有価証券報告書-第114期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

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2018/06/20 14:07
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62項目
経営者の視点による当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要並びにこれらの状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)経営成績の状況
当連結会計年度(以下「当期」)における経済情勢を振り返りますと、米国では堅調な個人消費を背景に底堅く経済成長を継続し、欧州経済も個人消費に加え輸出を中心に堅調に成長しました。中国は財政政策と個人消費が下支えして安定した成長を維持し、インドやASEANなどの新興国経済も引き続き成長しました。我が国経済は堅調な世界経済に支えられて企業収益が改善し、緩やかな回復基調を示しました。
こうした経営環境の下、当期における当社グループの連結売上高は、1兆312億円(前期比7.1%増)となり、全ての事業セグメントで増収となりました。オフィス事業はカラー複合機が北米での堅調な販売に加え、中国での販売が大きく伸長し、プロフェッショナルプリント事業はカラーデジタル印刷システムの販売が中国で大きく増加したことに加え、欧州においても伸長、産業印刷も北米を中心に販売が拡大しました。ヘルスケア事業は北米でのデジタル製品の販売が伸長、産業用材料・機器事業は、計測機器ユニットが当期を通して好調を継続して大幅な増収を達成しました。
中期経営計画「SHINKA 2019」の方針に沿って業容転換を加速するため、国内で53億円、海外では46億円の構造改革費用を計上しました。また、企業不動産戦略として「ファシリティ(土地・建物)の活用の最適化」を実施し、資産流動化による収益を203億円計上することにより、構造改革費用や大型買収に係る経費を含む新規事業への投資を補いました。
これらの結果、営業利益は538億円(前期比7.4%増)となりました。全ての事業セグメントで増益となり、当社グループ全体としても増益となりました。
税引前利益は491億円(前期比0.4%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益は322億円(同2.2%増)となりました。
当社は高収益企業になることを目指し、中期経営計画「SHINKA 2019」において次の3領域での事業育成に積極的に取り組んでおります。
1.モノとモノがつながるIoT時代にふさわしい高付加価値サービス
2.本格的な商業・産業印刷のデジタル化推進
3.プレシジョン・メディシン(個別化医療)分野への本格参入
本中期経営計画の初年度である当期におきましては、当社の提供するエッジIoTプラットフォームである「Workplace Hub(ワークプレイス ハブ)」の開発をパートナー企業と継続して実施しており、顧客価値検証を進め、着実に製品化に向けて進捗しております。商業・産業印刷のデジタル化推進では、商業印刷においては当社独自の機能を提供するユニットを含め新製品の投入、産業印刷におきましても、当社の提供する付加価値製品が市場に幅広く浸透し販売を加速しました。プレシジョン・メディシン(個別化医療)分野では、10月にAmbry Genetics Corporation、続く11月にInvicro, LLCの買収を完了し、両社の強みと当社の固有技術であるタンパク質高感度定量検出技術(HSTT)とを統合した事業推進体制が発足したことにより、当社独自のバイオヘルスケア事業の確立に向けて動き出しました。
また、業容転換の加速のため、本中期経営計画に沿って継続的な人財シフト、拠点の集約や固定費の変動費化などの構造改革を推進し、また、製造原価やサービス原価の低減を進めることで収益力の改善を進める一方、将来の収益の柱となる新規事業への積極的な投資を継続しています。
これらの取り組みにより、「SHINKA 2019」の最終年度となる2019年度の経営目標に向けて計画どおり進捗しました。
セグメント別の状況は以下のとおりであります。なお、当連結会計年度より報告セグメントの区分を変更しており、前連結会計年度との比較・分析は変更後の区分に基づいて記載しております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記5 事業セグメント」に記載のとおりであります。
①オフィス事業
オフィスユニットでは、A3複合機の販売台数はカラー機、モノクロ機ともに市場成長を上回り前期比で増加しました。特にカラー機では新製品を投入した高速機が高い伸長率を示しました。地域別では、欧州は大型案件の設置があった前期から販売台数は減少しましたが、当期後半にはカラー高速機を中心に販売を伸ばしました。北米では期初から好調な販売を維持、中国も前期比で大幅に販売台数を伸ばしました。また、グローバルに事業を展開する大手企業向けの販売では、既存顧客への販売が堅調に推移したのに加え、新規の大口案件が増加し、総契約金額が大幅に増加しました。
