有価証券報告書-第40期(令和2年3月1日-令和3年2月28日)
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度の末日現在において判断したものであります。
(1)経営成績の状況
①連結経営成績の状況
当連結会計年度における当社を取り巻く経営環境は、期初より新型コロナウイルス感染症の世界的な流行により、当社が事業を展開する多くの国・地域において緊急事態宣言や活動制限が発出される等、一定期間の休業や自粛を余儀なくされました。2020年中盤からは徐々に経済活動が再開され、防疫措置をとりながら事業活動を並走させる状態が継続しました。しかしながら、年末には一部の国・地域において感染者数が再拡大し、一度緩和された活動制限を再び厳格化する措置がとられました。2021年に入り、2月頃より各国において、医療従事者等から順次ワクチン接種が開始され、経済活動再開が期待されるものの、国民全体の接種までには時間を要することや、変異株が拡大の様相を呈する等、新型コロナウイルス感染症の収束が未だ見通せない状況が継続しています。
このような経営環境の中、当社は、イオングループがお客さま及び従業員の安全・安心を守るための防疫基準として、2020年6月に制定(11月一部改定)した「イオン新型コロナウイルス防疫プロトコル」に従い、徹底した防疫措置の下、可能な限り事業活動の継続に努めました。新型コロナウイルス感染症の影響によって変化したお客さまの生活・行動様式に対応するため、従前から取り組んできたグループを挙げてのデジタルトランスフォーメーション(DX)や事業の効率化、新たな収益機会の創出に向けたビジネスモデルの変革への取り組みを加速しました。また、リモートワークやサテライトワーク等による従業員の働き方改革に取り組み、コロナ禍においても事業継続を可能とする体制を構築しました。
さらに、食品や日用品等生活必需品を取扱うイオングループ小売業やECチャネル、公共交通機関等の大手優良企業との提携を強みとする当社ならではの顧客基盤を活用し、利便性の高い決済手段をご提供するとともに、審査の高度化やマーケティング手段の多様化に取り組み、新たな顧客層を拡大しました。
当連結会計年度は、新型コロナウイルス感染症の影響に伴い、消費活動が抑制されたことから、カード取扱高が減少したことに加え、各国現地当局による返済猶予や給付金の支給等、政府の国民生活支援策により、キャッシングやローン等への資金需要が低下したこと等により、手数料収益が前期実績を下回りました。一方、2020年3月31日に子会社化したイオン・アリアンツ生命保険株式会社の損益計算書を第2四半期連結累計期間より取り込んだことにより、連結営業収益については4,873億9百万円(前年同期比6.6%増)となりました。連結営業利益は、上期において将来の貸倒増加に備えた貸倒引当金を積み増したことにより、貸倒引当金繰入額が増加したことや、利息返還損失引当金繰入額が増加したこと等により406億51百万円(前年同期比37.5%減)、経常利益は402億38百万円(前年同期比38.8%減)となりました。特別損失として、新型コロナウイルス感染症への防疫措置のための備品費用等4億36百万円を計上しました。また、第3四半期にマレーシアの現地法人AEON Credit Service(M)Berhad(以下、ACSM)が、2017年11月より現地税務当局と係争中となっていた追徴課税96百万リンギットについて、10百万リンギットで和解合意しました。これらの結果、親会社株主に帰属する当期純利益は176億93百万円(前年同期比48.2%減)となりました。
当社は前事業年度より決算期を3月期から2月期に変更しました。これにより、当連結会計年度(2020年3月1日~2021年2月28日の12ヵ月)の比較対象となる前年同期は、連結会計年度(2019年4月1日~2020年2月29日の11ヵ月)となります。また、参考数値として2019年3月から2020年2月の12ヵ月間合計の実績を「前年同期間」として記載しております。
なお、中期経営計画<2021年度~2025年度>においては営業収益、営業利益、営業利益率(国内:国際)を経営指標と定めており、上記取り組みに係る2020年度実績数値は、以下のとおりです。
※本社・機能会社を除く、国内及び国際の単純合算数値より算出
②セグメントの状況
