有価証券報告書-第42期(平成31年1月1日-令和1年12月31日)

【提出】
2020/03/24 12:16
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【項目】
157項目
1.経営成績等の状況の概要
(1)財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度について、国内では、良好な雇用環境が継続し、軽減税率の実施などにより消費税増税の影響が限定的で個人消費は底堅く推移したものの、外需の伸び悩みから製造業を中心に企業収益や生産活動が落ち込みました。一方、海外は、米中の通商問題による中国景気の減速の影響が新興国にも波及し、また、降って湧いたコロナウイルス、英国のEU離脱問題などにより、先行きが不透明な状態が続きました。
当社の属するIT業界について、政府による働き方改革の推進や戦略的なITの活用による企業の事業変革が継続し、さらにパソコンの更新需要などの後押しもあり、IT投資は堅調に推移しました。多くの組織でクラウドサービスへの移行が始まり、組織の情報資産が「組織内(既存のネットワーク)」と「組織外(クラウド)」に点在するITインフラに変化しつつあり、情報資産にアクセスできるID(Identity)とその認証の管理が極めて重要になっております。また、サイバー攻撃は、機密情報を狙うもの、ITインフラの破壊を企てるもの、多種多様で高度化も進んでおります。国の機関と民間が情報を共有し、サイバー攻撃への対処に取り組んでおります。
このような環境下、当社グループの業績について、売上高は15,552百万円(前年同期比1.9%増)、営業利益は1,081百万円(前年同期比21.0%減)、経常利益は1,051百万円(前年同期比15.2%減)となりました。なお、前連結会計年度に計上した減損損失等の特殊要因が剥落したことにより、親会社株主に帰属する当期純利益は660百万円(前年同期比100.2%増)となりました。
セグメント別の経営成績は、次のとおりです。
[ITセキュリティ事業]
売上高は14,511百万円(前年同期比0.5%増)、セグメント利益は1,970百万円(前年同期比17.0%減)となりました。
自社製品/サービスを中心に販売を進め、主力製品であるネットワーク認証専用アプライアンス「NetAttest EPS」の販売が堅調に伸長しました。しかしながら、スポットの他社製品販売があり、粗利率が低下し、増収ながら減益の結果となりました。また、前述のクラウドサービスへの移行にあわせ、製品の見直しと新規サービスの開発を推進しました。特に当社が得意とする認証分野で、セキュリティと効率的な運用を両立する新たな統合認証サービス「Soliton OneGate」をリリースしました。
[映像コミュニケーション事業]
売上高は913百万円(前年同期比34.9%増)、セグメント利益は2百万円(前年同期はセグメント損失146百万円)となりました。
国内外で「Smart-telecaster Zao-S」(以下、Zao-S)の販売活動を推進しました。2020年の東京オリンピック・パラリンピックの警備に向けた公共案件を獲得しました。その効果として国体や各地の催しの警備に各県警からのレンタル需要が増加しました。また、総務省消防庁でZao-Sと映像配信クラウドサービス「Zao Cloud View」が導入されました。Zao-Sが、東京都と20の政令指定都市の消防本部に配布され、災害現場の映像がZao Cloud Viewを通してリアルタイムで配信/共有されます。海外のパブリックセイフティ分野にも販売活動を進めております。次機種の開発も着々と進めております。
[エコ・デバイス事業]
売上高は127百万円(前年同期比13.3%減)、セグメント損失は204百万円(前年同期はセグメント損失199百万円)となりました。
映像コミュニケーション事業と協力して取り組んでいる超短遅延映像伝送システムを応用し、トラックの隊列走行や建機のリモート運転など様々なアプリケーションとの連携を推進しました。オリジナルの微小信号センサーの販売や新製品の試作の開発にも取り組みました。
