有価証券報告書-第93期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/23 16:26
【資料】
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【項目】
146項目
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2021年6月23日)現在において判断したものです。
<経営成績等の状況の概要及び経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容>当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概況は次のとおりです。
(1)財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度において、新型コロナウイルス感染症の拡大とそれに伴う世界経済の停滞が続いており、持ち直しの動きがみられるものの、先が見通せない状況が今後も続くと見込まれます。
こうした状況の中、当社グループは、従業員及び関係先の健康と安全を最優先し、顧客と協力して必要な対応を速やかにとりながら手持ちプロジェクトを遂行しています。
中期経営計画「再生計画~再生と未来に向けたビジョン~」に即して、引き続きプロジェクトの全ステージにおけるリスクマネジメントを徹底するとともに、2020年4月にエネルギープロジェクト事業統括下に建設本部を設立して工事及びコミッショニングの機能の強化を図り、EPC遂行管理力の強化を進めています。財務面では、2020年6月に開催した株主総会において決議された資本金及び資本準備金の額の減少、並びに剰余金の処分により、当社単体の累積損失(2020年3月末現在1,354億94百万円)を解消し、財務体質を改善しました。人財の高度化・拡充については、人財開発に関わる統一的な指針として人財開発基本方針を策定し、業務遂行力と組織経営力を兼ね備えた人財の開発を進めています。
さらに、2020年4月に健康経営宣言を制定し、従業員の健康保持・増進のための施策を実行するとともに、働き方改革の推進により、生産性の向上を図っています。
当社は中期経営計画で脱炭素化社会への移行を成長の機会と捉え、その実現に向けた様々な取り組みを経営の重点施策に位置付けてきました。2020年12月に発表された日本政府のグリーン成長戦略により、脱炭素化社会を目指す機運はさらに高まっています。当社はグリーンエネルギーや地球環境分野のビジネス展開及びデジタルトランスフォーメーションを加速し、「エンジニアリング価値の再定義」の取り組みを進めながら、持続的な成長に向けて事業ポートフォリオと収益構造の変革を進めています。
当連結会計年度における業績は、次のとおりです。
(受注工事高)
受注工事高は、前連結会計年度比399.8%増の8,988億34百万円となりました。なお、当連結会計年度末受注残高は1兆1,260億72百万円となりました。受注工事高の概要は、「主たる事業セグメントであるエンジニアリング事業の概況」に記載のとおりです。
(完成工事高)
完成工事高は、前連結会計年度比18.3%減の3,153億93百万円となりました。完成工事高の概要は、「主たる事業セグメントであるエンジニアリング事業の概況」に記載のとおりです。
(完成工事総利益)
完成工事総利益は、新型コロナウイルス感染病の拡大が想定以上に長引いたこと、新規案件のいくつかで最終投資決定が遅れたこと、進捗が不透明な案件の資産化見積費用を追加償却したこと等により、前連結会計年度の完成工事総利益428億23百万円に対し、完成工事総利益200億61百万円となりました。また、完成工事総利益率は前連結会計年度の11.1%から4.7ポイント減少し6.4%となりました。
(販売費及び一般管理費)
販売費及び一般管理費は、中期経営計画「再生計画~再生と未来に向けたビジョン~」に掲げた固定費削減施策の着実な遂行により、前連結会計年度に比べ29億87百万円減少し130億46百万円となりました。また、販売費及び一般管理費比率は前連結会計年度の4.2%から0.1ポイント減少し4.1%となりました。
(営業利益)
営業利益は、完成工事総利益と同様の理由により、前連結会計年度に比べ197億74百万円減少し70億15百万円の営業利益となりました。
(営業外収益・営業外費用)
営業外収益及び営業外費用は、前連結会計年度の81億44百万円の費用超過に対し、14億47百万円の収益超過となりました。これは、前連結会計年度では101億92百万円の為替差損を計上したのに対し、当連結会計年度は8億20百万円の為替差益を計上したことが主因です。
また、受取利息・受取配当金から支払利息を差し引いた金融収支は、前連結会計年度の21億23百万円の入金超過に比べ16億40百万円減少し4億83百万円の入金超過となっています。持分法による投資損益は、前連結会計年度の3億61百万円の投資利益に比べ、当連結会計年度は33百万円の投資利益となりました。
(経常利益)
