四半期報告書-第93期第2四半期(令和2年7月1日-令和2年9月30日)

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2020/11/13 14:07
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文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものです。
(1) 財政状態及び経営成績の状況
当第2四半期連結累計期間において、新型コロナウイルス感染症の拡大とそれに伴う世界経済の停滞が続いており、経済再開の動きも徐々に出始めていますが、先が見通せない状況が今後も続くと見込まれます。
こうした状況の中、当社グループは、従業員及び関係先の健康と安全を最優先し、顧客と協力して必要な対応を速やかにとりながら手持ちプロジェクトを遂行しています。また、世界経済の停滞及び原油・ガス価格の下落を背景とした顧客による投資計画の見直しの動きについても状況分析に努めています。
中期経営計画「再生計画~再生と未来に向けたビジョン~」に即して、引き続きプロジェクトの全ステージにおけるリスクマネジメントを徹底するとともに、2020年4月にエネルギープロジェクト事業統括下に建設本部を設立し、工事及びコミッショニングの機能の強化を図り、EPC(設計・調達・建設)遂行管理力の強化を進めています。財務面では、2020年6月に開催した株主総会において決議された資本金及び資本準備金の額の減少並びに剰余金の処分については2020年8月7日付でその効力が発生しました。これにより、当社単体の累積損失(2020年3月末現在1,354億94百万円)を解消し、財務体質を改善しました。人財の高度化・拡充については、人財開発に関わる統一的な指針として人財開発基本方針を策定し、業務遂行力と組織経営力を兼ね備えた人財の開発を進めています。
さらに、2020年4月に健康経営宣言を制定し、従業員の健康保持・増進のための施策を実行するとともに、在宅勤務の推進により、生産性と組織の活力の向上を図っています。
中期経営計画では、気候変動対策として低炭素・炭素循環社会へ移行を目指す気運の高まりや、デジタルトランスフォーメーションの進展、医薬・ライフサイエンス技術の深化といった社会・事業環境の変化を先取りして成長戦略に取り込み、「エンジニアリング価値の再定義」の取り組みを進めながら、地球環境ビジネス、デジタルト
ランスフォーメーションを加速することで、持続的な成長に向けて、事業ポートフォリオと収益構造の変革を進めています。
当第2四半期連結累計期間の経営成績及び財政状態は、次のとおりです。
連結受注工事高は601億15百万円(前年同四半期比24.8%減)、連結完成工事高は1,615億45百万円(同7.6%減)であった結果、連結受注残高は6,745億1百万円(前連結会計年度末比25.4%減)となりました。新型コロナウイルス感染症の影響による経済活動の縮小や経済環境の悪化などの影響を受け、調達品の製作及び輸送の遅れ、工事監督者の派遣や現場作業者の動員への制限等、海外の大口案件を中心に影響が出つつある中、遂行計画を精査し必要な是正を図るとともに、影響額について更に慎重に精査し、工事費用の増加を見込んだこと等により、完工総利益は111億39百万円(前年同四半期比49.5%減)となりました。一方、中期経営計画「再生計画~再生と未来に向けたビジョン~」に掲げた固定費削減施策の着実な遂行により販売費及び一般管理費を前年同期比20億31百万円削減した結果、営業利益は51億74百万円(前年同四半期比63.2%減)、経常利益は47億70百万円(同30.7%減)となりました。また、一部の海外連結子会社において、税制改正による法人税等の還付を見込んだこと等により、親会社株主に帰属する四半期純利益は57億95百万円(同21.0%増)となりました。
新型コロナウイルス感染症拡大の影響については、遂行中案件全般に影響が出ているというわけではなく、案件毎に異なる状況です。一部案件では進捗等に影響が見られるものの、大半の案件は想定内で遂行中であり、コスト削減や増益を達成できている案件もあります。なお、当第2四半期連結累計期間の四半期連結財務諸表においては、同作成時点で見込まれる合理的な影響額を積算し、工事進捗度計算の基礎となる工事原価総額に織り込んだうえで、完成工事高及び完成工事原価を計上しています。
資産については、未成工事支出金の増加52億62百万円の一方で、現金預金の減少379億57百万円、ジョイントベンチャー持分資産の減少130億8百万円、受取手形・完成工事未収入金の減少115億11百万円などにより、資産合計は前連結会計年度末に比べ598億26百万円減少しました。
負債については、工事損失引当金の増加40億83百万円の一方で、未成工事受入金の減少414億31百万円、支払手形・工事未払金の減少251億33百万円などにより、負債合計は前連結会計年度末に比べ661億84百万円減少しました。
純資産については、親会社株主に帰属する四半期純利益の計上による利益剰余金の増加などにより、313億1百万円となりました。なお、2020年6月25日開催の定時株主総会の決議に基づき、資本金633億81百万円、資本準備金721億12百万円を減少させ、繰越利益剰余金の欠損補填に充当しております。
当社の報告セグメントであるエンジニアリング事業の概況は、次のとおりです。
[エネルギー分野]
(LNG・その他ガス関係)
