訂正有価証券報告書-第114期(2023/04/01-2024/03/31)

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2024/07/05 11:30
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(1) 経営成績の概況
(金融経済環境)
当年度の経済環境は、欧米各国の金融引締めの影響や中国経済の減速懸念などによる景気下振れリスクが意識されたものの、企業収益やインバウンド需要の改善を背景に回復基調で推移しました。
株式市場についてみますと、期初28,188円で始まった日経平均株価(終値)は、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた上場企業の各種取組みへの期待感などから海外投資家の日本株への関心が高まり上昇基調で推移しました。2023年10月に入ると中東情勢の緊迫化により一旦は軟調な展開となりましたが、2023年11月以降は米国の利上げ打ち止め観測や好調な企業業績を背景に再び上昇基調で推移し、年が明けるとこうした動きが一段と加速したことから2024年2月22日には日経平均株価が39,098円となり34年ぶりに過去最高値を更新しました。その後、日銀のマイナス金利政策が解除されましたが、緩和的な金融環境の継続が確認されたことから市場に安心感が広がり、2024年3月22日には当年度の最高値となる40,888円まで上昇し、期末は40,369円で取引を終えました。
この期間における東京市場等(東証、名証及びPTS)の制度信用取引買い残高をみますと、期初2兆1,700億円台から株価の上昇につれて利益確定売りなどにより漸減し、2023年5月19日には当年度のボトムとなる1兆9,600億円台まで減少しました。その後は株価の先高期待から増加基調で推移し、2024年3月15日に2兆8,400億円台と当年度のピークとなり、期末は2兆7,000億円台となりました。一方、制度信用取引売り残高は、期初5,300億円台から2023年5月19日には当年度のピークとなる7,800億円台まで増加したものの、その後は減少傾向となり2023年10月6日には当年度のボトムとなる5,100億円台となりました。その後は株価の上昇につれて再び増加し、期末は6,900億円台となりました。
(2023年度(2024年3月期)決算)
このような市場環境の下、2023年度の当社グループの業績は、貸借取引残高が融資、貸株ともに増加したこと、また債券レポ・現先取引および株券レポ取引等を中心にセキュリティ・ファイナンス業務が引き続き好調であったことなどから、連結営業収益は50,008百万円(前期比17.6%増)、連結営業利益は9,928百万円(同56.2%増)、連結経常利益は11,024百万円(同45.0%増)といずれも増益となりました。また、前期に計上した退職金制度変更に伴う特別利益が剥落しましたが親会社株主に帰属する当期純利益は8,030百万円(同34.6%増)と増益となりました。
当年度における各セグメントの営業概況は以下のとおりです。
①証券金融業
証券金融業務における営業収益は46,049百万円(前期比19.3%増)となりました。
業務別の営業収益をみますと、貸借取引業務における営業収益は11,581百万円(同44.7%増)となりました。貸借取引融資残高が期中平均で2,869億円と前期比322億円増加、同貸株残高は期中平均で2,524億円と前期比634億円増加といずれも増加したことにより、貸付金利息、貸株料ともに増収となりました。
セキュリティ・ファイナンス業務における営業収益は28,360百万円(同29.2%増)となりました。このうち、債券レポ・現先取引(24,593百万円、同29.9%増)は国債需給の逼迫により取引ニーズが引き続き旺盛であったことから残高が過去最高を更新し、大幅増収となりました。株券レポ取引等(1,799百万円、同17.6%増)は引き続き残高が高水準で推移したことから増収となりました。一般貸株(1,083百万円、同35.6%増)および一般信用ファイナンス(250百万円、同67.8%増)は株式市況の活況を受けて残高が増加したことにより増収となりました。リテール向け貸付(633百万円、同16.3%増)は株式市況が活況であったことに加え、商品性の改善が奏功して残高が増加したことにより増収となりました。
その他の収益は6,107百万円(同29.3%減)となりました。これは、貸借取引業務やセキュリティ・ファイナンス業務のための流動性の確保と収益基盤の強化の観点から行っている有価証券運用業務において、前期に実施したポートフォリオの入替に伴う保有国債等の売却益が剥落したことにより減収となったものですが、あわせて保有外国債の売却損も剥落したため営業費用も減少しております。
②信託銀行業
信託銀行業務における営業収益は3,127百万円(同0.4%増)となりました。管理型信託サービスなどによる信託報酬が引き続き堅調となりました。
③不動産賃貸業
不動産賃貸業務における営業収益は831百万円(同2.9%増)となりました。
(2) 財政状態に関する分析
《当社グループの資産、負債、キャッシュ・フローの特徴》
資産は、日々変動する貸借取引貸付(営業貸付金)および日銀当座預金への預け金(現金及び預金)、有価証券を調達する際に差し入れる担保金(借入有価証券代り金、買現先勘定)、資金の効率的な活用を目的として保有する有価証券が大宗を占めます。
負債は、変動する資産に合わせてコールマネーやコマーシャル・ペーパーといった日々調整が可能な市場性調達のほか、有価証券を貸し付ける際に受け入れる担保金(貸付有価証券代り金、売現先勘定)が中心となります。
なお、近年注力してきましたセキュリティ・ファイナンス業務の中でも債券レポ・現先取引は、取引ロットが大きいことから業務の成長に伴いその残高が大きく増加しています。当該取引は貸し手と借り手のニーズをマッチングさせる仲介取引であることから、当社の貸借対照表上、資産(借入有価証券代り金、買現先勘定)、負債(貸付有価証券代り金、売現先勘定)が両建てで計上されます。ただし、当該取引では、取引対象債券の担保として債券時価相当額の現金を受払し、取引期間中は日々時価評価を行い、マージンコール(現金担保と債券時価額との差額を受払すること)を適切に実施することでエクスポージャーを抑制しています。また、取引先の殆どが信用度の比較的高い金融機関もしくは中央清算機関による債務引受の対象となっております。こうしたリスクコントロールによって、エクスポージャーと信用リスクの増加を適切に抑えています。
