有価証券報告書-第156期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
①財政状態及び経営成績の状況
a.経営成績の状況
当期における我が国経済は、米中貿易摩擦が長期化する中、横這い圏を維持していましたが、消費税率の引き上げと大型台風の上陸が重なった秋以降から個人消費が大きく減少し、また輸出の低迷などから製造業を中心に企業業績が振るわず、設備投資も次第に弱含む展開となりました。さらに2月以降は新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大したため、期末にかけて景気は急速に悪化しました。
建設市場については、総じて堅調に推移しましたが、新型コロナウイルスの感染拡大が徐々に影を落とし始めました。
このような状況の下、当期の受注高は1,243億2千万円(前期比289億1千万円減)となりました。業績については、売上高は1,381億4千万円(同37億7千万円減)、営業利益は128億8千万円(同23億7千万円増)、経常利益は129億6千万円(同23億1千万円増)、親会社株主に帰属する当期純利益は90億円(同14億6千万円増)となりました。
セグメントごとの経営成績は以下のとおりです。
(橋梁事業)
国内橋梁事業は、大型プロジェクトの端境期となったため、新設橋梁の発注量が低迷し、厳しい事業環境となりました。このような状況の下、当社グループはシェアを落とさず一定量の受注を確保し、また保全工事と民間工事の受注を拡大させることができましたが、海外大型工事の受注などで過去最高を更新した前期実績からの減少は避けられず、橋梁事業全体の受注高は694億円(前期比223億3千万円減)となりました。主な受注工事としましては、新設工事は、北海道開発局・鶴丘橋、関東地方整備局・東扇島水江町線主橋梁、潮来佐原線橋、四国地方整備局・新横倉橋、東日本高速道路・小樽ジャンクションCランプ橋、首都高速道路・東扇島水江町線高架橋、阪神高速道路・海老江ジャンクション、西日本高速道路・上灘川橋他1橋、尻掛橋、茨城県・北田気大橋(その2)、愛知県・新濃尾大橋P5-A2など、保全工事は、東日本高速道路・宮城白石川橋床版取替、島根県・西郷大橋補修などです。
業績については、売上高は812億3千万円(同78億3千万円増)、営業利益は83億1千万円(同22億8千万円増)となり、過去最高水準の業績となりました。豊富な手持ち工事が概ね順調に推移したことに加え、設計変更による増額や工事採算の改善、工事損失引当金の順当な減少が寄与しました。主な売上工事としましては、国内新設工事は、東北地方整備局・気仙沼湾横断橋川口地区、東日本高速道路・阿武隈大橋、末続川橋、鎧川橋、中日本高速道路・春田野第二高架橋他7橋、梅之郷北第三高架橋他6橋、高森第二高架橋他4橋、新駒門東第三高架橋、阪神高速道路・西船場ジャンクション、鉄道・運輸機構・北陸新幹線幸町橋りょうなど、保全工事は、近畿地方整備局・淀川大橋床版取替、首都高速道路・上部工補強工事2-204、西日本高速道路・山中川橋他14橋落橋防止などが売上に立ちました。
(エンジニアリング関連事業)
エンジニアリング関連事業の受注については、土木関連事業のトンネルセグメントの大型案件を受注することができましたが、システム建築事業は前期に行った受注抑制の影響と一部案件の契約の先送りなどにより伸び悩んだため、事業全体の受注高は511億7千万円(前期比61億3千万円減)と前期を下回りました。
業績については、売上高は529億3千万円(同104億6千万円減)と減少しましたが、営業利益は48億9千万円(同5億1千万円増)と増益となりました。これは、建築機鉄事業において大型建築工事の竣工時精算による増額があったことに加え、システム建築事業の採算が大きく改善したためです。茂原の新工場の稼働開始とあわせて生産現場の混乱が収束し、下期から価格見直し効果も実現しました。
(先端技術事業)
先端技術事業については、精密機器製造事業の需要が伸び悩んだため、受注高は37億4千万円(前期比4億5千万円減)と減少しました。業績については、受注の減少により売上高は32億9千万円(同11億5千万円減)、営業利益は4億円(同4億6千万円減)と、何れも前期を下回りました。
(不動産事業)
不動産事業については、売上高は前期とほぼ同額の6億8千万円、営業利益も横這いの4億円(同1千万円減)となり、当期も安定的な収入と利益を確保しました。
b.財政状態の状況
当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末に比べ28億8千万円増加し、1,525億8千万円となりました。流動資産は、「受取手形・完成工事未収入金等」が減少したこと等により2億8千万円減少し938億9千万円となりました。固定資産については、586億9千万円となり、31億7千万円増加しました。その主な要因は、株価の下落等により投資その他の資産が減少したものの、新工場の建設などで有形固定資産が増加したことによるものです。
負債は、前連結会計年度末に比べ25億7千万円減少し、605億3千万円となりました。その主な要因は、「支払手形・工事未払金等」および「工事損失引当金」等が減少したことによるものです。
