有価証券報告書-第28期(2023/04/01-2024/04/30)
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当社は決算期変更に伴い、当連結会計年度は13ヶ月の変則決算となっております。このため、前連結会計年度との比較は行っておりませんが、参考情報として前連結会計年度12ヶ月の実績値を記載しております。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度のわが国経済は、雇用・所得環境が改善する中、各種政策の効果もあって、緩やかな回復基調で推移いたしました。一方で国際情勢不安やエネルギー価格・原材料価格の高騰による物価上昇などの影響により、依然として不透明な状況が続いております。
当社グループの事業は、アパートやマンション等の集合住宅を中心にインターネット設備の提供を主なサービスとするHomeIT事業と、企業の社宅管理業務の代行を主なサービスとする不動産事業の2つから構成されております。これらの事業をとりまく外部環境は、以下のとおりと認識しております。
HomeIT事業におきましては、集合住宅市場、情報通信業界の動向を注視しております。
集合住宅市場のうち、新築物件は、インターネット設備の標準化に加え、オートロックやカメラ等の防犯対策の標準化も進んでおり、安心・安全な住まいの需要は、堅調に推移すると見込まれております。既存物件は、入居者の多様化するニーズに合わせた、物件の改修や管理サービスの向上に取り組む動きが進んでおり、これに合わせて高速で安定した通信回線への切替え需要が高まっております。
情報通信業界では、動画配信やIoTデバイスなどのサービスの普及が進むにつれ、国内のデータ流通量の増加は続いており、社会全体のデジタル化が加速する中で、その基盤となる安全で安定した通信インフラの重要性は一層高まっております。
このような環境の下、HomeIT事業につきましては、当社の収益基盤である回線利用料収益を最大化するため、当社の重要指標であるサービス提供戸数の拡大を目指し、OEM提供先企業との連携強化及びサービス品質の向上に注力してまいりました。
不動産事業におきましては、不動産業界の動向を注視しております。
不動産業界では、業界全体でデジタル化に向けた動きが活発になっており、IT技術を活用した業務改善・効率化による生産性向上への取り組みが進んでおります。
このような環境の下、不動産事業につきましては、社宅管理代行サービスの取扱い件数の拡大に注力するとともに、HomeIT事業との連携を強化し、各種サービスの拡販に取組んでまいりました。テナント運営サービスにつきましては、複合施設「LIVINGTOWN みなとみらい」がオープンし更なる認知度と集客力の向上を目指し、複合施設としての価値向上に注力してまいりました。
以上の結果、当連結会計年度の経営成績は、売上高21,668,636千円(前連結会計年度17,868,583千円)、経常利益3,843,618千円(前連結会計年度2,900,206千円)、親会社株主に帰属する当期純利益2,605,842千円(前連結会計年度1,853,599千円)となりました。
セグメント別の状況は次のとおりであります。
HomeIT事業
HomeIT事業は、集合住宅向けISPサービス、IoTソリューションサービス、ネットワークサービス、システム開発から構成されております。
集合住宅向けISPサービスにつきましては、OEM提供先企業との連携強化により、新たな顧客及び市場の開拓を進め、中規模・大規模集合住宅向けのサービス獲得に注力いたしました。
この結果、新築物件及び既存物件ともにサービス提供戸数を伸ばし、集合住宅向けISPサービスの提供戸数については、前連結会計年度末1,051,604戸に比べ157,918戸増加し1,209,522戸となりました。
IoTソリューションサービスにつきましては、主に集合住宅向けクラウドカメラやスマートロック等のサービスを提供しております。管理物件のセキュリティ強化のニーズを受けて、パートナー企業と連携し、OEM提供先企業や管理会社を中心に販売を強化したことにより、導入台数を伸ばしました。
ネットワークサービスにつきましては、MSPサービスやホスティングサービスは堅調に推移しており、システム開発につきましては、不動産業務支援システム「FutureVision®Plus」の既存顧客への業務支援を中心に新規顧客の開拓に取り組んでまいりました。
以上の結果、売上高は21,262,660千円(前連結会計年度17,680,164千円)となり、セグメント利益は5,380,326千円(前連結会計年度4,266,115千円)となりました。
不動産事業
不動産事業は、社宅管理代行サービス及びテナント運営サービス等から構成されております。
社宅管理代行サービスについては、既存顧客との連携を強化し、運用体制の効率化など、サービス品質の向上を図るとともに、新規顧客の獲得にも注力し、取扱件数の拡大を目指してまいりました。また、提携不動産管理会社の協力により、潜在顧客へのアプローチを強化し、当社の各種サービスの拡販に努めてまいりました。
テナント運営サービスにつきましては、複合施設「LIVINGTOWN みなとみらい」の企画・開発・運営を行っております。同施設は2023年12月に建設が完了し、安定した賃料収入を得られる体制となりました。また、立地環境を生かしたイベント等を実施し、施設の認知度及び集客力の向上に努めてまいりました。
以上の結果、売上高は412,486千円(前連結会計年度180,959千円)、セグメント損失は31,080千円(前連結会計年度セグメント利益12,073千円)となりました。
その他
その他の事業につきましては、人材派遣業を行っております。なお、当連結会計年度において該当する取引はありません(前連結会計年度の売上高は7,459千円、セグメント利益は942千円)。
財政状態の分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容」に記載のとおりであります。
② キャッシュ・フローの状況
キャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に関する情報」に記載のとおりであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社グループは事業の性質上、生産実績の記載になじまないため、記載しておりません。
b.受注実績
当連結会計年度における受注実績は、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 受注高(千円) | 前年同期比(%) | 受注残高(千円) | 前年同期比(%) |
