訂正有価証券報告書-第14期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、通商問題等の影響で輸出や製造業が弱含む中、雇用や所得環境の改善などにより緩やかに回復いたしました。2020年以降は、新型コロナの世界的な拡大が経済全般に影響を与えており、先行きが不透明な状況が続いております。
物流業界におきましては、eコマース市場の拡大継続を背景に宅配便に対する社会のニーズが高まっております。一方、下期以降、消費税率の引上げや競争環境の変化に加え、足元は新型コロナ拡大による経済活動への影響により、先行きの不透明感は増しております。
当社グループにおきましては、中期経営計画「Second Stage 2021」の初年度として、進化する物流ソリューションの提供を目的としたグループ横断の先進的ロジスティクスプロジェクトチーム「GOAL」による提案領域の拡大を図ってまいりました。また、同業他社や異業種を含むベンチャー企業等との業務提携のもと、お客様の幅広いニーズに対応するソリューションの提供や事業領域の拡大に努めてまいりました。
このような状況のもと、当社グループの中核事業であるデリバリー事業におきましては、あらゆる「運ぶ」で付加価値を提供する「TMS」をはじめとした「GOAL」による営業の強化や、継続的な適正運賃収受に取り組んでまいりました。ロジスティクス事業におきましては、新規の受託案件増により国内外とも増収となりましたが、拠点見直しによる費用増や新型コロナなどの影響を受けました。不動産事業におきましては、継続的に保有不動産を売却いたしました。その他の事業におきましては、決済方法の多様化による代引決済の減少や、消費税率引上げの影響で新車・中古車の販売が減少いたしました。
この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は次のとおりとなりました。
イ.財政状態
(資産合計)
当連結会計年度末の資産合計は7,722億21百万円となり、前連結会計年度末に比べ94億13百万円増加いたしました。
流動資産は2,708億73百万円となり、前連結会計年度末に比べ272億91百万円減少いたしました。主な要因は、現金及び預金が329億98百万円減少した一方で、未収消費税等の増加によりその他流動資産が53億46百万円増加したことによるものであります。
固定資産は5,013億47百万円となり、前連結会計年度末に比べ367億5百万円増加いたしました。主な要因は、「Xフロンティア」の竣工に伴い建物及び構築物が431億84百万円、車両運搬具が54億12百万円、その他有形固定資産が43億66百万円、機械及び装置が35億67百万円それぞれ増加した一方で、その竣工に伴う振替等により建設仮勘定が220億86百万円減少したことによるものであります。
(負債合計)
当連結会計年度末の負債合計は3,491億38百万円となり、前連結会計年度末に比べ242億42百万円減少いたしました。
流動負債は2,108億74百万円となり、前連結会計年度末に比べ101億94百万円減少いたしました。主な要因は、未払消費税等の減少によりその他流動負債が159億68百万円、預り金が56億78百万円、未払法人税等が32億11百万円、支払手形及び営業未払金が20億61百万円それぞれ減少した一方で、短期借入金が171億55百万円増加したことによるものであります。
固定負債は1,382億63百万円となり、前連結会計年度末に比べ140億47百万円減少いたしました。主な要因は、流動負債への振替等により有利子負債が165億34百万円減少した一方で、資産除去債務が15億22百万円増加したことによるものであります。
(純資産合計)
当連結会計年度末の純資産合計は4,230億83百万円となり、前連結会計年度末に比べ336億55百万円増加いたしました。主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益が472億92百万円となった一方で、剰余金の配当142億92百万円を実施したことによるものであります。
ロ.経営成績
(営業収益)
デリバリー事業におきましては、継続的な適正運賃収受の取組みにより平均単価が上昇したことに加え、取扱個数の増加、「TMS」をはじめとした「GOAL」による付加価値の高いソリューションの提供や、様々なアライアンスによる効果を高める取組みを行ってまいりました。ロジスティクス事業におきましては、国内では新規受託案件が堅調に推移いたしましたが、新型コロナの影響を受けました。海外では新型コロナの影響があったものの、既存顧客の物量増加及び新規顧客の獲得により、フレイトフォワーディングが増加いたしました。また、不動産事業におきましては、継続的に保有不動産を売却いたしました。
この結果、営業収益は1兆1,734億98百万円となり、前連結会計年度に比べ5.0%増加となりました。
(営業原価、販売費及び一般管理費、営業利益)
