有価証券報告書-第115期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)
経営者の視点による当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要並びにこれらの状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)重要な会計方針及び見積り
当社の連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和51年大蔵省令第28号)第93条の規定により、IFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成にあたり見積りが必要となる事項については、合理的な基準に基づき会計上の見積りを行っております。
重要な会計方針及び見積りについては「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記3 重要な会計方針」及び「同 注記4 重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載のとおりであります。
(2)経営成績の状況
当連結会計年度(以下「当期」)における経済情勢を振り返りますと、欧州では中国向けなど製造業の輸出が減少し、英国のEU離脱をめぐる先行き不透明感の継続なども影響して経済成長が鈍化しました。米国では中国への輸出が年度後半に減少したものの、旺盛な個人消費を背景に内需は成長を持続し、設備投資も堅調に推移しました。中国は米国との貿易摩擦の影響を受けた製造業の設備投資が落ち込み、経済成長が減速しました。我が国経済は不透明感が継続する世界経済の影響も受け、輸出や設備投資が伸び悩みましたが、全体としては緩やかな成長を持続しました。
こうした経営環境の下、当期における当社グループの連結売上高は、1兆591億円(前期比2.7%増)となりました。事業セグメント別では、オフィス事業はカラー複合機の販売台数が高速機を中心に伸びたことに加えて、ITサービスが売上を拡大したことも寄与し、増収となりました。プロフェッショナルプリント事業はデジタル印刷システムの販売がカラー機とモノクロ機共に高速機を中心に伸長し、成長事業と位置付ける産業印刷ユニットの販売も拡大したことにより増収となりました。ヘルスケア事業は一部仕入商品の販売を終了した影響もあり減収となりました。産業用材料・機器事業は機能材料ユニットやIJコンポーネントユニットの売上が伸長し、需要が落ち着いた計測機器ユニットの減収を補って、前期並みとなりました。
営業利益は624億円(前期比16.0%増)となりました。中期経営計画において注力してきた基盤事業の収益力強化の施策が奏功して、オフィス事業やプロフェッショナルプリント事業が増益となったことにより、前期比で増益となりました。
税引前利益は601億円(前期比22.4%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は417億円(同29.3%増)となりました。
当社は高収益企業になることを目指し、中期経営計画「SHINKA 2019」において次の3領域での事業育成に積極的に取り組んでおります。
1.モノとモノがつながるIoT時代にふさわしい高付加価値サービス
2.本格的な商業・産業印刷のデジタル化推進
3.プレシジョン・メディシン(個別化医療)分野への本格参入
本中期経営計画の中間年度である当期におきましては、特に次の2項目に注力することにより、お客様の業務上の課題や社会的課題の解決に積極的に取り組んでまいりました。
1.基盤事業における抜本的な収益力強化
2.新規分野における着実な事業成長
「基盤事業における抜本的な収益力強化」につきましては、オフィス事業やプロフェッショナルプリント事業では、当社独自の付加価値型販売を推進し、高速機の販売増につなげました。また、お客様の使い勝手や魅力品質を追求し、2019年度に発売を予定している新製品の開発・生産準備が順調に進みました。産業用材料・機器事業では、機能材料ユニットでの新樹脂フィルムの開発・量産準備が進み、本格販売の準備が整いました。
「新規分野における着実な事業成長」につきましては、当社の提供するエッジIoTプラットフォームである「Workplace Hub(ワークプレイス ハブ)」の販売を欧米から開始しました。期待していた顧客価値(ニーズ)や価格設定が想定通りであったことを確認し、販売地域は9カ国に拡大しました。プレシジョン・メディシン(個別化医療)分野におきましては、国内事業会社を設立し事業を開始すると共に、米国にグローバル本社を設立し、買収した米国の2社を含めた一体運営によるシナジー戦略を推進しています。
