有価証券報告書-第31期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)
(1) 経営成績等の概要
当社は、2005年4月25日、福知山線塚口駅~尼崎駅間において、106名のお客様の尊い命を奪い、500名を超えるお客様を負傷させるという、極めて重大な事故を惹き起こしました。改めて、お亡くなりになられた方々、ご遺族の皆様、お怪我をされた方々とそのご家族の皆様に深くお詫び申しあげます。引き続き被害に遭われた方々へ真摯に向き合い対応するとともに、安全性の向上に向け、弛まぬ努力を積み重ねてまいります。
当社グループは、「JR西日本グループ中期経営計画2017」(以下、「中計2017」)とその中核をなす「安全考動計画2017」のもと、中長期的な企業価値の向上に向けて、各種施策を推進してまいりました。計画の各戦略において目標を掲げてPDCAを繰り返すことで、鉄道運転事故や部内原因による輸送障害発生件数の減少、お客様満足度の向上等の成果につなげることができました。また、北陸新幹線開業効果の最大化や大阪駅をはじめとするターミナル駅の開発、訪日観光需要の獲得等に取り組み、地域に新しい活力が生まれております。この結果、財務指標に係るKPI(重要業績評価指標)はいずれも目標を大きく上回りました。一方で、安全に関して鉄道労災防止等の目標は未達成となったほか、新幹線において重大インシデントを発生させたことを大きな課題と受け止めております。
これらの状況を踏まえ、2018年度より「JR西日本グループ中期経営計画2022」と、その中核をなす安全の具体的計画として、「JR西日本グループ鉄道安全考動計画2022」をスタートさせました。また、当社グループのありたい姿の実現を技術面から模索していく「技術ビジョン」を策定しました。
「福知山線列車事故のような事故を二度と発生させない」との変わらぬ決意のもと、基幹事業である鉄道の安全性向上に引き続き全力で取り組むとともに、さまざまなお客様のお一人おひとりの期待にお応えし、地域の皆様と一体となって、安全で豊かな社会づくりに貢献します。そして、JR西日本グループ全体で成長に向けて絶えず進化し、未来を切り拓いていきます。
当連結会計年度においては、運輸収入は緩やかな景気拡大を背景に、多客期等のご利用が好調であったことや2016年4月に発生した熊本地震の反動等により増収となりました。また、流通業、不動産業も堅調に推移しました。その結果、営業収益は前期比4.1%増の1兆5,004億円、営業利益は同8.5%増の1,913億円、経常利益は同10.6%増の1,777億円、法人税等を控除した親会社株主に帰属する当期純利益は同21.0%増の1,104億円となりました。
セグメント別の業績は、次のとおりであります。
① 運輸業
[安全性向上等]
当社グループは、「安全考動計画2017」のもと、組織全体で安全を確保する仕組みと安全最優先の風土の構築に向け、さまざまな安全の取り組みを積み重ねてきました。また、これらとともに保安設備の整備による運転事故対策、耐震補強等の自然災害対策、ホームや踏切の安全対策等のハードの充実に取り組んできました。
その結果、鉄道運転事故や部内原因による輸送障害、重大な労働災害の発生件数は総じて減少傾向となっております。一方で、前述のとおり鉄道労災防止等の目標が未達成となったほか、新幹線の重大インシデントを発生させたことを大きな課題と受け止めております。
得られた成果と、未達成となった項目等の反省を踏まえ、「JR西日本グループ鉄道安全考動計画2022」においても、継続して安全性の向上に向け取り組んでいきます。
当連結会計年度においては、「安全考動計画2017」に基づき、ハード、ソフト両面からの各種施策を推進してきました。安全関連投資は計画どおりに進捗し、このうち、ホームの安全性向上については、乗降10万人以上の駅等におけるホーム柵の整備等を引き続き進めました。また、激甚化する自然災害への対処として、地震・津波対策や豪雨対策等を推進しました。さらに、昨年12月に、「安全に関する情報」及び「リスクアセスメント情報」を一つのデータベースで管理し、全職場で閲覧、分析できる「安全マネジメント統合システム」を導入しました。
加えて、安全を支える技術の取り組みとして、安全性と作業効率の向上に向けた新たな技術の開発に取り組みました。
新幹線の重大インシデントについては、台車の異常を発見できなかったことを深く受け止め、超音波探傷による検査や、目視による入念な点検等、異常を検知する手段の充実により車両の安全確保に万全を尽くしてきました。また、運行中に異常を感じたにもかかわらず運転を継続させたことについても大きな課題と認識しており、事象発生直後から、異常時の適切な対応に向けた対策を策定し、着実に実施してきました。
また、新幹線の安全マネジメント体制の強化に向け、1月に新たに新幹線担当の代表取締役副社長を配置し、今回の事象を踏まえた安全マネジメント体制の早急な整備を図るとともに、新幹線の安全運行に係る会社内の統括等を担わせることとしました。
3月には、「新幹線重大インシデントに係る有識者会議」の社外委員より報告書を受領いたしました。当該報告書の提言内容を真摯に受け止め、経営層がリーダーシップを発揮し、技術・実行層とともに組織全体で新幹線の運行を支えるシステムに潜在するリスクを洗い出し、対策のPDCAを繰り返すことで、安全性の向上に努めていきます。具体的には、これまでの取り組みに加え、台車の異常を検知する装置の整備や、博多総合車両所のリニューアルによる車両検査のさらなる品質向上、柔軟な車両運用に向けた車両増備等に取り組んでいきます。また、6月に新幹線に係わることを全体的かつ専属的に考え、迅速な意思決定が可能となる新幹線専属の組織として、新幹線鉄道事業本部を設置しました。
これらの取り組みにより、新幹線の安全マネジメント全体のレベルアップを迅速に進めていきます。
(当連結会計年度における主な具体的取り組み)
ア.ホームの安全性向上
・ホーム柵の整備推進(大阪駅6、7番のりば(昨年4、5月))
・ホーム上の異常を駅係員に知らせる遠隔セキュリティカメラの整備推進(天王寺駅、鶴橋駅(いずれも昨年4月)、京都駅(昨年12月)、尼崎駅(3月))
・安全な介助技術等を身に付けるための「サービス介助士」資格の取得推進
イ.自然災害への対処
・山陽新幹線における逸脱防止ガードの整備推進
・紀勢線における津波対策として乗務員へのヴァーチャル・リアリティ教材の導入(昨年4月)
・在来線における、斜面補強や排水設備の整備等を行う斜面防災工事の推進
・在来線における、雨量、風速、震度等を一元的に管理する「気象災害対応システム」の整備推進
ウ.安全を支える技術の取り組み
・係員が目視で行っている検査を車上装置で行う「線路設備診断システム」の開発、山陽新幹線における試行導入(昨年9月)
・電柱建替作業を効率化する「電柱ハンドリング車」の開発、導入(昨年10月)
・在来線における、電車が車両所等へ入る際に車両状態を自動的に測定、記録する「車両状態監視装置」の開発、導入
[営業施策等]
「中計2017」の期間においては、CS(お客様満足)を基本戦略の一つに位置付け、お客様の多様なニーズにお応えする施策を推進しながら、ビジネス・観光需要の獲得、創出に取り組んできました。
当連結会計年度においても、CSの向上に向けた各種施策に取り組むとともに、新幹線における輸送サービスの品質向上、近畿エリアでの線区価値向上、西日本各エリアでの地域と連携した観光誘客を進めました。また、訪日のお客様の受入体制の整備やシニア向け会員組織(「おとなび」)の魅力向上に取り組みました。
(当連結会計年度における主な具体的取り組み)
ア.CSの向上
・お客様設備の充実(トイレ、ベンチ、待合室、車両リニューアル、情報提供設備等)
・お客様へのご案内充実(駅係員のタブレット端末の機能強化、増備(昨年6月))
・チャットによるお忘れ物対応窓口の試験設置(昨年8月)
・「列車走行位置サービス」の導入エリア・路線の拡大(3月)
イ.新幹線
