有価証券報告書-第42期(2022/03/01-2023/02/28)

【提出】
2023/05/25 15:35
【資料】
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【項目】
156項目
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度の末日現在において判断したものであります。
(1)経営成績の状況
①連結経営成績の状況
当社は、中期経営計画(2021年度~2025年度)の基本方針を「第二の創業 バリューチェーンの革新とネットワークの創造」と定め、グループの成長に向けた改革を進めております。国内では、イオングループのID共通化に向けた投資及び基盤整備を進めるとともに、グループ共通ポイントを活用した利便性向上やコード決済「AEON Pay」の利用促進を中心としたキャッシュレス化の推進、Webからの申込みや各種手続きが可能なオンラインサービスの拡充に取り組みました。海外では、各種商品の申込みからご利用までをスマートフォンで完結するためのアプリの開発や機能向上に加えて、与信・債権管理の高度化を通じ、デジタル金融包摂の進展に取り組みました。
当期は、展開国・地域において、新型コロナウイルス感染症による影響から経済活動が回復する中、お客さまの消費動向の変化に対応した販促施策の実施による各種取扱高の拡大を図りました。国内外共にカードショッピング取扱高及び債権残高が伸長したことに加えて、国際事業において個人ローンや個品割賦残高が拡大し、連結営業収益は4,517億67百万円となりました。国内における「収益認識に関する会計基準」の適用影響による収益減少(374億1百万円)の影響を除くと前期比増収となりました。連結営業利益は、国内における営業債権残高積上げの進捗が当期後半に遅れた影響等により、588億59百万円(前期差7百万円増)、連結経常利益は615億47百万円(前期比2.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は306億77百万円(前期比1.5%増)となりました。
なお、中期経営計画<2021年度~2025年度>においては営業収益、営業利益、営業利益率(国内:国際)を経営指標と定めており、上記取り組みに係る2022年度実績数値は、以下のとおりです。
経営指標実績数値(2022年度)目標数値(2025年度)
営業収益4,517億円7,600億円
営業利益588億円1,000億円
営業利益比率(国内:国際)※国内:31%、国際:69%国内:40%、国際:60%

※本社・機能会社を除く、国内及び国際の単純合算数値より算出
②セグメントの状況
国内・リテール事業の営業収益はカードキャッシング収益や保険収益の減少などにより1,678億77百万円、営業利益は業容の拡大に向けた投資及び人材教育等の投資を推進したことにより38億72百万円(前期比52.1%減)となりました。
国内・ソリューション事業の営業収益はカードショッピング収益が増加した一方、個品割賦収益が減少したことなどにより1,763億58百万円、営業利益はセキュリティ強化や生産性向上に向けたIT投資の増加等により142億87百万円(前期比19.9%減)となりました。
なお、子会社のイオンプロダクトファイナンス株式会社(以下、同社)は、2022年4月15日に関東経済産業局より、割賦販売法に基づく業務改善命令を受け、業務運営体制を見直したうえで外部専門家の知見を取り入れ、内部統制システムの再整備を実施するなど再発防止策を講じるとともに、コンプライアンス遵守の企業風土構築に向けた取り組みを進めております。当社は、今回の処分を厳粛に受け止め、真摯に反省するとともに、引き続き同社のガバナンス体制の再構築及び管理・監督を強化することにより、お客さまの利益保護と法令遵守の徹底に取り組んでまいります。
中華圏の営業収益はカードショッピング収益やカードキャッシング収益及び個人ローン収益の増加により224億62百万円(前期比42.7%増)、営業利益は77億16百万円(前期比39.5%増)と伸長しました。
メコン圏の営業収益はカードショッピング収益や個人ローン収益の増加などにより860億20百万円(前期比18.8%増)、営業利益は営業債権増加に伴い貸倒引当金繰入額が増加傾向にあるものの各種取扱高の伸長により189億97百万円(前期比24.2%増)となりました。
マレー圏の営業収益はカードショッピング収益や個品割賦収益及び個人ローン収益の増加により609億1百万円(前期比21.9%増)、営業利益は157億16百万円(前期比21.1%増)となりました。
(2)財政状態の状況
資産の部、負債の部、純資産の部における主な増減内容は次のとおりであります。
(資産の部)
