有価証券報告書-第88期(2023/04/01-2024/03/31)
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)経営成績
①経営成績の概要
当連結会計年度の世界の経済情勢は、世界的な金融引き締めの継続が景気の下押し要因となっているほか、地政学リスクの高まりもあり、先行き不透明な状況が続いています。米国では、金融の引き締め環境のなかでも賃金上昇に加え、予想を下回る失業率を背景とした堅調な個人消費に支えられ景気は底堅く推移しています。欧州では、物価高や金融引き締めによって低調な消費マインドが継続しているほか、海外経済の停滞により輸出も落ち込んでおり、景気の低迷が続いています。中国では、景気刺激策や春節の影響もあり消費に持ち直しの動きがみられましたが、不動産市況の落ち込みの継続や輸出の弱さが景気の下押し要因となり、景気の停滞感が続いています。
当社グループが属するエレクトロニクス市場の部品需要は、半導体不足の緩和による自動車生産台数の回復もありモビリティ向けが増加したほか、スマートフォン市場において部品在庫調整からの回復が見られました。一方で、各国での物価上昇による最終消費の落ち込みにより、PCやAV機器、パワーツール向けなどの用途で減少しました。
そのような中、当連結会計年度の売上収益は、高周波モジュールがスマートフォン向けで増加したほか、コンデンサがモビリティやスマートフォン向けで増加しました。一方で、リチウムイオン二次電池がパワーツール向けで減少したことに加え、コネクティビティモジュールがスマートフォンやPC向けで減少しました。その結果、為替変動(前連結会計年度比9円14銭の円安)の影響はありましたが、前連結会計年度比2.8%減の1,640,158百万円となりました。
利益につきましては、円安効果やコストダウン、固定費の減少などの増益要因はありましたが、操業度の低下や製品価格の値下がり、円筒形リチウムイオン二次電池の設備等に係る減損損失の計上といった減益要因により、営業利益は前連結会計年度比27.8%減の215,447百万円、税引前当期利益は同20.9%減の239,404百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は同25.9%減の180,838百万円となりました。
当連結会計年度のROIC(Return On Invested Capital)(税引前)は円筒形リチウムイオン二次電池の設備等に係る減損損失の計上による営業利益率の低下に加え、将来の市場成長を見据えて先行投資を実施したことに伴い、有形固定資産が増加したことによって使用資本回転率が低下し、前連結会計年度比4.4ポイント減の10.0%となりました。
(注)ROIC(税引前)= 営業利益 / 期首・期末平均投下資本(有形固定資産・使用権資産・のれん・
無形資産+棚卸資産+営業債権-営業債務)
(参考)事業別セグメントROIC(税引前)
コンポーネント 2023年3月期 24.6% 2024年3月期 19.0%
デバイス・モジュール 2023年3月期 2.3% 2024年3月期 △ 1.5%
事業別セグメントについては、コンポーネントは売上収益が942,512百万円(前連結会計年度比2.0%増)で営業利益が234,181百万円(同17.0%減)、デバイス・モジュールは売上収益が695,251百万円(同8.6%減)で営業損失12,999百万円(前連結会計年度は営業利益20,181百万円)、その他は売上収益が67,506百万円(同9.5%減)で営業損失5,735百万円(前連結会計年度は営業損失4,213百万円)となりました。
②製品又は事業別の売上収益概況
当連結会計年度の製品又は事業別の売上収益を前連結会計年度と比較した概況は、以下のとおりであります。
[コンデンサ]
この区分には、積層セラミックコンデンサなどが含まれます。
当連結会計年度は、積層セラミックコンデンサが産業機器やAV機器向けで減少しましたが、モビリティやスマートフォン向けで増加しました。
その結果、コンデンサの売上収益は前連結会計年度に比べ2.0%増の753,520百万円となりました。
[インダクタ・EMIフィルタ]
この区分には、インダクタ、EMI除去フィルタが含まれます。
当連結会計年度は、インダクタがスマートフォンやモビリティ向けで増加しました。
その結果、インダクタ・EMIフィルタの売上収益は前連結会計年度に比べ2.8%増の180,251百万円となりました。
[高周波・通信]
この区分には、コネクティビティモジュール、樹脂多層基板、高周波モジュール、表面波フィルタなどが含まれます。
当連結会計年度は、高周波モジュール、表面波フィルタ、樹脂多層基板がスマートフォン向けで増加しましたが、コネクティビティモジュールがスマートフォンやPC向けで減少しました。
