有価証券報告書-第15期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

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2018/07/02 15:31
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(業績等の概要)
(1) 業績
当連結会計年度(平成29年4月1日から平成30年3月31日まで)における世界経済は、先進国が主導的な形で正常化に向けて本格化してきたものの、引き続き海外経済の不確実性や地政学的リスクの高まりが懸念され、依然として先行き不透明な状況で推移いたしました。わが国経済は、高水準の企業収益や雇用情勢の改善等により、全体として緩やかな回復基調が続きました。また、平成29年6月に閣議決定された「未来投資戦略2017-Society5.0の実現に向けた改革-」では、IoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)といった革新的技
術の本格的な社会実装がわが国の中長期的な成長を実現する鍵と位置付けられました。労働人口減少、長時間労働、業務プロセス改善という課題の解決に向けて、人工知能(AI)の効果を実証実験する事例が連日発表されるなど、人工知能(AI)市場は急速に立ち上がりつつあります。このような状況のもと、当社グループは他社に先駆けて人工知能(AI)を実ビジネスへ実装してきたフロントランナーとしての経験を活かし、人工知能(AI)市場の開拓に一層努めてまいりました。
リーガルテック事業(※)につきましては、eディスカバリ(アジア企業案件)市場が年率15%で拡大を続けております。これは、ディスカバリの対象となる企業が保存する電子情報のデータ量が急激に増大していることが主因であり、一方で、単価の引き下げ圧力は年々高まっている状況です。今後は、eディスカバリツールを自社で保有するベンダーが圧倒的に優位となる構造へと大きく変化することが考えられます。当社グループは、独自開発のeディスカバリ支援システム「Lit i View(リットアイビュー)」を活かし、アジア言語の解析力、人工知能(AI)技術の活用による効率性や全行程をワンストップでサポートする対応力を武器に、アジア企業の案件獲得に向けてクロスボーダー営業の体制構築を最優先課題として取り組みました。こうした営業強化の成果が、当連結会計年度の第3四半期以降より発現したことから、年度後半は韓国・台湾拠点の売上高が好調に推移いたしました。また、第2四半期より本社主導で進めた米国子会社の構造改革(徹底した案件管理やコスト削減努力)の結果、米国子会社では当第4四半期に四半期ベースで営業黒字化を達成し、リーガルテック事業全体では通期営業黒字化を実現いたしました。
AIソリューション事業(※)につきましては、国内においてビジネスインテリジェンス、ヘルスケア、デジタルコミュニケーションの各分野が好調に推移したことに加え、韓国・台湾などの海外拠点においてもKIBIT搭載製品導入による売上高の拡大を実現いたしました。この結果、ストックビジネスであるAIソリューション事業において導入社数を78社と積み上げ、セグメント全体の売上高は前年度比2.9倍と大幅に成長し、四半期ベースで第3四半期、第4四半期と営業黒字を達成いたしました。
ビジネスインテリジェンス分野では、金融機関への新規採用実績が順調に積み上がったことに加え、既存ユーザーにおいても、当初の導入予定に加え、新たな経営課題の解決を目的に複数の部署でKIBITを活用するといった用途の拡大もみられるなど、当該分野がAIソリューション事業を力強く牽引しています。
ヘルスケア分野では、平成29年5月より子会社であるFRONTEOヘルスケアに新代表を迎え、Evidence Basedの発想のもと研究・開発から解析、営業まで一気通貫の体制を構築するなど組織強化を進めました。製薬業界向けに業務改善コンサルの案件を獲得したほか、中長期プロジェクト(共同研究・受託開発案件)である転倒転落予測システム、疼痛診療支援AIシステム、精神疾患客観評価デバイスといった各製品の開発も順調に進捗しております。さらに、当連結会計年度における大きな成果として、当社グループとしては2つめとなる独自の人工知能(AI)エンジン「Concept Encoder(コンセプトエンコーダー)」を開発いたしました。言語に加え、遺伝子発現情報・バイタルや各種検査値などの数値データを含めた解析を可能とするものであり、ヘルスケアセクターのビッグデータの利活用の促進を実現します。既に診断支援、業務支援、製薬業界支援といった幅広い領域のデータ解析に活用しており、次期以降もヘルスケアセクターの多様なニーズに応えていきます。
デジタルコミュニケーション分野では、BtoBtoCの分野におけるKIBIT活用領域の開拓を進めたほか、人工知能(AI)搭載ロボットKibiro(キビロ)については、法人顧客向けに需要の多い機能を追加搭載した新パッケージ「Kibiro for Biz」をリリースしたことに加え、個人向けに「見守り機能」を追加搭載した新モデルがメディアで多数露出され、認知度向上に繋がりました。
