有価証券報告書-第92期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2020年6月25日)現在において判断したものです。
<経営成績等の状況の概要及び経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容>当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概況は次のとおりです。
(1)財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度において、産油国間の生産調整が合意に至らず原油価格が急落する中、新型コロナウイルス感染症の拡大とそれに伴う世界経済の停滞によりエネルギー需要の減少が見込まれ、長期的なエネルギー需給バランスに変化が生じる可能性が拡大してきました。当社を取り巻く事業環境は大きく変化しており、先が見通せない厳しい状況が予想されています。
こうした状況の中、当社グループは、コア事業であるLNG分野での世界各地の大型プラント建設をはじめ、エネルギー分野及び地球環境分野において手持ちプロジェクトを引き続き着実に遂行しています。
一方、2019年5月に発表した新中期経営計画「再生計画~再生と未来に向けたビジョン~」に即して、2019年7月に三菱商事㈱を割当先とする700億円の第三者割当増資を実行し財務基盤を強化するとともに、再生と成長に向けた岩盤作りとして、2019年7月に本格稼働させた「戦略・リスク統合本部」の下、プロジェクト受注前から完工迄の一貫したリスク管理体制を整備し、デジタル技術を活用してEPC遂行管理能力を強化しました。同時に、鳥瞰的に将来を見据えた事業ポートフォリオの見直しを行うべく、組織再編及び事業改革に向けた諸施策の実行を進めています。2019年7月に「デジタルトランスフォーメーション本部」を新設後、デジタル技術を活用した全社デジタル化による業務革新を進めています。これにより、働き方改革にも取り組んでいます。さらに、2019年10月には「フロンティアビジネス本部」を新設し、エンジニアリングの価値を再定義し、当社の事業ポートフォリオを変革していく取り組みを進めています。
当連結会計年度における業績は、次のとおりです。
(受注工事高)
受注工事高は、前連結会計年度比76.7%減の1,798億36百万円となりました。なお、当連結会計年度末受注残高は8,118億47百万円となりました。受注工事高の概要は、「主たる事業セグメントであるエンジニアリング事業の概況」に記載のとおりです。
(完成工事高)
完成工事高は、前連結会計年度比12.9%増の3,859億25百万円となりました。完成工事高の概要は、「主たる事業セグメントであるエンジニアリング事業の概況」に記載のとおりです。
(完成工事総利益)
完成工事総利益は、米国及びインドネシアにて遂行中のLNG案件において、契約条件改定等による損益改善が寄与し、前連結会計年度の完成工事総損失1,811億48百万円に対し、完成工事総利益428億23百万円となりました。また、完成工事総利益率は前連結会計年度の△53.0%から64.1ポイント増加し11.1%となりました。
(販売費及び一般管理費)
販売費及び一般管理費は、構造改革の推進により、前連結会計年度に比べ26億14百万円減少し160億33百万円となりました。また、販売費及び一般管理費比率は前連結会計年度の5.5%から1.3ポイント減少し4.2%となりました。
(営業利益)
営業利益は、完成工事総利益と同様の理由により、前連結会計年度に比べ2,265億85百万円増加し267億89百万円の営業利益となりました。
(営業外収益・営業外費用)
営業外収益及び営業外費用は、前連結会計年度の67億96百万円の収益超過に対し、81億44百万円の費用超過となりました。これは、前連結会計年度では36億38百万円の為替差益を計上したのに対し、当連結会計年度は101億92百万円の為替差損を計上したことが主因です。
また、受取利息・受取配当金から支払利息を差し引いた金融収支は、前連結会計年度の30億64百万円の入金超過に対して、9億41百万円減少21億23百万円の入金超過となっております。持分法による投資損益は、前連結会計年度の1億94百万円の投資利益に対し、当連結会計年度は3億61百万円の投資利益となりました。
(経常利益)
経常利益は、営業外費用が費用超過となったものの、完成工事総利益と同様の理由により、前連結会計年度に比べ2,116億43百万円増加し186億44百万円となりました。
(特別利益・特別損失)
特別利益においては、関係会社株式売却益63百万円の計上及び前連結会計年度に計上した当社グループの事業構造改革に伴う損失に対する引当金の進捗に伴う2億32百万円の取崩しが生じています。特別損失においては、投資有価証券評価損1億22百万円の計上及びのれんの減損損失67百万円を計上しています。
(法人税、住民税及び事業税・法人税等調整額)
税金等調整前当期純利益は、前連結会計年度に比べ2,132億31百万円増加し190億50百万円の利益となりました。
なお、法人税等において法人税、住民税及び事業税71億20百万円を計上した一方で将来加算一時差異の解消による繰延税金負債残高減少等により、△1億5百万円の法人税等調整額を計上しており、親会社株主に帰属する当期純利益121億77百万円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純損失2,149億48百万円)となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ2,271億25百万円増加し121億77百万円の親会社株主に帰属する当期純利益となりました。
報告セグメントであるエンジニアリング事業の分野別概況は、次のとおりです。
