有価証券報告書-第154期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

【提出】
2018/06/28 15:00
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【項目】
139項目
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度(平成29年4月1日から平成30年3月31日まで(以下、当期という。))における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
<経営成績>当期におけるわが国経済は、輸出や設備投資が堅調に推移したほか、個人消費が雇用・所得環境の改善を受けて底堅く推移するなど、緩やかな回復基調が続きました。
このような状況下、当社グループでは、各事業部門において積極的な営業活動と効率的な経営に努めた結果、当期の営業収益は、不動産事業やトラック事業での増収に加え、鉄軌道事業での輸送人員の増加などにより6,048億4百万円(前期比0.9%増)となりました。営業利益は、燃料費や人件費は増加したものの、増収が寄与し469億76百万円(前期比6.3%増)となりました。経常利益は、営業外損益は悪化したものの、営業利益の増加を受けて485億66百万円(前期比5.3%増)となり、また、親会社株主に帰属する当期純利益は、整理損失引当金繰入額の減少などにより特別損益が改善し286億91百万円(前期比22.4%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
(交通事業)
鉄軌道事業につきましては、当社では、都市計画事業の一環として、知立駅付近などで高架化工事を進めたほか、駅ホームの改良工事を行うなど、引続き安全面の強化に努めました。また、通勤型車両3150系・3300系の新造や一部特別車特急車両1200系のリニューアルを行ったほか、バリアフリー化を尼ケ坂駅等で実施するなど、お客さまサービスの向上を図りました。営業面では、沿線地域と連携した観光キャンペーンや、開催45周年を迎えた電車沿線ハイキングなどを通じて、旅客の需要喚起に努めました。
バス事業につきましては、名鉄バス㈱では、中部国際空港アクセスバス「セントレアリムジン」の利用が好調に推移したほか、昨年10月から名鉄バスセンターと県営名古屋空港を結ぶ空港バス「県営名古屋空港線」の運行を開始するなど、新規顧客の獲得に取組みました。また、名鉄観光バス㈱では、募集型企画旅行の「ドラゴンズパック」において、個人の訪日外国人旅行者向けの内容を充実させるなど、インバウンド対応の強化に努めました。
タクシー事業につきましては、グループタクシー各社では、すべてのお客さまが利用しやすいユニバーサルデザインを採用した「JPN TAXI(ジャパンタクシー)」を順次導入するなど、サービスの充実を図りました。また、名古屋市内を拠点とする各社では、同市が交付する敬老パス(「ICカードmanaca」)を利用した「敬老パス割引」を開始しました。
交通事業の営業収益は、鉄軌道事業での輸送人員の増加などにより1,670億45百万円(前期比1.1%増)となり、営業利益は、燃料費は増加したものの、鉄軌道事業の増収が寄与し239億42百万円(前期比5.4%増)となりました。
(業種別営業成績表)
営業収益営業利益
当期前期増減率当期前期増減率
百万円百万円%百万円百万円%
鉄軌道事業94,89092,7722.318,29916,28312.4
バス事業48,28948,717△0.94,1554,810△13.6
タクシー事業29,83629,897△0.21,3381,512△11.5
調整額△5,971△6,205149116
167,045165,1821.123,94222,7225.4

(提出会社の運輸営業成績表)
鉄軌道事業
種別単位当 期
(自 平成29年4月1日
至 平成30年3月31日)
対前期増減率(%)
営業日数365
営業キロキロ444.2
走行キロ客車千キロ195,124△0.1
貨車1△0.6
乗車人員定期千人261,0852.1
定期外125,7892.2
386,8742.1
貨物トン数千トン3△27.3
旅客収入定期百万円39,0232.4
定期外49,3512.6
88,3742.5
手小荷物収入48△7.1
貨物収入3△18.9
運輸雑収4,659△0.9
収入合計93,0862.3
1日平均収入2552.3
乗車効率%30.9

