有価証券報告書-第16期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)
「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 2018年2月16日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、前連結会計年度に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を遡って適用した後の指標等となっております。
(業績等の概要)
(1) 業績
当連結会計年度(2018年4月1日から2019年3月31日まで)における世界経済は年度後半から米中貿易摩擦、地政学的リスクの不確実性の高まりといった先行き不透明な状況が継続し、これらに対する懸念から国際金融資本市場の調整につながりました。
わが国の経済は、雇用環境や所得の改善に伴い個人消費が持ち直していることなどから緩やかな回復基調が続くなか、IT関連投資も人材不足感への高まりの対応による省力化投資や生産性向上を目的に底堅く推移しました。
国内のAI市場をみると、様々な業種のイノベーター企業において、業務プロセスへの人工知能(AI)の実装が進みました。人工知能(AI)に纏わる議論も、かつて盛んであったAIがヒトの労働を奪うことを懸念するものから、人手不足問題の深刻化を背景としてAIが生産性向上や労働の自動化を実現するといった経済発展と社会課題解決の両立を目指すものへと変化がみられます。
さらに足もとでは、人工知能(AI)の学習に必要なデータ不足についての課題感や法整備、AI人材の不足、AI分野に投じる国家予算の比較といった議論が活発化し、AI市場が“効果検証”から“社会実装”へとステージを進化させたことが伺えます。
このような状況のもと、当社グループは他社に先駆けて人工知能(AI)をビジネスへ実装してきたフロントランナーとしての経験を活かし、当連結会計年度も人工知能(AI)市場の開拓に一層努めてまいりました。
この結果、国内AI言語解析市場において2016年度から3年連続でシェアNo.1を獲得するなど(ITR Market View:AI 市場2018、2018年度は予測値)、AIソリューション企業としてのプレゼンスも向上しております。
リーガルテックAI事業(※)につきましては、eディスカバリ(アジア企業案件)市場は今後も年平均成長率15%程度の拡大が続くと予想されております(出典:Mordor Intelligence “Global e-Discovery Market 2017-2023”)。
これは、eディスカバリの対象となる“企業が保有する電子情報のデータ量”が継続的に増大していることが主因であります。一方、データ容量あたりの解析サービス料の引き下げに対する圧力は年々高まり、不採算案件を抱え困窮するベンダーも多く発生しております。
こうした状況から採算を確保しやすい大型案件の獲得競争はますます熾烈になる一方、人件費が嵩み利幅の低いレビュー工程を下請けに切り出す戦略に出るベンダーや、オフショア作業によりレビュー工程の価格破壊を仕掛けるベンダーが出現しております。
しかしながら、こうした戦略はeディスカバリの肝であるレビュー工程の質が犠牲となる恐れがあり望ましいものではありません。特にレビューのオフショア作業は品質や機密管理の観点から非常にリスクが高いだけではなく、今後もデータ量の増加が続くことを鑑みると、現在の人海戦術による対応は早晩限界に達することが懸念されております。レビュー工程の質が訴訟の勝敗を分けると言っても過言ではなく、今後はeディスカバリの全工程を一気通貫で行い、AIの力でレビュー品質の向上とコスト低減を実現するベンダーが優位な構造となると予想しております。
当社では、こうした環境変化を捉え、技術分野における重点施策として「eディスカバリの作業工程の全自動化」を最終目標に掲げ研究開発を進めております。
当連結会計年度においては、人工知能KIBITの活用によりeディスカバリの工程で最も負荷の高い“文書レビュー”の作業時間を従来の2分の1に削減するツール「KIBIT Automator」を2019年3月にリリースいたしました。同ツールでは文書レビュー業務効率化に加えて、当業界標準である作業量ベースの料金体系ではなく、透明性の高い従量制課金モデルの導入を予定しております。
営業面では、採算性に留意した受注活動と受注後の案件管理を強化いたしました。
当社グループの強みであるアジア言語の解析力、人工知能(AI)技術を活用した効率性、全工程をワンストップでサポートする対応力を武器に、アジア企業の大型案件獲得に向けてクロスボーダー営業の体制構築を重点的に取り組みました。大型案件の受注に向けてグローバルリーガル事業統括本部を設置し、拠点毎ではなくグローバル全体で管理・運営・評価を進めました。
これらの施策により米国大手法律事務所とのネットワーク深耕が徐々に進み、潜在案件へリーチする機会が増加するなど一定の成果が発現しました。しかしながら、当連結会計年度下期の大口パイプラインとして見込んだ案件でロストや期ズレが発生するなど、業績貢献には期初の想定以上の時間を要している状況です。
今後は、決定力不足の要因となっている営業・マーケティングのシニアマネジメント層の強化、技術営業の促進、多面的な営業活動の活性化といった営業組織力の強化を迅速に進めていくことで、受注確度の向上、売上高の増加に繋げてまいります。
なお、eディスカバリと同様フォレンジックサービスの分野においても、AIの活用により大量のデータを短期間で抜け漏れなく調査したいという需要は、国内の会計不正調査における第三者委員会発足件数の増加を背景に急増しております。当連結会計年度においても大型の調査案件で当社AI技術を活用することで全貌解明に至る事案がありました。当連結会計年度の同サービスの売上高は対前年度比1.5倍と拡大しており、今後も成長が見込まれる分野として注力してまいります。