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末より3,808億82百万円増加し、6兆6,594億68百万円となりました。これはカードショッピング取扱高が伸長したことにより割賦売掛金が2,033億4百万円、及び居住用住宅ローン貸出金残高の増加や国際事業における個人ローンの拡大により貸出金が1,234億23百万円増加したことに加え、現金及び預金が1,038億32百万円増加した一方、銀行業における有価証券が756億76百万円減少したこと等によるものです。
(負債の部)
負債合計額は、前連結会計年度末より3,488億4百万円増加し、6兆1,183億35百万円となりました。これは営業債権拡大による資金需要に伴い有利子負債が1,231億73百万円増加したこと、及び資金決済口座としての利用拡大により預金が2,194億9百万円増加したこと等によるものです。
(純資産の部)
純資産合計額は、前連結会計年度末より320億78百万円増加し、5,411億33百万円となりました。これは親会社株主に帰属する当期純利益の計上により306億77百万円、為替換算調整勘定が138億86百万円、及び非支配株主持分が215億19百万円増加した一方、その他有価証券評価差額金が251億11百万円、利益剰余金が期末及び中間配当金の支払いにより110億7百万円減少したこと等によるものです。
(3)資本の財源及び資金の流動性についての分析
①キャッシュ・フロー
営業活動によるキャッシュ・フローについては、資金決済口座としての利用拡大により預金が増えた一方で、カードショッピング取扱高が伸びたことで割賦売掛金が増加したこと等により、前連結会計年度に比べ288億51百万円収入が増加し、1,051億38百万円の収入となりました。投資活動によるキャッシュ・フローについては、有価証券の売却・償還による収入が有価証券の取得による支出を上回ったこと等により、117億96百万円の収入(前連結会計年度は335億62百万円の支出)となりました。財務活動によるキャッシュ・フローについては、配当金の支払額が増加したこと等により、前連結会計年度に比べ10億50百万円支出が増加し、145億59百万円の支出となりました。
以上の結果により現金及び現金同等物は1,070億64百万円増加し、8,046億93百万円となりました。
②資金需要
当社グループの主な資金需要は、個人向けの金融サービスの提供に係る、貸出金及び割賦売掛金、並びにお客さま利便性向上のためのIT、デジタル投資等であります。
③財務政策と資金調達
当社は事業拡大と効率化に向けた投資と株主の皆さまに対する株主還元に関して適正な利益配分のため、内部留保、投資資金、配当金をそれぞれ三分の一ずつ配分する旨を基本的な考え方としております。株主の皆さまに対する利益還元は、当社における経営の最重要施策の一つと位置付けており、配当性向30~40%程度を目安として、安定的かつ継続的な株主還元の充実を目指してまいります。投資については、イオン生活圏の構築に向けたインフラ作りのためのIT、デジタル投資を継続する等、今後も企業価値向上、経営基盤の強化に努めてまいります。
資金調達においては、円滑な事業運営のための流動性の確保と財務の健全性・安定性維持を調達の基本方針としております。当社からの貸付による子会社資金調達の一元化や、調達期間の長期化、調達手法の多様化等により、手元流動性と財務安定性を確保することに注力しています。
国内は銀行業における預金に加え、メガバンクを中心とした金融機関から間接調達のほか、社債やコマーシャル・ペーパーの発行及び債権流動化による直接金融により資金調達を実施しております。海外は主に邦銀、現地銀行からの間接調達等により資金調達を実施しております。コマーシャル・ペーパーによる調達は連結借入総額の10%程度とし、資金調達の直接間接比率は50%:50%、長期短期比率は65%:35%のバランスを目指します。さらに資産の信用力を活かした債権流動化による資金調達も実施し、調達の多様化に加え、資産効率性の向上を図ります。
また当社グループは国内2社の格付機関から格付を取得しており、本報告書提出時点において、日本格付研究所の格付はA(安定的)、格付投資情報センターの格付はAマイナス(安定的)となっております。また主要な金融機関とは良好な関係を維持していることから、引き続き、事業拡大や投資、運転資金の調達に対して安定的な外部資金調達が可能であると認識しております。
(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
(5)社会貢献、環境保全活動
当社グループは、誰もが心豊かで幸せに暮らせる持続可能な社会を実現し、平和に貢献することを旨とする「サステナビリティ基本方針」を掲げ、取締役会からの委嘱を受けたサステナビリティ委員会において、サステナビリティに関する事項を総合的・専門的に協議・検討した上で事業活動を通じた社会課題の解決を推進しております。2021年11月、中長期的に当社事業へ影響を及ぼす可能性のある重要な社会課題(マテリアリティ)を特定し、「革新的な金融サービスを通じた幸せの追求」や「人材の多様性と可能性の発揮」、「レジリエントな経営基盤の確立」、「気候変動等への対応」を経営の重要課題に位置づけ、グループ各社が主体的に事業戦略へ統合を進めております。
