有価証券報告書-第91期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2019年6月28日)現在において判断したものです。
<経営成績等の状況の概要及び経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容>当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概況は次のとおりです。
(1)財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度において、米国にて遂行中のキャメロンLNGプロジェクトでは、第1系列の建設工事最終盤に
なって手戻り工事と仕上げ工事が多数発生し想定外のコスト増を招きました。加えて、米国の現場作業員の離職率が想定を超えて高止まりしていることに起因して生産性に改善がみられていません。このような状況を鑑み、これまでのリスク管理に加え、外部専門家を幹部として登用した新組織による査定を踏まえてリスクの認識レベルをさらに高め、第2、第3系列でも工事最終盤に同様のコストがかかるものと想定の上、完成までに必要なコストを当社独自に厳しく再査定し、そのコストを計上しました。インドネシアにて遂行中のタングーLNGプロジェクトでは、様々な複合要因によってプロジェクトの進捗が大きな影響を受けていますが、影響を最小限に留めるために必要なコストを再度精査の上、計上しました。また、訴訟・仲裁等についてのリスクの見直し、及びその他遂行中の国内外の中小プロジェクトに内在するリスクも見直した結果、新たな追加コストの計上に至りました。
こうした状況の中、当社グループは、コア事業であるLNG分野で世界各地の大型プロジェクト建設工事を引き続き遂行しています。オーストラリアではイクシスLNGプラントが第2系列、ロシアではヤマルLNGプラントが第3系列まで、それぞれすべて運転を開始しました。一方、米国では第4四半期に新設LNGプラント案件を受注しました。また、カタールでは拡張案件のFEED(基本設計)業務を予定通り完了し、ナイジェリアではFEED及びEPC(設計・調達・建設)見積り業務を遂行中です。また、中期経営計画「未来エンジニアリングへの挑戦」で掲げた構造改革と成長戦略を、2018年11月に一部見直した上で更に推し進め、再生可能エネルギー分野やライフサイエンス分野等の事業拡大のほか、Big Data・AI(人工知能)技術の活用といった将来の新ビジネスモデル構築に向けた取り組みも継続しました。
当連結会計年度における業績は、次のとおりです。
(受注工事高)
受注工事高は、前連結会計年度比 156.1%増の 7,715億59百万円となりました。なお、当連結会計年度末受注残高は 1兆163億56百万円となりました。受注工事高の概要は、「主たる事業セグメントであるエンジニアリング事業の概況」に記載のとおりです。
(完成工事高)
完成工事高は、前連結会計年度比 33.1%減の 3,419億52百万円となりました。完成工事高の概要は、「主たる事業セグメントであるエンジニアリング事業の概況」に記載のとおりです。
(完成工事総利益)
完成工事総利益は、米国及びインドネシアにて遂行中のLNG案件において建設工事費用を改めて精査し、大幅なコスト増加を見込んだため、前連結会計年度の完成工事総利益 86億18百万円に対し、 完成工事総損失 1,811億48百万円となりました。また、完成工事総利益率は前連結会計年度の1.7%から54.7ポイント減少し △53.0%となりました。
(販売費及び一般管理費)
販売費及び一般管理費は、構造改革の推進により、前連結会計年度に比べ 23億1百万円減少し 186億47百万円となりました。また、販売費及び一般管理費比率は前連結会計年度の4.1%から1.4ポイント増加し5.5%となりました。
(営業損益)
営業損益は、完成工事総利益と同様の理由により、前連結会計年度に比べ 1,874億64百万円減少し 1,997億95百万円の営業損失となりました。
(営業外収益・営業外費用)
営業外収益及び営業外費用は、前連結会計年度の 22億30百万円の収益超過に対し、67億96百万円の収益超過となりました。
為替差損益については、前連結会計年度では 6億67百万円の為替差損を計上したのに対し、当連結会計年度は 36億38百万円の為替差益を計上しました。
また、受取利息・受取配当金から支払利息を差し引いた金融収支は、当連結会計年度は 30億64百万円の入金超過となり、前連結会計年度に比べ 6億91百万円増加しました。持分法による投資損益は、前連結会計年度の 6億80百万円の投資利益に対し、当連結会計年度は 1億94百万円の投資利益となりました。
(経常損失)
経常損失は、営業外損益が収益超過となった一方で、完成工事総利益と同様の理由により、前連結会計年度に比べ損失が 1,828億98百万円増加し 1,929億98百万円となりました。
(特別利益・特別損失)
特別利益及び特別損失は、前連結会計年度が 149億67百万円の収益超過であったのに対し、当連結会計年度は関係会社事業構造改善引当金の計上等により、11億82百万円の損失超過となりました。
(法人税、住民税及び事業税・法人税等調整額)
税金等調整前当期純利益は、前連結会計年度に比べ 1,990億48百万円減少し 1,941億81百万円の損失となりました。