[エネルギー分野]
(LNG・その他ガス関係)
海外では、米国、インドネシア、モザンビークでLNGプラントのEPC業務を遂行中です。米国では、フリー
ポートLNGプロジェクトは2020年5月はじめまでに第3系列において商業運転が開始され、全系列において商業運転開始となりました。キャメロンLNGプロジェクトは第2系列において商業運転が開始され、第3系列の商業運転開始に向けて、引き続き安全かつ確実な遂行に努めています。2019年2月に受注したゴールデンパスLNGプロジェクトではEPC業務を遂行中です。カタールで計画されている年産780万トンのLNGプラント4系列を増設する案件ではEPC見積りを遂行中です。ナイジェリアのLNG増設案件ではEPC見積り提出後の協議を続けています。その他ガス分野では、カタールの当社グループ会社がヘリウム生産設備のEPC業務を遂行中です。また、当社が建設したLNG・ガス処理プラントの改造・改修案件に係る複数の業務を遂行中です。
国内では、当社が建設したLNG受入基地の増強・改造・改修や、耐震補強等の国土強靭化基本法対応案件の複数のEPC業務を遂行中です。
当連結会計年度の受注工事高は705億31百万円(前連結会計年度比83.3%減)となり、完成工事高は1,840億48百万円(同3.9%減)となりました。
(石油・石油化学・金属分野)
海外では、米国メキシコ湾岸でエチレン生産プラントのEPC業務、マレーシアで残油流動接触分解装置のEPCC(設計・調達・建設・試運転)業務を遂行中です。また、東南アジアの当社グループ会社が石油化学製品用タンクターミナル施設のEPC業務を完工しました。
国内では、石油会社向けに、2020年の船舶燃料硫黄分規制への対応を目的とした既設設備改造、オフサイト工事や、設備の最適化を目的とした製油所高度化案件、耐震補強等の国土強靭化基本法対応工事を完工しました。引き続き、製油所の競争力強化、設備更新を目的とした既設設備改造工事などを遂行中です。
当連結会計年度の受注工事高は636億73百万円(同72.0%減)となり、完成工事高は1,285億99百万円(同113.7%増)となりました。
[地球環境分野]
(医薬・生化学・一般化学関係)
医薬・生化学分野では、中分子医薬品原薬製造設備を完工、医薬品合成原薬製造設備などのEPC業務を遂行中です。一般化学分野では、高機能材製造設備や水素化石油樹脂生産設備などのEPC業務を継続して遂行中です。植物工場分野では、業界における大手生産・運営事業者であるMIRAI㈱と業務提携による体制強化を図り、商業設備の導入推進に取り組んでいます。カタール大学向けに実証設備納入業務を受注し遂行中です。
当連結会計年度の受注工事高は190億42百万円(同13.3%減)となり、完成工事高は249億22百万円(同13.6%減)となりました。
(環境・新エネルギー・インフラ関係)
海外では、環境分野において、インドで環境規制強化により石炭火力発電所への排煙脱硫設備の導入が進む中、当社のCT-121排煙脱硫プロセスが複数の案件に採用されています。
国内では、環境分野において、石炭火力発電所向けの排煙脱硫設備、CO2分離回収実証設備のEPC業務を遂行中です。新エネルギー分野では、世界最大級の蓄電池システム建設、複数の太陽光発電設備(メガソーラー)建設、木質ペレットを燃料とする国内最大級のバイオマス発電所建設に係るEPC業務を遂行するとともに、今後大きなマーケットが予測される洋上風力発電分野への参入を検討しています。
三菱商事㈱、三井物産㈱、日本郵船㈱とともに取り組んでいる「次世代水素サプライチェーンの事業化に向けた実証プロジェクト」については、ブルネイ水素化プラント、国内脱水素プラントの建設工事が終了、実証運転を順調に行っています。また、当社技術の安全性が高く評価されたシンガポールにおいて、三菱商事㈱と当社はシンガポールの民間5社と「シンガポールの水素社会実現に向けた協力に関する覚書」を締結し、当社の独自技術を用いた水素の輸入利用の事業化を検討しています。さらに、豪州Hazer社と日本での営業活動協力の覚書を締結し、同社のメタン熱分解プロセスによりメタンガスから水素とグラファイトを製造することで、二酸化炭素の貯蔵を不要とする水素の製造・供給も目指します。
当連結会計年度の受注工事高は197億28百万円(同78.1%減)となり、完成工事高は396億71百万円(同18.0%減)となりました。
[デジタル技術革新分野]
デジタル・AIを活用した新規ビジネスの開拓においては、国内有数のAIベンチャー企業である㈱グリッドとの業務提携に基づき、プラント生産性向上及び信頼性向上に向けた活動を継続しています。その一環として、インドネシアのドンギ・スノロLNG社の稼動中LNGプラント向けに生産効率の改善とLNG増産支援を目的としたAI技術を開発し、積極的に他の顧客への導入を目指しています。また、「先進的デジタル技術」を提供する内容の覚書を締結したアラブ首長国連邦のアブダビ・ガス液化公社とは、引き続き同社が保有するLNGプラントに対し、プラントの信頼性向上に資するデジタル技術の早期の導入を目指し開発を続けています。
一方、全社デジタル化の推進では、デジタル技術の一層の活用を目指した活動「Target20」を掲げて、EPC遂行管理能力の進化及びコーポレート分野の業務効率の改善に取り組んでいます。EPC遂行管理能力の進化では、AWP(Advanced Work Packaging)適用のためのシステムを開発し、プロジェクトへの適用を開始しています。
経営成績に重要な影響を及ぼす可能性のある主な事項、及び、それらに対する対応については、2.事業等のリスクに記載しています。
現在は8,118億円程度の受注残高を抱えており、米国、インドネシアで遂行中のLNG等のプロジェクトのほか、手持ち工事を着実に遂行していきます。
