有価証券報告書-第20期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)
業績等の概要
(1)業績
当連結会計年度における我が国経済は、企業収益の改善を背景に、雇用情勢や個人所得環境に改善が見られ、穏やかな景気回復基調が続くことが期待されたものの、米中貿易摩擦や英国のEU離脱、新型コロナウイルスの世界的な影響などから先行き不透明な状況が続いております。
当グループが所属するITサービス市場におきましては、2020年3月期現在においては、好調な市場環境を維持しております。少子高齢化による労働人口の減少によって、長期的に現在の国内の経済規模を維持するためには労働生産性を向上させる取り組みが喫緊の課題となっており、こうした課題を解決する手段としてAI(人工知能)が引き続き注目されております。AIビジネスの国内市場においては、金融業や製造業などでAIの本格的な導入が進み、市場は拡大しております。今後は金融業や製造業だけではなく、さまざまな業種でAIが導入されることが予想され、市場の拡大とともにAIネイティブ化も進むとみられています。国内市場規模においては、2030年度には、2017年度比5.4倍の2兆1,286億円に拡大すると試算されております。(出典:富士キメラ総研)
このような経済状況のもと、当社は、SaaS事業、リサーチコンサルティング事業、ソリューション事業、その他(AI新規事業開発)のサービスを展開してまいりました。第1四半期連結会計期間から第3四半期連結会計期間までは、Jach Technology SpAの子会社化にかかるアドバイザリー費用の先行計上などにより営業損失となっておりましたが、第4四半期連結会計期間においては第4四半期に偏重している子会社の売上高の計上により黒字化いたしました。
当社のサービスごとの概況は以下のとおりであります。
イ. SaaS事業
SaaS事業におきましては、ソーシャルメディア分析ツール「Insight Intelligence」及び「Insight Intelligence Q」、並びに不適切投稿監視サービス「Social Monitor」などのサービスを提供しており、継続案件を中心に堅調に推移しました。
また、当連結会計年度より、店舗内カメラデバイスによる小売店支援ツール「FollowUP」を主力事業の一つと位置付けて販売活動に注力した結果、堅調に受注をのばしております。さらに、2019年12月13日付で「FollowUP」の海外展開を行うチリ法人Jach Technology SpAの子会社化を完了いたしました。海外の展開につきましては、短期的には新型コロナウイルス感染症の拡大による経済活動の影響を精査し慎重に事業を展開し、中長期的には南米を中心に全世界への事業拡大を図ってまいります。
ロ. リサーチコンサルティング事業
リサーチコンサルティング事業では、上記SaaSのツール提供にとどまらず、アナリストが分析、コンサルティングするサービスを提供しております。
主に当社連結子会社であるソリッドインテリジェンス株式会社(以下「SI」という)で行っているソーシャルメディア分析にかかるコンサルティングサービスに関しては、第1四半期においては公募案件の失注などにより売上が想定を下回っておりましたが、第2四半期以降における官公庁の公募案件獲得の巻き返しやSIとトランスコスモス・アナリティクス株式会社との資本業務提携に基づく連携の結果、当連結会計年度も堅調に推移しております。ソーシャルメディア分析による企業リスク回避への関心や外国人が投稿する多言語のソーシャルメディア分析への関心は依然として高まっていることから、引き続き案件獲得に注力してまいります。
また、店舗内カメラデバイスによる小売店支援ツール「FollowUP」についても、引き続きお客様によるSaaSのツール活用に加えて、当社のデータ解析の技術を用いたアナリストによる小売店運営を最適化するコンサルティングサービスを提供してまいります。
ハ. ソリューション事業
ソリューション事業におきましては、データ分析を業務改善に活用したシステム開発を顧客ごとにカスタマイズして行っております。データセクションの強みであるデータの解析の技術力と活用のためのコンサルティング力を生かして、顧客ごとの業務を理解して課題解決の提案からシステム開発及び運用までをワンストップで提供することで大型の開発案件を中心に売上を計上しております。大型開発案件の受注及び連結子会社株式会社ディーエスエスの受注の増加もあり、当連結会計年度においても順調に売上の予算を達成しております。
ニ. その他(AI新規事業開発)
その他(AI新規事業開発)においては、今後当社の収益拡大の柱となることを目標とした事業を新規に開発しております。
当連結会計年度においては、継続開発中であった交通量調査サービスを中断し、より収益性が高いと見込まれる音声解析AIに関する事業に注力するため合弁会社を設立いたしました。
また、2019年12月に太陽光発電施設点検サービス「SOLAR CHECK(ソーラーチェック)」の初受注をし、第4四半期より継続的に売上を計上しております。
その他、医療・介護分野においても引き続きプロジェクトをすすめてまいります。
(開発中のサービス)
a.SOLAR CHECK(ソーラーチェック)
ドローン空撮動画像を解析することにより、太陽光発電施設の点検を行うサービス
b.音声解析AI
2020年1月に音声解析AIに関する事業を展開する株式会社iVOICE(当社 50%、Fabeee株式会社 50%の出資で設立した合弁会社)を設立しました。また、同社は、2020年3月に人工知能分野では世界的に先進的な企業の一つである科大讯飞股份有限公司(iFLYTEK Co.Ltd.、以下「iFLYTEK」といいます)の日本子会社 iFLYTEK JAPAN AI SOLUTIONS株式会社と iFLYTEK が提供する製品及びサービスの日本語化並びに日本市場への展開に関する業務提携に向けた基本合意を締結しました。引き続き、iFLYTEK が提供する製品及びサービスのローカライズに注力するとともに、国内の課題に対して、積極的に国の垣根を越えたグローバルなスキームを組み、よりスピーディーに課題を解決することにより、日本の持続的な発展に貢献してまいります。
c.医療・介護分野での継続開発中のプロジェクト
