有価証券報告書-第18期(2023/04/01-2024/03/31)
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、2023年5月から感染症の法律上の取扱いが引き下げられ、経済社会活動の制限が取り除かれたことなどを背景に、景気は緩やかに回復いたしました。しかしながら、国内の物価上昇や為替相場での円安の進行のほか、世界的な金融引き締め政策の継続や地政学リスクの拡大などを背景とした経済成長の鈍化懸念など、先行きは依然として不透明な状況が続いております。
物流業界におきましては、国内では、インフレの進行による実質賃金の低下等を背景に足元の宅配便需要は不安定な状況にありますが、コロナ禍を契機に新たな生活様式として幅広い世代でEC利用が定着し、宅配便に対するニーズは多様化しております。また、「2024年問題」に向けた対応や、急激なインフレの進行等を背景に、当社グループを含む大手事業者を中心に価格改定の動きが加速しております。加えて、「2024年問題」への政府の対策として、2023年6月に関係閣僚会議において「物流革新に向けた政策パッケージ」が策定され、2023年10月には「物流革新緊急パッケージ」が閣議決定されました。このように政府からも、荷主企業、物流事業者、一般消費者が協力して輸送力不足に対応するための環境整備に向けて、商慣行の見直し、物流の効率化、荷主・消費者の行動変容を進める方針が示され、持続可能な物流を実現するための取組みが推進されております。また、国際物流市場では、世界経済の減速等に伴い、海上・航空貨物の需要は低調に推移しておりますが、地政学リスクの拡大や越境ECの増加等を背景としたグローバルサプライチェーン再構築の動きは継続しております。
当社グループにおきましては、2023年3月期から2025年3月期までの中期経営計画「SGH Story 2024」の2年目として、総合物流ソリューションの高度化を推し進め、グループ横断の先進的ロジスティクスプロジェクトチーム 「GOAL」を中心に、脱炭素をはじめとした社会・環境課題解決に向けたサービスや、宅配便以外の付加価値を提供するソリューション「TMS」などの提案営業を積極的に行ってまいりました。加えて、2050年のカーボンニュートラル達成に向けて、再生可能エネルギーの活用や環境に配慮した物流施設の開発等、当社グループのGHG排出量を削減することにとどまらず、効率的な物流サービスの提供によりお客さまの環境負荷低減に貢献する物流サービスの提供も進めてまいりました。その結果、国際環境非営利団体CDPから、気候変動対応における世界の先進企業として最高評価である「気候変動Aリスト」に3年連続で選定されました。
このような状況のもと、当社グループの中核事業であるデリバリー事業におきましては、物価調整後の家計消費支出の弱まり等の影響を受け、宅配便の取扱個数は減少いたしました。一方で、2023年4月からの届出運賃の改定や、取引ごとの適正運賃収受の取組みにより、平均単価は上昇いたしました。また、2023年12月に、住友商事株式会社、米国のスタートアップ企業でAIロボティクスソフトウェアの開発等を行うDexterity, Inc.と、今後の輸送力不足に対応する取組みの一環として、物流業界初の「AI搭載の荷積みロボット」の実証実験を行う共同プロジェクトを発足いたしました。ロジスティクス事業におきましては、米国での消費者マインドには回復の兆しも見え始めたものの、物価上昇による金融引き締めなどを背景とした経済成長の鈍化懸念等は継続しており、海上・航空貨物ともに取扱量が減少いたしました。海上・航空運賃につきましては一部では上昇も見られるものの、全体としては底這い状況が継続しております。また、2024年3月には、国際輸送ビジネスにおける最適なガバナンス体制の構築やグループ間連携の一層の強化等を目的に、当社の連結子会社であり、スリランカの物流企業であるEXPOLANKA HOLDINGS PLCの非上場化手続に着手いたしました。不動産事業におきましては、計画的に保有不動産を売却いたしました。その他の事業におきましては、前連結会計年度において半導体不足等で不振であった新車販売が回復いたしました。
この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は次のとおりとなりました。
イ.財政状態
前連結会計年度に行われたTrans American及びLocher Evers Internationalとの企業結合について、当連結会計年度に確定したため、前連結会計年度との比較・分析に当たっては、暫定的な会計処理の確定による見直し後の金額を用いて前連結会計年度末との比較・分析を行っております。
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は3,973億77百万円となり、前連結会計年度末に比べ91億69百万円減少いたしました。主な要因は、現金及び預金が309億82百万円減少した一方で、販売用不動産が156億45百万円、受取手形、営業未収金及び契約資産が37億80百万円、未収税金等の増加等によりその他流動資産が24億6百万円それぞれ増加したことによるものであります。固定資産は4,996億72百万円となり、前連結会計年度末に比べ12億63百万円増加いたしました。主な要因は、2026年度稼働予定の「関西エリア中継センター」に係る設備投資の実行等により建設仮勘定が124億44百万円、車両運搬具が74億89百万円それぞれ増加した一方で、土地が192億32百万円減少したことによるものであります。
この結果、総資産は8,970億49百万円となり、前連結会計年度末に比べ79億6百万円減少いたしました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は2,183億1百万円となり、前連結会計年度末に比べ106億21百万円減少いたしました。主な要因は、未払法人税等が294億45百万円減少した一方で、1年内返済予定の長期借入金が114億18百万円、預り金が58億66百万円それぞれ増加したことによるものであります。固定負債は884億86百万円となり、前連結会計年度末に比べ201億40百万円減少いたしました。主な要因は、長期借入金の返済等により有利子負債が237億66百万円減少した一方で、繰延税金負債の増加等によりその他固定負債が29億20百万円増加したことによるものであります。