当連結会計年度末の総資産につきましては、前連結会計年度末に比べて945百万円増加し、14,051百万円となりました。 流動資産は、前連結会計年度末に比べて888百万円増加し、11,382百万円となりました。これは主に現金及び預金が1,661百万円、電子記録債権が196百万円が増加した一方、受取手形及び売掛金が862百万円、その他流動資産が127百万円減少したこと等によるものであります。
固定資産は、前連結会計年度末に比べて57百万円増加し、2,669百万円となりました。これは主にソフトウエアが166百万円、投資有価証券が157百万円増加した一方、ソフトウエア仮勘定が281百万円減少したこと等によるものであります。
流動負債については、前連結会計年度末に比べて364百万円増加し、6,977百万円となりました。これは主に前受収益が240百万円、短期借入金が106百万円、未払金が95百万円、未払法人税等が80百万円増加した一方、支払手形及び買掛金が111百万円減少したこと等によるものであります。
固定負債については、前連結会計年度末に比べて51百万円増加し、530百万円となりました。これは主に長期借入金が35百万円、退職給付に係る負債が19百万円増加したこと等によるものであります。
純資産の部については、前連結会計年度末に比べて529百万円増加し、6,543百万円となりました。これは主に利益剰余金が470百万円増加したこと等によるものであります。
なお、当連結会計年度末において、自己資本比率は46.4%、1株当たり純資産額は344円21銭となりました。
(2)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ1,661百万円増加し、当連結会計年度末には6,913百万円になりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの主な要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動から獲得した資金は2,436百万円(前年同期比253.9%増)となりました。
収入の主な内訳は、税金等調整前当期純利益1,009百万円、売上債権の減少731百万円、減価償却費458百万円、前受収益の増加244百万円等であります。支出の主な内訳は、法人税等の支払額187百万円、仕入債務の減少122百万円等であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動に使用した資金は635百万円(前年同期比35.7%増)となりました。
支出の主な内訳は、投資有価証券の取得による支出180百万円、出資金の払込による支出162百万円、無形固定資産の取得による支出159百万円、有形固定資産の取得による支出100百万円等であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動に使用した資金は136百万円(前年同期比83.3%減)となりました。
収入の主な内訳は、長期借入れによる収入300百万円、短期借入金の純増減額96百万円、支出の主な内訳は長期借入金の返済による支出341百万円、配当金の支払額189百万円等であります。
(3)生産、受注及び販売の実績
当社グループの生産する製品は主にソフトウェアであり、また当社グループの取り扱う製品は、受注生産形態をとらない製品であるため、生産規模、受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。
販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2019年1月1日
至 2019年12月31日)
前年同期比(%)
ITセキュリティ(百万円)14,5110.5
映像コミュニケーション(百万円)91334.9
エコ・デバイス(百万円)127△13.3
合計(百万円)15,5521.9

