有価証券報告書-第13期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

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2019/06/26 16:00
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【項目】
152項目
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
なお、前連結会計年度において決算日を3月20日から3月31日に変更するとともに、全ての連結子会社について、決算日又は仮決算日を本変更後の連結決算日に統一いたしました。
この結果、前連結会計年度及び当連結会計年度は、次の内容を反映しております。
会社前連結会計年度への
反映期間
当連結会計年度への
反映期間
当社及び国内連結子会社2017年3月21日から
2018年3月31日まで
2018年4月1日から
2019年3月31日まで
海外連結子会社2017年1月1日から
2018年3月31日まで

① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、海外経済が着実な成長を続けるもとで、極めて緩和的な金融環境や政府支出による下支えなどを背景に景気の拡大が続きました。
物流業界におきましては、eコマース市場の拡大継続を背景に宅配便に対する社会のニーズが高まる中、少子高齢化が進行し、労働需給が一段と逼迫しております。また、長時間労働の是正や同一労働同一賃金を目的とした働き方改革関連法が順次施行されております。
当社グループにおきましては、中期経営計画「First Stage 2018」の最終年度として、グループ横断の先進的ロジスティクスプロジェクトチーム「GOAL」を基軸としたソリューションの強化、輸送ネットワークの強化及び働き方改革による労働環境の向上に注力してまいりました。また、株式会社日立物流との資本業務提携のもと、営業連携による提案力強化及び事業拡大を推進してまいりました。
このような状況のもと、当社グループの中核事業であるデリバリー事業におきましては、継続的な適正運賃収受の取組み、「GOAL」による営業の推進、及び宅配便以外の付加価値を提供するソリューション「TMS」の強化を図ってまいりました。ロジスティクス事業におきましては、物流現場の効率化やフレイトフォワーディングの物量増加により、好調に推移いたしました。不動産事業におきましては、所有する不動産を信託受益権化し継続的に売却したほか、新たな物流施設への投資を実施いたしました。その他の事業におきましては、燃料販売単価の上昇やグループ会社への自動車販売・整備が増加したほか、保険販売が好調に推移いたしました。
この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は次のとおりとなりました。
なお、「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 2018年2月16日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、財政状態に関する説明については、当該会計基準等を遡って適用した後の数値で前連結会計年度との比較・分析を行っております。
イ.財政状態
(資産合計)
当連結会計年度末の資産合計は7,628億7百万円となり、前連結会計年度末に比べ521億88百万円増加いたしました。
流動資産は2,981億65百万円となり、前連結会計年度末に比べ45億50百万円減少いたしました。主な要因は、保有不動産の売却により販売用不動産が77億68百万円、前連結会計年度に実施した決算日変更の影響により現金及び預金が68億62百万円それぞれ減少した一方で、営業収益の増加に伴い受取手形及び営業未収金が113億99百万円増加したことによるものであります。
固定資産は4,646億42百万円となり、前連結会計年度末に比べ567億73百万円増加いたしました。主な要因は、設備投資の実行により建設仮勘定が355億71百万円、土地が111億15百万円、車両運搬具が88億99百万円それぞれ増加したことによるものであります。
(負債合計)
当連結会計年度末の負債合計は3,733億80百万円となり、前連結会計年度末に比べ209億70百万円増加いたしました。
流動負債は2,210億69百万円となり、前連結会計年度末に比べ259億75百万円増加いたしました。主な要因は、未払消費税等の増加によりその他流動負債が241億80百万円、賞与体系の見直しにより賞与引当金が86億73百万円それぞれ増加した一方で、前連結会計年度に実施した決算日変更の影響により支払手形及び営業未払金が68億58百万円減少したことによるものであります。
固定負債は1,523億10百万円となり、前連結会計年度末に比べ50億5百万円減少いたしました。主な要因は、社債の償還などにより有利子負債が53億58百万円減少したことによるものであります。