(注) 1 乗車効率の算出方法は延人キロ×100によります。
客車走行キロ×1車平均定員

2 鉄道と軌道との乗車人員は重複しておりません。
(運送事業)
トラック事業につきましては、名鉄運輸グループでは、昨年4月に関東地区及び関西地区の組織再編を行い、経営効率の改善を図ったほか、資本業務提携を結んでいる日本通運㈱との連携において、配送の受託や施設の共同利用を進めるなど、事業領域の拡大と経営資源の有効活用を図りました。
海運事業につきましては、太平洋フェリー㈱では、貨物輸送が堅調に推移したほか、苫小牧-仙台間で基本運用をしているフェリー「きたかみ」の更新準備を進めました。
運送事業の営業収益は、トラック事業での貨物取扱量の増加や運賃単価の上昇などにより1,321億91百万円(前期比1.8%増)となり、営業利益は、燃料費や人件費の増加により56億90百万円(前期比0.0%増)となりました。
(業種別営業成績表)
営業収益営業利益
当期前期増減率当期前期増減率
百万円百万円%百万円百万円%
トラック事業153,355149,9012.34,5124,793△5.8
海運事業15,72415,2103.41,12086729.2
調整額△36,889△35,2475629
132,191129,8641.85,6905,6890.0

(不動産事業)
不動産賃貸業につきましては、当社では、大型オフィスビルが増加する名駅地区において、所有するビルの高い稼働率の維持に努めたほか、賃貸マンション「meLiV(メリヴ)堀田」を本年3月に堀田駅前に開業しました。また、名鉄協商㈱では、昨年11月に㈱バイク王&カンパニーの駐車場事業を譲り受け、主に関東地区での事業拡大を図りました。
不動産分譲業につきましては、名鉄不動産㈱では、首都圏において、昨年7月に竣工した分譲マンション「パークゲート メイツ 西新井」(東京都足立区)の販売が好調に推移するなど、積極的な営業活動に努めました。
不動産事業の営業収益は、不動産分譲業でのマンション販売収入の増加に加え、不動産賃貸業における、新規賃貸物件の取得や駐車場数及び総管理台数の増加もあり861億4百万円(前期比5.9%増)となり、営業利益は104億93百万円(前期比16.6%増)となりました。
(業種別営業成績表)
営業収益営業利益
当期前期増減率当期前期増減率
百万円百万円%百万円百万円%
不動産賃貸業54,97852,3465.09,4488,17015.6
不動産分譲業37,17834,3538.21,13189726.0
調整額△6,052△5,417△86△71
86,10481,2825.910,4938,99616.6

(レジャー・サービス事業)
ホテル業につきましては、㈱名鉄グランドホテルでは、「中部国際空港セントレアホテル」において、好調に推移する空港利用旅客の獲得に努めるとともに、本年秋に予定される新棟開業に向けた準備を進めました。また、名鉄イン㈱では、ビジネス需要に加えてインバウンド等の観光需要を取込むべく、本年3月に新ブランドの「ホテルミュッセ銀座名鉄」(東京都中央区)を開業しました。
観光施設の経営につきましては、㈱名鉄インプレスでは、レジャープール「水の楽園 モンプル」の好評などにより、「日本モンキーパーク」の入場者が好調に推移しました。また、㈱名鉄レストランでは、昨年4月に中部国際空港内に「M’s DINING(エムズ ダイニング)」をオープンしたほか、刈谷パーキングエリア内で「いきなり!ステーキ」の営業を開始するなど、新規顧客の獲得に努めました。
旅行業につきましては、名鉄観光サービス㈱では、海外旅行において、国際情勢不安の影響を受けたものの、国内旅行において、教育関係などの団体客の取込みが堅調に推移しました。
レジャー・サービス事業の営業収益は、ホテル業において、平成28年11月に開業した「名鉄イン名古屋駅新幹線口」の新規出店効果により増収となったものの、観光施設の経営におけるレンタカー事業の子会社譲渡やレストラン業の減収などもあり542億34百万円(前期比1.6%減)となり、営業利益は15億9百万円(前期比14.5%減)となりました。
(業種別営業成績表)
営業収益営業利益
当期前期増減率当期前期増減率
百万円百万円%百万円百万円%
ホテル業18,60117,7235.01,3751,21713.0
観光施設の経営21,80823,517△7.3227617△63.2
旅行業14,45414,521△0.5△114△92
調整額△630△6482023
54,23455,112△1.61,5091,766△14.5