その結果、高周波・通信の売上収益は前連結会計年度に比べ3.0%減の440,142百万円となりました。
[エナジー・パワー]
この区分には、リチウムイオン二次電池、電源モジュールが含まれます。
当連結会計年度は、リチウムイオン二次電池がパワーツール向けで減少しました。
その結果、エナジー・パワーの売上収益は前連結会計年度に比べ23.4%減の164,393百万円となりました。
[機能デバイス]
この区分には、センサ、タイミングデバイスなどが含まれます。
当連結会計年度は、センサがモビリティ向けで増加しましたが、センサやタイミングデバイスが産業機器やコンピュータ向けで減少しました。
その結果、機能デバイスの売上収益は前連結会計年度に比べ2.2%減の90,701百万円となりました。
③用途別の売上収益概況
当連結会計年度の用途別の売上収益を前連結会計年度と比較した概況は、以下のとおりであります。
[通信]
当連結会計年度はスマートフォン向けではコネクティビティモジュールが減少しましたが、高周波モジュール、積層セラミックコンデンサ、表面波フィルタが増加しました。
その結果、通信用途の売上収益は前連結会計年度に比べ2.6%増の676,546百万円となりました。
[モビリティ]
当連結会計年度は、自動車の生産台数の増加や電動化・電装化への対応により、積層セラミックコンデンサ、インダクタ、センサが増加しました。
その結果、モビリティ用途の売上収益は前連結会計年度に比べ10.9%増の432,658百万円となりました。
[コンピュータ]
当連結会計年度は、PC向けでコネクティビティモジュールが減少しました。
その結果、コンピュータ用途の売上収益は前連結会計年度に比べ9.6%減の203,075百万円となりました。
[家電]
当連結会計年度は、パワーツール向けでリチウムイオン二次電池が減少したほか、AV機器向けで積層セラミックコンデンサが減少しました。
その結果、家電用途の売上収益は前連結会計年度に比べ25.0%減の148,450百万円となりました。
[産業・その他]
当連結会計年度は、産業機器や代理店向けで積層セラミックコンデンサが減少しました。
その結果、産業・その他用途の売上収益は前連結会計年度に比べ16.5%減の179,429百万円となりました。
④生産、受注及び販売の実績
イ)生産実績
当連結会計年度のセグメント別の生産実績は、下表のとおりであります。
(注)1.金額は、販売価格で表示しております。
2.エナジー・パワーの「生産実績」は、パワーツール向けでリチウムイオン二次電池の需要が減少したことに
より、前連結会計年度比で大幅な減少となりました。
3.以下のセグメント別諸表については、主たる事業である電子部品並びにその関連製品の生産、受注及び販売の実績を記載しております。
ロ)受注実績
当連結会計年度のセグメント別の受注高及び受注残高は、下表のとおりであります。
(注)金額は、販売価格で表示しております。
ハ)販売実績
当連結会計年度のセグメント別の販売実績は、下表のとおりであります。
ニ)用途別販売実績
当連結会計年度の用途別の販売実績は、下表のとおりであります。
(注)当社推計値に基づいております。
ホ)最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
(2)財政状態
当連結会計年度末の資産合計は、棚卸資産が減少しましたが、現金及び現金同等物や有形固定資産、営業債権が増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ179,592百万円増加し、3,037,895百万円となりました。
負債合計は、未払法人所得税やリース負債が増加しましたが、社債及び借入金やその他の金融負債が減少したことなどにより、前連結会計年度末に比べ16,075百万円減少し、482,286百万円となりました。
資本合計は、その他の資本の構成要素や利益剰余金が増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ195,667百万円増加し、2,555,609百万円となりました。親会社所有者帰属持分比率は、前連結会計年度末に比べ1.5ポイント上昇の84.1%となりました。
(3)キャッシュ・フロー
①キャッシュ・フローの状況
<営業活動によるキャッシュ・フロー>当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、489,637百万円のキャッシュ・イン(前連結会計年度比211,996百万円の収入増加)となりました。
これは、キャッシュ・フローの源泉となる当期利益が180,336百万円、減価償却費及び償却費が175,873百万円、棚卸資産の減少が83,451百万円となったことなどによるものです。
<投資活動によるキャッシュ・フロー>当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、201,571百万円のキャッシュ・アウト(前連結会計年度比50,155百万円の支出増加)となりました。
