有価証券報告書-第46期(2023/01/01-2023/12/31)

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2024/03/28 13:00
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1.経営成績等の状況の概要
(1)財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度の世界経済につき、欧州はウクライナ戦争の長期化で高インフレが続き金融引き締めが継続、経済活動が停滞しました。中国は米中対立による輸出の停滞と不動産市場の低迷等により成長が鈍化し、かなり深刻です。米国は金融引き締めによりインフレが抑制されつつあり、好調な雇用環境を背景に個人消費を中心に堅調に推移しました。わが国は円安による物価高の影響があるものの、2023年5月に新型コロナウイルス感染症が5類感染症になり、旅行や飲食等が回復、インバウンド消費も加わり緩やかに拡大しました。
IT投資については、企業、官公庁/自治体のDX(デジタルトランスフォーメーション)による業務プロセスやビジネスモデルの変革、新たなサービスの創出等により拡大しました。ITの活用は子供から大人まで、様々な生活シーンに及び、同時に情報ネットを利用した犯罪も多くなりました。これの対処には、ユーザー認証、デバイス認証などが必須です。この認証技術は当社が最も得意とするITセキュリティ技術と言えます。その需要は、クラウド化した版も含め、底堅いものがあります。
2022年12月に「安保3文書」が閣議決定されました。国家のサイバーセキュリティの体制強化が(ようやく)議論され、政府主導で動き出しています。当社は、世界のトップクラスの実戦経験者と手を結び、新しい組織を作り、各業界のサイバー対策を支援していく予定です。
このような環境下、当期の当社グループの業績は、売上高19,058百万円(前年同期比3.5%減)となりました。この売上高の減少は粗利の低い他社製品の販売を抑え、粗利率の高い自社製品/サービスの販売に力を注いだことによるものです。従い、営業利益は2,608百万円(前年同期比28.1%増)となりました。経常利益は、営業外収益で為替差益128百万円や受取配当金73百万円を計上したこと等により、2,809百万円(前年同期比27.5%増)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、1,936百万円(前年同期比22.0%増)となりました。
セグメント別の経営成績は、次のとおりです。
[ITセキュリティ事業]
売上高は17,786百万円(前年同期比4.2%減)、セグメント利益は3,701百万円(前年同期比21.3%増)となりました。
前述のようにスポットの他社製商品の販売がなくなり、売上高は減収となりましたが、粗利率の高い自社製品/サービスの増収により、セグメント利益は増益となりました。中でも、高いセキュリティレベルが要求される重要インフラ企業に「Soliton OneGate」が、公共分野に多要素認証で歴史ある製品「SmartOn」の販売が好調でした。サイバーセキュリティでは、海外企業とユニークな連携をし、官公庁や重要インフラ企業への実戦に近いサービスを提案していく方針です。
[映像コミュニケーション事業]
売上高は965百万円(前年同期比14.1%増)、セグメント損失は16百万円(前年同期はセグメント損失132百万円)となりました。
「Smart-telecasterシリーズ」について、国内のパブリックセーフティ分野(警察、消防、海上保安庁、自衛隊)や放送局等へ販売し、売上高は増収、セグメント損失は前年同期比で減少しました。また、クラウド経由で超短遅延/高精細画像をモニターしながら離れた場所にある車両や機械、ロボット等を遠隔監視/操縦する「Zao SDK」の販売を開始しました。福井県永平寺町で国内初となる自動運転レベル4で運行された車両の遠隔監視システムは、この技術の更なるTuningと完成度の向上に寄与しました。一方、建設機械の遠隔操縦の実証実験も始まりました。海外での無人操縦の案件も出始め、納入されたことから、海外での販売活動を一段と強化する計画です。
[Eco 新規事業開発]
売上高は306百万円(前年同期比11.7%減)、セグメント損失は219百万円(前年同期はセグメント損失183百万円)となりました。