法人税、住民税及び事業税は、繰延税金資産の回収可能性を再評価した結果、取り崩しを実施したこと等を主因として、税金費用負担額(純額)は 216億70百万円となり、前連結会計年度に比べ 234億5百万円の増加となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ 2,213億94百万円減少し 2,149億48百万円の親会社株主に帰属する当期純損失となりました。
主たる事業セグメントであるエンジニアリング事業の概況は、次のとおりです。
[エネルギー分野]
(LNG・その他ガス関係)
海外では、オーストラリア、米国、ロシア、インドネシアでLNGプラントのEPC業務を遂行中です。オーストラリアではイクシスLNGプラントが第1、第2の両系列での生産を開始し、ロシアではヤマルLNGプラントの第3系列が契約納期よりも1年以上早く完成し、3系列の生産能力が1,650万トンに達するなど、大型案件は着実に進捗しています。米国では新設LNGプラント案件を受注しました。また、カタールでは年産780万トンのLNGプラントを4系列増設する計画のFEED業務を予定通りに完了し、ナイジェリアではFEED及びEPC見積り業務をそれぞれ順調に遂行しています。その他ガス分野では、カタールの当社グループ会社がヘリウム生産設備のEPC業務に加え、当社が建設したLNG・ガス処理プラントの改造・改修案件のEPCm(設計・調達・建設管理)に係る複数の業務を遂行中です。
国内では、当社が建設したLNG受入基地の改造・改修や、耐震補強等の国土強靭化基本法対応案件のEPC業務を遂行しています。
当連結会計年度の受注工事高は 4,214億19百万円(前連結会計年度比 234.6%増)となり、完成工事高は 1,915億53百万円(同 48.6%減)となりました。
(石油・石油化学・金属分野)
海外では、米国メキシコ湾岸における大型エチレンコンプレックス建設計画の心臓部となるエチレン生産プラントのEPC業務を遂行中です。また、マレーシアで残油流動接触分解装置のEPCC(設計・調達・建設・試運転)業務を順調に進めています。さらに、東南アジアの当社グループ会社が、マレーシアで石油化学製品用タンクターミナル施設のEPC業務や、アジア地域の石油・化学等ダウンストリーム案件に関わるプロジェクトマネジ
メント業務を遂行中です。
国内では、石油会社向けに、2020年の船舶燃料硫黄分規制への対応を目的とした既設設備改造工事のEPC業務や、設備の最適化を目的とした製油所高度化案件、耐震補強等の国土強靭化基本法対応工事、既設設備改造工事などを遂行しています。また、化学会社向けに高機能材製造設備のEPC業務を完工し、更に別の高機能材製造設備や水素化石油樹脂生産設備などのEPC業務を継続して遂行中です。
当連結会計年度の受注工事高は 2,270億83百万円(同 331.5%増)となり、完成工事高は 601億91百万円(同 14.1%増)となりました。
[地球環境分野]
(医薬・生化学・一般化学関係)
国内の医薬・生化学分野においては、高薬理活性物質に対応した最先端の注射剤製造設備や医薬品製造用の分離精製剤の製造設備を完工したほか、中分子医薬品原薬製造設備、医薬品合成原薬製造設備などのEPC業務を遂行しています。
当連結会計年度の受注工事高は 219億61百万円(同 37.4%減)となり、完成工事高は 288億36百万円(同 14.4%減)となりました。
(環境・新エネルギー・インフラ関係)
海外では、交通インフラ分野として、フィリピン新ボホール空港及びモンゴル新国際空港が完工しました。環境分野では、インドでの環境規制強化により石炭火力発電所への排煙脱硫設備の導入が進む中、当社のCT-121排煙脱硫プロセスが4件採用されました。また、昨年度にアラブ首長国連邦ドバイで完工した完全人工光型植物工場の実証設備案件の実績、及び植物工場業界における大手生産・運営事業者であるMIRAI㈱と業務提携に至ったことで更なる体制強化を図り、国内・中東・ロシア等を中心として商業設備の導入推進に努めています。
国内では、世界最大級の蓄電池システム建設工事や、石炭火力発電所向けの排煙脱硫設備、CO2分離回収実証設備、太陽光発電設備(メガソーラー)などのEPC業務を遂行中のほか、最新の食品安全衛生基準に適合した食品工場、食品分野の研究所建設工事を完工しました。新エネルギー関連では、日本初のバイオジェット・ディーゼル燃料製造実証設備が完成し、また木質ペレットを燃料とする国内最大級のバイオマス発電所建設に係るEPC業務を遂行中です。そのほか、三菱商事㈱、三井物産㈱、日本郵船㈱とともに設立した「次世代水素エネル
ギーチェーン技術研究組合」による水素サプライチェーンの事業化に向けた実証プロジェクトも順調に進んでいます。
当連結会計年度の受注工事高は 900億45百万円(同 29.1%増)となり、完成工事高は 483億54百万円(同 33.9%増)となりました。
[デジタル技術革新分野]
デジタルイノベーション関連では、国内有数のAIベンチャー企業である㈱グリッドとの業務提携に基づき、AI技術を活用したプラント生産性向上に向けた活動を継続しています。その一環として、アラブ首長国連邦のアブダビ・ガス液化公社(Abu Dhabi Gas Liquefaction Company Limited)と、同社が保有するLNGプ
ラントに対し、「先進的デジタル技術」を提供する内容の覚書を締結し、各種スタディを遂行しています。また、インドネシアのドンギ・スノロLNG社(PT. Donggi-Senoro LNG)の稼動中LNGプラント向けに、生産効率の改善とLNG増産支援を目的としたAI技術の開発を進めています。一方、社内的には、デジタル技術の一層の活用を目指した活動「Target20」を推進しています。設計、調達、建設、コーポレートのそれぞれの分野でのデジタル化による業務改善の目標を設定するとともに、常時新しい提案を募り、競争力強化に向けて全社で取り組んでいます。