※当期末より従来の「リーガルテック事業」の呼称を「リーガルテックAI事業」に変更いたしました。
続いて、AIソリューション事業につきましては、国内においてビジネスインテリジェンス、ヘルスケアの各分野が順調に推移した結果、ストックビジネスであるAIソリューション事業においてKIBIT製品の導入社数を176社(前年同期比2.2倍)と積み上げ、セグメント全体の売上高は前年同期比56.7%増と、企業のAI投資機運の高まりを追い風に過去最高売上高を更新し、初めて通期営業黒字に転換いたしました。
ビジネスインテリジェンス分野においては、当連結会計年度は、金融や知財といった既存領域への浸透による導入社数の増加と受託開発の開始による案件の大型化が相俟って売上高が伸長いたしました。
当連結会計年度では、顧客システムや他社システムへの連携を可能にするKIBITの第二世代「KIBIT G2(キビット ジーツー)」を開発しました。自然言語×AIの領域は開拓の余地が非常に大きく、積極的な市場開拓を推し進め業界のデファクトとしての地位を目指し取り組んでまいります。
さらなる市場開拓に向けては、技術提案力は元より、顧客企業の業務への深い理解を背景としたコンサルティング力、ソリューション力及びサポート力を一層向上することで当社のソリューション軸(領域)をさらに拡げ、受託開発等で培ったベストプラクティスを蓄積・パッケージ化しマーケティングパートナー企業と共有・補完し成長を加速させることが必須であると考えます。
こうした取り組みの一環として、当連結会計年度第3四半期にFRONTEO AI BizDevOps Lab.(フロンテオ エーアイ ビズデブオプスラボ)を開設いたしました。AIの導入における様々な課題の発見と解決策の立案から、実現可能な運用設計に至るプロセスを最短で実現し、AIの実装を促進する最前線として稼動しております。
ヘルスケア分野では、当連結会計年度第1四半期において、当社グループとして2つめとなる独自の人工知能(AI)エンジンである「Concept Encoder」の特許を取得しました。
さらに同第3四半期においては、Concept Encoderのベクトル化技術を応用した製薬企業向け「新規医薬品候補探索技術」の提供を開始するなど、ヘルスケア市場のニーズに応える新技術の開発に取り組み成果を上げました。
また、新技術の開発とともに、中長期プロジェクト(共同研究・受託開発案件)である転倒転落予測システム、疼痛診療支援AIシステム、精神疾患客観評価デバイスといった各製品の開発も順調に進めております。
今後とも、統計学的手法により解析過程が検証可能である(非ブラックボックス性)というConcept Encoderの強みを活かし、ヘルスケアセクターのビッグデータの利活用ならびにソリューション提供の促進を実現してまいります。
以上の結果、当連結会計年度における売上高は11,262,070千円となり、前年同期比で7.8%減少しましたが、リーガルテックAI事業の損益構造改革による成果が寄与し、営業利益244,410千円(前年同期比37.5%増)、経常利益203,121千円(前年同期は16,572千円の経常損失)、親会社株主に帰属する当期純利益52,249千円(前年同期は828,124千円の親会社株主に帰属する当期純損失)と、全ての利益レベルで黒字化を達成しました。
各事業の当連結会計年度の概況は以下のとおりです。
(リーガルテックAI事業)
韓国及び台湾でのクロスボーダー案件が好調に推移した一方、主に米国司法省案件においてロスト・期ズレが発生した結果、売上高は9,834,826千円(前年同期比13.0%減)、営業利益は110,773千円(前年同期比75.9%減)となりました。
(AIソリューション事業)
国内のビジネスインテリジェンス分野において、金融・知財領域の浸透による導入社数の増加と受託開発開始による案件の大型化により事業規模は着実に拡大しております。その結果、AIソリューション事業では1,427,243千円(前年同期比56.7%増)と過去最高の売上高を更新しました。営業損益に関しましては、営業利益133,637千円(前年同期は282,548千円の営業損失)と従前より進めてきた営業・マーケティング活動が功を奏し、通期営業黒字に転換いたしました。
(2) 財政状態
(資産)
総資産は、前連結会計年度末と比べて1,022,708千円減少し、13,442,624千円となりました。
流動資産は、前連結会計年度末と比べて1,217,532千円減少し、6,862,818千円となりました。これは主に、借入金の返済等による現金及び預金の減少1,204,612千円、受取手形及び売掛金の増加35,598千円によるものであります。
固定資産は、前連結会計年度末と比べて194,824千円増加し、6,579,805千円となりました。これは主に、自社開発ソフトウェアの制作によるソフトウェアの増加205,705千円によるものであります。
(負債)
負債合計は、前連結会計年度末と比べて1,291,107千円減少し、8,820,624千円となりました。
流動負債は、前連結会計年度末と比べて608,259千円増加し、4,747,399千円となりました。これは主に、返済により短期借入金が400,000千円減少したものの、償還期限が1年内の転換社債を固定負債から流動負債に振り替えたことにより1年内償還予定の新株予約権付社債が1,250,000千円増加したことによるものであります。
固定負債は、前連結会計年度末と比べて1,899,366千円減少し、4,073,224千円となりました。これは主に、長期借入金568,991千円及び新株予約権付社債1,250,000千円が流動負債に振り替えられたことによるものであります。
(純資産)