(流通事業)
百貨店業につきましては、㈱名鉄百貨店では、中国からのインバウンド顧客に対応するための電子決済サービスを導入するなど、サービスの強化に努めたほか、物産展等の各種催事を開催するなど、誘客に努めました。
その他物品販売につきましては、名鉄産業㈱では、「ファミリーマートエスタシオ」を、昨年7月に小幡駅、9月に名鉄岐阜駅の「ECT(イクト)」内にオープンするなど、収益力の向上に努めました。
流通事業の営業収益は、百貨店業で減収となったものの、石油販売価格の上昇や輸入車販売業などでの増収により1,344億53百万円(前期比0.0%増)となり、営業利益は、百貨店業の収支改善や輸入車販売業での増益などにより12億66百万円(前期比36.6%増)となりました。
(業種別営業成績表)
営業収益営業利益
当期前期増減率当期前期増減率
百万円百万円%百万円百万円%
百貨店業66,33568,569△3.3△58△60
その他物品販売69,19366,8183.61,0849879.8
調整額△1,076△9902400
134,453134,3970.01,26692736.6


(その他の事業)
その他の事業につきましては、昨年6月に㈱名鉄ライフサポートを設立し、短時間リハビリ型デイサービスを提供する「名鉄レコードブック」を展開したほか、学童保育に習い事の要素を付加したアフタースクール「TELACO(テラコ)」や、小規模保育所「ぽっぽ園」を運営する㈱名鉄スマイルプラスを昨年11月に設立するなど、事業領域の拡大を図りました。また、中日本航空㈱では、ドクターヘリをはじめとする医療サービスの拡充を図るため、昨年7月から北海道において、医療用小型ジェット機「メディカルウイング」の受託運航を開始しました。
その他の事業の営業収益は、設備工事の受注減少などにより735億18百万円(前期比0.0%減)となり、営業利益は、新会社設立に伴う費用の増加などにより36億68百万円(前期比9.0%減)となりました。
(業種別営業成績表)
営業収益営業利益
当期前期増減率当期前期増減率
百万円百万円%百万円百万円%
設備保守整備事業27,30527,906△2.21,1971,203△0.5
航空事業21,33220,9881.61,4651,504△2.6
ビル管理メンテナンス業3,6813,700△0.5126127△0.4
その他事業22,59522,4350.78621,182△27.0
調整額△1,397△1,4991513
73,51873,531△0.03,6684,031△9.0