経営成績に重要な影響を及ぼす可能性のある主な事項、及び、それらに対する対応については、2.事業等のリスクに記載しています。
現在は 1兆163億円程度の受注残高を抱えており、オーストラリア、米国、インドネシアで遂行中のLNGプロジェクトのほか、手持ち工事を着実に遂行していきます。また、2019年5月に発表した「再生計画~再生と未来に向けたビジョン~」でも言及している、「エネルギー」と「地球環境」の2事業領域の拡大、及びデジタル革新技術を活用し、EPC遂行改革と事業・サービス分野への多角化を目指すべく、引き続き注力していきます。
(2) 生産、受注及び販売の実績
① 受注実績
なお、国内及び海外の受注高並びに受注残高の内訳は、次のとおりです。
(注) 受注残高の( )内の数字は、前連結会計年度以前に受注した工事の契約変更等による減額及び外貨建契約に関する為替換算修正に伴う増減額の合計を加味しています。
② 売上実績
なお、国内及び海外の売上実績の内訳は、次のとおりです。
(注) 1 当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため「生産の実績」は記載していません。
2 主な相手先別の売上実績及び総売上高に対する割合は次のとおりです。
3 本表の金額には消費税等は含まれていません。
(3) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
① キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度の現金及び現金同等物の期末残高は 683億6百万円となり、前連結会計年度末残高より 334億61百万円減少しました。
営業活動による資金収支
税金等調整前当期純損失 1,941億81百万円に加え、未収入金の増加 230億97百万円などによるマイナス、及び工事損失引当金の増加 644億9百万円、運転資金収支(売上債権、未成工事支出金、仕入債務、未成工事受入金の増減額合計) 904億49百万円、ジョイントベンチャー持分資産の減少 200億55百万円によるプラスなどにより、379億41百万円のマイナスとなりました。
投資活動による資金収支
投資有価証券の売却及び償還による収入 17億91百万円に加え、定期預金が 11億50百万円純増し、無形固定資産の取得により 16億11百万円を支出したことなどにより、7億78百万円のプラスとなりました。
財務活動による資金収支
長期借入れによる収入 62億20百万円及び配当金の支払 19億39百万円などにより、40億20百万円のプラスとなりました。
② 資金需要
当社グループの資金需要のうち主なものは、当社が受注した国内外のプラント建設に関わる費用、販売費及び一般管理費のほか、今後の成長戦略を支えるための投資です。販売費及び一般管理費のうち主なものは、従業員給与手当等の人件費のほか、業務委託費等です。当社の研究開発費は、研究開発に携わる従業員の人件費が過半を占めています。
③ 財務政策
当社は、2019年5月9日開催の取締役会において、事業継続に必要な財務基盤の強化として三菱商事株式会社及び株式会社三菱UFJ銀行から合計 1,800億円の資金調達を実施することを決議し、両社と合意に至りました。
本調達資金は、既存及び今後受注予定のプロジェクトの運転資金、抜本的なコスト削減のための構造改革の実施、建設力の強化とITマネジメントのための設備投資に充当していきます。
上記資金調達により財務体質を回復・安定させると共に、2019年5月発表の「再生計画~再生と未来に向けたビジョン」の確実な遂行により、当社グループを安定的に運営する資金を創出していきます。
(4) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されています。一般に公正妥当と認められる連結財務諸表の作成にあたっては、期末日における資産及び負債の報告額や、報告対象期間中の収益及び費用の報告額に影響する判断及び見積りを行うことが要求されます。当社グループの連結財務諸表作成にあたっては、過去実績や状況に応じて合理的と考えられる様々な要因に基づいて判断及び見積りを行っていますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合もあります。
当社は、特に以下の重要な会計方針の適用において使用される当社の判断と見積りが、当社グループの連結財務諸表の報告額に重要な影響を及ぼすと考えています。
(貸倒引当金)
当社グループでは、債権の貸倒れによる損失に備えるため、貸倒懸念債権等特定の債権については、保守的に見積もった回収不能見込額を貸倒引当金として計上しています。
(完成工事補償引当金)
当社グループでは、主として、過去の経験割合に基づく一定の算定基準により、完成工事に係わる瑕疵担保等の費用を見積もり、完成工事補償引当金を計上しています。
(工事損失引当金)
当社グループでは、当連結会計年度末において損失の発生が見込まれる未引渡工事に係る将来の損失に備えるため、合理的に見積もった損失見込額を工事損失引当金として計上しています。
(退職給付に係る負債)
当社グループでは、従業員の退職給付に備えるため、見積りを反映した各種の仮定に基づく数理計算により算出された退職給付債務及び年金資産の見込額に基づき、退職給付に係る負債の計上を行っています。