純資産は、前連結会計年度末に比べ54億6千万円増加し、920億4千万円となりました。その主な要因は、株価の下落により「その他有価証券評価差額金」が減少したものの、「親会社株主に帰属する当期純利益」を計上したことによるものです。この結果、自己資本比率は58.6%となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べて16億7千万円減少し、227億3千万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、獲得した資金は91億6千万円(前連結会計年度は44億4千万円の獲得)となりました。これは、主に税金等調整前当期純利益が増加したことおよび法人税等の支払いが減少したことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、使用した資金は87億6千万円(前連結会計年度は58億4千万円の使用)となりました。これは、主に有形固定資産の取得による支出が増加したことおよび投資有価証券の売却による収入が減少したことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、使用した資金は21億円(前連結会計年度は25億8千万円の獲得)となりました。これは、主に配当金の支払いおよび借入れの返済によるものです。
なお、当社グループのキャッシュ・フロー指標のトレンドは下記のとおりです。
※ 自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
a.いずれも連結ベースの財務数値により計算しています。
b.株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式総数(自己株式控除後)により算出しています。
c.営業キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しています。有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としています。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しています。
d.2017年3月期の「キャッシュ・フロー対有利子負債比率」および「インタレスト・カバレッジ・レシオ」については、営業キャッシュ・フローがマイナスのため、記載していません。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと次のとおりです。
(注)1.金額は販売価格によっており、セグメント間取引については、相殺消去しています。
2.金額は、消費税等を除いて記載しています。
b.受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと次のとおりです。
(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しています。
2.金額は、消費税等を除いて記載しています。
3.輸出について特記すべき事項はありません。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと次のとおりです。
(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しています。
2.金額は、消費税等を除いて記載しています。
3.輸出について特記すべき事項はありません。
4.前連結会計年度および当連結会計年度において、主要な販売先に該当するものはありません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりです。
(財政状態)
総資産は1,525億8千万円(前期末比28億8千万円増)となり、そのうち有形固定資産は368億7千万円(同69億9千万円増)と大きく増加しました。これは主にシステム建築事業の新工場(千葉県茂原市)の完成によるもので、4期に分けて段階的に稼働させる計画の中、第1期のラインが昨年9月から、第2期のラインが今年2月からそれぞれ順調に稼働しております。負債合計は前期末から25億7千万円減少し605億3千万円となりました。これは主に工事損失引当金(同13億6千万円減)と有利子負債(同7億7千万円減)の減少であり、工事採算の改善と営業キャッシュ・フローの獲得が寄与したものです。純資産は利益の獲得により過去最高の920億4千万円(同54億6千万円増)となりました。
(経営成績)
当連結会計年度は国内新設橋梁の発注量が少なく、また前期には100億円を超える海外大型案件もあったことから当期受注の落ち込みは避けられず、受注高は1,243億2千万円(前期比289億1千万円減)となりました。売上高も若干伸び悩み1,381億4千万円(37億7千万円減)に止まりましたが、橋梁事業の期首手持ち工事が順調に進捗し、また工事損失引当金が順当に減少したことなどから営業利益は128億8千万円(同23億7千万円増)の増益とすることができました。
当期を初年度とする3ヶ年の第5次中期経営計画では、最終年度の売上高1,600億円、営業利益140億円を目標としており、当期売上高と営業利益はその目標に対しそれぞれ86%、92%となりましたので、中計初年度として順調なスタートが切れたと考えております。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える最大の要因は重大事故の発生ですが、当連結会計年度において重大事故の発生はありませんでした。引き続き工事の安全が何よりも優先するということを常に強く認識し、全国すべての現場において安全施工を徹底していきます。
セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりです。
