有価証券報告書-第109期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/25 14:14
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【項目】
154項目
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績」という。)の状況の概要は次のとおりである。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における日本経済は、長期化する米中貿易摩擦、海外経済の減速などを背景に輸出や生産に弱さがみられ、消費税率引き上げに伴い個人消費が低調となったことに加え、年度末には新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあり、先行きが不透明で不安定な状況となった。
埠頭・倉庫業界においては、人手不足に伴い人件費や作業費などのコストが増加し、厳しい経営環境が継続した。
このような経営環境の中、当社グループでは、グループ各社の連携を一層強化し、営業の拡大、経営基盤の強化、社会的責任の向上に取り組んできた。
国内総合物流事業では、国内貨物やコンテナターミナルの取扱数量が増加し、また、倉庫保管残高も前期を上回った。国際物流事業では、ロシア国内での貨物取扱いが増加した。この結果、営業収入は前期を上回ったが、人件費、作業費、運送費などが増加して収益を圧迫したことにより、営業利益は前期を下回った。しかし、為替差損益の改善や持分法による投資利益の計上などにより、親会社株主に帰属する当期純利益は前期並みとなった。
この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなった。
a.財政状態
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ5億9千8百万円減少し、382億7千1百万円となった。当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ6億4千4百万円減少し、180億5千4百万円となった。当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ4千5百万円増加し、202億1千7百万円となった。
b.経営成績
当連結会計年度の営業収入は347億3千1百万円(前期比5億9千8百万円、1.8%の増収)、営業利益は14億5千7百万円(前期比2億6千7百万円、15.5%の減益)、経常利益は17億2千7百万円(前期比1億8千4百万円、9.6%の減益)、親会社株主に帰属する当期純利益は12億5千2百万円(前期並み)となった。
なお、新型コロナウイルス感染症拡大による当連結会計年度への業績の影響については、国内総合物流事業、国際物流事業ともに軽微であった。
セグメントの経営成績は次のとおりである。
*以下の営業収入及び営業利益は、セグメント間の取引を含んでいる。
○国内総合物流事業
国内総合物流事業の営業収入は、315億1千9百万円、前期比0.8%の増収、営業利益は、13億8百万円、前期比18.1%の減益となった。国内貨物の倉庫保管残高や、コンテナターミナルでの取扱数量の増加により営業収入は前期を上回った。しかし、人件費や作業費、運送費などが増加したことにより収益は圧迫され、営業利益は、前期を下回った。
≪倉庫業≫
倉庫業の営業収入は、106億6千4百万円、前期比2.9%の増収となった。
平均保管残高は、30万トン(前期29万トン)、入出庫数量は、363万トン(前期362万トン)であった。普通倉庫貨物は、バナナなど輸入青果物の取扱いは減少したが、食品類、紙や穀物などの取扱いが増加した。冷蔵倉庫貨物は、堅調に推移した。
≪港湾運送業≫
港湾運送業の営業収入は、78億6千万円、前期比0.5%の減収となった。
ばら積み貨物の取扱数量は、487万トン(前期495万トン)であった。穀物類の取扱いは増加したが、石炭、残土の取扱いが減少した。
コンテナ取扱数量は、261千TEU(前期243千TEU)であった。川崎港での取扱いが大きく増加した。
≪自動車運送業≫
自動車運送業の営業収入は、59億7千5百万円、前期比0.1%の増収となった。取扱いが堅調に推移した。
≪その他の業務≫
その他の業務の営業収入は、70億1千8百万円、前期比0.4%の減収となった。物流関連施設の賃貸収入は増加したが、工場構内作業の収入が減少した。
○国際物流事業
国際物流事業の営業収入は、35億3百万円、前期比11.9%の増収、営業利益は、1億3千8百万円、前期比18.9%の増益となった。ロシアでの倉庫事業拡大に伴い、取扱いが増加した。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度の現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末より4億7千4百万円増加し、18億2千3百万円となった。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、法人税等の支払額が減少したことや保険金の受取額などがあったことにより、前連結会計年度に比べ13億3千9百万円増加し、35億4千2百万円となった。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、17億8千万円の純支出となった。固定資産の取得による支出が減少したことなどにより、前連結会計年度に比べ2億5千7百万円純支出が減少した。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、12億9千4百万円の純支出となった。長期借入れによる収入が減少したことなどにより、前連結会計年度に比べ9億9千7百万円純支出が増加した。
③生産、受注及び販売の実績
当社グループ(当社及び連結子会社)は、役務の提供を主体とする総合物流業者であり、生産、受注及び販売の実績を区分して把握することは困難であるため、これに代えてセグメント別業務別の営業収入及び取扱数量を記載している。
a.セグメント別業務別営業収入
当連結会計年度(自 2019年4月1日 至 2020年3月31日)
セグメント名業務の名称営業収入
金額(百万円)前年同期比(%)
国内総合物流事業倉庫業10,664102.9
港湾運送業7,86099.5
自動車運送業5,975100.1
その他の業務7,01899.6
31,519100.8
国際物流事業国際運送取扱業3,503111.9
合計35,022101.8