(収益の認識)
当社グループでは、当連結会計年度末までの進捗部分について成果の確実性が認められる工事については、工事進行基準(工事進捗率の見積りは原価比例法)により完成工事高を計上しています。
(工事原価の見積り)
当社グループでは、工事契約において定められている目的物の引渡しを行った連結会計年度末において確定していない費用については、次期以降に発生する費用を見積もり、工事原価として計上しています。
(繰延税金資産)
当社グループでは、繰延税金資産の回収可能性を評価するにあたり、将来の課税所得を合理的に見積もり、将来の税金負担を軽減する効果を有すると判断した繰延税金資産を計上しています。
(事業構造改善引当金)
当社グループでは、関係会社の事業の損失に備えるため、当該関係会社の財政状態等を勘案し、当事業年度末における損失負担見込額を計上しています。
(5) 重要事象等について
当社グループは、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク (k)継続企業の前提に関する重要事象等」に記載のとおり、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在していました。
かかる事態を受け、当該事象又は状況を解消すべく、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 (重要な後発事象)」に記載のとおり、第三者割当増資及び新たな借り入れによる資金調達の合意へと至りました。当該資金調達の実行により、債務超過が解消されると共に、資金不足となるリスクも回避される見通しです。
以上により、提出日現在においては継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないと判断しています。
文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2019年6月28日)現在において判断したものです。
<経営成績等の状況の概要及び経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容>当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概況は次のとおりです。
(1)財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度において、米国にて遂行中のキャメロンLNGプロジェクトでは、第1系列の建設工事最終盤に
なって手戻り工事と仕上げ工事が多数発生し想定外のコスト増を招きました。加えて、米国の現場作業員の離職率が想定を超えて高止まりしていることに起因して生産性に改善がみられていません。このような状況を鑑み、これまでのリスク管理に加え、外部専門家を幹部として登用した新組織による査定を踏まえてリスクの認識レベルをさらに高め、第2、第3系列でも工事最終盤に同様のコストがかかるものと想定の上、完成までに必要なコストを当社独自に厳しく再査定し、そのコストを計上しました。インドネシアにて遂行中のタングーLNGプロジェクトでは、様々な複合要因によってプロジェクトの進捗が大きな影響を受けていますが、影響を最小限に留めるために必要なコストを再度精査の上、計上しました。また、訴訟・仲裁等についてのリスクの見直し、及びその他遂行中の国内外の中小プロジェクトに内在するリスクも見直した結果、新たな追加コストの計上に至りました。
こうした状況の中、当社グループは、コア事業であるLNG分野で世界各地の大型プロジェクト建設工事を引き続き遂行しています。オーストラリアではイクシスLNGプラントが第2系列、ロシアではヤマルLNGプラントが第3系列まで、それぞれすべて運転を開始しました。一方、米国では第4四半期に新設LNGプラント案件を受注しました。また、カタールでは拡張案件のFEED(基本設計)業務を予定通り完了し、ナイジェリアではFEED及びEPC(設計・調達・建設)見積り業務を遂行中です。また、中期経営計画「未来エンジニアリングへの挑戦」で掲げた構造改革と成長戦略を、2018年11月に一部見直した上で更に推し進め、再生可能エネルギー分野やライフサイエンス分野等の事業拡大のほか、Big Data・AI(人工知能)技術の活用といった将来の新ビジネスモデル構築に向けた取り組みも継続しました。
当連結会計年度における業績は、次のとおりです。
(受注工事高)
受注工事高は、前連結会計年度比 156.1%増の 7,715億59百万円となりました。なお、当連結会計年度末受注残高は 1兆163億56百万円となりました。受注工事高の概要は、「主たる事業セグメントであるエンジニアリング事業の概況」に記載のとおりです。
(完成工事高)
完成工事高は、前連結会計年度比 33.1%減の 3,419億52百万円となりました。完成工事高の概要は、「主たる事業セグメントであるエンジニアリング事業の概況」に記載のとおりです。
(完成工事総利益)
完成工事総利益は、米国及びインドネシアにて遂行中のLNG案件において建設工事費用を改めて精査し、大幅なコスト増加を見込んだため、前連結会計年度の完成工事総利益 86億18百万円に対し、 完成工事総損失 1,811億48百万円となりました。また、完成工事総利益率は前連結会計年度の1.7%から54.7ポイント減少し △53.0%となりました。
(販売費及び一般管理費)