既存の人感センサーと官公庁向け小型伝送装置を販売しました。人感センサーにつきシステムメーカーの在庫調整の依頼があり、売上高は減収となりました。また、アナログエッジAIの開発は継続していますが、完成が予定より大幅に遅れ、結果、セグメント損失は赤字が拡大しました。このアナログAI素子は極めて意欲的なプロジェクトですが、かなり技術的に難しい部分があります。
なお、2024年1月、JAXA(宇宙航空研究開発機構)開発の小型月着陸実証機SLIM (Smart Lander for Investigating Moon)が月面へのピンポイント着陸に成功しました。SLIMではカメラ映像を基に着陸地点を判断する方式を採用しておりますが、そのJAXAが開発したソフトを、当社のこのEcoグループが、宇宙用FPGAに書き込み、回路実装に協力しました。当社は、ピンポイント着陸のキーとなる画像照合航法の実現に貢献出来て、嬉しく、かつ誇りに感じています。
当連結会計年度末の総資産につきましては、前連結会計年度末に比べて3,363百万円増加し、22,624百万円となりました。
流動資産は、前連結会計年度末に比べて3,584百万円増加し、19,952百万円となりました。これは主に現金及び預金が3,194百万円、前払費用が200百万円、商品及び製品が125百万円増加したこと等によるものであります。
固定資産は、前連結会計年度末に比べて221百万円減少し、2,672百万円となりました。これは主に投資その他の資産その他が84百万円、ソフトウエアが78百万円増加した一方、土地が407百万円減少したこと等によるものであります。
流動負債は、前連結会計年度末に比べて1,826百万円増加し、11,402百万円となりました。これは主に未払法人税等が924百万円、契約負債が747百万円、賞与引当金が217百万円増加したこと等によるものであります。
固定負債については、前連結会計年度末に比べて20百万円増加し、90百万円となりました。これは主にリース債務(固定)が36百万円増加した一方、固定負債その他が15百万円減少したこと等によるものであります。
純資産の部については、前連結会計年度末に比べて1,516百万円増加し、11,131百万円となりました。これは主に利益剰余金が1,603百万円増加した一方、為替換算調整勘定が101百万円減少したこと等によるものであります。
なお、当連結会計年度末において、自己資本比率は49.1%、1株当たり純資産額は599円90銭となりました。
(2)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ3,194百万円増加し、当連結会計年度末には13,394百万円(前年同期比31.3%増)になりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの主な要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動から獲得した資金は3,643百万円(前年同期比58.6%増)となりました。
収入の主な内訳は、税金等調整前当期純利益2,808百万円、契約負債の増加729百万円、減価償却費315百万円、賞与引当金の増加216百万円等であります。支出の主な内訳は、前払費用の増加187百万円、為替差益133百万円、棚卸資産の増加78百万円等であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動に使用した資金は57百万円(前年同期比81.1%減)となりました。
収入の主な内訳は、有形固定資産の売却による収入461百万円等であります。支出の主な内訳は、無形固定資産の取得による支出413百万円、有形固定資産の取得による支出90百万円等であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動に使用した資金は397百万円(前年同期比57.4%増)となりました。
支出の主な内訳は、配当金の支払額333百万円等であります。
(3)生産、受注及び販売の実績
当社グループの生産する製品は主にソフトウエアであり、また当社グループの取り扱う製品は、受注生産形態をとらない製品であるため、生産規模、受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。
販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2023年1月1日
至 2023年12月31日)
前年同期比(%)
ITセキュリティ(百万円)17,786△4.2
映像コミュニケーション(百万円)96514.1
Eco 新規事業開発(百万円)306△11.7
合計(百万円)19,058△3.5