この結果、負債合計は3,067億87百万円となり、前連結会計年度末に比べ307億62百万円減少いたしました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は5,902億61百万円となり、前連結会計年度末に比べ228億56百万円増加いたしました。主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益582億79百万円を計上、為替換算調整勘定が74億58百万円増加した一方で、剰余金の配当326億47百万円の実施に加え、自己株式の取得等により自己株式が99億71百万円増加(純資産への影響は減少)したことによるものであります。
この結果、自己資本比率は64.4%となり、前連結会計年度末に比べ3.2ポイント上昇いたしました。
ロ.経営成績
(営業収益)
デリバリー事業におきましては、物価調整後の家計消費支出の弱まり等の影響を受け、BtoB・BtoCともに取扱個数が減少いたしました。平均単価は、小型荷物の割合の上昇等による下押し要因があるものの、2023年4月からの届出運賃の改定や、取引ごとの適正運賃収受の取組みの効果により上昇いたしました。「TMS」については、「GOAL」による提案営業等を継続しておりますが、前連結会計年度に受託した感染症関連案件が剥落した影響等もあり、売上高が減少いたしました。ロジスティクス事業におきましては、米国での消費者マインドには回復の兆しも見え始めたものの、物価上昇による金融引き締めなどを背景とした経済成長の鈍化懸念等は継続しており、海上・航空貨物の取扱量は減少いたしました。また、海上・航空運賃については一部では上昇も見られるものの、全体としては底這い状況が継続しております。不動産事業におきましては、計画的に保有不動産を売却いたしました。その他の事業におきましては、前連結会計年度において半導体不足等の影響で不振であった新車販売が回復いたしました。
この結果、営業収益は1兆3,169億40百万円となり、前連結会計年度に比べ8.2%の減少となりました。
(営業原価、販売費及び一般管理費、営業利益)
デリバリー事業を中心に、各種デジタライゼーションの推進など、お客さまの利便性や生産性向上への取組みを継続して行ってまいりました。また、持続的成長に向けた当連結会計年度の重点的な取組みとして、従業員に対する給与の引き上げやパートナー企業との関係強化などの社内外リソースの強靭化とサービス領域拡張による成長基盤の確立を強化ポイントとして各種施策にも取り組んでおります。
この結果、営業原価は1兆1,629億49百万円(前期比6.0%減)、販売費及び一般管理費は647億86百万円(同4.9%増)となりました。営業利益は892億4百万円(同34.1%減)となり、営業利益率は6.8%と前連結会計年度に比べ2.7%ポイント低下いたしました。
(営業外損益、経常利益)
営業外収益は、受取保険配当金や受取利息の計上等により45億47百万円(前期比0.7%減)となりました。営業外費用は、支払利息の計上等により29億1百万円(同51.6%増)となりました。
この結果、経常利益は908億50百万円となり、前連結会計年度に比べ34.1%の減少となりました。
(特別損益、税金等調整前当期純利益)
特別利益は、固定資産売却益の計上等により1億14百万円(前期比99.8%減)となりました。特別損失は、固定資産除却損の計上等により24億47百万円(前期は3億23百万円)となりました。
この結果、税金等調整前当期純利益は885億18百万円となり、前連結会計年度に比べ52.8%の減少となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
法人税等317億11百万円(前期比45.1%減)、非支配株主に帰属する当期純損失14億73百万円(前期は非支配株主に帰属する当期純利益32億10百万円)を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は582億79百万円となり、前連結会計年度に比べ53.9%の減少となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
・デリバリー事業
デリバリー事業におきましては、物価調整後の家計消費支出の弱まり等の影響を受け、BtoB・BtoCともに取扱個数が減少いたしました。平均単価は、小型荷物の割合の上昇等による下押し要因があるものの、2023年4月からの届出運賃の改定や、取引ごとの適正運賃収受の取組みの効果により上昇いたしました。「TMS」については、「GOAL」による提案営業等を継続しておりますが、前連結会計年度に受託した感染症関連案件が剥落した影響等もあり、売上高が減少いたしました。当社グループは、継続的なデジタライゼーションの推進によるお客さまの利便性や、生産性向上の取組みとして、2023年4月から、LINE株式会社(現・LINEヤフー株式会社)が運営・開発するコミュニケーションアプリ「LINE(ライン)」において、「配達予定通知」や「お荷物問い合わせサービス」などがご利用いただける佐川急便LINE公式アカウントを開設いたしました。加えて、2023年12月に、住友商事株式会社、米国のスタートアップ企業でAIロボティクスソフトウェアの開発等を行うDexterity, Inc.と、今後の輸送力不足に対応する取組みの一環として、物流業界初の「AI搭載の荷積みロボット」の実証実験を行う共同プロジェクトを発足いたしました。
この結果、当セグメントの営業収益は1兆285億30百万円(前期比1.8%減)、営業利益は815億3百万円(同18.3%減)となりました。
・ロジスティクス事業
ロジスティクス事業におきましては、米国での消費者マインドには回復の兆しも見え始めたものの、物価上昇による金融引き締めなどを背景とした経済成長の鈍化懸念等は継続しており、海上・航空貨物の取扱量は減少いたしました。また、海上・航空運賃については一部では上昇も見られるものの、全体としては底這い状況が継続しております。