<橋梁事業>大型プロジェクト発注の端境期に当たったことから特に新設橋梁について大規模案件が少なく、厳しい受注環境となりました。そのため国土交通省と高速道路会社からの受注は減少となりましたが地方自治体と民間からの受注を伸ばすことができ、一定の受注量(694億円・前期比223億3千万円減)を確保することができました。橋梁事業の売上高812億3千万円(前期比78億3千万円増)は過去最高となり、採算が悪化する工事が少なく4期連続で増加しておりました工事損失引当金も減少に転じましたため、営業利益も83億1千万円(同22億8千万円増)となりました。想定以上の追加工事費の獲得により過去最高となった前々期の営業利益(85億1千万円)には僅かに届きませんでしたが、過去2番目の成績となりました。
<エンジニアリング関連事業>システム建築事業については、受注高は375億2千万円(前期比34億4千万円減)に止まり、売上高も381億4千万円(同18億円減)と減収になりました。これは前期の第2四半期に受注が処理能力を超え、外注費の急増、生産工程の混乱などが生じたことの影響が当期にも及んだためです。前期第3四半期から受注の抑制と価格の見直しを行い、並行して工程管理・損益管理をはじめとする管理手法の見直し、組織の再編などを進め、また新工場(千葉県茂原市)の稼働開始を急ぎました。結果的に損益の回復には1年近くを要したことになりますが、新工場稼働と価格見直しの効果により当下半期からの採算が大きく改善し、前期に対し増益とすることができました。
土木関連事業については減収減益となりましたが、これはシールドトンネル用セグメントの生産量がトンネル工事の進捗で決まるためであり、想定通りの結果です。建築機鉄事業についても減収となりましたが、利益については「2020年東京五輪」に関連するプロジェクトの竣工が集中したため、追加工事費の獲得が重なり増益となりました。
以上の結果エンジニアリング関連事業全体の業績は売上高529億3千万円(同104億6千万円減)営業利益48億9千万円(同5億1千万円増)となりました。
<先端技術事業>先端技術事業については精密機器製造事業の受注は低迷が続き、第3四半期から回復の兆しが見え始めましたものの前期を下回りました。情報処理事業については道路橋示方書改定に伴う橋梁設計関連の需要が前期に続き堅調で、横這いで推移しました。以上の結果、先端技術事業全体の業績は売上高32億9千万円(前期比11億5千万円減)、営業利益4億円(同4億6千万円減)となりました。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況の分析・検討内容は「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に含めて記載しております。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性について、当社グループの主な資金需要は材料費、外注費、労務費、工場並びに現場の直接経費・間接経費などの運転資金と工場生産設備を中心とする設備投資資金です。資金調達はフリー・キャッシュフロー及び間接調達で確保しております。また、長期大型工事の竣工間際など一時的に立替額が大きくなる場合に備え、コミットメントライン契約と当座貸越契約により財務の安定性及び流動性を補完しております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しておりますが、そのうち「(3)重要な引当金の計上基準 ③工事損失引当金」について、以下に補足します。
工事損失引当金は受注工事の将来の損失発生に備えるため、当連結会計年度末における手持工事のうち、翌期以降の損失発生が確実であり、かつ損失額を合理的に見積ることが可能な工事について、その損失見込額を計上しています。但し当社グループの主力事業である鋼橋は一般的に施工条件が厳しく、難易度の高い工事が多いことなどから、着手後の施工方法の見直し、施工用設備の追加、条件変更に係る求償交渉の成否の状況などにより、損失見込額を当期末の最善の見積りにより洗替えしております。当社グループの営業利益はこのような工事毎の工事損失引当金の増減の影響を受けております。
新型コロナウイルス感染症拡大に伴う影響については、現時点では軽微であると考え、当期の会計上の見積りには織り込んでいません。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
①財政状態及び経営成績の状況
a.経営成績の状況
当期における我が国経済は、米中貿易摩擦が長期化する中、横這い圏を維持していましたが、消費税率の引き上げと大型台風の上陸が重なった秋以降から個人消費が大きく減少し、また輸出の低迷などから製造業を中心に企業業績が振るわず、設備投資も次第に弱含む展開となりました。さらに2月以降は新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大したため、期末にかけて景気は急速に悪化しました。
建設市場については、総じて堅調に推移しましたが、新型コロナウイルスの感染拡大が徐々に影を落とし始めました。
このような状況の下、当期の受注高は1,243億2千万円(前期比289億1千万円減)となりました。業績については、売上高は1,381億4千万円(同37億7千万円減)、営業利益は128億8千万円(同23億7千万円増)、経常利益は129億6千万円(同23億1千万円増)、親会社株主に帰属する当期純利益は90億円(同14億6千万円増)となりました。