新型コロナウイルス感染症の拡大による世界経済の停滞及び足下のエネルギー需要の減少による原油・ガス価格の下落等、当社を取り巻く事業環境は大きく変化しています。今後、競争優位性と実現度が高い案件を選別し確実に受注に繋げていく活動を強化、デジタル技術を活用し業務革新を進めるとともに、2019年5月に発表した「再生計画~再生と未来に向けたビジョン」でも言及しているとおり、エンジニアリング価値を再定義し、当社の事業ポートフォリオと収益構造を変革していく取り組みに引き続き注力していきます。
また、当社グループは、従業員が心身ともに健康を保持して能力を最大限に発揮することが、当社グループの経営理念達成や競争力の向上に不可欠であると考え、人財たる従業員を支えるため、健康経営に取り組みます。
(2) 生産、受注及び販売の実績
① 受注実績
なお、国内及び海外の受注高並びに受注残高の内訳は、次のとおりです。
(注) 受注残高の( )内の数字は、前連結会計年度以前に受注した工事の契約変更等による減額及び外貨建契約に関する為替換算修正に伴う増減額の合計を加味しています。
② 売上実績
なお、国内及び海外の売上実績の内訳は、次のとおりです。
(注) 1 当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため「生産の実績」は記載していません。
2 主な相手先別の売上実績及び総売上高に対する割合は次のとおりです。
3 本表の金額には消費税等は含まれていません。
(3) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
① キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度の現金及び現金同等物の期末残高は 1,159億32百万円となり、前連結会計年度末残高より 476億26百万円増加しました。
営業活動による資金収支
税金等調整前当期純利益 190億50百万円の計上、及びジョイントベンチャー持分資産の減少による 148億30百万円のプラスがあった一方で、工事損失引当の減少による319億6百万円のマイナス、運転資金収支(売上債権、未成工事支出金、仕入債権、未成工事受入金の増減額合計)が265億1百万円のマイナス、未収入金の増加による 39億60百万円のマイナス、法人税等の支払額 38億41百万円などにより、当連結会計年度における営業活動による資金収支は、322億17百万円のマイナスとなりました。
投資活動による資金収支
関係会社株式の売却による収入 11億16百万円の一方で、定期預金が 73億58百万円純増したことや無形固定資産の取得による支出 17億2百万円があったことなどにより、当連結会計年度における投資活動による資金収支は、78億28百万円のマイナスとなりました。
財務活動による資金収支
株式の発行による収支 700億円、長期借入れによる収入 200億円などにより、当連結会計年度における財務活動による資金収支は、 892億円のプラスとなりました。
② 資金需要
当社グループの資金需要のうち主なものは、当社が受注した国内外のプラント建設に関わる費用、販売費及び一般管理費のほか、今後の成長戦略を支えるための投資です。販売費及び一般管理費のうち主なものは、従業員給与手当等の人件費のほか、業務委託費等です。当社の研究開発費は、研究開発に携わる従業員の人件費が過半を占めています。
③ 財務政策
当社は、2019年5月9日開催の取締役会において、事業継続に必要な財務基盤の強化として三菱商事㈱及び㈱三菱UFJ銀行から合計1,800億円の資金調達を実施することを決議し、両社と合意に至りました。2019年7月には、三菱商事㈱を割当先とする700億円の第三者割当増資の払込完了、及び㈱三菱UFJ銀行からの劣後融資200億円の実行により、財務基盤を強化しています。また、三菱商事㈱の完全子会社である三菱商事フィナンシャルサービス㈱との融資契約締結に基づく総額900億円の融資枠を確保しています。
上記調達済資金900億円及び融資枠900億円を活用し、2019年5月に発表した新中期経営計画「再生計画~再生と未来に向けたビジョン~」を確実に遂行するとともに、事業環境の変化を捉えた事業ポートフォリオと収益構造の変革を加速させ、当社グループを安定的に運営する資金を創出していきます。
(4) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されています。一般に公正妥当と認められる連結財務諸表の作成にあたっては、期末日における資産及び負債の報告額や、報告対象期間中の収益及び費用の報告額に影響する判断及び見積りを行うことが要求されます。当社グループの連結財務諸表作成にあたっては、過去実績や状況に応じて合理的と考えられる様々な要因に基づいて判断及び見積りを行っていますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合もあります。
当社グループの見積りや判断を含む重要な会計方針は、連結財務諸表注記の 4 会計方針に関する事項 に記載していますが、特に以下の重要な会計方針の適用において使用される当社の判断と見積りについては、当社グループの連結財務諸表の報告額に重要な影響を及ぼす可能性があると考えています。
(収益の認識)
当社及び国内連結子会社は、企業会計基準第15号 「工事契約に関する会計基準」 に従い、当連結会計年度末までの進捗部分について成果の確実性が認められる工事については工事進行基準を適用、その他の工事については工事完成基準を適用しています。工事進行基準適用工事については、原価比例法を採用し、連結会計年度末における工事進捗度を合理的に見積り、算出された工事進捗率に応じて収益を認識しています。工事完成基準適用工事については、工事が完成し、目的物の引き渡しを行った時点で収益を認識しています。