この結果、当セグメントの営業収益は2,197億61百万円(前期比30.2%減)、営業損失は48億54百万円(前期は営業利益192億39百万円)となりました。
・不動産事業
不動産事業におきましては、計画的に保有不動産を売却いたしました。
この結果、当セグメントの営業収益は126億23百万円(前期比35.4%減)、営業利益は71億39百万円(同28.2%減)となりました。
・その他
その他の事業におきましては、前連結会計年度において半導体不足等の影響で不振であった新車販売が回復いたしました。
この結果、当セグメントの営業収益は560億24百万円(前期比6.1%増)、営業利益は34億15百万円(同20.5%減)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ309億82百万円減少し1,472億66百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により得た資金は776億29百万円(前期比53.1%減)となりました。
主な要因は、収入要因として税金等調整前当期純利益885億18百万円、減価償却費348億17百万円をそれぞれ計上した一方で、支出要因として法人税等の支払額590億86百万円を計上したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動に使用した資金は413億57百万円(前期は280億28百万円の収入)となりました。
主な要因は、支出要因として有形固定資産の取得による支出352億19百万円、無形固定資産の取得による支出65億55百万円をそれぞれ計上したことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動に使用した資金は703億10百万円(前期は1,054億69百万円の支出)となりました。
主な要因は、支出要因として配当金の支払額326億46百万円、長期借入金の返済による支出208億70百万円、自己株式の取得による支出99億99百万円、リース債務の返済による支出92億83百万円をそれぞれ計上したことによるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
セグメント別の営業収益及び当社グループの中核事業であるデリバリー事業の商品別取扱個数は次のとおりであります。
なお、当社グループは、デリバリー事業、ロジスティクス事業、不動産事業を中心とするサービス提供を主たる業務としているため、生産及び受注の状況は記載しておりません。
イ.セグメント別の営業収益
当連結会計年度のセグメント別の営業収益は、次のとおりであります。
(注)営業収益は外部顧客に対する売上高を示しております。
ロ.デリバリー事業の商品別取扱個数
当連結会計年度のデリバリー事業の商品別取扱個数は、次のとおりであります。
(注)1.取扱個数は、当社グループの主要商品の取扱個数であります。
2.飛脚宅配便は、佐川急便株式会社が国土交通省に届け出ている宅配便の個数であります。
3.その他は、佐川急便株式会社の提供する飛脚ラージサイズ宅配便及びその他の会社の取扱個数であります。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの事業セグメントは、デリバリー事業、ロジスティクス事業、不動産事業とその他で構成され、主要セグメントであるデリバリー事業が、当連結会計年度において営業収益の8割程度を占めております。
・デリバリー事業
デリバリー事業におきましては、主力の宅配便に加え、あらゆるお客さまのニーズに応えた「運ぶ」を実現する「TMS」をはじめとした、「GOAL」による付加価値の高い物流ソリューションの開発・提供を行っております。また、これらの物流ソリューションの提供は、自社のセールスドライバーや外部輸送業者を通じて行うことから、営業費用の80%以上を人件費と外注費が占めております。そのため、働き方改革の推進、輸送品質の維持・向上や輸送インフラの強化、デジタライゼーションによる生産性向上等に継続的に取り組み、人件費・外注費の適切なコストコントロールに注力しております。
当連結会計年度の宅配便の取扱個数は、物価調整後の家計消費支出の弱まり等の影響を受け、通期で1,373百万個(前期比2.7%減)となりました。一方、平均単価は、小型荷物の割合の上昇等による下押し要因があるものの、2023年4月からの届出運賃の改定や、取引ごとの適正運賃収受の取組みの効果により、648円(同0.9%増)と上昇いたしました。また、「TMS」は、「GOAL」による提案営業等を継続しておりますが、前連結会計年度に受託した感染症関連案件が剥落した影響もあり、通期で営業収益1,130億33百万円(同5.6%減)となりました。この結果、当セグメントの営業収益は1兆285億30百万円(同1.8%減)となりました。
人件費及び外注費につきましては、それぞれ3,595億35百万円(同0.5%増)、4,927億60百万円(同0.8%減)となりました。人件費増加の主な要因は、持続的成長の実現に向けた取組みとして、期初から従業員の給与引き上げを行ったことであります。一方、外注費減少の主な要因は、宅配便の取扱個数減少や「TMS」の減収に伴う減少でございます。この結果、営業利益は815億3百万円(同18.3%減)となり、営業利益率は7.9%と前連結会計年度から1.6ポイント低下いたしました。
・ロジスティクス事業
ロジスティクス事業におきましては、主に当社の連結子会社であるEXPOLANKA HOLDINGS PLCを中心に海外で展開するフレイトフォワーディングに加え、デリバリー事業と連携した3PLや日本発着の国際輸送を展開しております。当セグメントは、フレイトフォワーディングを中心とする国際物流事業と3PLを中心とする国内物流事業とに区分しており、営業収益の構成比は、それぞれおおよそ5割程度となっております。
当連結会計年度におきましては、第3四半期連結会計期間から米国での消費者マインドには回復の兆しも見え始めたものの、物価上昇による金融引き締めなどを背景とした経済成長の鈍化懸念等が継続したことにより、海上・航空貨物ともに取扱量は減少いたしました。また、海上・航空運賃は、一部では上昇が見られたものの、全体としては底這い状況が継続いたしました。一方、国内におきましては、「GOAL」による包括的なソリューション提案等を継続しておりますが、前連結会計年度に受託した感染症関連案件が剥落した影響等により、営業収益は2,197億61百万円(前期比30.2%減)、営業損失は48億54百万円(前期は営業利益192億39百万円)となりました。