2019年12月に、IQVIAジャパングループ及び株式会社アルムと、それぞれの強みを活かし、PHR(※)の社会実装と価値最大化を支援するための共同プロジェクトを立ち上げました。3社の強みを活かし、「個々の健康診断結果の自動入力→脳卒中及び心卒中のリスク判定→フォロー」を包括的に支援する取り組みを進めてまいります。
なお、2019年8月には、日本テクトシステムズ株式会社と『医療、特に認知症領域』を中心とした IT 事業に関する業務提携を締結し、MRI脳画像(白質病変)やタンパク質のAI解析などの共同事業を立ち上げております。
また、引き続き、遠隔医療や介護という社会課題解決への貢献を目指し、「介護支援技術に関するプロジェクト」を、株式会社アルム、東京慈恵会医科大学、日本テクトシステムズ株式会社及び当社の4者ですすめております。この取り組みはNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)のプロジェクトとして採択されております。
※PHRとは、Personal Health Record(パーソナル・ヘルス・レコード)の略語で、個人の健康・医療・介護に関する情報のことをさしています。
以上の取り組みを実施した結果、当連結会計年度の経営成績は次のとおりであります。
(売上高)
当連結会計年度の売上高は過去最高の1,168百万円(前年同期比7.4%増)となりました。この主な要因は、大型の受託開発案件の売上計上と、店舗内カメラデバイスによる小売店支援ツール「FollowUP」の売上高増加によるものであります。
(売上原価)
当連結会計年度の売上原価は757百万円(前年同期比14.8%増)となりました。この主な内訳は、人件費352百万円、業務委託費292百万円、減価償却費76百万円、サーバー使用料53百万円によるものであります。売上原価の増加の主な要因は、人件費の増加と売上高の増加に伴う業務委託費などの増加によるものであります。
(販売費及び一般管理費)
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は397百万円(前年同期比21.4%増)となりました。この主な内訳は、人件費139百万円、業務委託費88百万円、のれん及び顧客関連資産の償却費41百万円によるものであります。販売費及び一般管理費の増加の主な要因は、Jach Technology SpAの子会社化にかかるアドバイザリー費用として66百万円を計上したことや人材採用が増加したことによる業務委託費の増加によるものであります。
上記より、当連結会計年度における経営成績は、売上高1,168百万円(前年同期比7.4%増)、営業利益14百万円(前年同期比86.0%減)、経常利益5百万円(前年同期比93.8%減)、親会社株主に帰属する当期純損失17百万円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純利益37百万円)となりました。
(2)当期の財政状態の概況
資産、負債及び純資産の状況は以下のとおりであります。
(資産)
当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末と比較して1,343百万円(前年同期比49.2%増)増加し、4,072百万円となりました。
これは、Jach Technology SpAの子会社化などにより、のれんが657百万円、現金及び預金が195百万円、ソフトウエアが150百万円、受取手形及び売掛金が99百万円それぞれ増加したことを主要因とするものであります。
(負債)
当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末と比較して419百万円(前年同期比49.2%増)増加し、1,272百万円となりました。
これは、銀行からの借入やJach Technology SpAの子会社化などにより、長期借入金が123百万円、短期借入金が67百万円、1年以内返済長期借入金が110百万円それぞれ増加したことを主要因とするものであります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は、前連結会計年度末と比較して923百万円(前年同期比49.2%増)増加し、2,800百万円となりました。
これは、第三者割当増資などにより、資本金が455百万円、資本剰余金が463百万円それぞれ増加したこと、親会社株主に帰属する当期純損失の計上により利益剰余金が17百万円減少し、非支配株主持分が21百万円増加したことを主要因とするものであります。
(3)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末と比較して185百万円増加し、その結果として1,688百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とその要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動の結果獲得した資金は、44百万円(前連結会計年度は、188百万円の獲得)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益18百万円の計上、減価償却費92百万円、未払金及び未払費用の減少38百万円、売上債権の増加33百万円等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動の結果支出した資金は、87百万円(前連結会計年度は、545百万円の支出)となりました。これは主に、貸付けによる支出62百万円、無形固定資産の取得による支出50百万円、保険積立金の積立による支出26百万円及び連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による収入67百万円等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動の結果獲得した資金は、228百万円(前連結会計年度は、612百万円の獲得)となりました。これは主に、長期借入れによる収入300百万円等によるものであります。
生産、受注及び販売の実績
(1)生産実績
当社グループは、事業の特性上、生産実績という区分は適当でないため記載しておりません。
(2)受注実績
当社グループは、概ね受注から役務提供の開始までの期間が短いため、受注実績に関する記載を省略しております。
(3)販売実績