・「日本の美は、北陸にあり。」キャンペーンの開催(昨年4~11月)
・コンビニエンスストア等における「e5489」決済サービスの開始(昨年5月)
・「スマートEX」サービスの開始(昨年9月)
ウ.近畿エリア
・大阪環状線への新型車両「323系」の導入推進
・京都鉄道博物館グランドオープン1周年記念イベントの開催(昨年3~5月)
・駅のリニューアル工事開始(京橋駅、玉造駅(いずれも昨年9月))
・JR京都線、おおさか東線に新駅を開業(JR総持寺駅、衣摺加美北駅(いずれも3月))
エ.西日本各エリア
・「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」の運行開始(昨年6月)
・「JR西日本30周年記念乗り放題きっぷ」の発売(昨年9月)
・SL「やまぐち」号への新製客車の投入(昨年9月)
・「幕末維新やまぐちデスティネーションキャンペーン」の開催(昨年9~12月)
・「かごしまへ、どーん!とキャンペーン」の開催(1~3月)
オ.訪日のお客様への対応、需要の創出
・「スマートEX」の訪日のお客様向けサービスの開始(昨年10月)
・広島駅総合案内所のリニューアル(昨年10月)
・近畿エリアの主要路線における「駅ナンバー」の導入(3月)
・新神戸駅での手荷物一時預かりサービスの導入(3月)
・駅、車内における多言語案内・放送の充実
カ.シニア需要の創出
・「おとなび」会員100万人突破に伴う会員向けイベントの開催(「京都鉄道博物館」貸切イベント(昨年8月)等)
バス事業、船舶事業(宮島航路)については、安全輸送を基本とし、お客様のご利用に応じた輸送改善等の実施により、利便性向上に努めました。
これらの取り組みに加え、緩やかな景気拡大を背景に、多客期等のご利用が好調であったことや2016年4月に発生した熊本地震の反動等により、運輸業セグメントの営業収益は前期比2.3%増の9,508億円、営業利益は同7.0%増の1,303億円となりました。
なお、4月1日に鉄道事業を廃止した三江線(江津駅~三次駅間)については、地域の皆様が主体となって検討された「三江線に替わる新しい公共交通ネットワーク」が、地域のニーズとまちづくりの将来像を見据えた公共交通のモデルケースとなるよう、引き続き地域の皆様と対話を進めていきます。
② 流通業
「中計2017」の期間における流通業の取り組みについては、従来のコンビニエンスストア「ハートイン」等を㈱セブン-イレブン・ジャパン(SEJ)との提携店舗へ転換する計画を前倒しで概ね完了させたほか、宿泊特化型ホテル「ヴィアイン」の積極的な出店拡大等の施策を推進しました。
当連結会計年度においては、30店舗のSEJ提携店舗への転換、新規出店を実施するとともに、昨年6月には駅改良とともに駅ナカ店舗等の整備を進めている広島駅に「アントレマルシェ」を開業しました。このほか、市中への店舗展開も進めており、同7月には「からふね屋CAFE」を「あべのキューズモール」に開業しました。
百貨店においては、訪日観光需要の獲得や京都駅ビル20周年を活用した施策の展開等に取り組みました。
さらに、流通業セグメントに区分される宿泊特化型ホテルについては、昨年4月に「ヴィアインあべの天王寺」、同8月に「ヴィアイン梅田」を開業しました。
その結果、流通業セグメントでは、SEJ提携店舗をはじめとする物販・飲食業の売上げが堅調に推移し、営業収益は前期比2.5%増の2,398億円、営業利益は同38.9%増の72億円となりました。
③ 不動産業
「中計2017」の期間においては、不動産業を、当社グループの保有資産の活用によりお客様の利便性向上や沿線価値向上につながる鉄道事業と親和性の高い事業と捉えて、ショッピングセンター(SC)の開発、運営や住宅分譲をはじめとする販売事業等を進めました。
当連結会計年度においては、当社鉄道の沿線外及びエリア外の有望市場へも事業展開し、当社の連結子会社である菱重プロパティーズ㈱が保有する不動産について、当社グループのノウハウも活用しながら、販売事業の拡大と賃貸事業の強化に取り組みました。
加えて、「LUCUA osaka」において、昨年9月に「LUCUA 1100」地下1階フロアを全面開業し、同12月に地下2階飲食ゾーン「バルチカ」を拡大しました。また、同10月には広島駅において「ekie(エキエ)」を新たに開業し、3月には北口1階に飲食ゾーン「ekie DINING」を開業しました。さらに、3月に「京都ポルタ」、「梅田エスト」、「天王寺ミオ」、「ピオレ姫路」をそれぞれリニューアルするなど、継続的なブラッシュアップを図りました。
その結果、不動産業セグメントでは、菱重プロパティーズ㈱の連結子会社化及びJR西日本不動産開発㈱を含めた販売・賃貸事業の堅調な推移により、営業収益は前期比27.5%増の1,396億円、営業利益は同11.1%増の357億円となりました。
④ その他
「中計2017」の期間におけるホテル業の取り組みについては、堅調な宿泊需要とお客様の多様なニーズに対応するため、訪日のお客様の受入体制整備等の運営力の強化や、新業態の開発を推進しました。
当連結会計年度においては、昨年10月に上質カプセルホテル「ファーストキャビンステーションあべの荘」を大阪阿倍野に開業したほか、ハイクラス宿泊主体型ホテル「ホテルヴィスキオ」を大阪、京都に開業する準備を進めました。加えて、京都梅小路に個人レジャー等のお客様向けの新業態ホテルの開発を予定しており、従来から展開する「ホテルグランヴィア」をはじめとするシティホテルや、宿泊特化型ホテル「ヴィアイン」とあわせて、多様なブランド構成で沿線外及びエリア外も含めて展開していきます。
旅行業については、訪日のお客様への営業展開を強化するとともに、法人営業における受注拡大、WEB専用商品をはじめとする個人向け商品の販売拡大等に取り組みました。
その結果、その他セグメントでは、工事業において受注が増加し、旅行業において訪日のお客様のご利用が増加しましたが、ホテル業における「三宮ターミナルホテル」閉館の影響等により、営業収益は前期比0.7%増の1,700億円となったものの、営業利益は同2.5%減の199億円となりました。
運輸業のうち、当社の鉄道事業の営業成績は以下のとおりであります。
ア.輸送実績
(注) 1. キロ程欄の上段括弧書は、外数で第三種鉄道事業のキロ程であり、それ以外は第一種鉄道事業及び第二種鉄道事業のキロ程であります。また、前事業年度比は、前事業年度末の数値を記載しております。
2. 客車走行キロ数には、試運転、営業回送を含めておりません。
3. 輸送人キロ欄の近畿圏は、近畿統括本部の地域について記載しております。
4. 乗車効率欄の前事業年度比は、前事業年度の数値を記載しております。
なお、乗車効率は次の方法により算出しております。
イ.収入実績
(注) 旅客収入欄の近畿圏は、近畿統括本部の地域について記載しております。
(2) 資産、負債及び純資産の状況
当連結会計年度末の総資産額は、3兆729億円となり、前連結会計年度末と比較し、651億円増加しました。これは主に、現金及び預金、たな卸資産(不動産販売等)の増加に伴い、流動資産が増加したことによるものです。
負債総額は、1兆9,566億円となり、前連結会計年度末と比較し、185億円減少しました。これは主に、退職金の支出による退職給付に係る負債の減少によるものです。
純資産総額は、1兆1,163億円となり、前連結会計年度末と比較し、836億円増加しました。これは主に、利益剰余金の増加によるものです。
(3) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ381億円多い1,014億円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
税金等調整前当期純利益が増加したことなどから、営業活動において得た資金は前連結会計年度に比べ409億円多い2,751億円となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出が減少したことなどから、投資活動において支出した資金は前連結会計年度に比べ1,294億円少ない1,663億円となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