経常利益は、営業外収益が収益超過となったものの、完成工事総利益と同様の理由により、前連結会計年度に比べ101億82百万円減少し84億62百万円となりました。
(特別利益・特別損失)
特別利益においては、当社グループ関連会社を清算したことに伴う関係会社株式売却益4億13百万円が生じています。特別損失においては、当連結会計年度は計上していません。
(法人税、住民税及び事業税・法人税等調整額)
税金等調整前当期純利益は、前連結会計年度に比べ101億74百万円減少し88億76百万円の利益となりました。
法人税、住民税及び事業税は、一部の海外子会社において、税制改正による法人税等の還付を見込んだこと等により8億48百万円、法人税等調整額は33百万円となり、前連結会計年度に比べ61億33百万円の減少となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ41億84百万円減少し79億93百万円の親会社株主に帰属する当期純利益となりました。
報告セグメントであるエンジニアリング事業の分野別概況は、次のとおりです。
[エネルギー分野]
(LNG・その他ガス関係)
海外では、カタール、米国、インドネシア、ナイジェリアでLNGプラントのEPC(設計・調達・建設)業務を遂行中です。カタールでは年産800万トンのLNGプラント4系列の増設案件であるNFEプロジェクトを受注し、設計業務を開始しました。米国では、キャメロンLNGプロジェクトは全系列において商業生産を開始しています。
ゴールデンパスLNGプロジェクトではEPC業務を遂行中です。ナイジェリアのLNGプロジェクトではパートナーが実施する設計のレビューなどの技術的なサポート業務を遂行中です。その他ガス分野では、カタールの当社グループ会社がLNG・ガス処理プラントの改造・改修案件に係る複数の業務を遂行中です。
国内では、当社が建設したLNG受入基地の増強・改造・改修や火力発電所向けガス供給設備の新設、地震・津波災害対策工事等のEPC業務を遂行中です。
当連結会計年度の受注工事高は7,860億20百万円(前連結会計年度比1014.4%増)となり、完成工事高は1,161億14百万円(同36.9%減)となりました。
(石油・石油化学・金属分野)
海外では、米国メキシコ湾岸でエチレン生産プラントのEPC業務、マレーシアで残油流動接触分解装置のEPCC(設計・調達・建設・試運転)業務を遂行中です。
国内では、石油会社向けに、製油所の競争力強化、設備更新及び船舶燃料硫黄分規制への対策を目的とした既設設備改修工事、耐震補強等の国土強靭化基本法対応の検討業務などを遂行中です。
金属資源分野においては、国内にてポリプロピレン重合用触媒製造工場のEPC業務を遂行中です。引き続き需要が堅調である金属資源分野における受注拡大に向けて取り組んでいきます。
当連結会計年度の受注工事高は511億80百万円(同19.6%減)となり、完成工事高は1,237億40百万円(同3.8%減)となりました。
[地球環境分野]
(医薬・生化学・一般化学関係)
医薬・生化学分野では、塩野義製薬㈱向け遺伝子組換えタンパク質によるワクチン原薬製造設備は1ラインを完工しました。引き続き更に1ラインの増設及び付帯設備のEPC業務を遂行中です。さらに、バイオ医薬品原薬製造工場の基本設計業務を遂行中です。医薬品合成原薬製造設備は完工しました。EPC業務以外では、シオノギファーマ㈱と医薬品原薬・中間体の連続生産技術の開発・検討を協力して進めています。
一般化学分野では、高機能材製造設備及び水素化石油樹脂生産設備を完工しました。また、カーボンリサイクル技術の確立に向けて、産学官連携でCO2の回収・資源化やCO2を原料とするパラキシレン製造についての研究開発に取り組んでいます。さらに、顧客の廃プラスチックのリサイクル事業について基本設計業務を遂行しています。
植物工場分野では、業界における大手生産・運営事業者であるMIRAI㈱と業務提携による体制強化を図り、商業設備の導入推進に取り組むとともに、カタール大学向けに実証設備納入業務を遂行中です。
当連結会計年度の受注工事高は501億48百万円(同163.4%増)となり、完成工事高は267億18百万円(同7.2%増)となりました。
(環境・新エネルギー・インフラ関係)
環境分野では、インドで環境規制強化により石炭火力発電所への排煙脱硫設備の導入が進む中、当社のCT-121排煙脱硫プロセスが複数の案件に活用されています。
国内では、火力発電所の燃焼廃ガスからCO2を分離・回収・貯蔵する(CCS)実証設備のEPC業務を完了し運転継続中です。また、石炭火力発電所向けの排煙脱硫設備のEPC業務を遂行中です。
新エネルギー分野では、世界最大級の蓄電池システム建設、複数の太陽光発電設備(メガソーラー)建設、木質ペレットを燃料とする国内最大級のバイオマス発電所建設に係るEPC業務を遂行するとともに、今後大きな
マーケットが予測される洋上風力発電分野への参入を検討しています。
炭素循環社会実現に向けた取り組みを一層強化するため、2020年12月に当社、三菱商事㈱、米国Blue Planet社の3社で協業契約を締結し、排ガス等に含まれるCO2を原料にして、コンクリート原料である骨材を製造する技術の開発とその事業化を推進します。