純資産合計は、前連結会計年度末と比べて268,398千円増加し、4,622,000千円となりました。これは主に為替換算調整勘定の増加125,211千円によるものであります。
(3) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、3,922,806千円となりました。
当連結会計年度末における各キャッシュ・フローの状況と、その主な要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により得られた資金は731,461千円(前期比763,892千円の収入の減少)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益230,706千円、減価償却費817,499千円、法人税等の支払額369,809千円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により支出した資金は966,421千円(前期比257,214千円の支出の増加)となりました。これは主に、無形固定資産の取得による支出660,791千円、有形固定資産の取得による支出252,933千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により支出した資金は1,011,939千円(前年同期比873,233千円の支出の増加)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出1,000,872千円によるものであります。
(生産、受注及び販売の状況)
(1) 生産実績
当社グループの事業内容は、主にコンピュータフォレンジックサービス、フォレンジックツールの販売であり、生産実績については、該当はありません。
(2) 商品仕入実績
当連結会計年度の商品仕入実績は、次のとおりであります。
(注) 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
(3) 受注状況
当社グループは、受注生産を行っていないため、該当事項はありません。
(4) 販売実績
当連結会計年度の販売実績は、次のとおりであります。
(注) 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計基準は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載されているとおりです。
(2) 経営成績の分析
① 売上高
当連結会計年度における売上高は11,262,070千円(前期比7.8%減)となりました。
② 売上総利益
売上総利益は4,933,871千円(前期比5.6%減)、売上総利益率は43.8%となりました。
③ 販売費及び一般管理費
販売費及び一般管理費は、4,689,461千円(前期比7.1%減)となりました。
④ 営業利益
上記の結果、当連結会計年度の営業利益は244,410千円となりました。
⑤ 営業外収益、営業外費用
為替差益79,129千円、シンジケートローン手数料63,287千円等の計上により、営業外損益(営業外収益-営業外費用)は、△41,288千円となりました。
⑥ 経常利益
上記の結果、当連結会計年度の経常利益は203,121千円となりました。
⑦ 特別利益、特別損失
新株予約権戻入益44,130千円、固定資産除却損7,625千円、減損損失8,919千円等の計上により、特別損益(特別利益-特別損失)は、27,584千円となりました。
⑧ 親会社株主に帰属する当期純利益
上記の結果から法人税等の金額及び非支配株主に帰属する当期純利益を差し引いた、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は52,249千円となりました。
(3) 当社グループの資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループは、主に営業活動から得られる自己資金及び金融機関からの借入を資金の源泉としております。設備投資並びにM&A等の事業投資の長期資金需要につきましては、資金需要が発生した時点で、自己資金又は、金融機関からの長期借入金等、金利コストの最小化を図れるような調達方法を検討し対応しております。また、運転資金需要につきましては、営業活動から得られる自己資金と金融機関からの借入金等により賄っております。
なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は5,602,092千円となっており、借入金については主に運転資金や過年度におけるM&A等のための資金で、全て金融機関からの借入となっております。当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は3,922,806千円であります。
(4) 中長期的な会社の経営戦略
当社グループは「Bright Valueの実現~記録に埋もれたリスクとチャンスを見逃さないソリューションを提供し、情報社会のフェアネスを実現する~」という企業理念のもと、独自開発の人工知能(AI)エンジン「KIBIT(キビット)」及び「Concept Encoder(コンセプトエンコーダー)」を柱とする高度な情報解析技術を駆使し、祖業である国際訴訟支援、不正調査から製造、金融、小売、流通、そして医療分野といった様々なフィールドで、必要かつ適切な情報に出会えるフェアな世界の実現及び社会課題の解決に貢献しております。
高度な情報解析技術を駆使し社会に貢献するための活用領域として、事業セグメントを祖業である国際訴訟支援及び不正調査においてAIを活用したサービス提供をする「リーガルテックAI事業」と、各産業でAIソリューションを提供する「AIソリューション事業」に分け、以下の項目の強化に取り組んでまいります。
