有価証券報告書-第82期(令和3年4月1日-令和4年3月31日)

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2022/06/28 11:28
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(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は、以下のとおりであります。
①経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、政府および関係機関による景気対策や、新型コロナウイルスワクチンの普及により、経済活動に持ち直しがみられたものの、新たな変異株の出現や、 国際社会での地政学的なリスクの高まりによる異例の不確実性を背景に、年度後半から不透明な状況が続きました。
当不動産業界におきましては、外出自粛やインバウンド需要が喪失した影響から、商業施設や宿泊施設においては引き続き収益が低迷し、また、テレワークの普及等に伴いオフィス空室率も上昇しましたが、マンション分譲市場については、住まいに対する価値観やニーズの多様化、低金利が継続したこともあり、全般的に堅調に推移しました。一方、不動産投資マーケットでは、不動産投資家の旺盛な投資意欲が継続したため、物流施設や賃貸住宅を中心に、安定した市場を形成しました。
こうした事業環境のもと、当社グループは「緩やかだが、着実かつ持続的に成長する」を基本方針として、短期的な成果に拘泥することなく、一時的な好不況に左右されない強靭な収益構造の構築を目指し、当連結会計年度から2023年度までを対象期間とする中期経営計画を策定して、当社グループの「耐力(環境変化対応力)と体力(不況抵抗力)の強化」に向けた様々な施策に注力してまいりました。
この結果、当連結会計年度の営業収益は27,315百万円(前期20,791百万円、前期比31.4%増)、営業利益は4,203百万円(前期4,850百万円、前期比13.3%減)、経常利益は3,989百万円(前期4,450百万円、前期比10.4%減)、中期経営計画での方針に沿って一部事業計画を見直したことにより、特別利益(固定資産売却益)661百万円、特別損失(減損損失等)1,152百万円を計上したため、親会社株主に帰属する当期純利益は2,476百万円(前期2,876百万円、前期比13.9%減)となりました。なお、詳細は「(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ②経営成績の分析」に後掲しております。
0102010_005.pngセグメントごとの業績は、次のとおりであります。
[ビル賃貸事業]
当連結会計年度末における賃貸・管理する建物数は63棟(前期比2棟増)、稼働率は93.3%(前期末97.6%)であります。川口再開発ビルでの大型商業施設の閉店により稼働率が低下したものの、その他の賃貸・管理ビルでは、迅速なリーシング活動により稼働率の向上が図られております。
当連結会計年度では、東日本の玄関口である大宮駅において、東口再開発の端緒として期待の大きい複合商業施設「大宮門街(かどまち)」が竣工しました。また主要ビルにおいては、抗菌処理等の感染予防対策やテナント向けオープンスペースの整備など、ニーズ変化に的確に対応した魅力的なオフィス環境の提供に努めました。
前年度での一時的な大口配当の剥落の影響から、営業収益は10,387百万円(前期比2,352百万円減)、営業利益は4,177百万円(前期比1,941百万円減)となりましたが、このように当セグメントにおける賃貸事業は堅調に推移しております。
[駐車場事業]
当連結会計年度末に管理・運営する駐車場数は799ヶ所(前期比28ヶ所増)、収容台数は17,094台(前期比200台増)であります。当連結会計年度は、ワクチン接種が普及し行動制限が徐々に解除されたことから、時間貸駐車場の稼働状況が大きく改善しました。また、積極的な新規開設に加え、管理・メンテナンス費用の見直しなどのコストの抑制策、業務システム導入による効率化等を推し進めた結果、営業収益は2,930百万円(前期比155百万円増)、営業利益は498百万円(前期比160百万円増)となり、営業利益率も17.0%(前期比4.8%増)まで回復しております。
[住宅事業]
当連結会計年度は、大型分譲マンション3棟が竣工となり、新型コロナウイルス感染症の拡大により供給が落ち込んだ2020年度の反動による分譲マンション市場の需要増加を背景に、販売が好調に推移、営業収益は10,881百万円(前期比7,878百万円増)、営業利益は429百万円(前期比159百万円増)となりました。
[不動産営業事業]
首都圏の金融機関とのビジネスマッチング契約の締結、さらに税理士・弁護士等の士業や有力資産家との連携が順調に進み、大口不動産仲介案件の成約件数が増加しました。また、主要営業地盤である埼玉県での大型の企業誘致にも成功し、営業収益は2,017百万円(前期比806百万円増)、営業利益は1,197百万円(前期比1,061百万円増)となりました。
[有料老人ホーム事業]
新型コロナウイルス感染症の断続的な拡大に伴い、営業活動に制限を受けるとともに、施設内での集団感染を予防するための対策を優先させたことから、新規入居者の受入が抑制され、営業収益は982百万円(前期比28百万円減)、営業利益△115百万円(前期比51百万円減)となりましたが、オンライン施設見学等を活用することで、入居率は感染症禍以前の水準まで回復しつつあります。