セグメントごとの経営成績は以下のとおりです。
(橋梁事業)
国内橋梁事業は、大型プロジェクトの端境期となったため、新設橋梁の発注量が低迷し、厳しい事業環境となりました。このような状況の下、当社グループはシェアを落とさず一定量の受注を確保し、また保全工事と民間工事の受注を拡大させることができましたが、海外大型工事の受注などで過去最高を更新した前期実績からの減少は避けられず、橋梁事業全体の受注高は694億円(前期比223億3千万円減)となりました。主な受注工事としましては、新設工事は、北海道開発局・鶴丘橋、関東地方整備局・東扇島水江町線主橋梁、潮来佐原線橋、四国地方整備局・新横倉橋、東日本高速道路・小樽ジャンクションCランプ橋、首都高速道路・東扇島水江町線高架橋、阪神高速道路・海老江ジャンクション、西日本高速道路・上灘川橋他1橋、尻掛橋、茨城県・北田気大橋(その2)、愛知県・新濃尾大橋P5-A2など、保全工事は、東日本高速道路・宮城白石川橋床版取替、島根県・西郷大橋補修などです。
業績については、売上高は812億3千万円(同78億3千万円増)、営業利益は83億1千万円(同22億8千万円増)となり、過去最高水準の業績となりました。豊富な手持ち工事が概ね順調に推移したことに加え、設計変更による増額や工事採算の改善、工事損失引当金の順当な減少が寄与しました。主な売上工事としましては、国内新設工事は、東北地方整備局・気仙沼湾横断橋川口地区、東日本高速道路・阿武隈大橋、末続川橋、鎧川橋、中日本高速道路・春田野第二高架橋他7橋、梅之郷北第三高架橋他6橋、高森第二高架橋他4橋、新駒門東第三高架橋、阪神高速道路・西船場ジャンクション、鉄道・運輸機構・北陸新幹線幸町橋りょうなど、保全工事は、近畿地方整備局・淀川大橋床版取替、首都高速道路・上部工補強工事2-204、西日本高速道路・山中川橋他14橋落橋防止などが売上に立ちました。
(エンジニアリング関連事業)
エンジニアリング関連事業の受注については、土木関連事業のトンネルセグメントの大型案件を受注することができましたが、システム建築事業は前期に行った受注抑制の影響と一部案件の契約の先送りなどにより伸び悩んだため、事業全体の受注高は511億7千万円(前期比61億3千万円減)と前期を下回りました。
業績については、売上高は529億3千万円(同104億6千万円減)と減少しましたが、営業利益は48億9千万円(同5億1千万円増)と増益となりました。これは、建築機鉄事業において大型建築工事の竣工時精算による増額があったことに加え、システム建築事業の採算が大きく改善したためです。茂原の新工場の稼働開始とあわせて生産現場の混乱が収束し、下期から価格見直し効果も実現しました。
(先端技術事業)
先端技術事業については、精密機器製造事業の需要が伸び悩んだため、受注高は37億4千万円(前期比4億5千万円減)と減少しました。業績については、受注の減少により売上高は32億9千万円(同11億5千万円減)、営業利益は4億円(同4億6千万円減)と、何れも前期を下回りました。
(不動産事業)
不動産事業については、売上高は前期とほぼ同額の6億8千万円、営業利益も横這いの4億円(同1千万円減)となり、当期も安定的な収入と利益を確保しました。
b.財政状態の状況
当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末に比べ28億8千万円増加し、1,525億8千万円となりました。流動資産は、「受取手形・完成工事未収入金等」が減少したこと等により2億8千万円減少し938億9千万円となりました。固定資産については、586億9千万円となり、31億7千万円増加しました。その主な要因は、株価の下落等により投資その他の資産が減少したものの、新工場の建設などで有形固定資産が増加したことによるものです。
負債は、前連結会計年度末に比べ25億7千万円減少し、605億3千万円となりました。その主な要因は、「支払手形・工事未払金等」および「工事損失引当金」等が減少したことによるものです。
純資産は、前連結会計年度末に比べ54億6千万円増加し、920億4千万円となりました。その主な要因は、株価の下落により「その他有価証券評価差額金」が減少したものの、「親会社株主に帰属する当期純利益」を計上したことによるものです。この結果、自己資本比率は58.6%となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べて16億7千万円減少し、227億3千万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、獲得した資金は91億6千万円(前連結会計年度は44億4千万円の獲得)となりました。これは、主に税金等調整前当期純利益が増加したことおよび法人税等の支払いが減少したことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、使用した資金は87億6千万円(前連結会計年度は58億4千万円の使用)となりました。これは、主に有形固定資産の取得による支出が増加したことおよび投資有価証券の売却による収入が減少したことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、使用した資金は21億円(前連結会計年度は25億8千万円の獲得)となりました。これは、主に配当金の支払いおよび借入れの返済によるものです。
なお、当社グループのキャッシュ・フロー指標のトレンドは下記のとおりです。