■リーガルテックAI事業
eディスカバリ(アジア企業案件)市場は今後も年平均成長率15%程度の拡大が続くと予想されております(出典:Mordor Intelligence “Global e-Discovery Market 2017-2023”)。これは、eディスカバリの対象となる“企業が保有する電子情報のデータ量”が継続的に増大していることが主因であります。一方、データ容量あたりの解析サービス料の引き下げに対する圧力は年々高まり、不採算案件を抱え困窮するベンダーも多く発生しております。こうした状況から採算を確保しやすい大型案件の獲得競争はますます熾烈になっております。
こうした環境の下、当社では採算性に留意した受注活動と受注後の案件管理を強化しております。当社グループの強みであるアジア言語の解析力、人工知能(AI)技術を活用した効率性、全工程をワンストップでサポートする対応力を武器に、アジア企業の大型案件獲得に向けてクロスボーダー営業の体制構築を重点的に取り組んでおります。
当連結会計年度においては、米国大手法律事務所とのネットワーク深耕が徐々に進み、潜在案件へリーチする機会が増加するなど一定の成果が発現しました。しかしながら、当連結会計年度下期の大口パイプラインとして見込んだ案件でロストや期ズレが発生するなど、業績貢献には期初の想定以上の時間を要している状況です。
中期の課題として、決定力不足の要因となっている営業・マーケティングのシニアマネジメント層の強化、技術営業の促進、多面的な営業活動の活性化といった営業組織力の強化を迅速に進めていくことで、受注確度の向上、売上高の増加に繋げてまいります。
また、中長期の技術分野における重点施策として、当社では、増え続けるデータ量に対応するため、eディスカバリの作業工程の全自動化を最終目標に掲げ研究開発を進めております。当連結会計年度においては、人工知能KIBITの活用によりeディスカバリの工程で最も負荷の高い“文書レビュー”の作業時間を2分の1に削減するツール「KIBIT Automator」をリリースいたしました。同ツールでは文書レビュー業務効率化に加えて、当業界標準である作業量ベースの料金体系ではなく、透明性の高い従量制課金モデルの導入を予定しております。
■AIソリューション事業
国内のAI市場をみると、様々な業種のイノベーター企業において、業務プロセスへの人工知能(AI)の実装が進みました。AIに纏わる議論も、かつて盛んであったAIがヒトの労働を奪うことを懸念するものから、人手不足問題の深刻化を背景としてAIが生産性向上や労働の自動化を実現するといった経済発展と社会課題解決の両立を目指すものへと変化がみられます。さらに足もとでは、AIの学習に必要なデータ不足についての課題感や法整備、AI人材の不足、AI分野に投じる国家予算の比較といった議論が活発化し、AI市場が“効果検証”から“社会実装”へとステージを進化させたことが伺えます。
このような状況のもと、当社グループは他社に先駆けてAIをビジネスへ実装してきたフロントランナーとしての経験を活かし、当連結会計年度もAI市場の開拓に一層努めてまいりました。この結果、国内AI言語解析市場において2016年度から3年連続でシェアNo.1を獲得するなど(ITR Market View:AI 市場2018、2018年度は予測値)、AIソリューション企業としてのプレゼンスも向上しております。
当社の得意とする自然言語×AIの領域は開拓の余地が非常に大きく、ビジネスインテリジェンス、ヘルスケアの両分野において積極的な市場開拓を推し進めてまいります。
(ビジネスインテリジェンス)
さらなる市場開拓に向けては、技術提案力は元より、顧客企業の業務への深い理解を背景としたコンサルティング力、ソリューション力及びサポート力を一層向上することで当社のソリューション軸(領域)をさらに拡げるとともに、導入事例や受託開発などで当社が培ったベストプラクティスを蓄積・パッケージ化しマーケティングパートナー企業と共有・補完し成長を加速させることが必須であると考えます。データサイエンティスト・AI人材の不足が顕在化している昨今、上記を実現するために、優秀な人材を獲得・定着させることが重要であると認識しており、引き続き積極的な採用活動と既存社員の育成を進めます。
(ヘルスケア)
ヘルスケアの領域では、高齢化社会を迎え患者数が増加傾向を強める一方で、医療・介護従事者の人手不足が叫ばれており、医療・介護現場の継続的な業務の効率化が不可欠であり、AIの潜在市場は非常に大きいと予想されます。当社グループは引き続きヘルスケアを中長期的な成長の柱と位置付け投資を進めてまいります。
当連結会計年度においては、当社グループとしては2つめとなる独自のAIエンジン「Concept Encoder(コンセプトエンコーダー)」の特許を取得しました。これにより、遺伝子情報など言語以外の情報を含めた解析が可能となり、ヘルスケアセクターにおけるビッグデータの利活用が促進されます。医療機器や医療現場で活用するシステムとしての認可取得及びユーザーの承認を得るためには、解析の精度に加えて、技術の安全性、再現性や統計に基づく効果の立証などの課題にも応えていく必要があり、体制整備に努めてまいります。
(5) 経営者の問題認識と今後の方針について
経営者の問題認識と今後の方針につきましては、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
(業績等の概要)
(1) 業績
当連結会計年度(2018年4月1日から2019年3月31日まで)における世界経済は年度後半から米中貿易摩擦、地政学的リスクの不確実性の高まりといった先行き不透明な状況が継続し、これらに対する懸念から国際金融資本市場の調整につながりました。
