計年度は、パワーツール向けでリチウムイオン二次電池が増加しました。
その結果、家電用途の売上高は前連結会計年度に比べ8.0%増の197,831百万円となりました。
[産業・その他]
当連結会計年度は、ヘルスケアや産業機器向けで売上が増加しましたが、代理店向けで売上が減少しました。
その結果、産業・その他用途の売上高は前連結会計年度に比べ0.7%減の214,809百万円となりました。
④生産、受注及び販売の実績
イ)生産実績
当連結会計年度のセグメント別の生産実績は、下表のとおりであります。
生産実績 (2022年4月1日~2023年3月31日) | ||||
金額(百万円) | 構成比(%) | 前連結会計 年度比(%) | ||
コンデンサ | 793,619 | 44.5 | △8.6 | |
インダクタ・EMIフィルタ | 180,392 | 10.1 | △13.9 | |
コンポーネント | 974,011 | 54.6 | △9.6 | |
高周波・通信 | 458,344 | 25.7 | △12.8 | |
エナジー・パワー | 244,374 | 13.7 | 26.2 | |
機能デバイス | 95,592 | 5.3 | △14.1 | |
デバイス・モジュール | 798,310 | 44.7 | △3.9 | |
その他 | 11,615 | 0.7 | △3.9 | |
計 | 1,783,936 | 100.0 | △7.1 |
(注)1.金額は、販売価格で表示しております。
2.以下のセグメント別諸表については、主たる事業である電子部品並びにその関連製品の生産、受注及び販売の実績を記載しております。
ロ)受注実績
当連結会計年度のセグメント別の受注高及び受注残高は、下表のとおりであります。
受注高 (2022年4月1日~2023年3月31日) | 受注残高 (2023年3月31日現在) | ||||||
金額 (百万円) | 構成比 (%) | 前連結会 計年度比 (%) | 金額 (百万円) | 構成比 (%) | 前連結会計 年度末比 (%) | ||
コンデンサ | 645,999 | 42.9 | △21.9 | 135,868 | 40.0 | △40.6 | |
インダクタ・EMIフィルタ | 156,995 | 10.4 | △23.5 | 28,923 | 8.5 | △38.8 | |
コンポーネント | 802,994 | 53.3 | △22.2 | 164,791 | 48.5 | △40.3 | |
高周波・通信 | 417,395 | 27.7 | △21.7 | 70,205 | 20.7 | △34.1 | |
エナジー・パワー | 187,886 | 12.5 | △7.4 | 77,388 | 22.8 | △25.6 | |
機能デバイス | 87,938 | 5.9 | △21.7 | 21,784 | 6.4 | △18.2 | |
デバイス・モジュール | 693,219 | 46.1 | △18.3 | 169,377 | 49.9 | △28.6 | |
その他 | 8,517 | 0.6 | △55.7 | 5,590 | 1.6 | △35.9 | |
計 | 1,504,730 | 100.0 | △20.8 | 339,758 | 100.0 | △34.9 |
(注)1.金額は、販売価格で表示しております。
2.コンピュータやスマートフォン向けで積層セラミックコンデンサの受注残高が大きく減少したことにより、コンデンサの「受注残高」が前連結会計年度末比で、大幅な減少となりました。
3.コンピュータやスマートフォン向けでインダクタの受注残高が大きく減少したことにより、インダクタ・EMIフィルタの「受注残高」が前連結会計年度末比で、大幅な減少となりました。
4.スマートフォン向けで高周波モジュール、表面波フィルタの受注残高が大きく減少したことにより、高周波・通信の「受注残高」が前連結会計年度末比で、大幅な減少となりました。
ハ)販売実績
当連結会計年度のセグメント別の販売実績は、下表のとおりであります。
販売実績 (2022年4月1日~2023年3月31日) | ||||
金額(百万円) | 構成比(%) | 前連結会計 年度比(%) | ||
コンデンサ | 738,841 | 43.8 | △6.3 | |
インダクタ・EMIフィルタ | 175,324 | 10.4 | △10.4 | |
コンポーネント | 914,165 | 54.2 | △7.1 | |
高周波・通信 | 453,646 | 26.9 | △14.1 | |