回次 | 第152期 | 第153期 | 第154期 | 第155期 | 第156期 |
決算年月 | 2016年3月期 | 2017年3月期 | 2018年3月期 | 2019年3月期 | 2020年3月期 |
自己資本比率 | 56.0% | 53.3% | 54.4% | 56.3% | 58.6% |
時価ベースの 自己資本比率 | 44.2% | 41.7% | 64.2% | 52.6% | 53.4% |
キャッシュ・フロー対有利子負債比率 | 1.2年 | -年 | 0.5年 | 2.8年 | 1.3年 |
インタレスト・ カバレッジ・レシオ | 86.4倍 | -倍 | 263.9倍 | 56.9倍 | 138.1倍 |
※ 自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
a.いずれも連結ベースの財務数値により計算しています。
b.株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式総数(自己株式控除後)により算出しています。
c.営業キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しています。有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としています。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しています。
d.2017年3月期の「キャッシュ・フロー対有利子負債比率」および「インタレスト・カバレッジ・レシオ」については、営業キャッシュ・フローがマイナスのため、記載していません。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと次のとおりです。
セグメントの名称 | 数 量 (トン) | 前年同期比 (%) | 金 額 (百万円) | 前年同期比 (%) |
橋梁事業 | 58,132 | 114.2 | 81,230 | 110.7 |
エンジニアリング関連事業 | 74,985 | 71.7 | 52,934 | 83.5 |
先端技術事業 | - | - | 3,290 | 74.1 |
合計 | 133,118 | 85.6 | 137,455 | 97.3 |
(注)1.金額は販売価格によっており、セグメント間取引については、相殺消去しています。
2.金額は、消費税等を除いて記載しています。
b.受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと次のとおりです。
セグメントの名称 | 受注高 | 受注残高 | ||||
数量 (トン) | 前年同期比 (%) | 金額 (百万円) | 前年同期比(%) | 金額 (百万円) | 前年同期比 (%) | |
橋梁事業 | 48,406 | 61.9 | 69,404 | 75.7 | 101,541 | 89.6 |
エンジニアリング関連事業 | 70,827 | 78.1 | 51,175 | 89.3 | 43,798 | 96.1 |
先端技術事業 | - | - | 3,746 | 89.3 | 1,503 | 143.6 |
合計 | 119,234 | 70.6 | 124,326 | 81.1 | 146,843 | 91.8 |
(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しています。
2.金額は、消費税等を除いて記載しています。
3.輸出について特記すべき事項はありません。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと次のとおりです。
セグメントの名称 | 金 額 (百万円) | 前年同期比 (%) |
橋梁事業 | 81,230 | 110.7 |
エンジニアリング関連事業 | 52,934 | 83.5 |
先端技術事業 | 3,290 | 74.1 |
不動産事業 | 689 | 99.7 |
合計 | 138,144 | 97.3 |
(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しています。
2.金額は、消費税等を除いて記載しています。
3.輸出について特記すべき事項はありません。
4.前連結会計年度および当連結会計年度において、主要な販売先に該当するものはありません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりです。
(財政状態)
総資産は1,525億8千万円(前期末比28億8千万円増)となり、そのうち有形固定資産は368億7千万円(同69億9千万円増)と大きく増加しました。これは主にシステム建築事業の新工場(千葉県茂原市)の完成によるもので、4期に分けて段階的に稼働させる計画の中、第1期のラインが昨年9月から、第2期のラインが今年2月からそれぞれ順調に稼働しております。負債合計は前期末から25億7千万円減少し605億3千万円となりました。これは主に工事損失引当金(同13億6千万円減)と有利子負債(同7億7千万円減)の減少であり、工事採算の改善と営業キャッシュ・フローの獲得が寄与したものです。純資産は利益の獲得により過去最高の920億4千万円(同54億6千万円増)となりました。
(経営成績)