社債の償還による支出が増加したことなどから、財務活動において支出した資金は前連結会計年度に比べ1,157億円多い714億円となりました。
(4) 生産、受注及び販売の状況
当社及びその連結子会社(以下「当社グループ」という。)の大多数は、受注生産形態を取らない業態であります。このため、生産、受注及び販売の状況については、「3[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析]」における各事業のセグメント業績に関連付けて示しております。
(5) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
文中における将来に関する事項は、当有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって採用している「重要な会計方針」については、「第5[経理の状況][注記事項](連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しているため省略しております。なお、将来の見通しに関する記述については、現在入手可能な情報に基づき作成したものであり、実際の業績・結果は異なる場合があります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループは、基幹事業である鉄道事業において安全性の向上に全力で取り組むとともに、その他のグループ事業においては、各事業の特性を活かした様々な施策の展開及び保有資産の有効活用等に努めてまいりました。
当連結会計年度においては、運輸収入は緩やかな景気拡大を背景に、多客期等のご利用が好調であったことや、2016年4月に発生した熊本地震の影響の反動等による山陽新幹線のご利用増加があったこと等に加え、流通業、不動産業も堅調に推移しました。その結果、営業収益、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益のいずれも増加しました。
ア.営業収益
営業収益は、前連結会計年度に比べ4.1%、590億円増加の1兆5,004億円となりました。
運輸業セグメントについては、当社の運輸収入の増加などにより、営業収益は前連結会計年度に比べ2.3%、217億円増加の9,508億円となりました。
このうち、新幹線については、山陽新幹線においてビジネス・観光ともにご利用が堅調で、ゴールデンウィークなどの曜日配列によりご利用が増加したほか、前年度発生した熊本地震の影響の反動により九州方面のご利用が大幅に増加しました。一方、北陸新幹線においては対抗輸送機関との競争等により、対首都圏を中心にご利用が前年度を下回りました。これらの結果により、前連結会計年度に比べ3.0%、131億円増加の4,477億円となりました。
一方、在来線については、近畿エリアでの線区価値向上に向けた施策や、西日本各エリアでの地域と連携した観光誘客を進めるとともに、訪日のお客様の受入体制の整備やシニア向け会員組織(「おとなび」)の魅力向上に取り組み、前連結会計年度に比べ1.2%、50億円増加の4,200億円となりました。
流通業セグメントについては、㈱セブン-イレブン・ジャパンとの提携店舗が当期新たに30店舗開業するとともに、駅改良にあわせて駅ナカ店舗等の整備を進めている広島駅に「アントレマルシェ」を開業したほか、市中への店舗展開も進めており、「からふね屋CAFE」を「あべのキューズモール」に開業しました。また、百貨店においては、訪日観光需要の獲得や京都駅ビル20周年を活用した施策の展開等に取り組みました。さらに、流通業セグメントに区分される宿泊特化型ホテルについては、「ヴィアインあべの天王寺」、「ヴィアイン梅田」を開業しました。その結果、前連結会計年度に比べ2.5%、59億円増加の2,398億円となりました。
不動産業セグメントについては、当社鉄道の沿線外及びエリア外の有望市場へも事業展開し、当社の連結子会社である菱重プロパティーズ㈱が保有する不動産について、当社グループのノウハウも活用しながら、販売事業の拡大と賃貸事業の強化に取り組んだほか、「LUCUA osaka」において、「LUCUA 1100」地下1階フロアを全面開業し、地下2階飲食ゾーン「バルチカ」を拡大したこと等により、前連結会計年度に比べ27.5%、300億円増加の1,396億円となりました。
その他セグメントについては、上質カプセルホテル「ファーストキャビンステーションあべの荘」を大阪阿倍野に開業したほか、ハイクラス宿泊主体型ホテル「ホテルヴィスキオ」を大阪、京都に開業する準備を進めました。また、旅行業については、訪日の観光需要の獲得に向けた営業展開の強化等により、ご利用が増加したことや、工事業における受注が増加したことにより、前連結会計年度に比べ0.7%、12億円増加の1,700億円となりました。
イ.営業費
人件費が単価の減少等により減ったものの、「TWILIGHT EXPRESS瑞風」の運行開始に取り組んだほか、システム関連経費による業務費の増加、安全性向上施策に引き続き取り組んだことによる修繕費の増加、燃料費調整制度による動力費の増加により、前連結会計年度に比べ3.5%、440億円増加の1兆3,090億円となりました。
ウ.営業利益
営業利益は、前連結会計年度に比べ8.5%、149億円増加の1,913億円となりました。
エ.営業外損益
営業外損益については、支払利息の減少などにより、前連結会計年度に比べ20億円改善し、135億円の損失となりました。
オ.経常利益
経常利益は、前連結会計年度に比べ10.6%、169億円増加の1,777億円となりました。
カ.特別損益
特別損益については、前連結会計年度に三江線の線区整理損失引当金繰入や減損損失計上があったことの反動などで159億円改善し、71億円の損失となりました。
キ.親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ21.0%、192億円増加の1,104億円となりました。
③ 経営成績に重要な影響を与える要因
ア.収益に影響する要因
[運輸業]
運輸業セグメントは鉄道運輸収入が大宗を占めております。鉄道運輸収入は、主に鉄道利用者数により左右され、航空機を含めた他の輸送モード、同業他社との競争や、経済情勢、少子高齢化等、多くの要因により影響を受けます。また、鉄道利用者は、安全性、信頼性をベースに、所要時間・ネットワーク性・運賃・快適性を基準として選択を行うと考えております。
新幹線の収入は、主として、ビジネスや観光旅行客の数に左右され、経済環境や航空機との競争、訪日観光客の動向などに影響を受けます。
アーバンネットワークの収入は通勤・通学客が多いことから、経済情勢の影響を受けにくいと考えておりますが、少子高齢化や都市化等の人口推移による影響を受けると考えております。
その他在来線のうち、都市間輸送の収入は経済情勢や高速バス、自家用車との競争による影響を受けます。また、ローカル線の収入は自家用車との競争や地域の経済情勢及び人口の推移による影響を受けます。
[流通業]
流通業セグメントの収入は、主に百貨店業、物品販売業及び飲食業からの収入で構成されております。当セグメントの収入は、経済情勢及び他の百貨店、物販店舗、レストランとの競争に左右されます。当セグメントの事業の多くが駅やその周辺で行われているため、鉄道輸送量も影響を受ける要因です。しかし、駅は比較的安定したご利用があるため、当セグメントの収益は同業他社に比べ、これらの影響は少ないと考えております。また、新規店舗の開発や既存店舗の廃止によっても左右されます。
[不動産業]