ITサービスユニットでは、米国では新規連結効果に加えて高採算のセキュリティソリューションの販売拡大が寄与して増収となり、欧州でも当期後半に買収した会社が収益貢献し始め、サービス体制改善により採算が改善した「Managed Content Services(マネージドコンテントサービス)」の販売が拡大するなど、ITサービスユニット全体としても前期比増収となりました。
これらの結果、当事業の売上高は5,838億円(前期比4.6%増)、営業利益は449億円(同1.3%増)となりました。
②プロフェッショナルプリント事業
プロダクションプリントユニットは、先進国を中心に市場が伸び悩み、北米では販売台数が前期比で微減となりましたが、欧州では最上位機種を中心に販売が拡大しました。中国では大幅に販売台数が増加し、全体としては前期比増加となりました。当社独自の機能である、出力調整を自動化する品質最適化ユニット「IQ-501」の提供するお客様のワークフロー効率化という価値が広く受け入れられ、競合製品に対する優位性を向上させています。
産業印刷ユニットでは、米欧を中心にインクジェットデジタル印刷機の「AccurioJet(アキュリオジェット)KM-1」やラベル印刷機、MGI社製のデジタル加飾印刷機の販売が加速し、販売台数が大幅に拡大しました。
マーケティングサービスユニットでは、キンコーズブランドで展開するオンデマンドプリントが伸長しましたが、マーケティングプリントにつきましては当期前半における大口顧客のマーケティング費用抑制の影響が残り前期比減収となりました。
これらの結果、当事業の売上高は2,142億円(前期比5.0%増)、営業利益は92億円(同12.4%増)となりました。
③ヘルスケア事業
ヘルスケアユニットでは、DR(デジタルラジオグラフィー)は、Ⅹ線装置メーカーとの協業強化と大型案件の獲得により米国を中心に販売数量が増加しました。超音波画像診断装置は、日本での販売が好調を維持し、中国、欧米の各地域で販売数量が増加、当期後半に発売した新製品も寄与して、大きく販売数量を伸ばしました。
医療ITユニットでは、米国での販売増が収益に寄与し、保守サービスも順調に拡大しました。
これらの結果、当事業の売上高は965億円(前期比7.3%増)、営業利益は55億円(同94.6%増)となりました。
④産業用材料・機器事業
材料・コンポーネント分野では、機能材料ユニットが液晶TVの大画面化を背景として、耐水型新VA-TACフィルムや、IPS向けZeroTACフィルムなど高付加価値製品への転換戦略が奏功し、価格圧力を受けながらも増収となりました。光学コンポーネントユニットは増収、IJコンポーネントユニットも堅調な販売が持続し増収となりました。
産業用光学システム分野では、計測機器ユニットがディスプレイ製品のイノベーションに応えるソリューションを提供することで複数の顧客需要の波を捉えて、大幅な増収となりました。
これらの結果、当事業の売上高は1,182億円(前期比16.4%増)、営業利益は234億円(同6.4%増)となりました。
(2)財政状態の状況
前連結会計年度末当連結会計年度末増減
資産合計 (億円)10,05412,0391,984
負債合計 (億円)4,7126,6831,970
資本合計 (億円)5,3415,35514
親会社の所有者に帰属する持分合計(億円)5,2435,2451
1株当たり親会社所有者帰属持分 (円)1,057.921,060.722.80
親会社所有者帰属持分比率 (%)52.143.6△8.5

当連結会計年度末(以下「当期末」)の資産合計は、前期末比1,984億円(19.7%)増加し1兆2,039億円となりました。これは主に、のれん及び無形資産の増加1,231億円、現金及び現金同等物の増加572億円、営業債権及びその他の債権の増加202億円によるものであります。
負債合計については、前期末比1,970億円(41.8%)増加し6,683億円となりました。これは主に、社債及び借入金の増加1,081億円、その他の金融負債の増加569億円、営業債務及びその他の債務の増加179億円、その他の負債の増加109億円によるものであります。
資本合計については、前期末比14億円(0.3%)増加し5,355億円となりました。
親会社の所有者に帰属する持分合計は、前期末比微増の5,245億円となりました。これは主に、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上322億円、資本剰余金の減少177億円、剰余金の配当による減少148億円によるものであります。
これらの結果、1株当たり親会社所有者帰属持分は1,060.72円となり、親会社所有者帰属持分比率は8.5ポイント減少の43.6%となりました。
(3)キャッシュ・フローの状況
当期の連結キャッシュ・フローの状況は、次のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フロー653億円の収入と、子会社株式の取得を中心とした投資活動によるキャッシュ・フロー1,337億円の支出の結果、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合計したフリー・キャッシュ・フローは683億円のマイナスとなりました。
また、財務活動によるキャッシュ・フローは1,266億円のプラスとなりました。
その他に、現金及び現金同等物に係る為替変動の影響があり、当期末の現金及び現金同等物の残高は、前期末比572億円増加の1,499億円となりました。
当期における各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
