有価証券報告書-第25期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度のわが国経済におきましては、世界的な新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて、社会経済活動が制限され、景気の停滞が長引いております。段階的な経済活動の再開及び各種政策の効果等により、景気は持ち直しの動きも見られましたが、未だ新規感染者数は増加傾向にあり、先行き不透明な状況が続いております。
不動産業界につきましては、社会経済活動レベルの段階的な引き上げにより、回復の兆しが見えつつありますが、感染拡大防止策を踏まえた営業活動等、慎重な対応が求められ、依然として厳しい状況が続いております。
当社グループが主にサービスを提供する賃貸住宅市場につきましては、新築物件では、新型コロナウイルス感染症拡大の影響等により、引き続き新設住宅着工戸数は減少傾向にあります。既存物件では、多様化するニーズ、ライフスタイルに合わせたリフォームやリノベーション等による資産価値、入居者満足度向上への意識が高まっております。また、コロナ禍における外出自粛に伴うテレワーク等の普及により、インターネットの利用頻度が増加したことにより、住まいの快適性を重視したインターネット設備への需要が増加しております。
不動産事業を取り巻く環境につきましては、新型コロナウイルス感染症拡大の影響等による店舗の一時休業等の影響を受け、VR住宅展示場やオンラインによるテクノロジーの活用を重視した接客・内見等、不動産Tech関連サービスへの需要が増加しております。
このような状況の下、当社グループは、従業員及び顧客の安心・安全を最優先に考え、新型コロナウイルス感染症拡大防止策を継続してまいりました。主力であるHomeIT事業につきましては、集合住宅向けISPサービスの提供体制強化、回線品質の維持・向上に取組み、提供戸数の更なる拡大を図りました。不動産事業につきましては、社宅管理代行事業及びVR住宅展示場事業の成長に注力するとともに、集合住宅向けISP事業との事業シナジーの創出に取り組んでまいりました。
以上の結果、当連結会計年度の経営成績は、売上高15,878,720千円(前年同期比16.3%増)、経常利益2,129,972千円(前年同期比77.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益1,393,059千円(前年同期比171.9%増)となりました。なお、新型コロナウイルス感染症に関しましては、当連結会計年度において当社グループの事業活動に重要な影響を与えておらず、業績に与える影響は軽微であります。
セグメント別の状況は次のとおりであります。
a. HomeIT事業
集合住宅向けISP事業につきましては、サービスの提供戸数拡大に向けて、大手包括提携先との連携強化やインターネット設備の需要増加等も後押しとなり、提供戸数は順調に拡大いたしました。新築物件では、「PWINS」の導入を進め、既存物件では、「SPES」の導入が大手包括提携先へ浸透したことにより、既存市場でのシェア拡大に寄与しました。また、テレワーク等の普及により、安全で安定したインターネット環境が求められる中、高品質インターネット接続サービス「GIGA Direct Connect」や「GIGA Priority Gate」の販売を開始いたしました。
この結果、当連結会計年度における集合住宅向けISPサービスの提供戸数は、前連結会計年度末564,826戸に比べ、31.9%増の745,127戸となりました。
ネットワークサービス事業につきましては、MSPサービスやホスティングサービスは堅調に推移しており、システム開発事業につきましては、「FutureVision®Plus」の新規顧客獲得、既存顧客へのリプレイス等による拡販及び業務支援を推進いたしました。IoT関連サービス事業につきましては、IoTやVR等の領域に属する資本業務提携先と、新たなサービスの開発や事業モデルの構築等を進めてまいりました。
以上の結果、売上高は15,178,230千円(前年同期比19.3%増)となり、セグメント利益は3,598,963千円(前年同期比23.5%増)となりました。
b.不動産事業
社宅管理代行事業につきましては、イオンモール株式会社をはじめとするイオングループ各社の社宅管理代行サービスの取扱い件数の拡大と新たな顧客獲得に注力いたしました。
VR住宅展示場事業につきましては、出店数の拡大とともに、コンテンツの充実、利便性の向上に取組み、事業拡大を図ってまいりました。また、不動産事業の販路を生かし、集合住宅向けISP事業をはじめとする当社サービスの拡販等に向けた体制の構築、強化を進めてまいりました。
なお、当連結会計年度におきまして、今後のコロナウイルス感染症の影響等、不透明な要素を鑑み、収益性の高い主力事業である集合住宅向けISP事業並びに当社内の不動産関連事業に経営資源を集中し、更なる収益力を強化することを目的に、不動産仲介業務を行っている株式会社フォーメンバーズの株式の一部を譲渡し、同社を連結の範囲から除外いたしました。
以上の結果、売上高は690,990千円(前年同期比24.6%減)となり、セグメント損失は132,738千円(前年同期はセグメント損失467,889千円)となりました。
c.その他
その他の事業につきましては、売上高は9,619千円(前年同期比3.2%減)となり、セグメント利益は1,734千円(前年同期比4.4%増)となりました。
なお、各報告セグメントにおける新型コロナウイルス感染症の影響につきましては、「第2 事業の状況 2事業等のリスク」に記載のとおりであります。
財政状態の分析につきましては、「第2 事業の状況 3経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容 a.財政状態の分析」に記載のとおりであります。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ924,019千円増加し、3,488,179千円となりました。当連結会計年度末における各キャッシュ・フローの状況とそれらの主な要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動の結果、得られた資金は1,857,442千円となりました。これは主に税金等調整前当期純利益2,133,365千円、法人税等の支払額521,397千円、減価償却費711,105千円等によるものであります。なお、関係会社株式売却損益1,501,609千円及び貸倒引当金の増減額1,500,715千円については、当連結会計年度において連結子会社である株式会社フォーメンバーズの株式の一部を譲渡し、連結の範囲から除外したこと等によるものであります。