これは、投資の売却及び償還による収入が16,700百万円となった一方、生産能力増強や生産棟の建設を中心とした有形固定資産の取得による支出が228,626百万円となったことなどによるものです。
<財務活動によるキャッシュ・フロー>当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、165,321百万円のキャッシュ・アウト(前連結会計年度比16,950百万円の支出減少)となりました。
これは、配当金の支払額が94,460百万円、社債の償還による支出が60,000百万円となったことなどによるものです。
②資本の財源及び資金の流動性
イ)財務戦略と経営資源の配分に関する考え方
当社グループは、健全な財務体質と高い資本効率を両立することを目指し、市場環境・競争環境に応じた最適な経営資源配分を行ってまいります。
財務体質については、事業環境の変化に機敏に対応し、持続的な利益成長を達成するとともに、厳しい環境下においても経営の安定を維持し、金融市場の市況悪化等のリスクへ備えるため自己資本の充実に努めております。また、信用格付は「AA+(信用力は極めて高く、優れた要素がある)」(格付投資情報センターによる)を取得し、資金調達が必要な場合に円滑かつ低コストの調達を可能としております。
経営資源の配分につきましては、「中期方針2024」に記載のキャピタル・アロケーション方針に基づき、資本効率と成長性を重視した投資と株主還元を行ってまいります。
資本効率については、継続的な資本効率の改善を目的としてROIC(税引前)20%以上を目標値として設定しております。また、資本コストを投資の意思決定と事業評価に反映しており、税引後ベースの比較においても安定的にROICが資本コストを上回る構造を維持しております。なお、当連結会計年度末における当社グループの資本コスト(WACC)は8.4%(当社推計値)となっております。
株主還元については、長期的な企業価値の拡大と企業体質の強化を図りながら、1株当たり利益を増加させることにより、配当の安定的な増加に努めることを基本方針とし、中期的に配当性向30%程度を目安にDOE(株主資本配当率)4%以上を実現することといたします。また、自己株式の取得につきましても株主還元の手段として、資本効率の改善等を目的として適宜実施することといたします。
ロ)資金調達と手許流動性
当社グループは、設備投資及びその他の事業資金については、自らの事業活動により獲得した内部資金で対応することを基本方針としておりますが、事業の成長に向けた投資や運転資金のために資金需要が生ずる場合には、時々の金融市場の状況を踏まえた適切な手段により外部から調達することとしており、銀行からの借入及び国内普通社債発行による資金調達を適宜実施しております。健全な財務体質を維持し、また主要な取引先金融機関と良好な関係を構築しており、今後の事業資金の調達に関して問題はないと認識しております。
完全子会社の資金需要に対しては、原則として銀行など外部からの資金調達を行わず、当社及び関係会社からのグループファイナンスにより対応しており、資金調達の一元化と資金効率の向上を図っております。
また、当社グループは、事業活動による資金需要への機動的な対応と金融市場の市況悪化等のリスクを最小限に抑えるため、月平均売上収益2.5か月~3.5か月を必要な資金流動性の水準としております。事業の状況によりこの水準を一時的に超過する場合もありますが、キャピタル・アロケーション方針に基づく資源配分へ資金の充当を進めることにより適正化を図ってまいります。当連結会計年度における現金及び預金、短期投資、有価証券の流動性資金の残高は628,341百万円となり月平均売上収益4.6か月となっております。事業投資の原資として手許資金を保有しているため、投機目的の運用は行わず、信用リスクが小さいと考えられる銀行への預金など、安全性の高い金融商品に分散して資金を保有しております。なお、当連結会計年度における社債及び借入金等の有利子負債の残高は52,836百万円となっております。また、当連結会計年度における現金及び現金同等物の残高は622,007百万円となっております。
(4)重要性がある会計方針及び見積り
当社グループでは、2024年3月31日に終了する連結会計年度よりIFRSを初めて適用しております。当連結会計年度において、当社グループにおいて重要性があると認識している会計方針及び見積りは、連結財務諸表注記の「3.重要性がある会計方針」及び「4.重要な会計上の見積り及び判断」に記載しております。
(1)経営成績
①経営成績の概要
