有価証券報告書-第23期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
経営成績の状況は次のとおりであります。
当連結会計年度のわが国経済におきましては、政府、日本銀行による各種経済・金融政策を背景に、雇用・所得環境の改善が続く中で、緩やかな景気回復基調が継続しております。
今後の先行きにつきましては、通商問題の動向や海外経済の不確実性、金融資本市場の変動や相次ぐ自然災害による経済への影響等に留意する必要があるものの、回復基調が継続することが期待されております。
当社グループが主にサービスを提供する賃貸住宅市場は、金融機関の融資姿勢の変化等の影響により、新設住宅着工戸数は縮小傾向にありましたが、利便性が高く、安心・快適な賃貸住宅の需要は引き続き底堅く推移いたしました。また、不動産業界を取り巻く環境は、引き続き不動産事業とITが融合した不動産Techへの関心度は高く、各種IoT機器の普及やAI・VRを活用した不動産仲介業務等、業界変革に向けて大きな進展が見られ、今後、生活の多様化に合わせた暮らしをより快適で安心にするサービスや、効率的で透明性の高い不動産業務等への需要は、さらに拡大することが見込まれております。
このような状況のもと、当社グループは、「不動産Techのリーディングカンパニーへ」というビジョンを掲げ、主力事業である集合住宅向けISP事業を中心に事業の拡大を図るとともに、資本業務提携先との連携強化に努め、IoT関連サービスや不動産事業等、新規事業の展開に注力いたしました。
以上の結果、売上高は、10,921,517千円(前連結会計年度比71.9%増)、経常利益1,259,820千円(前連結会計年度比133.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益684,315千円(前連結会計年度比139.2%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
a.HomeIT事業
集合住宅向けISP事業につきましては、家賃下落と空室対策を目的に不動産の差別化・高付加価値化が加速している環境を背景に、集合住宅向けISPサービスの提供戸数拡大に向けて、大手顧客からの安定的な受注と分譲マンション向け及び小規模賃貸集合住宅向けサービスの新規獲得に注力いたしました。
加えて、回線品質向上の取組み及びサービスメニューの強化等、顧客満足度向上を図り、利用者サービスの充実を継続的に推進したことにより、解約数は低水準で推移いたしました。
また、今後も継続した事業拡大を見込んでいることから、工事・施工管理・アフターメンテナンス体制の一層の拡充、安定したサービス提供を図るため、2018年10月に連結子会社である株式会社ギガテックを完全子会社化するとともに、2019年2月には同社が株式会社エー・エス・ディと共同で開発した、情報通信設備に関する調査・工事業務の管理に特化したクラウド型の施工情報管理システムとして「GIGA REPO(ギガレポ)」の運用を開始し、工事業務の円滑化と効率化に取り組んでまいりました。
以上の結果、当連結会計年度末における集合住宅向けISPサービスの提供戸数は、前連結会計年度末257,655戸に比べ65.3%増の425,950戸となりました。
ネットワークサービス事業につきましては、MSPサービスやホスティングサービスにおいて、既存顧客との継続的な取引により、堅調に推移いたしました。
システム開発事業につきましては、「FutureVision®」シリーズの拡販に加え、2018年6月に連結子会社化した株式会社ソフト・ボランチと共同で開発した、賃貸仲介業務から本格的なプロパティマネジメントまでカバーする不動産業務支援システム「FutureVision® Plus」を2019年3月より販売開始いたしました。
IoT関連サービス事業につきましては、前連結会計年度から当社ビジョンの実現のため、IoTやVR等の領域に属する企業と積極的に資本業務提携を進めており、当該資本業務提携先とのさらなる協力体制の強化を図るとともに、IoT関連サービスの普及や新たなIoT商材の開発に向けた取組みを進展させてまいりました。
以上の結果、売上高は10,263,996千円(前連結会計年度比75.0%増)となり、集合住宅向けISP事業拡大に向けた体制強化に伴う人件費の増加等があったものの、セグメント利益は2,889,346千円(前連結会計年度比67.6%増)となりました。
b.不動産事業
不動産事業につきましては、集合住宅向けISPに次ぐ事業の柱とすべく、連結子会社である株式会社フォーメンバーズが直接運営する「イオンハウジング」フランチャイズ店舗の体制強化等、企業体質及び業績改善に向けた取組みを継続してまいりました。
また、イオンモール株式会社との出店調整の影響等により開発及び展開が遅れておりましたAHN事業につきましては、AHN加盟店初出店となる「イオンハウジング イオンモール神戸南店(兵庫県)」(2018年9月オープン)を皮切りに、初の路面店となる「イオンハウジング 江坂店(大阪府)」(2019年1月オープン)、路面店2店舗目の「イオンハウジング 草津駅前店(滋賀県)」(2019年2月オープン)、初のAHN化となる「イオンハウジング イオン葛西店(東京都)」(2019年2月リニューアルオープン)、九州エリア初出店となる「イオンハウジング イオンタウン姶良店(鹿児島県)」(2019年3月オープン)、及び「イオンハウジング イオンモール鶴見緑地店(大阪府)」(2019年3月オープン)の出店により、当連結会計年度末のAHN加盟店舗数は6店舗となり、AHN加盟店の多店舗出店に向けた取組みを加速させた結果、イオンハウジングが展開する店舗数は、21店舗(イオンモール直営店舗:5店舗、フォーメンバーズ運営店舗:10店舗、AHN加盟店舗:6店舗)まで拡大いたしました。