「次世代水素サプライチェーンの事業化に向けた実証プロジェクト」は、2020年12月に実証運転を完了し、当社のSPERA水素技術(MCH-LOHC法)の商業規模へのスケールアップが可能であることを実証しました。今後、需要拡大に見合うコスト低減を一層図り、2020年代半ば以降の準商用化や商用化を通して、2050年を目標にしたカーボンニュートラルに貢献していきます。この取り組みの一環として、「中部圏水素利用協議会」に参画、中部圏における水素の需要拡大と安定的な利用のためのサプライチェーン構築を目指し、水素の大規模利用の可能性検討を開始しています。また、シンガポールでは当社技術の安全性が高く評価され、三菱商事㈱と当社はシンガポールの民間5社と当社技術を用いた水素の輸入利用・事業化の検討を継続して推進しています。
当連結会計年度の受注工事高は65億4百万円(同67.0%減)となり、完成工事高は440億66百万円(同11.1%増)となりました。
[デジタル技術革新分野]
デジタルトランスフォーメーション分野では、革新的デジタルプロダクト展開、デジタルEPC推進、業務プロセス革新の3つの取り組みを進めています。
革新的デジタルプロダクト展開では、エンジニアリングの知見とデジタルAI技術を融合させ、顧客のプラントの資産価値を最大化するための高度デジタルプロダクトを開発し、EFEXIS®ブランドで提供しており、国内外のプラントで導入を進めています。
デジタルEPC推進では、EPC遂行管理力の進化に向けて、AWP(Advanced Work Packaging)適用のためのシステムを開発し、遂行プロジェクトに順次適用しています。また、当社がエンジニアリング事業で培った知見及びプラント空間設計の基本思想と㈱ArentのCAD技術・最適化技術を融合させて、プラントの基本設計業務のうち空間設計にかかる工程の80%程度を削減し、従来の約5倍の速度で三次元モデルの作成を可能とする革新的な設計システムを開発しました。このシステムをプラントエンジニアリング業界に提案するため、2020年8月に当社及び㈱Arentの共同出資により㈱PlantStreamを設立し、世界中のプラントオーナーやEPCコントラクターなどへの販売を進めています。
業務プロセス革新では、デジタルAI技術を活用し20%の業務効率改善を目指す活動「Target20」により全社デジタル化を推進しています。また、当社子会社の千代田システムテクノロジーズ㈱のIT部門を分社化のうえ、IT大手のTIS㈱との共同出資会社であるTIS千代田システムズ㈱を2020年10月1日に設立し、当社グループのIT基盤を強化しています。
経営成績に重要な影響を及ぼす可能性のある主な事項、及び、それらに対する対応については、2.事業等のリスクに記載しています。
現在は1兆1,260億円程度の受注残高を抱えており、カタール、米国、インドネシアで遂行中のLNG等のプロジェクトのほか、手持ち工事を着実に遂行していきます。
新型コロナウイルス感染症の拡大による影響を最小限に抑えるべく顧客や業務委託先等と協議を行いながら対応を進めるとともに、2021年5月に公表した「再生計画~再生と未来に向けたビジョン~」のアップデートでも言及しているとおり、脱炭素社会への移行加速や石油ガス業界の急激な変革進行への対応、再生可能エネルギー分野及び医薬ライフサイエンス分野等の更なる強化、並びにデジタル徹底活用による全社事業変革を強力に押し進めていきます。
また、当社グループは、従業員が心身ともに健康を保持して能力を最大限に発揮することが、当社グループの経営理念達成や競争力の向上に不可欠であると考え、人財たる従業員を支えるため、健康経営に取り組みます。
(2) 生産、受注及び販売の実績
① 受注実績
事業部門の名称前連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
当連結会計年度
(自 2020年4月1日
至 2021年3月31日)
受注高受注残高受注高受注残高
金額
(百万円)
構成比
(%)
金額
(百万円)
構成比
(%)
金額
(百万円)
⦅前年同期比⦆
構成比
(%)
金額
(百万円)
構成比
(%)
1 エンジニアリング事業179,05699.6811,847100.0898,12599.91,126,072100.0
( 1,579)⦅ 401.6%増⦆(△269,216)
エネルギー
分野
(1) LNGプラント関係65,19636.2435,96253.7782,80987.1956,18784.9
( 6,186)⦅1,100.7%増⦆(△159,601)
(2) その他ガス関係5,3343.014,1811.73,2100.36,0320.5
( △12)⦅ 39.8%減⦆( △84)
(3) 石油・石油化学
・金属関係
63,67335.4242,94629.951,1805.759,6015.3
( △3,215)⦅ 19.6%減⦆(△108,929)
地球環境
分野
(4) 医薬・生化学
・一般化学関係
19,04210.620,0642.550,1485.643,2853.9