当連結会計年度の世界の経済情勢は、世界的な金融引き締めの継続が景気の下押し要因となっているほか、地政学リスクの高まりもあり、先行き不透明な状況が続いています。米国では、金融の引き締め環境のなかでも賃金上昇に加え、予想を下回る失業率を背景とした堅調な個人消費に支えられ景気は底堅く推移しています。欧州では、物価高や金融引き締めによって低調な消費マインドが継続しているほか、海外経済の停滞により輸出も落ち込んでおり、景気の低迷が続いています。中国では、景気刺激策や春節の影響もあり消費に持ち直しの動きがみられましたが、不動産市況の落ち込みの継続や輸出の弱さが景気の下押し要因となり、景気の停滞感が続いています。
当社グループが属するエレクトロニクス市場の部品需要は、半導体不足の緩和による自動車生産台数の回復もありモビリティ向けが増加したほか、スマートフォン市場において部品在庫調整からの回復が見られました。一方で、各国での物価上昇による最終消費の落ち込みにより、PCやAV機器、パワーツール向けなどの用途で減少しました。
そのような中、当連結会計年度の売上収益は、高周波モジュールがスマートフォン向けで増加したほか、コンデンサがモビリティやスマートフォン向けで増加しました。一方で、リチウムイオン二次電池がパワーツール向けで減少したことに加え、コネクティビティモジュールがスマートフォンやPC向けで減少しました。その結果、為替変動(前連結会計年度比9円14銭の円安)の影響はありましたが、前連結会計年度比2.8%減の1,640,158百万円となりました。
利益につきましては、円安効果やコストダウン、固定費の減少などの増益要因はありましたが、操業度の低下や製品価格の値下がり、円筒形リチウムイオン二次電池の設備等に係る減損損失の計上といった減益要因により、営業利益は前連結会計年度比27.8%減の215,447百万円、税引前当期利益は同20.9%減の239,404百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は同25.9%減の180,838百万円となりました。
当連結会計年度のROIC(Return On Invested Capital)(税引前)は円筒形リチウムイオン二次電池の設備等に係る減損損失の計上による営業利益率の低下に加え、将来の市場成長を見据えて先行投資を実施したことに伴い、有形固定資産が増加したことによって使用資本回転率が低下し、前連結会計年度比4.4ポイント減の10.0%となりました。
前連結会計年度 (2022年4月1日~2023年3月31日) | 当連結会計年度 (2023年4月1日~2024年3月31日) | 増 減 | ||||
金額 (百万円) | 百分比 (%) | 金額 (百万円) | 百分比 (%) | 金額 (百万円) | 増減率 (%) | |
売上収益 | 1,686,796 | 100.0 | 1,640,158 | 100.0 | △46,638 | △2.8 |
営業利益 | 298,231 | 17.7 | 215,447 | 13.1 | △82,784 | △27.8 |
税引前当期利益 | 302,683 | 17.9 | 239,404 | 14.6 | △63,279 | △20.9 |
親会社の所有者に帰属する 当期利益 | 243,946 | 14.5 | 180,838 | 11.0 | △63,108 | △25.9 |
ROIC(税引前) (%) | 14.4 | - | 10.0 | - | △4.4 | - |
対米ドル平均為替レート(円) | 135.48 | - | 144.62 | - | 9.14 | - |
(注)ROIC(税引前)= 営業利益 / 期首・期末平均投下資本(有形固定資産・使用権資産・のれん・
無形資産+棚卸資産+営業債権-営業債務)
(参考)事業別セグメントROIC(税引前)
コンポーネント 2023年3月期 24.6% 2024年3月期 19.0%
デバイス・モジュール 2023年3月期 2.3% 2024年3月期 △ 1.5%
事業別セグメントについては、コンポーネントは売上収益が942,512百万円(前連結会計年度比2.0%増)で営業利益が234,181百万円(同17.0%減)、デバイス・モジュールは売上収益が695,251百万円(同8.6%減)で営業損失12,999百万円(前連結会計年度は営業利益20,181百万円)、その他は売上収益が67,506百万円(同9.5%減)で営業損失5,735百万円(前連結会計年度は営業損失4,213百万円)となりました。
②製品又は事業別の売上収益概況
当連結会計年度の製品又は事業別の売上収益を前連結会計年度と比較した概況は、以下のとおりであります。
[コンデンサ]
この区分には、積層セラミックコンデンサなどが含まれます。
当連結会計年度は、積層セラミックコンデンサが産業機器やAV機器向けで減少しましたが、モビリティやスマートフォン向けで増加しました。
その結果、コンデンサの売上収益は前連結会計年度に比べ2.0%増の753,520百万円となりました。