以上の結果、売上高は634,370千円(前連結会計年度比34.7%増)となりましたが、前連結会計年度に新規出店した店舗の立ち上げに伴う人材採用、教育等への先行投資、サブリース物件の拡大による原価等の増加により、セグメント損失は461,217千円(前連結会計年度はセグメント損失328,249千円)となりました。
c.その他
その他の事業につきましては、人材派遣及び当社所有の不動産賃貸に加え、2018年12月より新たに社宅管理代行事業に参入し、イオンモール株式会社をはじめとするイオングループの社宅管理代行事業を開始し、取扱い件数の拡大を目指して体制構築を進めてまいりました。
以上の結果、売上高は23,749千円(前連結会計年度比23.5%増)となり、セグメント利益は9,880千円(前連結会計年度比156.6%増)となりました。
財政状態につきましては次のとおりであります。
当連結会計年度末の資産合計は前連結会計年度末に比べ3,175,508千円増加し、7,921,569千円となりました。
当連結会計年度末の負債合計は前連結会計年度末に比べ2,532,964千円増加し、5,693,444千円となりました。
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ642,544千円増加し、2,228,125千円となりました。
なお、財政状態の分析につきましては、「第2事業の状況 3経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ② 財政状態の分析」に記載のとおりであります。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ728,510千円増加し、2,717,318千円となりました。当連結会計年度末における各キャッシュ・フローの状況とそれらの主な要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動の結果、得られた資金は647,006千円となりました。これは、主に税金等調整前当期純利益1,253,700千円、法人税等の支払300,602千円、減価償却費397,334千円、たな卸資産の増加233,658千円、売上債権の増加1,138,979千円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動の結果、使用した資金は150,366千円となりました。これは主に、貸付による支出20,020千円、有形固定資産の取得による支出37,208千円、投資有価証券の取得による支出51,177千円、無形固定資産の取得による支出51,605千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動の結果、得られた資金は231,869千円となりました。これは主に、社債の発行による収入290,220千円、借入金の増加による収入600,000千円、借入金の返済による支出211,004千円、社債の償還による支出200,000千円、配当金の支払額39,979千円、リース債務の返済による支出181,728千円によるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社グループは事業の性質上、生産実績の記載になじまないため、記載しておりません。
b.受注実績
当連結会計年度における受注実績は、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 受注高(千円) | 前年同期比(%) | 受注残高(千円) | 前年同期比(%) |
HomeIT事業 | 9,819,065 | 170.2 | 619,434 | 355.0 |
(注)1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.当連結会計年度において、受注実績に著しい変動がありました。これは、主に主要顧客からの受注が、新規物件、既存物件ともに大幅に増加したことによるものであり、これに伴いHomeIT事業における販売実績も著しく増加しております。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績は、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 販売高(千円) | 前年同期比(%) |
HomeIT事業 | 10,263,396 | 175.0 |
不動産事業 | 634,370 | 134.7 |
(注)1.セグメント間取引については相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な販売先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
