有価証券報告書-第156期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/26 16:16
【資料】
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【項目】
92項目
(業績等の概要)
(1) 業績
当連結会計年度の世界経済は、総じて堅調に推移していましたが、2020年に入り、新型コロナウイルス感染症が拡大したことにより、一転して不透明な状況となりました
事業別では、映像事業においては、レンズ交換式デジタルカメラ市場及びコンパクトデジタルカメラ市場は縮小傾向が続きました。精機事業においては、FPD関連分野は中小型パネル用の設備投資は一段落し、大型パネル用の設備投資についても一部後ろ倒しとなった一方、半導体関連分野の設備投資は回復基調となりました。ヘルスケア事業においては、バイオサイエンス分野及び眼科診断分野ともに堅調に推移してまいりました。
そのような中、第4四半期に入ると新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、市況は急速に悪化しました。
当社グループでは、2019年5月に発表した中期経営計画の下、持続的企業価値の向上に向けた成長基盤構築を目標とし、各種施策に取り組みました。
まず、「新たな収益の柱の創出」の一環として、光加工機シリーズを市場に投入する一方、DMG森精機株式会社との包括的な業務提携を行うなど、材料加工事業の立ち上げに注力しました。あわせて、「既存事業の収益力強化」として、映像事業における事業構造の抜本的改革に取り組むとともに、主力事業のサプライチェーン最適化、管理間接部門スリム化などによるコストダウン等を推し進めました。また、ガバナンス改革として、指名審議委員会の設置、社外取締役の多様化などにも取り組みました。
このような状況の下、当社グループの連結業績は、売上収益は5,910億12百万円、前期比1,176億48百万円(16.6%)の減収、営業利益は67億51百万円、前期比759億2百万円(91.8%)の減益、税引前利益は118億64百万円、前期比760億51百万円(86.5%)の減益、親会社の所有者に帰属する当期利益は76億93百万円、前期比588億20百万円(88.4%)の減益となりました。
セグメント情報は次のとおりです。
① 映像事業
レンズ交換式デジタルカメラは、小型・軽量で高性能なミラーレスカメラ「Z 50」や、高い性能と多彩な機能を搭載したデジタル一眼レフカメラ「D780」を発売するとともに、ミラーレスカメラ用交換レンズを拡充させ、プロ・趣味層向け中高級機の拡販に努めました。
コンパクトデジタルカメラは、光学83倍ズームを搭載した「COOLPIX P950」を発売し、高付加価値製品の販売に注力しました。
しかしながら、市場の縮小傾向に加えて新型コロナウイルス感染症拡大による需要減退や新製品発売延期の影響により、販売台数は減少しました。
これらの結果、当事業の売上収益は2,258億94百万円、前期比23.7%減となり、構造改革関連費用や固定資産の減損損失を計上したこともあり、営業損失は171億53百万円(前期は220億69百万円の営業利益)となりました。
② 精機事業
FPD露光装置分野では、第10.5世代プレートサイズ対応装置の販売は堅調であったものの、全体としては販売台数が減少しました。また、新型コロナウイルス感染症拡大により一部装置の販売が次期に繰り延べになったこともあり、大幅な減収減益となりました。
半導体露光装置分野では、ArF液浸スキャナーやArFスキャナーの販売台数が増加し、増収増益となりました。
これらの結果、当事業の売上収益は2,397億28百万円、前期比12.7%減、営業利益は467億74百万円、前期比42.8%減となりました。
③ ヘルスケア事業
バイオサイエンス分野では、生物顕微鏡の販売増加に向けて、眼科診断分野では、超広角走査型レーザー検眼鏡の販売増加に向けて、それぞれ堅調に推移していたものの、いずれの分野も新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて急減速し、減収となりました。
これらの結果、当事業の売上収益は620億24百万円、前期比5.2%減となり、経費抑制等によって損失の最小化に努めたものの、赤字幅は拡大し、営業損失は24億55百万円(前期は19億37百万円の営業損失)となりました。
④ 産業機器・その他
産業機器事業では、中国等アジアを中心に市況が低調に推移したことに加え、新型コロナウイルス感染症拡大の影響に伴う投資抑制により減収となりました。経費抑制等により収益性を改善しましたが、のれんの減損等により減益となりました。
カスタムプロダクツ事業では、固体レーザーと光学部品が増収となりました。
ガラス事業では、FPDフォトマスク基板の拡販を進めましたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により市況が悪化し、減収となりました。
この結果、これらの事業の売上収益は633億66百万円、前期比12.6%減、営業利益は31億85百万円、前期比54.1%減となりました。
(注) 事業別の営業損益には、当社グループ内取引において生じた損益を含んでおります。
(2) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、主に税引前利益118億64百万円、減価償却費及び償却費341億5百万円の計上に加え、特許訴訟和解金の受取があった一方、仕入債務及びその他の債務の減少、前受金の減少、法人所得税の支払により、164億19百万円の収入(前年同期は689億1百万円の収入)となりました。