[インダクタ・EMIフィルタ]
この区分には、インダクタ、EMI除去フィルタが含まれます。
当連結会計年度は、インダクタがスマートフォンやモビリティ向けで増加しました。
その結果、インダクタ・EMIフィルタの売上収益は前連結会計年度に比べ2.8%増の180,251百万円となりました。
[高周波・通信]
この区分には、コネクティビティモジュール、樹脂多層基板、高周波モジュール、表面波フィルタなどが含まれます。
当連結会計年度は、高周波モジュール、表面波フィルタ、樹脂多層基板がスマートフォン向けで増加しましたが、コネクティビティモジュールがスマートフォンやPC向けで減少しました。
その結果、高周波・通信の売上収益は前連結会計年度に比べ3.0%減の440,142百万円となりました。
[エナジー・パワー]
この区分には、リチウムイオン二次電池、電源モジュールが含まれます。
当連結会計年度は、リチウムイオン二次電池がパワーツール向けで減少しました。
その結果、エナジー・パワーの売上収益は前連結会計年度に比べ23.4%減の164,393百万円となりました。
[機能デバイス]
この区分には、センサ、タイミングデバイスなどが含まれます。
当連結会計年度は、センサがモビリティ向けで増加しましたが、センサやタイミングデバイスが産業機器やコンピュータ向けで減少しました。
その結果、機能デバイスの売上収益は前連結会計年度に比べ2.2%減の90,701百万円となりました。
③用途別の売上収益概況
当連結会計年度の用途別の売上収益を前連結会計年度と比較した概況は、以下のとおりであります。
[通信]
当連結会計年度はスマートフォン向けではコネクティビティモジュールが減少しましたが、高周波モジュール、積層セラミックコンデンサ、表面波フィルタが増加しました。
その結果、通信用途の売上収益は前連結会計年度に比べ2.6%増の676,546百万円となりました。
[モビリティ]
当連結会計年度は、自動車の生産台数の増加や電動化・電装化への対応により、積層セラミックコンデンサ、インダクタ、センサが増加しました。
その結果、モビリティ用途の売上収益は前連結会計年度に比べ10.9%増の432,658百万円となりました。
[コンピュータ]
当連結会計年度は、PC向けでコネクティビティモジュールが減少しました。
その結果、コンピュータ用途の売上収益は前連結会計年度に比べ9.6%減の203,075百万円となりました。
[家電]
当連結会計年度は、パワーツール向けでリチウムイオン二次電池が減少したほか、AV機器向けで積層セラミックコンデンサが減少しました。
その結果、家電用途の売上収益は前連結会計年度に比べ25.0%減の148,450百万円となりました。
[産業・その他]
当連結会計年度は、産業機器や代理店向けで積層セラミックコンデンサが減少しました。
その結果、産業・その他用途の売上収益は前連結会計年度に比べ16.5%減の179,429百万円となりました。
④生産、受注及び販売の実績
イ)生産実績
当連結会計年度のセグメント別の生産実績は、下表のとおりであります。
生産実績 (2023年4月1日~2024年3月31日) | ||||
金額(百万円) | 構成比(%) | 前連結会計 年度比(%) | ||
コンデンサ | 695,496 | 46.1 | △12.3 | |
インダクタ・EMIフィルタ | 166,439 | 11.0 | △7.7 | |
コンポーネント | 861,935 | 57.1 | △11.5 | |
高周波・通信 | 415,191 | 27.5 | △9.4 | |
エナジー・パワー | 131,943 | 8.7 | △46.0 | |
機能デバイス | 88,632 | 5.9 | △7.2 | |
デバイス・モジュール | 635,766 | 42.1 | △20.3 | |
その他 | 12,017 | 0.8 | 3.6 | |
計 | 1,509,718 | 100.0 | △15.3 |
(注)1.金額は、販売価格で表示しております。
2.エナジー・パワーの「生産実績」は、パワーツール向けでリチウムイオン二次電池の需要が減少したことに
より、前連結会計年度比で大幅な減少となりました。
3.以下のセグメント別諸表については、主たる事業である電子部品並びにその関連製品の生産、受注及び販売の実績を記載しております。
ロ)受注実績
当連結会計年度のセグメント別の受注高及び受注残高は、下表のとおりであります。
受注高 (2023年4月1日~2024年3月31日) | 受注残高 (2024年3月31日現在) | ||||||
金額 (百万円) | 構成比 (%) | 前連結会 計年度比 (%) | 金額 (百万円) | 構成比 (%) | 前連結会計 年度末比 (%) | ||
コンデンサ | 758,820 | 47.1 | 17.5 | 141,168 | 45.5 | 3.9 | |