当連結会計年度の販売実績をサービスごとに示すと、次のとおりであります。なお、当社グループは、ソーシャル・ビッグデータ事業の単一セグメントであり、セグメント情報を記載していないため、サービス別に記載しております。
(注)1.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
連結財務諸表の作成に当たり、資産及び負債または損益の状況に影響を与える会計上の見積りは、過去の実績等の財務諸表作成時に入手可能な情報に基づき合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表の作成に当たって採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表[注記事項] 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しているとおりでありますが、特に以下の項目は当社グループが行う連結財務諸表作成上の重要な判断と見積りに大きな影響を与えるものであると考えております。
①有価証券の評価
当社グループは、時価を把握することが困難な有価証券を保有しております。これらの有価証券につきましては、その評価には原価法を採用し、投資先の業績等をもとに合理的に価値を評価して必要な減損処理を行ってきておりますが、将来の市況の変化等により実質価値が著しく低下し、かつ回復する見込みがないと判断した場合にはが減損処理が必要となる可能性があります。
②繰延税金資産の回収可能性 当社グループは、毎決算日ごとに繰延税金資産の回収可能性について十分な検討を行い、将来の税金負担額を軽減する効果があると見込んだ額を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積もりに依存しますので、予測不能な事象や社会状況の変化等の影響を受けて課税所得の見積もりに変動が生じた場合には、繰延税金資産の取崩しまたは追加計上により利益に影響を及ぼす可能性があります。
③のれんの評価
当社グループは、のれんの償却については、その効果の及ぶ期間を見積り、その期間にわたって均等償却しております。また、のれんの資産性については、事業及び連結子会社の業績や事業計画等をもとに合理的に価値を評価しており、将来において当初見積もられた収益が見込めないと判断した場合には、減損処理が必要となる可能性があります。
当社グループでは、有価証券の評価や繰延税金資産の回収可能性、及びのれんの評価等の会計上の見積りについて、連結財務諸表作成時において入手可能な情報に基づき実施しております。新型コロナウイルス感染症による影響についても作成時に入手可能な情報を踏まえて会計上の見積りを実施しております。(2)経営成績
当社グループは、最先端のAI技術とデータを活用し「FollowUP」などのリテールマーケティングに注力すると同時に、優良な新規ビジネスを継続的に立ち上げ、ストック型のビジネスモデルによる安定的な収益確保を重要な戦略と位置づけております。このような方針に基づき経営成績の分析を行っております。
なお、当連結会計年度における経営成績等の前連結会計年度との比較数値については「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 業績等の概要 (1)業績」に記載のとおりであります。
当連結会計年度においては、当社グループの経営成績に対して新型コロナウイルス感染症の拡大による売上高の減少などの重大な影響はなく、売上高は過去最高となりました。
サービス別の売上高の状況は以下のとおりであります。
ソリューションの売上高は、前連結会計年度と比較して91百万円増加(前年同期比13.3%増)しました。これは大型の受託開発案件を継続的に受注したことによるものであります。具体的には、市場の価格情報を収集して相場を検知するツールや、子会社である株式会社ディーエスエスによる顧客の基盤システム構築・運用・保守、プリペイドカード決済システムやQRコード決済システム等のWebアプリケーションの受託開発などであり、また、その運用保守についても継続的にサービスを提供していることが売上高の増加に寄与しております。
SaaSの売上高は、前連結会計年度と比較して3百万円減少(前年同期比1.7%減)しました。商品別には、AIを用いた店舗の顧客行動分析ツールである「FollowUP」は積極的にリソースを投入したこともあり売上高が増加しています。ソーシャルメディア分析ツール全体では売上高は減少していますが、マーケター視点を取り入れてリニューアルしたソーシャルメディア分析ツールであるInsight Intelligence Qの受注は好調であり、Insight Intelligence Qに係る売上高は増加傾向にあります。
リサーチコンサルティングの売上高は、前連結会計年度と比較して7百万円減少(前年同期比3.4%減)しました。大型公募案件の売上高は堅調に推移し、また、子会社であるソリッドインテリジェンス株式会社とトランスコスモス・アナリティクス株式会社との資本業務提携に基づく連携により売上高が増加しましたが、一方で、従前から提供している小規模コンサルティング案件について、「FollowUP」などの注力事業へリソースを集中したことにより売上高が減少しました。
これらの結果、当連結会計年度における売上高は1,168百万円(前年同期比7.4%増)となりました。
売上高の増加に伴い、人件費や業務委託費などが増加し売上原価も増加しております。また、一時的な要因で業務委託費及び支払報酬が増加しており、M&Aに係るアドバイザリー費用を合計で66百万円計上しております。このアドバイザリー費用の目的であるJach Technology SpAの取得は2019年12月に完了しております。
これら売上原価の増加とM&Aに係るアドバイザリー費用の計上により、営業利益は14百万円(前年同期比86.0%減)となりました。
営業利益の減少や支払利息や持分法による投資損失の計上により経常利益は5百万円(前年同期比93.8%減)となりました。 また、以下の特別損益を計上しております。 持分法適用会社である株式会社日本データ取引所の持分の変動に伴い特別利益として持分変動利益を計上しております。また、収益化の見込める事業へのリソースの選択と集中を行うため、自社利用ソフトウエアの一部と事業用資産について特別損失として減損損失を計上しております。
これらの結果、税金等調整前当期純利益は18百万円(前年同期比77.2%減)となりました。