・不動産事業
不動産事業におきましては、当社グループの物流施設を中心に不動産の開発、賃貸、管理を行っております。
当連結会計年度におきましては、物流施設にかかる保有不動産の売却規模が前連結会計年度と異なったことにより、営業収益は126億23百万円(前期比35.4%減)、営業利益は71億39百万円(同28.2%減)となりましたが、営業利益率は56.6%と前連結会計年度から5.8ポイント上昇いたしました。
・その他
その他の事業におきましては、人材派遣・請負、自動車整備・販売、宅配便の代金引換サービスや物流システムの開発・運用等の物流附帯サービスを提供しております。
当連結会計年度におきましては、前連結会計年度において半導体不足等の影響で不振であった新車販売が回復したものの、BPO取引が減少したことにより、営業収益は560億24百万円(前期比6.1%増)、営業利益は34億15百万円(同20.5%減)となり、営業利益率は6.1%と前連結会計年度から2.0ポイント低下いたしました。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
・財務戦略の基本的な考え方
当社グループは、高い財務健全性と資本効率を両立しつつ、中長期的な企業価値向上のための成長投資の実施と株主還元の充実を図ることを財務戦略の基本方針としております。
・財務健全性の状況
当社グループは、中長期的な企業価値向上のための成長投資を支える強固な財務基盤が必要と考えております。当連結会計年度末の自己資本比率は64.4%となり、前連結会計年度末に比べ3.2ポイント上昇いたしました。今後も財務健全性の維持に努めてまいります。
・資本効率の向上
当社グループは資本コストを重視し、投資において投下資本利益率が資本コストを上回るよう管理し、ROEの維持・向上を意識した経営を実施しております。当連結会計年度のROEは10.3%と、前連結会計年度から13.8ポイント低下いたしました。今後も成長が期待される分野へ規律ある投資を行うことで、企業価値の最大化に努めてまいります。
・フリーキャッシュ・フローの状況
当社グループは、フリーキャッシュ・フローを営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローの合計と定義し、成長投資、内部留保や株主還元などを検討する際の指標の一つとして重視しております。
(単位:百万円)
・株主還元
当社グループは、株主へ配当金による利益還元を実施しております。配当政策については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載のとおりであります。また、当連結会計年度におきましては、株主還元の強化と資本効率の向上を図ることを目的として、2023年5月1日から2023年9月22日までの間に自己株式4,769,200株(取得価額99億99百万円)を取得いたしました。
・流動性の状況
当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、1,472億66百万円となりました。当連結会計年度末の短期借入金149億18百万円と、1年内返済予定の長期借入金300億84百万円の返済に必要な流動性を十分に満たしていると認識しております。
・資金調達手段
当社グループの事業活動における運転資金については、原則として手持資金(利益等の内部留保資金)で賄っております。設備資金等については、手持資金とのバランスを勘案し、必要に応じて外部から長期借入金で調達しております。
当社グループは、当社及び国内子会社を対象に、CMS(キャッシュマネジメントシステム)を利用し、グループ内資金の包括的管理を実施しており、国内子会社において、設備投資等に伴う大規模な資金が必要となる場合は、当社が国内各子会社に長期貸付を行っております。
海外子会社においては、当社が、投資計画・資金計画に基づいて貸付又は増資引受けを行い、地域に所在する海外各子会社の資金を管理する体制としております。また、外貨資金需要への機動的な対応と調達手段の多様化を目的として、金融機関との間に外貨建貸越極度枠を設定しております。なお、当社の連結子会社であるEXPOLANKA HOLDINGS PLC及び上海虹迪物流科技有限公司においては、資金調達の一部を金融機関から直接行っております。
翌連結会計年度につきましても、上記の方針に基づき資金調達を行う予定であります。なお、重要な設備の新設計画については、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画 (1)重要な設備の新設」に記載のとおりであります。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たり、当社グループが採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。当社グループは連結財務諸表を作成するに当たり、退職給付に係る負債、税効果会計、貸倒引当金の計上等において、過去の実績等を勘案するなど合理的な見積りを行い、その結果を反映させておりますが、実際の結果は見積りの不確実性があるためこれらの見積りとは異なる場合があります。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、2023年5月から感染症の法律上の取扱いが引き下げられ、経済社会活動の制限が取り除かれたことなどを背景に、景気は緩やかに回復いたしました。しかしながら、国内の物価上昇や為替相場での円安の進行のほか、世界的な金融引き締め政策の継続や地政学リスクの拡大などを背景とした経済成長の鈍化懸念など、先行きは依然として不透明な状況が続いております。