デリバリー事業を中心とした機械化・省人化等の生産性向上への取組み、輸送品質の維持・向上や輸送インフラの強化を継続的に行ってまいりました。また、ロジスティクス事業におきましては、大口顧客の拠点見直しによる立ち上げコストが発生したことにより費用が増加いたしました。
この結果、営業原価は1兆531億8百万円(前期比5.1%増)、販売費及び一般管理費は449億42百万円(同2.3%減)となりました。一方、営業収益が増加したことにより、営業利益は754億47百万円(同7.2%増)となり、営業利益率は6.4%と前連結会計年度に比べ0.1ポイント上昇いたしました。
(営業外損益、経常利益)
営業外収益は、持分法による投資利益や受取保険配当金の計上等により72億52百万円(前期比4.2%増)となりました。営業外費用は、支払利息の計上等により21億68百万円(同15.1%減)となりました。
この結果、経常利益は805億32百万円となり、前連結会計年度に比べ7.7%増加となりました。
(特別損益、税金等調整前当期純利益)
特別利益44百万円(前期比69.2%減)、特別損失11億36百万円(同50.0%増)を計上した結果、税金等調整前当期純利益は794億40百万円となり、前連結会計年度に比べ7.1%増加となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
法人税等241億97百万円(前期比6.2%増)、非支配株主に帰属する当期純利益79億50百万円(同0.5%増)を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は472億92百万円となり、前連結会計年度に比べ8.8%増加となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
・デリバリー事業
デリバリー事業におきましては、消費税率の引上げ、競争環境の変化及び新型コロナ拡大の影響を受けたものの、当連結会計年度では取扱個数が増加したことに加え、継続的な適正運賃収受の取組みにより平均単価が上昇いたしました。また、「TMS」をはじめとした「GOAL」による付加価値の高いソリューションの提供や、様々なアライアンスによる効果を高める取組みを行ってまいりました。さらに、持続的な成長を見据え、機械化・省人化等の生産性向上への取組み、輸送品質の維持・向上や輸送インフラの強化を継続的に行ってまいりました。
この結果、当セグメントの営業収益は9,554億28百万円(前期比5.7%増)、営業利益は587億16百万円(同5.9%増)となりました。
・ロジスティクス事業
ロジスティクス事業におきましては、国内では、新規受託案件が堅調に推移し増収となりましたが、拠点の見直しによる費用増や新型コロナの影響を受けました。
海外では、新型コロナの影響があったものの、既存顧客の物量増加及び新規顧客の獲得により、フレイトフォワーディングが増加いたしました。
この結果、当セグメントの営業収益は1,358億23百万円(前期比3.2%増)、営業利益は20億63百万円(同22.3%減)となりました。
・不動産事業
不動産事業におきましては、継続的に保有不動産を売却いたしました。
この結果、当セグメントの営業収益は162億38百万円(前期比1.9%減)、営業利益は78億96百万円(同10.7%増)となりました。
・その他
その他の事業におきましては、決済方法の多様化による代引決済の減少や、消費税率引上げの影響で新車・中古車の販売が減少いたしました。
この結果、当セグメントの営業収益は660億8百万円(前期比0.4%減)、営業利益は54億17百万円(同4.8%減)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ329億98百万円減少し687億6百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により得た資金は535億89百万円(前期比38.2%減)となりました。
主な要因は、収入要因として税金等調整前当期純利益の計上794億40百万円、減価償却費の計上230億13百万円があった一方で、支出要因として法人税等の支払額251億24百万円、未払消費税等の減少等によるその他営業活動によるキャッシュ・フロー187億71百万円を計上したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動に使用した資金は615億31百万円(前期は662億67百万円の支出)となりました。
主な要因は、有形固定資産の取得による支出534億63百万円、無形固定資産の取得による支出56億61百万円を計上したことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動に使用した資金は243億72百万円(前期は275億23百万円の支出)となりました。
主な要因は、支出要因として長期借入金の返済による支出237億43百万円、配当金の支払額142億89百万円、リース債務の返済による支出66億69百万円を計上した一方で、収入要因として短期借入金の純増額170億20百万円を計上したことによるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