これらの取り組みにより、「SHINKA 2019」の最終年度となる2019年度、更にはその先に向けての事業展開を確かなものとすることが出来ました。
セグメント別の状況は以下のとおりであります。
①オフィス事業
オフィスユニットでは、A3複合機の販売台数は、モノクロ機が減少したもののカラー機が大幅に伸長したことにより、全体では前期比で増加しました。カラー機は欧米や日本などの先進国においては前期に投入した高速機の販売が拡大し、中国やASEAN、インドなどの成長国においては低速機から高速機まで大幅に伸長するなど、当期の重点施策として取り組んできた地域戦略の成果が現れました。
ITサービスユニットでは、米国、欧州共に買収による新規連結効果に加えて、エッジIoTプラットフォーム「Workplace Hub(ワークプレイス ハブ)」の販売体制を構築する一環としての、マネージドITサービスの販売及び提供能力強化が成果を上げ、前期比での増収をけん引しました。
これらの結果、当事業の売上高は5,878億円(前期比0.7%増)、営業利益は471億円(同5.1%増)となりました。
②プロフェッショナルプリント事業
プロダクションプリントユニットでは、カラー機、モノクロ機共に販売台数が前期比で大幅に増加しました。カラー機は欧州が販売をけん引し、中国やインド、ASEANなどの成長国でも販売台数が大幅に伸長しました。モノクロ機は米国や成長国で販売が増加しました。
産業印刷ユニットでは、インクジェットデジタル印刷機の「AccurioJet(アキュリオジェット)KM-1」の販売台数は前期から大幅に増加、ラベル印刷機、MGI社製のデジタル加飾印刷機の販売でもターゲットとする市場でトップクラスのシェアを獲得しました。販売地域も従来の欧米に加え中国やASEAN、インドなど成長国に拡大、専門性を持った人材を増やし販売体制を強化しました。
マーケティングサービスユニットでは、大口顧客の需要回復による増収に加え、高付加価値サービスへのシフトを加速したことにより、収益性も改善しました。
これらの結果、当事業の売上高は2,277億円(前期比6.3%増)、営業利益は138億円(同49.2%増)となりました。
③ヘルスケア事業
ヘルスケアユニットでは、DR(デジタルラジオグラフィー)の販売数量は日本で伸長したものの米国の病院向けが落ち着いた影響で前期を下回りました。Ⅹ線診断の高度化を目指すデジタルⅩ線動画撮影システムを11月に販売開始し、導入した医療機関から高い評価を得ています。超音波診断装置は整形外科分野でのジャンルトップ維持と前期に譲受した産婦人科対象の事業が貢献し、日米を中心に販売数量を堅調に伸ばしました。医療ITユニットでは、PACS(医用画像保管・管理システム)の販売数量は減少したものの、医療ITサービスプラットフォーム「infomity(インフォミティ)」を中心としたサービス事業の売上高が伸長しました。
当事業全体では、収益性の低い仕入商品の販売を終了したこともあり前期比減収、また前期に計上した資産流動化による収益などの一過性要因の影響に加えて、米国でのDRの販売減もあり、減益となりました。
これらの結果、当事業の売上高は、909億円(前期比5.8%減)、営業利益は23億円(同57.0%減)となりました。
④産業用材料・機器事業
材料・コンポーネント分野では、機能材料ユニットは伸長市場を中心に位相差フィルムなどの高付加価値製品の販売が引き続き堅調に推移し、前期比で大幅な増収となりました。今後の戦略を担う新樹脂製品の開発も順調に進捗し、市場での認知も進みました。光学コンポーネントユニットはプロジェクター用光学部材とカメラ用交換レンズの販売が堅調でしたが、その他の光学部品の販売減少により前期比減収でした。IJコンポーネントユニットはアジアでの既存顧客からの受注が当期を通じて堅調に推移し増収となりました。
産業用光学システム分野では、計測機器ユニットでの需要の波を捉えたビジネスチャンス拡大傾向は継続しているものの、前期の増収をけん引した顧客のディスプレイ関連投資の反動もあり、減収となりました。
これらの結果、当事業の売上高は、1,167億円(前期比1.3%減)、営業利益は産業用光学システム分野の減収の影響も受け209億円(同10.7%減)となりました。
(3)財政状態の状況
当連結会計年度末(以下「当期末」)の資産合計は、前期末比150億円(1.3%)増加し1兆2,189億円となりました。これは主に、有形固定資産の増加141億円、のれん及び無形資産の増加134億円、営業債権及びその他の債権の増加121億円、現金及び現金同等物の減少250億円によるものであります。