販売先 | 前連結会計年度 (自 2017年4月1日 至 2018年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | ||
販売高(千円) | 割合(%) | 販売高(千円) | 割合(%) | |
D.U-NET株式会社 | 2,767,570 | 43.6 | 4,877,322 | 44.7 |
大東建託株式会社 | 446,692 | 7.0 | 990,020 | 9.1 |
大東建託パートナーズ株式会社 | 32,027 | 0.5 | 244,839 | 2.2 |
3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであり、将来に関する事項には、不確実性を内在しており、あるいはリスクを含んでいるため、将来生ずる実際の結果と異なる可能性を含んでおりますので、ご留意ください。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたりまして、決算日における資産・負債の報告数値、報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える見積りは、主にのれん、貸倒引当金、繰延税金資産であり、継続して評価を行っております。
② 財政状態の分析
当連結会計年度末における資産合計につきましては、売上高の増加による売掛金1,148,633千円の増加、現金及び預金730,010千円増加により、前連結会計年度末に比べ3,175,508千円増加し、7,921,569千円となりました。
負債につきましては、社債の償還200,000千円等があったものの、リース債務1,137,798千円の増加や仕入の増加による支払手形及び買掛金363,017千円の増加等により、負債合計は前連結会計年度末に比べ2,532,964千円増加し、5,693,444千円となりました。
純資産につきましては、親会社株主に帰属する当期純利益が684,315千円となったこと等により、2,228,125千円となりました。
この結果、自己資本比率は28.1%となっております。
③ 経営成績の分析
a.売上高
当連結会計年度における売上高は、前連結会計年度比71.9%増の10,921,517千円となりました。これは主に、集合住宅向けISPサービスの提供戸数が前連結会計年度末比べ168,295戸増加し、累計提供戸数が425,950戸に達したことによるものであります。報告セグメント別の売上高につきましては、HomeIT事業は、前連結会計年度比75.0%増の10,263,996千円、不動産事業は、前連結会計年度比34.7%増の634,370千円となりました。
b.売上総利益
当連結会計年度における売上総利益は、前連結会計年度比58.2%増の3,731,807千円となりました。これは主に売上高の増加に伴い増加したものであります。その一方で、回線費用及びルータ等の機器の減価償却費等の増加により、売上総利益率は前連結会計年度に比べ3.0ポイント減少し、34.2%となりました。
c.営業利益
当連結会計年度における営業利益は、前連結会計年度比131.0%増の1,292,138千円となりました。これは主にHomeIT事業の業績(前連結会計年度比67.6%増の2,889,346千円)が好調だったことによるものであります。その一方、集合住宅向けISP事業の拡大に対応する営業、施工管理体制の強化に向けた人件費、設備投資による減価償却費等により販売費及び一般管理費は増加(前連結会計年度比35.5%増の2,439,668千円)したものの、営業利益率は前連結会計年度に比べ3.0ポイント増加し、11.8%となりました。
d.経常利益
当連結会計年度における経常利益は、前連結会計年度比133.3%増の1,259,820千円となりました。これは上記のとおり、HomeIT事業の業績が好調だったことによります。営業外費用の主な項目は、集合住宅向けISPサービスの回線品質向上及び安定供給に向けた通信回線への切り替えに伴う解約手数料21,905千円等であります。
e.親会社株主に帰属する当期純利益
法人税等568,057千円、非支配株主に帰属する当期純利益1,327千円等の計上により、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は684,315千円(前連結会計年度比139.2%増)となりました。
④ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社の資本政策の方針といたしましては、中長期的な企業価値の向上と持続的な成長のために、財務基盤の強化のために必要な内部留保を確保しつつ、積極的な成長投資を可能とする株主資本を保持することを基本として、株主に対しては、安定的かつ継続的な利益還元に努めることとしております。
当社グループにおける主な資金需要といたしましては、HomeIT事業における集合住宅向けISPサービス導入にかかる光回線、機器の仕入及び外注費、不動産事業における店舗運営資金等であります。
これらの必要資金につきましては、主として内部留保資金及び営業活動により得られた資金を活用しておりますが、安定的な財源確保のため、金融機関から借入による資金調達を行っており、今後も継続する方針であります。