物流業界におきましては、国内では、インフレの進行による実質賃金の低下等を背景に足元の宅配便需要は不安定な状況にありますが、コロナ禍を契機に新たな生活様式として幅広い世代でEC利用が定着し、宅配便に対するニーズは多様化しております。また、「2024年問題」に向けた対応や、急激なインフレの進行等を背景に、当社グループを含む大手事業者を中心に価格改定の動きが加速しております。加えて、「2024年問題」への政府の対策として、2023年6月に関係閣僚会議において「物流革新に向けた政策パッケージ」が策定され、2023年10月には「物流革新緊急パッケージ」が閣議決定されました。このように政府からも、荷主企業、物流事業者、一般消費者が協力して輸送力不足に対応するための環境整備に向けて、商慣行の見直し、物流の効率化、荷主・消費者の行動変容を進める方針が示され、持続可能な物流を実現するための取組みが推進されております。また、国際物流市場では、世界経済の減速等に伴い、海上・航空貨物の需要は低調に推移しておりますが、地政学リスクの拡大や越境ECの増加等を背景としたグローバルサプライチェーン再構築の動きは継続しております。
当社グループにおきましては、2023年3月期から2025年3月期までの中期経営計画「SGH Story 2024」の2年目として、総合物流ソリューションの高度化を推し進め、グループ横断の先進的ロジスティクスプロジェクトチーム 「GOAL」を中心に、脱炭素をはじめとした社会・環境課題解決に向けたサービスや、宅配便以外の付加価値を提供するソリューション「TMS」などの提案営業を積極的に行ってまいりました。加えて、2050年のカーボンニュートラル達成に向けて、再生可能エネルギーの活用や環境に配慮した物流施設の開発等、当社グループのGHG排出量を削減することにとどまらず、効率的な物流サービスの提供によりお客さまの環境負荷低減に貢献する物流サービスの提供も進めてまいりました。その結果、国際環境非営利団体CDPから、気候変動対応における世界の先進企業として最高評価である「気候変動Aリスト」に3年連続で選定されました。
このような状況のもと、当社グループの中核事業であるデリバリー事業におきましては、物価調整後の家計消費支出の弱まり等の影響を受け、宅配便の取扱個数は減少いたしました。一方で、2023年4月からの届出運賃の改定や、取引ごとの適正運賃収受の取組みにより、平均単価は上昇いたしました。また、2023年12月に、住友商事株式会社、米国のスタートアップ企業でAIロボティクスソフトウェアの開発等を行うDexterity, Inc.と、今後の輸送力不足に対応する取組みの一環として、物流業界初の「AI搭載の荷積みロボット」の実証実験を行う共同プロジェクトを発足いたしました。ロジスティクス事業におきましては、米国での消費者マインドには回復の兆しも見え始めたものの、物価上昇による金融引き締めなどを背景とした経済成長の鈍化懸念等は継続しており、海上・航空貨物ともに取扱量が減少いたしました。海上・航空運賃につきましては一部では上昇も見られるものの、全体としては底這い状況が継続しております。また、2024年3月には、国際輸送ビジネスにおける最適なガバナンス体制の構築やグループ間連携の一層の強化等を目的に、当社の連結子会社であり、スリランカの物流企業であるEXPOLANKA HOLDINGS PLCの非上場化手続に着手いたしました。不動産事業におきましては、計画的に保有不動産を売却いたしました。その他の事業におきましては、前連結会計年度において半導体不足等で不振であった新車販売が回復いたしました。
この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は次のとおりとなりました。
イ.財政状態
前連結会計年度に行われたTrans American及びLocher Evers Internationalとの企業結合について、当連結会計年度に確定したため、前連結会計年度との比較・分析に当たっては、暫定的な会計処理の確定による見直し後の金額を用いて前連結会計年度末との比較・分析を行っております。
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は3,973億77百万円となり、前連結会計年度末に比べ91億69百万円減少いたしました。主な要因は、現金及び預金が309億82百万円減少した一方で、販売用不動産が156億45百万円、受取手形、営業未収金及び契約資産が37億80百万円、未収税金等の増加等によりその他流動資産が24億6百万円それぞれ増加したことによるものであります。固定資産は4,996億72百万円となり、前連結会計年度末に比べ12億63百万円増加いたしました。主な要因は、2026年度稼働予定の「関西エリア中継センター」に係る設備投資の実行等により建設仮勘定が124億44百万円、車両運搬具が74億89百万円それぞれ増加した一方で、土地が192億32百万円減少したことによるものであります。
この結果、総資産は8,970億49百万円となり、前連結会計年度末に比べ79億6百万円減少いたしました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は2,183億1百万円となり、前連結会計年度末に比べ106億21百万円減少いたしました。主な要因は、未払法人税等が294億45百万円減少した一方で、1年内返済予定の長期借入金が114億18百万円、預り金が58億66百万円それぞれ増加したことによるものであります。固定負債は884億86百万円となり、前連結会計年度末に比べ201億40百万円減少いたしました。主な要因は、長期借入金の返済等により有利子負債が237億66百万円減少した一方で、繰延税金負債の増加等によりその他固定負債が29億20百万円増加したことによるものであります。
この結果、負債合計は3,067億87百万円となり、前連結会計年度末に比べ307億62百万円減少いたしました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は5,902億61百万円となり、前連結会計年度末に比べ228億56百万円増加いたしました。主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益582億79百万円を計上、為替換算調整勘定が74億58百万円増加した一方で、剰余金の配当326億47百万円の実施に加え、自己株式の取得等により自己株式が99億71百万円増加(純資産への影響は減少)したことによるものであります。