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の売却による収入が45億5百万円、投資有価証券の売却による収入が58億70百万円あった一方、有形固定資産、無形資産、投資有価証券の取得による支出により212億81百万円の支出(前年同期は253億4百万円の支出)となりました。
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払、自己株式の取得による支出により727億39百万円の支出(前年同期は215億83百万円の支出)となりました。
また、現金及び現金同等物に係る換算差額は94億21百万円の減少となりました。
この結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は前連結会計年度末に比べ870億21百万円減少し、3,240億34百万円となりました。
(生産、受注及び販売の状況)
(1) 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
(百万円)
前期比(%)
映像事業159,956△21.8
精機事業142,1881.0
ヘルスケア事業31,0211.2
産業機器・その他39,595△13.1
合計372,760△11.6

(注) 金額は製造者販売価格によって算出し、付属品仕入額を含み、消費税等は含んでおりません。
(2) 受注状況
当連結会計年度における受注残高は、次のとおりであります。
なお、精機事業を除いては見込生産を主としておりますので記載を省略しております。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
(百万円)
前期比(%)
精機事業252,714△41.8
合計252,714△41.8

(注) 金額には、消費税等は含んでおりません。
(3) 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
(百万円)
前期比(%)
映像事業225,894△23.7
精機事業239,728△12.7
ヘルスケア事業62,024△5.2
産業機器・その他63,366△12.6
合計591,012△16.6

(注)1.当社グループは、主要な顧客グループであるIntel Corporation及びそのグループ会社に対し、精機事業及び産業機器・その他において、前連結会計年度に80,602百万円(総販売実績に占める割合:11.4%)、当連結会計年度に107,347百万円(総販売実績に占める割合:18.2%)の販売をしております。
2.金額には、消費税等は含んでおりません。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社グループは、資本市場における財務情報の国際的な比較可能性の向上や、グループ内の会計基準統一による経営基盤の強化を目指し、2017年3月期有価証券報告書における連結財務諸表からIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって採用する重要な会計方針及び見積りは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針、4.見積り及び判断の利用、39. 追加情報」をご参照ください。
(2) 財政状態の分析
当連結会計年度末における資産の残高は、前連結会計年度末に比べて1,291億4百万円減少し、1兆58億81百万円となりました。これは主に、自己株式を400億2百万円取得及び配当金235億52百万円の支払等により現金及び現金同等物が870億21百万円、前連結会計年度末に未収計上をしていた特許訴訟和解金187億40百万円の受領等により売上債権及びその他の債権が280億68百万円減少したためです。
当連結会計年度末における負債の残高は、前連結会計年度末に比べて541億38百万円減少し、4,641億21百万円となりました。これは主に、仕入債務及びその他の債務が276億38百万円、前受金が169億68百万円減少したためです。
当連結会計年度末における資本の残高は、前連結会計年度末に比べて749億66百万円減少し、5,417億60百万円となりました。これは主に、自己株式を400億2百万円取得、在外活動営業体の換算差額の減少や保有する株式の時価下落等によりその他の資本の構成要素が195億10百万円減少し、さらには、利益剰余金が、主に剰余金の配当処分により161億8百万円減少したためです。なお、当連結会計年度末において自己株式352億79百万円を消却しております。
キャッシュ・フローの状況の分析につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (業績等の概要) (2)キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
(3) 経営成績の分析
当連結会計年度における売上収益は5,910億12百万円(前連結会計年度は7,086億60百万円)となり、1,176億48百万円の減収となりました。減収幅が最も大きかったのは映像事業です。映像事業は、ミラーレスカメラは増収でしたが、マーケットの縮小が急速に進む中、新製品の発売延期等、新型コロナウイルス感染症拡大の影響も重なり、702億74百万円の減収となりました。精機事業は、半導体露光装置の販売台数は増加しましたが、FPD露光装置の販売は顧客の投資一巡の影響に加え、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、一部の装置の据付が翌連結会計年度に繰延べとなり、前連結会計年度の売上収益を348億12百万円下回りました。なお、新型コロナウイルス感染症拡大による減収影響は映像事業で約100億円、精機事業で約200億円、その他で約30億円、合計約330億円になります。