当連結会計年度は国内新設橋梁の発注量が少なく、また前期には100億円を超える海外大型案件もあったことから当期受注の落ち込みは避けられず、受注高は1,243億2千万円(前期比289億1千万円減)となりました。売上高も若干伸び悩み1,381億4千万円(37億7千万円減)に止まりましたが、橋梁事業の期首手持ち工事が順調に進捗し、また工事損失引当金が順当に減少したことなどから営業利益は128億8千万円(同23億7千万円増)の増益とすることができました。
当期を初年度とする3ヶ年の第5次中期経営計画では、最終年度の売上高1,600億円、営業利益140億円を目標としており、当期売上高と営業利益はその目標に対しそれぞれ86%、92%となりましたので、中計初年度として順調なスタートが切れたと考えております。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える最大の要因は重大事故の発生ですが、当連結会計年度において重大事故の発生はありませんでした。引き続き工事の安全が何よりも優先するということを常に強く認識し、全国すべての現場において安全施工を徹底していきます。
セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりです。
<橋梁事業>大型プロジェクト発注の端境期に当たったことから特に新設橋梁について大規模案件が少なく、厳しい受注環境となりました。そのため国土交通省と高速道路会社からの受注は減少となりましたが地方自治体と民間からの受注を伸ばすことができ、一定の受注量(694億円・前期比223億3千万円減)を確保することができました。橋梁事業の売上高812億3千万円(前期比78億3千万円増)は過去最高となり、採算が悪化する工事が少なく4期連続で増加しておりました工事損失引当金も減少に転じましたため、営業利益も83億1千万円(同22億8千万円増)となりました。想定以上の追加工事費の獲得により過去最高となった前々期の営業利益(85億1千万円)には僅かに届きませんでしたが、過去2番目の成績となりました。
<エンジニアリング関連事業>システム建築事業については、受注高は375億2千万円(前期比34億4千万円減)に止まり、売上高も381億4千万円(同18億円減)と減収になりました。これは前期の第2四半期に受注が処理能力を超え、外注費の急増、生産工程の混乱などが生じたことの影響が当期にも及んだためです。前期第3四半期から受注の抑制と価格の見直しを行い、並行して工程管理・損益管理をはじめとする管理手法の見直し、組織の再編などを進め、また新工場(千葉県茂原市)の稼働開始を急ぎました。結果的に損益の回復には1年近くを要したことになりますが、新工場稼働と価格見直しの効果により当下半期からの採算が大きく改善し、前期に対し増益とすることができました。
土木関連事業については減収減益となりましたが、これはシールドトンネル用セグメントの生産量がトンネル工事の進捗で決まるためであり、想定通りの結果です。建築機鉄事業についても減収となりましたが、利益については「2020年東京五輪」に関連するプロジェクトの竣工が集中したため、追加工事費の獲得が重なり増益となりました。
以上の結果エンジニアリング関連事業全体の業績は売上高529億3千万円(同104億6千万円減)営業利益48億9千万円(同5億1千万円増)となりました。
<先端技術事業>先端技術事業については精密機器製造事業の受注は低迷が続き、第3四半期から回復の兆しが見え始めましたものの前期を下回りました。情報処理事業については道路橋示方書改定に伴う橋梁設計関連の需要が前期に続き堅調で、横這いで推移しました。以上の結果、先端技術事業全体の業績は売上高32億9千万円(前期比11億5千万円減)、営業利益4億円(同4億6千万円減)となりました。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況の分析・検討内容は「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に含めて記載しております。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性について、当社グループの主な資金需要は材料費、外注費、労務費、工場並びに現場の直接経費・間接経費などの運転資金と工場生産設備を中心とする設備投資資金です。資金調達はフリー・キャッシュフロー及び間接調達で確保しております。また、長期大型工事の竣工間際など一時的に立替額が大きくなる場合に備え、コミットメントライン契約と当座貸越契約により財務の安定性及び流動性を補完しております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しておりますが、そのうち「(3)重要な引当金の計上基準 ③工事損失引当金」について、以下に補足します。
工事損失引当金は受注工事の将来の損失発生に備えるため、当連結会計年度末における手持工事のうち、翌期以降の損失発生が確実であり、かつ損失額を合理的に見積ることが可能な工事について、その損失見込額を計上しています。但し当社グループの主力事業である鋼橋は一般的に施工条件が厳しく、難易度の高い工事が多いことなどから、着手後の施工方法の見直し、施工用設備の追加、条件変更に係る求償交渉の成否の状況などにより、損失見込額を当期末の最善の見積りにより洗替えしております。当社グループの営業利益はこのような工事毎の工事損失引当金の増減の影響を受けております。
新型コロナウイルス感染症拡大に伴う影響については、現時点では軽微であると考え、当期の会計上の見積りには織り込んでいません。