不動産業セグメント収入は、主に駅やその周辺施設の賃貸収入、沿線におけるマンションの分譲販売により得られます。当セグメントは、経済情勢の影響を受けることや、マンション分譲事業の販売数の増減により業績が変動するものの、賃貸事業において、駅は比較的安定したご利用があり、テナントは立地の利便性から駅構内及びその周辺オフィスを好むことから、同業他社に比べ、経済情勢による影響は少ないと考えております。
[その他]
その他セグメントの収入は、主としてホテル業及び旅行業によるものです。ホテル業の収益は、経済情勢や宿泊料金、他ホテルとの競争、訪日観光客の動向に影響されます。また、旅行業による収入は主に他旅行業者との競争、経済情勢やテロなど旅行を妨げる状況により影響を受けます。
その他セグメントには、ホテル業、旅行業のほか、建設事業、広告業等がありますが、そのほとんどが基幹事業である鉄道事業の顧客基盤、駅及びその他の施設の強化を目的としたものであります。
イ.費用に影響する要因
[人件費]
当社は、年齢構成等により退職者数が多い状況にある中で、新規採用等により事業運営に必要な社員数を確保してきております。当事業年度の人件費は2,214億円となっております。
なお、高年齢層の人材を確保し、一層円滑な技術継承を図ること及び高年齢者雇用安定法など法令への対応の観点から、定年後の再雇用制度を設定しております。また、将来にわたり事業を運営しうる体制を構築するという視点で、長期雇用を前提とした新卒採用を中心に採用を行うほか、多様な人材確保等の観点から、契約社員からの採用、中途採用等を実施しており、当事業年度においては約900名の採用を行いました。
[物件費]
当社は、鉄道事業の特徴である、(ⅰ)多くの設備を有し、安全の確保のために必要なメンテナンスに係るコストの比重が大きい、(ⅱ)収益に連動しない「固定費用」の割合が高いなどの事情から、安全性の確保を大前提として、メンテナンスが容易な車両及び設備の導入、機械化、既存のインフラの改良などにより、これらの経費を構造的に削減する取り組みを行っております。
しかしながら、福知山線列車事故の責任とその重大性及び新幹線重大インシデントを重く受け止め、安全で安心・信頼していただける鉄道を築き上げるために全力で取り組んでいるところであり、当分の間、安全性の向上に必要となる費用の増加が想定されます。
また、対抗輸送機関との競争力向上のため、サービスレベルの向上、販売促進のためのIT化、効率化に寄与する外注化などによる費用の増加も想定されます。
さらに、電気料金の値上げによる費用の増加が想定されます。
[線路使用料等]
当社は、JR東西線を関西高速鉄道株式会社から借り受けており、2004年度以降の線路使用料の年額については、3年度毎に協議し、金利変動等を勘案して決定することとなっております。また、2011年度以降の線路使用料については減額を行い、当事業年度の費用は152億円となっております。
[支払利息]
営業外費用のうち、重要なものとして支払利息があります。当社グループとしては、経営の安定性を保つために長期債務残高や支払利息の水準を注視しております。当連結会計年度の当社グループの支払利息については209億円となり、前連結会計年度に比べ14億円減少しております。
④ 流動性と資本の源泉
ア.キャッシュ・フロー
[営業活動によるキャッシュ・フロー]
税金等調整前当期純利益が増加したことなどから、営業活動において得た資金は前連結会計年度に比べ409億円多い2,751億円となりました。
[投資活動によるキャッシュ・フロー]
連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出が減少したことなどから、投資活動において支出した資金は前連結会計年度に比べ1,294億円少ない1,663億円となりました。
[財務活動によるキャッシュ・フロー]
社債の償還による支出が増加したことなどから、財務活動において支出した資金は前連結会計年度に比べ1,157億円多い714億円となりました。
以上の結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末に比べ381億円多い1,014億円となりました。
イ.資本需要と設備投資
当社グループは、当連結会計年度において総額1,995億円の設備投資を実施し、そのうち運輸業では1,544億円、流通業、不動産業及びその他では、28億円、357億円及び65億円をそれぞれ実施しました。運輸業に関する設備投資においては、安全性の向上を中心とした鉄道インフラの整備や、老朽車両の更新等を目的とした新型車両の購入を行っております。流通業、不動産業及びその他における当社グループの設備投資においては、新設備の建設や老朽設備の改築等を行っております。
さらに、福知山線列車事故の責任とその重大性及び新幹線重大インシデントを重く受け止め、安全で安心・信頼していただける鉄道を築き上げるために全力で取り組んでいるところであり、安全をより一層高めるために必要な運転保安設備の整備等ハード対策を盛り込むとともに、今後も様々な検討を行うこととしております。
ウ.流動性
当社グループは、鉄道事業を中心に日々の収入金が潤沢にあり、流動性資金は十分な水準を確保しているものと考えております。
一方、資金効率の向上は企業経営にとって極めて重要と認識しており、その一環として、2002年10月からキャッシュ・マネジメント・サービス(CMS)を導入し、グループ内資金の有効活用を図っております。
エ.資金調達
資金調達については、既存債務の返済資金や設備投資資金等のうち当社グループのキャッシュ・フローで賄いきれない分の調達を主としており、その調達手段は社債及び銀行等からの長期借入金など、市場動向や金利動向等を総合的に勘案しながら決定しております。また、短期的に資金を必要とする場合には、主として短期社債で賄うことを基本としております。
さらに、地震が発生した場合でも、あらかじめ定めた条件によって資金調達が可能なコミットメントライン契約を締結しております。
当社は、2005年4月25日、福知山線塚口駅~尼崎駅間において、106名のお客様の尊い命を奪い、500名を超えるお客様を負傷させるという、極めて重大な事故を惹き起こしました。改めて、お亡くなりになられた方々、ご遺族の皆様、お怪我をされた方々とそのご家族の皆様に深くお詫び申しあげます。引き続き被害に遭われた方々へ真摯に向き合い対応するとともに、安全性の向上に向け、弛まぬ努力を積み重ねてまいります。
当社グループは、「JR西日本グループ中期経営計画2017」(以下、「中計2017」)とその中核をなす「安全考動計画2017」のもと、中長期的な企業価値の向上に向けて、各種施策を推進してまいりました。計画の各戦略において目標を掲げてPDCAを繰り返すことで、鉄道運転事故や部内原因による輸送障害発生件数の減少、お客様満足度の向上等の成果につなげることができました。また、北陸新幹線開業効果の最大化や大阪駅をはじめとするターミナル駅の開発、訪日観光需要の獲得等に取り組み、地域に新しい活力が生まれております。この結果、財務指標に係るKPI(重要業績評価指標)はいずれも目標を大きく上回りました。一方で、安全に関して鉄道労災防止等の目標は未達成となったほか、新幹線において重大インシデントを発生させたことを大きな課題と受け止めております。
これらの状況を踏まえ、2018年度より「JR西日本グループ中期経営計画2022」と、その中核をなす安全の具体的計画として、「JR西日本グループ鉄道安全考動計画2022」をスタートさせました。また、当社グループのありたい姿の実現を技術面から模索していく「技術ビジョン」を策定しました。
「福知山線列車事故のような事故を二度と発生させない」との変わらぬ決意のもと、基幹事業である鉄道の安全性向上に引き続き全力で取り組むとともに、さまざまなお客様のお一人おひとりの期待にお応えし、地域の皆様と一体となって、安全で豊かな社会づくりに貢献します。そして、JR西日本グループ全体で成長に向けて絶えず進化し、未来を切り拓いていきます。
