有価証券報告書-第47期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/07/22 15:00
【資料】
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【項目】
169項目
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況及び分析の内容は次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。
(1)経営成績の状況及び分析
(単位:百万円)
2019年3月期2020年3月期増減額増減率
売上高505,223433,553△71,669△14.2%
営業利益又は営業損失(△)7,390△36,473△43,864-%
経常利益又は経常損失(△)7,063△36,341△43,404-%
親会社株主に帰属する当期純損失(△)△68,662△80,224△11,561-%

当連結会計年度における国内経済は、雇用・所得環境の改善が続く中、緩やかな回復基調で推移しておりましたが、新型コロナウイルス感染症の世界的な蔓延により、感染症の拡大防止と経済活動の早期再開の両立という舵取りの難しい状況が生じております。
また、貸家の新設着工戸数は、金融機関による融資条件の厳格化に伴い、3年連続の減少(前年度比14.2%減)となりました。わが国の賃貸住宅市場においては、空家数の増加が続いており、全国的な需要回復は難しい中で安定した入居率を確保するには、将来的にも高い入居率が見込めるエリアへの重点的な物件供給や当社独自の強みを活かした付加価値サービスの提供による差別化戦略が重要と考えております。
このような状況の中、当社グループは、中期経営計画「Creative Evolution 2020」で掲げた「企業価値の更なる向上に資するコア事業の継続的成長と成長分野の基盤構築」を基本方針とし、企業価値と新たな社会価値の創造に取り組むとともに、界壁等の施工不備問題の早期解決に会社を挙げて取り組んでまいりましたが、施工不備に起因した事業収益の悪化等により大幅な赤字決算となりました。
① 売上高
売上高は、前連結会計年度比71,669百万円(14.2%)減少の433,553百万円となりました。これは主に、補修工事完了と入居者募集の再開が遅れたことにより、賃貸事業売上高が前連結会計年度比37,449百万円(8.8%)減少の388,939百万円、界壁等の施工不備問題の発生を受けて建築請負工事の新規受注を停止していることから、開発事業売上高が前連結会計年度比35,185百万円(59.6%)減少の23,806百万円となったことによるものであります。
② 売上総利益
売上総利益は、前連結会計年度比50,793百万円(66.6%)減少の25,441百万円、売上総利益率は5.9%(前連結会計年度比9.2ポイント低下)となりました。これは主に、賃貸事業の入居率低下に伴う売上総利益率の低下によるものであります。
③ 営業損失
営業損失は、36,473百万円(前連結会計年度は営業利益7,390百万円)となりました。これは主に、コスト削減等により販売費及び一般管理費が前連結会計年度比6,929百万円(10.1%)減少したものの、売上総利益の減少を抑えるには至らなかったことによるものであります。なお、売上高営業利益率は△8.4%(前連結会計年度は同1.5%)となりました。
④ 経常損失
経常損失は、営業損失の計上に伴い、36,341百万円(前連結会計年度は経常利益7,063百万円)となりました。なお、売上高経常利益率は△8.4%(前連結会計年度は同1.4%)となりました。
⑤ 親会社株主に帰属する当期純損失
親会社株主に帰属する当期純損失は、80,224百万円(前連結会計年度比11,561百万円損失増加)となりました。これは主に、界壁等の施工不備に係る補修工事費用の損失負担見込額等24,395百万円、固定資産及びのれんの減損損失7,620百万円を特別損失に計上したこと、繰延税金資産の取り崩しに伴い法人税等調整額(損)21,485百万円を計上したこと等によるものであります。
なお、1株当たり当期純損失は328.77円(前連結会計年度比50.19円損失増加)となりました。
(セグメント別の経営成績の状況及び分析)
(単位:百万円)
売上高営業利益
前期当期増減額前期当期増減額
賃貸事業426,388388,939△37,44914,987△20,828△35,815
開発事業58,99223,806△35,185△995△5,181△4,185
シルバー事業13,92214,620698△846△559286
ホテルリゾート・その他事業5,9196,186266△1,346△1,000346
調整額---△4,407△8,903△4,496
合計505,223433,553△71,6697,390△36,473△43,864