<財政状態>当期末の資産の合計額は1兆1,210億60百万円で、前期末に比べ271億77百万円増加しました。これは、設備投資などにより有形固定資産が全体で103億88百万円、保有株式の時価上昇などにより投資有価証券が97億95百万円、短期資金の運用により有価証券が90億円増加したことなどによるものであります。
負債の合計額は7,315億4百万円で、前期末に比べ195億64百万円減少しました。これは有利子負債が全体で178億21百万円減少したほか、支払手形及び買掛金が22億48百万円減少したことなどによるものであります。
純資産の合計額は3,895億55百万円で、前期末に比べ467億42百万円増加しました。これは、利益剰余金が239億89百万円、新株予約権行使により資本金が62億85百万円、新株予約権行使等により資本剰余金が61億13百万円、保有株式の時価上昇などによりその他有価証券評価差額金が50億13百万円増加したことなどによるものであります。
② キャッシュ・フローの状況
当期末における現金及び現金同等物の残高は、前期末に比べ89億11百万円増加し、308億54百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益の増加などにより、前期末に比べ52億12百万円増加し659億32百万円となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、固定資産の取得による支出の増加などにより、16億17百万円減少し△402億86百万円となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入れによる収入の増加などにより、2億93百万円増加し△167億32百万円となりました。
③ 生産、受注及び販売の実績
当社グループの事業は、交通事業のほか運送事業、不動産事業、流通事業等の広範囲かつ多種多様なサービス業が主体であり、また受注生産形態をとらない事業がほとんどでありますので、セグメントごとに網羅的に生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。
このため生産、受注及び販売の状況については、「①財政状態及び経営成績の状況」におけるセグメントの業績に関連付けて記載しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、当社経営陣は、決算日における資産・負債及び報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える見積りを行わなければなりません。これらのうち主なものは以下のとおりでありますが、見積り特有の不確実性があるため、見積りと異なる場合があります。
(固定資産の減損)
当社グループは、事業の特性上、多額の固定資産を保有しており、固定資産の回収可能価額について、将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額等の前提条件に基づき算出しております。従って、当初見込んでいた収益が得られなかった場合や、将来キャッシュ・フロー等の前提条件に変更があった場合、固定資産の減損を実施する可能性があります。
(繰延税金資産の回収可能性)
当社グループは、繰延税金資産の回収可能性を判断するに際して将来の課税所得や税務計画を合理的に見積っております。従って、将来の課税所得の見積額や税務計画が変更された場合には、繰延税金資産が増額又は減額される可能性があります。
(退職給付債務及び費用の計算)
当社グループは、従業員退職給付債務及び費用の計算について、割引率や年金資産の期待運用収益率等の前提条件に基づき行っております。従って、前提条件または制度に変化や変更が生じた場合には、退職給付債務及び退職給付費用に影響を及ぼす可能性があります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(財政状態の分析)
当連結会計年度の財政状態の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。
(経営成績の分析)
当連結会計年度の経営成績の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。
(キャッシュ・フローの分析)
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
(資本の財源及び資金の流動性)
当社グループは、運転資金及び設備投資資金につきましては、自己資金または借入により資金調達することとしております。このうち、借入による資金調達に関しましては、運転資金については短期借入金で、設備投資などの長期資金については、社債及び長期借入金での調達を基本としております。また、当社グループにおいて、CMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入することにより、各社における余剰資金を集中し、一元管理を行うことで、資金効率の向上を図っております。
なお、重要な設備投資の計画につきましては、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画 (1)重要な設備の新設等」に記載しております。
(経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等)
当社グループは、当連結会計年度を最終年度とする3か年計画である「名鉄グループ中期経営計画~PLAN123~」の中で、最終年度の連結経営数値目標として、「ROE(純利益/自己資本)」、「ROA(営業利益/総資産)」、「純有利子負債/EBITDA倍率」及び「株主資本比率」を設定し、取り組んでまいりました。当連結会計年度における各指標は、以下のとおりであります。
経営指標当連結会計年度(目標値)当連結会計年度(実績)
ROE(純利益/自己資本)8.0%(7.5%)8.5%
ROA(営業利益/総資産)3.8%(3.5%)4.2%
純有利子負債/EBITDA倍率※5.5倍(6.0倍)4.8倍
株主資本比率20.0%(20.0%)21.6%

(注)1 ※純有利子負債:有利子負債-現預金・短期有価証券
EBITDA:営業利益+減価償却費
2 当連結会計年度(目標値)の(外数)は、当初の目標値であります。
平成28年11月にROE、ROA及び純有利子負債/EBITDA倍率の3指標を上方修正しております。
当連結会計年度の実績を、「名鉄グループ中期経営計画~PLAN123~」の策定年度である平成26年度の実績と比較しますと、営業利益は89億円、23.4%の増益となりました。これは、通勤定期需要の好調やインバウンド需要の拡大により、輸送人員の伸びが継続した鉄軌道事業の増益が大きく寄与しております。また、親会社株主に帰属する当期純利益は、営業増益に伴う経常増益に加え特別損益の改善により、109億円、61.3%の増益となりました。当連結会計年度の営業利益及び親会社株主に帰属する当期純利益は、ともに当初の想定を上回る水準であり、これに伴い、ROEは目標値に比べ0.5ポイント増加し8.5%、ROAは目標値に比べ0.4ポイント増加し4.2%となりました。
純有利子負債残高は、当初の想定以上に減少したことに加え、EBITDAの向上に伴い、純有利子負債/EBITDA倍率は目標値に比べ0.7ポイント改善し4.8倍となりました。株主資本比率につきましても、利益剰余金の積み上がりに加え、当初は想定をしていなかった2023年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債の新株予約権の行使により、株式への転換が行われたこともあり、1.6ポイント増加し21.6%となりました。
以上の結果、目標として掲げた4つの経営指標につきましては、すべて達成しました。