有価証券報告書-第52期(令和2年5月21日-令和3年5月20日)

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2021/08/10 11:18
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(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
1)財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染症の拡大によって大きな影響を受ける中、中国の市況が早期回復し、その他地域においても徐々に事業環境が改善しつつあります。また、各国で経済活動再開に向けたワクチン接種が広がりつつあります。しかしながら、依然として新型コロナウイルス感染症再拡大への懸念や米中関係の停滞による影響等、先行きは不透明な状況であります。
エレクトロニクス業界におきましては、自動車やスマートフォン向け需要の回復や、リモートワークの普及・外出制限による巣ごもり消費等でデータセンターやゲーム機器関連の需要が増加しました。また、これらの需要増加による世界的な半導体需要の高まりから、半導体製造・増産を目的とした設備投資が急速に進みました。
このような情勢の中で当社グループは、新型コロナウイルス感染症の影響によりお客様への訪問営業が制限される中、電話・メール・ウェブを使った拡販活動に注力してまいりました。
新製品につきましては、IoT用途に対応した一般産業機器向けの小型・高効率AC-DC電源「PCA1500F」、小型力率改善回路内蔵AC入力パワーモジュール電源「TUNS1200F」、小型基板単体マルチスロットタイプAC-DC電源「RBC300F」、小型高絶縁DC-DCコンバータ「MHシリーズ」2モデル、単相交流入力用ノイズフィルタ「NACシリーズ」電流拡充3モデルをそれぞれ市場投入いたしました。また、海外市場向けに医用電気機器規格に対応した、ユニット型シングル出力AC-DC電源「PJMAシリーズ」2モデル、ユニット型AC-DC電源「WMAシリーズ」2モデルをそれぞれ市場投入いたしました。
生産面では、前期から継続して新型コロナウイルスの感染予防に努めるとともに、先行きの不透明感から増加している先行受注への対応として、部材の安定調達及び生産能力の増強を進めてまいりました。
この結果、当連結会計年度の経営成績につきましては、受注高は281億37百万円(前年同期比6.4%増)、売上高は270億20百万円(同13.2%増)となりました。利益面におきましては、売上高の増加、経費削減活動の効果や新型コロナウイルス感染症の影響による経費支出の先送りに加え、為替差益を計上したことにより、経常利益は34億32百万円(同109.7%増)となりました。また、当社連結子会社であるPowerbox International AB(本拠地:スウェーデン)においては、新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、同社買収時に計上した無形固定資産の一部を減損処理し、減損損失10億97百万円を計上しております。これにより、親会社株主に帰属する当期純利益は10億77百万円(同254.5%増)となりました。
セグメントの経営成績は、以下のとおりであります。
① 日本生産販売事業
日本国内では、前第4四半期からの新型コロナウイルス感染症の感染拡大を見越した先行発注による受注急増の反動として、顧客・販売店の在庫及び発注調整があり、第2四半期までの需要は全体的に低調だったものの、それ以降は半導体製造装置関連需要の急回復に加え、第4四半期からはFA関連需要も同様に急回復しました。また、通信分野においては5G関連投資需要が堅調に推移しました。
営業活動につきましては、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、当社が重視してきた訪問面談が制限される中、販売店との情報共有強化を図り、お客様とのウェブ面談やメールを中心とした拡販活動に取り組んでまいりました。
この結果、前期末の先行発注による受注残の消化もあり、外部顧客への売上高は、171億38百万円(前年同期比14.5%増)、セグメント利益は29億37百万円(同85.2%増)となりました。
② 北米販売事業
米国では、新型コロナウイルス感染症拡大の影響による需要の減少を、FAや半導体製造装置関連の需要で補い、好調に推移しました。
営業活動につきましては、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により活動が制限される中、ウェブやメールを中心にファクトリーレップとの連携を図りつつ、拡販活動に注力してまいりました。新製品につきましては、動画を用いてプロモーション強化に取り組んでまいりました。