( 1,931)⦅ 163.4%増⦆( △207)
(5) 環境・新エネルギー
・インフラ関係
19,72811.096,58311.96,5040.758,7555.2
( △208)⦅ 67.0%減⦆( △266)
(6) その他6,0793.42,1090.34,2710.52,2090.2
( △3,101)⦅ 29.7%減⦆( △125)
2 その他の事業7800.4--7080.1--
( -)⦅ 9.1%減⦆( -)
総 合 計179,836100.0811,847100.0898,834100.01,126,072100.0
( 1,579)⦅ 399.8%増⦆(△269,216)

なお、国内及び海外の受注高並びに受注残高の内訳は、次のとおりです。
国内外内訳前連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
当連結会計年度
(自 2020年4月1日
至 2021年3月31日)
受注高受注残高受注高受注残高
金額
(百万円)
構成比
(%)
金額
(百万円)
構成比
(%)
金額
(百万円)
⦅前年同期比⦆
構成比
(%)
金額
(百万円)
構成比
(%)
国 内95,83453.3179,55922.1103,76511.5135,19012.0
(△720)⦅ 8.3%増⦆( △2,049)
海 外84,00246.7632,28877.9795,06988.5990,88188.0
(2,300)⦅846.5%増⦆(△267,167)
合 計179,836100.0811,847100.0898,834100.01,126,072100.0
(1,579)⦅399.8%増⦆(△269,216)

(注) 受注残高の( )内の数字は、前連結会計年度以前に受注した工事の契約変更等による減額及び外貨建契約に関する為替換算修正に伴う増減額の合計を加味しています。
② 売上実績
事業部門の名称前連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
当連結会計年度
(自 2020年4月1日
至 2021年3月31日)
金額(百万円)構成比(%)金額(百万円)
⦅前年同期比⦆
構成比(%)
1 エンジニアリング事業385,14499.8314,68499.8
⦅ 18.3%減⦆
エネルギー
分野
(1) LNGプラント関係179,50346.5104,83933.2
⦅ 41.6%減⦆
(2) その他ガス関係4,5451.211,2743.6
⦅148.1%増⦆
(3) 石油・石油化学
・金属関係
128,59933.3123,74039.2
⦅ 3.8%減⦆
地球環境
分野
(4) 医薬・生化学
・一般化学関係
24,9226.526,7188.5
⦅ 7.2%増⦆
(5) 環境・新エネルギー
・インフラ関係
39,67110.344,06614.0
⦅ 11.1%増⦆
(6) その他7,9032.04,0441.3
⦅ 48.8%減⦆
2 その他の事業7800.27080.2
⦅ 9.1%減⦆
総 合 計385,925100.0315,393100.0
⦅ 18.3%減⦆

なお、国内及び海外の売上実績の内訳は、次のとおりです。
国内外内訳前連結会計年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
当連結会計年度
(自 2020年4月1日
至 2021年3月31日)
金額(百万円)構成比(%)金額(百万円)
⦅前年同期比⦆
構成比(%)
国 内133,08034.5146,08446.3
⦅ 9.8%増⦆
海 外252,84465.5169,30853.7
⦅33.0%減⦆
合 計385,925100.0315,393100.0
⦅18.3%減⦆

(注) 1 当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため「生産の実績」は記載していません。
2 主な相手先別の売上実績及び総売上高に対する割合は次のとおりです。
前連結会計年度当連結会計年度
相手先金額
(百万円)
割合
(%)
相手先金額
(百万円)
割合
(%)
キャメロン・エルエヌジー・エルエルシー79,61220.6ガルフ・コースト・グロウス・ベンチャーズ・エルエルシー55,07617.5
ガルフ・コースト・グロウス・ベンチャーズ・エルエルシー57,37814.9ビーピー・ベラウ・エルティーディー34,05810.8

3 本表の金額には消費税等は含まれていません。
(3) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
① キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度の現金及び現金同等物の期末残高は987億38百万円となり、前連結会計年度末残高より171億94百万円減少しました。
営業活動による資金収支
