有価証券報告書-第157期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/25 11:36
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145項目
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
①財政状態及び経営成績の状況
a.経営成績の状況
当期における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響により急速に悪化した後、製造業を中心とした企業収益や個人消費に回復の動きが見られるなど持ち直していましたが、緊急事態宣言の再発令を受けて期末に向けて弱含む展開となりました。
建設市場については、土木分野は高い水準の公共投資に支えられ堅調に推移しましたが、建築分野は企業収益の悪化による設備投資の減退が影響し伸び悩む動きとなりました。
このような状況の下、当期の受注高は過去最高の1,896億4千万円(前期比653億2千万円増)となりました。業績については、売上高は1,360億9千万円(同20億5千万円減)となりました。営業利益は159億6千万円(同30億8千万円増)、経常利益は160億9千万円(同31億2千万円増)、親会社株主に帰属する当期純利益は112億8千万円(同22億8千万円増)となり、各利益の数値は過去最高を更新しました。
セグメントごとの経営成績は以下のとおりです。
(橋梁事業)
国内橋梁事業は、新設橋梁の発注量が持ち直し、大型の保全工事も多く発注されました。このような状況の下、当社グループは国内新設橋梁、保全工事ともに高速道路の4車線化や大規模更新・修繕工事などの大型案件を受注できましたことから、橋梁事業全体の受注高は1,275億3千万円(前期比581億2千万円増)と過去最高を更新しました。主な受注工事といたしましては、新設工事は、関東地方整備局・本線第4橋(横浜環状南線)、東日本高速道路・牛久高架橋、下万田高架橋、横町高架橋、中日本高速道路・根尾川橋他2橋、西日本高速道路・沖新高架橋他1橋、埼玉県道路公社・三郷流山橋、山梨県・濁川・平等川橋、愛知県・新濃尾大橋A1―P5、東日本旅客鉄道・品川駅北口広場整備鉄骨製作運搬3など、保全工事は、東日本高速道路・メップ川橋補修、越河橋床版取替、阿能川橋床版取替、西日本高速道路・中国池田インターチェンジ~宝塚インターチェンジ間橋梁更新、西段橋他1橋耐震補強、大豊インターチェンジ~南国インターチェンジ間耐震補強Ⅰ(その2)、関門橋主ケーブル改良などです。
業績については、売上高は824億4千万円(同12億1千万円増)、営業利益は114億3千万円(同31億1千万円増)となり、過去最高を更新しました。これは、複数の長期大型工事の竣工時精算の獲得が重なったことや工事損失引当金の順当な減少が寄与したためです。主な売上工事といたしましては、新設工事は、北陸地方整備局・猪谷橋、関東地方整備局・潮来佐原線橋、四国地方整備局・新町川橋、東日本高速道路・阿武隈大橋、末続川橋、白岩川橋、中日本高速道路・新駒門東第二橋、新駒門東第三高架橋、名古屋西ジャンクション、春田野第二高架橋他7橋、西日本高速道路・日高川橋他3橋、井出口高架橋、川崎市・羽田連絡道路橋、鉄道・運輸機構・福井橋りょうなど、保全工事は、近畿地方整備局・淀川大橋床版取替、東日本高速道路・宮城白石川橋床版取替、首都高速道路・上部工補強工事2-204、西日本高速道路・大豊インターチェンジ~南国インターチェンジ間耐震補強Ⅰ、関門橋中央径間補剛桁補修などが売上に立ちました。
(エンジニアリング関連事業)
エンジニアリング関連事業の受注については、システム建築事業の受注はコロナ禍が長期化する中、一部案件の先送りや見直しの影響により低迷を余儀なくされましたが、建築機鉄事業において海外大型工事を受注することができましたため、事業全体の受注高は571億9千万円(前期比60億2千万円増)と前期を上回りました。
業績については、システム建築事業の受注が伸び悩んだため、売上高は483億2千万円(同46億1千万円減)、営業利益は45億3千万円(同3億5千万円減)に止まりました。
(先端技術事業)
先端技術事業については、精密機器製造事業の受注が好調であったため、受注高は49億1千万円(前期比11億6千万円増)と増加しました。業績については、受注の増加により売上高は46億7千万円(同13億8千万円増)、営業利益は9億円(同5億円増)と、何れも前期を上回りました。
(不動産事業)
不動産事業については、売上高は6億4千万円(前期比4千万円減)、営業利益は3億8千万円(同2千万円減)となり、当期も安定的な収入と利益を確保しました。
b.財政状態の状況
当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末に比べ171億1千万円増加し、1,696億9千万円となりました。流動資産は、「受取手形・完成工事未収入金等」が増加したこと等により107億4千万円増加し1,046億3千万円となりました。固定資産は、株価の上昇等により投資その他の資産が増加したこと等により63億7千万円増加し650億6千万円となりました。