国内リテール事業は、カードキャッシングや住宅ローン等の営業債権残高が順調に増加したことに加え、低利で安定した資金調達やリスクアセットの削減を目的とした債権流動化の実施により、営業収益2,302億51百万円(前年同期比23.5%増)、営業利益46億48百万円(同69.0%減)となりました。
国内ソリューション事業は、キャッシングを中心とした融資収益等の減少をカードショッピングやWAONの加盟店収益の増加でカバーした一方、上期において、将来に亘る既存債権の貸倒増加に備えた貸倒引当金を積み増し、貸倒引当金繰入額が増加したこと等により、営業収益1,827億18百万円(前年同期比0.6%増)、営業利益166億15百万円(同29.8%減)となりました。
中華圏のセグメント業績については、カードショッピングやキャッシング取扱高の減少に加え、営業債権残高の減少により、手数料や金利収益が減少し、営業収益155億67百万円(前年同期比17.7%減)、営業利益45億45百万円(同23.4%減)となりました。
メコン圏のセグメント業績については、タイ政府による上限金利引下げに伴う金利収益の減少や、カードキャッシング、個人ローンの営業債権残高の減少に伴う金利収益の減少により、営業収益738億83百万円(前年同期比12.2%減)、営業利益107億6百万円(同37.2%減)となりました。
マレー圏のセグメント業績については、新型コロナウイルス感染症の影響により、活動制限期間中に加盟店が閉鎖したことや、審査基準の厳格化等に伴う営業債権残高の減少により、営業収益476億80百万円(前年同期比8.2%減)、営業利益41億78百万円(同33.8%減)となりました。
(2)財政状態の状況
資産の部、負債の部、純資産の部における主な増減内容は次のとおりであります。
(資産の部)
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末より3,423億50百万円増加し、6兆1,237億21百万円となりました。これは住宅ローンの取扱高が伸びたことにより、銀行業における貸出金が3,235億93百万円増加したこと、及び銀行業における有価証券が717億94百万円増加した一方で、新型コロナウイルス感染症の影響による経済活動の停滞により、営業貸付金が776億56百万円減少したこと等によるものです。
(負債の部)
負債合計額は、前連結会計年度末より3,267億58百万円増加し、5兆6,490億53百万円となりました。これは普通預金口座の獲得強化により、預金が2,284億25百万円増加したこと、及び第1四半期連結会計期間よりイオン・アリアンツ生命保険株式会社を新規連結対象に含めたことにより、保険契約準備金を計上したこと等によるものです。
(純資産の部)
純資産合計額は、前連結会計年度末より155億92百万円増加し、4,746億67百万円となりました。これは利益剰余金が配当金の支払いにより107億90百万円減少した一方、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により176億93百万円増加したこと等によるものです。
(3)資本の財源及び資金の流動性についての分析
①キャッシュ・フロー
当連結会計年度における当社グループの資金状況についてみますと、営業活動によるキャッシュ・フローは、住宅ローンの取扱いが増加したことに伴い銀行業における貸出金が増えたこと、及びコマーシャル・ペーパーの償還等により、前連結会計年度と比較して2,899億35百万円減少し、622億82百万円の収入となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有価証券の売却・償還による収入が増えたこと等により、前連結会計年度と比較して828億81百万円増加し、945億57百万円の支出となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度において劣後特約付社債の償還、及び転換社債型新株予約権付社債の償還を実施していたため、前連結会計年度と比較して746億86百万円増加し、143億54百万円の支出となりました。
以上の結果により、現金及び現金同等物の期末残高は前連結会計年度と比較して466億69百万円減少し、6,667億38百万円となりました。
②資金需要
当社グループの資金活動における運転資金需要の主なものは、個人向けの金融サービスの提供に係る、お客さま利便性向上のためのシステム、IT、デジタル化投資や個人向け貸出金等であります。