(純資産合計)
当連結会計年度末の純資産合計は3,894億27百万円となり、前連結会計年度末に比べ312億17百万円増加いたしました。主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益が434億65百万円となり、非支配株主持分が50億44百万円増加となった一方で、剰余金の配当161億97百万円を実施したことによるものであります。
ロ.経営成績
(営業収益)
デリバリー事業におきましては、継続的な適正運賃収受の取組みにより平均単価が上昇したことに加え、取扱個数の増加、「GOAL」によるソリューション提供の拡大、「TMS」の強化及び株式会社日立物流との協業による付加価値の高い輸送サービスの拡大に努めてまいりました。ロジスティクス事業におきましては、国内では越境通販輸送が好調に推移、海外では営業力及び拠点の強化によりフレイトフォワーディングの物量が好調に推移いたしましたが、決算日変更の影響を受けました。また、不動産事業におきましては、前連結会計年度に比べ保有不動産の売却規模を拡大いたしました。
この結果、営業収益は1兆1,180億94百万円となり、前連結会計年度に比べ7.0%増加となりました。
(営業原価、販売費及び一般管理費、営業利益)
デリバリー事業を中心とした働き方改革・輸送インフラの強化に向けた従業員の採用強化及び定着率向上を目的とした賞与体系の見直しに加え、繁忙期の安定的な品質稼働を目的とした集配委託取引の増強等に取り組みました。
この結果、営業原価は1兆17億45百万円(前期比6.9%増)、販売費及び一般管理費は459億88百万円(同1.5%増)となりました。一方、営業収益が増加したことにより、営業利益は703億59百万円(同12.2%増)となり、営業利益率は6.3%と前連結会計年度に比べ0.3ポイント上昇いたしました。
(営業外損益、経常利益)
営業外収益は、持分法による投資利益や受取保険配当金の計上等により69億62百万円(前記比17.3%増)となりました。営業外費用は、支払利息の計上等により25億55百万円(同32.3%減)となりました。
この結果、経常利益は747億66百万円(前期比15.3%増)となりました。
(特別損益、税金等調整前当期純利益)
特別利益1億45百万円(前期比68.8%減)、特別損失7億57百万円(前期比66.8%減)を計上した結果、税金等調整前当期純利益は741億54百万円となり、前連結会計年度に比べ17.6%増加となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
法人税等227億75百万円(前期比12.3%増)、非支配株主に帰属する当期純利益79億13百万円(同17.3%増)を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は434億65百万円となり、前連結会計年度に比べ20.7%増加となりました。
セグメントの業績は、次のとおりであります。
・デリバリー事業
デリバリー事業におきましては、継続的な適正運賃収受の取組みにより平均単価が上昇したことに加え、取扱個数の増加、「GOAL」によるソリューション提供の拡大、「TMS」の強化及び株式会社日立物流との協業による付加価値の高い輸送サービスの拡大に努めてまいりました。また、従業員の採用強化、集配委託取引の増強など働き方改革及び輸送インフラの強化に取り組み、繁忙期においても安定的な品質で稼働いたしました。
この結果、当セグメントの営業収益は9,036億79百万円(前期比9.6%増)、営業利益は554億30百万円(同7.9%増)となりました。
・ロジスティクス事業
ロジスティクス事業におきましては、国内では物流現場の効率化や越境通販輸送が好調に推移いたしました。
海外では、営業力及び拠点の強化により、フレイトフォワーディングの物量が増加いたしましたが、決算日変更の影響を受けました。
この結果、当セグメントの営業収益は1,315億57百万円(前期比6.3%減)、営業利益は26億55百万円(同63.1%増)となりました。
・不動産事業
不動産事業におきましては、前連結会計年度に比べ保有不動産の売却規模を拡大いたしました。
この結果、当セグメントの営業収益は165億53百万円(前期比55.1%増)、営業利益は71億33百万円(同27.4%増)となりました。
・その他
その他の事業におきましては、単価の上昇による燃料販売の増加やグループ会社への自動車販売・整備が増加したほか、保険販売が好調に推移いたしましたが、決算日変更の影響を受けました。
この結果、当セグメントの営業収益は663億4百万円(前期比5.0%減)、営業利益は56億88百万円(同0.8%減)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ68億51百万円減少し1,017億5百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により得た資金は867億58百万円(前期比14.1%減)となりました。