セグメント別の営業収益及び当社グループの中核事業であるデリバリー事業の商品別取扱個数は次のとおりであります。
なお、当社グループは、デリバリー事業、ロジスティクス事業、不動産事業を中心とするサービス提供を主たる業務としているため、生産及び受注の状況は記載しておりません。
イ.セグメント別の営業収益
当連結会計年度のセグメント別の営業収益は、次のとおりであります。
(注)1.営業収益は外部顧客に対する売上高を示しております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
ロ.デリバリー事業の商品別取扱個数
当連結会計年度のデリバリー事業の商品別取扱個数は、次のとおりであります。
(注)1.取扱個数は、当社グループの主要商品の取扱個数であります。
2.飛脚宅配便は、佐川急便株式会社が国土交通省に届け出ている宅配便の個数であります。
3.その他は、佐川急便株式会社の提供する飛脚ラージサイズ宅配便及びその他の会社の取扱個数であります。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの事業セグメントは、デリバリー事業、ロジスティクス事業、不動産事業とその他で構成され、主要セグメントであるデリバリー事業が、当連結会計年度において営業収益の約8割を占めております。
・デリバリー事業
デリバリー事業におきましては、主力の宅配便に加え、あらゆる「運ぶ」で付加価値を提供する「TMS」をはじめとした、「GOAL」による付加価値の高い物流ソリューションの開発・提供を行っております。また、これらの物流ソリューションの提供は、自社のセールスドライバーや外部輸送業者を通じて行うことから、営業費用の80%以上を人件費と外注費が占めております。
当連結会計年度の宅配便の取扱個数は、上期に2019年10月の消費税率引上げ前の駆け込み需要もあり、656百万個(前期比4.0%増)と増加したものの、下期は反動減の影響が想定よりも大きく、通期では1,315百万個(同0.6%増)に留まりました。一方、平均単価は、高付加価値サービスの提供及び適正運賃収受の継続的な取組みにより、641円(同4.5%増)に上昇いたしました。また、「TMS」は、「GOAL」との連携による既存顧客の深掘りや新規領域の拡大により、営業収益は887億円(同14.5%増)と大幅に増加いたしました。この結果、当セグメントの営業収益は9,554億28百万円(同5.7%増)となりました。
人件費と外注費につきましては、それぞれ3,171億円(同4.2%増)、4,874億円(同7.6%増)となりました。働き方改革の推進、輸送品質の維持・向上や輸送インフラの強化に継続的に取り組む中、適切なコストコントールを実施いたしました。この結果、営業利益は587億16百万円(同5.9%増)となり、営業利益率は6.1%と前連結会計年度と同水準で推移いたしました。
・ロジスティクス事業
ロジスティクス事業におきましては、主にデリバリー事業と連携した3PLや日本発着の国際輸送に加え、当社の連結子会社であるEXPOLANKA HOLDINGS PLCを中心にアジアから欧米向けのフレイトフォーワディングを展開しております。当セグメントは、3PLを中心とするロジスティクス事業と、国際物流事業に区分しており、営業収益の構成比は、それぞれおおよそ40%、60%となっております。
当連結会計年度におきましては、ロジスティクス事業で3PL受託案件が増加したことや、国際物流事業における既存顧客の物量増加や新規顧客の獲得により、営業収益は1,358億23百万円(前期比3.2%増)となりました。一方、新型コロナ拡大の影響や国内拠点の見直しによる費用増で、営業利益は20億63百万円(同22.3%減)となりました。この結果、営業利益率は1.5%と前連結会計年度から0.5ポイント低下いたしました。
・不動産事業
不動産事業におきましては、当社グループの物流施設を中心に不動産の開発、賃貸、管理を行っております。
当連結会計年度におきましては、物流施設にかかる保有不動産の売却額が前連結会計年度に比べ約10億円減少したことを主因に、営業収益は162億38百万円(前期比1.9%減)となりました。一方、物流施設にかかる保有不動産の販売原価が前連結会計年度に比べ約15億円減少したことや賃料収入の増加を主因に、営業利益は78億96百万円(同10.7%増)となりました。この結果、営業利益率は48.6%と前連結会計年度から5.5ポイント上昇いたしました。
・その他
その他の事業におきましては、人材派遣・請負、宅配便の代金引換サービスや物流システムの開発・運用等の物流付帯サービスを提供しております。