当連結会計年度においては、運輸収入は緩やかな景気拡大を背景に、多客期等のご利用が好調であったことや2016年4月に発生した熊本地震の反動等により増収となりました。また、流通業、不動産業も堅調に推移しました。その結果、営業収益は前期比4.1%増の1兆5,004億円、営業利益は同8.5%増の1,913億円、経常利益は同10.6%増の1,777億円、法人税等を控除した親会社株主に帰属する当期純利益は同21.0%増の1,104億円となりました。
セグメント別の業績は、次のとおりであります。
① 運輸業
[安全性向上等]
当社グループは、「安全考動計画2017」のもと、組織全体で安全を確保する仕組みと安全最優先の風土の構築に向け、さまざまな安全の取り組みを積み重ねてきました。また、これらとともに保安設備の整備による運転事故対策、耐震補強等の自然災害対策、ホームや踏切の安全対策等のハードの充実に取り組んできました。
その結果、鉄道運転事故や部内原因による輸送障害、重大な労働災害の発生件数は総じて減少傾向となっております。一方で、前述のとおり鉄道労災防止等の目標が未達成となったほか、新幹線の重大インシデントを発生させたことを大きな課題と受け止めております。
得られた成果と、未達成となった項目等の反省を踏まえ、「JR西日本グループ鉄道安全考動計画2022」においても、継続して安全性の向上に向け取り組んでいきます。
当連結会計年度においては、「安全考動計画2017」に基づき、ハード、ソフト両面からの各種施策を推進してきました。安全関連投資は計画どおりに進捗し、このうち、ホームの安全性向上については、乗降10万人以上の駅等におけるホーム柵の整備等を引き続き進めました。また、激甚化する自然災害への対処として、地震・津波対策や豪雨対策等を推進しました。さらに、昨年12月に、「安全に関する情報」及び「リスクアセスメント情報」を一つのデータベースで管理し、全職場で閲覧、分析できる「安全マネジメント統合システム」を導入しました。
加えて、安全を支える技術の取り組みとして、安全性と作業効率の向上に向けた新たな技術の開発に取り組みました。
新幹線の重大インシデントについては、台車の異常を発見できなかったことを深く受け止め、超音波探傷による検査や、目視による入念な点検等、異常を検知する手段の充実により車両の安全確保に万全を尽くしてきました。また、運行中に異常を感じたにもかかわらず運転を継続させたことについても大きな課題と認識しており、事象発生直後から、異常時の適切な対応に向けた対策を策定し、着実に実施してきました。
また、新幹線の安全マネジメント体制の強化に向け、1月に新たに新幹線担当の代表取締役副社長を配置し、今回の事象を踏まえた安全マネジメント体制の早急な整備を図るとともに、新幹線の安全運行に係る会社内の統括等を担わせることとしました。
3月には、「新幹線重大インシデントに係る有識者会議」の社外委員より報告書を受領いたしました。当該報告書の提言内容を真摯に受け止め、経営層がリーダーシップを発揮し、技術・実行層とともに組織全体で新幹線の運行を支えるシステムに潜在するリスクを洗い出し、対策のPDCAを繰り返すことで、安全性の向上に努めていきます。具体的には、これまでの取り組みに加え、台車の異常を検知する装置の整備や、博多総合車両所のリニューアルによる車両検査のさらなる品質向上、柔軟な車両運用に向けた車両増備等に取り組んでいきます。また、6月に新幹線に係わることを全体的かつ専属的に考え、迅速な意思決定が可能となる新幹線専属の組織として、新幹線鉄道事業本部を設置しました。
これらの取り組みにより、新幹線の安全マネジメント全体のレベルアップを迅速に進めていきます。
(当連結会計年度における主な具体的取り組み)
ア.ホームの安全性向上
・ホーム柵の整備推進(大阪駅6、7番のりば(昨年4、5月))
・ホーム上の異常を駅係員に知らせる遠隔セキュリティカメラの整備推進(天王寺駅、鶴橋駅(いずれも昨年4月)、京都駅(昨年12月)、尼崎駅(3月))
・安全な介助技術等を身に付けるための「サービス介助士」資格の取得推進
イ.自然災害への対処
・山陽新幹線における逸脱防止ガードの整備推進
・紀勢線における津波対策として乗務員へのヴァーチャル・リアリティ教材の導入(昨年4月)
・在来線における、斜面補強や排水設備の整備等を行う斜面防災工事の推進
・在来線における、雨量、風速、震度等を一元的に管理する「気象災害対応システム」の整備推進
ウ.安全を支える技術の取り組み
・係員が目視で行っている検査を車上装置で行う「線路設備診断システム」の開発、山陽新幹線における試行導入(昨年9月)
・電柱建替作業を効率化する「電柱ハンドリング車」の開発、導入(昨年10月)
・在来線における、電車が車両所等へ入る際に車両状態を自動的に測定、記録する「車両状態監視装置」の開発、導入
[営業施策等]
「中計2017」の期間においては、CS(お客様満足)を基本戦略の一つに位置付け、お客様の多様なニーズにお応えする施策を推進しながら、ビジネス・観光需要の獲得、創出に取り組んできました。
当連結会計年度においても、CSの向上に向けた各種施策に取り組むとともに、新幹線における輸送サービスの品質向上、近畿エリアでの線区価値向上、西日本各エリアでの地域と連携した観光誘客を進めました。また、訪日のお客様の受入体制の整備やシニア向け会員組織(「おとなび」)の魅力向上に取り組みました。
(当連結会計年度における主な具体的取り組み)
ア.CSの向上
・お客様設備の充実(トイレ、ベンチ、待合室、車両リニューアル、情報提供設備等)
・お客様へのご案内充実(駅係員のタブレット端末の機能強化、増備(昨年6月))
・チャットによるお忘れ物対応窓口の試験設置(昨年8月)
・「列車走行位置サービス」の導入エリア・路線の拡大(3月)
イ.新幹線
・「日本の美は、北陸にあり。」キャンペーンの開催(昨年4~11月)
・コンビニエンスストア等における「e5489」決済サービスの開始(昨年5月)
・「スマートEX」サービスの開始(昨年9月)
ウ.近畿エリア
・大阪環状線への新型車両「323系」の導入推進
・京都鉄道博物館グランドオープン1周年記念イベントの開催(昨年3~5月)
・駅のリニューアル工事開始(京橋駅、玉造駅(いずれも昨年9月))
・JR京都線、おおさか東線に新駅を開業(JR総持寺駅、衣摺加美北駅(いずれも3月))
エ.西日本各エリア
・「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」の運行開始(昨年6月)
・「JR西日本30周年記念乗り放題きっぷ」の発売(昨年9月)
・SL「やまぐち」号への新製客車の投入(昨年9月)
・「幕末維新やまぐちデスティネーションキャンペーン」の開催(昨年9~12月)
・「かごしまへ、どーん!とキャンペーン」の開催(1~3月)
オ.訪日のお客様への対応、需要の創出
・「スマートEX」の訪日のお客様向けサービスの開始(昨年10月)
・広島駅総合案内所のリニューアル(昨年10月)
・近畿エリアの主要路線における「駅ナンバー」の導入(3月)
・新神戸駅での手荷物一時預かりサービスの導入(3月)
・駅、車内における多言語案内・放送の充実
カ.シニア需要の創出
・「おとなび」会員100万人突破に伴う会員向けイベントの開催(「京都鉄道博物館」貸切イベント(昨年8月)等)
バス事業、船舶事業(宮島航路)については、安全輸送を基本とし、お客様のご利用に応じた輸送改善等の実施により、利便性向上に努めました。
これらの取り組みに加え、緩やかな景気拡大を背景に、多客期等のご利用が好調であったことや2016年4月に発生した熊本地震の反動等により、運輸業セグメントの営業収益は前期比2.3%増の9,508億円、営業利益は同7.0%増の1,303億円となりました。
なお、4月1日に鉄道事業を廃止した三江線(江津駅~三次駅間)については、地域の皆様が主体となって検討された「三江線に替わる新しい公共交通ネットワーク」が、地域のニーズとまちづくりの将来像を見据えた公共交通のモデルケースとなるよう、引き続き地域の皆様と対話を進めていきます。
② 流通業