エナジー・パワー | 214,556 | 12.7 | 18.9 | |
機能デバイス | 92,778 | 5.5 | △12.8 | |
デバイス・モジュール | 760,980 | 45.1 | △6.6 | |
その他 | 11,651 | 0.7 | △11.6 | |
計 | 1,686,796 | 100.0 | △6.9 |
ニ)用途別販売実績
当連結会計年度の用途別の販売実績は、下表のとおりであります。
販売実績 (2022年4月1日~2023年3月31日) | ||||
金額(百万円) | 構成比(%) | 前連結会計 年度比(%) | ||
通信 | 659,244 | 39.1 | △15.4 | |
モビリティ | 390,198 | 23.1 | 16.0 | |
コンピュータ | 224,714 | 13.3 | △24.5 | |
家電 | 197,831 | 11.7 | 8.0 | |
産業・その他 | 214,809 | 12.8 | △0.7 | |
計 | 1,686,796 | 100.0 | △6.9 |
(注)当社推計値に基づいております。
ホ)最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
相手先 | 前連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) | ||
金額(百万円) | 割合(%) | 金額(百万円) | 割合(%) | |
Hon Hai Technology Group | 249,815 | 13.8 | 206,302 | 12.2 |
(2)財政状態
当連結会計年度末の総資産は、売掛金や現金及び預金は減少しましたが、棚卸資産が増加したことにより、前連結会計年度末に比べ63,592百万円増加し、2,872,763百万円となりました。負債は、未払税金や買掛金の減少により、前連結会計年度末に比べ74,972百万円減少し、470,287百万円となりました。資本は、主に利益剰余金の増加により、前連結会計年度末に比べ138,564百万円増加し、2,402,476百万円となりました。株主資本比率は、前連結会計年度末に比べ3.0ポイント上昇の83.6%となりました。
(3)キャッシュ・フロー
①キャッシュ・フローの状況
<営業活動によるキャッシュ・フロー>当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、棚卸資産の増加が101,368百万円となりましたが、キャッシュ・フローの源泉となる当期純利益が253,395百万円、減価償却費が161,276百万円となったことなどにより、276,278百万円のキャッシュ・インとなりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは前連結会計年度に比べ145,180百万円の減少となりました。
<投資活動によるキャッシュ・フロー>当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、有価証券及び投資項目の償還及び売却が44,081百万円となりましたが、生産能力増強を中心とした有形固定資産の取得による支出が189,951百万円、有価証券及び投資項目の購入が38,567百万円となったことなどにより、157,850百万円のキャッシュ・アウトとなりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは前連結会計年度に比べ54,450百万円の増加となりました。
<財務活動によるキャッシュ・フロー>当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払いが92,018百万円、自己株式の取得が80,009百万円となったことなどにより、173,708百万円のキャッシュ・アウトとなりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは前連結会計年度に比べ56,203百万円の減少となりました。
②資本の財源及び資金の流動性
イ)財務戦略と経営資源の配分に関する考え方
当社グループは、健全な財務体質と高い資本効率を両立することを目指し、市場環境・競争環境に応じた最適な経営資源配分を行ってまいります。
財務体質については、事業環境の変化に機敏に対応し、持続的な利益成長を達成するとともに、厳しい環境下においても経営の安定を維持し、金融市場の市況悪化等のリスクへ備えるため自己資本の充実に努めております。また、信用格付は「AA+(信用力は極めて高く、優れた要素がある)」(格付投資情報センターによる)を取得し、資金調達が必要な場合に円滑かつ低コストの調達を可能としております。