当連結会計年度におきましては、宅配便の代金引換サービスにおいて決済方法の多様化により決済件数が減少したことや、自動車の整備・販売事業において消費税率引上げの影響で自動車の販売台数が減少したこと等により、営業収益は660億8百万円(前期比0.4%減)、営業利益は54億17百万円(同4.8%減)となりました。この結果、営業利益率は8.2%と前連結会計年度から0.4ポイント低下いたしました。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
・財務戦略の基本的な考え方
当社グループは、高い財務健全性と資本効率を両立しつつ、中長期的な企業価値向上のための成長投資の実施と株主還元の充実を図ることを財務戦略の基本方針としております。
・財務健全性の状況
当社グループは、中長期的な企業価値向上のための成長投資を支える強固な財務基盤が必要と考えております。当連結会計年度末の自己資本比率は49.7%となり、前連結会計年度末に比べ3.1ポイント上昇いたしました。今後も株主資本を充実させる等、高い財務健全性の維持・向上に努めてまいります。
・資本効率の向上
当社グループは資本コストを重視し、投資において投下資本利益率が資本コストを上回るよう管理し、ROEの維持・向上を意識した経営を実施しております。当連結会計年度のROEは12.8%と、前連結会計年度から0.1ポイント上昇いたしました。今後も成長が期待される分野へ規律ある投資を行うことで、企業価値の最大化に努めてまいります。
・フリーキャッシュ・フローの状況
当社グループは、フリーキャッシュ・フローを営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローの合計と定義し、成長投資、内部留保や株主還元などを検討する際の指標の一つとして重視しております。
(単位:百万円)
・株主還元
当社グループは、株主へ配当金による利益還元を実施しております。配当政策については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載のとおりであります。
・流動性の状況
当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、687億6百万円となりました。当連結会計年度末の短期借入金184億95百万円と、1年内返済予定の長期借入金187億19百万円の返済に必要な流動性を十分に満たしていると認識しております。
・資金調達手段
当社グループの事業活動における運転資金については、原則として手持資金(利益等の内部留保資金)で賄っております。設備資金等については、手持資金とのバランスを勘案し、必要に応じて長期借入金で調達しております。
当社グループは、当社及び国内子会社を対象に、CMS(キャッシュマネジメントシステム)を利用し、グループ内資金の包括的管理を実施しており、国内子会社において、設備投資等に伴う大規模な資金が必要となる場合は、当社が国内各子会社に長期貸付を行っております。
また、海外子会社においては、当社が、投資計画・資金計画に基づいて長期貸付又は増資引受けを行い、地域に所在する海外各子会社の資金を管理する体制としております。なお、EXPOLANKA HOLDINGS PLCにおいては、資金調達の一部を当社及び金融機関から直接行っております。
翌連結会計年度につきましても、上記の方針に基づき資金調達を行う予定であります。なお、重要な設備の新設計画については、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画 (1)重要な設備の新設」に記載のとおりであります。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国おいて一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たり、当社グループが採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。当社グループは連結財務諸表を作成するに当たり、退職給付に係る負債、税効果会計、貸倒引当金の計上等において、過去の実績等を勘案するなど合理的な見積りを行い、その結果を反映させておりますが、実際の結果は見積りの不確実性があるためこれらの見積りとは異なる場合があります。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、通商問題等の影響で輸出や製造業が弱含む中、雇用や所得環境の改善などにより緩やかに回復いたしました。2020年以降は、新型コロナの世界的な拡大が経済全般に影響を与えており、先行きが不透明な状況が続いております。
物流業界におきましては、eコマース市場の拡大継続を背景に宅配便に対する社会のニーズが高まっております。一方、下期以降、消費税率の引上げや競争環境の変化に加え、足元は新型コロナ拡大による経済活動への影響により、先行きの不透明感は増しております。