「中計2017」の期間における流通業の取り組みについては、従来のコンビニエンスストア「ハートイン」等を㈱セブン-イレブン・ジャパン(SEJ)との提携店舗へ転換する計画を前倒しで概ね完了させたほか、宿泊特化型ホテル「ヴィアイン」の積極的な出店拡大等の施策を推進しました。
当連結会計年度においては、30店舗のSEJ提携店舗への転換、新規出店を実施するとともに、昨年6月には駅改良とともに駅ナカ店舗等の整備を進めている広島駅に「アントレマルシェ」を開業しました。このほか、市中への店舗展開も進めており、同7月には「からふね屋CAFE」を「あべのキューズモール」に開業しました。
百貨店においては、訪日観光需要の獲得や京都駅ビル20周年を活用した施策の展開等に取り組みました。
さらに、流通業セグメントに区分される宿泊特化型ホテルについては、昨年4月に「ヴィアインあべの天王寺」、同8月に「ヴィアイン梅田」を開業しました。
その結果、流通業セグメントでは、SEJ提携店舗をはじめとする物販・飲食業の売上げが堅調に推移し、営業収益は前期比2.5%増の2,398億円、営業利益は同38.9%増の72億円となりました。
③ 不動産業
「中計2017」の期間においては、不動産業を、当社グループの保有資産の活用によりお客様の利便性向上や沿線価値向上につながる鉄道事業と親和性の高い事業と捉えて、ショッピングセンター(SC)の開発、運営や住宅分譲をはじめとする販売事業等を進めました。
当連結会計年度においては、当社鉄道の沿線外及びエリア外の有望市場へも事業展開し、当社の連結子会社である菱重プロパティーズ㈱が保有する不動産について、当社グループのノウハウも活用しながら、販売事業の拡大と賃貸事業の強化に取り組みました。
加えて、「LUCUA osaka」において、昨年9月に「LUCUA 1100」地下1階フロアを全面開業し、同12月に地下2階飲食ゾーン「バルチカ」を拡大しました。また、同10月には広島駅において「ekie(エキエ)」を新たに開業し、3月には北口1階に飲食ゾーン「ekie DINING」を開業しました。さらに、3月に「京都ポルタ」、「梅田エスト」、「天王寺ミオ」、「ピオレ姫路」をそれぞれリニューアルするなど、継続的なブラッシュアップを図りました。
その結果、不動産業セグメントでは、菱重プロパティーズ㈱の連結子会社化及びJR西日本不動産開発㈱を含めた販売・賃貸事業の堅調な推移により、営業収益は前期比27.5%増の1,396億円、営業利益は同11.1%増の357億円となりました。
④ その他
「中計2017」の期間におけるホテル業の取り組みについては、堅調な宿泊需要とお客様の多様なニーズに対応するため、訪日のお客様の受入体制整備等の運営力の強化や、新業態の開発を推進しました。
当連結会計年度においては、昨年10月に上質カプセルホテル「ファーストキャビンステーションあべの荘」を大阪阿倍野に開業したほか、ハイクラス宿泊主体型ホテル「ホテルヴィスキオ」を大阪、京都に開業する準備を進めました。加えて、京都梅小路に個人レジャー等のお客様向けの新業態ホテルの開発を予定しており、従来から展開する「ホテルグランヴィア」をはじめとするシティホテルや、宿泊特化型ホテル「ヴィアイン」とあわせて、多様なブランド構成で沿線外及びエリア外も含めて展開していきます。
旅行業については、訪日のお客様への営業展開を強化するとともに、法人営業における受注拡大、WEB専用商品をはじめとする個人向け商品の販売拡大等に取り組みました。
その結果、その他セグメントでは、工事業において受注が増加し、旅行業において訪日のお客様のご利用が増加しましたが、ホテル業における「三宮ターミナルホテル」閉館の影響等により、営業収益は前期比0.7%増の1,700億円となったものの、営業利益は同2.5%減の199億円となりました。
運輸業のうち、当社の鉄道事業の営業成績は以下のとおりであります。
ア.輸送実績
区分 | 単位 | 当事業年度 (自 2017年4月1日 至 2018年3月31日) | ||||||
前事業年度比 | ||||||||
営業日数 | 日 | 365 | ― | |||||
新幹線 | キロ | 812.6 | 812.6 | |||||
キロ程 | 在来線 | キロ | ( 28.0 ) 4,196.1 | ( 28.0 ) 4,196.1 | ||||
計 | キロ | ( 28.0 ) 5,008.7 | ( 28.0 ) 5,008.7 | |||||
客車走行キロ | 新幹線 | 千キロ | 556,749 | 100.8 | % | |||
在来線 | 千キロ | 793,050 | 100.7 | |||||
計 | 千キロ | 1,349,800 | 100.8 | |||||
定期 | 千人 | 1,176,553 | 101.0 | |||||
輸送人員 | 定期外 | 千人 | 736,678 | 101.6 | ||||
計 | 千人 | 1,913,232 | 101.2 | |||||
輸送人キロ | 定期 | 千人キロ | 846,594 | 103.8 | ||||
新幹線 | 定期外 | 千人キロ | 20,176,074 | 103.3 | ||||
計 | 千人キロ | 21,022,669 | 103.3 | |||||
在来線 | 近畿圏 | 定期 | 千人キロ | 18,787,771 | 100.5 | |||
定期外 | 千人キロ | 11,084,346 | 101.7 | |||||
計 | 千人キロ | 29,872,118 | 100.9 | |||||
その他 | 定期 | 千人キロ | 4,043,604 | 100.2 | ||||
定期外 | 千人キロ | 4,353,565 | 101.3 | |||||
計 | 千人キロ | 8,397,170 | 100.8 | |||||
計 | 定期 | 千人キロ | 22,831,376 | 100.5 | ||||
定期外 | 千人キロ | 15,437,912 | 101.6 | |||||
計 | 千人キロ | 38,269,288 | 100.9 | |||||
定期 | 千人キロ | 23,677,970 | 100.6 | |||||
合計 | 定期外 | 千人キロ | 35,613,987 | 102.5 | ||||
計 | 千人キロ | 59,291,958 | 101.8 | |||||
新幹線 | % | 48.4 | 47.2 | |||||
乗車効率 | 在来線 | % | 38.6 | 38.5 | ||||
計 | % | 41.6 | 41.1 |
(注) 1. キロ程欄の上段括弧書は、外数で第三種鉄道事業のキロ程であり、それ以外は第一種鉄道事業及び第二種鉄道事業のキロ程であります。また、前事業年度比は、前事業年度末の数値を記載しております。
2. 客車走行キロ数には、試運転、営業回送を含めておりません。
3. 輸送人キロ欄の近畿圏は、近畿統括本部の地域について記載しております。
4. 乗車効率欄の前事業年度比は、前事業年度の数値を記載しております。
なお、乗車効率は次の方法により算出しております。
乗車効率= | 輸送人キロ |
客車走行キロ×客車平均定員(標準定員) |
イ.収入実績
区分 | 単位 | 当事業年度 (自 2017年4月1日 至 2018年3月31日) | ||||||
前事業年度比 | ||||||||
旅客運輸収入 | 旅客収入 | 新幹線 | 定期 | 百万円 | 10,787 | 105.0 | % | |
定期外 | 百万円 | 436,995 | 103.0 | |||||
計 | 百万円 | 447,782 | 103.0 | |||||
在来線 | 近畿圏 | 定期 | 百万円 | 116,993 | 100.5 | |||
定期外 | 百万円 | 192,025 | 101.8 | |||||
計 | 百万円 | 309,019 | 101.3 | |||||
その他 | 定期 | 百万円 | 25,100 | 99.9 | ||||
定期外 | 百万円 | 85,963 | 101.2 | |||||
計 | 百万円 | 111,064 | 100.9 | |||||