当連結会計年度の売上高は、HomeIT事業において新規受注と安定的な収益計上を見込めるストックビジネスの積み上げ及び不動産事業において社宅代行事業やVR住宅展示場事業の伸張により、15,878,720千円(前年同期13,649,420千円)となりました。費用につきましては、新型コロナウイルス感染症に伴う活動制限等により経費が減少しました。以上の結果、経常利益は2,129,972千円(前年同期1,198,612千円)、税金等調整前当期純利益は前年同期比1,127,911千円増し、2,133,365千円となりました。
当連結会計年度の法人税等の支払額は、前年同期の税金等調整前当期純利益1,005,454千円に対応しております。当連結会計年度の法人税等の支払額は前年同期比265,474千円減少しております。減価償却費は、HomeIT事業のリースによる通信機器の調達が主なものとなります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動の結果、使用した資金は526,347千円となりました。これは主に共同住宅新設による有形固定資産の取得による支出259,002千円及び業務拡大に伴うソフトウエア投資による無形固定資産の取得による支出73,556千円であります。なお、連結範囲の変更を伴う子会社株式の売却による支出206,003千円については、当連結会計年度において連結子会社である株式会社フォーメンバーズの株式の一部を譲渡し、連結の範囲から除外したことによるものであります。
当社グループは、将来の利益の獲得のために、企業価値向上に資すると見込む新規投資、既存技術の高度化に対して継続的な投資が必要と考えております。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動の結果、使用した資金は407,076千円となりました。これは主に長期借入れによる収入700,000千円、長期借入金の返済による支出310,008千円、社債の償還による支出200,000千円、配当金の支払額52,535千円、リース債務の返済による支出538,233千円によるものであります。
当社グループは、資金需要に対応するため、主に金融機関からの借入により資金調達を行っております。当連結会計年度は事業拡大に伴い十分な運転資金を確保するため、長期借入れによる収入は前年同期比300,000千円増加し700,000千円となりました。長期借入金の返済による支出は前年同期比14,550千円増加、社債の償還による支出は前年と同額となっております。配当金の支払額は、当社グループでは株主への安定的かつ継続的な利益還元に努めるため、前年同期とほぼ同額の52,535千円としております。リース債務の返済による支出は、HomeIT事業の業況拡大によりリースによる通信機器の調達が増えたことに伴い、前年同期比180,286千円増加しております。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社グループは事業の性質上、生産実績の記載になじまないため、記載しておりません。
b.受注実績
当連結会計年度における受注実績は、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 受注高(千円) | 前年同期比(%) | 受注残高(千円) | 前年同期比(%) |
HomeIT事業 | 15,062,160 | 119.3 | 402,282 | 77.6 |
(注) 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績は、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 販売高(千円) | 前年同期比(%) |
HomeIT事業 | 15,178,110 | 119.30 |
不動産事業 | 690,990 | 75.38 |
(注)1.セグメント間取引については相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な販売先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
販売先 | 前連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | ||
販売高(千円) | 割合(%) | 販売高(千円) | 割合(%) | |
D.U-NET株式会社 | 5,640,279 | 41.3 | 6,442,226 | 40.6 |
大東建託株式会社 | 1,165,118 | 8.5 | 764,084 | 4.8 |
大東建託パートナーズ株式会社 | 693,869 | 5.1 | 1,881,439 | 11.8 |
3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.財政状態の分析
当連結会計年度末の総資産につきましては、前連結会計年度末に比べ2,105,057千円増加し、11,192,272千円となりました。主な増加理由は、現金及び預金924,019千円、受取手形及び売掛金155,184千円、仕掛品113,369千円、原材料及び貯蔵品616,018千円、建物及び構築物116,410千円、リース資産107,289千円であります。また、主な減少理由は、商品及び製品35,912千円、流動資産「その他」60,538千円であります。なお、連結子会社である株式会社フォーメンバーズを連結の範囲から除外したことにより、長期貸付金が1,496,914千円増加し、貸倒引当金を1,496,914千円繰入れております。
負債合計につきましては、前連結会計年度末に比べ685,795千円増加し、7,085,460千円となりました。主な増加理由は、支払手形及び買掛金230,673千円、長期借入金389,992千円、リース債務262,444千円、未払法人税等259,933千円であります。また、主な減少理由は、前受金103,762千円、流動負債「その他」93,209千円、社債200,000千円、未払金61,311千円であります。
純資産合計につきましては、親会社株主に帰属する当期純利益1,393,059千円の計上、剰余金の配当52,629千円により4,106,812千円となり、自己資本比率は前連結会計年度末に比べ7.1ポイント改善し、36.7%となりました。