負債合計については、前期末比153億円(2.3%)減少し6,530億円となりました。これは主に、社債及び借入金の減少199億円、退職給付に係る負債の減少131億円、引当金の増加150億円によるものであります。
資本合計については、前期末比303億円(5.7%)増加し5,659億円となりました。
親会社の所有者に帰属する持分合計は、前期末比311億円(5.9%)増加し5,556億円となりました。これは主に、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上417億円、剰余金の配当による減少148億円によるものであります。
これらの結果、1株当たり親会社所有者帰属持分は1,123.39円となり、親会社所有者帰属持分比率は2.0ポイント増加の45.6%となりました。
(4)キャッシュ・フローの状況
当期の連結キャッシュ・フローの状況は、次のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フロー571億円の収入と、投資活動によるキャッシュ・フロー414億円の支出の結果、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合計したフリー・キャッシュ・フローは156億円のプラスとなりました。
また、財務活動によるキャッシュ・フローは402億円の支出となりました。
そのほかに、現金及び現金同等物に係る為替変動の影響額があり、当期末の現金及び現金同等物の残高は、前期末比250億円減少の1,248億円となりました。
当期における各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
税引前利益601億円、減価償却費及び償却費590億円、営業債務及びその他の債務の増加による増加34億円等によるキャッシュ・フローの増加と、有形固定資産及び無形資産除売却損益173億円の調整、営業債権及びその他の債権の増加による減少141億円、棚卸資産の増加による減少59億円、退職給付に係る負債の減少103億円、法人所得税の支払い103億円等によるキャッシュ・フローの減少により、営業活動によるキャッシュ・フローは571億円の収入となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
有形固定資産の取得による支出350億円、無形資産の取得による支出162億円、子会社株式の取得による支出99億円、有形固定資産及び無形資産の売却による収入215億円等があり、投資活動によるキャッシュ・フローは414億円の支出となりました。
この結果、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合計したフリー・キャッシュ・フローは156億円のプラス(前期は683億円のマイナス)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
社債の償還及び長期借入金の返済270億円、配当金の支払い148億円等の支出により、財務活動によるキャッシュ・フローは402億円の支出(前期は1,266億円の収入)となりました。
(5)生産、受注及び販売の実績
①生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注1)金額は、売価換算値で表示しております。
(注2)上記金額には、消費税等は含んでおりません。
(注3)オフィス事業、プロフェッショナルプリント事業につきましては、共通の設備にて生産を行っておりますので、当該生産拠点における生産実績を記載しております。
②受注実績
当社グループは見込み生産を主としておりますので、記載を省略しております。
③販売実績
販売状況については、「(2)経営成績の状況」において各セグメントの業績に関連付けて示しております。
(6)資本の財源及び資金の流動性
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、以下のとおりであります。
①資金需要
当社グループの主な資金需要は、製造費用、販売費及び一般管理費等の営業費用並びに当社グループの設備新設、改修等に係る投資や、将来の成長及び企業価値向上を目的としたM&Aによる投資であります。
②資金の源泉
当社グループの資金の主な源泉は、営業活動によるキャッシュ・フロー、金融機関からの借入や社債の発行による資金調達であります。
③流動性