③財務政策と資金調達
当社は業容拡大と効率化に向けた投資と株主の皆さまに対する株主還元に関して適正な利益配分のため、内部留保、投資資金、配当金をそれぞれ三分の一ずつ配分する旨を基本的な考え方としてまいりました。今後もこの考え方に則りながら、業容拡大のための戦略や社会環境の変化によって柔軟に対応してまいります。
資金調達においては、円滑な事業運営のための流動性の確保と財務の健全性・安定性維持を調達の基本方針としております。当社からの貸付による子会社資金調達の一元化や、調達期間の長期化、調達手法の多様化等により、手元流動性と財務安定性を確保することに注力しています。
国内各社は当社の信用力を活かした直接調達へシフトする一方、間接調達の空き枠は今後の事業拡大に備え、海外子会社へ振り分けます。コマーシャル・ペーパーによる調達は連結借入総額の10%程度とし、資金調達の直接間接比率は50%:50%、長期短期比率は65%:35%のバランスを目指します。さらに資産の信用力を活かした債権流動化による資金調達も実施し、調達の多様化に加え、資産効率性の向上を図ります。
また当社グループは国内2社の格付機関から格付を取得しており、本報告書提出時点において、日本格付研究所の格付はA(安定的)、格付投資情報センターの格付はAマイナス(安定的)となっております。また主要な金融機関とは良好な関係を維持していることから、引き続き、業容拡大や投資、運転資金の調達に対して安定的な外部資金調達が可能であると認識しております。
(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
(貸倒引当金)
当社グループの連結財務諸表における貸倒引当金の計上基準は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項) 4.会計方針に関する事項 (5)貸倒引当金の計上基準」に記載しておりますが、計上に当たって下記の重要な会計上の見積りを用いていることから、その不確実性及び変動により、当社グループの経営成績等に影響を与える場合があります。
・新型コロナウイルス感染症の影響に関する会計上の見積り
当社グループにおいては、新型コロナウイルスの感染拡大の影響について、主として収束時期を当連結会計年度末頃と想定し、一部の国における返済猶予債権等については、翌期の第2四半期頃まで影響が継続するものと仮定して貸倒引当金の見積りを行っていました。
しかしながら、当連結会計年度末においては当該返済猶予債権等に係る回収状況から、第3四半期時点の想定より影響の収束に時間を要すると仮定しています。当該仮定に基づき、一部の国における返済猶予債権等に対して将来の信用リスクの増加を見込み、貸倒引当金の見積りに含めています。
なお、当該金額は現時点の最善の見積りであるものの、見積りに用いた仮定の不確実性は高く、新型コロナウイルスの感染状況やその経済環境への影響が変化した場合には、翌期以降の四半期連結財務諸表及び連結財務諸表において当該貸倒引当金は増減する可能性があります。
(5)社会貢献、環境保全活動
当社は、イオングループの一員として、「金融サービスを通じ、お客さまの未来と信用を活かす生活応援企業」という経営理念のもと、事業を通じた社会課題の解決に努めております。これを実現するため、イオンのCSR活動に参画するとともに、法令遵守に留まらず、コンプライアンス意識が海外子会社を含めグループ各社の事業活動の第一線まで広く浸透し、確実に遵守されるよう努め、環境への配慮、地域社会への貢献、コーポレート・ガバナンス体制のさらなる充実を図り、社会的責任を果たすよう取り組んでおります。
当連結会計年度においては、新型コロナウイルス感染症の影響を受けたお客さまの日常生活を維持するべく、タイやマレーシアの現地法人において、クレジットカードや各種ローンの金利手数料の一定期間引下げや返済猶予期間を設定するなど、金融サービスを通じてお客さまの生活サポートを実施しました。
また、当社グループは持続可能な社会の実現に向け、SDGs(持続可能な開発目標)等の国際目標に則した活動の一環として、株式会社イオン銀行が、社会課題の解決に資する事業の資金調達を目的として発行される社会貢献債(ソーシャルボンド)へ投資を行うほか、当社及びイオンクレジットサービス株式会社、株式会社イオン銀行は、高校生や大学生を対象とした金融教育に継続して取り組みました。当連結会計年度はオンライン中心で実施し、大学における講義実績は12大学、93講義、延べ受講学生数7,985名となりました。また、「AEONグローバルインターンシップ」として、日本の大学生(12大学、66名)にマレーシアの子会社における就業体験実習を通して金融リテラシーや地域文化について学習する機会を提供しました。