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおり
であります。
相手先前連結会計年度
(自 2022年1月1日
至 2022年12月31日)
当連結会計年度
(自 2023年1月1日
至 2023年12月31日)
金額(百万円)割合(%)金額(百万円)割合(%)
ダイワボウ情報システム
株式会社
2,25411.42,09511.0

2.経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容の内容は次のとおりであります。
なお、本文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般的に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たり、見積りや仮定を用いることが必要となりますが、これらは期末日における資産・負債の金額及び会計期間の収益・費用の金額に影響を与えます。しかし、これらの見積りや仮定は、実際の結果とは異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しておりますが、特に以下の重要な会計方針が、連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に影響を与える可能性があります。
①貸倒引当金
当社グループは、債権等の貸倒れによる損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等については個別に回収可能性を勘案し、回収不能見込額を計上しております。見積りには期日経過債権の回収期間、現在の経営環境等の様々な要因を考慮しております。
②棚卸資産
当社グループは、棚卸資産の評価方法として原価法(貸借対照表価額は収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により算定)を採用しており、期末における正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、当該正味売却価額をもって貸借対照表価額としております。また、滞留及び過剰在庫の内、陳腐化した棚卸資産については、適正な価値で評価されるように評価減の金額を見積もっております。
③繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産における回収可能性が低いと考えられる金額については、評価性引当額を設定しております。評価性引当額の必要性を検討するにあたっては、将来の課税所得の見積りに基づいております。
④投資有価証券
当社グループは、長期的な取引維持のために、特定の取引先の株式等を保有しております。これらの株式等には、価格変動性が高い上場株式と、株価の決定が困難な非上場株式等が含まれます。これらの株式等について、時価が取得価額を下回っている場合、将来における価値の回復可能性及び発行会社の経営状態を検討しております。
⑤市場販売目的のソフトウエア
当社グループは、市場販売目的のソフトウエアの減価償却方法について、見込販売収益に基づく償却額と残存有効期間(3年以内)に基づく均等配分額とを比較し、いずれか大きい額を減価償却費として計上しております。また、減価償却を実施した後の未償却残高が翌期以降の見込販売収益の額を上回った場合、当該超過額は一時の費用として処理しております。当社グループの販売見込収益の算定における主要な仮定は、販売計画に基づく受注予測であります。
(2)当連結会計年度の経営成績等の状況に関する分析・検討内容
①売上高・売上総利益
当連結会計年度の売上高19,058百万円(前年同期比3.5%減)、売上総利益8,561百万円(前年同期比12.2%増)、売上総利益率44.9%(前年同期38.6%)となりました。
売上高のセグメント別変動要因に関する詳細については、「1.経営成績等の状況の概要(1)財政状態及び経営成績の状況」をご参照ください。売上総利益率は、ITセキュリティ事業で粗利率の高い自社製品/サービスの増収により、前年同期比6.3%増加となりました。
②営業利益
経費面では、人材投資や販売促進費等の増加により、販売費及び一般管理費は5,952百万円(前年同期比6.4%増)となりましたが、売上総利益の増加が販売費及び一般管理費の増加を上回ったため、当連結会計年度の営業利益は2,608百万円(前年同期比28.1%増)、売上高営業利益率は13.7%(前年同期10.3%)となりました。
③経常利益
主に営業外収益として為替差益が128百万円、受取配当金が73百万円発生したことにより、当連結会計年度の経常利益は、2,809百万円(前年同期比27.5%増)となりました。
④親会社株主に帰属する当期純利益
特別利益について、債務免除益24百万円、固定資産売却益30百万円が生じ、特別損失でソフトウエア除却損19百万円、事業構造改善費用29百万円を計上しました。これにより、親会社株主に帰属する当期純利益は1,936百万円(前年同期比22.0%増)となりました。
以上の結果、当連結会計年度の1株当たり当期純利益金額は104.55円(前年同期比18.81円増)となりました。なお、当連結会計年度における財政状態の概況については、「1.経営成績等の状況の概要(1)財政状態及び経営成績の状況」をご参照ください。
(3)資本の財源及び資金の流動性の分析
当社グループは、営業活動によって獲得した現金と金融機関からの借入金によって、必要となる運転資金の確保と事業拡大の為の設備投資を行っています。
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの概況については、「1.経営成績等の状況の概要(2)キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
当社グループのキャッシュ・フローの状況と指標の推移は次のとおりであります。
キャッシュ・フローの状況2019年12月期2020年12月期2021年12月期2022年12月期2023年12月期
営業活動によるキャッシュ・フロー(百万円)2,4362,6202,0802,2983,643
投資活動によるキャッシュ・フロー(百万円)△635△1,120△464△305△57
財務活動によるキャッシュ・フロー(百万円)△136△1,105△481△252△397
フリー・キャッシュフロー (百万円)1,8011,5001,6161,9933,585

キャッシュ・フロー関連指標の推移2019年12月期2020年12月期2021年12月期2022年12月期2023年12月期
自己資本比率(%)46.443.848.949.849.1
時価ベースの自己資本比率(%)181.5222.1159.1108.6121.4
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)0.20.10.10.10.0
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)1,354.91,317.31,536.11,965.21,766.5

・フリー・キャッシュ・フロー:営業活動によるキャッシュ・フロー + 投資活動によるキャッシュ・フロー
・自己資本比率:自己資本÷総資産
・時価ベースの自己資本比率:株式時価総額÷総資産
・キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債÷営業活動によるキャッシュ・フロー
・インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業活動によるキャッシュ・フロー÷利息の支払額
(4)経営成績に重要な影響を与える要因について
「3 事業等のリスク」をご参照ください。