インダクタ・EMIフィルタ | 181,010 | 11.2 | 15.3 | 29,682 | 9.6 | 2.6 | |
コンポーネント | 939,830 | 58.3 | 17.0 | 170,850 | 55.1 | 3.7 | |
高周波・通信 | 423,940 | 26.3 | 1.6 | 54,003 | 17.4 | △23.1 | |
エナジー・パワー | 148,916 | 9.3 | △20.7 | 61,911 | 20.0 | △20.0 | |
機能デバイス | 86,915 | 5.4 | △1.2 | 17,998 | 5.8 | △17.4 | |
デバイス・モジュール | 659,771 | 41.0 | △4.8 | 133,912 | 43.2 | △20.9 | |
その他 | 10,946 | 0.7 | 28.5 | 5,385 | 1.7 | △3.7 | |
計 | 1,610,547 | 100.0 | 7.0 | 310,147 | 100.0 | △8.7 |
(注)金額は、販売価格で表示しております。
ハ)販売実績
当連結会計年度のセグメント別の販売実績は、下表のとおりであります。
販売実績 (2023年4月1日~2024年3月31日) | ||||
金額(百万円) | 構成比(%) | 前連結会計 年度比(%) | ||
コンデンサ | 753,520 | 46.0 | 2.0 | |
インダクタ・EMIフィルタ | 180,251 | 11.0 | 2.8 | |
コンポーネント | 933,771 | 57.0 | 2.1 | |
高周波・通信 | 440,142 | 26.8 | △3.0 | |
エナジー・パワー | 164,393 | 10.0 | △23.4 | |
機能デバイス | 90,701 | 5.5 | △2.2 | |
デバイス・モジュール | 695,236 | 42.3 | △8.6 | |
その他 | 11,151 | 0.7 | △4.3 | |
計 | 1,640,158 | 100.0 | △2.8 |
ニ)用途別販売実績
当連結会計年度の用途別の販売実績は、下表のとおりであります。
販売実績 (2023年4月1日~2024年3月31日) | ||||
金額(百万円) | 構成比(%) | 前連結会計 年度比(%) | ||
通信 | 676,546 | 41.2 | 2.6 | |
モビリティ | 432,658 | 26.4 | 10.9 | |
コンピュータ | 203,075 | 12.4 | △9.6 | |
家電 | 148,450 | 9.1 | △25.0 | |
産業・その他 | 179,429 | 10.9 | △16.5 | |
計 | 1,640,158 | 100.0 | △2.8 |
(注)当社推計値に基づいております。
ホ)最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
相手先 | 前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) | ||
金額(百万円) | 割合(%) | 金額(百万円) | 割合(%) | |
Hon Hai Technology Group | 206,302 | 12.2 | 166,541 | 10.2 |
(2)財政状態
当連結会計年度末の資産合計は、棚卸資産が減少しましたが、現金及び現金同等物や有形固定資産、営業債権が増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ179,592百万円増加し、3,037,895百万円となりました。
負債合計は、未払法人所得税やリース負債が増加しましたが、社債及び借入金やその他の金融負債が減少したことなどにより、前連結会計年度末に比べ16,075百万円減少し、482,286百万円となりました。
資本合計は、その他の資本の構成要素や利益剰余金が増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ195,667百万円増加し、2,555,609百万円となりました。親会社所有者帰属持分比率は、前連結会計年度末に比べ1.5ポイント上昇の84.1%となりました。
(3)キャッシュ・フロー
①キャッシュ・フローの状況
<営業活動によるキャッシュ・フロー>当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、489,637百万円のキャッシュ・イン(前連結会計年度比211,996百万円の収入増加)となりました。
これは、キャッシュ・フローの源泉となる当期利益が180,336百万円、減価償却費及び償却費が175,873百万円、棚卸資産の減少が83,451百万円となったことなどによるものです。