在外連結子会社は、IFRS第15号 「顧客との契約から生じる収益」またはASC第606号 「顧客との契約から生じる収益」に従い、顧客との契約の識別、契約における履行義務の識別、取引価格の算定、取引価格の履行義務への配分を適切に評価した上で、識別した履行義務の充足に伴い工事収益を認識しています。
上記、企業会計基準第15号 「工事契約に関する会計基準」においては工事進捗度計算の基礎となる工事原価総額、IFRS第15号 「顧客との契約から生じる収益」およびASC第606号 「顧客との契約から生じる収益」においては識別する履行義務に、将来生じる履行義務に対する見積額や新型コロナウィルス感染症の影響額を含む想定リスクに対する見積額などの重要な見積要素が含まれており、2 事業等のリスク に記載しているリスクの実現等、予測不能な前提条件の変化などが生じた場合には、見積額の変更に伴い工事進捗率や履行義務の進捗度が変動することとなり、当社グループの連結財務諸表の報告額に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(工事原価の見積り)
当社グループでは、工事契約において定められている目的物の引渡しを行った連結会計年度末において確定していない費用については、次期以降に発生する費用を見積り、工事原価として計上しています。見積り時に想定していなかった事態による追加費用の発生や費用の削減等、予測不能な前提条件の変化などが生じた場合には、見積りで計上した工事原価が増減することとなり、当社グループの連結財務諸表の報告額に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(工事損失引当金)
当社グループでは、当連結会計年度末において損失の発生が見込まれる未引渡工事に係る将来の損失に備えるため、合理的に見積もった損失見込額を工事損失引当金として計上しています。将来損失を構成する要素として、将来生じる履行義務に対する見積額や新型コロナウィルス感染症の影響額を含む想定リスクに対する見積額などが含まれており、2 事業等のリスク に記載しているリスクの実現等、予測不能な前提条件の変化などが生じた場合には、当社グループの連結財務諸表の報告額に重要な影響を及ぼす可能性があります。
文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2020年6月25日)現在において判断したものです。
<経営成績等の状況の概要及び経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容>当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概況は次のとおりです。
(1)財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度において、産油国間の生産調整が合意に至らず原油価格が急落する中、新型コロナウイルス感染症の拡大とそれに伴う世界経済の停滞によりエネルギー需要の減少が見込まれ、長期的なエネルギー需給バランスに変化が生じる可能性が拡大してきました。当社を取り巻く事業環境は大きく変化しており、先が見通せない厳しい状況が予想されています。
こうした状況の中、当社グループは、コア事業であるLNG分野での世界各地の大型プラント建設をはじめ、エネルギー分野及び地球環境分野において手持ちプロジェクトを引き続き着実に遂行しています。
一方、2019年5月に発表した新中期経営計画「再生計画~再生と未来に向けたビジョン~」に即して、2019年7月に三菱商事㈱を割当先とする700億円の第三者割当増資を実行し財務基盤を強化するとともに、再生と成長に向けた岩盤作りとして、2019年7月に本格稼働させた「戦略・リスク統合本部」の下、プロジェクト受注前から完工迄の一貫したリスク管理体制を整備し、デジタル技術を活用してEPC遂行管理能力を強化しました。同時に、鳥瞰的に将来を見据えた事業ポートフォリオの見直しを行うべく、組織再編及び事業改革に向けた諸施策の実行を進めています。2019年7月に「デジタルトランスフォーメーション本部」を新設後、デジタル技術を活用した全社デジタル化による業務革新を進めています。これにより、働き方改革にも取り組んでいます。さらに、2019年10月には「フロンティアビジネス本部」を新設し、エンジニアリングの価値を再定義し、当社の事業ポートフォリオを変革していく取り組みを進めています。
当連結会計年度における業績は、次のとおりです。
(受注工事高)
受注工事高は、前連結会計年度比76.7%減の1,798億36百万円となりました。なお、当連結会計年度末受注残高は8,118億47百万円となりました。受注工事高の概要は、「主たる事業セグメントであるエンジニアリング事業の概況」に記載のとおりです。
(完成工事高)
完成工事高は、前連結会計年度比12.9%増の3,859億25百万円となりました。完成工事高の概要は、「主たる事業セグメントであるエンジニアリング事業の概況」に記載のとおりです。
(完成工事総利益)
完成工事総利益は、米国及びインドネシアにて遂行中のLNG案件において、契約条件改定等による損益改善が寄与し、前連結会計年度の完成工事総損失1,811億48百万円に対し、完成工事総利益428億23百万円となりました。また、完成工事総利益率は前連結会計年度の△53.0%から64.1ポイント増加し11.1%となりました。
(販売費及び一般管理費)
販売費及び一般管理費は、構造改革の推進により、前連結会計年度に比べ26億14百万円減少し160億33百万円となりました。また、販売費及び一般管理費比率は前連結会計年度の5.5%から1.3ポイント減少し4.2%となりました。
(営業利益)