東日本大震災復興支援については、現地でのボランティア活動等を通して、地元の方々との交流を深めてきましたが、当連結会計年度においてはコロナ禍で現地での活動や地元の人々との交流ができなかったため、「イオン心をつなぐプロジェクト」の活動の一環として東北被災地産品の購入による支援活動「心をつなぐお買いもの」を2020年10月から11月の2ヵ月間に亘り実施し、多くの役職員が参加しました。
さらに、当社は、当社、イオンクレジットサービス株式会社及び株式会社イオン銀行を登録活動範囲とし、2020年3月に、銀行を含む金融グループとして初めて、事業継続マネジメントシステム(BCMS)の国際規格「ISO22301」認証を取得しました。
「ISO22301」は、2012年に施行された認証制度で、地震・洪水・台風などの自然災害をはじめ、システムトラブル・パンデミック・火災等、さまざまなリスクが現実となった場合に備え、それらのリスクが事業に与える影響を最小化するための対策を立案し、効率的かつ効果的に対応するための事業継続マネジメントシステム(BCMS)の国際規格です。
海外子会社の取り組みとしては、香港、タイ、マレーシアの上場3社を中心に、アジア各国で学ぶ学生に対する奨学支援や病院等の医療機関への寄付・医療機器の寄贈等、当社が事業展開するアジア地域における社会貢献活動に継続的に取り組みました。
環境保全の取り組みでは、グループ各社は、店頭における商品説明や金融サービスのお申込み時におけるタブレット端末の使用、店頭告知におけるデジタルサイネージの導入、並びにWeb明細の基本サービス化等により、ペーパーレス化を推進し、CO2の排出抑制に努めております。
当社は今後も、ステークホルダーの期待に応え、持続的な社会の発展と事業成長の両立を目指してまいります。
(1)経営成績の状況
①連結経営成績の状況
当連結会計年度における当社を取り巻く経営環境は、期初より新型コロナウイルス感染症の世界的な流行により、当社が事業を展開する多くの国・地域において緊急事態宣言や活動制限が発出される等、一定期間の休業や自粛を余儀なくされました。2020年中盤からは徐々に経済活動が再開され、防疫措置をとりながら事業活動を並走させる状態が継続しました。しかしながら、年末には一部の国・地域において感染者数が再拡大し、一度緩和された活動制限を再び厳格化する措置がとられました。2021年に入り、2月頃より各国において、医療従事者等から順次ワクチン接種が開始され、経済活動再開が期待されるものの、国民全体の接種までには時間を要することや、変異株が拡大の様相を呈する等、新型コロナウイルス感染症の収束が未だ見通せない状況が継続しています。
このような経営環境の中、当社は、イオングループがお客さま及び従業員の安全・安心を守るための防疫基準として、2020年6月に制定(11月一部改定)した「イオン新型コロナウイルス防疫プロトコル」に従い、徹底した防疫措置の下、可能な限り事業活動の継続に努めました。新型コロナウイルス感染症の影響によって変化したお客さまの生活・行動様式に対応するため、従前から取り組んできたグループを挙げてのデジタルトランスフォーメーション(DX)や事業の効率化、新たな収益機会の創出に向けたビジネスモデルの変革への取り組みを加速しました。また、リモートワークやサテライトワーク等による従業員の働き方改革に取り組み、コロナ禍においても事業継続を可能とする体制を構築しました。
さらに、食品や日用品等生活必需品を取扱うイオングループ小売業やECチャネル、公共交通機関等の大手優良企業との提携を強みとする当社ならではの顧客基盤を活用し、利便性の高い決済手段をご提供するとともに、審査の高度化やマーケティング手段の多様化に取り組み、新たな顧客層を拡大しました。