法人税等、及び法人税等調整額34百万円、非支配株主利益に2百万円を計上した結果、最終的な親会社株主に帰属する当期純損失は17百万円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純利益37百万円)となりました。
(3)財政状態
当社グループは、財務健全性を維持しつつ、業容拡大のために積極的に投資を行う方針であります。このような方針に基づき財政状態の分析を行っております。
当連結会計年度における財政状態等の前連結会計年度との比較数値については「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 業績等の概要 (2)当期の財政状態の概況」に記載のとおりであります。
当連結会計年度において、当社グループの資産・負債・純資産はともに増加しておりますが、その主な要因はJach Technology SpAの取得によるものであります。これにより、同社が保有していたソフトウエアやのれんを含めた資産が増加するとともに、借入金等の負債が増加しました。Jach Technology SpAの取得に当たって同社の普通株式を現物出資の対価とする第三者割当による新株発行を行い、その結果として当社グループの純資産も増加しております。
また、当社グループは、十分な手元資金を確保する目的で、財務健全性を維持できる範囲で銀行等からの借入による資金調達を行っており、負債が増加しております。
これらの結果、資産合計は4,072百万円、負債合計は1,272百万円、純資産は2,800百万円(いずれも前年同期比で49.2%増)となりました。
(4)キャッシュ・フローの状況
キャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 業績等の概要 (3)キャッシュ・フローの状況」に記載のとおり、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末と比較して185百万円増加し1,688百万円となりました。 当社グループの財務戦略、具体的な資金需要と資金調達方法及び資金の流動性については下記のとおりであります。(財務戦略) 当社グループは、安定した財務基盤を維持し、手元資金を十分に確保することで、積極的な投資の機会を確保することを基本的な財務戦略としております。(具体的な資金需要と資金調達方法) 事業シナジーがあり売上利益の増大を見込むことができる事業には、M&Aも含め積極的に投資を行う方針であり、そのための資金は、財務安定性の維持と投資のリスクや回収期間を考慮して自己資本、借入及びその組合せのうち最適な方法により資金調達を行う方針です。当連結会計年度において、Jach Technology SpAの取得に当たって同社の普通株式を現物出資の対価とする第三者割当による新株発行を行い、現金を支出せずにM&Aを実行しております。(資金の流動性) 営業活動によるキャッシュ・フローで獲得した資金と、金融機関からの長期借入金及び当座貸越契約の締結等のさまざまな手段により資金調達を行い、手元資金の流動性を十分に確保しております。
なお、キャッシュ・フロー関連指標の推移は以下のとおりとなっております。
自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
(注1)株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
(注2)キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しております。
(注3)有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っているすべての負債を対象としております。
(5)経営戦略の現状と見通し
新型コロナウイルス感染症の影響等により先行き不透明な状況は続くとみられますが、当社グループの主要事業領域であるITサービス市場は引き続きAIビジネスを中心に拡大を続けるものと考えております。 AI技術とデータを活用したビジネスモデルには様々な可能性があると当社グループでは認識しており、当社グループでは常に数多くのアイディアを捻出し、試行錯誤を繰り返してデータを活用した新規ビジネスの創出に取り組んでおります。これらのアイディアを具体的なビジネス企画に落とし込み、早いタイミングで開発していくことが、AI技術とデータを活用した新規ビジネスを創出する上で必要であると認識しております。 このような認識のもとで、当社グループでは最先端のAI技術とデータを活用したサービスを提供する方針です。長期的な成長の柱となる「FollowUP」などのリテールマーケティングに注力すると同時に、優良な新規ビジネスを継続的に立ち上げ、ストック型のビジネスモデルによる安定的な収益を確保してまいります。
この方針に従い、当社グループの掲げる「Change the Frame 〜テクノロジーで実社会に変革をもたらし、新しい暮らしをつくりあげる〜」のミッションのもと、当社グループの強みである技術を世の中に実装するための事業を展開してまいります。
2021年3月期につきましては、新型コロナウイルス感染症の影響を適正かつ合理的に予測することは困難ではあるものの、「FollowUP」、「Insight Intelligence」、「Insight Intelligence Q」、リサーチコンサルティングサービスなどにおける成長スピードの鈍化が生じる可能性があると考えております。このような中で当社は、顧客のコロナ感染症対策に役立つソリューション開発を行う等、各事業において顧客のニーズに対応した提案を行い企業価値の向上を図ってまいります。
(6)経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
(1)業績
当連結会計年度における我が国経済は、企業収益の改善を背景に、雇用情勢や個人所得環境に改善が見られ、穏やかな景気回復基調が続くことが期待されたものの、米中貿易摩擦や英国のEU離脱、新型コロナウイルスの世界的な影響などから先行き不透明な状況が続いております。