その他のセキュリティ・ファイナンス業務についても、債券レポ・現先取引と同様のリスクコントロール手段に加え、取引対象株式のボラティリティや市場流動性等に応じて適切なヘアカット(掛目)を設定し、エクスポージャーの拡大を抑制しています。また、当社は統合リスク管理の枠組みのもと、日次で信用リスク量を計量し、当社の経営体力を踏まえて設定したリスク資本の枠内に収まるように管理しています。さらに取引先別にストレス時を想定したエクスポージャーが一定の限度内に収まっていることを日次でモニタリングし、特定の取引先への過度なエクスポージャーの発生を抑えています。
キャッシュ・フローは、主に上記の資産・負債の変動によるもののほか、配当金の支払および自己株式取得・処分等により発生するものが中心となります。
なお、資産における現金及び預金は、負債における日証金信託銀行の信託勘定における待機資金の状況やグループ全体の資金繰りの状況等により大きく増減することがあります。
また、現時点では重要な資本的支出の予定はありません。
①資産、負債および純資産の状況
資産合計額は13兆7,447億円(前連結会計年度末比3,114億円減)、負債合計額は13兆6,001億円(同3,203億円減)、純資産合計額は1,446億円(同88億円増)となりました。
○資産
現金及び預金…日銀当座預金への預け金の増加などにより、前連結会計年度末に比べて3,793億円増加しました。
営業貸付金…貸借取引貸付金の期末残高の増加により、前連結会計年度末に比べて1,030億円増加しました。
買現先勘定…債券現先取引の増加により、前連結会計年度末に比べて1兆1,922億円増加しました。
借入有価証券代り金…債券レポ取引の期末残高の減少などにより、前連結会計年度末に比べて1兆7,167億円減少しました。
○負債
コールマネーおよびコマーシャル・ペーパー…資産サイドの貸付金等の変動に合わせ機動的な資金調達を行った結果、前連結会計年度末に比べてそれぞれ3,256億円の減少、1,380億円の増加となりました。
売現先勘定…債券現先取引の増加により、前連結会計年度末に比べて1兆1,675億円増加しました。
貸付有価証券代り金…債券レポ取引の期末残高の減少などにより、前連結会計年度末に比べて1兆3,113億円減少しました。
信託勘定借…日証金信託銀行の信託勘定における待機資金の減少に伴い、前連結会計年度末に比べて1,312億円減少しました。
○純資産
株主資本…親会社株主に帰属する当期純利益の計上などにより、前連結会計年度末に比べて14億円増加しました。
その他の包括利益累計額…保有する有価証券等の価格変動等に伴うその他有価証券評価差額金および繰延ヘッジ損益が改善した結果、前連結会計年度末に比べて74億円増加しました。
②キャッシュ・フローの状況
当期末における現金及び現金同等物は1兆9,776億円(前連結会計年度末比3,813億円増)となりました。
各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
○営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動によるキャッシュ・フローは、3,834億円の流入超(前連結会計年度3,035億円の流入超)となりました。これは、保有国債の売却等により収入が増加したことによるものです。
○投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動によるキャッシュ・フローは、45億円の流入超(前連結会計年度34億円の流入超)となりました。これは、投資有価証券の売却等によるものです。
○財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動によるキャッシュ・フローは、66億円の流出超(前連結会計年度57億円の流出超)となりました。これは、配当金支払いおよび自己株式の取得のための支出によるものです。
(3) 当社グループ業務別営業収益の状況
前連結会計年度(通期)
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
当連結会計年度(通期)
(自 2023年4月1日
至 2024年3月31日)
増 減
金額(百万円)構成比(%)金額(百万円)構成比(%)金額(百万円)比率(%)
証券金融業38,59490.846,04992.17,45419.3
貸借取引業務8,00318.811,58123.23,57744.7
貸借取引貸付金利息1,6193.81,8313.721213.1
借入有価証券代り金利息5651.38441.727949.4
有価証券貸付料(品貸料)4,71111.17,50815.02,79659.4
有価証券貸付料(貸株料)8081.91,0802.227233.7
セキュリティ・ファイナンス業務21,95251.628,36056.76,40829.2
一般信用ファイナンス1490.42500.510167.8
株券レポ取引等1,5293.61,7993.626917.6
リテール向け5441.36331.38816.3
一般貸株7991.91,0832.228435.6
債券レポ・現先取引18,92944.524,59349.25,66429.9
その他8,63820.36,10712.2△2,531△29.3
信託銀行業3,1157.33,1276.3120.4
貸付金利息320.1360.1311.2
信託報酬1,3473.21,5303.118313.6
その他1,7344.11,5603.1△174△10.1
不動産賃貸業8081.98311.7232.9
合計42,518100.050,008100.07,48917.6

(4) 当社グループ貸付金の状況(平均残高)
前連結会計年度(通期)
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
当連結会計年度(通期)
(自 2023年4月1日
至 2024年3月31日)
増 減
(億円)(億円)(億円)
貸借取引貸付金(融資)2,5472,869322
貸借取引貸付有価証券(貸株)1,8892,524634
セキュリティ・ファイナンス114,739129,76815,028
一般信用ファイナンス188347158
株券レポ取引等6,9777,753775
リテール向け16720436
一般貸株6331,210577
債券レポ・現先取引106,772120,25313,480
信託銀行貸付金5,3995,913514

(5) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当該事項につきましては、(1)経営成績の概況をご参照ください。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当該事項につきましては、(2)財政状態に関する分析をご参照ください。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。