経営資源の配分につきましては、「中期方針2024」に記載のキャピタル・アロケーション方針に基づき、資本効率と成長性を重視した投資と株主還元を行ってまいります。
資本効率については、継続的な資本効率の改善を目的としてROIC(税引前)20%以上を目標値として設定しております。また、資本コストを投資の意思決定と事業評価に反映しており、当連結会計年度末における当社グループの資本コスト(WACC)は7.5%(当社推計値)となっており、税引後ベースの比較においても安定的にROICが資本コストを上回る構造を維持しております。
株主還元については、長期的な企業価値の拡大と企業体質の強化を図りながら、1株当たり利益を増加させることにより、配当の安定的な増加に努めることを基本方針とし、中期的に配当性向30%程度を目安にDOE(株主資本配当率)4%以上を実現することといたします。また、自己株式の取得につきましても株主還元の手段として、資本効率の改善等を目的として適宜実施することといたします。
ロ)資金調達と手許流動性
当社グループは、設備投資及びその他の事業資金については、自らの事業活動により獲得した内部資金で対応することを基本方針としておりますが、事業の成長に向けた投資や運転資金のために資金需要が生ずる場合には、時々の金融市場の状況を踏まえた適切な手段により外部から調達することとしており、銀行からの借入及び国内普通社債発行による資金調達を適宜実施しております。健全な財務体質を維持し、また主要な取引先金融機関と良好な関係を構築しており、今後の事業資金の調達に関して問題はないと認識しております。
完全子会社の資金需要に対しては、原則として銀行など外部からの資金調達を行わず、当社及び関係会社からのグループファイナンスにより対応しており、資金調達の一元化と資金効率の向上を図っております。
また、当社グループは、事業活動による資金需要への機動的な対応と金融市場の市況悪化等のリスクを最小限に抑えるため、月平均売上高2.5か月~3.5か月を必要な資金流動性の水準とし、確保しております。事業の状況によりこの水準を一時的に超過する場合もありますが、キャピタル・アロケーション方針に基づく資源配分へ資金の充当を進めることにより適正化を図ってまいります。当連結会計年度における現金及び預金、短期投資、有価証券の流動性資金の残高は493,253百万円となり月平均売上高3.5か月相当の流動性を確保しております。事業投資の原資として手許資金を保有しているため、投機目的の運用は行わず、信用リスクが小さいと考えられる銀行への預金など、安全性の高い金融商品に分散して資金を保有しております。なお、当連結会計年度における社債及び借入金等の有利子負債の残高は111,999百万円となっております。また、当連結会計年度における現金及び現金同等物の残高は469,406百万円となっております。
(4)事業別セグメント等の変更について
当社グループは、2021年11月公表のVision2030及び中期方針2024において、「3層ポートフォリオ」という名称で当社グループの事業ポートフォリオの考え方を整理しました。それに伴い、当第1四半期連結累計期間より、3層ポートフォリオに合わせて事業別セグメントを変更しております。また、事業別セグメント内の売上高区分と用途別の売上高区分も変更しております。事業別セグメント及び事業別セグメント内の売上高区分並びに用途別の売上高区分の変更内容は以下のとおりです。
<事業別セグメント及び事業別セグメント内の売上高区分の変更>

<用途別の売上高区分の変更>

(5)重要な会計方針及び見積
当社グループの連結財務諸表は、米国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。ただし、関連当事者情報については、連結財務諸表規則に従って開示しております。
連結財務諸表の作成にあたって、連結会計年度末における資産・負債の計上金額、偶発資産・負債の開示情報及び収益・費用の計上金額に影響する見積や仮定を使用する必要があります。
当社グループは、連結財務諸表の作成において以下のものを重要な会計方針と考えておりますが、全ての会計方針の包括的な記載を目的としたものではありません。当社グループの重要な会計方針については連結財務諸表注記事項Ⅰに記載しております。
なお、当社グループを取り巻く環境や状況の変化により、これらの見積や仮定が実際の結果と異なる可能性があります。
