有価証券報告書-第43期(令和2年1月1日-令和2年12月31日)

【提出】
2021/03/25 13:02
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【項目】
148項目
1.経営成績等の状況の概要
(1)財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度について、昨年2月下旬に突如、新型コロナウイルス感染症が世界的に拡大し、経済活動が抑制され、世界経済は急速に減速しました。この年度は、業種により業績が大きく異なる結果となりました。市場が蒸発して経営が厳しさを増す業種がある一方、追い風となったビジネスもあり、社会は未曾有の混乱を体験しています。当社が属するIT業界は、コロナの影響はあまり受けない業種と言われていますが、IT投資は顧客の業種により激変しました。
多くの企業が、感染症対策を行いながら事業展開を進めるNEW NORMALとも言うべき働き方をIT技術で実施、その結果、テレワーク、Web会議、情報共有ツール等の導入が一挙に進みました。当社は数年前から「離れていても、仕事はできる」と言う広告と共にテレワークとそのための認証システムをITセキュリティ事業の主力製品として開発しており、多くのニーズに答える結果となりました。一方、航空会社向けの手荷物運搬車、Towing Tractorの遠隔操作等のプロジェクトは延期となりました。
この年度のもう一つの大きなイベントは、日本中の小中学校にPCを配布し、ネットワークを導入する「GIGAスクール構想」です。新型コロナウイルス感染症の拡大による休校措置をうけて早急に整備する必要が出てきたため、当初2023年度(2024年3月)までの予定が2020年度(2021年3月まで)の実現に前倒しされました。このプロジェクトは、システムの導入後にも数年にわたりIT業界と社会に多大なインパクトをもたらすものになると予想されます。
このような環境下、当社グループの業績について、売上高は16,457百万円(前年同期比5.8%増)、営業利益は1,866百万円(前年同期比72.7%増)、経常利益は1,945百万円(前年同期比85.1%増)となりました。なお、Soliton Systems Development Center Europe A/S(所在地:デンマーク。以下、SDE社)等の解散と清算を2020年8月に決議したことにより、ソフトウェア除却損189百万円、関係会社整理損58百万円および関係会社整理損失引当金繰入額19百万円を計上し、また、投資有価証券評価損146百万円を計上しましたが、SDE社への貸倒引当金に対し、繰延税金資産が計上されたこと等により法人税等調整額△575百万円が生じ、親会社株主に帰属する当期純利益は1,483百万円(前年同期比124.6%増)となりました。
セグメント別の経営成績は、次のとおりです。なお、第1四半期連結会計期間より「エコ・デバイス事業」について、「Eco 新規事業開発」に名称を変更いたしました。
[ITセキュリティ事業]
売上高は15,442百万円(前年同期比6.4%増)、セグメント利益は2,774百万円(前年同期比40.8%増)となりました。
自社製品/サービスを中心に販売を行い、セグメント売上高と利益は増収増益になりました。「Soliton SecureDesktop」(以下、「SSD」)などセキュアなテレワークを実現する製品/サービスの売上が前期比で3倍超になりました。民間部門に加え公共部門でもサービスでの需要が拡大し、SSDをはじめとするテレワーク関連のサービスは当社の主力クラウドサービスに変貌いたしました。また、前述の「GIGAスクール構想」では、校内ネットワーク、Wi-Fi無線接続を実現、管理を行う「NetAttest EPS」や「NetAttest D3」は標準品となっており大きな占有率を確保しています。また、この年度販売開始した有害サイトへのアクセスを防止する「Soliton DNS Guard」も全国の多くの地域で採用、導入されました。
[映像コミュニケーション事業]
売上高は919百万円(前年同期比0.6%増)、セグメント利益は50百万円(前年同期比1,897.4%増)となりました。
東京オリンピック・パラリンピックが延期となりましたが、国内のパブリックセイフティ分野(防災、治安、危機管理)での販売を拡大し、セグメント売上高と利益は増収増益になりました。また、50ミリ秒以下の超短遅延映像伝送を実現する新製品「Smart-telecaster Zao-SH」の販売を開始しました。世界で続々と5Gの通信サービスがスタートされる中、モビリティ分野、医療分野、重機/農機の遠隔操作等への試験導入が進んでいます。
[Eco 新規事業開発]
売上高は95百万円(前年同期比25.3%減)、セグメント損失は244百万円(前年同期はセグメント損失204百万円)となりました。
当事業グループは、当社内の他事業部の新規商品の基礎技術の開発を主に担っており、AIの応用および特殊アナログ素子の開発に取り組んでいます。なお、人感センサーの開発/販売や他社からの開発委託による収入を売上として計上しております。
当連結会計年度末の総資産につきましては、前連結会計年度末に比べて1,962百万円増加し、16,014百万円となりました。 流動資産は、前連結会計年度末に比べて1,061百万円増加し、12,444百万円となりました。これは主に受取手形及び売掛金が543百万円、現金及び預金が391百万円、電子記録債権が391百万円が増加した一方、商品及び製品が243百万円、仕掛品が52百万円減少したこと等によるものであります。