当社グループにおきましては、中期経営計画「Second Stage 2021」の初年度として、進化する物流ソリューションの提供を目的としたグループ横断の先進的ロジスティクスプロジェクトチーム「GOAL」による提案領域の拡大を図ってまいりました。また、同業他社や異業種を含むベンチャー企業等との業務提携のもと、お客様の幅広いニーズに対応するソリューションの提供や事業領域の拡大に努めてまいりました。
このような状況のもと、当社グループの中核事業であるデリバリー事業におきましては、あらゆる「運ぶ」で付加価値を提供する「TMS」をはじめとした「GOAL」による営業の強化や、継続的な適正運賃収受に取り組んでまいりました。ロジスティクス事業におきましては、新規の受託案件増により国内外とも増収となりましたが、拠点見直しによる費用増や新型コロナなどの影響を受けました。不動産事業におきましては、継続的に保有不動産を売却いたしました。その他の事業におきましては、決済方法の多様化による代引決済の減少や、消費税率引上げの影響で新車・中古車の販売が減少いたしました。
この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は次のとおりとなりました。
イ.財政状態
(資産合計)
当連結会計年度末の資産合計は7,722億21百万円となり、前連結会計年度末に比べ94億13百万円増加いたしました。
流動資産は2,708億73百万円となり、前連結会計年度末に比べ272億91百万円減少いたしました。主な要因は、現金及び預金が329億98百万円減少した一方で、未収消費税等の増加によりその他流動資産が53億46百万円増加したことによるものであります。
固定資産は5,013億47百万円となり、前連結会計年度末に比べ367億5百万円増加いたしました。主な要因は、「Xフロンティア」の竣工に伴い建物及び構築物が431億84百万円、車両運搬具が54億12百万円、その他有形固定資産が43億66百万円、機械及び装置が35億67百万円それぞれ増加した一方で、その竣工に伴う振替等により建設仮勘定が220億86百万円減少したことによるものであります。
(負債合計)
当連結会計年度末の負債合計は3,491億38百万円となり、前連結会計年度末に比べ242億42百万円減少いたしました。
流動負債は2,108億74百万円となり、前連結会計年度末に比べ101億94百万円減少いたしました。主な要因は、未払消費税等の減少によりその他流動負債が159億68百万円、預り金が56億78百万円、未払法人税等が32億11百万円、支払手形及び営業未払金が20億61百万円それぞれ減少した一方で、短期借入金が171億55百万円増加したことによるものであります。
固定負債は1,382億63百万円となり、前連結会計年度末に比べ140億47百万円減少いたしました。主な要因は、流動負債への振替等により有利子負債が165億34百万円減少した一方で、資産除去債務が15億22百万円増加したことによるものであります。
(純資産合計)
当連結会計年度末の純資産合計は4,230億83百万円となり、前連結会計年度末に比べ336億55百万円増加いたしました。主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益が472億92百万円となった一方で、剰余金の配当142億92百万円を実施したことによるものであります。
ロ.経営成績
(営業収益)
デリバリー事業におきましては、継続的な適正運賃収受の取組みにより平均単価が上昇したことに加え、取扱個数の増加、「TMS」をはじめとした「GOAL」による付加価値の高いソリューションの提供や、様々なアライアンスによる効果を高める取組みを行ってまいりました。ロジスティクス事業におきましては、国内では新規受託案件が堅調に推移いたしましたが、新型コロナの影響を受けました。海外では新型コロナの影響があったものの、既存顧客の物量増加及び新規顧客の獲得により、フレイトフォワーディングが増加いたしました。また、不動産事業におきましては、継続的に保有不動産を売却いたしました。
この結果、営業収益は1兆1,734億98百万円となり、前連結会計年度に比べ5.0%増加となりました。
(営業原価、販売費及び一般管理費、営業利益)
デリバリー事業を中心とした機械化・省人化等の生産性向上への取組み、輸送品質の維持・向上や輸送インフラの強化を継続的に行ってまいりました。また、ロジスティクス事業におきましては、大口顧客の拠点見直しによる立ち上げコストが発生したことにより費用が増加いたしました。
この結果、営業原価は1兆531億8百万円(前期比5.1%増)、販売費及び一般管理費は449億42百万円(同2.3%減)となりました。一方、営業収益が増加したことにより、営業利益は754億47百万円(同7.2%増)となり、営業利益率は6.4%と前連結会計年度に比べ0.1ポイント上昇いたしました。
(営業外損益、経常利益)
営業外収益は、持分法による投資利益や受取保険配当金の計上等により72億52百万円(前期比4.2%増)となりました。営業外費用は、支払利息の計上等により21億68百万円(同15.1%減)となりました。