この結果、自己資本比率は64.4%となり、前連結会計年度末に比べ3.2ポイント上昇いたしました。
ロ.経営成績
(営業収益)
デリバリー事業におきましては、物価調整後の家計消費支出の弱まり等の影響を受け、BtoB・BtoCともに取扱個数が減少いたしました。平均単価は、小型荷物の割合の上昇等による下押し要因があるものの、2023年4月からの届出運賃の改定や、取引ごとの適正運賃収受の取組みの効果により上昇いたしました。「TMS」については、「GOAL」による提案営業等を継続しておりますが、前連結会計年度に受託した感染症関連案件が剥落した影響等もあり、売上高が減少いたしました。ロジスティクス事業におきましては、米国での消費者マインドには回復の兆しも見え始めたものの、物価上昇による金融引き締めなどを背景とした経済成長の鈍化懸念等は継続しており、海上・航空貨物の取扱量は減少いたしました。また、海上・航空運賃については一部では上昇も見られるものの、全体としては底這い状況が継続しております。不動産事業におきましては、計画的に保有不動産を売却いたしました。その他の事業におきましては、前連結会計年度において半導体不足等の影響で不振であった新車販売が回復いたしました。
この結果、営業収益は1兆3,169億40百万円となり、前連結会計年度に比べ8.2%の減少となりました。
(営業原価、販売費及び一般管理費、営業利益)
デリバリー事業を中心に、各種デジタライゼーションの推進など、お客さまの利便性や生産性向上への取組みを継続して行ってまいりました。また、持続的成長に向けた当連結会計年度の重点的な取組みとして、従業員に対する給与の引き上げやパートナー企業との関係強化などの社内外リソースの強靭化とサービス領域拡張による成長基盤の確立を強化ポイントとして各種施策にも取り組んでおります。
この結果、営業原価は1兆1,629億49百万円(前期比6.0%減)、販売費及び一般管理費は647億86百万円(同4.9%増)となりました。営業利益は892億4百万円(同34.1%減)となり、営業利益率は6.8%と前連結会計年度に比べ2.7%ポイント低下いたしました。
(営業外損益、経常利益)
営業外収益は、受取保険配当金や受取利息の計上等により45億47百万円(前期比0.7%減)となりました。営業外費用は、支払利息の計上等により29億1百万円(同51.6%増)となりました。
この結果、経常利益は908億50百万円となり、前連結会計年度に比べ34.1%の減少となりました。
(特別損益、税金等調整前当期純利益)
特別利益は、固定資産売却益の計上等により1億14百万円(前期比99.8%減)となりました。特別損失は、固定資産除却損の計上等により24億47百万円(前期は3億23百万円)となりました。
この結果、税金等調整前当期純利益は885億18百万円となり、前連結会計年度に比べ52.8%の減少となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
法人税等317億11百万円(前期比45.1%減)、非支配株主に帰属する当期純損失14億73百万円(前期は非支配株主に帰属する当期純利益32億10百万円)を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は582億79百万円となり、前連結会計年度に比べ53.9%の減少となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
・デリバリー事業
デリバリー事業におきましては、物価調整後の家計消費支出の弱まり等の影響を受け、BtoB・BtoCともに取扱個数が減少いたしました。平均単価は、小型荷物の割合の上昇等による下押し要因があるものの、2023年4月からの届出運賃の改定や、取引ごとの適正運賃収受の取組みの効果により上昇いたしました。「TMS」については、「GOAL」による提案営業等を継続しておりますが、前連結会計年度に受託した感染症関連案件が剥落した影響等もあり、売上高が減少いたしました。当社グループは、継続的なデジタライゼーションの推進によるお客さまの利便性や、生産性向上の取組みとして、2023年4月から、LINE株式会社(現・LINEヤフー株式会社)が運営・開発するコミュニケーションアプリ「LINE(ライン)」において、「配達予定通知」や「お荷物問い合わせサービス」などがご利用いただける佐川急便LINE公式アカウントを開設いたしました。加えて、2023年12月に、住友商事株式会社、米国のスタートアップ企業でAIロボティクスソフトウェアの開発等を行うDexterity, Inc.と、今後の輸送力不足に対応する取組みの一環として、物流業界初の「AI搭載の荷積みロボット」の実証実験を行う共同プロジェクトを発足いたしました。
この結果、当セグメントの営業収益は1兆285億30百万円(前期比1.8%減)、営業利益は815億3百万円(同18.3%減)となりました。
・ロジスティクス事業
ロジスティクス事業におきましては、米国での消費者マインドには回復の兆しも見え始めたものの、物価上昇による金融引き締めなどを背景とした経済成長の鈍化懸念等は継続しており、海上・航空貨物の取扱量は減少いたしました。また、海上・航空運賃については一部では上昇も見られるものの、全体としては底這い状況が継続しております。
この結果、当セグメントの営業収益は2,197億61百万円(前期比30.2%減)、営業損失は48億54百万円(前期は営業利益192億39百万円)となりました。
・不動産事業
不動産事業におきましては、計画的に保有不動産を売却いたしました。
この結果、当セグメントの営業収益は126億23百万円(前期比35.4%減)、営業利益は71億39百万円(同28.2%減)となりました。
・その他
その他の事業におきましては、前連結会計年度において半導体不足等の影響で不振であった新車販売が回復いたしました。
この結果、当セグメントの営業収益は560億24百万円(前期比6.1%増)、営業利益は34億15百万円(同20.5%減)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ309億82百万円減少し1,472億66百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により得た資金は776億29百万円(前期比53.1%減)となりました。