海外では、米国、インドネシア、モザンビーク、ナイジェリアでLNG(液化天然ガス)プラントのEPC業務を遂行中です。米国では、キャメロンLNGプロジェクトは2020年8月に第3系列において商業運転が開始され、全系列において商業運転開始となりました。ゴールデンパスLNGプロジェクトではEPC業務を遂行中です。モザンビークとナイジェリアのLNGプロジェクトではパートナーが実施する設計のレビューなどの技術的なサ
ポート業務を遂行中です。また、カタールで計画されている年産780万トンのLNGプラント4系列を増設する案件に入札中です。その他ガス分野では、カタールの当社グループ会社がLNG・ガス処理プラントの改造・改修案件に係る複数の業務を遂行中です。
国内では、当社が建設したLNG受入基地の増強・改造・改修や、地震・津波災害対策工事等のEPC業務を遂行中です。
(石油・石油化学・金属関係)
海外では、米国メキシコ湾岸でエチレン生産プラントのEPC業務、マレーシアで残油流動接触分解装置のEPCC(設計・調達・建設・試運転)業務を遂行中です。
国内では、石油会社向けに、製油所の競争力強化、設備更新及び船舶燃料硫黄分規制への対策を目的とした既設設備改修工事、耐震補強等の国土強靭化基本法対応の検討業務などを遂行中です。
金属資源分野においては、国内にてポリプロピレン重合用触媒製造工場のEPC業務を遂行中です。引き続き需要が堅調である金属資源分野における受注拡大に向けて取り組んでいきます。
[地球環境分野]
(医薬・生化学・一般化学関係)
医薬・生化学分野では、医薬品合成原薬製造設備などのEPC業務を遂行中です。EPC業務以外では、シオノギファーマ㈱と医薬品原薬・中間体の連続生産技術の開発・検討を協力して進めることに合意しました。
一般化学分野では、高機能材製造設備や水素化石油樹脂生産設備などのEPC業務を継続して遂行中です。また、カーボンリサイクル技術の確立に向けて、産学官連携でCO2の回収・資源化やCO2を原料とするパラキシレン製造についての研究開発に取り組んでいます。さらに、顧客の廃プラスチックのリサイクル事業について設備概念設計支援を行っています。
植物工場分野では、業界における大手生産・運営事業者であるMIRAI㈱と業務提携による体制強化を図り、商業設備の導入推進に取り組んでいます。カタール大学向けに実証設備納入業務を遂行中です。
(環境・新エネルギー・インフラ関係)
環境分野では、インドで環境規制強化により石炭火力発電所への排煙脱硫設備の導入が進む中、当社の
CT-121排煙脱硫プロセスが複数の案件に活用されています。
国内では、火力発電所の燃焼廃ガスからCO2を分離・回収・貯蔵する(CCS)実証設備及び石炭火力発電所向けの排煙脱硫設備のEPC業務を遂行中です。
新エネルギー分野では、世界最大級の蓄電池システム建設、複数の太陽光発電設備(メガソーラー)建設、木質ペレットを燃料とする国内最大級のバイオマス発電所建設に係るEPC業務を遂行するとともに、今後大きなマーケットが予測される洋上風力発電分野への参入を検討しています。
三菱商事㈱、三井物産㈱、日本郵船㈱とともに取り組んでいる「次世代水素サプライチェーンの事業化に向けた実証プロジェクト」については、ブルネイ水素化プラント、国内脱水素プラントの建設工事が終了し、火力発電の燃料として水素の供給を開始しており、実証運転を順調に行っています。また、当社技術の安全性が高く評価されたシンガポールにおいて、三菱商事㈱と当社はシンガポールの民間5社と「シンガ
ポールの水素社会実現に向けた協力に関する覚書」を締結し、当社の独自技術を用いた水素の輸入利用・事業化の検討を継続しています。さらに、豪州Hazer社と日本での営業活動協力の覚書を締結し、同社のメタン熱分解プロセスによりメタンガスから水素とグラファイトを製造することで、CO2の貯蔵を不要とする水素の製造・供給も目指し、国内顧客候補との会話を進めています。
[デジタル技術革新分野]
デジタルトランスフォーメーションでは、革新的デジタルプロダクト展開、デジタルEPC推進、業務プロセス革新の3つの取り組みを進めています。
革新的デジタルプロダクト展開では、エンジニアリングの知見とデジタルAI技術を融合させ、顧客のプ
ラントの資産価値を最大化するための高度デジタルソリューションを開発し、EFEXISTMブランドで提供しています。当該ソリューションは、インドネシアのドンギ・スノロLNG社の稼動中LNGプラントへ導入され、製品の増産、運転コストや運転に伴う排出ガスの削減へ寄与いたしました。この成果により国内外のプラントでの導入が進行中です。
デジタルEPC推進では、EPC遂行管理力の進化に向けて、AWP(Advanced Work Packaging)適用のためのシステムを開発し、遂行プロジェクトに順次適用しています。また、当社がエンジニアリング事業で培った経験及びプラント空間設計の基本思想と㈱ArentのCAD技術・最適化技術を融合させて、プラントの空間設計に新たな手法を提案する革新的なプラント設計システムを開発しました。このシステムは既に当社で活用を進めています。また、同システムをプラントエンジニアリング業界に提案する㈱PlantStreamを当社及び㈱Arentの共同出資により2020年8月に設立しました。今後、世界中のプラントオーナーやEPCコントラクターなどへの販売を目指します。