HomeIT事業 | 13,166,218 | - | 23,840,372 | - |
(注)決算期変更の経過期間となる2024年4月期は、2023年4月1日から2024年4月30日までの13ヶ月決算となっておりますので対前期増減率は記載しておりません。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績は、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 販売高(千円) | 前年同期比(%) |
HomeIT事業 | 21,257,670 | - |
不動産事業 | 410,966 | - |
(注)1.セグメント間取引については相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な販売先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、下記の表のとおりであります。
3.決算期変更の経過期間となる2024年4月期は、2023年4月1日から2024年4月30日までの13ヶ月決算となっておりますので対前期増減率は記載しておりません。
販売先 | 前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年4月30日) | ||
販売高(千円) | 割合(%) | 販売高(千円) | 割合(%) | |
D.U-NET株式会社 | 7,318,302 | 41.0 | 8,941,787 | 41.3 |
大東建託パートナーズ株式会社 | 3,206,840 | 17.9 | 3,591,216 | 16.6 |
積水ハウス不動産東京株式会社 | 1,986,238 | 11.1 | 2,030,489 | 9.4 |
大東建託株式会社 | 459,822 | 2.6 | 436,409 | 2.0 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度の売上高は、21,668,636千円(前連結会計年度17,868,583千円)となりました。営業費用(売上原価、販売費及び一般管理費の合計)は、17,813,950千円(前連結会計年度14,927,930千円)となりました。この結果、営業利益は、3,854,685千円(前連結会計年度2,940,653千円)となりました。
なお、当社グループは、HomeIT事業と不動産事業という2つの事業を営んでおりますが、顧客との契約から生じる収益に関して、HomeIT事業が当社の売上高の99.1%を占め、更にHomeIT事業の中の集合住宅向けISPサービスが当社売上高の96.6%を占めることから、集合住宅向けISPサービスを中心として経営成績等の分析を記載いたします。
当社は、集合住宅向けISPサービス提供戸数を経営上の達成状況を判断するための客観的な指標等として認識しております。
集合住宅向けISPサービス提供戸数は、主要顧客との連携及び営業体制を強化したことにより、累計戸数は順調に増加いたしました。新築物件では、主要顧客においてインターネット設備の標準化が進展したこともあり、安定して受注を伸ばしました。既存物件では、他社からのリプレイスや新規顧客の開拓を推進したことにより、順調に増加いたしました。
また、新たなサービス開発では、高速で安定した通信環境のニーズに対した最大通信速度10Gbpsの集合住宅向けISPサービスの開発・提供を開始し、施工、保守・サポート面についても、安全で最適な通信環境の提供を目指して、顧客満足度向上への取り組みを強化してまいりました。
以上の結果、当連結会計年度(2024年4月末)の集合住宅向けISPサービスの累計提供戸数は1,209,522戸となり、これに伴う同サービスの回線利用料収益の積み上げが当連結会計年度の売上高増加の主な要因となります。
なお、2025年4月末の集合住宅向けISPサービスの累計提供戸数は、当連結会計年度末に比べ14.0万戸増の135.0万戸を見込んでおります。
2020年3月末 | 2021年3月末 | 2022年3月末 | 2023年3月末 | 2024年4月末 | |
提供戸数 | 564,826 | 745,127 | 900,512 | 1,051,604 | 1,209,522 |
営業費用については、通信機器や回線の調達コスト、施工や保守にかかるコスト、人件費等について、それぞれ説明いたします。
通信機器の調達コストは、集合住宅向けISPサービスの計画をもとに、まとまった数量の一括仕入等の施策により、また、回線の調達コストは、回線仕入業者の見直しを進めることで、調達コスト全体の上昇を抑えてまいりました。なお、通信機器の減価償却費は、通信機器の一部をリースによる調達から自己資金による調達に変更したために減少しております。また、通信機器の一部について販売価格等の改定を行ったため棚卸資産評価損166,995千円を計上しております。
施工や保守にかかるコストについては、外注工事の一部を当社グループ内で行うことや、外注先を固定化することによりコストの上昇を抑えてまいりました。
人件費等については、人材育成、管理運用体制の強化及び業務の効率化の推進など、企業全体の最適化を目指して取り組んでまいりました。
これらの施策の結果、売上高営業利益率は、前連結会計年度は16.5%、当連結会計年度は17.8%となり、1.3ポイント上昇しております。
資産及び負債の主な増減は、次のとおりであります。
現金及び預金は、前連結会計年度末に比べ3,260千円増加し、4,645,481千円となりました。増加の理由については、「② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に関する情報」をご参照ください。
売掛金は前連結会計年度末に比べ91,589千円増加し、3,961,861千円となりました。支払手形及び買掛金は同52,847千円増加し、1,485,916千円となりました。これらの増加は、売上高及び機器仕入高の増加に伴うものであります。
賃貸資産は912,805千円増加し、1,178,585千円となりました。これは、前連結会計年度より建設に着手していた複合施設「LIVINGTOWNみなとみらい」及び東京都練馬区の共同住宅の建設完了によるものであります。
リース債権及びリース投資資産は、前連結会計年度末に比べ531,377千円増加し、926,302千円となりました。これは、貸手ファイナンスリース取引の増加によるものであります。