この結果、外部顧客への売上高は、20億53百万円(前年同期比17.5%増)、セグメント利益は2億12百万円(同89.1%増)となりました。
③ ヨーロッパ生産販売事業
ヨーロッパでは、新型コロナウイルス感染症の再拡大の影響を受け、需要が低迷しました。スウェーデンに本拠点を置くPowerbox社のカスタム電源ビジネスにおいては、下半期からFA、医療、計測機器関連需要の回復傾向がみられたものの、全体としてはヨーロッパ経済の低迷を受け、低調に推移しました。
営業活動につきましては、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により自由な移動ができない中、テレワーク中心になっており、ウェブを使った拡販活動に注力してまいりました。
この結果、外部顧客への売上高は、49億8百万円(前年同期比3.5%減)、セグメント損失は4億65百万円(前年同期はセグメント損失4億1百万円)となりました。
④ アジア販売事業
アジアでは、中国においては早期に経済活動を再開し、生産活動や投資活動が回復したこともあり、FAや医療機器関連の需要が堅調に推移しました。また、下半期から韓国を中心に半導体製造装置関連の需要が回復しました。
営業活動につきましては、新型コロナウイルス感染症の影響により、電話・メール・ウェブを使った拡販活動が中心になっており、特に新規開拓のためのウェブマーケティングに注力しております。
この結果、外部顧客への売上高は、29億19百万円(前年同期比41.8%増)、セグメント利益は1億52百万円(同197.4%増)となりました。
⑤ 中国生産事業
中国生産事業におきましては、新製品の立上げを推進してまいりました。また、既存製品の生産能力向上のため、増員及び生産設備の増強を進めております。なお、新型コロナウイルス感染症による中国市場への影響が早期に解消したこともあり、受注・出荷は増加傾向にあります。
この結果、セグメント間の内部売上高は、13億87百万円(前年同期比20.3%増)、セグメント利益は1億38百万円(同31.9%減)となりました。
財政状況につきましては、当連結会計年度末の総資産は、現金及び預金、売上債権、有価証券、たな卸資産が増加した一方で、有形固定資産及びのれん等の無形固定資産、投資有価証券が減少したことにより、前連結会計年度末に比べ22億14百万円増加し、445億6百万円となりました。負債の部では、買掛金、未払金、未払法人税等の増加により前連結会計年度末に比べ11億31百万円増加し、51億52百万円となりました。純資産の部では、利益剰余金、為替換算調整勘定の増加により前連結会計年度末に比べ10億83百万円増加し、393億54百万円となりました。この結果、自己資本比率は88.3%(前連結会計年度末は90.4%)となりました。
2)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ46億88百万円増加し、129億62百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、24億36百万円(前年同期比19.4%減)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益24億76百万円に加え、減価償却費12億49百万円、減損損失10億97百万円を計上した一方で、為替差益4億49百万円、売上債権の増加額9億31百万円、たな卸資産の増加額5億24百万円、法人税等の支払額4億24百万円があったこと等を反映したものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果得られた資金は、27億29百万円(前年同期は得られた資金2億19百万円)となりました。これは主に、投資有価証券の償還による収入33億円があった一方で、有形固定資産の取得による支出6億円があったこと等を反映したものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、8億16百万円(前年同期比55.3%減)となりました。これは主に、配当金の支払額7億62百万円があったこと等を反映したものであります。
3)生産、受注及び販売の実績
当連結会計年度の生産実績、受注実績及び販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
a.生産実績
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2020年5月21日
至 2021年5月20日)
前年同期比(%)
日本生産販売事業(千円)21,637,586120.0
北米販売事業(千円)--
ヨーロッパ生産販売事業(千円)3,733,41898.0
アジア販売事業(千円)--
中国生産事業(千円)1,737,003148.6
合計(千円)27,108,008117.8