計 | 定期 | 百万円 | 142,094 | 100.4 | ||||
定期外 | 百万円 | 277,988 | 101.6 | |||||
計 | 百万円 | 420,083 | 101.2 | |||||
合計 | 定期 | 百万円 | 152,882 | 100.7 | ||||
定期外 | 百万円 | 714,983 | 102.5 | |||||
計 | 百万円 | 867,866 | 102.1 | |||||
荷物収入 | 百万円 | 4 | 77.3 | |||||
合計 | 百万円 | 867,870 | 102.1 | |||||
鉄道線路使用料収入 | 百万円 | 4,743 | 102.4 | |||||
運輸雑収 | 百万円 | 75,262 | 101.0 | |||||
収入合計 | 百万円 | 947,876 | 102.0 |
(注) 旅客収入欄の近畿圏は、近畿統括本部の地域について記載しております。
(2) 資産、負債及び純資産の状況
当連結会計年度末の総資産額は、3兆729億円となり、前連結会計年度末と比較し、651億円増加しました。これは主に、現金及び預金、たな卸資産(不動産販売等)の増加に伴い、流動資産が増加したことによるものです。
負債総額は、1兆9,566億円となり、前連結会計年度末と比較し、185億円減少しました。これは主に、退職金の支出による退職給付に係る負債の減少によるものです。
純資産総額は、1兆1,163億円となり、前連結会計年度末と比較し、836億円増加しました。これは主に、利益剰余金の増加によるものです。
(3) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ381億円多い1,014億円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
税金等調整前当期純利益が増加したことなどから、営業活動において得た資金は前連結会計年度に比べ409億円多い2,751億円となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出が減少したことなどから、投資活動において支出した資金は前連結会計年度に比べ1,294億円少ない1,663億円となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
社債の償還による支出が増加したことなどから、財務活動において支出した資金は前連結会計年度に比べ1,157億円多い714億円となりました。
(4) 生産、受注及び販売の状況
当社及びその連結子会社(以下「当社グループ」という。)の大多数は、受注生産形態を取らない業態であります。このため、生産、受注及び販売の状況については、「3[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析]」における各事業のセグメント業績に関連付けて示しております。
(5) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
文中における将来に関する事項は、当有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって採用している「重要な会計方針」については、「第5[経理の状況][注記事項](連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しているため省略しております。なお、将来の見通しに関する記述については、現在入手可能な情報に基づき作成したものであり、実際の業績・結果は異なる場合があります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループは、基幹事業である鉄道事業において安全性の向上に全力で取り組むとともに、その他のグループ事業においては、各事業の特性を活かした様々な施策の展開及び保有資産の有効活用等に努めてまいりました。
当連結会計年度においては、運輸収入は緩やかな景気拡大を背景に、多客期等のご利用が好調であったことや、2016年4月に発生した熊本地震の影響の反動等による山陽新幹線のご利用増加があったこと等に加え、流通業、不動産業も堅調に推移しました。その結果、営業収益、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益のいずれも増加しました。
ア.営業収益
営業収益は、前連結会計年度に比べ4.1%、590億円増加の1兆5,004億円となりました。
運輸業セグメントについては、当社の運輸収入の増加などにより、営業収益は前連結会計年度に比べ2.3%、217億円増加の9,508億円となりました。
このうち、新幹線については、山陽新幹線においてビジネス・観光ともにご利用が堅調で、ゴールデンウィークなどの曜日配列によりご利用が増加したほか、前年度発生した熊本地震の影響の反動により九州方面のご利用が大幅に増加しました。一方、北陸新幹線においては対抗輸送機関との競争等により、対首都圏を中心にご利用が前年度を下回りました。これらの結果により、前連結会計年度に比べ3.0%、131億円増加の4,477億円となりました。
一方、在来線については、近畿エリアでの線区価値向上に向けた施策や、西日本各エリアでの地域と連携した観光誘客を進めるとともに、訪日のお客様の受入体制の整備やシニア向け会員組織(「おとなび」)の魅力向上に取り組み、前連結会計年度に比べ1.2%、50億円増加の4,200億円となりました。
流通業セグメントについては、㈱セブン-イレブン・ジャパンとの提携店舗が当期新たに30店舗開業するとともに、駅改良にあわせて駅ナカ店舗等の整備を進めている広島駅に「アントレマルシェ」を開業したほか、市中への店舗展開も進めており、「からふね屋CAFE」を「あべのキューズモール」に開業しました。また、百貨店においては、訪日観光需要の獲得や京都駅ビル20周年を活用した施策の展開等に取り組みました。さらに、流通業セグメントに区分される宿泊特化型ホテルについては、「ヴィアインあべの天王寺」、「ヴィアイン梅田」を開業しました。その結果、前連結会計年度に比べ2.5%、59億円増加の2,398億円となりました。
不動産業セグメントについては、当社鉄道の沿線外及びエリア外の有望市場へも事業展開し、当社の連結子会社である菱重プロパティーズ㈱が保有する不動産について、当社グループのノウハウも活用しながら、販売事業の拡大と賃貸事業の強化に取り組んだほか、「LUCUA osaka」において、「LUCUA 1100」地下1階フロアを全面開業し、地下2階飲食ゾーン「バルチカ」を拡大したこと等により、前連結会計年度に比べ27.5%、300億円増加の1,396億円となりました。
その他セグメントについては、上質カプセルホテル「ファーストキャビンステーションあべの荘」を大阪阿倍野に開業したほか、ハイクラス宿泊主体型ホテル「ホテルヴィスキオ」を大阪、京都に開業する準備を進めました。また、旅行業については、訪日の観光需要の獲得に向けた営業展開の強化等により、ご利用が増加したことや、工事業における受注が増加したことにより、前連結会計年度に比べ0.7%、12億円増加の1,700億円となりました。
イ.営業費
人件費が単価の減少等により減ったものの、「TWILIGHT EXPRESS瑞風」の運行開始に取り組んだほか、システム関連経費による業務費の増加、安全性向上施策に引き続き取り組んだことによる修繕費の増加、燃料費調整制度による動力費の増加により、前連結会計年度に比べ3.5%、440億円増加の1兆3,090億円となりました。
ウ.営業利益
営業利益は、前連結会計年度に比べ8.5%、149億円増加の1,913億円となりました。
エ.営業外損益
営業外損益については、支払利息の減少などにより、前連結会計年度に比べ20億円改善し、135億円の損失となりました。
オ.経常利益
経常利益は、前連結会計年度に比べ10.6%、169億円増加の1,777億円となりました。