棚卸資産(商品及び製品、仕掛品、原材料及び貯蔵品の合計)は、前連結会計年度末に比べ682,603千円増加し、2,172,502千円となりました。これは、通信機器等の調達コストを抑えるため、まとまった数量の一括仕入等の施策を行ったためであります。
リース資産(純額)は前連結会計年度末に比べ346,508千円減少し359,792千円に、リース債務が同628,077千円減少し706,375千円となりました。これは、前連結会計年度より通信機器の一部をリースによる調達から自己資金による調達に変更したためであります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に関する情報
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ3,260千円増加し、4,645,481千円となりました。当連結会計年度末における各キャッシュ・フローの状況とそれらの主な要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動の結果、得られた資金は2,360,683千円となりました。これは主に税金等調整前当期純利益3,841,594千円、減価償却費465,168千円、棚卸資産の増加による資金の減少849,599千円、法人税等の支払額1,074,712千円等によるものであります。
当連結会計年度において、当社は営業活動により獲得した資金を、不動産事業への投資(投資活動によるキャッシュ・フロー)、株主の皆様への還元等(財務活動によるキャッシュ・フロー)に使用しております。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動の結果、使用した資金は1,009,074千円となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出1,038,918千円によるものであります。前連結会計年度より建設に着手していた複合施設「LIVINGTOWNみなとみらい」及び東京都練馬区の共同住宅の建設完了に伴う支出と建設中である埼玉県戸田市の共同住宅への支出が有形固定資産の取得による支出の主な要因です。埼玉県戸田市の共同住宅は、総額473,000千円の支出を予定しており当連結会計年度末までの支出は373,530千円となっております。当社は、今後の新たな事業展開や技術革新に対応するため、積極的に投資を行っていく予定であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動の結果、使用した資金は1,348,347千円となりました。
当社は、株主の皆様に安定した配当を実施することを基本方針とし、配当金額を決定しております。当連結会計年度の連結キャッシュ・フロー計算書に計上した配当金の支払額182,282千円は、前連結会計年度における配当金1株当たり12.5円に対するものであります。
また、前連結会計年度に引き続き当連結会計年度においても自己株式の取得を継続的に実施しており、390,804千円を実行いたしました。
金融機関からの資金調達については、1,400,000千円となりました。
また、リース債務の返済による支出として636,927千円を計上しております。これは、通信機器の一部をリース取引により調達していたためですが、当社は前連結会計年度より通信機器を自己資金により調達する方針としたため、支出額は前連結会計年度より67,552千円減少しております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されており、連結財務諸表の作成にあたって採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載されているとおりであります。
当社グループは、連結財務諸表の作成に際して将来事象の結果に依存するため確定できない金額について、仮定の適切性、情報の適切性及び金額の妥当性に留意した上で、最善の見積りを行っております。
しかしながら、見積り特有の不確実性は避けられず、当社グループの仮定を上回る経営環境の悪化がもたらされる可能性があります。そのような場合には、資産の評価において判断の基礎とした将来の事業計画が実績と乖離することにより、一時の費用又は損失が発生することが考えられます。
a.市場価格のない株式等の減損処理
「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (重要な会計上の見積り)」 に記載されているとおりであります。
b.棚卸資産の評価
「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (重要な会計上の見積り)」 に記載されているとおりであります。
c.固定資産の減損処理
当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上することとしております。減損の兆候の把握、減損損失の認識の判定及び測定に当たっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積額の前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、減損処理が必要となる可能性があります。
d.繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について、将来の事業計画に基づいた課税所得が十分に確保できることや、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、繰延税金資産が増加又は減少し、法人税等調整額が減少又は増加する可能性があります。
④ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社の資本政策の方針といたしましては、中長期的な企業価値の向上と持続的な成長のために、財務基盤の強化に必要な内部留保を確保しつつ、積極的な成長投資を可能とする株主資本の保持を基本として、株主に対しては、安定的かつ継続的な利益還元に努めることとしております。
当社グループにおける主な資金需要といたしましては、HomeIT事業における集合住宅向けISPサービス導入にかかる回線、機器の仕入及び外注費であります。
これらの必要資金につきましては、主として内部留保資金及び営業活動により得られた資金を活用しております。また、安定的な財源確保のため金融機関等から資金調達を行っており、今後も継続する方針であります。