わが国の経済は、雇用環境や所得の改善に伴い個人消費が持ち直していることなどから緩やかな回復基調が続くなか、IT関連投資も人材不足感への高まりの対応による省力化投資や生産性向上を目的に底堅く推移しました。
国内のAI市場をみると、様々な業種のイノベーター企業において、業務プロセスへの人工知能(AI)の実装が進みました。人工知能(AI)に纏わる議論も、かつて盛んであったAIがヒトの労働を奪うことを懸念するものから、人手不足問題の深刻化を背景としてAIが生産性向上や労働の自動化を実現するといった経済発展と社会課題解決の両立を目指すものへと変化がみられます。
さらに足もとでは、人工知能(AI)の学習に必要なデータ不足についての課題感や法整備、AI人材の不足、AI分野に投じる国家予算の比較といった議論が活発化し、AI市場が“効果検証”から“社会実装”へとステージを進化させたことが伺えます。
このような状況のもと、当社グループは他社に先駆けて人工知能(AI)をビジネスへ実装してきたフロントランナーとしての経験を活かし、当連結会計年度も人工知能(AI)市場の開拓に一層努めてまいりました。
この結果、国内AI言語解析市場において2016年度から3年連続でシェアNo.1を獲得するなど(ITR Market View:AI 市場2018、2018年度は予測値)、AIソリューション企業としてのプレゼンスも向上しております。
リーガルテックAI事業(※)につきましては、eディスカバリ(アジア企業案件)市場は今後も年平均成長率15%程度の拡大が続くと予想されております(出典:Mordor Intelligence “Global e-Discovery Market 2017-2023”)。
これは、eディスカバリの対象となる“企業が保有する電子情報のデータ量”が継続的に増大していることが主因であります。一方、データ容量あたりの解析サービス料の引き下げに対する圧力は年々高まり、不採算案件を抱え困窮するベンダーも多く発生しております。
こうした状況から採算を確保しやすい大型案件の獲得競争はますます熾烈になる一方、人件費が嵩み利幅の低いレビュー工程を下請けに切り出す戦略に出るベンダーや、オフショア作業によりレビュー工程の価格破壊を仕掛けるベンダーが出現しております。
しかしながら、こうした戦略はeディスカバリの肝であるレビュー工程の質が犠牲となる恐れがあり望ましいものではありません。特にレビューのオフショア作業は品質や機密管理の観点から非常にリスクが高いだけではなく、今後もデータ量の増加が続くことを鑑みると、現在の人海戦術による対応は早晩限界に達することが懸念されております。レビュー工程の質が訴訟の勝敗を分けると言っても過言ではなく、今後はeディスカバリの全工程を一気通貫で行い、AIの力でレビュー品質の向上とコスト低減を実現するベンダーが優位な構造となると予想しております。
当社では、こうした環境変化を捉え、技術分野における重点施策として「eディスカバリの作業工程の全自動化」を最終目標に掲げ研究開発を進めております。
当連結会計年度においては、人工知能KIBITの活用によりeディスカバリの工程で最も負荷の高い“文書レビュー”の作業時間を従来の2分の1に削減するツール「KIBIT Automator」を2019年3月にリリースいたしました。同ツールでは文書レビュー業務効率化に加えて、当業界標準である作業量ベースの料金体系ではなく、透明性の高い従量制課金モデルの導入を予定しております。
営業面では、採算性に留意した受注活動と受注後の案件管理を強化いたしました。
当社グループの強みであるアジア言語の解析力、人工知能(AI)技術を活用した効率性、全工程をワンストップでサポートする対応力を武器に、アジア企業の大型案件獲得に向けてクロスボーダー営業の体制構築を重点的に取り組みました。大型案件の受注に向けてグローバルリーガル事業統括本部を設置し、拠点毎ではなくグローバル全体で管理・運営・評価を進めました。
これらの施策により米国大手法律事務所とのネットワーク深耕が徐々に進み、潜在案件へリーチする機会が増加するなど一定の成果が発現しました。しかしながら、当連結会計年度下期の大口パイプラインとして見込んだ案件でロストや期ズレが発生するなど、業績貢献には期初の想定以上の時間を要している状況です。
今後は、決定力不足の要因となっている営業・マーケティングのシニアマネジメント層の強化、技術営業の促進、多面的な営業活動の活性化といった営業組織力の強化を迅速に進めていくことで、受注確度の向上、売上高の増加に繋げてまいります。
なお、eディスカバリと同様フォレンジックサービスの分野においても、AIの活用により大量のデータを短期間で抜け漏れなく調査したいという需要は、国内の会計不正調査における第三者委員会発足件数の増加を背景に急増しております。当連結会計年度においても大型の調査案件で当社AI技術を活用することで全貌解明に至る事案がありました。当連結会計年度の同サービスの売上高は対前年度比1.5倍と拡大しており、今後も成長が見込まれる分野として注力してまいります。
※当期末より従来の「リーガルテック事業」の呼称を「リーガルテックAI事業」に変更いたしました。
続いて、AIソリューション事業につきましては、国内においてビジネスインテリジェンス、ヘルスケアの各分野が順調に推移した結果、ストックビジネスであるAIソリューション事業においてKIBIT製品の導入社数を176社(前年同期比2.2倍)と積み上げ、セグメント全体の売上高は前年同期比56.7%増と、企業のAI投資機運の高まりを追い風に過去最高売上高を更新し、初めて通期営業黒字に転換いたしました。
ビジネスインテリジェンス分野においては、当連結会計年度は、金融や知財といった既存領域への浸透による導入社数の増加と受託開発の開始による案件の大型化が相俟って売上高が伸長いたしました。