販売費及び一般管理費は、構造改革の推進により、前連結会計年度に比べ 23億1百万円減少し 186億47百万円となりました。また、販売費及び一般管理費比率は前連結会計年度の4.1%から1.4ポイント増加し5.5%となりました。
(営業損益)
営業損益は、完成工事総利益と同様の理由により、前連結会計年度に比べ 1,874億64百万円減少し 1,997億95百万円の営業損失となりました。
(営業外収益・営業外費用)
営業外収益及び営業外費用は、前連結会計年度の 22億30百万円の収益超過に対し、67億96百万円の収益超過となりました。
為替差損益については、前連結会計年度では 6億67百万円の為替差損を計上したのに対し、当連結会計年度は 36億38百万円の為替差益を計上しました。
また、受取利息・受取配当金から支払利息を差し引いた金融収支は、当連結会計年度は 30億64百万円の入金超過となり、前連結会計年度に比べ 6億91百万円増加しました。持分法による投資損益は、前連結会計年度の 6億80百万円の投資利益に対し、当連結会計年度は 1億94百万円の投資利益となりました。
(経常損失)
経常損失は、営業外損益が収益超過となった一方で、完成工事総利益と同様の理由により、前連結会計年度に比べ損失が 1,828億98百万円増加し 1,929億98百万円となりました。
(特別利益・特別損失)
特別利益及び特別損失は、前連結会計年度が 149億67百万円の収益超過であったのに対し、当連結会計年度は関係会社事業構造改善引当金の計上等により、11億82百万円の損失超過となりました。
(法人税、住民税及び事業税・法人税等調整額)
税金等調整前当期純利益は、前連結会計年度に比べ 1,990億48百万円減少し 1,941億81百万円の損失となりました。
法人税、住民税及び事業税は、繰延税金資産の回収可能性を再評価した結果、取り崩しを実施したこと等を主因として、税金費用負担額(純額)は 216億70百万円となり、前連結会計年度に比べ 234億5百万円の増加となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ 2,213億94百万円減少し 2,149億48百万円の親会社株主に帰属する当期純損失となりました。
主たる事業セグメントであるエンジニアリング事業の概況は、次のとおりです。
[エネルギー分野]
(LNG・その他ガス関係)
海外では、オーストラリア、米国、ロシア、インドネシアでLNGプラントのEPC業務を遂行中です。オーストラリアではイクシスLNGプラントが第1、第2の両系列での生産を開始し、ロシアではヤマルLNGプラントの第3系列が契約納期よりも1年以上早く完成し、3系列の生産能力が1,650万トンに達するなど、大型案件は着実に進捗しています。米国では新設LNGプラント案件を受注しました。また、カタールでは年産780万トンのLNGプラントを4系列増設する計画のFEED業務を予定通りに完了し、ナイジェリアではFEED及びEPC見積り業務をそれぞれ順調に遂行しています。その他ガス分野では、カタールの当社グループ会社がヘリウム生産設備のEPC業務に加え、当社が建設したLNG・ガス処理プラントの改造・改修案件のEPCm(設計・調達・建設管理)に係る複数の業務を遂行中です。
国内では、当社が建設したLNG受入基地の改造・改修や、耐震補強等の国土強靭化基本法対応案件のEPC業務を遂行しています。
当連結会計年度の受注工事高は 4,214億19百万円(前連結会計年度比 234.6%増)となり、完成工事高は 1,915億53百万円(同 48.6%減)となりました。
(石油・石油化学・金属分野)
海外では、米国メキシコ湾岸における大型エチレンコンプレックス建設計画の心臓部となるエチレン生産プラントのEPC業務を遂行中です。また、マレーシアで残油流動接触分解装置のEPCC(設計・調達・建設・試運転)業務を順調に進めています。さらに、東南アジアの当社グループ会社が、マレーシアで石油化学製品用タンクターミナル施設のEPC業務や、アジア地域の石油・化学等ダウンストリーム案件に関わるプロジェクトマネジ
メント業務を遂行中です。
国内では、石油会社向けに、2020年の船舶燃料硫黄分規制への対応を目的とした既設設備改造工事のEPC業務や、設備の最適化を目的とした製油所高度化案件、耐震補強等の国土強靭化基本法対応工事、既設設備改造工事などを遂行しています。また、化学会社向けに高機能材製造設備のEPC業務を完工し、更に別の高機能材製造設備や水素化石油樹脂生産設備などのEPC業務を継続して遂行中です。
当連結会計年度の受注工事高は 2,270億83百万円(同 331.5%増)となり、完成工事高は 601億91百万円(同 14.1%増)となりました。
[地球環境分野]
(医薬・生化学・一般化学関係)
国内の医薬・生化学分野においては、高薬理活性物質に対応した最先端の注射剤製造設備や医薬品製造用の分離精製剤の製造設備を完工したほか、中分子医薬品原薬製造設備、医薬品合成原薬製造設備などのEPC業務を遂行しています。
当連結会計年度の受注工事高は 219億61百万円(同 37.4%減)となり、完成工事高は 288億36百万円(同 14.4%減)となりました。
(環境・新エネルギー・インフラ関係)
海外では、交通インフラ分野として、フィリピン新ボホール空港及びモンゴル新国際空港が完工しました。環境分野では、インドでの環境規制強化により石炭火力発電所への排煙脱硫設備の導入が進む中、当社のCT-121排煙脱硫プロセスが4件採用されました。また、昨年度にアラブ首長国連邦ドバイで完工した完全人工光型植物工場の実証設備案件の実績、及び植物工場業界における大手生産・運営事業者であるMIRAI㈱と業務提携に至ったことで更なる体制強化を図り、国内・中東・ロシア等を中心として商業設備の導入推進に努めています。