この結果、経常利益は805億32百万円となり、前連結会計年度に比べ7.7%増加となりました。
(特別損益、税金等調整前当期純利益)
特別利益44百万円(前期比69.2%減)、特別損失11億36百万円(同50.0%増)を計上した結果、税金等調整前当期純利益は794億40百万円となり、前連結会計年度に比べ7.1%増加となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
法人税等241億97百万円(前期比6.2%増)、非支配株主に帰属する当期純利益79億50百万円(同0.5%増)を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は472億92百万円となり、前連結会計年度に比べ8.8%増加となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
・デリバリー事業
デリバリー事業におきましては、消費税率の引上げ、競争環境の変化及び新型コロナ拡大の影響を受けたものの、当連結会計年度では取扱個数が増加したことに加え、継続的な適正運賃収受の取組みにより平均単価が上昇いたしました。また、「TMS」をはじめとした「GOAL」による付加価値の高いソリューションの提供や、様々なアライアンスによる効果を高める取組みを行ってまいりました。さらに、持続的な成長を見据え、機械化・省人化等の生産性向上への取組み、輸送品質の維持・向上や輸送インフラの強化を継続的に行ってまいりました。
この結果、当セグメントの営業収益は9,554億28百万円(前期比5.7%増)、営業利益は587億16百万円(同5.9%増)となりました。
・ロジスティクス事業
ロジスティクス事業におきましては、国内では、新規受託案件が堅調に推移し増収となりましたが、拠点の見直しによる費用増や新型コロナの影響を受けました。
海外では、新型コロナの影響があったものの、既存顧客の物量増加及び新規顧客の獲得により、フレイトフォワーディングが増加いたしました。
この結果、当セグメントの営業収益は1,358億23百万円(前期比3.2%増)、営業利益は20億63百万円(同22.3%減)となりました。
・不動産事業
不動産事業におきましては、継続的に保有不動産を売却いたしました。
この結果、当セグメントの営業収益は162億38百万円(前期比1.9%減)、営業利益は78億96百万円(同10.7%増)となりました。
・その他
その他の事業におきましては、決済方法の多様化による代引決済の減少や、消費税率引上げの影響で新車・中古車の販売が減少いたしました。
この結果、当セグメントの営業収益は660億8百万円(前期比0.4%減)、営業利益は54億17百万円(同4.8%減)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ329億98百万円減少し687億6百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により得た資金は535億89百万円(前期比38.2%減)となりました。
主な要因は、収入要因として税金等調整前当期純利益の計上794億40百万円、減価償却費の計上230億13百万円があった一方で、支出要因として法人税等の支払額251億24百万円、未払消費税等の減少等によるその他営業活動によるキャッシュ・フロー187億71百万円を計上したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動に使用した資金は615億31百万円(前期は662億67百万円の支出)となりました。
主な要因は、有形固定資産の取得による支出534億63百万円、無形固定資産の取得による支出56億61百万円を計上したことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動に使用した資金は243億72百万円(前期は275億23百万円の支出)となりました。
主な要因は、支出要因として長期借入金の返済による支出237億43百万円、配当金の支払額142億89百万円、リース債務の返済による支出66億69百万円を計上した一方で、収入要因として短期借入金の純増額170億20百万円を計上したことによるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
セグメント別の営業収益及び当社グループの中核事業であるデリバリー事業の商品別取扱個数は次のとおりであります。
なお、当社グループは、デリバリー事業、ロジスティクス事業、不動産事業を中心とするサービス提供を主たる業務としているため、生産及び受注の状況は記載しておりません。
イ.セグメント別の営業収益
当連結会計年度のセグメント別の営業収益は、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 前連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | ||