① 賃貸事業
賃貸事業においては、入居する部屋を自分好みにアレンジできる「my DIY」、スマートフォンで遠隔からの家電操作や施錠などが可能なスマートアパート化の推進、業界初となる賃貸契約の電子化、大手警備保障会社との提携によるセキュリティサービスなど豊富な付加価値を提供するとともに、法人の寮社宅需要の取り込み、外国人入居者サポート体制の充実等により安定した入居率の確保を図っております。また、ASEAN諸国の子会社において、サービスアパートメント・オフィス等の開発・運営を行っております。
入居率については、界壁等の施工不備の全棟調査を優先させたことや施工体制の整備が遅れたこと等により、補修工事完了と入居者募集の再開が遅れたこと、新型コロナウイルス感染症の影響により繁忙期である年度末にかけて就職や転勤に伴う入居需要が抑制されたこと等により、当連結会計年度末の入居率は83.07%(前期末比△1.26ポイント)、期中平均入居率は80.78%(前期比△7.56ポイント)となりました。また、当連結会計年度末の管理戸数は575千戸(前期末比1千戸増)となりました。
これらの結果、当連結会計年度の業績は、入居率の低下に伴う賃料収入等の減少に加え、空室損失引当金を3,178百万円繰り入れた結果、売上高388,939百万円(前連結会計年度比8.8%減)、営業損失20,828百万円(前連結会計年度は営業利益14,987百万円)となりました。
② 開発事業
開発事業においては、人口流入が続き、将来的にも高い入居率が見込める三大都市圏に絞った受注活動、理想の土地活用を実現する建築バリエーションの拡大、商品価格や仕入ルートの見直し等による採算性の向上に取り組んでおり、子会社の株式会社もりぞうは木曾ひのきを用いた戸建注文住宅の建築請負事業を展開しております。
しかしながら当期においては、大都市圏での競争激化やアパートローンの融資環境変化等に加え、界壁等の施工不備問題を背景に新規受注を停止していることから、当連結会計年度の総受注高は7,814百万円(前連結会計年度比87.9%減)、当連結会計年度末の受注残高は27,696百万円(前連結会計年度末比55.6%減)となりました。
なお、当社の連結子会社であったライフリビング株式会社は、当社保有株式の全てを売却し、連結の範囲から除外したため、同社の総受注高および受注残高は含めておりません。
これらの結果、当連結会計年度の業績は、売上高23,806百万円(前連結会計年度比59.6%減)、営業損失5,181百万円(前連結会計年度比4,185百万円損失増加)となりました。
③ シルバー事業
成長戦略事業であるシルバー事業は、既存施設の稼働率が上昇し始めたことにより全体の採算性が改善し、黒字化に向けて順調に推移いたしました。当連結会計年度末の施設数は87施設となっております。
なお、シルバー事業においては、新型コロナウイルスの感染リスクを懸念して介護サービスの利用者が減少するなどの影響を受けており、当該状況は2020年6月まで継続するものと想定しております。
当連結会計年度の業績は、売上高14,620百万円(前連結会計年度比5.0%増)、営業損失559百万円(前連結会計年度比286百万円改善)となりました。
④ ホテルリゾート・その他事業
グアムリゾート施設や国内ホテルの運営、旅行事業、ファイナンス事業等を行っているホテルリゾート・その他事業の当連結会計年度の業績は、売上高6,186百万円(前連結会計年度比4.5%増)、営業損失1,000百万円(前連結会計年度比346百万円改善)となりました。
(生産、受注及び販売の実績)
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
前年同期比(%)
開発事業(百万円)19,415△56.5

(注)1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.セグメント間の取引については相殺消去しております。
3.生産実績の著しい変動は、金融機関のローン審査厳格化や施工不備問題に伴う新規受注停止により生産活動が低迷したことに加え、連結子会社であったライフリビング株式会社を売却して連結の範囲から除外したことによるものであります。
b.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称総受注高(百万円)前年同期比(%)受注残高(百万円)前年同期比(%)
開発事業7,814△87.927,696△55.6