主な要因は、収入要因として税金等調整前当期純利益885億18百万円、減価償却費348億17百万円をそれぞれ計上した一方で、支出要因として法人税等の支払額590億86百万円を計上したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動に使用した資金は413億57百万円(前期は280億28百万円の収入)となりました。
主な要因は、支出要因として有形固定資産の取得による支出352億19百万円、無形固定資産の取得による支出65億55百万円をそれぞれ計上したことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動に使用した資金は703億10百万円(前期は1,054億69百万円の支出)となりました。
主な要因は、支出要因として配当金の支払額326億46百万円、長期借入金の返済による支出208億70百万円、自己株式の取得による支出99億99百万円、リース債務の返済による支出92億83百万円をそれぞれ計上したことによるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
セグメント別の営業収益及び当社グループの中核事業であるデリバリー事業の商品別取扱個数は次のとおりであります。
なお、当社グループは、デリバリー事業、ロジスティクス事業、不動産事業を中心とするサービス提供を主たる業務としているため、生産及び受注の状況は記載しておりません。
イ.セグメント別の営業収益
当連結会計年度のセグメント別の営業収益は、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) | ||
金額(百万円) | 前期比(%) | 金額(百万円) | 前期比(%) | |
デリバリー事業 | 1,047,364 | 100.4 | 1,028,530 | 98.2 |
ロジスティクス事業 | 314,877 | 66.0 | 219,761 | 69.8 |
不動産事業 | 19,549 | 173.1 | 12,623 | 64.6 |
その他 | 52,818 | 92.9 | 56,024 | 106.1 |
合計 | 1,434,609 | 90.3 | 1,316,940 | 91.8 |
(注)営業収益は外部顧客に対する売上高を示しております。
ロ.デリバリー事業の商品別取扱個数
当連結会計年度のデリバリー事業の商品別取扱個数は、次のとおりであります。
商品の名称 | 前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) | ||
取扱個数 | (百万個) | 1,410 | 1,373 | |
飛脚宅配便 | (百万個) | 1,359 | 1,325 | |
その他 | (百万個) | 50 | 47 |
(注)1.取扱個数は、当社グループの主要商品の取扱個数であります。
2.飛脚宅配便は、佐川急便株式会社が国土交通省に届け出ている宅配便の個数であります。
3.その他は、佐川急便株式会社の提供する飛脚ラージサイズ宅配便及びその他の会社の取扱個数であります。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの事業セグメントは、デリバリー事業、ロジスティクス事業、不動産事業とその他で構成され、主要セグメントであるデリバリー事業が、当連結会計年度において営業収益の8割程度を占めております。
・デリバリー事業
デリバリー事業におきましては、主力の宅配便に加え、あらゆるお客さまのニーズに応えた「運ぶ」を実現する「TMS」をはじめとした、「GOAL」による付加価値の高い物流ソリューションの開発・提供を行っております。また、これらの物流ソリューションの提供は、自社のセールスドライバーや外部輸送業者を通じて行うことから、営業費用の80%以上を人件費と外注費が占めております。そのため、働き方改革の推進、輸送品質の維持・向上や輸送インフラの強化、デジタライゼーションによる生産性向上等に継続的に取り組み、人件費・外注費の適切なコストコントロールに注力しております。
当連結会計年度の宅配便の取扱個数は、物価調整後の家計消費支出の弱まり等の影響を受け、通期で1,373百万個(前期比2.7%減)となりました。一方、平均単価は、小型荷物の割合の上昇等による下押し要因があるものの、2023年4月からの届出運賃の改定や、取引ごとの適正運賃収受の取組みの効果により、648円(同0.9%増)と上昇いたしました。また、「TMS」は、「GOAL」による提案営業等を継続しておりますが、前連結会計年度に受託した感染症関連案件が剥落した影響もあり、通期で営業収益1,130億33百万円(同5.6%減)となりました。この結果、当セグメントの営業収益は1兆285億30百万円(同1.8%減)となりました。
人件費及び外注費につきましては、それぞれ3,595億35百万円(同0.5%増)、4,927億60百万円(同0.8%減)となりました。人件費増加の主な要因は、持続的成長の実現に向けた取組みとして、期初から従業員の給与引き上げを行ったことであります。一方、外注費減少の主な要因は、宅配便の取扱個数減少や「TMS」の減収に伴う減少でございます。この結果、営業利益は815億3百万円(同18.3%減)となり、営業利益率は7.9%と前連結会計年度から1.6ポイント低下いたしました。
・ロジスティクス事業
ロジスティクス事業におきましては、主に当社の連結子会社であるEXPOLANKA HOLDINGS PLCを中心に海外で展開するフレイトフォワーディングに加え、デリバリー事業と連携した3PLや日本発着の国際輸送を展開しております。当セグメントは、フレイトフォワーディングを中心とする国際物流事業と3PLを中心とする国内物流事業とに区分しており、営業収益の構成比は、それぞれおおよそ5割程度となっております。