イ)棚卸資産
当社グループは、棚卸資産を主として総平均法による低価法により評価しております。棚卸資産の売却可能性や劣化度合いを定期的に見直しており、需要動向及び市況の変化に基づく過剰や長期滞留、陳腐化を考慮して評価減を行っております。実際の需要動向や市況が想定した見積より悪化した場合、追加の評価減が必要となる可能性があります。
ロ)有価証券及び投資有価証券
当社グループは、市場性がなく容易に決定できる公正価値のない持分証券は、同一発行体の同一又は類似取引などの観察できる価格の変動を加減算することで測定、評価損益を純損益に計上しております。売却可能負債証券は、公正価値が取得原価又は償却原価を一定割合又は一定期間下回った場合、価格の下落が一時的でないと判断し、減損処理を行っております。また、未実現損失が一定期間を超えて発生した場合、公正価値が回復するまでに売却する予定や必要性及び発行体の格付などを考慮して、減損処理の必要性を判断しております。発行体の経営状態が悪化した場合、もしくは市場において悪影響を与える事象が発生した場合には、追加の評価損や減損処理が必要となる可能性があります。
ハ)長期性資産の減損及び処分
当社グループは、必要に応じて、事業別資産グループごとの保有及び使用中の長期性資産の帳簿価額と割引前将来見積キャッシュ・フローを比較することにより、減損の要否を判定しております。長期性資産の帳簿価額に減損が生じていると判断した場合、当該資産の帳簿価額が公正価値を超える金額を減損損失として認識しております。また、除却対象の長期性資産については、除却予定時期を期限として耐用年数の見直しを行い、売却予定の長期性資産については、帳簿価額又は売却に要する費用控除後の公正価値のうちいずれか低い価額で評価されます。割引前将来見積キャッシュ・フロー、除却予定時期及び公正価値の変更を要した場合には、追加の損失が発生する可能性があります。
ニ)のれん及びその他の無形資産
当社グループは、のれん及び耐用年数が確定できない無形資産は償却を行わず、年1回及び減損の可能性を示す事象の発生又は状況の変化が生じた時点で減損テストを行うこととしております。全てののれんは、企業結合のシナジー効果から便益を享受する報告単位に配分されます。報告単位の帳簿価額が公正価値を上回る場合、その報告単位に配分されたのれんの帳簿価額を限度とし、当該差額をのれんの減損損失として認識しております。報告単位の公正価値は、主として割引キャッシュ・フロー法により社内で評価しておりますが、必要に応じ、第三者による評価を活用しております。この手法は、将来の見積キャッシュ・フロー、報告単位ごとのリスクを反映した割引率、永久成長率等多くの見積り及び前提を使用しております。また、将来の見積キャッシュ・フローに使用される前提は、当社グループが決定した事業計画に基づいており、過去の経験、製品及び技術動向、市場データ、現在及び見込まれる世界経済の状況を考慮しております。当社グループは、将来キャッシュ・フロー及び公正価値の見積は合理的であると考えておりますが、事業遂行上予測不能の変化に起因して将来キャッシュ・フロー及び公正価値が当初の見積を下回った場合には、のれんの減損損失を追加計上する可能性があります。
ホ)退職給付
当社グループは、従業員の退職給付費用及び退職給付債務は、数理計算を行う際に使用する基礎率に基づいて算出しております。基礎率には、割引率及び年金資産の長期運用利回りや、最新の統計データに基づく退職率・死亡率・昇給率が含まれます。割引率は長期国債及び優良社債の利回りを参考に決定しております。また、年金資産の長期運用利回りは、投資対象資産の資産区分ごとの将来収益に対する予測や過去の運用実績に加えて、長期国債の利回りなどを考慮して決定しております。基礎率の変更は、当社グループの財政状態、業績及びキャッシュ・フローに影響を与えます。割引率の低下は、退職給付債務を増加させ、数理計算上の差異の償却により翌期以降の退職給付費用を増加させます。また、年金資産の長期運用利回りの低下は、期待運用収益の減少により退職給付費用を増加させます。
へ)繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について、その実現可能性を将来の課税所得及び慎重かつ実現可能性の高い継続的なタックス・スケジュール等を検討することで判断しており、繰延税金資産の全部又は一部を将来実現できないと判断した場合、相応の評価性引当金を計上しております。将来の利益計画が実現できない等の要因に基づき繰延税金資産の実現可能性が低下した場合、評価性引当金の追加計上が必要となる可能性があります。