有価証券報告書-第26期(令和3年4月1日-令和4年3月31日)
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度のわが国経済は、新型コロナウイルス感染症拡大に対するまん延防止等重点措置の適用やワクチン接種の推進などの効果により、一時持ち直しの動きが見られましたが、変異株による感染の再拡大に伴い、再び社会経済活動が抑制されるなど厳しい状況が続きました。また、半導体供給不足や国際情勢不安に起因する原材料価格の高騰など、景気の動向は依然として不透明な状況が続いております。
当社グループの事業は、アパートやマンションなどの集合住宅を中心にインターネット設備の提供を主なサービスとするHomeIT事業と、企業の社宅管理業務の代行を主なサービスとする不動産事業の2つから構成されています。これらの事業をとりまく外部環境は、以下のとおりと認識しております。
HomeIT事業におきましては、集合住宅市場、情報通信業界の動向を注視しております。
集合住宅市場は、新築物件の着工戸数がコロナ禍の反動もあり回復基調で推移しております。既存物件は入居者の多様化するニーズやライフスタイルに合わせた、付加価値があり差別化できる設備への投資意欲は高く推移しております。また、インターネット設備の導入、より安定した通信回線への切替えやワークスペースの確保といった新たな需要もあり、リフォームやリノベーションなどによる資産価値向上の動きは引き続き堅調に推移すると見込まれております。
情報通信業界は、コロナ禍におけるテレワーク、オンライン授業、動画視聴の拡大などの社会経済活動のデジタル化によって、国内のデータ通信量は急増しております。これに伴いデジタル社会の基盤となる通信インフラの整備、増強の重要性が高まっており、より安全で安定したインターネット接続環境が求められております。
このような環境の下、HomeIT事業につきましては、収益基盤であるランニング収益の最大化を目指して、OEM提供先企業との連携及びサービス品質向上への取り組みを強化し、サービス提供戸数の拡大を図ってまいりました。
不動産事業におきましては、不動産業界の動向を注視しております。
不動産業界は、オンラインでの接客、内見や売買取引など、業務の効率化を目的としたデジタル化への動きが急速に進んでおり、テクノロジーを活用した顧客視点での新たな価値の創出が求められております。
このような環境の下、不動産事業につきましては、社宅管理代行サービスの取扱い件数の拡大及びVR住宅展示場の利便性向上に注力するとともに、同事業の提携不動産会社と連携し、集合住宅向けISPサービスをはじめとする各種サービスの販売体制の構築を推進いたしました。
以上の結果、当連結会計年度の経営成績は、売上高15,789,989千円(前年同期比0.6%減)、経常利益2,202,016千円(前年同期比3.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益1,454,708千円(前年同期比4.4%増)となりました。なお、当連結会計年度の期首から「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しております。詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(会計方針の変更)」をご参照ください。
また、新型コロナウイルス感染症に関しましては、当連結会計年度において当社グループの事業活動に重要な影響はなく、業績に与える影響は軽微であります。
セグメント別の状況は次のとおりであります。
HomeIT事業
HomeIT事業は、集合住宅向けISPサービス、IoTソリューションサービス、ネットワークサービス、システム開発から構成されております。
集合住宅向けISPサービスにつきましては、OEM提供先企業との連携強化によるサービス提供戸数拡大に加え、大型物件の受注やリプレイス強化に向けた体制強化に努めてまいりました。当連結会計年度における集合住宅向けISPサービスの提供戸数は、新築物件が堅調に推移し、既存物件についても、「PWINS」や「SPES」の特性を活かした新規顧客の獲得、大型分譲物件へのサービス導入や各拠点エリアでの販売を強化した結果、前連結会計年度末745,127戸に比べ、20.9%増の900,512戸となりました。
IoTソリューションサービスにつきましては、集合住宅向けISPサービスと親和性の高いクラウドカメラを主なサービスとして提供しております。クラウドカメラは、管理物件の防犯強化や管理業務の効率化を目的としたニーズを背景に好調に推移いたしました。また、新たな取り組みとして、パートナー企業との協業による「Secual Smart Pole」を軸としたサービスの開発及び体制構築を推進してまいりました。
ネットワークサービスにつきましては、MSPサービスやホスティングサービスは堅調に推移しており、システム開発につきましては、「FutureVision®Plus」の新規顧客獲得やリプレイスなどによる拡販及び既存顧客への業務支援を推進してまいりました。
以上の結果、売上高は15,620,666千円(前年同期比2.9%増)となりましたが、一方、集合住宅向けISPサービスにおいて、猛暑や落雷などに起因した機器の不具合による保守費用などが増加したこともあり、セグメント利益は3,532,019千円(前年同期比1.9%減)となりました。
不動産事業
不動産事業は、社宅管理代行サービス及びVR住宅展示場等から構成されております。
社宅管理代行サービスにつきましては、イオンモール株式会社をはじめとするイオングループ各社に加え、新規取引先の獲得により取扱い件数拡大を目指してまいりました。また、社宅管理代行業務の更なる効率化を図ることにより、サービス品質の向上に努めてまいりました。
VR住宅展示場につきましては、出展しているショッピングモールの集客数がコロナ前の水準まで戻りつつある中、事業拡大に向けて、顧客視点によるコンテンツの充実や利便性向上に取り組んでまいりました。
また、前第2四半期連結累計期間において不動産仲介業務を行う子会社の株式の一部を譲渡し、同社を連結の範囲から除外したこともあり、売上高は159,906千円(前年同期比76.9%減)、セグメント利益は17,687千円(前年同期はセグメント損失132,738千円)となりました。
その他
その他の事業につきましては、売上高は9,416千円(前年同期比2.1%減)となり、セグメント利益は1,212千円(前年同期比30.1%減)となりました。