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.金額は販売価額によっております。
3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
b.受注実績
セグメントの名称受注高(千円)前年同期比
(%)
受注残高(千円)前年同期比
(%)
日本生産販売事業17,371,969102.44,527,681105.4
北米販売事業2,018,128120.0492,02893.2
ヨーロッパ生産販売事業5,954,613111.13,887,167133.4
アジア販売事業2,792,336114.7551,02581.6
中国生産事業----
合計28,137,047106.49,457,903112.4

(注)1.金額は販売価額によっております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
c.販売実績
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2020年5月21日
至 2021年5月20日)
前年同期比(%)
日本生産販売事業(千円)17,138,178114.5
北米販売事業(千円)2,053,911117.5
ヨーロッパ生産販売事業(千円)4,908,70396.5
アジア販売事業(千円)2,919,951141.8
中国生産事業(千円)--
合計(千円)27,020,744113.2

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.前連結会計年度及び当連結会計年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先前連結会計年度
(自 2019年5月21日
至 2020年5月20日)
当連結会計年度
(自 2020年5月21日
至 2021年5月20日)
金額(千円)割合(%)金額(千円)割合(%)
㈱リョーサン3,445,76514.44,753,13417.6

3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
1)重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。その作成に当たりましては、資産・負債及び収益・費用の報告数値に影響を与える見積りを必要とします。そのため、これらの見積りについては過去の実績や状況に応じ、合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積りに不確実性があるため異なる場合があります。特に次の重要な会計方針が、連結財務諸表の作成において使用される判断と見積りに重要な影響を及ぼすと考えております。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響は経済や社会、企業活動に広範な影響を及ぼす事象であり、今後の感染症拡大や収束時期、その影響の程度を合理的に予測することは困難な状況にあります。
当社グループは、感染症の影響につきましては、ワクチン接種の進展により、翌連結会計年度の前半には経済環境が回復に向かうとの仮定に基づき見積りを行っております。
① のれん等無形固定資産の減損処理
当社グループは、減損会計の対象となるのれん、技術資産及び顧客関連資産を有しております。今後、市場の動向や業績の状況に基づき見積られた将来キャッシュ・フローの総額の見積りが、帳簿価額を下回った場合に、減損損失の計上が必要になる可能性があります。
なお、2018年6月に連結子会社化した Powerbox International ABの株式取得の際に計上した無形固定資産(のれん、技術資産及び顧客関連資産)合計額は35億36百万円であり、定額法により償却を行っております。
当連結会計年度において、Powerbox International AB は、新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、営業活動の制限や顧客からの納期調整などにより、業績が低迷したことに加え、のれん、技術資産、顧客関連資産の償却負担により連続して営業損失を計上したことから、減損損失の認識の要否について検討を行った結果、見積られた割引前将来キャッシュ・フローの総額が同社に関する固定資産の帳簿価額を下回ったことから、減損損失10億97百万円を計上しました。
これら無形固定資産の当連結会計年度末の帳簿価額合計は14億80百万円であり、今後、現時点の事業計画に比べ同社の業績が低調に推移した場合、減損損失の計上が必要になる可能性があります。
② 有価証券の減損処理
当社グループは、金融機関や販売又は仕入先の株式等を保有しております。これらの株式等は株式市場等の価格変動や投資先の業績悪化等による実質価額変動のリスクを負っており、投資価値が50%以上下落した場合、投資の減損を計上しております。将来の市況悪化又は投資先の業績不振により、現在の簿価に反映されていない損失又は簿価の回収不能が生じた場合、評価損の計上が必要となる可能性があります。
③ 繰延税金資産の回収可能性の評価
当社グループは、将来の課税所得を合理的に見積り、繰延税金資産の回収可能性を評価しております。その見積りにより全部又は一部が回収できないと判断した場合には繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。
④ 退職給付費用
当社の従業員退職給付費用及び債務は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されております。これらの前提条件には、割引率、将来の報酬水準、退職率、直近の統計数値に基づいて算出される死亡率及び年金資産の長期収益率などが含まれます。実際の結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、翌期において認識される費用及び計上される債務に影響を及ぼします。
期待運用収益率と実際の結果が異なる場合、又は予定利率等前提条件が変更された場合、その影響は累積され、将来にわたって規則的に認識されるため、将来期間において認識される費用及び計上される債務に影響を及ぼします。
2)当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
売上高:270億20百万円(前期比13.2%増)、経常利益:34億32百万円(同109.7%増)、売上高経常利益率は12.7%(前期:6.9%、5.8ポイント上昇)、親会社株主に帰属する当期純利益は10億77百万円(同254.5%増)となりました。
① セグメント別業績
「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 1)財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
② 売上原価、売上総利益
前連結会計年度に比べ材料費等の変動費比率が0.2ポイント改善したことに加え、労務費や減価償却費、製造経費など固定費比率が2.4ポイント低下したことにあり、売上原価率が2.6ポイント改善しました。その結果、売上総利益率は30.7%(前期28.1%)となりました。
③ 販売費及び一般管理費、営業利益
前連結会計年度末に比べ、人件費が72百万円、減価償却費及びのれん等の償却が36百万円、その他経費が1億11百万円増加したことにより、販売費及び一般管理費は2億32百万円増加しました。この結果、売上高営業利益率は11.2%(前期7.0%)となりました。
④ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループでは、生産活動に必要となる運転資金、販売費及び一般管理費等の営業活動費用、研究開発費によるものの他、投資活動において、生産設備の増強、新製品開発等を目的とした設備投資を適宜行う予定としております。
これらの資金に対しましては、自己資本比率が88.3%と十分な資本を維持しているため、自己資金にて充当する方針であります。今後も安定した収益基盤を確立し、一層の利益追求に取り組んでまいります。
3)経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、長期的財務目標として、連結ROE、連結ROAが安定的に二桁を維持できる経営体質を目指しており、第9次中期経営計画において、最終年度である2022年度の数値目標値「連結売上高300億円、連結営業利益45億円」を掲げ、連結ROE 8.0%以上、連結ROA 11.0%以上を目指し、持続的成長と企業価値向上を実現すべく経営体質の改善に取り組んでまいります。