(注) 上記の金額には、セグメント間の取引が含まれている。
b.セグメント別業務別取扱数量
○国内総合物流事業
1) 倉庫業
(イ)倉庫入出庫残高及び回転率
項目期首残高入庫出庫期末残高回転率(%)
数量
(千トン)
数量
(千トン)
数量
(千トン)
数量
(千トン)
数量
倉庫前連結会計年度2621,6951,68227551.7
(2018年4月1日~
2019年3月31日)
当連結会計年度2751,6741,66428548.9
(2019年4月1日~
2020年3月31日)
サイロ前連結会計年度171261232149.4
(2018年4月1日~
2019年3月31日)
当連結会計年度211491442653.0
(2019年4月1日~
2020年3月31日)

(注) 貨物回転率は貨物荷動きの状況を示すものであって、下記の算式によって算定される。
回転率=年間入出庫高×100
前月末残高及び当月末残高の年間累計

(ロ)倉庫品目別保管残高
品目前連結会計年度
(2019年3月31日現在)
当連結会計年度
(2020年3月31日現在)
保管数量保管数量
千トン比率(%)千トン比率(%)
倉庫
農水産品6323.06221.7
金属62.462.4
金属製品・機械145.4124.4
窯業品00.231.2
その他の化学工業品8229.99433.1
紙・パルプ279.83311.6
食料工業品207.3238.3
雑工業品10.500.2
雑品5921.54917.1
275100.0285100.0
サイロ
農水産品1678.42079.1
雑品421.6520.9
21100.026100.0

2) 港湾運送業
(イ)一般貨物
作業別前連結会計年度
(2018年4月1日~2019年3月31日)
当連結会計年度
(2019年4月1日~2020年3月31日)
搬入
本船揚(千トン)1,7801,585
艀揚(千トン)164
車卸(千トン)256172
計(千トン)2,0531,763
搬出
本船積(千トン)681606
艀積(千トン)--
車積(千トン)634617
計(千トン)1,3161,223
搬入、搬出を伴わない作業(千トン)3,6273,763
合計(千トン)6,9976,750

(ロ)コンテナ
作業別前連結会計年度
(2018年4月1日~2019年3月31日)
当連結会計年度
(2019年4月1日~2020年3月31日)
取扱数量(TEU)243,994261,728

(注) TEU:20フィートコンテナ換算
3) 自動車運送業
扱別前連結会計年度
(2018年4月1日~2019年3月31日)
当連結会計年度
(2019年4月1日~2020年3月31日)
輸送数量(千トン)1,7081,721