当連結会計年度は、新型コロナウイルス感染症の影響に伴い、消費活動が抑制されたことから、カード取扱高が減少したことに加え、各国現地当局による返済猶予や給付金の支給等、政府の国民生活支援策により、キャッシングやローン等への資金需要が低下したこと等により、手数料収益が前期実績を下回りました。一方、2020年3月31日に子会社化したイオン・アリアンツ生命保険株式会社の損益計算書を第2四半期連結累計期間より取り込んだことにより、連結営業収益については4,873億9百万円(前年同期比6.6%増)となりました。連結営業利益は、上期において将来の貸倒増加に備えた貸倒引当金を積み増したことにより、貸倒引当金繰入額が増加したことや、利息返還損失引当金繰入額が増加したこと等により406億51百万円(前年同期比37.5%減)、経常利益は402億38百万円(前年同期比38.8%減)となりました。特別損失として、新型コロナウイルス感染症への防疫措置のための備品費用等4億36百万円を計上しました。また、第3四半期にマレーシアの現地法人AEON Credit Service(M)Berhad(以下、ACSM)が、2017年11月より現地税務当局と係争中となっていた追徴課税96百万リンギットについて、10百万リンギットで和解合意しました。これらの結果、親会社株主に帰属する当期純利益は176億93百万円(前年同期比48.2%減)となりました。
当社は前事業年度より決算期を3月期から2月期に変更しました。これにより、当連結会計年度(2020年3月1日~2021年2月28日の12ヵ月)の比較対象となる前年同期は、連結会計年度(2019年4月1日~2020年2月29日の11ヵ月)となります。また、参考数値として2019年3月から2020年2月の12ヵ月間合計の実績を「前年同期間」として記載しております。
なお、中期経営計画<2021年度~2025年度>においては営業収益、営業利益、営業利益率(国内:国際)を経営指標と定めており、上記取り組みに係る2020年度実績数値は、以下のとおりです。
経営指標 | 実績数値(2020年度) | 目標数値(2025年度) |
営業収益 | 4,873億円 | 7,600億円 |
営業利益 | 406億円 | 1,000億円 |
営業利益比率(国内:国際)※ | 国内:53%、国際:47% | 国内:40%、国際:60% |
※本社・機能会社を除く、国内及び国際の単純合算数値より算出
②セグメントの状況
国内リテール事業は、カードキャッシングや住宅ローン等の営業債権残高が順調に増加したことに加え、低利で安定した資金調達やリスクアセットの削減を目的とした債権流動化の実施により、営業収益2,302億51百万円(前年同期比23.5%増)、営業利益46億48百万円(同69.0%減)となりました。
国内ソリューション事業は、キャッシングを中心とした融資収益等の減少をカードショッピングやWAONの加盟店収益の増加でカバーした一方、上期において、将来に亘る既存債権の貸倒増加に備えた貸倒引当金を積み増し、貸倒引当金繰入額が増加したこと等により、営業収益1,827億18百万円(前年同期比0.6%増)、営業利益166億15百万円(同29.8%減)となりました。
中華圏のセグメント業績については、カードショッピングやキャッシング取扱高の減少に加え、営業債権残高の減少により、手数料や金利収益が減少し、営業収益155億67百万円(前年同期比17.7%減)、営業利益45億45百万円(同23.4%減)となりました。
メコン圏のセグメント業績については、タイ政府による上限金利引下げに伴う金利収益の減少や、カードキャッシング、個人ローンの営業債権残高の減少に伴う金利収益の減少により、営業収益738億83百万円(前年同期比12.2%減)、営業利益107億6百万円(同37.2%減)となりました。
マレー圏のセグメント業績については、新型コロナウイルス感染症の影響により、活動制限期間中に加盟店が閉鎖したことや、審査基準の厳格化等に伴う営業債権残高の減少により、営業収益476億80百万円(前年同期比8.2%減)、営業利益41億78百万円(同33.8%減)となりました。
(2)財政状態の状況
資産の部、負債の部、純資産の部における主な増減内容は次のとおりであります。
(資産の部)
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末より3,423億50百万円増加し、6兆1,237億21百万円となりました。これは住宅ローンの取扱高が伸びたことにより、銀行業における貸出金が3,235億93百万円増加したこと、及び銀行業における有価証券が717億94百万円増加した一方で、新型コロナウイルス感染症の影響による経済活動の停滞により、営業貸付金が776億56百万円減少したこと等によるものです。