当グループが所属するITサービス市場におきましては、2020年3月期現在においては、好調な市場環境を維持しております。少子高齢化による労働人口の減少によって、長期的に現在の国内の経済規模を維持するためには労働生産性を向上させる取り組みが喫緊の課題となっており、こうした課題を解決する手段としてAI(人工知能)が引き続き注目されております。AIビジネスの国内市場においては、金融業や製造業などでAIの本格的な導入が進み、市場は拡大しております。今後は金融業や製造業だけではなく、さまざまな業種でAIが導入されることが予想され、市場の拡大とともにAIネイティブ化も進むとみられています。国内市場規模においては、2030年度には、2017年度比5.4倍の2兆1,286億円に拡大すると試算されております。(出典:富士キメラ総研)
このような経済状況のもと、当社は、SaaS事業、リサーチコンサルティング事業、ソリューション事業、その他(AI新規事業開発)のサービスを展開してまいりました。第1四半期連結会計期間から第3四半期連結会計期間までは、Jach Technology SpAの子会社化にかかるアドバイザリー費用の先行計上などにより営業損失となっておりましたが、第4四半期連結会計期間においては第4四半期に偏重している子会社の売上高の計上により黒字化いたしました。
当社のサービスごとの概況は以下のとおりであります。
イ. SaaS事業
SaaS事業におきましては、ソーシャルメディア分析ツール「Insight Intelligence」及び「Insight Intelligence Q」、並びに不適切投稿監視サービス「Social Monitor」などのサービスを提供しており、継続案件を中心に堅調に推移しました。
また、当連結会計年度より、店舗内カメラデバイスによる小売店支援ツール「FollowUP」を主力事業の一つと位置付けて販売活動に注力した結果、堅調に受注をのばしております。さらに、2019年12月13日付で「FollowUP」の海外展開を行うチリ法人Jach Technology SpAの子会社化を完了いたしました。海外の展開につきましては、短期的には新型コロナウイルス感染症の拡大による経済活動の影響を精査し慎重に事業を展開し、中長期的には南米を中心に全世界への事業拡大を図ってまいります。
ロ. リサーチコンサルティング事業
リサーチコンサルティング事業では、上記SaaSのツール提供にとどまらず、アナリストが分析、コンサルティングするサービスを提供しております。
主に当社連結子会社であるソリッドインテリジェンス株式会社(以下「SI」という)で行っているソーシャルメディア分析にかかるコンサルティングサービスに関しては、第1四半期においては公募案件の失注などにより売上が想定を下回っておりましたが、第2四半期以降における官公庁の公募案件獲得の巻き返しやSIとトランスコスモス・アナリティクス株式会社との資本業務提携に基づく連携の結果、当連結会計年度も堅調に推移しております。ソーシャルメディア分析による企業リスク回避への関心や外国人が投稿する多言語のソーシャルメディア分析への関心は依然として高まっていることから、引き続き案件獲得に注力してまいります。
また、店舗内カメラデバイスによる小売店支援ツール「FollowUP」についても、引き続きお客様によるSaaSのツール活用に加えて、当社のデータ解析の技術を用いたアナリストによる小売店運営を最適化するコンサルティングサービスを提供してまいります。
ハ. ソリューション事業
ソリューション事業におきましては、データ分析を業務改善に活用したシステム開発を顧客ごとにカスタマイズして行っております。データセクションの強みであるデータの解析の技術力と活用のためのコンサルティング力を生かして、顧客ごとの業務を理解して課題解決の提案からシステム開発及び運用までをワンストップで提供することで大型の開発案件を中心に売上を計上しております。大型開発案件の受注及び連結子会社株式会社ディーエスエスの受注の増加もあり、当連結会計年度においても順調に売上の予算を達成しております。
ニ. その他(AI新規事業開発)
その他(AI新規事業開発)においては、今後当社の収益拡大の柱となることを目標とした事業を新規に開発しております。
当連結会計年度においては、継続開発中であった交通量調査サービスを中断し、より収益性が高いと見込まれる音声解析AIに関する事業に注力するため合弁会社を設立いたしました。
また、2019年12月に太陽光発電施設点検サービス「SOLAR CHECK(ソーラーチェック)」の初受注をし、第4四半期より継続的に売上を計上しております。
その他、医療・介護分野においても引き続きプロジェクトをすすめてまいります。
(開発中のサービス)
a.SOLAR CHECK(ソーラーチェック)
ドローン空撮動画像を解析することにより、太陽光発電施設の点検を行うサービス
b.音声解析AI
2020年1月に音声解析AIに関する事業を展開する株式会社iVOICE(当社 50%、Fabeee株式会社 50%の出資で設立した合弁会社)を設立しました。また、同社は、2020年3月に人工知能分野では世界的に先進的な企業の一つである科大讯飞股份有限公司(iFLYTEK Co.Ltd.、以下「iFLYTEK」といいます)の日本子会社 iFLYTEK JAPAN AI SOLUTIONS株式会社と iFLYTEK が提供する製品及びサービスの日本語化並びに日本市場への展開に関する業務提携に向けた基本合意を締結しました。引き続き、iFLYTEK が提供する製品及びサービスのローカライズに注力するとともに、国内の課題に対して、積極的に国の垣根を越えたグローバルなスキームを組み、よりスピーディーに課題を解決することにより、日本の持続的な発展に貢献してまいります。
c.医療・介護分野での継続開発中のプロジェクト
2019年12月に、IQVIAジャパングループ及び株式会社アルムと、それぞれの強みを活かし、PHR(※)の社会実装と価値最大化を支援するための共同プロジェクトを立ち上げました。3社の強みを活かし、「個々の健康診断結果の自動入力→脳卒中及び心卒中のリスク判定→フォロー」を包括的に支援する取り組みを進めてまいります。
なお、2019年8月には、日本テクトシステムズ株式会社と『医療、特に認知症領域』を中心とした IT 事業に関する業務提携を締結し、MRI脳画像(白質病変)やタンパク質のAI解析などの共同事業を立ち上げております。
また、引き続き、遠隔医療や介護という社会課題解決への貢献を目指し、「介護支援技術に関するプロジェクト」を、株式会社アルム、東京慈恵会医科大学、日本テクトシステムズ株式会社及び当社の4者ですすめております。この取り組みはNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)のプロジェクトとして採択されております。