財政状態の分析につきましては、「第2 事業の状況 3経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容」に記載のとおりであります。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ222,739千円増加し、3,710,919千円となりました。当連結会計年度末における各キャッシュ・フローの状況とそれらの主な要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動の結果、得られた資金は1,350,722千円となりました。
税金等調整前当期純利益は、前年同期比1,021千円増加の2,134,387千円となりました。これは、当社グループの売上高の98.9%を占めるHomeIT事業において、OEM提供先企業との連携強化によるサービス提供戸数拡大により堅調に推移した結果、セグメント利益が3,532,019千円となったことが主な要因です。なお、HomeIT事業のセグメント利益は前年同期比では66,944千円減少しておりますが、当連結会計年度の期首より収益認識会計基準等の適用を行ったことによりセグメント利益が248,811千円減少しているため、前期と同様の会計処理方法で比較した場合には181,867千円の増加となっております。また、不動産事業においては前期に株式会社フォーメンバーズを連結対象から除外したことから、セグメント利益は前年同期比150,426千円増加し、17,687千円となりました。
その他、HomeIT事業において通信機器をリースにて調達したことによる減価償却費724,695千円、今後の自己株式取得の資金の預け入れによる預け金の増加320,639千円、法人税等の支払額914,635千円等を計上しております。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動の結果、使用した資金は53,416千円となりました。これは主に業務拡大に伴う無形固定資産の取得による支出39,093千円であります。当社グループは、将来の利益の獲得のために、企業価値向上に資すると見込む新規投資、既存技術の高度化に対して継続的な投資が必要と考えております。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動の結果、使用した資金は1,074,566千円となりました。これは主に長期借入れによる収入800,000千円、短期借入金の返済による支出100,000千円、長期借入金の返済による支出548,904千円、社債の償還による支出200,000千円、配当金の支払額150,042千円、リース債務の返済による支出726,930千円によるものであります。当社グループは、資金需要に対応するため、主に金融機関からの借入により資金調達を行っております。当連結会計年度は事業拡大に伴い十分な運転資金を確保するため、長期借入れによる収入は前年同期比100,000千円増加し800,000千円となりました。長期借入金の返済による支出は前年同期比238,896千円増加、社債の償還による支出は前年と同額となっております。配当金については、当社グループでは株主への安定的かつ継続的な利益還元を経営の重要な課題と位置付けており、経営成績、財政状態、配当性向等を勘案した結果、1株当たり普通配当3円50銭に特別配当6円50銭を加えた10円00銭としております。リース債務の返済による支出は、HomeIT事業の業況拡大によりリースによる通信機器の調達が増えたことに伴い、前年同期比188,697千円増加しております。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社グループは事業の性質上、生産実績の記載になじまないため、記載しておりません。
b.受注実績
当連結会計年度における受注実績は、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 受注高(千円) | 前年同期比(%) | 受注残高(千円) | 前年同期比(%) |
HomeIT事業 | 15,606,721 | - | 18,270,979 | - |
(注)当連結会計年度の期首から収益認識会計基準等を適用しており、残存履行義務を受注残高としております。受注高と受注残高は、従来の集計方法と異なるため、前年同期比は記載しておりません。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績は、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 販売高(千円) | 前年同期比(%) |
HomeIT事業 | 15,620,666 | 102.9 |
不動産事業 | 159,906 | 23.1 |
(注)1.セグメント間取引については相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な販売先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
販売先 | 前連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) | ||
販売高(千円) | 割合(%) | 販売高(千円) | 割合(%) | |
D.U-NET株式会社 | 6,442,226 | 40.6 | 6,282,464 | 39.8 |
大東建託株式会社 | 764,084 | 4.8 | 506,697 | 3.2 |
大東建託パートナーズ株式会社 | 1,881,439 | 11.8 | 3,213,368 | 20.4 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの経営成績は、HomeIT事業における集合住宅向けISPサービスの提供戸数に影響を受けます。
当社グループを取り巻く環境は、コロナ禍においてライフスタイルやワークスタイルが大きく変化したことにより、社会全体のデジタル化が進み、デジタル社会の基盤となる通信インフラの重要性は高まっております。更にテレワーク、オンライン授業、動画視聴の拡大などにより、国内のデータ通信量が急増していることから通信インフラの整備、より安全で安定したインターネット接続環境が求められております。これらを背景にインターネット設備の導入需要は、引き続き堅調に推移すると見込んでおり、更なる競争力強化への取り組みが重要であると認識しております。