当社グループの財政状態に重要な影響を与える要因としては、上記のとおり主に営業債権債務、棚卸資産の増減によるものであります。これは、当社グループのビジネスモデルは営業債権債務及び棚卸資産の回転期間が短く、主に期末日近くにおける売上高に基づく売掛金、翌期以降の受注見込に基づく買掛金、及び棚卸資産により資産負債が増減するため、継続的な取引規模の拡大を反映した財政状態であります。
b.経営成績の分析
当連結会計年度における売上高は、前年同期比16.3%増の15,878,720千円となりました。これは主に、集合住宅向けISPサービスの提供戸数が前連結会計年度末比べ180,301戸増加し、745,127戸に達したことによるものであります。報告セグメント別の売上高につきましては、HomeIT事業は、前年同期比19.3%増の15,178,230千円、不動産事業は、前年同期比24.6%減の690,990千円となりました。
売上総利益は、前年同期比14.5%増の4,449,231千円となりました。これは主に売上高の増加に伴い増加したものであります。その一方で、回線費用及びルータ等の機器の減価償却費等の増加により、売上総利益率は前連結会計年度に比べ0.5ポイント減少し、28.0%となりました。
営業利益は、前年同期比74.7%増の2,158,214千円となりました。事業の拡大に対応する営業、施工管理体制の強化が一巡し、株式会社フォーメンバーズの連結除外及び新型コロナウイルス感染症拡大に伴う営業活動の一部自粛等による販管費の減少(前年同期比13.6%減の2,291,016千円)により、営業利益率は前連結会計年度に比べ4.5ポイント増加し、13.6%となりました。
経常利益は、前年同期比77.7%増の2,129,972千円となりました。営業外収益の主な項目は、集合住宅向けISPサービスの回線切替による収入31,963千円等であり、営業外費用の主な項目は、借入金等の支払利息53,194千円のほか、集合住宅向けISPサービスの回線品質向上及び安定供給に向けた通信回線への切り替えに伴う解約手数料5,065千円等であります。
税金等調整前当期純利益は、前年同期比112.2%増の2,133,365千円となりました。特別利益の主な項目は、株式会社フォーメンバーズの株式の一部を譲渡したことによる関係会社株式売却益1,501,609千円であり、特別損失の主な項目は、株式会社フォーメンバーズへの貸付けに対する貸倒引当金繰入額1,496,914千円等であります。
親会社株主に帰属する当期純利益は法人税等740,306千円の計上により、1,393,059千円(前年同期比171.9%増)となりました。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因といたしましては、HomeIT事業における大手包括提携先からの集合住宅向けISPサービス提供戸数、不動産事業につきましては、社宅管理代行事業における管理物件の新規獲得数であり、売上高はこれらに応じて増加しております。利益につきましては、売上高の増加と持続的な成長のための人材採用や内部管理体制の強化への先行投資が一巡し、株式会社フォーメンバーズの連結除外及びコロナ禍における営業活動の一部自粛等による販管費の減少等により増加しております。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に関する情報
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積に用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されて
おり、連結財務諸表の作成にあたって採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載されているとおりであります。
当社グループは、連結財務諸表の作成に際して将来事象の結果に依存するため確定できない金額について、仮定
の適切性、情報の適切性及び金額の妥当性に留意した上で、最善の見積りを行っております。
しかしながら、見積り特有の不確実性は避けられず、加えて新型コロナウイルス感染症による取引先の経済活動
の制限や休業等の外部要因により、当社グループの仮定を上回る経営環境の悪化がもたらされる可能性があります。そのような場合には、資産の評価において判断の基礎とした将来の事業計画が実績と乖離することにより、一時の費用又は損失が発生することが考えられます。
a.時価を把握することが極めて困難と認められる株式の減損処理
「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (重要な会計上の見積り)」 に記載されているとおりであります。
b.棚卸資産の評価
「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (重要な会計上の見積り)」 に記載されているとおりであります。
c.固定資産の減損処理
当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グルー
プから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、減損処理が必要となる可能性があります。
また、処分予定の資産については、回収可能価額を正味売却価額により算定し、帳簿価額を回収可能額まで減
損損失として計上しております。
d.繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について、将来の事業計画に基づいた課税所得が十分に確保できることや、回
収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、繰延税金資産が増加又は減少し、法人税等調整額が減少又は増加する可能性があります。
④ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社の資本政策の方針といたしましては、中長期的な企業価値の向上と持続的な成長のために、財務基盤の強化
に必要な内部留保を確保しつつ、積極的な成長投資を可能とする株主資本の保持を基本として、株主に対しては、安定的かつ継続的な利益還元に努めることとしております。
当社グループにおける主な資金需要といたしましては、HomeIT事業における集合住宅向けISPサービス導入にか
かる回線、機器の仕入及び外注費であります。
これらの必要資金につきましては、主として内部留保資金及び営業活動により得られた資金を活用しておりま
す。また、安定的な財源確保のため金融機関等から資金調達を行っており、今後も継続する方針であります。