国内では、世界最大級の蓄電池システム建設工事や、石炭火力発電所向けの排煙脱硫設備、CO2分離回収実証設備、太陽光発電設備(メガソーラー)などのEPC業務を遂行中のほか、最新の食品安全衛生基準に適合した食品工場、食品分野の研究所建設工事を完工しました。新エネルギー関連では、日本初のバイオジェット・ディーゼル燃料製造実証設備が完成し、また木質ペレットを燃料とする国内最大級のバイオマス発電所建設に係るEPC業務を遂行中です。そのほか、三菱商事㈱、三井物産㈱、日本郵船㈱とともに設立した「次世代水素エネル
ギーチェーン技術研究組合」による水素サプライチェーンの事業化に向けた実証プロジェクトも順調に進んでいます。
当連結会計年度の受注工事高は 900億45百万円(同 29.1%増)となり、完成工事高は 483億54百万円(同 33.9%増)となりました。
[デジタル技術革新分野]
デジタルイノベーション関連では、国内有数のAIベンチャー企業である㈱グリッドとの業務提携に基づき、AI技術を活用したプラント生産性向上に向けた活動を継続しています。その一環として、アラブ首長国連邦のアブダビ・ガス液化公社(Abu Dhabi Gas Liquefaction Company Limited)と、同社が保有するLNGプ
ラントに対し、「先進的デジタル技術」を提供する内容の覚書を締結し、各種スタディを遂行しています。また、インドネシアのドンギ・スノロLNG社(PT. Donggi-Senoro LNG)の稼動中LNGプラント向けに、生産効率の改善とLNG増産支援を目的としたAI技術の開発を進めています。一方、社内的には、デジタル技術の一層の活用を目指した活動「Target20」を推進しています。設計、調達、建設、コーポレートのそれぞれの分野でのデジタル化による業務改善の目標を設定するとともに、常時新しい提案を募り、競争力強化に向けて全社で取り組んでいます。
経営成績に重要な影響を及ぼす可能性のある主な事項、及び、それらに対する対応については、2.事業等のリスクに記載しています。
現在は 1兆163億円程度の受注残高を抱えており、オーストラリア、米国、インドネシアで遂行中のLNGプロジェクトのほか、手持ち工事を着実に遂行していきます。また、2019年5月に発表した「再生計画~再生と未来に向けたビジョン~」でも言及している、「エネルギー」と「地球環境」の2事業領域の拡大、及びデジタル革新技術を活用し、EPC遂行改革と事業・サービス分野への多角化を目指すべく、引き続き注力していきます。
(2) 生産、受注及び販売の実績
① 受注実績
事業部門の名称 | 前連結会計年度 (自 2017年4月1日 至 2018年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | |||||||
受注高 | 受注残高 | 受注高 | 受注残高 | ||||||
金額 (百万円) | 構成比 (%) | 金額 (百万円) | 構成比 (%) | 金額 (百万円) ⦅前年同期比⦆ | 構成比 (%) | 金額 (百万円) | 構成比 (%) | ||
1 エンジニアリング事業 | 297,914 | 98.9 | 653,516 | 100.0 | 768,199 | 99.6 | 1,016,356 | 100.0 | |
(△13,643) | ⦅157.9%増⦆ | (△66,765) | |||||||
エネルギー 分野 | (1) LNGプラント関係 | 123,283 | 40.9 | 352,164 | 53.9 | 409,075 | 53.0 | 544,082 | 53.5 |
(△14,834) | ⦅231.8%増⦆ | (△28,311) | |||||||
(2) その他ガス関係 | 2,666 | 0.9 | 4,406 | 0.7 | 12,344 | 1.6 | 13,405 | 1.3 | |
( 1,238) | ⦅363.0%増⦆ | ( △636) | |||||||
(3) 石油・石油化学 ・金属関係 | 52,623 | 17.5 | 155,031 | 23.7 | 227,083 | 29.4 | 311,087 | 30.6 | |
( 1,601) | ⦅331.5%増⦆ | (△10,836) | |||||||
地球環境 分野 | (4) 医薬・生化学 ・一般化学関係 | 35,075 | 11.6 | 36,117 | 5.5 | 21,961 | 2.9 | 24,012 | 2.4 |
( △599) | ⦅ 37.4%減⦆ | ( △5,230) | |||||||
(5) 環境・新エネルギー ・インフラ関係 | 69,773 | 23.2 | 96,510 | 14.8 | 90,045 | 11.7 | 116,734 | 11.5 | |
( △548) | ⦅ 29.1%増⦆ | (△21,466) | |||||||
(6) その他 | 14,491 | 4.8 | 9,286 | 1.4 | 7,689 | 1.0 | 7,034 | 0.7 | |
( △500) | ⦅ 46.9%減⦆ | ( △284) | |||||||
2 その他の事業 | 3,300 | 1.1 | - | - | 3,360 | 0.4 | - | - | |
( -) | ⦅ 1.8%増⦆ | ( -) | |||||||