※当期末より「リーガル事業」の呼称を「リーガルテック事業」に、「AI事業」の呼称を「AIソリューション事業」にそれぞれ変更いたしました。
これらの活動の結果、当連結会計年度における、売上高は12,217,770千円(前年同期比9.0%増)と過去最高額を更新、営業利益177,715千円(前年同期は1,206,662千円の営業損失)となりましたが、為替差損207,622千円を計上したことにより、経常損失16,572千円(前年同期は1,254,944千円の経常損失)となりました。米国子会社において一時的に発生する構造改革費用781,372千円およびAIソリューション事業の減損損失73,160千円を特別損失として計上したこと等による影響から、親会社株主に帰属する当期純損失は828,124千円(前年同期は948,067千円の親会社株主に帰属する当期純損失)となったものの、上記リーガルテック事業の損益構造改革による効果に加え、クロスボーダー営業の体制の強化により、業績は着実に回復し、次期以降、リーガルテック事業およびAIソリューション事業共に攻めのステージに移行しております。
各事業の概況は以下のとおりです。
(リーガルテック事業)
クロスボーダー営業の体制構築の効果が現れたことに加え、韓国及び台湾で大型案件を獲得したことにより、売上高は11,307,082千円(前年同期比3.8%増)、営業利益は491,630千円(前年同期は491,543千円の営業損失)となりました。
(AIソリューション事業)
国内においてビジネスインテリジェンス分野における金融機関向けソリューションが堅調に推移したことに加え、海外AIにおいて韓国でKIBIT搭載製品の販売が売上高に寄与したこと等により、売上高は910,687千円(前年同期比193.1%増)となりましたが、新製品開発や営業・マーケティング活動などの費用を1,224,603千円計上したことにより、営業損失は313,915千円(前年同期は715,118千円の営業損失)となりました。
(2) 財政状態の状況
総資産は、前連結会計年度末と比べて1,580,084千円減少し、14,578,787千円となりました。詳細につきましては後述の「3.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)(2) 財政状態の分析」に記載のとおりであります。

(3) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、5,127,345千円となりました。
当連結会計年度末における各キャッシュ・フローの状況と、その主な要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により増加した資金は1,495,354千円(前期比1,693,418千円の増加)となりました。これは主に、税金等調整前当期純損失860,668千円、減価償却費1,015,447千円、構造改革費用781,372千円、売上債権の減少579,215千円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により減少した資金は709,207千円(前期比934,055千円の増加)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出211,053千円、無形固定資産の取得による支出407,751千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により減少した資金は138,706千円(前期比4,702,635千円の減少)となりました。これは主に短期借入れによる収入3,100,000千円、短期借入金の返済による支出2,600,000千円、長期借入れによる収入200,000千円、長期借入金の返済による支出826,083千円によるものであります。
(生産、受注及び販売の状況)
(1) 生産実績
当社グループの事業内容は、主にコンピュータフォレンジックサービス、フォレンジックツールの販売であり、生産実績については、該当はありません。
(2) 商品仕入実績
当連結会計年度の商品仕入実績は、次のとおりであります。
品目別当連結会計年度
(自 平成29年4月1日
至 平成30年3月31日)
金額(千円)前年同期比(%)
フォレンジックツール2,857△74.4
人工知能搭載ロボット-△100.0
合計2,857△96.6

(注) 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
(3) 受注状況
当社グループは、受注生産を行っていないため、該当事項はありません。
(4) 販売実績
当連結会計年度の販売実績は、次のとおりであります。
事 業 部 門 別売上高(千円)
リーガルテック事業eディスカバリサービスReview3,149,787