※PHRとは、Personal Health Record(パーソナル・ヘルス・レコード)の略語で、個人の健康・医療・介護に関する情報のことをさしています。
以上の取り組みを実施した結果、当連結会計年度の経営成績は次のとおりであります。
(売上高)
当連結会計年度の売上高は過去最高の1,168百万円(前年同期比7.4%増)となりました。この主な要因は、大型の受託開発案件の売上計上と、店舗内カメラデバイスによる小売店支援ツール「FollowUP」の売上高増加によるものであります。
(売上原価)
当連結会計年度の売上原価は757百万円(前年同期比14.8%増)となりました。この主な内訳は、人件費352百万円、業務委託費292百万円、減価償却費76百万円、サーバー使用料53百万円によるものであります。売上原価の増加の主な要因は、人件費の増加と売上高の増加に伴う業務委託費などの増加によるものであります。
(販売費及び一般管理費)
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は397百万円(前年同期比21.4%増)となりました。この主な内訳は、人件費139百万円、業務委託費88百万円、のれん及び顧客関連資産の償却費41百万円によるものであります。販売費及び一般管理費の増加の主な要因は、Jach Technology SpAの子会社化にかかるアドバイザリー費用として66百万円を計上したことや人材採用が増加したことによる業務委託費の増加によるものであります。
上記より、当連結会計年度における経営成績は、売上高1,168百万円(前年同期比7.4%増)、営業利益14百万円(前年同期比86.0%減)、経常利益5百万円(前年同期比93.8%減)、親会社株主に帰属する当期純損失17百万円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純利益37百万円)となりました。
(2)当期の財政状態の概況
資産、負債及び純資産の状況は以下のとおりであります。
(資産)
当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末と比較して1,343百万円(前年同期比49.2%増)増加し、4,072百万円となりました。
これは、Jach Technology SpAの子会社化などにより、のれんが657百万円、現金及び預金が195百万円、ソフトウエアが150百万円、受取手形及び売掛金が99百万円それぞれ増加したことを主要因とするものであります。
(負債)
当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末と比較して419百万円(前年同期比49.2%増)増加し、1,272百万円となりました。
これは、銀行からの借入やJach Technology SpAの子会社化などにより、長期借入金が123百万円、短期借入金が67百万円、1年以内返済長期借入金が110百万円それぞれ増加したことを主要因とするものであります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は、前連結会計年度末と比較して923百万円(前年同期比49.2%増)増加し、2,800百万円となりました。
これは、第三者割当増資などにより、資本金が455百万円、資本剰余金が463百万円それぞれ増加したこと、親会社株主に帰属する当期純損失の計上により利益剰余金が17百万円減少し、非支配株主持分が21百万円増加したことを主要因とするものであります。
(3)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末と比較して185百万円増加し、その結果として1,688百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とその要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動の結果獲得した資金は、44百万円(前連結会計年度は、188百万円の獲得)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益18百万円の計上、減価償却費92百万円、未払金及び未払費用の減少38百万円、売上債権の増加33百万円等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動の結果支出した資金は、87百万円(前連結会計年度は、545百万円の支出)となりました。これは主に、貸付けによる支出62百万円、無形固定資産の取得による支出50百万円、保険積立金の積立による支出26百万円及び連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による収入67百万円等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動の結果獲得した資金は、228百万円(前連結会計年度は、612百万円の獲得)となりました。これは主に、長期借入れによる収入300百万円等によるものであります。
生産、受注及び販売の実績
(1)生産実績
当社グループは、事業の特性上、生産実績という区分は適当でないため記載しておりません。
(2)受注実績
当社グループは、概ね受注から役務提供の開始までの期間が短いため、受注実績に関する記載を省略しております。
(3)販売実績
当連結会計年度の販売実績をサービスごとに示すと、次のとおりであります。なお、当社グループは、ソーシャル・ビッグデータ事業の単一セグメントであり、セグメント情報を記載していないため、サービス別に記載しております。
サービスの名称 | 当連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 前年同期比(%) |
SaaS (千円) | 186,025 | 98.3 |
リサーチコンサルティング (千円) | 202,505 | 96.6 |
ソリューション (千円) | 780,340 | 113.3 |
合計 (千円) | 1,168,871 | 107.4 |