(負債の部)
負債合計額は、前連結会計年度末より3,267億58百万円増加し、5兆6,490億53百万円となりました。これは普通預金口座の獲得強化により、預金が2,284億25百万円増加したこと、及び第1四半期連結会計期間よりイオン・アリアンツ生命保険株式会社を新規連結対象に含めたことにより、保険契約準備金を計上したこと等によるものです。
(純資産の部)
純資産合計額は、前連結会計年度末より155億92百万円増加し、4,746億67百万円となりました。これは利益剰余金が配当金の支払いにより107億90百万円減少した一方、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により176億93百万円増加したこと等によるものです。
(3)資本の財源及び資金の流動性についての分析
①キャッシュ・フロー
当連結会計年度における当社グループの資金状況についてみますと、営業活動によるキャッシュ・フローは、住宅ローンの取扱いが増加したことに伴い銀行業における貸出金が増えたこと、及びコマーシャル・ペーパーの償還等により、前連結会計年度と比較して2,899億35百万円減少し、622億82百万円の収入となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有価証券の売却・償還による収入が増えたこと等により、前連結会計年度と比較して828億81百万円増加し、945億57百万円の支出となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度において劣後特約付社債の償還、及び転換社債型新株予約権付社債の償還を実施していたため、前連結会計年度と比較して746億86百万円増加し、143億54百万円の支出となりました。
以上の結果により、現金及び現金同等物の期末残高は前連結会計年度と比較して466億69百万円減少し、6,667億38百万円となりました。
②資金需要
当社グループの資金活動における運転資金需要の主なものは、個人向けの金融サービスの提供に係る、お客さま利便性向上のためのシステム、IT、デジタル化投資や個人向け貸出金等であります。
③財務政策と資金調達
当社は業容拡大と効率化に向けた投資と株主の皆さまに対する株主還元に関して適正な利益配分のため、内部留保、投資資金、配当金をそれぞれ三分の一ずつ配分する旨を基本的な考え方としてまいりました。今後もこの考え方に則りながら、業容拡大のための戦略や社会環境の変化によって柔軟に対応してまいります。
資金調達においては、円滑な事業運営のための流動性の確保と財務の健全性・安定性維持を調達の基本方針としております。当社からの貸付による子会社資金調達の一元化や、調達期間の長期化、調達手法の多様化等により、手元流動性と財務安定性を確保することに注力しています。
国内各社は当社の信用力を活かした直接調達へシフトする一方、間接調達の空き枠は今後の事業拡大に備え、海外子会社へ振り分けます。コマーシャル・ペーパーによる調達は連結借入総額の10%程度とし、資金調達の直接間接比率は50%:50%、長期短期比率は65%:35%のバランスを目指します。さらに資産の信用力を活かした債権流動化による資金調達も実施し、調達の多様化に加え、資産効率性の向上を図ります。
また当社グループは国内2社の格付機関から格付を取得しており、本報告書提出時点において、日本格付研究所の格付はA(安定的)、格付投資情報センターの格付はAマイナス(安定的)となっております。また主要な金融機関とは良好な関係を維持していることから、引き続き、業容拡大や投資、運転資金の調達に対して安定的な外部資金調達が可能であると認識しております。
(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
(貸倒引当金)
当社グループの連結財務諸表における貸倒引当金の計上基準は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項) 4.会計方針に関する事項 (5)貸倒引当金の計上基準」に記載しておりますが、計上に当たって下記の重要な会計上の見積りを用いていることから、その不確実性及び変動により、当社グループの経営成績等に影響を与える場合があります。