当社グループは、従来から営業活動により多額のキャッシュ・フローを得ており、今後も引き続き重要な資金源になると見込んでおります。また、複数の金融機関との間で2023年9月末を期限とする1,000億円のコミットメントライン契約を締結し、効率的な資金の調達を行っている他、アンコミットメントベースの融資枠、国内社債発行登録枠を有しています。なお、当社の既発行社債の債券格付、発行登録予備格付はともに株式会社格付投資情報センター(R&I)及び株式会社日本格付研究所(JCR)からA格を取得しています。
当社グループ内の資金の効率化については、日本・北米・欧州・アジアパシフィックの各統括拠点においてCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入しており、各地域の余剰資金を当社へ集中し一元的に管理を行うことにより、資金効率の向上と金融費用の極小化及びガバナンスの向上を図っております。なお、一時的な余剰資金は、安全性が極めて高い金融資産で運用しております。
(7)経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報
IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と連結財務諸表規則(第7章及び第8章を除く。以下「日本基準」)により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項は、以下のとおりであります。
(のれんの償却)
日本基準では、のれんの償却については償却年数を見積り、その年数で償却することとしておりましたが、IFRSではIFRS移行日以降の償却を停止しております。
この影響により、IFRSでは日本基準に比べて、当連結会計年度において販売費及び一般管理費が22,256百万円減少しております。
(表示組替)
日本基準では、営業外収益、営業外費用、特別利益及び特別損失に表示していた項目を、IFRSではその他の収益、その他の費用、金融収益及び金融費用に表示しております。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)重要な会計方針及び見積り
当社の連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和51年大蔵省令第28号)第93条の規定により、IFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成にあたり見積りが必要となる事項については、合理的な基準に基づき会計上の見積りを行っております。
重要な会計方針及び見積りについては「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記3 重要な会計方針」及び「同 注記4 重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載のとおりであります。
(2)経営成績の状況
当連結会計年度(以下「当期」)における経済情勢を振り返りますと、欧州では中国向けなど製造業の輸出が減少し、英国のEU離脱をめぐる先行き不透明感の継続なども影響して経済成長が鈍化しました。米国では中国への輸出が年度後半に減少したものの、旺盛な個人消費を背景に内需は成長を持続し、設備投資も堅調に推移しました。中国は米国との貿易摩擦の影響を受けた製造業の設備投資が落ち込み、経済成長が減速しました。我が国経済は不透明感が継続する世界経済の影響も受け、輸出や設備投資が伸び悩みましたが、全体としては緩やかな成長を持続しました。
こうした経営環境の下、当期における当社グループの連結売上高は、1兆591億円(前期比2.7%増)となりました。事業セグメント別では、オフィス事業はカラー複合機の販売台数が高速機を中心に伸びたことに加えて、ITサービスが売上を拡大したことも寄与し、増収となりました。プロフェッショナルプリント事業はデジタル印刷システムの販売がカラー機とモノクロ機共に高速機を中心に伸長し、成長事業と位置付ける産業印刷ユニットの販売も拡大したことにより増収となりました。ヘルスケア事業は一部仕入商品の販売を終了した影響もあり減収となりました。産業用材料・機器事業は機能材料ユニットやIJコンポーネントユニットの売上が伸長し、需要が落ち着いた計測機器ユニットの減収を補って、前期並みとなりました。
営業利益は624億円(前期比16.0%増)となりました。中期経営計画において注力してきた基盤事業の収益力強化の施策が奏功して、オフィス事業やプロフェッショナルプリント事業が増益となったことにより、前期比で増益となりました。
税引前利益は601億円(前期比22.4%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は417億円(同29.3%増)となりました。