(注)1.セグメント間の取引については、相殺消去しております。
2.上記金額には、消費税等は含まれておりません。
3.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先前連結会計年度
(自 2018年1月1日
至 2018年12月31日)
当連結会計年度
(自 2019年1月1日
至 2019年12月31日)
金額
(百万円)
割合
(%)
金額
(百万円)
割合
(%)
日本電気株式会社1,65110.81,3628.8

上記金額には、消費税等は含まれておりません。
2.経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容の内容は次のとおりであります。
なお、本文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般的に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たり、見積りや仮定を用いることが必要となりますが、これらは期末日における資産・負債の金額及び会計期間の収益・費用の金額に影響を与えます。しかし、これらの見積りや仮定は、実際の結果とは異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しておりますが、特に以下の重要な会計方針が、連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に影響を与える可能性があります。
①貸倒引当金
当社グループは、債権等の貸倒れによる損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等については個別に回収可能性を勘案し、回収不能見込額を計上しております。見積りには期日経過債権の回収期間、現在の経営環境等の様々な要因を考慮しております。
②たな卸資産
当社グループは、たな卸資産の評価方法として原価法(貸借対照表価額は収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により算定)を採用しており、期末における正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、当該正味売却価額をもって貸借対照表価額としております。また、滞留及び過剰在庫の内、陳腐化したたな卸資産については、適正な価値で評価されるように評価減の金額を見積もっております。
③繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産における回収可能性が低いと考えられる金額については、評価性引当額を設定しております。評価性引当額の必要性を検討するにあたっては、将来の課税所得の見積りに基づいております。
④投資有価証券
当社グループは、長期的な取引維持のために、特定の取引先の株式等を保有しております。これらの株式等には、価格変動性が高い上場株式と、株価の決定が困難な非上場株式等が含まれます。これらの株式等について、時価が取得価額を下回っている場合、将来における価値の回復可能性及び発行会社の経営状態を検討しております。
(2)当連結会計年度の経営成績等の状況に関する分析・検討内容
①売上高・売上総利益
当連結会計年度の売上高15,552百万円(前年同期比1.9%増)、売上総利益6,649百万円(前年同期比2.8%減)、売上総利益率42.8%(前年同期44.8%)となりました。
売上高のセグメント別変動要因に関する詳細については、「1.経営成績等の状況の概要(1)財政状態及び経営成績の状況」をご参照ください。売上総利益率は、ITセキュリティ事業でスポットの他社製品販売があり、粗利率が低下し、前年同期比2.1%減少しました。
②営業利益
経費面では、人件費及び販売促進費等の抑制に努め、販売費及び一般管理費は5,568百万円(前年同期比1.7%増)となりましたが、売上総利益が前述のように前期比2.8%減となったことより、当連結会計年度の営業利益は1,081百万円(前年同期比21.0%減)、売上営業利益率は7.0%(前年同期9.0%)となりました。
③経常利益
主に営業外費用として為替差損39百万円が発生したことにより、当連結会計年度の経常利益は、1,051百万円(前年同期比15.2%減)となりました。
④親会社株主に帰属する当期純利益
持分法適用会社・子会社の収益性の見直しを図り、減損損失35百万円、関係会社株式売却損6百万円等で特別損失として46百万円を計上し、親会社株主に帰属する当期純利益は660百万円(前年同期比100.2%増)となりました。
以上の結果、当連結会計年度の1株当たり当期純利益金額は34.83円(前年同期比17.83円増)となりました。なお、当連結会計年度における財政状態の概況については、「1.経営成績等の状況の概要(1)財政状態及び経営成績の状況」をご参照ください。
(3)資本の財源及び資金の流動性の分析
当社グループは、営業活動によって獲得した現金と金融機関からの借入金によって、必要となる運転資金の確保と事業拡大の為の設備投資を行っています。
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの概況については、「1.経営成績等の状況の概要(2)キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
当社グループのキャッシュ・フローの状況と指標の推移は次のとおりであります。
キャッシュ・フローの状況2015年12月期2016年12月期2017年12月期2018年12月期2019年12月期
営業活動によるキャッシュ・フロー(百万円)2851,7822,5026882,436
投資活動によるキャッシュ・フロー(百万円)△614△650△792△468△635
財務活動によるキャッシュ・フロー(百万円)279△269△92△813△136
フリー・キャッシュフロー (百万円)△3291,1311,7092201,801

キャッシュ・フロー関連指標の推移2015年12月期2016年12月期2017年12月期2018年12月期2019年12月期
自己資本比率(%)44.343.444.845.746.4
時価ベースの自己資本比率(%)103.892.0232.4107.2181.5
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)2.00.20.20.50.2
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)40.3276.8580.5364.41,354.9

・フリー・キャッシュ・フロー:営業活動によるキャッシュ・フロー + 投資活動によるキャッシュ・フロー
・自己資本比率:自己資本÷総資産
・時価ベースの自己資本比率:株式時価総額÷総資産
・キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債÷営業活動によるキャッシュ・フロー
・インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業活動によるキャッシュ・フロー÷利息の支払額
(4)経営成績に重要な影響を与える要因について
「2 事業等のリスク」をご参照ください。