主な要因は、収入要因として税金等調整前当期純利益の計上741億54百万円、未払消費税等の増加等によるその他営業キャッシュ・フローの計上231億61百万円、減価償却費の計上200億50百万円があった一方で、支出要因として法人税等の支払額273億19百万円を計上したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動に使用した資金は662億67百万円(前期は346億98百万円の支出)となりました。
主な要因は、有形固定資産の取得による支出618億72百万円を計上したことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動に使用した資金は275億23百万円(前期は284億24百万円の支出)となりました。
主な要因は、支出要因として長期借入金の返済による支出194億93百万円、配当金の支払額161億85百万円、社債の償還による支出90億円、リース債務の返済による支出53億81百万円を計上し、収入要因として長期借入れによる収入250億1百万円を計上したことによるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
セグメント別の営業収益及び当社グループの中核事業であるデリバリー事業の商品別取扱個数は次のとおりであります。
なお、当社グループは、デリバリー事業、ロジスティクス事業、不動産事業を中心とするサービス提供を主たる業務としているため、生産及び受注の状況は記載しておりません。
イ.セグメント別の営業収益
当連結会計年度のセグメント別の営業収益は、次のとおりであります。
セグメントの名称前連結会計年度
(自 2017年3月21日
至 2018年3月31日)
当連結会計年度
(自 2018年4月1日
至 2019年3月31日)
金額(百万円)前期比(%)金額(百万円)前期比(%)
デリバリー事業824,174111.6903,679109.6
ロジスティクス事業140,416127.1131,55793.7
不動産事業10,67160.916,553155.1
その他69,770108.866,30495.0
合計1,045,032112.31,118,094107.0

(注)1.営業収益は外部顧客に対する売上高を示しております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3.前連結会計年度において決算日を3月20日から3月31日に変更しているため、対前期増減率は単純比較による比率を記載しております。
ロ.デリバリー事業の商品別取扱個数
当連結会計年度のデリバリー事業の商品別取扱個数は、次のとおりであります。
商品の名称前連結会計年度
(自 2017年3月21日
至 2018年3月31日)
当連結会計年度
(自 2018年4月1日
至 2019年3月31日)
取扱個数(百万個)1,3261,307
飛脚宅配便(百万個)1,2621,246
その他(百万個)6360

(注)1.取扱個数は、当社グループの主要商品の取扱個数であります。
2.飛脚宅配便は、佐川急便株式会社が国土交通省に届け出ている宅配便の個数であります。
3.その他は、佐川急便株式会社の提供する飛脚ラージサイズ宅配便及びその他の会社の取扱個数であります。
4.決算日変更による影響として、2017年3月21日から2017年3月31日までの取扱個数は46百万個(飛脚宅配便44百万個、その他2百万個)であります。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たり、当社グループが採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。当社グループは連結財務諸表を作成するに当たり、退職給付に係る負債、税効果会計、貸倒引当金の計上等において、過去の実績等を勘案するなど合理的な見積りを行い、その結果を反映させておりますが、実際の結果は見積りの不確実性があるためこれらの見積りとは異なる場合があります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
イ.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
物流業界では雇用情勢の改善に伴う労働需給の逼迫、賃金上昇の懸念は継続し、また、長時間労働の是正や同一労働同一賃金を目的とした働き方改革関連法が順次施行されております。このような環境の中、当社グループにおきましては、デリバリー事業及びロジスティクス事業で労働力の確保が重要となっております。また、eコマース市場の成長に伴う個人向け荷物の増加、荷物の多品種小ロット化など、顧客の物流に対するニーズもますます多様化しております。