総 合 計 | 301,214 | 100.0 | 653,516 | 100.0 | 771,559 | 100.0 | 1,016,356 | 100.0 | |
(△13,643) | ⦅156.1%増⦆ | (△66,765) |
なお、国内及び海外の受注高並びに受注残高の内訳は、次のとおりです。
国内外内訳 | 前連結会計年度 (自 2017年4月1日 至 2018年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | ||||||
受注高 | 受注残高 | 受注高 | 受注残高 | |||||
金額 (百万円) | 構成比 (%) | 金額 (百万円) | 構成比 (%) | 金額 (百万円) ⦅前年同期比⦆ | 構成比 (%) | 金額 (百万円) | 構成比 (%) | |
国 内 | 151,733 | 50.4 | 163,210 | 25.0 | 196,535 | 25.5 | 217,526 | 21.4 |
( △775) | ⦅ 29.5%増⦆ | (△21,818) | ||||||
海 外 | 149,480 | 49.6 | 490,306 | 75.0 | 575,023 | 74.5 | 798,830 | 78.6 |
(△12,867) | ⦅284.7%増⦆ | (△44,947) | ||||||
合 計 | 301,214 | 100.0 | 653,516 | 100.0 | 771,559 | 100.0 | 1,016,356 | 100.0 |
(△13,643) | ⦅156.1%増⦆ | (△66,765) |
(注) 受注残高の( )内の数字は、前連結会計年度以前に受注した工事の契約変更等による減額及び外貨建契約に関する為替換算修正に伴う増減額の合計を加味しています。
② 売上実績
事業部門の名称 | 前連結会計年度 (自 2017年4月1日 至 2018年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | |||
金額(百万円) | 構成比(%) | 金額(百万円) ⦅前年同期比⦆ | 構成比(%) | ||
1 エンジニアリング事業 | 507,573 | 99.4 | 338,592 | 99.0 | |
⦅33.3%減⦆ | |||||
エネルギー 分野 | (1) LNGプラント関係 | 361,559 | 70.8 | 188,844 | 55.2 |
⦅47.8%減⦆ | |||||
(2) その他ガス関係 | 11,238 | 2.2 | 2,708 | 0.8 | |
⦅75.9%減⦆ | |||||
(3) 石油・石油化学 ・金属関係 | 52,741 | 10.3 | 60,191 | 17.6 | |
⦅14.1%増⦆ | |||||
地球環境 分野 | (4) 医薬・生化学 ・一般化学関係 | 33,671 | 6.6 | 28,836 | 8.4 |
⦅14.4%減⦆ | |||||
(5) 環境・新エネルギー ・インフラ関係 | 36,117 | 7.1 | 48,354 | 14.2 | |
⦅33.9%増⦆ | |||||
(6) その他 | 12,245 | 2.4 | 9,656 | 2.8 | |
⦅21.1%減⦆ | |||||
2 その他の事業 | 3,300 | 0.6 | 3,360 | 1.0 | |
⦅ 1.8%増⦆ | |||||
総 合 計 | 510,873 | 100.0 | 341,952 | 100.0 | |
⦅33.1%減⦆ |
なお、国内及び海外の売上実績の内訳は、次のとおりです。
国内外内訳 | 前連結会計年度 (自 2017年4月1日 至 2018年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | ||
金額(百万円) | 構成比(%) | 金額(百万円) ⦅前年同期比⦆ | 構成比(%) | |
国 内 | 109,795 | 21.5 | 120,400 | 35.2 |
⦅ 9.7%増⦆ | ||||
海 外 | 401,078 | 78.5 | 221,552 | 64.8 |
⦅44.8%減⦆ | ||||
合 計 | 510,873 | 100.0 | 341,952 | 100.0 |
⦅33.1%減⦆ |
(注) 1 当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため「生産の実績」は記載していません。
2 主な相手先別の売上実績及び総売上高に対する割合は次のとおりです。
前連結会計年度 | 当連結会計年度 | ||||
相手先 | 金額 (百万円) | 割合 (%) | 相手先 | 金額 (百万円) | 割合 (%) |
イクシス・エルエヌジー・ピーティーワイ・リミテッド | 106,371 | 20.8 | オージェイエスシー・ヤマル・エルエヌジー | 116,918 | 34.2 |
オージェイエスシー・ヤマル・エルエヌジー | 100,946 | 19.8 | |||
キャメロン・エルエヌジー・エルエルシー | 87,059 | 17.0 |
3 本表の金額には消費税等は含まれていません。
(3) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
① キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度の現金及び現金同等物の期末残高は 683億6百万円となり、前連結会計年度末残高より 334億61百万円減少しました。