当社は高収益企業になることを目指し、中期経営計画「SHINKA 2019」において次の3領域での事業育成に積極的に取り組んでおります。
1.モノとモノがつながるIoT時代にふさわしい高付加価値サービス
2.本格的な商業・産業印刷のデジタル化推進
3.プレシジョン・メディシン(個別化医療)分野への本格参入
本中期経営計画の中間年度である当期におきましては、特に次の2項目に注力することにより、お客様の業務上の課題や社会的課題の解決に積極的に取り組んでまいりました。
1.基盤事業における抜本的な収益力強化
2.新規分野における着実な事業成長
「基盤事業における抜本的な収益力強化」につきましては、オフィス事業やプロフェッショナルプリント事業では、当社独自の付加価値型販売を推進し、高速機の販売増につなげました。また、お客様の使い勝手や魅力品質を追求し、2019年度に発売を予定している新製品の開発・生産準備が順調に進みました。産業用材料・機器事業では、機能材料ユニットでの新樹脂フィルムの開発・量産準備が進み、本格販売の準備が整いました。
「新規分野における着実な事業成長」につきましては、当社の提供するエッジIoTプラットフォームである「Workplace Hub(ワークプレイス ハブ)」の販売を欧米から開始しました。期待していた顧客価値(ニーズ)や価格設定が想定通りであったことを確認し、販売地域は9カ国に拡大しました。プレシジョン・メディシン(個別化医療)分野におきましては、国内事業会社を設立し事業を開始すると共に、米国にグローバル本社を設立し、買収した米国の2社を含めた一体運営によるシナジー戦略を推進しています。
これらの取り組みにより、「SHINKA 2019」の最終年度となる2019年度、更にはその先に向けての事業展開を確かなものとすることが出来ました。
セグメント別の状況は以下のとおりであります。
①オフィス事業
オフィスユニットでは、A3複合機の販売台数は、モノクロ機が減少したもののカラー機が大幅に伸長したことにより、全体では前期比で増加しました。カラー機は欧米や日本などの先進国においては前期に投入した高速機の販売が拡大し、中国やASEAN、インドなどの成長国においては低速機から高速機まで大幅に伸長するなど、当期の重点施策として取り組んできた地域戦略の成果が現れました。
ITサービスユニットでは、米国、欧州共に買収による新規連結効果に加えて、エッジIoTプラットフォーム「Workplace Hub(ワークプレイス ハブ)」の販売体制を構築する一環としての、マネージドITサービスの販売及び提供能力強化が成果を上げ、前期比での増収をけん引しました。
これらの結果、当事業の売上高は5,878億円(前期比0.7%増)、営業利益は471億円(同5.1%増)となりました。
②プロフェッショナルプリント事業
プロダクションプリントユニットでは、カラー機、モノクロ機共に販売台数が前期比で大幅に増加しました。カラー機は欧州が販売をけん引し、中国やインド、ASEANなどの成長国でも販売台数が大幅に伸長しました。モノクロ機は米国や成長国で販売が増加しました。
産業印刷ユニットでは、インクジェットデジタル印刷機の「AccurioJet(アキュリオジェット)KM-1」の販売台数は前期から大幅に増加、ラベル印刷機、MGI社製のデジタル加飾印刷機の販売でもターゲットとする市場でトップクラスのシェアを獲得しました。販売地域も従来の欧米に加え中国やASEAN、インドなど成長国に拡大、専門性を持った人材を増やし販売体制を強化しました。
マーケティングサービスユニットでは、大口顧客の需要回復による増収に加え、高付加価値サービスへのシフトを加速したことにより、収益性も改善しました。
これらの結果、当事業の売上高は2,277億円(前期比6.3%増)、営業利益は138億円(同49.2%増)となりました。
③ヘルスケア事業
ヘルスケアユニットでは、DR(デジタルラジオグラフィー)の販売数量は日本で伸長したものの米国の病院向けが落ち着いた影響で前期を下回りました。Ⅹ線診断の高度化を目指すデジタルⅩ線動画撮影システムを11月に販売開始し、導入した医療機関から高い評価を得ています。超音波診断装置は整形外科分野でのジャンルトップ維持と前期に譲受した産婦人科対象の事業が貢献し、日米を中心に販売数量を堅調に伸ばしました。医療ITユニットでは、PACS(医用画像保管・管理システム)の販売数量は減少したものの、医療ITサービスプラットフォーム「infomity(インフォミティ)」を中心としたサービス事業の売上高が伸長しました。
当事業全体では、収益性の低い仕入商品の販売を終了したこともあり前期比減収、また前期に計上した資産流動化による収益などの一過性要因の影響に加えて、米国でのDRの販売減もあり、減益となりました。