営業利益は、完成工事総利益と同様の理由により、前連結会計年度に比べ2,265億85百万円増加し267億89百万円の営業利益となりました。
(営業外収益・営業外費用)
営業外収益及び営業外費用は、前連結会計年度の67億96百万円の収益超過に対し、81億44百万円の費用超過となりました。これは、前連結会計年度では36億38百万円の為替差益を計上したのに対し、当連結会計年度は101億92百万円の為替差損を計上したことが主因です。
また、受取利息・受取配当金から支払利息を差し引いた金融収支は、前連結会計年度の30億64百万円の入金超過に対して、9億41百万円減少21億23百万円の入金超過となっております。持分法による投資損益は、前連結会計年度の1億94百万円の投資利益に対し、当連結会計年度は3億61百万円の投資利益となりました。
(経常利益)
経常利益は、営業外費用が費用超過となったものの、完成工事総利益と同様の理由により、前連結会計年度に比べ2,116億43百万円増加し186億44百万円となりました。
(特別利益・特別損失)
特別利益においては、関係会社株式売却益63百万円の計上及び前連結会計年度に計上した当社グループの事業構造改革に伴う損失に対する引当金の進捗に伴う2億32百万円の取崩しが生じています。特別損失においては、投資有価証券評価損1億22百万円の計上及びのれんの減損損失67百万円を計上しています。
(法人税、住民税及び事業税・法人税等調整額)
税金等調整前当期純利益は、前連結会計年度に比べ2,132億31百万円増加し190億50百万円の利益となりました。
なお、法人税等において法人税、住民税及び事業税71億20百万円を計上した一方で将来加算一時差異の解消による繰延税金負債残高減少等により、△1億5百万円の法人税等調整額を計上しており、親会社株主に帰属する当期純利益121億77百万円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純損失2,149億48百万円)となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ2,271億25百万円増加し121億77百万円の親会社株主に帰属する当期純利益となりました。
報告セグメントであるエンジニアリング事業の分野別概況は、次のとおりです。
[エネルギー分野]
(LNG・その他ガス関係)
海外では、米国、インドネシア、モザンビークでLNGプラントのEPC業務を遂行中です。米国では、フリー
ポートLNGプロジェクトは2020年5月はじめまでに第3系列において商業運転が開始され、全系列において商業運転開始となりました。キャメロンLNGプロジェクトは第2系列において商業運転が開始され、第3系列の商業運転開始に向けて、引き続き安全かつ確実な遂行に努めています。2019年2月に受注したゴールデンパスLNGプロジェクトではEPC業務を遂行中です。カタールで計画されている年産780万トンのLNGプラント4系列を増設する案件ではEPC見積りを遂行中です。ナイジェリアのLNG増設案件ではEPC見積り提出後の協議を続けています。その他ガス分野では、カタールの当社グループ会社がヘリウム生産設備のEPC業務を遂行中です。また、当社が建設したLNG・ガス処理プラントの改造・改修案件に係る複数の業務を遂行中です。
国内では、当社が建設したLNG受入基地の増強・改造・改修や、耐震補強等の国土強靭化基本法対応案件の複数のEPC業務を遂行中です。
当連結会計年度の受注工事高は705億31百万円(前連結会計年度比83.3%減)となり、完成工事高は1,840億48百万円(同3.9%減)となりました。
(石油・石油化学・金属分野)
海外では、米国メキシコ湾岸でエチレン生産プラントのEPC業務、マレーシアで残油流動接触分解装置のEPCC(設計・調達・建設・試運転)業務を遂行中です。また、東南アジアの当社グループ会社が石油化学製品用タンクターミナル施設のEPC業務を完工しました。
国内では、石油会社向けに、2020年の船舶燃料硫黄分規制への対応を目的とした既設設備改造、オフサイト工事や、設備の最適化を目的とした製油所高度化案件、耐震補強等の国土強靭化基本法対応工事を完工しました。引き続き、製油所の競争力強化、設備更新を目的とした既設設備改造工事などを遂行中です。
当連結会計年度の受注工事高は636億73百万円(同72.0%減)となり、完成工事高は1,285億99百万円(同113.7%増)となりました。
[地球環境分野]
(医薬・生化学・一般化学関係)
医薬・生化学分野では、中分子医薬品原薬製造設備を完工、医薬品合成原薬製造設備などのEPC業務を遂行中です。一般化学分野では、高機能材製造設備や水素化石油樹脂生産設備などのEPC業務を継続して遂行中です。植物工場分野では、業界における大手生産・運営事業者であるMIRAI㈱と業務提携による体制強化を図り、商業設備の導入推進に取り組んでいます。カタール大学向けに実証設備納入業務を受注し遂行中です。
当連結会計年度の受注工事高は190億42百万円(同13.3%減)となり、完成工事高は249億22百万円(同13.6%減)となりました。
(環境・新エネルギー・インフラ関係)
海外では、環境分野において、インドで環境規制強化により石炭火力発電所への排煙脱硫設備の導入が進む中、当社のCT-121排煙脱硫プロセスが複数の案件に採用されています。
国内では、環境分野において、石炭火力発電所向けの排煙脱硫設備、CO2分離回収実証設備のEPC業務を遂行中です。新エネルギー分野では、世界最大級の蓄電池システム建設、複数の太陽光発電設備(メガソーラー)建設、木質ペレットを燃料とする国内最大級のバイオマス発電所建設に係るEPC業務を遂行するとともに、今後大きなマーケットが予測される洋上風力発電分野への参入を検討しています。