当連結会計年度では、顧客システムや他社システムへの連携を可能にするKIBITの第二世代「KIBIT G2(キビット ジーツー)」を開発しました。自然言語×AIの領域は開拓の余地が非常に大きく、積極的な市場開拓を推し進め業界のデファクトとしての地位を目指し取り組んでまいります。
さらなる市場開拓に向けては、技術提案力は元より、顧客企業の業務への深い理解を背景としたコンサルティング力、ソリューション力及びサポート力を一層向上することで当社のソリューション軸(領域)をさらに拡げ、受託開発等で培ったベストプラクティスを蓄積・パッケージ化しマーケティングパートナー企業と共有・補完し成長を加速させることが必須であると考えます。
こうした取り組みの一環として、当連結会計年度第3四半期にFRONTEO AI BizDevOps Lab.(フロンテオ エーアイ ビズデブオプスラボ)を開設いたしました。AIの導入における様々な課題の発見と解決策の立案から、実現可能な運用設計に至るプロセスを最短で実現し、AIの実装を促進する最前線として稼動しております。
ヘルスケア分野では、当連結会計年度第1四半期において、当社グループとして2つめとなる独自の人工知能(AI)エンジンである「Concept Encoder」の特許を取得しました。
さらに同第3四半期においては、Concept Encoderのベクトル化技術を応用した製薬企業向け「新規医薬品候補探索技術」の提供を開始するなど、ヘルスケア市場のニーズに応える新技術の開発に取り組み成果を上げました。
また、新技術の開発とともに、中長期プロジェクト(共同研究・受託開発案件)である転倒転落予測システム、疼痛診療支援AIシステム、精神疾患客観評価デバイスといった各製品の開発も順調に進めております。
今後とも、統計学的手法により解析過程が検証可能である(非ブラックボックス性)というConcept Encoderの強みを活かし、ヘルスケアセクターのビッグデータの利活用ならびにソリューション提供の促進を実現してまいります。
以上の結果、当連結会計年度における売上高は11,262,070千円となり、前年同期比で7.8%減少しましたが、リーガルテックAI事業の損益構造改革による成果が寄与し、営業利益244,410千円(前年同期比37.5%増)、経常利益203,121千円(前年同期は16,572千円の経常損失)、親会社株主に帰属する当期純利益52,249千円(前年同期は828,124千円の親会社株主に帰属する当期純損失)と、全ての利益レベルで黒字化を達成しました。
各事業の当連結会計年度の概況は以下のとおりです。
(リーガルテックAI事業)
韓国及び台湾でのクロスボーダー案件が好調に推移した一方、主に米国司法省案件においてロスト・期ズレが発生した結果、売上高は9,834,826千円(前年同期比13.0%減)、営業利益は110,773千円(前年同期比75.9%減)となりました。
(AIソリューション事業)
国内のビジネスインテリジェンス分野において、金融・知財領域の浸透による導入社数の増加と受託開発開始による案件の大型化により事業規模は着実に拡大しております。その結果、AIソリューション事業では1,427,243千円(前年同期比56.7%増)と過去最高の売上高を更新しました。営業損益に関しましては、営業利益133,637千円(前年同期は282,548千円の営業損失)と従前より進めてきた営業・マーケティング活動が功を奏し、通期営業黒字に転換いたしました。
(2) 財政状態
(資産)
総資産は、前連結会計年度末と比べて1,022,708千円減少し、13,442,624千円となりました。
流動資産は、前連結会計年度末と比べて1,217,532千円減少し、6,862,818千円となりました。これは主に、借入金の返済等による現金及び預金の減少1,204,612千円、受取手形及び売掛金の増加35,598千円によるものであります。
固定資産は、前連結会計年度末と比べて194,824千円増加し、6,579,805千円となりました。これは主に、自社開発ソフトウェアの制作によるソフトウェアの増加205,705千円によるものであります。
(負債)
負債合計は、前連結会計年度末と比べて1,291,107千円減少し、8,820,624千円となりました。
流動負債は、前連結会計年度末と比べて608,259千円増加し、4,747,399千円となりました。これは主に、返済により短期借入金が400,000千円減少したものの、償還期限が1年内の転換社債を固定負債から流動負債に振り替えたことにより1年内償還予定の新株予約権付社債が1,250,000千円増加したことによるものであります。
固定負債は、前連結会計年度末と比べて1,899,366千円減少し、4,073,224千円となりました。これは主に、長期借入金568,991千円及び新株予約権付社債1,250,000千円が流動負債に振り替えられたことによるものであります。
(純資産)
純資産合計は、前連結会計年度末と比べて268,398千円増加し、4,622,000千円となりました。これは主に為替換算調整勘定の増加125,211千円によるものであります。
(3) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、3,922,806千円となりました。
当連結会計年度末における各キャッシュ・フローの状況と、その主な要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により得られた資金は731,461千円(前期比763,892千円の収入の減少)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益230,706千円、減価償却費817,499千円、法人税等の支払額369,809千円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により支出した資金は966,421千円(前期比257,214千円の支出の増加)となりました。これは主に、無形固定資産の取得による支出660,791千円、有形固定資産の取得による支出252,933千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により支出した資金は1,011,939千円(前年同期比873,233千円の支出の増加)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出1,000,872千円によるものであります。