負債は、前連結会計年度末に比べ52億1千万円増加し、657億4千万円となりました。その主な要因は、「支払手形・工事未払金等」が減少し、「短期借入金」や「未払法人税等」が増加したことによるものです。
純資産は、前連結会計年度末に比べ118億9千万円増加し、1,039億4千万円となりました。その主な要因は、「親会社株主に帰属する当期純利益」を計上したことによるものです。この結果、自己資本比率は59.6%となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べて31億4千万円減少し、195億9千万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、獲得した資金は1億9千万円(前連結会計年度は91億6千万円の獲得)となりました。これは、主に税金等調整前当期純利益の計上および受取手形及び完成工事未収入金等が増加したことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、使用した資金は59億8千万円(前連結会計年度は87億6千万円の使用)となりました。これは、主に生産設備の増強を目的とした有形固定資産の取得を行なったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、獲得した資金は26億1千万円(前連結会計年度は21億円の使用)となりました。これは、主に短期借入を行なったことによるものです。
なお、当社グループのキャッシュ・フロー指標のトレンドは下記のとおりです。
回次第153期第154期第155期第156期第157期
決算年月2017年3月期2018年3月期2019年3月期2020年3月期2021年3月期
自己資本比率53.3%54.4%56.3%58.6%59.6%
時価ベースの
自己資本比率
41.7%64.2%52.6%53.4%49.8%
キャッシュ・フロー対有利子負債比率-年0.5年2.8年1.3年85.0年
インタレスト・
カバレッジ・レシオ
-倍263.9倍56.9倍138.1倍1.9倍

※ 自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
a.いずれも連結ベースの財務数値により計算しています。
b.株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式総数(自己株式控除後)により算出しています。
c.営業キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しています。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としています。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しています。
d.2017年3月期の「キャッシュ・フロー対有利子負債比率」および「インタレスト・カバレッジ・レシオ」については、営業キャッシュ・フローがマイナスのため、記載していません。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと次のとおりです。
セグメントの名称数 量
(トン)
前年同期比
(%)
金 額
(百万円)
前年同期比
(%)
橋梁事業45,23177.882,442101.5
エンジニアリング関連事業68,07390.848,32191.3
先端技術事業--4,679142.2
合計113,30485.1135,44398.5

(注)1.金額は販売価格によっており、セグメント間取引については、相殺消去しています。
2.金額は、消費税等を除いて記載しています。
b.受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと次のとおりです。
セグメントの名称受注高受注残高
数量
(トン)
前年同期比
(%)
金額
(百万円)
前年同期比(%)金額
(百万円)
前年同期比
(%)
橋梁事業53,007109.5127,532183.8146,632144.4
エンジニアリング関連事業65,91893.157,197111.852,673120.3
先端技術事業--4,916131.21,740115.7
合計118,92699.7189,647152.5201,046136.9

(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しています。
2.金額は、消費税等を除いて記載しています。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと次のとおりです。
セグメントの名称金 額
(百万円)
前年同期比
(%)
橋梁事業82,442101.5
エンジニアリング関連事業48,32191.3
先端技術事業4,679142.2
不動産事業64793.9
合計136,09198.5

(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しています。
2.金額は、消費税等を除いて記載しています。
3.前連結会計年度および当連結会計年度において、主要な販売先に該当するものはありません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりです。