税金等調整前当期純利益88億76百万円の計上、及びジョイントベンチャー持分資産の減少による375億95百万円のプラスがあった一方で、運転資金収支(売上債権、未成工事支出金、仕入債務、未成工事受入金の増減額合計)が510億13百万円のマイナス、未収入金の増加による116億70百万円のマイナスなどにより、当連結会計年度における営業活動による資金収支は、208億6百万円のマイナスとなりました。
投資活動による資金収支
無形固定資産の売却による収入7億46百万円の一方で、無形固定資産の取得による支出15億41百万円、貸付けによる支出8億69百万円があったことなどにより、当連結会計年度における投資活動による資金収支は、22億50百万円のマイナスとなりました。
財務活動による資金収支
長期借入れによる収入100億円などにより、当連結会計年度における財務活動による資金収支は、94億78百万円のプラスとなりました。
② 資金需要
当社グループの資金需要のうち主なものは、当社が受注した国内外のプラント建設に関わる費用、販売費及び一般管理費のほか、今後の成長戦略を支えるための投資です。販売費及び一般管理費のうち主なものは、従業員給与手当等の人件費のほか、業務委託費等です。当社の研究開発費は、研究開発に携わる従業員の人件費が過半を占めています。
③ 財務政策
当社グループは、運転資金及び投資向け資金等の必要資金については、内部資金又は借入により資金調達することとしています。このうち借入に関して、当社は三菱商事㈱の完全子会社である三菱商事フィナンシャルサービス㈱と締結した総額800億円の融資枠を有しています。
上記融資枠800億円を活用し、2021年5月にアップデートされた中期経営計画「再生計画〜再生と未来に向けたビジョン〜」を確実に遂行するとともに、事業環境の変化を捉えた事業ポートフォリオと収益構造の変革を加速させ、当社グループを安定的に運営する資金を創出していきます。
(4) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されています。一般に公正妥当と認められる連結財務諸表の作成にあたっては、期末日における資産及び負債の報告額や、報告対象期間中の収益及び費用の報告額に影響する判断及び見積りを行うことが要求されます。当社グループの連結財務諸表作成にあたっては、過去実績や状況に応じて合理的と考えられる様々な要因に基づいて判断及び見積りを行っていますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合もあります。
当社グループの見積りや判断を含む重要な会計方針は、連結財務諸表注記の 4 会計方針に関する事項 に記載していますが、特に以下の重要な会計方針の適用において使用される当社の判断と見積りについては、当社グループの連結財務諸表の報告額に重要な影響を及ぼす可能性があると考えています。
(収益の認識)
当社及び国内連結子会社は、「工事契約に関する会計基準」(企業会計基準第15号 2007年12月27日)に従い、当連結会計年度末までの進捗部分について成果の確実性が認められる工事については工事進行基準を適用、その他の工事については工事完成基準を適用しています。工事進行基準適用工事については、原価比例法を採用し、連結会計年度末における工事進捗度を合理的に見積り、工事進捗度に工事収益総額を乗じて完成工事高を算定しています。
在外連結子会社は、IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」またはASC第606号「顧客との契約から生じる収益」に従い、顧客との契約の識別、契約における履行義務の識別、取引価格の算定、取引価格の履行義務への配分を適切に評価した上で、識別した履行義務の充足に伴い工事収益を認識しています。
また、上記「工事契約に関する会計基準」においては工事進捗度計算の基礎となる工事原価総額及び、IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」並びにASC第606号「顧客との契約から生じる収益」においては識別する履行義務を完全に充足するための工事原価総額には、履行義務に対応する将来生じる工事原価の見積額や新型コロナウイルス感染症の影響額を含む想定リスクに対する見積額などの重要な見積要素が含まれており、機器資材費の高騰や工事従事者・機器資材の確保が困難になるなど、予測不能な前提条件の変化などが生じた場合には、工事原価総額等の見積額の変更に伴い工事進捗度や履行義務の充足に係る進捗度が変動し、翌連結会計年度において、当社グループの連結財務諸表の報告額に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(工事損失引当金)
当社グループでは、当連結会計年度末において損失の発生が見込まれる未引渡工事に係る損失に備えるため、合理的に見積もった損失見込額を工事損失引当金として計上しています。当該損失を構成する要素として、履行義務に対応して将来生じる工事原価の見積額や新型コロナウイルス感染症の影響額を含む想定リスクに対する見積額などが含まれており、予測不能な前提条件の変化などが生じた場合には、翌連結会計年度において、追加の工事損失引当金を計上する可能性があります。