当連結会計年度におきましては、第3四半期連結会計期間から米国での消費者マインドには回復の兆しも見え始めたものの、物価上昇による金融引き締めなどを背景とした経済成長の鈍化懸念等が継続したことにより、海上・航空貨物ともに取扱量は減少いたしました。また、海上・航空運賃は、一部では上昇が見られたものの、全体としては底這い状況が継続いたしました。一方、国内におきましては、「GOAL」による包括的なソリューション提案等を継続しておりますが、前連結会計年度に受託した感染症関連案件が剥落した影響等により、営業収益は2,197億61百万円(前期比30.2%減)、営業損失は48億54百万円(前期は営業利益192億39百万円)となりました。
・不動産事業
不動産事業におきましては、当社グループの物流施設を中心に不動産の開発、賃貸、管理を行っております。
当連結会計年度におきましては、物流施設にかかる保有不動産の売却規模が前連結会計年度と異なったことにより、営業収益は126億23百万円(前期比35.4%減)、営業利益は71億39百万円(同28.2%減)となりましたが、営業利益率は56.6%と前連結会計年度から5.8ポイント上昇いたしました。
・その他
その他の事業におきましては、人材派遣・請負、自動車整備・販売、宅配便の代金引換サービスや物流システムの開発・運用等の物流附帯サービスを提供しております。
当連結会計年度におきましては、前連結会計年度において半導体不足等の影響で不振であった新車販売が回復したものの、BPO取引が減少したことにより、営業収益は560億24百万円(前期比6.1%増)、営業利益は34億15百万円(同20.5%減)となり、営業利益率は6.1%と前連結会計年度から2.0ポイント低下いたしました。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
・財務戦略の基本的な考え方
当社グループは、高い財務健全性と資本効率を両立しつつ、中長期的な企業価値向上のための成長投資の実施と株主還元の充実を図ることを財務戦略の基本方針としております。
・財務健全性の状況
当社グループは、中長期的な企業価値向上のための成長投資を支える強固な財務基盤が必要と考えております。当連結会計年度末の自己資本比率は64.4%となり、前連結会計年度末に比べ3.2ポイント上昇いたしました。今後も財務健全性の維持に努めてまいります。
・資本効率の向上
当社グループは資本コストを重視し、投資において投下資本利益率が資本コストを上回るよう管理し、ROEの維持・向上を意識した経営を実施しております。当連結会計年度のROEは10.3%と、前連結会計年度から13.8ポイント低下いたしました。今後も成長が期待される分野へ規律ある投資を行うことで、企業価値の最大化に努めてまいります。
・フリーキャッシュ・フローの状況
当社グループは、フリーキャッシュ・フローを営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローの合計と定義し、成長投資、内部留保や株主還元などを検討する際の指標の一つとして重視しております。
(単位:百万円)
前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 増減 | |
営業活動によるキャッシュ・フロー | 165,385 | 77,629 | △87,755 |
投資活動によるキャッシュ・フロー | 28,028 | △41,357 | △69,386 |
フリーキャッシュ・フロー | 193,413 | 36,272 | △157,141 |
・株主還元
当社グループは、株主へ配当金による利益還元を実施しております。配当政策については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載のとおりであります。また、当連結会計年度におきましては、株主還元の強化と資本効率の向上を図ることを目的として、2023年5月1日から2023年9月22日までの間に自己株式4,769,200株(取得価額99億99百万円)を取得いたしました。
・流動性の状況
当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、1,472億66百万円となりました。当連結会計年度末の短期借入金149億18百万円と、1年内返済予定の長期借入金300億84百万円の返済に必要な流動性を十分に満たしていると認識しております。
・資金調達手段
当社グループの事業活動における運転資金については、原則として手持資金(利益等の内部留保資金)で賄っております。設備資金等については、手持資金とのバランスを勘案し、必要に応じて外部から長期借入金で調達しております。
当社グループは、当社及び国内子会社を対象に、CMS(キャッシュマネジメントシステム)を利用し、グループ内資金の包括的管理を実施しており、国内子会社において、設備投資等に伴う大規模な資金が必要となる場合は、当社が国内各子会社に長期貸付を行っております。
海外子会社においては、当社が、投資計画・資金計画に基づいて貸付又は増資引受けを行い、地域に所在する海外各子会社の資金を管理する体制としております。また、外貨資金需要への機動的な対応と調達手段の多様化を目的として、金融機関との間に外貨建貸越極度枠を設定しております。なお、当社の連結子会社であるEXPOLANKA HOLDINGS PLC及び上海虹迪物流科技有限公司においては、資金調達の一部を金融機関から直接行っております。
翌連結会計年度につきましても、上記の方針に基づき資金調達を行う予定であります。なお、重要な設備の新設計画については、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画 (1)重要な設備の新設」に記載のとおりであります。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たり、当社グループが採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。当社グループは連結財務諸表を作成するに当たり、退職給付に係る負債、税効果会計、貸倒引当金の計上等において、過去の実績等を勘案するなど合理的な見積りを行い、その結果を反映させておりますが、実際の結果は見積りの不確実性があるためこれらの見積りとは異なる場合があります。