Collection, Process2,911,634
Hosting4,853,839
10,915,261
フォレンジックサービスフォレンジックサービス391,821
リーガルテック事業売上高 計11,307,082
AIソリューション事業ビジネスインテリジェンス553,711
デジタルコミュニケーション66,391
ヘルスケア132,967
海外AI157,617
AIソリューション事業売上高 計910,687
合 計12,217,770

(注) 1 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
2 最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
前連結会計年度
TMI総合法律事務所1,253,860千円11.2%

当連結会計年度
TMI総合法律事務所1,092,719千円8.96%

(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計基準は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載されているとおりです。
(2) 財政状態の分析
(資産)
総資産は、前連結会計年度末と比べて1,580,084千円減少し、14,578,787千円となりました。
流動資産は、前連結会計年度末と比べて843,652千円減少し、8,190,510千円となりました。これは主に、現金及び預金の増加594,194千円、繰延税金資産の減少550,652千円、受取手形及び売掛金の減少688,965千円によるものであります。
固定資産は、前連結会計年度末と比べて736,431千円減少し、6,388,277千円となりました。これは主に投資有価証券の増加348,300千円、工具、器具及び備品の減少85,845千円によるものであります。
(負債)
負債合計は、前連結会計年度末と比べて915,007千円減少し、10,225,186千円となりました。
流動負債は、前連結会計年度末と比べて447,021千円増加し、4,144,020千円となりました。これは主に短期借入金の増加500,000千円、未払金の増加79,372千円、買掛金の減少369,323千円、1年以内返済予定の長期借入金の増加162,680千円、未払法人税等の増加73,669千円によるものであります。
固定負債は、前連結会計年度末と比べて1,362,028千円減少し、6,081,166千円となりました。これは主に長期借入金の減少794,293千円によるものであります。
(純資産)
純資産合計は、前連結会計年度末と比べて665,077千円減少し、4,353,601千円となりました。これは主に利益剰余金の減少828,124千円によるものであります。
(3) 経営成績の分析
① 売上高
当連結会計年度における売上高は12,217,770千円(前期比9.0%増)となりました。
② 売上総利益
売上総利益は5,227,120千円(前期比20.6%増)、売上総利益率は42.8%となりました。
③ 販売費及び一般管理費
販売費及び一般管理費は、5,049,405千円(前期比8.9%増)となりました。
④ 営業利益
上記の結果、当連結会計年度の営業利益は177,715千円となりました。
⑤ 営業外収益、営業外費用
為替の変動に伴う為替差損により、営業外損益(営業外収益-営業外費用)は、△194,287千円となりました。
⑥ 経常損失
上記の結果、当連結会計年度の経常損失は16,572千円となりました。
⑦ 特別利益、特別損失
新株予約権戻入益11,130千円、構造改革費用781,372千円、減損損失73,160千円等の計上により、特別損益(特別利益-特別損失)は、△844,096千円となりました。
⑧ 親会社株主に帰属する当期純損失
上記の結果から法人税等の金額及び非支配株主に帰属する当期純利益を差し引いた、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純損失は828,124千円となりました。
(4) 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因の詳細につきましては、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 2.事業等のリスク」に記載のとおりであります。
(5) 当社グループの資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループは、主に営業活動から得られる自己資金及び金融機関からの借入を資金の源泉としております。設備投資並びにM&A等の事業投資の長期資金需要につきましては、資金需要が発生した時点で、自己資金又は、金融機関からの長期借入金等、金利コストの最小化を図れるような調達方法を検討し対応しております。また、運転資金需要につきましては、営業活動から得られる自己資金と金融機関からの借入金等により賄っております。
なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は7,893,205千円となっており、借入金については主に運転資金や過年度におけるM&A等のための資金で、全て金融機関からの借入となっております。当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は5,127,345千円であります。
(6) 中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、独自開発の人工知能「KIBIT(キビット)」を核とする高度な情報解析技術を駆使し社会に貢献するための活用領域として、4つの分野へ展開していく戦略を描いております。具体的には、原点であるリーガルテック事業に加え、AIソリューション事業の3分野(ビジネスインテリジェンス、デジタルコミュニケーション、ヘルスケア)において、「人工知能(AI)が人間を理解し、すぐそばで人間をサポートしてくれる社会」の早期実現を目指します。各事業分野で拡大成長し続けるべく、以下の項目の強化に取り組んでまいります。
■リーガルテック事業
eディスカバリ市場は年平均成長率15%で拡大しており、参入企業は米国で1,000社超と多い状況です。こうした環境のもと、当社グループはアジア発唯一のディスカバリベンダーとして、豊富な支援実績に基づくノウハウに加え、独自開発したeディスカバリ支援システム「Lit i View(リットアイビュー)」の強みであるアジア言語対応力や人工知能(AI)技術「Predictive Coding(プレディクティブコーディング)」による効率性、全行程をワンストップでサポートする対応力を武器に、グローバルでクロスボーダー営業を加速させ、eディスカバリ市場における事業の拡大に取り組んでまいります。また、eディスカバリ業界は、解析対象となるデータ量増加への対応が課題となっております。当社グループは、強みである人工知能(AI)の活用範囲を拡充させること、人工知能(AI)技術をさらに向上させることにより各工程の作業を効率化するといったテクノロジーの力で対応してまいります。
■AIソリューション事業
平成29年6月に閣議決定された「未来投資戦略2017-Society5.0の実現に向けた改革-」では、IoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)といった革新的技術の本格的な社会実装がわが国の中長期的な成長を実現する鍵と位置付けられました。労働人口減少、長時間労働、業務プロセス改善という課題の解決に向けて、人工知能(AI)の効果を実証実験する事例が連日発表されるなど、人工知能(AI)市場は急速に立ち上がりつつあります。当社グループは他社に先駆けて人工知能(AI)を実ビジネスへ実装してきたフロントランナーとしての経験を活かし、ビジネスインテリジェンス、デジタルコミュニケーション、ヘルスケアの3分野において人工知能(AI)市場の開拓に一層努めてまいります。
(ビジネスインテリジェンス・デジタルコミュニケーション)
当社の人工知能(AI)エンジンKIBITは、幅広い業種への導入実績、少量の教師データで動くことによる機動性の高さ、導入に向けた業務分析から運用サポートまでフルサポートできるコンサル力を強みに、金融機関や知財分野を中心にユーザー企業数を積み上げています。産業界の人工知能(AI)活用意欲はますます高まっておりますが、一方で人工知能(AI)の特性への理解不足や社内におけるデータ解析人材の不足に課題があるケースが多くみられることから、引き続き、ユーザー企業内でのAI活用人材の育成を目的として育成講座の提供や、人工知能(AI)の導入に向けたコンサルを強化することで、導入に向けたハードルの低減に努めます。また、販売力の強化に向けてパートナーとの共同プログラムを整備することで市場開拓を加速します。
(ヘルスケア)
ヘルスケアの領域では、高齢化社会を迎え患者数が増加傾向を強める一方で、医療・介護従事者の人手不足が叫ばれており、医療・介護現場の継続的な業務の効率化が不可欠であり、人工知能(AI)の潜在市場は非常に大きいと予想されます。当社グループは引き続きヘルスケアを中長期的な成長の柱と位置付け投資を進めてまいります。当連結会計年度においては、当社グループとしては2つめとなる独自の人工知能(AI)エンジン「Concept Encoder(コンセプトエンコーダー)」を開発いたしました。これにより、遺伝子情報など言語以外の情報を含めた解析が可能となり、ヘルスケアセクターにおけるビッグデータの利活用が促進されます。医療機器や医療現場で活用するシステムとしての認可取得およびユーザーの承認を得るためには、解析の精度に加えて、技術の安全性、再現性や統計に基づく効果の立証などの課題にも応えていく必要があり、体制整備に努めて参ります。
(7) 経営者の問題認識と今後の方針について
経営者の問題認識と今後の方針につきましては、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。