当連結会計年度では、施設内でのワクチン集団接種を迅速に進めたほか、より良い人材の確保および定着に向け、人員配置の適正化やICT機器の導入等による業務効率化、教育体制の拡充を行いました。また2022年度からの利用料金の一部引上げも決定しております。
②財政状態の状況
(資産)
当連結会計年度末における総資産は155,355百万円となり、前期末と比べ3,001百万円の増加となりました。
このうち、流動資産は42,934百万円となり、前期末と比べ9,009百万円の増加となりました。これは住宅事業における「仕掛販売用不動産」が335百万円減少したものの、「現金及び預金」が9,273百万円増加したことが主な要因であります。
また、固定資産は112,421百万円となり、前期末と比べ6,007百万円の減少となりました。これは「投資有価証券」が1,853百万円増加したものの、ビル賃貸事業において、保有するオフィス賃貸ビル4物件を流動化のため特定目的会社に売却したことにより、「有形固定資産」が8,761百万円減少したことが主な要因であります。
(負債)
当連結会計年度末における負債は109,616百万円となり、前期末と比べ646百万円の増加となりました。これは未払法人税等の増加等によるものであります。なお、有利子負債残高(利息を支払っているすべての負債)は91,153百万円となり、前期末比172百万円の減少となりました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は45,739百万円となり、前期末と比べ2,355百万円の増加となりました。これは「利益剰余金」が2,270百万円増加したことが主な要因であります。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金および現金同等物(以下「資金」という。)は、営業活動により7,609百万円増加、投資活動により2,337百万円増加、財務活動により664百万円減少したことにより、前期末と比べ9,282百万円の増加となり、30,672百万円となりました。
2021年3月期2022年3月期前期比増減
営業活動によるキャッシュ・フロー(百万円)6,2987,6091,310
投資活動によるキャッシュ・フロー(百万円)△5,0102,3377,348
財務活動によるキャッシュ・フロー(百万円)3,823△664△4,487
現金及び現金同等物の期末残高(百万円)21,38930,6729,282

当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況は、以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動による資金の増加は7,609百万円(前期比1,310百万円増加)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益3,498百万円および減価償却費1,959百万円、棚卸資産の減少額1,759百万円等の資金増加があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動による資金の増加は2,337百万円(前期比7,348百万円増加)となりました。これは主に、有形及び無形固定資産の取得による支出4,776百万円、投資有価証券取得による支出1,884百万円等の資金減少があった一方で、有形及び無形固定資産の売却による収入9,420百万円、投資有価証券の払戻による収入406百万円等の資金増加があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動による資金の減少は664百万円(前期比4,487百万円減少)となりました。これは主に、借入れによる収入14,935百万円や社債の発行による収入1,000百万円等の資金増加があった一方で、借入金の返済による支出16,012百万円や配当金の支払による支出375百万円等の資金減少があったことによるものであります。
④生産、受注および販売の実績
a 生産および受注の実績
当社グループの事業内容は不動産関連事業のため、生産については該当事項はありません。
また、受注については当社グループの営業収益に対して重要な影響を及ぼしていないため、記載を省略しております。
b 販売の実績
当連結会計年度における営業収益をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度前年同期比(%)
ビル賃貸(百万円)10,387△18.5
駐車場(百万円)2,9305.6
住宅(百万円)10,881262.4
不動産営業(百万円)2,01766.5
有料老人ホーム(百万円)982△2.8
報告セグメント計(百万円)27,19931.1
その他(百万円)17325.4
合計(百万円)27,37231.1

(注)金額は、セグメント間取引高相殺消去前の数値によっております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は以下のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
①経営方針・経営戦略・経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
かかる内外経済や市場環境の様々な不確実性に対処するため、当社グループでは環境変化に柔軟に適応できる組織づくりが必要と認識し、当連結会計年度を初年度とする中期経営計画に基づき、サステナビリティ・ビジョンからバックキャストして検討された全社テーマに取り組んでおります。
当連結会計年度の取り組み状況は、以下のとおりであります。