(注)1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.セグメント間の取引については相殺消去しております。
3.上記以外の事業につきましては、受注の形態を取っておりませんので記載しておりません。
4.受注実績の著しい変動は、金融機関のローン審査厳格化や施工不備問題に伴う新規受注停止に加え、連結子会社であったライフリビング株式会社を売却して連結の範囲から除外したことによるものであります。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
前年同期比(%)
賃貸事業(百万円)388,939△8.8
開発事業(百万円)23,806△59.6
シルバー事業(百万円)14,6205.0
ホテルリゾート・その他事業(百万円)6,1864.5
合計(百万円)433,553△14.2

(注)1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.当社グループの相手先は不特定の法人・個人であるため、主要な販売先の記載は省略しております。
3.セグメント間の取引については相殺消去しております。
4.開発事業の販売実績の著しい変動は、金融機関のローン審査厳格化や施工不備問題に伴う受注の低迷に加え、連結子会社であったライフリビング株式会社を売却して連結の範囲から除外したことによるものであります。
(2)財政状態の状況及び分析
(単位:百万円)
2019年3月期2020年3月期増減額増減率
資産291,790196,953△94,837△32.5%
負債210,452195,363△15,088△7.2%
純資産81,3381,589△79,748△98.0%

当連結会計年度末の資産は、前連結会計年度末比94,837百万円減少の196,953百万円となりました。これは主に、業績の悪化や補修工事関連の支払等により現金及び預金が24,034百万円、自社所有の賃貸用住宅及びホテルの売却、減損損失の計上等により建物及び構築物(純額)が16,678百万円、土地が12,328百万円、リース資産(純額)が4,534百万円、事業資金の安定的な確保を目的とした保有株式の売却等により有価証券及び投資有価証券が4,043百万円、翌期以降の事業計画の見直しに伴い繰延税金資産が22,352百万円それぞれ減少したことによるものであります。
当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末比15,088百万円減少の195,363百万円となりました。これは主に、補修工事単価の上昇等により補修工事関連損失引当金が5,540百万円、補修工事の遅延に伴い入居者募集再開の遅れを見込んだこと等により空室損失引当金が3,178百万円増加した一方、有利子負債が11,909百万円、入居者募集停止に伴うアパートのマンスリー利用減少等による前受金及び長期前受金が5,056百万円、工事未払金が3,469百万円それぞれ減少したことによるものであります。
当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末比79,748百万円減少の1,589百万円となりました。これは主に、その他有価証券評価差額金が766百万円増加した一方、親会社株主に帰属する当期純損失80,224百万円を計上したことによるものであります。なお、自己資本比率は前連結会計年度末比27.0ポイント下落し0.7%となりました。
上記の通り、施工不備に起因した業績悪化により純資産が大きく毀損する結果となりましたが、事業計画で掲げた構造改革を断行し、賃貸事業の収益力を強化することにより純資産の改善に努めてまいります。
(3)キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
(単位:百万円)
2019年3月期2020年3月期増減額
営業活動によるキャッシュ・フロー△7,212△51,639△44,427
投資活動によるキャッシュ・フロー7,37939,53332,154
財務活動によるキャッシュ・フロー△15,181△12,0483,132
現金及び現金同等物残高83,01958,916△24,102