(注)1.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 | 前連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | ||
金額(千円) | 割合(%) | 金額(千円) | 割合(%) | |
富士通株式会社 | 117,483 | 10.8 | 163,796 | 14.0 |
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
連結財務諸表の作成に当たり、資産及び負債または損益の状況に影響を与える会計上の見積りは、過去の実績等の財務諸表作成時に入手可能な情報に基づき合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表の作成に当たって採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表[注記事項] 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しているとおりでありますが、特に以下の項目は当社グループが行う連結財務諸表作成上の重要な判断と見積りに大きな影響を与えるものであると考えております。
①有価証券の評価
当社グループは、時価を把握することが困難な有価証券を保有しております。これらの有価証券につきましては、その評価には原価法を採用し、投資先の業績等をもとに合理的に価値を評価して必要な減損処理を行ってきておりますが、将来の市況の変化等により実質価値が著しく低下し、かつ回復する見込みがないと判断した場合にはが減損処理が必要となる可能性があります。
②繰延税金資産の回収可能性 当社グループは、毎決算日ごとに繰延税金資産の回収可能性について十分な検討を行い、将来の税金負担額を軽減する効果があると見込んだ額を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積もりに依存しますので、予測不能な事象や社会状況の変化等の影響を受けて課税所得の見積もりに変動が生じた場合には、繰延税金資産の取崩しまたは追加計上により利益に影響を及ぼす可能性があります。
③のれんの評価
当社グループは、のれんの償却については、その効果の及ぶ期間を見積り、その期間にわたって均等償却しております。また、のれんの資産性については、事業及び連結子会社の業績や事業計画等をもとに合理的に価値を評価しており、将来において当初見積もられた収益が見込めないと判断した場合には、減損処理が必要となる可能性があります。
当社グループでは、有価証券の評価や繰延税金資産の回収可能性、及びのれんの評価等の会計上の見積りについて、連結財務諸表作成時において入手可能な情報に基づき実施しております。新型コロナウイルス感染症による影響についても作成時に入手可能な情報を踏まえて会計上の見積りを実施しております。(2)経営成績
当社グループは、最先端のAI技術とデータを活用し「FollowUP」などのリテールマーケティングに注力すると同時に、優良な新規ビジネスを継続的に立ち上げ、ストック型のビジネスモデルによる安定的な収益確保を重要な戦略と位置づけております。このような方針に基づき経営成績の分析を行っております。
なお、当連結会計年度における経営成績等の前連結会計年度との比較数値については「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 業績等の概要 (1)業績」に記載のとおりであります。
当連結会計年度においては、当社グループの経営成績に対して新型コロナウイルス感染症の拡大による売上高の減少などの重大な影響はなく、売上高は過去最高となりました。
サービス別の売上高の状況は以下のとおりであります。
ソリューションの売上高は、前連結会計年度と比較して91百万円増加(前年同期比13.3%増)しました。これは大型の受託開発案件を継続的に受注したことによるものであります。具体的には、市場の価格情報を収集して相場を検知するツールや、子会社である株式会社ディーエスエスによる顧客の基盤システム構築・運用・保守、プリペイドカード決済システムやQRコード決済システム等のWebアプリケーションの受託開発などであり、また、その運用保守についても継続的にサービスを提供していることが売上高の増加に寄与しております。
SaaSの売上高は、前連結会計年度と比較して3百万円減少(前年同期比1.7%減)しました。商品別には、AIを用いた店舗の顧客行動分析ツールである「FollowUP」は積極的にリソースを投入したこともあり売上高が増加しています。ソーシャルメディア分析ツール全体では売上高は減少していますが、マーケター視点を取り入れてリニューアルしたソーシャルメディア分析ツールであるInsight Intelligence Qの受注は好調であり、Insight Intelligence Qに係る売上高は増加傾向にあります。
リサーチコンサルティングの売上高は、前連結会計年度と比較して7百万円減少(前年同期比3.4%減)しました。大型公募案件の売上高は堅調に推移し、また、子会社であるソリッドインテリジェンス株式会社とトランスコスモス・アナリティクス株式会社との資本業務提携に基づく連携により売上高が増加しましたが、一方で、従前から提供している小規模コンサルティング案件について、「FollowUP」などの注力事業へリソースを集中したことにより売上高が減少しました。
これらの結果、当連結会計年度における売上高は1,168百万円(前年同期比7.4%増)となりました。
売上高の増加に伴い、人件費や業務委託費などが増加し売上原価も増加しております。また、一時的な要因で業務委託費及び支払報酬が増加しており、M&Aに係るアドバイザリー費用を合計で66百万円計上しております。このアドバイザリー費用の目的であるJach Technology SpAの取得は2019年12月に完了しております。
これら売上原価の増加とM&Aに係るアドバイザリー費用の計上により、営業利益は14百万円(前年同期比86.0%減)となりました。
営業利益の減少や支払利息や持分法による投資損失の計上により経常利益は5百万円(前年同期比93.8%減)となりました。 また、以下の特別損益を計上しております。 持分法適用会社である株式会社日本データ取引所の持分の変動に伴い特別利益として持分変動利益を計上しております。また、収益化の見込める事業へのリソースの選択と集中を行うため、自社利用ソフトウエアの一部と事業用資産について特別損失として減損損失を計上しております。