<中期経営計画の進捗>0102010_006.pngまた、定量的な評価指標として重視する、当連結会計年度末の自己資本比率は29.4%(前期末28.5%)、ネットDEレシオ((有利子負債-現金および預金)÷純資産額)は1.31倍(同1.60倍)、EBITDA有利子負債倍率9.7倍(同10.1倍)となりました。引き続き、財務構成に留意しつつ、サステナビリティに軸足を置いた組織改革を進め、当社グループの企業価値向上に取り組んでまいります。
②経営成績の分析
(営業収益)
当連結会計年度の営業収益は各事業の順調な進捗により27,315百万円となり、前期比6,524百万円増加しました。これは主に、住宅事業においてマンション販売が好調に推移したこと(前期比7,878百万円増加)、不動産営業事業において大型の企業誘致のほか一般仲介手数料も増えたこと(前期比806百万円増加)、駐車場事業において時間貸駐車場が回復したこと(前期比155百万円増加)等によるものであります。なお、ビル賃貸事業は、前年度に生じた一時的な不動産ファンド投資の大口配当が剥落した影響から前期比2,352百万円減少しましたが、賃貸料等収入は堅調であります。
(営業利益・経常利益)
当連結会計年度の営業利益は4,203百万円となり、前期比646百万円減少しました。これは主に、ビル賃貸事業が、前年度に生じた一時的な不動産ファンド投資の大口配当が剥落した影響から前期比1,941百万円の減少となったことによるものであります。しかしながら、不動産営業事業(前期比1,061百万円増加)が当社グループを大きく牽引し、駐車場事業(前期比160百万円増加)、住宅事業(前期比159百万円増加)もそれぞれ増益となりました。
また、当連結会計年度の経常利益は3,989百万円となり、前期比461百万円減少しました。これは主に、受取配当金の増加、支払利息の減少があった一方で、上記営業利益が減少したことによるものであります。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は2,476百万円となり、前期比400百万円減少しました。中期経営計画での方針に沿って一部事業計画を見直したことにより、特別損失(減損損失等)が469百万円増加しましたが、ビル賃貸事業において、保有するオフィス賃貸ビル4物件を流動化のため特別目的会社に売却したことで特別利益(固定資産売却益)が303百万円増加、また、法人税等合計が226百万円減少したことにより、経常利益での減益幅を縮めることができました。
③財政状態およびキャッシュ・フローの状況の分析
当社グループの当連結会計年度末における財政状態およびキャッシュ・フローは、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況の分析 ⑴経営成績等の状況の概要 ②財政状態の状況 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
④資本の財源および資金の流動性
当社グループの資金需要のうち主なものは、不動産(棚卸資産を含む)の取得・開発資金等であり、これら資金需要につきましては、営業活動によるキャッシュ・フロー(自己資金)のほか、金融機関からの借入金や社債(コマーシャルペーパーを含む)の発行により調達しております。さらに、複数の金融機関と当座貸越契約を締結することにより、十分な資金の流動性を確保するとともに、資金調達に際しては、これら多様な調達手段から、時機に応じて最適な手段を選択することで、安定的な財源を確保し、あわせて調達コストの低減を図っております。
当連結会計年度では、ビル賃貸事業で4,181百万円、住宅事業で419百万円の設備投資を行ったほか、エクイティ出資を含む投資有価証券1,884百万円を取得しましたが、他方で、オフィス賃貸ビル4物件を流動化のため特別目的会社に売却し、資金調達負担を軽減しております。
今後につきましては、「高円寺北二丁目計画」(杉並区高円寺)に946百万円(2023年9月完了予定)、「成増大栄ビル建替え事業」(板橋区成増)に2,433百万円(2024年6月完了予定)の投資を予定しております。
また、当社グループでは、先行き不透明感が強い経済情勢等を鑑みて、当連結会計年度末において現金及び預金を積み増す等の対応を行っており、当連結会計年度末の残高は31,153百万円となっております。
⑤重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成にあたり、経営者は、資産、負債、収益及び費用の報告額に不確実性がある場合、作成時に入手可能な情報に基づいて、その合理的な金額を算出するために見積りおよび仮定を用いておりますが、これらの見積りおよび仮定に基づく数値は、実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成に用いた会計上の見積りおよび仮定のうち、特に重要なものは、「第5 経理の状況 1.連 結財務諸表等 (1)連結財務諸表注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)および(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
なお、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が会計上の見積りに与える影響に関する情報は、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表注記事項(追加情報)」に記載のとおりであります。