カ.特別損益
特別損益については、前連結会計年度に三江線の線区整理損失引当金繰入や減損損失計上があったことの反動などで159億円改善し、71億円の損失となりました。
キ.親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ21.0%、192億円増加の1,104億円となりました。
③ 経営成績に重要な影響を与える要因
ア.収益に影響する要因
[運輸業]
運輸業セグメントは鉄道運輸収入が大宗を占めております。鉄道運輸収入は、主に鉄道利用者数により左右され、航空機を含めた他の輸送モード、同業他社との競争や、経済情勢、少子高齢化等、多くの要因により影響を受けます。また、鉄道利用者は、安全性、信頼性をベースに、所要時間・ネットワーク性・運賃・快適性を基準として選択を行うと考えております。
新幹線の収入は、主として、ビジネスや観光旅行客の数に左右され、経済環境や航空機との競争、訪日観光客の動向などに影響を受けます。
アーバンネットワークの収入は通勤・通学客が多いことから、経済情勢の影響を受けにくいと考えておりますが、少子高齢化や都市化等の人口推移による影響を受けると考えております。
その他在来線のうち、都市間輸送の収入は経済情勢や高速バス、自家用車との競争による影響を受けます。また、ローカル線の収入は自家用車との競争や地域の経済情勢及び人口の推移による影響を受けます。
[流通業]
流通業セグメントの収入は、主に百貨店業、物品販売業及び飲食業からの収入で構成されております。当セグメントの収入は、経済情勢及び他の百貨店、物販店舗、レストランとの競争に左右されます。当セグメントの事業の多くが駅やその周辺で行われているため、鉄道輸送量も影響を受ける要因です。しかし、駅は比較的安定したご利用があるため、当セグメントの収益は同業他社に比べ、これらの影響は少ないと考えております。また、新規店舗の開発や既存店舗の廃止によっても左右されます。
[不動産業]
不動産業セグメント収入は、主に駅やその周辺施設の賃貸収入、沿線におけるマンションの分譲販売により得られます。当セグメントは、経済情勢の影響を受けることや、マンション分譲事業の販売数の増減により業績が変動するものの、賃貸事業において、駅は比較的安定したご利用があり、テナントは立地の利便性から駅構内及びその周辺オフィスを好むことから、同業他社に比べ、経済情勢による影響は少ないと考えております。
[その他]
その他セグメントの収入は、主としてホテル業及び旅行業によるものです。ホテル業の収益は、経済情勢や宿泊料金、他ホテルとの競争、訪日観光客の動向に影響されます。また、旅行業による収入は主に他旅行業者との競争、経済情勢やテロなど旅行を妨げる状況により影響を受けます。
その他セグメントには、ホテル業、旅行業のほか、建設事業、広告業等がありますが、そのほとんどが基幹事業である鉄道事業の顧客基盤、駅及びその他の施設の強化を目的としたものであります。
イ.費用に影響する要因
[人件費]
当社は、年齢構成等により退職者数が多い状況にある中で、新規採用等により事業運営に必要な社員数を確保してきております。当事業年度の人件費は2,214億円となっております。
なお、高年齢層の人材を確保し、一層円滑な技術継承を図ること及び高年齢者雇用安定法など法令への対応の観点から、定年後の再雇用制度を設定しております。また、将来にわたり事業を運営しうる体制を構築するという視点で、長期雇用を前提とした新卒採用を中心に採用を行うほか、多様な人材確保等の観点から、契約社員からの採用、中途採用等を実施しており、当事業年度においては約900名の採用を行いました。
[物件費]
当社は、鉄道事業の特徴である、(ⅰ)多くの設備を有し、安全の確保のために必要なメンテナンスに係るコストの比重が大きい、(ⅱ)収益に連動しない「固定費用」の割合が高いなどの事情から、安全性の確保を大前提として、メンテナンスが容易な車両及び設備の導入、機械化、既存のインフラの改良などにより、これらの経費を構造的に削減する取り組みを行っております。
しかしながら、福知山線列車事故の責任とその重大性及び新幹線重大インシデントを重く受け止め、安全で安心・信頼していただける鉄道を築き上げるために全力で取り組んでいるところであり、当分の間、安全性の向上に必要となる費用の増加が想定されます。
また、対抗輸送機関との競争力向上のため、サービスレベルの向上、販売促進のためのIT化、効率化に寄与する外注化などによる費用の増加も想定されます。
さらに、電気料金の値上げによる費用の増加が想定されます。
[線路使用料等]
当社は、JR東西線を関西高速鉄道株式会社から借り受けており、2004年度以降の線路使用料の年額については、3年度毎に協議し、金利変動等を勘案して決定することとなっております。また、2011年度以降の線路使用料については減額を行い、当事業年度の費用は152億円となっております。
[支払利息]
営業外費用のうち、重要なものとして支払利息があります。当社グループとしては、経営の安定性を保つために長期債務残高や支払利息の水準を注視しております。当連結会計年度の当社グループの支払利息については209億円となり、前連結会計年度に比べ14億円減少しております。
④ 流動性と資本の源泉
ア.キャッシュ・フロー
[営業活動によるキャッシュ・フロー]
税金等調整前当期純利益が増加したことなどから、営業活動において得た資金は前連結会計年度に比べ409億円多い2,751億円となりました。
[投資活動によるキャッシュ・フロー]
連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出が減少したことなどから、投資活動において支出した資金は前連結会計年度に比べ1,294億円少ない1,663億円となりました。
[財務活動によるキャッシュ・フロー]
社債の償還による支出が増加したことなどから、財務活動において支出した資金は前連結会計年度に比べ1,157億円多い714億円となりました。
以上の結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末に比べ381億円多い1,014億円となりました。
イ.資本需要と設備投資
当社グループは、当連結会計年度において総額1,995億円の設備投資を実施し、そのうち運輸業では1,544億円、流通業、不動産業及びその他では、28億円、357億円及び65億円をそれぞれ実施しました。運輸業に関する設備投資においては、安全性の向上を中心とした鉄道インフラの整備や、老朽車両の更新等を目的とした新型車両の購入を行っております。流通業、不動産業及びその他における当社グループの設備投資においては、新設備の建設や老朽設備の改築等を行っております。
さらに、福知山線列車事故の責任とその重大性及び新幹線重大インシデントを重く受け止め、安全で安心・信頼していただける鉄道を築き上げるために全力で取り組んでいるところであり、安全をより一層高めるために必要な運転保安設備の整備等ハード対策を盛り込むとともに、今後も様々な検討を行うこととしております。
ウ.流動性
当社グループは、鉄道事業を中心に日々の収入金が潤沢にあり、流動性資金は十分な水準を確保しているものと考えております。
一方、資金効率の向上は企業経営にとって極めて重要と認識しており、その一環として、2002年10月からキャッシュ・マネジメント・サービス(CMS)を導入し、グループ内資金の有効活用を図っております。
エ.資金調達
資金調達については、既存債務の返済資金や設備投資資金等のうち当社グループのキャッシュ・フローで賄いきれない分の調達を主としており、その調達手段は社債及び銀行等からの長期借入金など、市場動向や金利動向等を総合的に勘案しながら決定しております。また、短期的に資金を必要とする場合には、主として短期社債で賄うことを基本としております。
さらに、地震が発生した場合でも、あらかじめ定めた条件によって資金調達が可能なコミットメントライン契約を締結しております。