これらの結果、税金等調整前当期純利益は18百万円(前年同期比77.2%減)となりました。
法人税等、及び法人税等調整額34百万円、非支配株主利益に2百万円を計上した結果、最終的な親会社株主に帰属する当期純損失は17百万円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純利益37百万円)となりました。
(3)財政状態
当社グループは、財務健全性を維持しつつ、業容拡大のために積極的に投資を行う方針であります。このような方針に基づき財政状態の分析を行っております。
当連結会計年度における財政状態等の前連結会計年度との比較数値については「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 業績等の概要 (2)当期の財政状態の概況」に記載のとおりであります。
当連結会計年度において、当社グループの資産・負債・純資産はともに増加しておりますが、その主な要因はJach Technology SpAの取得によるものであります。これにより、同社が保有していたソフトウエアやのれんを含めた資産が増加するとともに、借入金等の負債が増加しました。Jach Technology SpAの取得に当たって同社の普通株式を現物出資の対価とする第三者割当による新株発行を行い、その結果として当社グループの純資産も増加しております。
また、当社グループは、十分な手元資金を確保する目的で、財務健全性を維持できる範囲で銀行等からの借入による資金調達を行っており、負債が増加しております。
これらの結果、資産合計は4,072百万円、負債合計は1,272百万円、純資産は2,800百万円(いずれも前年同期比で49.2%増)となりました。
(4)キャッシュ・フローの状況
キャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 業績等の概要 (3)キャッシュ・フローの状況」に記載のとおり、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末と比較して185百万円増加し1,688百万円となりました。 当社グループの財務戦略、具体的な資金需要と資金調達方法及び資金の流動性については下記のとおりであります。(財務戦略) 当社グループは、安定した財務基盤を維持し、手元資金を十分に確保することで、積極的な投資の機会を確保することを基本的な財務戦略としております。(具体的な資金需要と資金調達方法) 事業シナジーがあり売上利益の増大を見込むことができる事業には、M&Aも含め積極的に投資を行う方針であり、そのための資金は、財務安定性の維持と投資のリスクや回収期間を考慮して自己資本、借入及びその組合せのうち最適な方法により資金調達を行う方針です。当連結会計年度において、Jach Technology SpAの取得に当たって同社の普通株式を現物出資の対価とする第三者割当による新株発行を行い、現金を支出せずにM&Aを実行しております。(資金の流動性) 営業活動によるキャッシュ・フローで獲得した資金と、金融機関からの長期借入金及び当座貸越契約の締結等のさまざまな手段により資金調達を行い、手元資金の流動性を十分に確保しております。
なお、キャッシュ・フロー関連指標の推移は以下のとおりとなっております。
2019年3月期 (連結) | 2020年3月期 (連結) | |
自己資本比率(%) | 68.4 | 68.0 |
時価ベースの 自己資本比率(%) | 296.2 | 116.6 |
キャッシュ・フロー対 有利子負債比率(年) | 3.4 | 21.5 |
インタレスト・ カバレッジ・レシオ(倍) | 75.1 | 11.5 |
自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
(注1)株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
(注2)キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しております。
(注3)有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っているすべての負債を対象としております。
(5)経営戦略の現状と見通し
新型コロナウイルス感染症の影響等により先行き不透明な状況は続くとみられますが、当社グループの主要事業領域であるITサービス市場は引き続きAIビジネスを中心に拡大を続けるものと考えております。 AI技術とデータを活用したビジネスモデルには様々な可能性があると当社グループでは認識しており、当社グループでは常に数多くのアイディアを捻出し、試行錯誤を繰り返してデータを活用した新規ビジネスの創出に取り組んでおります。これらのアイディアを具体的なビジネス企画に落とし込み、早いタイミングで開発していくことが、AI技術とデータを活用した新規ビジネスを創出する上で必要であると認識しております。 このような認識のもとで、当社グループでは最先端のAI技術とデータを活用したサービスを提供する方針です。長期的な成長の柱となる「FollowUP」などのリテールマーケティングに注力すると同時に、優良な新規ビジネスを継続的に立ち上げ、ストック型のビジネスモデルによる安定的な収益を確保してまいります。
この方針に従い、当社グループの掲げる「Change the Frame 〜テクノロジーで実社会に変革をもたらし、新しい暮らしをつくりあげる〜」のミッションのもと、当社グループの強みである技術を世の中に実装するための事業を展開してまいります。
2021年3月期につきましては、新型コロナウイルス感染症の影響を適正かつ合理的に予測することは困難ではあるものの、「FollowUP」、「Insight Intelligence」、「Insight Intelligence Q」、リサーチコンサルティングサービスなどにおける成長スピードの鈍化が生じる可能性があると考えております。このような中で当社は、顧客のコロナ感染症対策に役立つソリューション開発を行う等、各事業において顧客のニーズに対応した提案を行い企業価値の向上を図ってまいります。
(6)経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。