三菱商事㈱、三井物産㈱、日本郵船㈱とともに取り組んでいる「次世代水素サプライチェーンの事業化に向けた実証プロジェクト」については、ブルネイ水素化プラント、国内脱水素プラントの建設工事が終了、実証運転を順調に行っています。また、当社技術の安全性が高く評価されたシンガポールにおいて、三菱商事㈱と当社はシンガポールの民間5社と「シンガポールの水素社会実現に向けた協力に関する覚書」を締結し、当社の独自技術を用いた水素の輸入利用の事業化を検討しています。さらに、豪州Hazer社と日本での営業活動協力の覚書を締結し、同社のメタン熱分解プロセスによりメタンガスから水素とグラファイトを製造することで、二酸化炭素の貯蔵を不要とする水素の製造・供給も目指します。
当連結会計年度の受注工事高は197億28百万円(同78.1%減)となり、完成工事高は396億71百万円(同18.0%減)となりました。
[デジタル技術革新分野]
デジタル・AIを活用した新規ビジネスの開拓においては、国内有数のAIベンチャー企業である㈱グリッドとの業務提携に基づき、プラント生産性向上及び信頼性向上に向けた活動を継続しています。その一環として、インドネシアのドンギ・スノロLNG社の稼動中LNGプラント向けに生産効率の改善とLNG増産支援を目的としたAI技術を開発し、積極的に他の顧客への導入を目指しています。また、「先進的デジタル技術」を提供する内容の覚書を締結したアラブ首長国連邦のアブダビ・ガス液化公社とは、引き続き同社が保有するLNGプラントに対し、プラントの信頼性向上に資するデジタル技術の早期の導入を目指し開発を続けています。
一方、全社デジタル化の推進では、デジタル技術の一層の活用を目指した活動「Target20」を掲げて、EPC遂行管理能力の進化及びコーポレート分野の業務効率の改善に取り組んでいます。EPC遂行管理能力の進化では、AWP(Advanced Work Packaging)適用のためのシステムを開発し、プロジェクトへの適用を開始しています。
経営成績に重要な影響を及ぼす可能性のある主な事項、及び、それらに対する対応については、2.事業等のリスクに記載しています。
現在は8,118億円程度の受注残高を抱えており、米国、インドネシアで遂行中のLNG等のプロジェクトのほか、手持ち工事を着実に遂行していきます。
新型コロナウイルス感染症の拡大による世界経済の停滞及び足下のエネルギー需要の減少による原油・ガス価格の下落等、当社を取り巻く事業環境は大きく変化しています。今後、競争優位性と実現度が高い案件を選別し確実に受注に繋げていく活動を強化、デジタル技術を活用し業務革新を進めるとともに、2019年5月に発表した「再生計画~再生と未来に向けたビジョン」でも言及しているとおり、エンジニアリング価値を再定義し、当社の事業ポートフォリオと収益構造を変革していく取り組みに引き続き注力していきます。
また、当社グループは、従業員が心身ともに健康を保持して能力を最大限に発揮することが、当社グループの経営理念達成や競争力の向上に不可欠であると考え、人財たる従業員を支えるため、健康経営に取り組みます。
(2) 生産、受注及び販売の実績
① 受注実績
事業部門の名称 | 前連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | |||||||
受注高 | 受注残高 | 受注高 | 受注残高 | ||||||
金額 (百万円) | 構成比 (%) | 金額 (百万円) | 構成比 (%) | 金額 (百万円) ⦅前年同期比⦆ | 構成比 (%) | 金額 (百万円) | 構成比 (%) | ||
1 エンジニアリング事業 | 768,199 | 99.6 | 1,016,356 | 100.0 | 179,056 | 99.6 | 811,847 | 100.0 | |
(△66,765) | ⦅ 76.7%減⦆ | ( 1,579) | |||||||
エネルギー 分野 | (1) LNGプラント関係 | 409,075 | 53.0 | 544,082 | 53.5 | 65,196 | 36.2 | 435,962 | 53.7 |
(△28,311) | ⦅ 84.1%減⦆ | ( 6,186) | |||||||
(2) その他ガス関係 | 12,344 | 1.6 | 13,405 | 1.3 | 5,334 | 3.0 | 14,181 | 1.7 | |
( △636) | ⦅ 56.8%減⦆ | ( △12) | |||||||
(3) 石油・石油化学 ・金属関係 | 227,083 | 29.4 | 311,087 | 30.6 | 63,673 | 35.4 | 242,946 | 29.9 | |
(△10,836) | ⦅ 72.0%減⦆ | ( △3,215) | |||||||
地球環境 分野 | (4) 医薬・生化学 ・一般化学関係 | 21,961 | 2.9 | 24,012 | 2.4 | 19,042 | 10.6 | 20,064 | 2.5 |
( △5,230) | ⦅ 13.3%減⦆ | ( 1,931) | |||||||
(5) 環境・新エネルギー ・インフラ関係 | 90,045 | 11.7 | 116,734 | 11.5 | 19,728 | 11.0 | 96,583 | 11.9 | |
(△21,466) | ⦅ 78.1%減⦆ | ( △208) | |||||||
(6) その他 | 7,689 | 1.0 | 7,034 | 0.7 | 6,079 | 3.4 | 2,109 | 0.3 | |
( △284) | ⦅ 20.9%減⦆ | ( △3,101) | |||||||
2 その他の事業 | 3,360 | 0.4 | - | - | 780 | 0.4 | - | - | |