まず、「革新的な金融サービスを通じた幸せの追求」に対し、日本国内において、コード決済サービス「AEON Pay」を開始し、お買い物の利便性向上に取り組んでいます。海外では、マレーシアにおいて、AIを活用した審査や与信の自動化によりイオングループのお客さまに新たな金融体験や価値をご提供するデジタルバンク事業を始動しました。
また、日本での成人年齢の引き下げ等に伴い、若年層の金融リテラシー向上に貢献すべく、高校生や大学生、専門学校生等を対象とした資産形成や金融取引上のリスクに関する出張授業や寄付講座等に継続して取り組みました。
AEON CREDIT SERVICE (M) BERHAD(以下、ACSM)及びAEON CREDIT SERVICE (ASIA)は、当社グループで初となるサステナビリティ・リンク・ローン(以下、SLL)の融資契約を締結しました。環境・社会面において持続可能な経済活動及び経済成長を促進・支援することを目指し、金利等の借入れ条件をサステナビリティ目標達成に連動させることで実効性を高めてまいります。
次に、「人材の多様性と可能性の発揮」については、当社及び各子会社がイノベーションを通じて戦略目標を達成し、事業を持続的に成長させるため、高度で幅広い知見を有する従業員の育成とマネジメントの強化を推進しました。この一環として開設したAFSアカデミーは、従業員の育成並びに金融リテラシー教育の中心的な役割を担います。また、当社グループは、常にお客さま満足を追求するために一人ひとりの従業員が、心身ともに健康で、活力に満ちた存在であることが必須であると考え、グループを挙げて健康経営の推進に努めております。今年度においてはイオンクレジットサービス株式会社、及びエー・シー・エス債権管理回収株式会社が健康経営優良法人2023の「ホワイト500」に認定されたほか、グループ8社が健康経営優良法人2023に認定されました。
「レジリエントな経営基盤の確立」については、当社グループ各社のビジネス及び展開地域ごとに関連する法規制、業界の自主規制や慣行及びステークホルダーの状況等の整理と把握を行い、臨機的に対応できるよう準備を進めました。また、当社グループが提供する各種サービスの安定的かつ継続的な提供のため、サプライチェーンの整理と把握を行い、各関係先との連携強化に取り組みました。さらに、世界各地での政情不安やサイバーリスクの顕在化を踏まえ、国内外グループ各社において研修による知識習得や不審メール対応訓練等情報セキュリティ対策の強化に取り組みました。地震、水害、その他の事象を想定した危機対応訓練は、展開地域ごとに多様な被害シナリオをもとに実施しました。
最後に「気候変動等への対応」については、イオングループの「脱炭素ビジョン」に則り、2040年を目途に、店舗で排出するCO2をネットゼロとする取り組みを推進しております。また、気候変動に係る国際的な情報開示フレームワーク「気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures:「TCFD」)に則り、温室効果ガス(GHG)排出量の算定や気候変動シナリオ分析等を通じて、気候変動が当社グループ事業へ及ぼすリスクと機会を把握し、取り組みの進化と情報開示の充実を図り、脱炭素社会の実現への貢献を進めております。
さらに、世界的な海洋プラスチックごみ問題の解決に向け、イオングループが今年度より全国各地で開始した海ごみクリーンアップ活動(ハートフルボランティア)に当社グループ従業員も積極的に参加し、地域住民の皆さまとともに活動しました。加えて、従業員による森づくりの推進や環境教育、並びに里山・森林活動の普及・啓発を目的に、公益財団法人イオン環境財団及びイオン株式会社と連携しながら、千葉県君津市において「イオンの森づくり」を実施しました
当社グループは、社会貢献活動として、東日本大震災による津波で農地に大きな塩害を受けた地域での復興支援活動として2017年より福島県いわき市で綿花収穫ボランティアを実施しています。2020年よりコロナ禍により休止していた本活動を再開し、グループ従業員が参加しました。このほか、不要になった本の売却益を寄付する「本棚チャリティ」や雑巾の資材を寄贈する「復興ぞうきんプロジェクト」等、東北復興へ向けたグループ従業員の思いを届けるボランティア活動を継続して実施しております。
また、当社グループを含むイオングループの主要企業が税引前利益の1%相当額を拠出する公益財団法人イオンワンパーセントクラブと協働し、「イオン ウクライナ子ども救済募金」において、クレジットカードによるキャッシュレスでの寄付を募ったほか、各地のイオンモールにて子どもたちへの金融教育イベントを開催しました。