営業活動による資金収支
税金等調整前当期純損失 1,941億81百万円に加え、未収入金の増加 230億97百万円などによるマイナス、及び工事損失引当金の増加 644億9百万円、運転資金収支(売上債権、未成工事支出金、仕入債務、未成工事受入金の増減額合計) 904億49百万円、ジョイントベンチャー持分資産の減少 200億55百万円によるプラスなどにより、379億41百万円のマイナスとなりました。
投資活動による資金収支
投資有価証券の売却及び償還による収入 17億91百万円に加え、定期預金が 11億50百万円純増し、無形固定資産の取得により 16億11百万円を支出したことなどにより、7億78百万円のプラスとなりました。
財務活動による資金収支
長期借入れによる収入 62億20百万円及び配当金の支払 19億39百万円などにより、40億20百万円のプラスとなりました。
② 資金需要
当社グループの資金需要のうち主なものは、当社が受注した国内外のプラント建設に関わる費用、販売費及び一般管理費のほか、今後の成長戦略を支えるための投資です。販売費及び一般管理費のうち主なものは、従業員給与手当等の人件費のほか、業務委託費等です。当社の研究開発費は、研究開発に携わる従業員の人件費が過半を占めています。
③ 財務政策
当社は、2019年5月9日開催の取締役会において、事業継続に必要な財務基盤の強化として三菱商事株式会社及び株式会社三菱UFJ銀行から合計 1,800億円の資金調達を実施することを決議し、両社と合意に至りました。
本調達資金は、既存及び今後受注予定のプロジェクトの運転資金、抜本的なコスト削減のための構造改革の実施、建設力の強化とITマネジメントのための設備投資に充当していきます。
上記資金調達により財務体質を回復・安定させると共に、2019年5月発表の「再生計画~再生と未来に向けたビジョン」の確実な遂行により、当社グループを安定的に運営する資金を創出していきます。
(4) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されています。一般に公正妥当と認められる連結財務諸表の作成にあたっては、期末日における資産及び負債の報告額や、報告対象期間中の収益及び費用の報告額に影響する判断及び見積りを行うことが要求されます。当社グループの連結財務諸表作成にあたっては、過去実績や状況に応じて合理的と考えられる様々な要因に基づいて判断及び見積りを行っていますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合もあります。
当社は、特に以下の重要な会計方針の適用において使用される当社の判断と見積りが、当社グループの連結財務諸表の報告額に重要な影響を及ぼすと考えています。
(貸倒引当金)
当社グループでは、債権の貸倒れによる損失に備えるため、貸倒懸念債権等特定の債権については、保守的に見積もった回収不能見込額を貸倒引当金として計上しています。
(完成工事補償引当金)
当社グループでは、主として、過去の経験割合に基づく一定の算定基準により、完成工事に係わる瑕疵担保等の費用を見積もり、完成工事補償引当金を計上しています。
(工事損失引当金)
当社グループでは、当連結会計年度末において損失の発生が見込まれる未引渡工事に係る将来の損失に備えるため、合理的に見積もった損失見込額を工事損失引当金として計上しています。
(退職給付に係る負債)
当社グループでは、従業員の退職給付に備えるため、見積りを反映した各種の仮定に基づく数理計算により算出された退職給付債務及び年金資産の見込額に基づき、退職給付に係る負債の計上を行っています。
(収益の認識)
当社グループでは、当連結会計年度末までの進捗部分について成果の確実性が認められる工事については、工事進行基準(工事進捗率の見積りは原価比例法)により完成工事高を計上しています。
(工事原価の見積り)
当社グループでは、工事契約において定められている目的物の引渡しを行った連結会計年度末において確定していない費用については、次期以降に発生する費用を見積もり、工事原価として計上しています。
(繰延税金資産)
当社グループでは、繰延税金資産の回収可能性を評価するにあたり、将来の課税所得を合理的に見積もり、将来の税金負担を軽減する効果を有すると判断した繰延税金資産を計上しています。
(事業構造改善引当金)
当社グループでは、関係会社の事業の損失に備えるため、当該関係会社の財政状態等を勘案し、当事業年度末における損失負担見込額を計上しています。
(5) 重要事象等について
当社グループは、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク (k)継続企業の前提に関する重要事象等」に記載のとおり、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在していました。
かかる事態を受け、当該事象又は状況を解消すべく、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 (重要な後発事象)」に記載のとおり、第三者割当増資及び新たな借り入れによる資金調達の合意へと至りました。当該資金調達の実行により、債務超過が解消されると共に、資金不足となるリスクも回避される見通しです。
以上により、提出日現在においては継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないと判断しています。