このような環境のもと、集合住宅向けISPサービスの提供戸数の更なる拡大に向けて、既存顧客との連携強化、新規顧客の獲得及びサービス品質の向上等に取り組み、収益基盤であるランニング収益の最大化を目指すことで、当社グループの継続的な成長につながるものと考えております。
当社グループの当連結会計年度の経営成績は、売上高につきましては、HomeIT事業における集合住宅向けISPサービスの提供戸数が前連結会計年度末に比べ155,385戸増加し、900,512戸に達したものの、当連結会計年度の期首より収益認識会計基準等を適用したため、前年同期比0.6%減の15,789,989千円となりました。
報告セグメント別の売上高につきましては、HomeIT事業は、前年同期比2.9%増の15,620,666千円、不動産事業は、前第2四半期連結累計期間において不動産仲介業務を行う子会社の株式の一部を譲渡し、同社を連結の範囲から除外したこともあり、前年同期比76.9%減の159,906千円となりました。
売上総利益は、HomeIT事業における猛暑や落雷などに起因した機器の不具合による保守費用等の増加の影響を受け、前年同期比4.0%減の4,270,424千円となりました。
営業利益は、新型コロナウイルス感染症による営業活動の一部自粛等により、販売費及び一般管理費が減少(前年同期比11.3%減の2,031,018千円)したことにより、前年同期比3.8%増の2,239,405千円となりました。
経常利益は、集合住宅向けISPサービスの回線切替による営業外収益13,720千円等の計上、借入金等の支払利息54,548千円等を営業外費用で計上したことにより、前年同期比3.4%増の2,202,016千円となりました。
税金等調整前当期純利益は、特別損失として投資有価証券評価損59,509千円を計上したことにより、2,134,387千円となりました。
親会社株主に帰属する当期純利益は法人税、住民税及び事業税898,483千円の計上、法人税等調整額△218,804千円の計上により、1,454,708千円となりました。
資産合計につきましては、前連結会計年度末に比べ928,779千円増加し、12,121,052千円となりました。主な増加理由は、現金及び預金220,939千円、売掛金283,145千円、原材料及び貯蔵品179,975千円、流動資産「その他」344,317千円であります。また、主な減少理由は、仕掛品36,007千円、リース資産318,583千円、投資有価証券59,509千円であります。
負債合計につきましては、前連結会計年度末に比べ333,079千円減少し、6,752,380千円となりました。主な減少理由は、支払手形及び買掛金65,360千円、リース債務259,034千円、未払金26,293千円、社債200,000千円であります。また、主な増加理由は、長期借入金251,096千円、未払消費税等56,681千円、契約負債28,115千円であります。
純資産合計につきましては、親会社株主に帰属する当期純利益1,454,708千円の計上、剰余金の配当150,370千円により5,368,672千円となり、自己資本比率は前連結会計年度末に比べ7.6ポイント改善し、44.3%となりました。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に関する情報
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されて
おり、連結財務諸表の作成にあたって採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載されているとおりであります。
当社グループは、連結財務諸表の作成に際して将来事象の結果に依存するため確定できない金額について、仮定
の適切性、情報の適切性及び金額の妥当性に留意した上で、最善の見積りを行っております。
しかしながら、見積り特有の不確実性は避けられず、加えて新型コロナウイルス感染症による取引先の経済活動
の制限や休業等の外部要因により、当社グループの仮定を上回る経営環境の悪化がもたらされる可能性があります。そのような場合には、資産の評価において判断の基礎とした将来の事業計画が実績と乖離することにより、一時の費用又は損失が発生することが考えられます。
a.市場価格のない株式等の減損処理
「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (重要な会計上の見積り)」 に記載されているとおりであります。
b.棚卸資産の評価
「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (重要な会計上の見積り)」 に記載されているとおりであります。
c.固定資産の減損処理
当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グルー
プから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、減損処理が必要となる可能性があります。
また、処分予定の資産については、回収可能価額を正味売却価額により算定し、帳簿価額を回収可能額まで減
損損失として計上しております。
d.繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について、将来の事業計画に基づいた課税所得が十分に確保できることや、回
収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、繰延税金資産が増加又は減少し、法人税等調整額が減少又は増加する可能性があります。
④ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社の資本政策の方針といたしましては、中長期的な企業価値の向上と持続的な成長のために、財務基盤の強化
に必要な内部留保を確保しつつ、積極的な成長投資を可能とする株主資本の保持を基本として、株主に対しては、安定的かつ継続的な利益還元に努めることとしております。
当社グループにおける主な資金需要といたしましては、HomeIT事業における集合住宅向けISPサービス導入にか
かる回線、機器の仕入及び外注費であります。
これらの必要資金につきましては、主として内部留保資金及び営業活動により得られた資金を活用しておりま
す。また、安定的な財源確保のため金融機関等から資金調達を行っており、今後も継続する方針であります。