このような状況のもと、輸送品質の向上、安定的な輸送ネットワークを提供できる体制を構築するために、人員の増強、路線便の拡充、委託先との良好な関係の構築など、輸送インフラの強化に継続的に取り組んでおります。また、2020年には大型中継センター(東京都江東区)が竣工予定であり、高品質な輸送インフラによる顧客満足度の向上、労働環境の改善及び輸送能力の向上に努めてまいります。一方で、輸送コストが増加する中、当社グループでは収益の維持・向上のために取引先別・貨物別等の原価管理に基づいた適正運賃収受の取組みや、「GOAL」による「TMS」など付加価値サービスの提供を行っております。
この結果、当連結会計年度の営業利益率は6.3%となり、前連結会計年度に比べ0.3ポイント上昇いたしました。
また、当社グループにおきましては、競争力のある物流施設の投資を実施するとともに、財務健全性の観点から不動産の流動化を実施しております。
この結果、利益剰余金の増加の影響もあり、自己資本比率は46.6%となり、前連結会計年度末に比べ0.2ポイント上昇いたしました。
翌連結会計年度につきましても、働き方改革及び輸送インフラ強化による事業基盤の構築、継続的な適正運賃収受の取組み及び「GOAL」の推進等に取り組んでまいります。
ロ.資本の財源及び資金の流動性
当社グループの事業活動における運転資金については、原則として手持資金(利益等の内部留保資金)で賄っております。設備資金等については、手持資金とのバランスを勘案し、必要に応じて長期借入金で調達しております。
当社グループは、当社及び国内子会社を対象に、CMS(キャッシュマネジメントシステム)を利用し、グループ内資金の包括的管理を実施しており、国内子会社において、設備投資等に伴う大規模な資金が必要となる場合は、当社が国内各子会社に長期貸付を行っております。
また、海外子会社においては、当社が海外事業の統括会社であるSG HOLDINGS GLOBAL PTE. LTD.に対して、投資計画・資金計画に基づいて長期貸付又は増資引受けを行い、地域に所在する海外各子会社の資金を管理する体制としております。なお、EXPOLANKA HOLDINGS PLCにおいては、資金調達の一部を金融機関から直接行っております。
翌連結会計年度につきましても、上記の方針に基づき資金調達を行う予定であります。なお、重要な設備の新設計画については「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画 (1)重要な設備の新設」に記載のとおりであります。
ハ.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
中期経営計画「First Stage 2018」は最終年度を迎え、次のように進捗しております。当連結会計年度の営業収益は1兆1,180億94百万円(計画比6.5%増)、営業利益は703億59百万円(同11.7%増)、経常利益は747億66百万円(同13.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は434億65百万円(同17.5%増)となりました。また、営業利益率は6.3%となり、計画に対して0.3ポイント上昇いたしました。
ニ.セグメントごとの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
・デリバリー事業
デリバリー事業におきましては、「GOAL」による「TMS」など付加価値の高いサービス提供及び適正運賃収受の継続的な取組みにより、当連結会計年度の平均単価は613円(前期比11.5%増)となりました。一方、輸送インフラの強化により人件費・外注費が増加したことや決算日変更の影響により、当連結会計年度の営業利益率は前連結会計年度に比べ低い水準となりました。
翌連結会計年度につきましても、働き方改革及び輸送インフラの強化に一層注力するとともに、適正運賃の収受、付加価値サービスの提供に継続的に取り組んでまいります。
・ロジスティクス事業
ロジスティクス事業におきましては、国内の物流現場の効率化、海外のフレイトフォワーディングの強化等により、当連結会計年度の営業利益率は前連結会計年度に比べ高い水準で推移いたしました。
翌連結会計年度につきましても、「GOAL」の推進による3PL、国際物流の拡大や、引き続き越境通販貨物の拡販などを推進してまいります。
・不動産事業
不動産事業におきましては、継続的に保有不動産を売却いたしましたが、当連結会計年度の営業利益率は前連結会計年度に比べ低い水準となりました。
翌連結会計年度につきましても、継続的に流動化を実施するとともに、競争力のある物流施設の投資を実施してまいります。
・その他
その他の事業におきましては、グループ向け自動車販売・整備の増加及び保険販売が好調に推移いたしましたが、当連結会計年度の営業利益率は前連結会計年度に比べ低い水準となりました。
翌連結会計年度につきましても、物流事業に関連する付加価値サービスの拡大や、次代を見据えたビジネスモデルの構築・新技術導入等に取り組んでまいります。