固定資産は、前連結会計年度末に比べて900百万円増加し、3,570百万円となりました。これは主に繰延税金資産が544百万円、土地が408百万円増加した一方、投資有価証券が99百万円減少したこと等によるものであります。
流動負債については、前連結会計年度末に比べて1,744百万円増加し、8,722百万円となりました。これは主に前受収益が748百万円、未払法人税等が416百万円、賞与引当金が357百万円、未払金が237百万円増加した一方、短期借入金が96百万円減少したこと等によるものであります。
固定負債については、前連結会計年度末に比べて270百万円減少し、259百万円となりました。これは主に長期未払金が150百万円増加した一方、退職給付に係る負債が362百万円減少したこと等によるものであります。
純資産の部については、前連結会計年度末に比べて488百万円増加し、7,032百万円となりました。これは主に利益剰余金が1,290百万円増加した一方、自己株式を715百万円取得したこと等によるものであります。
なお、当連結会計年度末において、自己資本比率は43.8%、1株当たり純資産額は377円64銭となりました。
(2)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ391百万円増加し、当連結会計年度末には7,305百万円(前年同期比5.7%増)になりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの主な要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動から獲得した資金は2,620百万円(前年同期比7.6%増)となりました。
収入の主な内訳は、税金等調整前当期純利益1,530百万円、前受収益の増加743百万円、減価償却費371百万円、賞与引当金の増加357百万円、たな卸資産の減少280百万円、未払金の増加239百万円等であります。支出の主な内訳は、売上債権の増加931百万円、退職給付に係る負債の減少344百万円、法人税等の支払額221百万円等であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動に使用した資金は1,120百万円(前年同期比76.4%増)となりました。
支出の主な内訳は、無形固定資産の取得による支出554百万円、有形固定資産の取得による支出538百万円等であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動に使用した資金は1,105百万円(前年同期比711.7%増)となりました。
支出の主な内訳は、自己株式取得による支出715百万円、長期借入金の返済による支出190百万円、配当金の支払額189百万円等であります。
(3)生産、受注及び販売の実績
当社グループの生産する製品は主にソフトウェアであり、また当社グループの取り扱う製品は、受注生産形態をとらない製品であるため、生産規模、受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。
販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2020年1月1日
至 2020年12月31日)
前年同期比(%)
ITセキュリティ(百万円)15,4426.4
映像コミュニケーション(百万円)9190.6
Eco 新規事業開発(百万円)95△25.3
合計(百万円)16,4575.8

(注)1.セグメント間の取引については、相殺消去しております。
2.上記金額には、消費税等は含まれておりません。
2.経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容の内容は次のとおりであります。
なお、本文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般的に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たり、見積りや仮定を用いることが必要となりますが、これらは期末日における資産・負債の金額及び会計期間の収益・費用の金額に影響を与えます。しかし、これらの見積りや仮定は、実際の結果とは異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しておりますが、特に以下の重要な会計方針が、連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に影響を与える可能性があります。
①貸倒引当金
当社グループは、債権等の貸倒れによる損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等については個別に回収可能性を勘案し、回収不能見込額を計上しております。見積りには期日経過債権の回収期間、現在の経営環境等の様々な要因を考慮しております。
②たな卸資産
当社グループは、たな卸資産の評価方法として原価法(貸借対照表価額は収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により算定)を採用しており、期末における正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、当該正味売却価額をもって貸借対照表価額としております。また、滞留及び過剰在庫の内、陳腐化したたな卸資産については、適正な価値で評価されるように評価減の金額を見積もっております。
③繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産における回収可能性が低いと考えられる金額については、評価性引当額を設定しております。評価性引当額の必要性を検討するにあたっては、将来の課税所得の見積りに基づいております。
④投資有価証券
当社グループは、長期的な取引維持のために、特定の取引先の株式等を保有しております。これらの株式等には、価格変動性が高い上場株式と、株価の決定が困難な非上場株式等が含まれます。これらの株式等について、時価が取得価額を下回っている場合、将来における価値の回復可能性及び発行会社の経営状態を検討しております。
(2)当連結会計年度の経営成績等の状況に関する分析・検討内容
①売上高・売上総利益
当連結会計年度の売上高16,457百万円(前年同期比5.8%増)、売上総利益7,545百万円(前年同期比13.5%増)、売上総利益率45.8%(前年同期42.8%)となりました。
売上高のセグメント別変動要因に関する詳細については、「1.経営成績等の状況の概要(1)財政状態及び経営成績の状況」をご参照ください。売上総利益率は、ITセキュリティ事業で自社製品/サービスを中心に販売を行い、前年同期比3.1%増加しました。
②営業利益
経費面では、人件費及び販売促進費等が増加し、販売費及び一般管理費は5,678百万円(前年同期比2.0%増)となりましたが、売上総利益率が前述のように前期比3.1%増となったことより、当連結会計年度の営業利益は1,866百万円(前年同期比72.7%増)、売上営業利益率は11.3%(前年同期7.0%)となりました。
③経常利益
主に営業外収益として為替差益62百万円が発生したことにより、当連結会計年度の経常利益は、1,945百万円(前年同期比85.1%増)となりました。
④親会社株主に帰属する当期純利益
Soliton Systems Development Center Europe A/S(所在地:デンマーク。以下、SDE社)等の解散と清算を決議したことにより、ソフトウェア除却損189百万円、関係会社整理損58百万円および関係会社整理損失引当金繰入額19百万円を計上しました。また、投資有価証券評価損146百万円を計上しましたが、SDE社への貸倒引当金に対し、繰延税金資産が計上されたこと等により法人税等調整額△575百万円が生じ、親会社株主に帰属する当期純利益は1,483百万円(前年同期比124.6%増)となりました。
以上の結果、当連結会計年度の1株当たり当期純利益金額は78.27円(前年同期比43.44円増)となりました。なお、当連結会計年度における財政状態の概況については、「1.経営成績等の状況の概要(1)財政状態及び経営成績の状況」をご参照ください。
(3)資本の財源及び資金の流動性の分析
当社グループは、営業活動によって獲得した現金と金融機関からの借入金によって、必要となる運転資金の確保と事業拡大の為の設備投資を行っています。
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの概況については、「1.経営成績等の状況の概要(2)キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
当社グループのキャッシュ・フローの状況と指標の推移は次のとおりであります。
キャッシュ・フローの状況2016年12月期2017年12月期2018年12月期2019年12月期2020年12月期
営業活動によるキャッシュ・フロー(百万円)1,7822,5026882,4362,620
投資活動によるキャッシュ・フロー(百万円)△650△792△468△635△1,120
財務活動によるキャッシュ・フロー(百万円)△269△92△813△136△1,105
フリー・キャッシュフロー (百万円)1,1311,7092201,8011,500

キャッシュ・フロー関連指標の推移2016年12月期2017年12月期2018年12月期2019年12月期2020年12月期
自己資本比率(%)43.444.845.746.443.8
時価ベースの自己資本比率(%)92.0232.4107.2181.5222.1
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)0.20.20.50.20.1
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)276.8580.5364.41,354.91,317.3

・フリー・キャッシュ・フロー:営業活動によるキャッシュ・フロー + 投資活動によるキャッシュ・フロー
・自己資本比率:自己資本÷総資産
・時価ベースの自己資本比率:株式時価総額÷総資産
・キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債÷営業活動によるキャッシュ・フロー
・インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業活動によるキャッシュ・フロー÷利息の支払額
(4)経営成績に重要な影響を与える要因について
「2 事業等のリスク」をご参照ください。