これらの結果、当事業の売上高は、909億円(前期比5.8%減)、営業利益は23億円(同57.0%減)となりました。
④産業用材料・機器事業
材料・コンポーネント分野では、機能材料ユニットは伸長市場を中心に位相差フィルムなどの高付加価値製品の販売が引き続き堅調に推移し、前期比で大幅な増収となりました。今後の戦略を担う新樹脂製品の開発も順調に進捗し、市場での認知も進みました。光学コンポーネントユニットはプロジェクター用光学部材とカメラ用交換レンズの販売が堅調でしたが、その他の光学部品の販売減少により前期比減収でした。IJコンポーネントユニットはアジアでの既存顧客からの受注が当期を通じて堅調に推移し増収となりました。
産業用光学システム分野では、計測機器ユニットでの需要の波を捉えたビジネスチャンス拡大傾向は継続しているものの、前期の増収をけん引した顧客のディスプレイ関連投資の反動もあり、減収となりました。
これらの結果、当事業の売上高は、1,167億円(前期比1.3%減)、営業利益は産業用光学システム分野の減収の影響も受け209億円(同10.7%減)となりました。
(3)財政状態の状況
前連結会計年度末 | 当連結会計年度末 | 増減 | |
資産合計 (億円) | 12,039 | 12,189 | 150 |
負債合計 (億円) | 6,683 | 6,530 | △153 |
資本合計 (億円) | 5,355 | 5,659 | 303 |
親会社の所有者に帰属する持分合計(億円) | 5,245 | 5,556 | 311 |
1株当たり親会社所有者帰属持分 (円) | 1,060.72 | 1,123.39 | 62.67 |
親会社所有者帰属持分比率 (%) | 43.6 | 45.6 | 2.0 |
当連結会計年度末(以下「当期末」)の資産合計は、前期末比150億円(1.3%)増加し1兆2,189億円となりました。これは主に、有形固定資産の増加141億円、のれん及び無形資産の増加134億円、営業債権及びその他の債権の増加121億円、現金及び現金同等物の減少250億円によるものであります。
負債合計については、前期末比153億円(2.3%)減少し6,530億円となりました。これは主に、社債及び借入金の減少199億円、退職給付に係る負債の減少131億円、引当金の増加150億円によるものであります。
資本合計については、前期末比303億円(5.7%)増加し5,659億円となりました。
親会社の所有者に帰属する持分合計は、前期末比311億円(5.9%)増加し5,556億円となりました。これは主に、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上417億円、剰余金の配当による減少148億円によるものであります。
これらの結果、1株当たり親会社所有者帰属持分は1,123.39円となり、親会社所有者帰属持分比率は2.0ポイント増加の45.6%となりました。
(4)キャッシュ・フローの状況
当期の連結キャッシュ・フローの状況は、次のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フロー571億円の収入と、投資活動によるキャッシュ・フロー414億円の支出の結果、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合計したフリー・キャッシュ・フローは156億円のプラスとなりました。
また、財務活動によるキャッシュ・フローは402億円の支出となりました。
そのほかに、現金及び現金同等物に係る為替変動の影響額があり、当期末の現金及び現金同等物の残高は、前期末比250億円減少の1,248億円となりました。
当期における各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
税引前利益601億円、減価償却費及び償却費590億円、営業債務及びその他の債務の増加による増加34億円等によるキャッシュ・フローの増加と、有形固定資産及び無形資産除売却損益173億円の調整、営業債権及びその他の債権の増加による減少141億円、棚卸資産の増加による減少59億円、退職給付に係る負債の減少103億円、法人所得税の支払い103億円等によるキャッシュ・フローの減少により、営業活動によるキャッシュ・フローは571億円の収入となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