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等
1)財政状態の分析
(資産)
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ5億9千8百万円減少し、382億7千1百万円となった。投資有価証券や有形固定資産の減少などに伴い、前連結会計年度末に比べ固定資産が12億3千2百万円減少した。
(負債)
負債は、前連結会計年度末に比べ6億4千4百万円減少し、180億5千4百万円となった。長期借入金や設備関係支払手形などが減少した。
(純資産)
純資産は、前連結会計年度末に比べ4千5百万円増加し、202億1千7百万円となった。その他有価証券評価差額金が7億6千6百万円減少したが、利益剰余金が8億6千6百万円増加した。
この結果、自己資本比率は52.5%で前連結会計年度末比0.8ポイント上昇した。
2)経営成績の分析
(イ) 営業収入
当連結会計年度における営業収入は、347億3千1百万円(前連結会計年度対比5億9千8百万円の増収)となった。なおセグメント別営業収入の概要については、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載している。
(ロ) 営業原価
当連結会計年度における営業原価は、313億9千7百万円(前連結会計年度対比7億1千8百万円の増加)となった。この結果、営業原価の営業収入に対する比率は90.4%となり、前連結会計年度の89.9%と比較して0.5ポイント上昇した。
(ハ) 販売費及び一般管理費
当連結会計年度における販売費及び一般管理費は、18億7千6百万円(前連結会計年度対比1億4千7百万円の増加)となった。
(ニ) 営業外損益
当連結会計年度における営業外収益は、3億9千万円(前連結会計年度対比3百万円の減少)となった。
営業外費用は1億2千万円(前連結会計年度対比8千6百万円の減少)となった。
金融収支は前連結会計年度より3千2百万円改善し、6千4百万円の黒字となった。
(ホ) 特別損益
当連結会計年度における特別利益は、受取保険金5億1千7百万円、受取補償金1億6千6百万円、固定資産売却益4百万円を計上した。一方、特別損失は、火災による損失3億5千4百万円、固定資産除却損2億7千3百万円を計上した。
b.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループは、経営三カ年計画として2018年3月期から2020年3月期までの3年間の経営三カ年計画を策定し、最終年度である2020年3月期連結業績目標を、営業収入360億円、営業利益20億円、親会社株主に帰属する当期純利益13億円とした。
当連結会計年度における日本経済は、長期化する米中貿易摩擦、海外経済の減速などを背景に輸出や生産に弱さがみられ、消費税率引き上げに伴い個人消費が低調となったことに加え、年度末には新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあり、先行きが不透明で不安定な状況となった。
埠頭・倉庫業界においては、人手不足に伴い人件費や作業費などのコストが増加し、厳しい経営環境が継続した。
このような経営環境の中、経営三カ年計画策定時掲げた連結業績の目標に対し、営業収入96.5%、営業利益72.9%、親会社株主に帰属する当期純利益96.3%の達成率となった。
なお、各科目の増減に関する認識及び分析・検討内容については、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載している。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.キャッシュ・フローの分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、法人税等の支払額が減少したことや保険金の受取額などがあったことにより、前連結会計年度に比べ13億3千9百万円増加し、35億4千2百万円となった。
なお、当連結会計年度における投資活動・財務活動によるキャッシュ・フローの概要については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載している。
b.資本の財源及び資金の流動性
1)資本構成