( -) | ⦅ 76.8%減⦆ | ( -) | |||||||
総 合 計 | 771,559 | 100.0 | 1,016,356 | 100.0 | 179,836 | 100.0 | 811,847 | 100.0 | |
(△66,765) | ⦅ 76.7%減⦆ | ( 1,579) |
なお、国内及び海外の受注高並びに受注残高の内訳は、次のとおりです。
国内外内訳 | 前連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | ||||||
受注高 | 受注残高 | 受注高 | 受注残高 | |||||
金額 (百万円) | 構成比 (%) | 金額 (百万円) | 構成比 (%) | 金額 (百万円) ⦅前年同期比⦆ | 構成比 (%) | 金額 (百万円) | 構成比 (%) | |
国 内 | 196,535 | 25.5 | 217,526 | 21.4 | 95,834 | 53.3 | 179,559 | 22.1 |
(△21,818) | ⦅ 51.2%減⦆ | ( △720) | ||||||
海 外 | 575,023 | 74.5 | 798,830 | 78.6 | 84,002 | 46.7 | 632,288 | 77.9 |
(△44,947) | ⦅ 85.4%減⦆ | ( 2,300) | ||||||
合 計 | 771,559 | 100.0 | 1,016,356 | 100.0 | 179,836 | 100.0 | 811,847 | 100.0 |
(△66,765) | ⦅ 76.7%減⦆ | ( 1,579) |
(注) 受注残高の( )内の数字は、前連結会計年度以前に受注した工事の契約変更等による減額及び外貨建契約に関する為替換算修正に伴う増減額の合計を加味しています。
② 売上実績
事業部門の名称 | 前連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | |||
金額(百万円) | 構成比(%) | 金額(百万円) ⦅前年同期比⦆ | 構成比(%) | ||
1 エンジニアリング事業 | 338,592 | 99.0 | 385,144 | 99.8 | |
⦅13.7%増⦆ | |||||
エネルギー 分野 | (1) LNGプラント関係 | 188,844 | 55.2 | 179,503 | 46.5 |
⦅5.0%減⦆ | |||||
(2) その他ガス関係 | 2,708 | 0.8 | 4,545 | 1.2 | |
⦅67.8%増⦆ | |||||
(3) 石油・石油化学 ・金属関係 | 60,191 | 17.6 | 128,599 | 33.3 | |
⦅113.7%増⦆ | |||||
地球環境 分野 | (4) 医薬・生化学 ・一般化学関係 | 28,836 | 8.4 | 24,922 | 6.5 |
⦅13.6%減⦆ | |||||
(5) 環境・新エネルギー ・インフラ関係 | 48,354 | 14.2 | 39,671 | 10.3 | |
⦅18.0%減⦆ | |||||
(6) その他 | 9,656 | 2.8 | 7,903 | 2.0 | |
⦅18.2%減⦆ | |||||
2 その他の事業 | 3,360 | 1.0 | 780 | 0.2 | |
⦅76.8%減⦆ | |||||
総 合 計 | 341,952 | 100.0 | 385,925 | 100.0 | |
⦅12.9%増⦆ |
なお、国内及び海外の売上実績の内訳は、次のとおりです。
国内外内訳 | 前連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | ||
金額(百万円) | 構成比(%) | 金額(百万円) ⦅前年同期比⦆ | 構成比(%) | |
国 内 | 120,400 | 35.2 | 133,080 | 34.5 |
⦅10.5%増⦆ | ||||
海 外 | 221,552 | 64.8 | 252,844 | 65.5 |
⦅14.1%増⦆ | ||||
合 計 | 341,952 | 100.0 | 385,925 | 100.0 |
⦅12.9%増⦆ |
(注) 1 当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため「生産の実績」は記載していません。
2 主な相手先別の売上実績及び総売上高に対する割合は次のとおりです。
前連結会計年度 | 当連結会計年度 | ||||
相手先 | 金額 (百万円) | 割合 (%) | 相手先 | 金額 (百万円) | 割合 (%) |
オージェイエスシー・ヤマル・エルエヌジー | 116,918 | 34.2 | キャメロン・エルエヌジー・エルエルシー | 79,612 | 20.6 |
ガルフ・コースト・グロウス・ベンチャーズ・エルエルシー | 57,378 | 14.9 |
3 本表の金額には消費税等は含まれていません。
(3) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
① キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度の現金及び現金同等物の期末残高は 1,159億32百万円となり、前連結会計年度末残高より 476億26百万円増加しました。
営業活動による資金収支
税金等調整前当期純利益 190億50百万円の計上、及びジョイントベンチャー持分資産の減少による 148億30百万円のプラスがあった一方で、工事損失引当の減少による319億6百万円のマイナス、運転資金収支(売上債権、未成工事支出金、仕入債権、未成工事受入金の増減額合計)が265億1百万円のマイナス、未収入金の増加による 39億60百万円のマイナス、法人税等の支払額 38億41百万円などにより、当連結会計年度における営業活動による資金収支は、322億17百万円のマイナスとなりました。