金額(百万円) | 前期比(%) | 金額(百万円) | 前期比(%) | |
デリバリー事業 | 903,679 | 109.6 | 955,428 | 105.7 |
ロジスティクス事業 | 131,557 | 93.7 | 135,823 | 103.2 |
不動産事業 | 16,553 | 155.1 | 16,238 | 98.1 |
その他 | 66,304 | 95.0 | 66,008 | 99.6 |
合計 | 1,118,094 | 107.0 | 1,173,498 | 105.0 |
(注)1.営業収益は外部顧客に対する売上高を示しております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
ロ.デリバリー事業の商品別取扱個数
当連結会計年度のデリバリー事業の商品別取扱個数は、次のとおりであります。
商品の名称 | 前連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | ||
取扱個数 | (百万個) | 1,307 | 1,315 | |
飛脚宅配便 | (百万個) | 1,246 | 1,257 | |
その他 | (百万個) | 60 | 57 |
(注)1.取扱個数は、当社グループの主要商品の取扱個数であります。
2.飛脚宅配便は、佐川急便株式会社が国土交通省に届け出ている宅配便の個数であります。
3.その他は、佐川急便株式会社の提供する飛脚ラージサイズ宅配便及びその他の会社の取扱個数であります。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの事業セグメントは、デリバリー事業、ロジスティクス事業、不動産事業とその他で構成され、主要セグメントであるデリバリー事業が、当連結会計年度において営業収益の約8割を占めております。
・デリバリー事業
デリバリー事業におきましては、主力の宅配便に加え、あらゆる「運ぶ」で付加価値を提供する「TMS」をはじめとした、「GOAL」による付加価値の高い物流ソリューションの開発・提供を行っております。また、これらの物流ソリューションの提供は、自社のセールスドライバーや外部輸送業者を通じて行うことから、営業費用の80%以上を人件費と外注費が占めております。
当連結会計年度の宅配便の取扱個数は、上期に2019年10月の消費税率引上げ前の駆け込み需要もあり、656百万個(前期比4.0%増)と増加したものの、下期は反動減の影響が想定よりも大きく、通期では1,315百万個(同0.6%増)に留まりました。一方、平均単価は、高付加価値サービスの提供及び適正運賃収受の継続的な取組みにより、641円(同4.5%増)に上昇いたしました。また、「TMS」は、「GOAL」との連携による既存顧客の深掘りや新規領域の拡大により、営業収益は887億円(同14.5%増)と大幅に増加いたしました。この結果、当セグメントの営業収益は9,554億28百万円(同5.7%増)となりました。
人件費と外注費につきましては、それぞれ3,171億円(同4.2%増)、4,874億円(同7.6%増)となりました。働き方改革の推進、輸送品質の維持・向上や輸送インフラの強化に継続的に取り組む中、適切なコストコントールを実施いたしました。この結果、営業利益は587億16百万円(同5.9%増)となり、営業利益率は6.1%と前連結会計年度と同水準で推移いたしました。
・ロジスティクス事業
ロジスティクス事業におきましては、主にデリバリー事業と連携した3PLや日本発着の国際輸送に加え、当社の連結子会社であるEXPOLANKA HOLDINGS PLCを中心にアジアから欧米向けのフレイトフォーワディングを展開しております。当セグメントは、3PLを中心とするロジスティクス事業と、国際物流事業に区分しており、営業収益の構成比は、それぞれおおよそ40%、60%となっております。
当連結会計年度におきましては、ロジスティクス事業で3PL受託案件が増加したことや、国際物流事業における既存顧客の物量増加や新規顧客の獲得により、営業収益は1,358億23百万円(前期比3.2%増)となりました。一方、新型コロナ拡大の影響や国内拠点の見直しによる費用増で、営業利益は20億63百万円(同22.3%減)となりました。この結果、営業利益率は1.5%と前連結会計年度から0.5ポイント低下いたしました。
・不動産事業
不動産事業におきましては、当社グループの物流施設を中心に不動産の開発、賃貸、管理を行っております。
当連結会計年度におきましては、物流施設にかかる保有不動産の売却額が前連結会計年度に比べ約10億円減少したことを主因に、営業収益は162億38百万円(前期比1.9%減)となりました。一方、物流施設にかかる保有不動産の販売原価が前連結会計年度に比べ約15億円減少したことや賃料収入の増加を主因に、営業利益は78億96百万円(同10.7%増)となりました。この結果、営業利益率は48.6%と前連結会計年度から5.5ポイント上昇いたしました。
