有価証券報告書-第81期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/23 11:31
【資料】
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【項目】
122項目
業績等の概要
(1) 業績
当連結会計年度のわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の世界的大流行の影響に伴う国内外の移動自粛により経済活動が著しく抑制され、国内生活への甚大な影響と経済への深刻な打撃を受けました。
さらに今後につきましても、新型コロナウイルスのワクチン接種の開始により感染抑止と経済再開の両立を模索する段階に入ったものの、コロナ禍の収束は見えず、日本経済のみならず世界的な景気の先行きについても強い不安が残る状況が続いております。
当不動産業界におきましては、ビル賃貸市場については、新型コロナウイルス感染防止策として働き方改革の柱の一つであるテレワークが一気に広がった影響により、年度後半には空室率の上昇、募集賃料の頭打ち傾向が見られました。
マンション分譲市場につきましては、昨年の緊急事態宣言下では販売活動が制約を受けたものの供給戸数は微増し、在宅勤務に適応した住宅ニーズの高まりもあって全般として販売は堅調に推移しました。
このような厳しい事業環境の下、当社グループは、お客様と従業員の健康、安全を最優先に感染拡大防止を徹底しながら、短期的な成果に拘らず「緩やかながらも着実かつ持続的な成長」を目標とし、主要な営業地盤である東京と埼玉を中心として、ビル賃貸事業、月極および時間貸駐車場事業、マンション分譲等の住宅事業、不動産の仲介を中心とした不動産営業事業、有料老人ホーム事業を展開しております。
ビル賃貸事業、駐車場事業および住宅事業につきましては、事業基盤の拡大のため慎重ながらも積極的な姿勢をもって事業用資産の取得を行っております。
この結果、当連結会計年度の営業収益は20,791百万円(前連結会計年度21,995百万円、前連結会計年度比5.5%減)、経常利益は4,450百万円(前連結会計年度4,288百万円、前連結会計年度比3.8%増)を計上いたしました。また、固定資産売却益等の特別利益357百万円や固定資産売却損等の特別損失682百万円を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は2,876百万円(前連結会計年度2,655百万円、前連結会計年度比8.3%増)となりました。
セグメントごとの業績は、次のとおりであります。
① ビル賃貸事業
ビル賃貸事業につきましては、新型コロナウイルス感染症に対する緊急事態宣言発出前より影響が大きいと思われる商業系テナント等に対して賃料減免の協議など前倒しの対応を行った結果、収益に対する影響を最小限にとどめることができました。また不動産ファンド投資の大口配当収入もあり営業収益は12,740百万円(前連結会計年度比1,614百万円増)となり、営業利益は6,118百万円(前連結会計年度比713百万円増)となりました。
② 駐車場事業
駐車場事業につきましては、昨年に行われた緊急事態宣言下での移動自粛の影響が4月、5月に大きくなり、また、コロナ禍の収束が見えないなか年度を通じた影響を受けることとなりました。その中でも積極的な駐車場開設による収容台数の増加や料金設定等の見直しによる既存駐車場の収益改善に注力したものの、営業収益は2,775百万円(前連結会計年度比331百万円減)となり、営業利益は338百万円(前連結会計年度比355百万円減)となりました。
③ 住宅事業
住宅事業につきましては、緊急事態宣言下で販売活動が制約を受けた影響があったものの、首都圏の物件を中心に引渡しが行われた結果、営業収益は3,002百万円(前連結会計年度比2,432百万円減)となり、営業利益は270百万円(前連結会計年度比26百万円減)となりました。
④ 不動産営業事業
不動産営業事業につきましては、買取再販による不動産売却高を計上することができましたが、対面での営業活動を自粛したことにより仲介手数料が減少した結果、営業収益は1,211百万円(前連結会計年度比61百万円減)となり、営業利益は135百万円(前連結会計年度比263百万円減)となりました。
⑤ 有料老人ホーム事業
有料老人ホーム事業につきましては、新型コロナウイルス感染予防対策の徹底を最優先に行い営業活動を自粛せざるを得なかったことで新規入居者が減少した結果、営業収益はほぼ前年並みの1,011百万円(前連結会計年度比2百万円減)となり、営業利益は△64百万円(前連結会計年度は△73百万円)となりました。
(2) キャッシュ・フローの状況
2020年3月期2021年3月期
営業活動によるキャッシュ・フロー百万円
4,926
百万円
6,298
投資活動によるキャッシュ・フロー△8,973△5,010