営業活動によるキャッシュ・フローは、51,639百万円の支出(前連結会計年度比44,427百万円の支出増加)となりました。これは主に、減価償却費が12,157百万円、減損損失が7,620百万円、補修工事関連損失引当金繰入額が21,501百万円、空室損失引当金の増加額が3,178百万円となった一方、税金等調整前当期純損失が58,013百万円、有形固定資産売却益が7,973百万円、投資有価証券売却益が2,368百万円、前受金の減少額が5,032百万円、補修工事関連支払額が18,855百万円となったことによるものであります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、39,533百万円の収入(前連結会計年度比32,154百万円の収入増加)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出が3,601百万円となった一方、有形固定資産の売却による収入が32,057百万円、投資有価証券の売却による収入が8,213百万円あったことによるものであります。
財務活動によるキャッシュ・フローは、12,048百万円の支出(前連結会計年度比3,132百万円の支出減少)となりました。これは主に、リース債務の返済が5,093百万円、借入返済及び社債償還が6,955百万円あったことによるものであります。
資金の流動性につきましては、賃貸事業における入居率改善の遅れや多額の補修工事費用の支払等により、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は58,916百万円(前連結会計年度末比24,102百万円減少)、フリーキャッシュ・フローは△12,106百万円(前連結会計年度末比12,273百万円減少)となりました。
当連結会計年度においては、有形固定資産及び投資有価証券の売却により資金調達を行いましたが、翌期以降についても、保有資産の売却等を含め事業活動に必要な資金の安定的な確保及び流動性の維持に努め、資金計画に基づき想定される需要に十分対応できる資金を引き続き確保してまいります。
キャッシュ・フロー指標の推移は次のとおりであります。
2016年3月期2017年3月期2018年3月期2019年3月期2020年3月期
自己資本比率(%)44.247.047.227.70.7
時価ベースの自己資本比率(%)54.644.766.318.533.0
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)2.31.82.0--
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)23.639.838.2--

自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
(注1)いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
(注2)株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により計算しております。
(注3)有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っているすべての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の「利息の支払額」を使用しております。
(注4)2019年3月期及び2020年3月期のキャッシュ・フロー対有利子負債比率及びインタレスト・カバレッジ・レシオについては、営業キャッシュ・フローがマイナスのため記載しておりません。
(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては、合理的な基準に基づき会計上の見積りを行っておりますが、見積り特有の不確実性が存在するため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しておりますが、特に以下の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定が重要であると考えております。
①補修工事関連損失引当金
当社施工物件(アパート)の施工不備に係る補修工事費用及び付帯費用の発生に備えるため、不備の発生率等に基づき、損失負担見込額を計上しております。
補修工事費用及び付帯費用(他社管理物件の空室補償費用、入居者様の住替費用、外部調査費用)については、工事の進捗状況、補修方法や補修単価、入居者様の住替えの必要性やその方法など、不備内容により異なる条件に応じて、その金額を合理的に見積っております。
なお、補修工事に経営資源を集中的に投入して組織的に実行することにより早期の入居者募集再開を進めておりましたが、施工不備問題の対応を安定して実施するためには業績の回復が不可欠であることから、2020年7月以降、補修工事の規模・体制を一旦縮小させ、業績及び財務状況の改善を図ることとしております。
これらの見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において、引当金の追加計上が必要となる可能性があります。
②空室損失引当金
賃貸事業における一括借上契約による空室損失の発生に備えるため、個別賃貸物件ごとの設定家賃及び将来予測入居率に基づき、合理的な見積可能期間内に発生が見込まれる損失の額を計上しております。
空室損失引当金の計算にあたっては、補修工事による入居者募集停止等の影響(工事時期や募集再開時期)を見積って将来予測入居率に反映させております。なお、新型コロナウイルス感染症の影響により、入居率は2020年6月まで弱含みで推移するとの仮定を置いております。
これらの見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において、引当金の追加計上が必要となる可能性があります。
③繰延税金資産の評価
当社施工物件で判明した界壁等の施工不備の影響により、2期連続で多額の繰越欠損金を計上したこと、補修工事の進捗遅延により翌期以降も十分な物件供給が困難であること、新型コロナウイルス感染症の蔓延よる経済活動の停滞等の影響により、業績の急激な回復は見込めないことから、一部の繰越欠損金に期限切れが発生する見込みとなっております。
このような状況を前提として、翌期以降に解消される将来減算一時差異に係る繰延税金資産についての回収可能性の有無を判断しております。
これらの見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において繰延税金資産の金額に重要な影響を与える可能性があります。