有形固定資産の取得による支出350億円、無形資産の取得による支出162億円、子会社株式の取得による支出99億円、有形固定資産及び無形資産の売却による収入215億円等があり、投資活動によるキャッシュ・フローは414億円の支出となりました。
この結果、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合計したフリー・キャッシュ・フローは156億円のプラス(前期は683億円のマイナス)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
社債の償還及び長期借入金の返済270億円、配当金の支払い148億円等の支出により、財務活動によるキャッシュ・フローは402億円の支出(前期は1,266億円の収入)となりました。
(5)生産、受注及び販売の実績
①生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 当連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | 前期比 |
百万円 | % | |
オフィス事業 | 325,157 | 101.6 |
プロフェッショナルプリント事業 | ||
ヘルスケア事業 | 20,305 | 83.3 |
産業用材料・機器事業 | 108,410 | 96.5 |
報告セグメント計 | 453,874 | 99.4 |
その他 | 8,042 | 100.0 |
合計 | 461,916 | 99.4 |
(注1)金額は、売価換算値で表示しております。
(注2)上記金額には、消費税等は含んでおりません。
(注3)オフィス事業、プロフェッショナルプリント事業につきましては、共通の設備にて生産を行っておりますので、当該生産拠点における生産実績を記載しております。
②受注実績
当社グループは見込み生産を主としておりますので、記載を省略しております。
③販売実績
販売状況については、「(2)経営成績の状況」において各セグメントの業績に関連付けて示しております。
(6)資本の財源及び資金の流動性
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、以下のとおりであります。
①資金需要
当社グループの主な資金需要は、製造費用、販売費及び一般管理費等の営業費用並びに当社グループの設備新設、改修等に係る投資や、将来の成長及び企業価値向上を目的としたM&Aによる投資であります。
②資金の源泉
当社グループの資金の主な源泉は、営業活動によるキャッシュ・フロー、金融機関からの借入や社債の発行による資金調達であります。
③流動性
当社グループは、従来から営業活動により多額のキャッシュ・フローを得ており、今後も引き続き重要な資金源になると見込んでおります。また、複数の金融機関との間で2023年9月末を期限とする1,000億円のコミットメントライン契約を締結し、効率的な資金の調達を行っている他、アンコミットメントベースの融資枠、国内社債発行登録枠を有しています。なお、当社の既発行社債の債券格付、発行登録予備格付はともに株式会社格付投資情報センター(R&I)及び株式会社日本格付研究所(JCR)からA格を取得しています。
当社グループ内の資金の効率化については、日本・北米・欧州・アジアパシフィックの各統括拠点においてCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入しており、各地域の余剰資金を当社へ集中し一元的に管理を行うことにより、資金効率の向上と金融費用の極小化及びガバナンスの向上を図っております。なお、一時的な余剰資金は、安全性が極めて高い金融資産で運用しております。
(7)経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報
IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と連結財務諸表規則(第7章及び第8章を除く。以下「日本基準」)により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項は、以下のとおりであります。
(のれんの償却)
日本基準では、のれんの償却については償却年数を見積り、その年数で償却することとしておりましたが、IFRSではIFRS移行日以降の償却を停止しております。
この影響により、IFRSでは日本基準に比べて、当連結会計年度において販売費及び一般管理費が22,256百万円減少しております。
(表示組替)
日本基準では、営業外収益、営業外費用、特別利益及び特別損失に表示していた項目を、IFRSではその他の収益、その他の費用、金融収益及び金融費用に表示しております。