財務活動によるキャッシュ・フロー6,1043,823
現金および現金同等物の期末残高16,27821,389

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、営業活動による収入が6,298百万円、有形固定資産の取得等の投資活動による支出が5,010百万円、借入れ等の財務活動による収入が3,823百万円あったことにより、前連結会計年度に比べ5,111百万円増加し、21,389百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動による資金の増加は6,298百万円(前連結会計年度は4,926百万円増加)となりました。これは税金等調整前当期純利益4,125百万円に加え、減価償却費1,994百万円、たな卸資産の減少1,703百万円等の資金増加要因があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動による資金の減少は5,010百万円(前連結会計年度は8,973百万円減少)となりました。これは有形及び無形固定資産売却による収入5,715百万円や投資有価証券の払戻による収入2,080百万円等の資金増加要因があったものの、有形及び無形固定資産取得による支出11,421百万円、投資有価証券の取得による支出1,856百万円等の資金減少要因があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動による資金の増加は3,823百万円(前連結会計年度は6,104百万円増加)となりました。これは借入金の返済による支出15,917百万円や社債の償還による支出2,500百万円等があったものの、借入による収入22,700百万円等があったことによるものであります。
生産、受注および販売の実績
(1) 生産および受注の実績
当社グループの事業内容は不動産関連事業のため、生産については該当事項はありません。
また、受注については当社グループの営業収益に対して重要な影響を及ぼしていないため、記載を省略しております。
(2) 販売の実績
当連結会計年度における営業収益をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度前年同期比(%)
ビル賃貸(百万円)12,74014.5
駐車場(百万円)2,775△10.7
住宅(百万円)3,002△44.8
不動産営業(百万円)1,211△4.8
有料老人ホーム(百万円)1,011△0.3
報告セグメント計(百万円)20,740△5.5
その他(百万円)13718.7
合計(百万円)20,878△5.4

(注)1.金額は、セグメント間取引高相殺消去前の数値によっております。
2.上記金額には、消費税等は含まれておりません。
財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況の分析
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債および収益・費用の報告金額および開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについては過去の実績および新型コロナウイルス感染症の影響等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針、会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定のうち重要なものについては「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)および(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響については「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載のとおりであります。
(2) 財政状態の状況
(資産)
当連結会計年度末の総資産は152,354百万円となり、前連結会計年度末と比べ9,010百万円の増加となりました。流動資産は、前連結会計年度末と比べ4,414百万円増加し33,924百万円となりました。これは住宅事業における「販売用不動産」が1,710百万円減少したものの、「仕掛販売用不動産」が1,255百万円、「現金及び預金」が4,785百万円増加したことが主な要因となっております。また固定資産は、前連結会計年度末と比べ4,596百万円増加し118,429百万円となりました。これはビル賃貸事業において事業基盤拡大のため事業用資産の取得や競争力の維持・向上のため資本的支出等7,417百万円を行った結果「有形固定資産」が2,202百万円増加したことが主な要因となっております。
(負債)