(生産、受注及び販売の状況)
(1) 生産実績
当社グループの事業内容は、主にコンピュータフォレンジックサービス、フォレンジックツールの販売であり、生産実績については、該当はありません。
(2) 商品仕入実績
当連結会計年度の商品仕入実績は、次のとおりであります。
| セグメントの名称 | 当連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | |
| 金額(千円) | 前年同期比(%) | |
| リーガルテックAI事業 | 7,908 | 176.7 |
| 合計 | 7,908 | 176.7 |
(注) 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
(3) 受注状況
当社グループは、受注生産を行っていないため、該当事項はありません。
(4) 販売実績
当連結会計年度の販売実績は、次のとおりであります。
| 事 業 部 門 別 | 売上高(千円) | 前期比(%) | ||
| リーガルテックAI事業 | eディスカバリサービス | Review | 2,654,549 | △15.7 |
| Collection, Process | 1,725,055 | △40.8 | ||
| Hosting | 4,869,693 | 0.3 | ||
| 計 | 9,249,297 | △15.3 | ||
| フォレンジックサービス | フォレンジックサービス | 585,528 | 49.4 | |
| リーガルテックAI事業売上高 計 | 9,834,826 | △13.0 | ||
| AIソリューション事業 | ビジネスインテリジェンス | 1,169,896 | 88.7 | |
| ヘルスケア | 179,688 | 35.1 | ||
| 海外AI | 77,659 | △50.7 | ||
| AIソリューション事業売上高 計 | 1,427,243 | 56.7 | ||
| 合 計 | 11,262,070 | △7.8 | ||
(注) 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計基準は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載されているとおりです。
(2) 経営成績の分析
① 売上高
当連結会計年度における売上高は11,262,070千円(前期比7.8%減)となりました。
② 売上総利益
売上総利益は4,933,871千円(前期比5.6%減)、売上総利益率は43.8%となりました。
③ 販売費及び一般管理費
販売費及び一般管理費は、4,689,461千円(前期比7.1%減)となりました。
④ 営業利益
上記の結果、当連結会計年度の営業利益は244,410千円となりました。
⑤ 営業外収益、営業外費用
為替差益79,129千円、シンジケートローン手数料63,287千円等の計上により、営業外損益(営業外収益-営業外費用)は、△41,288千円となりました。
⑥ 経常利益
上記の結果、当連結会計年度の経常利益は203,121千円となりました。
⑦ 特別利益、特別損失
新株予約権戻入益44,130千円、固定資産除却損7,625千円、減損損失8,919千円等の計上により、特別損益(特別利益-特別損失)は、27,584千円となりました。
⑧ 親会社株主に帰属する当期純利益
上記の結果から法人税等の金額及び非支配株主に帰属する当期純利益を差し引いた、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は52,249千円となりました。
(3) 当社グループの資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループは、主に営業活動から得られる自己資金及び金融機関からの借入を資金の源泉としております。設備投資並びにM&A等の事業投資の長期資金需要につきましては、資金需要が発生した時点で、自己資金又は、金融機関からの長期借入金等、金利コストの最小化を図れるような調達方法を検討し対応しております。また、運転資金需要につきましては、営業活動から得られる自己資金と金融機関からの借入金等により賄っております。
なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は5,602,092千円となっており、借入金については主に運転資金や過年度におけるM&A等のための資金で、全て金融機関からの借入となっております。当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は3,922,806千円であります。
(4) 中長期的な会社の経営戦略
当社グループは「Bright Valueの実現~記録に埋もれたリスクとチャンスを見逃さないソリューションを提供し、情報社会のフェアネスを実現する~」という企業理念のもと、独自開発の人工知能(AI)エンジン「KIBIT(キビット)」及び「Concept Encoder(コンセプトエンコーダー)」を柱とする高度な情報解析技術を駆使し、祖業である国際訴訟支援、不正調査から製造、金融、小売、流通、そして医療分野といった様々なフィールドで、必要かつ適切な情報に出会えるフェアな世界の実現及び社会課題の解決に貢献しております。