投資活動による資金収支
関係会社株式の売却による収入 11億16百万円の一方で、定期預金が 73億58百万円純増したことや無形固定資産の取得による支出 17億2百万円があったことなどにより、当連結会計年度における投資活動による資金収支は、78億28百万円のマイナスとなりました。
財務活動による資金収支
株式の発行による収支 700億円、長期借入れによる収入 200億円などにより、当連結会計年度における財務活動による資金収支は、 892億円のプラスとなりました。
② 資金需要
当社グループの資金需要のうち主なものは、当社が受注した国内外のプラント建設に関わる費用、販売費及び一般管理費のほか、今後の成長戦略を支えるための投資です。販売費及び一般管理費のうち主なものは、従業員給与手当等の人件費のほか、業務委託費等です。当社の研究開発費は、研究開発に携わる従業員の人件費が過半を占めています。
③ 財務政策
当社は、2019年5月9日開催の取締役会において、事業継続に必要な財務基盤の強化として三菱商事㈱及び㈱三菱UFJ銀行から合計1,800億円の資金調達を実施することを決議し、両社と合意に至りました。2019年7月には、三菱商事㈱を割当先とする700億円の第三者割当増資の払込完了、及び㈱三菱UFJ銀行からの劣後融資200億円の実行により、財務基盤を強化しています。また、三菱商事㈱の完全子会社である三菱商事フィナンシャルサービス㈱との融資契約締結に基づく総額900億円の融資枠を確保しています。
上記調達済資金900億円及び融資枠900億円を活用し、2019年5月に発表した新中期経営計画「再生計画~再生と未来に向けたビジョン~」を確実に遂行するとともに、事業環境の変化を捉えた事業ポートフォリオと収益構造の変革を加速させ、当社グループを安定的に運営する資金を創出していきます。
(4) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されています。一般に公正妥当と認められる連結財務諸表の作成にあたっては、期末日における資産及び負債の報告額や、報告対象期間中の収益及び費用の報告額に影響する判断及び見積りを行うことが要求されます。当社グループの連結財務諸表作成にあたっては、過去実績や状況に応じて合理的と考えられる様々な要因に基づいて判断及び見積りを行っていますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合もあります。
当社グループの見積りや判断を含む重要な会計方針は、連結財務諸表注記の 4 会計方針に関する事項 に記載していますが、特に以下の重要な会計方針の適用において使用される当社の判断と見積りについては、当社グループの連結財務諸表の報告額に重要な影響を及ぼす可能性があると考えています。
(収益の認識)
当社及び国内連結子会社は、企業会計基準第15号 「工事契約に関する会計基準」 に従い、当連結会計年度末までの進捗部分について成果の確実性が認められる工事については工事進行基準を適用、その他の工事については工事完成基準を適用しています。工事進行基準適用工事については、原価比例法を採用し、連結会計年度末における工事進捗度を合理的に見積り、算出された工事進捗率に応じて収益を認識しています。工事完成基準適用工事については、工事が完成し、目的物の引き渡しを行った時点で収益を認識しています。
在外連結子会社は、IFRS第15号 「顧客との契約から生じる収益」またはASC第606号 「顧客との契約から生じる収益」に従い、顧客との契約の識別、契約における履行義務の識別、取引価格の算定、取引価格の履行義務への配分を適切に評価した上で、識別した履行義務の充足に伴い工事収益を認識しています。
上記、企業会計基準第15号 「工事契約に関する会計基準」においては工事進捗度計算の基礎となる工事原価総額、IFRS第15号 「顧客との契約から生じる収益」およびASC第606号 「顧客との契約から生じる収益」においては識別する履行義務に、将来生じる履行義務に対する見積額や新型コロナウィルス感染症の影響額を含む想定リスクに対する見積額などの重要な見積要素が含まれており、2 事業等のリスク に記載しているリスクの実現等、予測不能な前提条件の変化などが生じた場合には、見積額の変更に伴い工事進捗率や履行義務の進捗度が変動することとなり、当社グループの連結財務諸表の報告額に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(工事原価の見積り)
当社グループでは、工事契約において定められている目的物の引渡しを行った連結会計年度末において確定していない費用については、次期以降に発生する費用を見積り、工事原価として計上しています。見積り時に想定していなかった事態による追加費用の発生や費用の削減等、予測不能な前提条件の変化などが生じた場合には、見積りで計上した工事原価が増減することとなり、当社グループの連結財務諸表の報告額に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(工事損失引当金)
当社グループでは、当連結会計年度末において損失の発生が見込まれる未引渡工事に係る将来の損失に備えるため、合理的に見積もった損失見込額を工事損失引当金として計上しています。将来損失を構成する要素として、将来生じる履行義務に対する見積額や新型コロナウィルス感染症の影響額を含む想定リスクに対する見積額などが含まれており、2 事業等のリスク に記載しているリスクの実現等、予測不能な前提条件の変化などが生じた場合には、当社グループの連結財務諸表の報告額に重要な影響を及ぼす可能性があります。