(財政状態)
総資産は1,696億9千万円(前期末比171億1千万円増)となりました。そのうち流動資産である受取手形・完成工事未収入金等が801億1千万円(同144億5千万円増)と大きく増加しましたが、これは主に当連結会計年度末近くに複数の長期大型工事が竣工したためです。負債合計は前期末から52億1千万円増加し657億4千万円となりました。これは主に短期借入金(同40億円増)が増加したためです。純資産は利益の獲得により過去最高の1,039億4千万円(同118億9千万円増)となり、当社グループとして初めて1,000億円を超えました。自己資本比率は59.6%(前期末は58.6%)となり、十分な水準にあると考えております。
(経営成績)
受注高は1,896億4千万円(前期比653億2千万円増)、売上高は1,360億9千万円(同20億5千万円減)、営業利益は159億6千万円(同30億8千万円増)、経常利益は160億9千万円(同31億2千万円増)、親会社株主に帰属する当期純利益は112億8千万円(同22億8千万円増)となりました。前期を初年度とする3ヶ年の第5次中期経営計画では、最終年度の売上高1,600億円、営業利益140億円を目標としており、営業利益については2年目で達成することができました。
受注高については高速道路の大規模更新工事の受注などにより過去最高を大幅に更新しました。業績についてはシステム建築事業が新型コロナウイルス感染症の影響により伸び悩んだものの、橋梁事業が想定以上の好業績となり、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益はそれぞれ過去最高を更新しました。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える最大の要因は重大事故の発生ですが、当連結会計年度におい
て重大事故の発生はありませんでした。引き続き工事の安全が何よりも優先するということを常に強く認識
し、すべての現場において安全施工を徹底していきます。
セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりです。
<橋梁事業>高速道路の大規模更新・大規模修繕工事の受注が本格化する中、高速道路の4車線化による新設橋梁の発注などで受注環境は前期に比べ改善し、当社グループの受注高は過去最高を大きく更新する1,275億3千万円(前期比581億2千万円増)となりました。特に西日本高速道路・中国池田インターチェンジ~宝塚インターチェンジ間橋梁更新工事は当社グループとして過去最大規模の受注となりました。業績についても売上高は824億4千万円(同12億1千万円増)、営業利益は114億3千万円(同31億1千万円増)となり、過去最高を更新しました。これは、複数の長期大型工事の竣工時精算の獲得が重なったことや工事損失引当金の順当な減少が寄与したためです。
<エンジニアリング関連事業>エンジニアリング関連事業の受注高は571億9千万円(前期比60億2千万円増)、売上高は483億2千万円(同46億1千万円減)、営業利益は45億3千万円(同3億5千万円減)となりました。
そのうちシステム建築事業については、コロナ禍が長期化する中、案件の先送りや見直しの影響により受注
高は372億5千万円(前期比2億6千万円減)に止まりました。売上高も334億5千万円(同46億8千万円減)
と落ち込んだため新工場稼働等に伴い増加した固定費の負担が大きくなりましたものの、その一方で生産性の
向上・管理手法の見直し等も奏功したため、一定の利益を確保することができました。
シールドトンネル用セグメント関係につきましてもトンネル工事の進捗が遅れ気味となり伸び悩みました。
そのような中、第2四半期に受注した香港 カイタックスポーツパーク 開閉屋根駆動システム工事が業績の
下支えとなりました。
<先端技術事業>先端技術事業については、前第4四半期頃から回復した精密機器製造事業の受注により、受注高は49億1千万円(前期比11億6千万円増)と増加しました。業績については、受注の増加により売上高は46億7千万円(同13億8千万円増)、営業利益は9億円(同5億円増)と、何れも前期を上回りました。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況の分析・検討内容は「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に含めて記載しております。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性について、当社グループの主な資金需要は材料費、外注費、労務費、工場並びに現場の直接経費・間接経費などの運転資金と工場生産設備を中心とする設備投資資金です。資金調達はフリー・キャッシュフロー及び間接調達で確保しております。また、長期大型工事の竣工間際など一時的に立替額が大きくなる場合に備え、コミットメントライン契約と当座貸越契約により財務の安定性及び流動性を補完しております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。