・その他
その他の事業におきましては、人材派遣・請負、宅配便の代金引換サービスや物流システムの開発・運用等の物流付帯サービスを提供しております。
当連結会計年度におきましては、宅配便の代金引換サービスにおいて決済方法の多様化により決済件数が減少したことや、自動車の整備・販売事業において消費税率引上げの影響で自動車の販売台数が減少したこと等により、営業収益は660億8百万円(前期比0.4%減)、営業利益は54億17百万円(同4.8%減)となりました。この結果、営業利益率は8.2%と前連結会計年度から0.4ポイント低下いたしました。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
・財務戦略の基本的な考え方
当社グループは、高い財務健全性と資本効率を両立しつつ、中長期的な企業価値向上のための成長投資の実施と株主還元の充実を図ることを財務戦略の基本方針としております。
・財務健全性の状況
当社グループは、中長期的な企業価値向上のための成長投資を支える強固な財務基盤が必要と考えております。当連結会計年度末の自己資本比率は49.7%となり、前連結会計年度末に比べ3.1ポイント上昇いたしました。今後も株主資本を充実させる等、高い財務健全性の維持・向上に努めてまいります。
・資本効率の向上
当社グループは資本コストを重視し、投資において投下資本利益率が資本コストを上回るよう管理し、ROEの維持・向上を意識した経営を実施しております。当連結会計年度のROEは12.8%と、前連結会計年度から0.1ポイント上昇いたしました。今後も成長が期待される分野へ規律ある投資を行うことで、企業価値の最大化に努めてまいります。
・フリーキャッシュ・フローの状況
当社グループは、フリーキャッシュ・フローを営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローの合計と定義し、成長投資、内部留保や株主還元などを検討する際の指標の一つとして重視しております。
(単位:百万円)
前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 増減 | |
営業活動によるキャッシュ・フロー | 86,758 | 53,589 | △33,169 |
投資活動によるキャッシュ・フロー | △66,267 | △61,531 | 4,736 |
フリーキャッシュ・フロー | 20,491 | △7,941 | △28,432 |
・株主還元
当社グループは、株主へ配当金による利益還元を実施しております。配当政策については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載のとおりであります。
・流動性の状況
当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、687億6百万円となりました。当連結会計年度末の短期借入金184億95百万円と、1年内返済予定の長期借入金187億19百万円の返済に必要な流動性を十分に満たしていると認識しております。
・資金調達手段
当社グループの事業活動における運転資金については、原則として手持資金(利益等の内部留保資金)で賄っております。設備資金等については、手持資金とのバランスを勘案し、必要に応じて長期借入金で調達しております。
当社グループは、当社及び国内子会社を対象に、CMS(キャッシュマネジメントシステム)を利用し、グループ内資金の包括的管理を実施しており、国内子会社において、設備投資等に伴う大規模な資金が必要となる場合は、当社が国内各子会社に長期貸付を行っております。
また、海外子会社においては、当社が、投資計画・資金計画に基づいて長期貸付又は増資引受けを行い、地域に所在する海外各子会社の資金を管理する体制としております。なお、EXPOLANKA HOLDINGS PLCにおいては、資金調達の一部を当社及び金融機関から直接行っております。
翌連結会計年度につきましても、上記の方針に基づき資金調達を行う予定であります。なお、重要な設備の新設計画については、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画 (1)重要な設備の新設」に記載のとおりであります。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国おいて一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たり、当社グループが採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。当社グループは連結財務諸表を作成するに当たり、退職給付に係る負債、税効果会計、貸倒引当金の計上等において、過去の実績等を勘案するなど合理的な見積りを行い、その結果を反映させておりますが、実際の結果は見積りの不確実性があるためこれらの見積りとは異なる場合があります。