高度な情報解析技術を駆使し社会に貢献するための活用領域として、事業セグメントを祖業である国際訴訟支援及び不正調査においてAIを活用したサービス提供をする「リーガルテックAI事業」と、各産業でAIソリューションを提供する「AIソリューション事業」に分け、以下の項目の強化に取り組んでまいります。
■リーガルテックAI事業
eディスカバリ(アジア企業案件)市場は今後も年平均成長率15%程度の拡大が続くと予想されております(出典:Mordor Intelligence “Global e-Discovery Market 2017-2023”)。これは、eディスカバリの対象となる“企業が保有する電子情報のデータ量”が継続的に増大していることが主因であります。一方、データ容量あたりの解析サービス料の引き下げに対する圧力は年々高まり、不採算案件を抱え困窮するベンダーも多く発生しております。こうした状況から採算を確保しやすい大型案件の獲得競争はますます熾烈になっております。
こうした環境の下、当社では採算性に留意した受注活動と受注後の案件管理を強化しております。当社グループの強みであるアジア言語の解析力、人工知能(AI)技術を活用した効率性、全工程をワンストップでサポートする対応力を武器に、アジア企業の大型案件獲得に向けてクロスボーダー営業の体制構築を重点的に取り組んでおります。
当連結会計年度においては、米国大手法律事務所とのネットワーク深耕が徐々に進み、潜在案件へリーチする機会が増加するなど一定の成果が発現しました。しかしながら、当連結会計年度下期の大口パイプラインとして見込んだ案件でロストや期ズレが発生するなど、業績貢献には期初の想定以上の時間を要している状況です。
中期の課題として、決定力不足の要因となっている営業・マーケティングのシニアマネジメント層の強化、技術営業の促進、多面的な営業活動の活性化といった営業組織力の強化を迅速に進めていくことで、受注確度の向上、売上高の増加に繋げてまいります。
また、中長期の技術分野における重点施策として、当社では、増え続けるデータ量に対応するため、eディスカバリの作業工程の全自動化を最終目標に掲げ研究開発を進めております。当連結会計年度においては、人工知能KIBITの活用によりeディスカバリの工程で最も負荷の高い“文書レビュー”の作業時間を2分の1に削減するツール「KIBIT Automator」をリリースいたしました。同ツールでは文書レビュー業務効率化に加えて、当業界標準である作業量ベースの料金体系ではなく、透明性の高い従量制課金モデルの導入を予定しております。
■AIソリューション事業
国内のAI市場をみると、様々な業種のイノベーター企業において、業務プロセスへの人工知能(AI)の実装が進みました。AIに纏わる議論も、かつて盛んであったAIがヒトの労働を奪うことを懸念するものから、人手不足問題の深刻化を背景としてAIが生産性向上や労働の自動化を実現するといった経済発展と社会課題解決の両立を目指すものへと変化がみられます。さらに足もとでは、AIの学習に必要なデータ不足についての課題感や法整備、AI人材の不足、AI分野に投じる国家予算の比較といった議論が活発化し、AI市場が“効果検証”から“社会実装”へとステージを進化させたことが伺えます。
このような状況のもと、当社グループは他社に先駆けてAIをビジネスへ実装してきたフロントランナーとしての経験を活かし、当連結会計年度もAI市場の開拓に一層努めてまいりました。この結果、国内AI言語解析市場において2016年度から3年連続でシェアNo.1を獲得するなど(ITR Market View:AI 市場2018、2018年度は予測値)、AIソリューション企業としてのプレゼンスも向上しております。
当社の得意とする自然言語×AIの領域は開拓の余地が非常に大きく、ビジネスインテリジェンス、ヘルスケアの両分野において積極的な市場開拓を推し進めてまいります。
(ビジネスインテリジェンス)
さらなる市場開拓に向けては、技術提案力は元より、顧客企業の業務への深い理解を背景としたコンサルティング力、ソリューション力及びサポート力を一層向上することで当社のソリューション軸(領域)をさらに拡げるとともに、導入事例や受託開発などで当社が培ったベストプラクティスを蓄積・パッケージ化しマーケティングパートナー企業と共有・補完し成長を加速させることが必須であると考えます。データサイエンティスト・AI人材の不足が顕在化している昨今、上記を実現するために、優秀な人材を獲得・定着させることが重要であると認識しており、引き続き積極的な採用活動と既存社員の育成を進めます。
(ヘルスケア)
ヘルスケアの領域では、高齢化社会を迎え患者数が増加傾向を強める一方で、医療・介護従事者の人手不足が叫ばれており、医療・介護現場の継続的な業務の効率化が不可欠であり、AIの潜在市場は非常に大きいと予想されます。当社グループは引き続きヘルスケアを中長期的な成長の柱と位置付け投資を進めてまいります。
当連結会計年度においては、当社グループとしては2つめとなる独自のAIエンジン「Concept Encoder(コンセプトエンコーダー)」の特許を取得しました。これにより、遺伝子情報など言語以外の情報を含めた解析が可能となり、ヘルスケアセクターにおけるビッグデータの利活用が促進されます。医療機器や医療現場で活用するシステムとしての認可取得及びユーザーの承認を得るためには、解析の精度に加えて、技術の安全性、再現性や統計に基づく効果の立証などの課題にも応えていく必要があり、体制整備に努めてまいります。
(5) 経営者の問題認識と今後の方針について
経営者の問題認識と今後の方針につきましては、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。