税引前利益491億円、減価償却費及び償却費562億円、営業債務及びその他の債務の増加による増加115億円等によるキャッシュ・フローの増加と、有形固定資産及び無形資産除売却損益198億円の調整、営業債権及びその他の債権の増加による減少76億円、法人所得税の支払い140億円等によるキャッシュ・フローの減少により、営業活動によるキャッシュ・フローは653億円のプラスとなりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
有形固定資産の取得による支出269億円、無形資産の取得による支出110億円、子会社株式の取得による支出1,169億円、有形固定資産及び無形資産の売却による収入234億円等があり、投資活動によるキャッシュ・フローは1,337億円のマイナスとなりました。
この結果、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合計したフリー・キャッシュ・フローは683億円のマイナス(前期は19億円のマイナス)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
社債の発行及び長期借入れ1,457億円、非支配株主からの払込み354億円等の収入と、短期借入金の純減少額151億円、社債の償還及び長期借入金の返済233億円、配当金の支払い148億円等の支出により、財務活動によるキャッシュ・フローは1,266億円のプラス(前期は23億円のマイナス)となりました。
(4)生産、受注及び販売の実績
①生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2017年4月1日
至 2018年3月31日)
前期比
百万円%
オフィス事業319,909101.1
プロフェッショナルプリント事業
ヘルスケア事業24,366118.7
産業用材料・機器事業112,385114.7
報告セグメント計456,661105.0
その他8,042105.8
合計464,704105.0

(注1)金額は、売価換算値で表示しております。
(注2)上記金額には、消費税等は含んでおりません。
(注3)オフィス事業、プロフェッショナルプリント事業につきましては、共通の設備にて生産を行っておりますので、当該生産拠点における生産実績を記載しております。
(注4)前期比の数値につきましては、前期のセグメント情報を、当期のセグメント区分に変更したものと比較を行っております。
②受注実績
当社グループは見込み生産を主としておりますので、記載を省略しております。
③販売実績
販売状況については、「(1)経営成績の状況」において各セグメントの業績に関連付けて示しております。
(5)資本の財源及び資金の流動性
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、以下のとおりであります。
①資金需要
当社グループの主な資金需要は、製造費用、販売費及び一般管理費等の営業費用並びに当社グループの設備新設、改修等に係る投資や、将来の成長及び企業価値向上を目的としたM&Aによる投資であります。
②資金の源泉
当社グループの資金の主な源泉は、営業活動によるキャッシュ・フロー、金融機関からの借入や社債の発行による資金調達であります。
③流動性
当社グループは、従来から営業活動により多額のキャッシュ・フローを得ており、今後も引き続き重要な資金源になると見込んでおります。また、複数の金融機関との間で2022年9月末を期限とする1,000億円のコミットメントライン契約を締結し、効率的な資金の調達を行っている他、アンコミットメントベースの融資枠、国内社債発行登録枠を有しています。なお、当社の既発行社債の債券格付、発行登録予備格付はともに株式会社格付投資情報センター(R&I)及び株式会社日本格付研究所(JCR)からA格を取得しています。
当社グループ内の資金の効率化については、日本・北米・欧州・アジアパシフィックの各統括拠点においてCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入しており、各地域の余剰資金を当社へ集中し一元的に管理を行うことにより、資金効率の向上と金融費用の極小化及びガバナンスの向上を図っております。なお、一時的な余剰資金は、安全性が極めて高い金融資産で運用しております。
(6)経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報
IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と連結財務諸表規則(第7章及び第8章を除く。以下「日本基準」という。)により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項は、以下のとおりであります。
(のれんの償却)
日本基準では、のれんの償却については償却年数を見積り、その年数で償却することとしておりましたが、IFRSではIFRS移行日以降の償却を停止しております。
この影響により、IFRSでは日本基準に比べて、当連結会計年度において販売費及び一般管理費が19,241百万円減少しております。
(表示組替)
日本基準では、営業外収益、営業外費用、特別利益及び特別損失に表示していた項目を、IFRSではその他の収益、その他の費用、金融収益及び金融費用に表示しております。