売上原価は映像事業においてミラーレス新商品投入により初期費用が増加したものの、レンズ交換式デジタルカメラ及びコンパクトデジタルカメラの販売台数減少や、精機事業におけるFPD露光装置の販売台数減少が重なった結果、362億72百万円減の3,689億78百万円(前連結会計年度は4,052億50百万円)となりました。
販売費及び一般管理費は大幅な減収に沿って、広告宣伝費及び販売促進費等の抑制に努めた結果、328億63百万円減の2,056億98百万円(前連結会計年度は2,385億61百万円)となりました。
その他営業収益は、前連結会計年度に計上した半導体装置事業における特許訴訟和解に伴う一時利益がなくなったこと等により、154億65百万円減の64億47百万円となりました。その他営業費用は、構造改革関連費用45億73百万円や減損損失104億13百万円を計上し、160億32百万円となりました。構造改革関連費用として、映像事業では生産及び販売拠点体制の見直しを行い割増退職金等が発生し、2017年に操業停止した海外生産子会社の清算結了に伴う在外子会社の清算による換算差額累計額の純損益への振替を計上しました。また、市況や事業環境の悪化に新型コロナウイルス感染症拡大の影響も加わり、映像事業ではソフトウエア等の無形資産、産業機器事業では測定機関連を取り扱う海外子会社のNikon Metrology NV買収時のれん等の減損損失が発生しました。
これらの結果、営業利益は67億51百万円(前連結会計年度は826億53百万円)となり、759億2百万円の減益となりました。なお、減損損失を除く新型コロナウイルス感染症拡大による減益影響は、映像事業で約40億円、精機事業で約50億円、その他で約10億円、合計約100億円になります。
税引前利益は759億2百万円の営業減益が大きく影響し、118億64百万円(前連結会計年度は879億15百万円)となり、760億51百万円の減益となりました。
親会社の所有者に帰属する当期利益は法人所得税費用40億22百万円の計上により76億93百万円(前連結会計年度は665億13百万円)となりました。なお、当社グループの課題につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」を、またセグメント別の分析は、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (業績等の概要) (1)業績」をそれぞれご参照ください。
(4) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループは、一定の財務健全性の確保を前提に置きながら、投資資本の運用効率を重視し、持続的な成長のために資本コストを上回る収益が見込める投資(設備投資、研究開発、М&A等)に資金を活用することで企業価値の最大化を実現すると同時に、安定的な株主還元を実施することで株主の要求にも応えることを資本管理の方針としております。
運転資金や設備投資資金については、現在保有する現金や預金に加え、営業キャッシュ・フローを源泉とした資金で賄うことを原則としております。また、国内外のグループ会社が保有する資金をグローバル・キャッシュ・マネージメント・システムにより効率的に管理し、各グループ会社の運転資金や設備投資資金のため、グループ内の資金を有効活用しております。
なお、当社は市場の混乱や、当社が事業を遂行する上でのリスクに晒されているため、こうした要因が資金繰りを圧迫する事態への備えとして十分な手元流動性(現預金、コミットメントライン等)の確保に努めており、新型コロナウイルス感染症拡大影響による事業環境の急激な変化を前提としても当面安定的な経営が可能な状態にあります。ただし、新型コロナウイルス感染症拡大の影響に関しましては不透明性も高いため、状況の変化に的確かつ柔軟に対応し、必要資金を適時に確保できる体制を維持して参ります。
当社グループの資金状況は、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (業績等の概要) (2)キャッシュ・フローの状況」に記載しておりますとおり、当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは164億19百万円の収入となり、投資活動によるキャッシュ・フローは212億81百万円の支出であったため、48億62百万円のマイナスのフリー・キャッシュ・フローとなりました。また、有利子負債を控除したネットキャッシュ残高は1,848億97百万円になりました。
なお、当連結会計年度後1年間の設備投資計画及び研究開発投資につきましては、新型コロナウイルス感染症拡大の影響による業績への影響が不透明な点が多く、当初予定していた設備投資及び研究開発投資の計画を慎重に判断し、実施する予定であります。
以上の記載事項のうち将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2020年6月26日)現在において判断したものであります。また、分析に記載した実績値は百万円未満を四捨五入して記載しております。