・新型コロナウイルス感染症の影響に関する会計上の見積り
当社グループにおいては、新型コロナウイルスの感染拡大の影響について、主として収束時期を当連結会計年度末頃と想定し、一部の国における返済猶予債権等については、翌期の第2四半期頃まで影響が継続するものと仮定して貸倒引当金の見積りを行っていました。
しかしながら、当連結会計年度末においては当該返済猶予債権等に係る回収状況から、第3四半期時点の想定より影響の収束に時間を要すると仮定しています。当該仮定に基づき、一部の国における返済猶予債権等に対して将来の信用リスクの増加を見込み、貸倒引当金の見積りに含めています。
なお、当該金額は現時点の最善の見積りであるものの、見積りに用いた仮定の不確実性は高く、新型コロナウイルスの感染状況やその経済環境への影響が変化した場合には、翌期以降の四半期連結財務諸表及び連結財務諸表において当該貸倒引当金は増減する可能性があります。
(5)社会貢献、環境保全活動
当社は、イオングループの一員として、「金融サービスを通じ、お客さまの未来と信用を活かす生活応援企業」という経営理念のもと、事業を通じた社会課題の解決に努めております。これを実現するため、イオンのCSR活動に参画するとともに、法令遵守に留まらず、コンプライアンス意識が海外子会社を含めグループ各社の事業活動の第一線まで広く浸透し、確実に遵守されるよう努め、環境への配慮、地域社会への貢献、コーポレート・ガバナンス体制のさらなる充実を図り、社会的責任を果たすよう取り組んでおります。
当連結会計年度においては、新型コロナウイルス感染症の影響を受けたお客さまの日常生活を維持するべく、タイやマレーシアの現地法人において、クレジットカードや各種ローンの金利手数料の一定期間引下げや返済猶予期間を設定するなど、金融サービスを通じてお客さまの生活サポートを実施しました。
また、当社グループは持続可能な社会の実現に向け、SDGs(持続可能な開発目標)等の国際目標に則した活動の一環として、株式会社イオン銀行が、社会課題の解決に資する事業の資金調達を目的として発行される社会貢献債(ソーシャルボンド)へ投資を行うほか、当社及びイオンクレジットサービス株式会社、株式会社イオン銀行は、高校生や大学生を対象とした金融教育に継続して取り組みました。当連結会計年度はオンライン中心で実施し、大学における講義実績は12大学、93講義、延べ受講学生数7,985名となりました。また、「AEONグローバルインターンシップ」として、日本の大学生(12大学、66名)にマレーシアの子会社における就業体験実習を通して金融リテラシーや地域文化について学習する機会を提供しました。
東日本大震災復興支援については、現地でのボランティア活動等を通して、地元の方々との交流を深めてきましたが、当連結会計年度においてはコロナ禍で現地での活動や地元の人々との交流ができなかったため、「イオン心をつなぐプロジェクト」の活動の一環として東北被災地産品の購入による支援活動「心をつなぐお買いもの」を2020年10月から11月の2ヵ月間に亘り実施し、多くの役職員が参加しました。
さらに、当社は、当社、イオンクレジットサービス株式会社及び株式会社イオン銀行を登録活動範囲とし、2020年3月に、銀行を含む金融グループとして初めて、事業継続マネジメントシステム(BCMS)の国際規格「ISO22301」認証を取得しました。
「ISO22301」は、2012年に施行された認証制度で、地震・洪水・台風などの自然災害をはじめ、システムトラブル・パンデミック・火災等、さまざまなリスクが現実となった場合に備え、それらのリスクが事業に与える影響を最小化するための対策を立案し、効率的かつ効果的に対応するための事業継続マネジメントシステム(BCMS)の国際規格です。
海外子会社の取り組みとしては、香港、タイ、マレーシアの上場3社を中心に、アジア各国で学ぶ学生に対する奨学支援や病院等の医療機関への寄付・医療機器の寄贈等、当社が事業展開するアジア地域における社会貢献活動に継続的に取り組みました。
環境保全の取り組みでは、グループ各社は、店頭における商品説明や金融サービスのお申込み時におけるタブレット端末の使用、店頭告知におけるデジタルサイネージの導入、並びにWeb明細の基本サービス化等により、ペーパーレス化を推進し、CO2の排出抑制に努めております。
当社は今後も、ステークホルダーの期待に応え、持続的な社会の発展と事業成長の両立を目指してまいります。