当社グループの当連結会計年度末における資本構成は、その他の包括利益累計額を含めた自己資本が201億9百万円(前連結会計年度末対比3千万円の増加)で総資産に対する比率は52.5%、借入金が98億1千1百万円(前連結会計年度末対比8億7千1百万円の減少)同25.6%となっており、前連結会計年度末と比較して自己資本比率が0.8ポイント上昇し、借入金の比率は1.9ポイント低下している。自己資本比率の上昇は、既存固定資産の経年減等に伴う総資産の減少等によるものである。また、総資産借入金比率の低下は、借入金残高が減少したことと、総資産が減少したことによるものである。
2)資金の流動性
当社グループの当連結会計年度末における流動比率は63.9%で、前連結会計年度末における60.4%と比べ3.5ポイント上昇した。
連結会計年度の売上債権の平均滞留期間は1.4ヶ月で前連結会計年度と変わりなく、回収はおおむね順調であった。
3)財政政策
当社グループは現在、運転資金及び設備資金を内部資金及び借入により調達している。運転資金の借入については、当社が一括して金融機関等から短期借入により調達し、関係会社の資金需要に応じて貸し付ける方法をとっている。設備資金については、金融収支の安定性を重視し、金融機関から長期固定金利の借入により調達している。
なお、経営三カ年計画(2020年度~2022年度)期間において投資する約230億円は、自己資金及び金融機関からの借入金にて調達する方針である。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されている。
連結財務諸表の作成にあたり、期末時点の状況をもとに、種々の見積りと仮定を行っているが、それらは連結財務諸表、偶発債務に影響を及ぼしている。連結財務諸表に与える影響が大きいと考えられる項目・事象は以下のとおりである。
なお、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う影響については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載した仮定のもと、固定資産の減損判定や繰延税金資産の回収可能性などの会計上の見積りを実施したが、連結財務諸表に与える影響は軽微である。
a.投資の減損
当社グループは、長期的な資金の運用または長期的な取引関係の維持等のために、金融機関を含む取引先の株式等に対する投資を行っている。これらの投資には時価のある価格変動性の高い上場会社の株式と、時価の算定が困難な非上場会社の株式等が含まれており、当社グループはこれらの株式等の投資価値の低下が一時的でないものと判断した場合に減損処理を行うこととしている。当連結会計年度において計上した減損処理額はなく、当連結会計年度末において保有する上場会社の株式に係る未実現損失の額は2億9千7百万円である。
b.固定資産の減価償却等
当社グループの主な事業である埠頭業・倉庫業は施設に多額の投資を行う必要があり、有形固定資産及び無形固定資産の当連結会計年度末における帳簿価額は241億3千3百万円で総資産額の63.1%、営業収入の額の69.5%に相当している。当社グループは、1998年4月1日以降に取得した建物(建物附属設備を除く)並びに2016年4月1日以降取得した建物附属設備及び構築物を除く有形固定資産の減価償却方法について定率法を採用し、投資資金の早期回収を図っている。当連結会計年度における減価償却費の計上額は16億7千4百万円であり、これは減価償却の対象となる固定資産の当連結会計年度末における帳簿価額の10.7%に相当している。
c.退職給付に係る会計処理
当社グループは、退職給付費用及び債務の計算の前提となる割引率を、退職給付の支払見込期間を反映したAA格以上の普通社債の連結会計年度末における市場利回りを勘案して設定している。
当社グループの数理計算上の差異の主な発生原因は、退職給付信託の設定に伴い当社が拠出した株式の想定外の価格変動及び割引率の変更によるものであり、その処理方法は発生時の従業員の平均残存勤務期間以内の一定の年数(14年)による定額法によっている。当連結会計年度末における数理計算上の差異の未認識額は5億3千9百万円(借方残高)である。
制度移行に伴う過去勤務費用の処理方法は、数理計算上の差異の処理方法に準じて、発生時の従業員の平均残存勤務期間以内の一定の年数(14年)による定額法によることとしている。当連結会計年度末における過去勤務費用の未認識額は6百万円(貸方残高)である。
d.繰延税金資産
当社グループの税効果会計の適用に際しては、グループ各社の所得の過去の発生状況及び将来の発生見込に基づくスケジューリングの結果等を勘案して繰延税金資産の回収可能性の判定を行っている。当社グループにおいては、スケジューリング不能のもの、所得の発生見込みに不確実性の存する一部の連結子会社に係るもの等を除き回収可能であると判断している。
また、連結納税制度を採用しており、これに沿った会計処理を行っている。