<投資活動によるキャッシュ・フロー>当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、201,571百万円のキャッシュ・アウト(前連結会計年度比50,155百万円の支出増加)となりました。
これは、投資の売却及び償還による収入が16,700百万円となった一方、生産能力増強や生産棟の建設を中心とした有形固定資産の取得による支出が228,626百万円となったことなどによるものです。
<財務活動によるキャッシュ・フロー>当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、165,321百万円のキャッシュ・アウト(前連結会計年度比16,950百万円の支出減少)となりました。
これは、配当金の支払額が94,460百万円、社債の償還による支出が60,000百万円となったことなどによるものです。
②資本の財源及び資金の流動性
イ)財務戦略と経営資源の配分に関する考え方
当社グループは、健全な財務体質と高い資本効率を両立することを目指し、市場環境・競争環境に応じた最適な経営資源配分を行ってまいります。
財務体質については、事業環境の変化に機敏に対応し、持続的な利益成長を達成するとともに、厳しい環境下においても経営の安定を維持し、金融市場の市況悪化等のリスクへ備えるため自己資本の充実に努めております。また、信用格付は「AA+(信用力は極めて高く、優れた要素がある)」(格付投資情報センターによる)を取得し、資金調達が必要な場合に円滑かつ低コストの調達を可能としております。
経営資源の配分につきましては、「中期方針2024」に記載のキャピタル・アロケーション方針に基づき、資本効率と成長性を重視した投資と株主還元を行ってまいります。
資本効率については、継続的な資本効率の改善を目的としてROIC(税引前)20%以上を目標値として設定しております。また、資本コストを投資の意思決定と事業評価に反映しており、税引後ベースの比較においても安定的にROICが資本コストを上回る構造を維持しております。なお、当連結会計年度末における当社グループの資本コスト(WACC)は8.4%(当社推計値)となっております。
株主還元については、長期的な企業価値の拡大と企業体質の強化を図りながら、1株当たり利益を増加させることにより、配当の安定的な増加に努めることを基本方針とし、中期的に配当性向30%程度を目安にDOE(株主資本配当率)4%以上を実現することといたします。また、自己株式の取得につきましても株主還元の手段として、資本効率の改善等を目的として適宜実施することといたします。
ロ)資金調達と手許流動性
当社グループは、設備投資及びその他の事業資金については、自らの事業活動により獲得した内部資金で対応することを基本方針としておりますが、事業の成長に向けた投資や運転資金のために資金需要が生ずる場合には、時々の金融市場の状況を踏まえた適切な手段により外部から調達することとしており、銀行からの借入及び国内普通社債発行による資金調達を適宜実施しております。健全な財務体質を維持し、また主要な取引先金融機関と良好な関係を構築しており、今後の事業資金の調達に関して問題はないと認識しております。
完全子会社の資金需要に対しては、原則として銀行など外部からの資金調達を行わず、当社及び関係会社からのグループファイナンスにより対応しており、資金調達の一元化と資金効率の向上を図っております。
また、当社グループは、事業活動による資金需要への機動的な対応と金融市場の市況悪化等のリスクを最小限に抑えるため、月平均売上収益2.5か月~3.5か月を必要な資金流動性の水準としております。事業の状況によりこの水準を一時的に超過する場合もありますが、キャピタル・アロケーション方針に基づく資源配分へ資金の充当を進めることにより適正化を図ってまいります。当連結会計年度における現金及び預金、短期投資、有価証券の流動性資金の残高は628,341百万円となり月平均売上収益4.6か月となっております。事業投資の原資として手許資金を保有しているため、投機目的の運用は行わず、信用リスクが小さいと考えられる銀行への預金など、安全性の高い金融商品に分散して資金を保有しております。なお、当連結会計年度における社債及び借入金等の有利子負債の残高は52,836百万円となっております。また、当連結会計年度における現金及び現金同等物の残高は622,007百万円となっております。
(4)重要性がある会計方針及び見積り
当社グループでは、2024年3月31日に終了する連結会計年度よりIFRSを初めて適用しております。当連結会計年度において、当社グループにおいて重要性があると認識している会計方針及び見積りは、連結財務諸表注記の「3.重要性がある会計方針」及び「4.重要な会計上の見積り及び判断」に記載しております。