業務プロセス革新では、デジタルAI技術を活用し20%の業務効率改善を目指す活動「Target20」により全社デジタル化を推進しています。また、当社子会社の千代田システムテクノロジーズ㈱のIT部門を分社化のうえ、IT大手のTIS㈱との共同出資会社であるTIS千代田システムズ㈱を2020年10月1日に設立し、当社グループのIT基盤を強化しています。
受注高、完成工事高、受注残高の実績は、次のとおりです。
(単位:百万円)
セグメントの名称前第2四半期連結累計期間
(自 2019年4月1日
至 2019年9月30日)
当第2四半期連結累計期間
(自 2020年4月1日
至 2020年9月30日)
受注高
(構成比)
完成工事高
(構成比)
受注残高
(構成比)
受注高
(構成比)
完成工事高
(構成比)
受注残高
(構成比)
1 エンジニアリング事業79,506174,505904,48259,776161,207674,501
( 99.5%)( 99.8%)(100.0%)( 99.4%)( 99.8%)(100.0%)
エネルギー
分野
(1) LNGプラント関係29,53289,710472,7919,21563,774349,351
( 37.0%)( 51.3%)( 52.3%)( 15.3%)( 39.5%)( 51.8%)
(2) その他ガス関係9861,59012,7861,5875,45210,232
( 1.2%)( 0.9%)( 1.4%)( 2.6%)( 3.4%)( 1.5%)
(3) 石油・石油化学
・金属関係
33,51745,427294,01924,36662,836200,968
( 41.9%)( 26.0%)( 32.5%)( 40.5%)( 38.9%)( 29.8%)
地球環境
分野
(4) 医薬・生化学
・一般化学関係
2,69812,36513,96819,0368,32530,733
( 3.4%)( 7.1%)( 1.5%)( 31.7%)( 5.2%)( 4.6%)
(5) 環境・新エネルギー
・インフラ関係
9,02819,933105,7543,45519,11980,821
( 11.3%)( 11.4%)( 11.7%)( 5.8%)( 11.8%)( 12.0%)
(6) その他3,7435,4785,1622,1141,6992,394
( 4.7%)( 3.1%)( 0.6%)( 3.5%)( 1.0%)( 0.3%)
2 その他の事業397397-338338-
( 0.5%)( 0.2%)( -)( 0.6%)( 0.2%)( -)
合 計79,903174,903904,48260,115161,545674,501
(100.0%)(100.0%)(100.0%)(100.0%)(100.0%)(100.0%)
国 内40,65255,971201,59845,95660,931162,795
( 50.9%)( 32.0%)( 22.3%)( 76.4%)( 37.7%)( 24.1%)
海 外39,251118,931702,88414,158100,614511,705
( 49.1%)( 68.0%)( 77.7%)( 23.6%)( 62.3%)( 75.9%)

(注)1 受注残高を算出するに当たっては、前連結会計年度以前に受注した工事の契約変更等による減額及び外貨建契約に関する為替換算修正に伴う増減額の合計を加味しています。
2 本表の金額には消費税等は含まれていません。
(2) キャッシュ・フローの状況
当第2四半期連結累計期間における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ374億53百万円減少し、784億79百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
税金等調整前四半期純利益51億56百万円の計上、ジョイントベンチャー持分資産の減少による125億24百万円のプラス、工事損失引当金の増加による45億12百万円のプラスがあった一方で、運転資金収支(売上債権、未成工事支出金、仕入債務、未成工事受入金の増減額合計)の580億22百万円のマイナスなどにより、当第2四半期連結累計期間における営業活動による資金収支は、360億1百万円の減少(前年同四半期は233億83百万円の減少)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
定期預金が2億69百万円純減した一方で、投資有価証券の取得による支出6億54百万円などにより、当第2四半期連結累計期間における投資活動による資金収支は、1億56百万円の減少(前年同四半期は81億3百万円の減少)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
リース債務の返済による支出1億90百万円などにより、当第2四半期連結累計期間における財務活動による資金収支は、2億52百万円の減少(前年同四半期は895億1百万円の増加)となりました。
(3) 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等
当第2四半期連結累計期間において、当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等について重要な変更はありません。
(4) 研究開発活動
当第2四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発活動の金額は、6億33百万円です。
なお、当第2四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。