当連結会計年度末の負債は、長期借入金の増加等により前連結会計年度末と比べ4,530百万円増加し108,970百万円となりました。これは新型コロナウイルス感染症の影響に伴う景気低迷の長期化に備えるため、手元流動性の確保を図ったことによるものです。
当社グループの総資産における有利子負債残高の割合等は以下のとおりであります。
2020年3月期2021年3月期
総資産額(百万円)143,343152,354
有利子負債額(百万円)87,14491,325
有利子負債÷総資産額(%)60.859.9

(注)有利子負債は連結貸借対照表に計上された負債のうち、利息を支払っているすべての負債の合計額を記載しております。
有利子負債のうち長期借入金(1年以内返済含む)が81,200百万円、社債(1年以内償還予定含む)が9,000百万円となっており、返済・償還期限が長期に設定されている資金が有利子負債の98.8%を占めております。
(純資産)
当連結会計年度末の純資産は43,383百万円となり、前連結会計年度末と比べ4,479百万円増加いたしました。これは利益剰余金が2,563百万円、その他有価証券評価差額金が1,912百万円増加したこと等によるものです。
この結果、当連結会計年度における自己資本比率は28.5%(前連結会計年度は27.1%)、ネットDEレシオ((有利子負債-現金および預金)÷純資産額)は1.60倍(同1.80倍)、有利子負債対EBITDA倍率は13.3倍(同13.1倍)となりました。今後とも将来を見据えた投資を行いながら財務の健全化に取り組んでまいります。
(3) 経営成績の状況
(営業収益)
当連結会計年度の営業収益は20,791百万円となり、前連結会計年度に比べ1,203百万円の減収となりました。これはビル賃貸事業において不動産ファンド投資の大口配当等で営業収益が1,614百万円増加したものの、駐車場事業において新型コロナウイルス感染症の拡大による移動自粛措置により時間貸駐車場の稼働率が低下したことで営業収益が331百万円減少したこと、また住宅事業において首都圏の物件を中心に引渡しが行われましたが、新たな竣工物件がなかったことで営業収益が2,432百万円減少したこと等が主な要因となっております。
(営業利益・経常利益)
当連結会計年度の営業利益は4,850百万円となり、前連結会計年度に比べ25百万円の増益となりました。これは、駐車場事業において営業利益が減少したものの、ビル賃貸事業の営業利益が713百万円増加したこと等によるものです。
当連結会計年度の経常利益は4,450百万円となり、前連結会計年度と比べ162百万円の増益となりました。
(特別損益)
当連結会計年度の特別利益は357百万円となりました。これは固定資産売却益等によるものであります。また特別損失は682百万円となりました。これは固定資産売却損等によるものであります。
以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は2,876百万円と前連結会計年度に比べ220百万円の増加となり、1株当たり当期純利益は、前連結会計年度に比べ17.63円増加し229.79円となりました。
当連結会計年度の経営成績における新型コロナウイルス感染症の影響は軽微でありますが、1「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり各事業部門の課題に対処してまいります。
(4) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「業績等の概要」に記載のとおりです。
(5) 資本の財源および資金の流動性について
当社グループでは、税金等調整前当期純利益および減価償却費等からなる営業キャッシュ・フロー(自己資金)と長期借入金および社債等によるファイナンス(借入金)を原資とし、事業の運営および将来の事業投資として新規ビルの取得、既存ビルの建替えを含む開発、マンション用地の仕入・マンションの建築、エクイティ投資等を行っております。
当連結会計年度におきましては、ビル賃貸事業で7,417百万円、住宅事業で2,188百万円等の設備投資、またエクイティ出資を含む投資有価証券の取得1,856百万円等を行いました。その一方で新型コロナウイルス感染症の影響に伴う景気低迷の長期化に対処すべく借入金等で十分な手元流動性を確保いたしました。また、物流施設等4物件を流動化のため特別目的会社に売却するなど財務体質強化に努めております。
今後につきましては、大宮地区の再開発事業に3,706百万円(2022年3月完了予定)、池袋の再開発事業に787百万円(2022年6月完了予定)、杉並区高円寺の事業に1,400百万円(2023年5月完了予定)、板橋区成増の事業に2,633百万円(2024年6月完了予定)の投資を予定しております。
当社グループでは、資金需要に対し短期資金・長期資金のバランスを考慮しながら事業運営上必要な流動性と資金の源泉を確保し安定的な財務運営に努めてまいります。