四半期報告書-第32期第2四半期(平成30年7月1日-平成30年9月30日)

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2018/11/09 9:28
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(1)経営成績の状況
当社は、2005年4月25日、福知山線塚口駅~尼崎駅間において、106名のお客様の尊い命を奪い、500名を超えるお客様を負傷させるという、極めて重大な事故を惹き起こしました。事故現場については、9月に「祈りの杜 福知山線列車事故現場」として、整備が完了しました。福知山線列車事故のような事故を二度と発生させないとの変わらぬ決意で、引き続き被害に遭われた方々へ真摯に向き合い対応するとともに、安全性の向上に向け、弛まぬ努力を積み重ねていきます。
当社グループは、今年度より「JR西日本グループ中期経営計画2022」(以下、「中計2022」)と、その中核をなす安全の具体的計画として、「JR西日本グループ鉄道安全考動計画2022」(以下、「安全考動計画2022」)をスタートさせました。また、当社グループのありたい姿の実現を技術面から模索していく「JR西日本グループ技術ビジョン」を策定しました。
これらのもと、中長期的な企業価値向上に向けて、各種施策を推進しました。一方で、当社エリアにおいて、大阪北部地震(6月)、「平成30年7月豪雨」(7月)、台風21号、24号(9月)等の自然災害が発生しました。特に「平成30年7月豪雨」に関しては、現在も一部の線区で運転を見合わせていますが、地域の皆様と連携しながら復旧に全力で取り組み、被災地復興に向けての取り組みを継続していきます。
引き続き、「中計2022」に掲げるグループ共通戦略である「地域価値の向上」、「線区価値の向上」、「事業価値の向上」に加え、鉄道事業、創造事業それぞれの基本戦略、事業戦略を推進し、めざす未来である「人々が出会い、笑顔が生まれる、安全で豊かな社会」づくりに貢献していきます。
当第2四半期連結累計期間においては、運輸業セグメントで自然災害によるご利用減等のため減収となりましたが、その他の各セグメントが堅調に推移し、営業収益は前年同期比1.4%増の7,369億円、営業利益は同1.9%増の1,133億円、経常利益は同3.1%増の1,058億円となりました。しかしながら、法人税等を控除した親会社株主に帰属する四半期純利益は、自然災害による特別損失を計上したことにより、同16.7%減の564億円となりました。自然災害により一時的に影響を受けたものの、引き続き「中計2022」で掲げた各種施策に着実に取り組んでいきます。
今後も、人口減少に伴う市場の縮小や労働力の減少、激甚化する自然災害等、当社グループを取り巻く経営環境は厳しい状況にありますが、当社グループの強みに磨きをかけ続けるとともに、新たな市場や事業領域への展開に挑戦し、中長期的な企業価値向上に向けて取り組んでいきます。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
① 運輸業
[安全性向上等]
当社グループは、「安全考動計画2022」のもと、「組織全体で安全を確保する仕組み」、「安全最優先の風土」の構築に向けた取り組みを推進しています。しかしながら、9月に作業中の協力会社の社員が死亡する労働災害が発生しました。速やかに再発防止策を講じるとともに、これまでの取り組みを見つめ直し、このような事故を二度と発生させないよう、グループ全体で取り組みを進めます。
安全性向上の取り組みとして、地震対策や豪雨対策等の自然災害対策についても推進しています。
地震対策については、過去の震災の経験等を踏まえ、高架橋柱や駅舎等の耐震補強工事、山陽新幹線における逸脱防止ガードの整備等を引き続き推進しています。
豪雨対策については、京阪神エリアにおいて集中的に取り組んでいる斜面防災対策により、対象線区における運転規制時間を対策実施前と比較して約45%削減するレベルに到達しています。さらに、2022年度までの計画において、琵琶湖線、JR京都線、JR神戸線の主に特急・新快速列車が走行する区間についても斜面防災対策を進めており、工事完了後は実施前と比較して運転規制時間を大幅に削減できる見込みです。なお、これらの対策と合わせて、安全最優先の観点から、著しく勢力の強い台風接近に際して、事前にお知らせをしたうえで、計画的な列車の運休を各エリアで実施しました。今後も必要に応じて実施し、その際にはお客様や地域のご理解を得るため、引き続き適切な情報提供等に努めていきます。
また、新幹線の安全性向上については、昨年12月の新幹線の重大インシデントに関して、台車の異常を発見できなかったことと、運行中に異常を感じたにもかかわらず運転を継続させたことを重く受け止め、社員が異常を認めた場合や安全が確認できない場合はただちに列車を止めることや、関係者に報告し速やかな組織的対応により安全の確保を行うことを徹底するなど、異常時の適切な対応に向けた対策を着実に実施しています。また、超音波探傷検査の実施や目視による台車の入念点検等により車両の安全確保に万全を尽くすとともに、走行中の台車の異常を検知する装置の導入等の対策を進めていきます。
さらに、車内防犯カメラの増設や警備員の車内巡回強化、防護用品の整備等を進め、新幹線車内のセキュリティ確保に努めていきます。
加えて、安全を支える技術の取り組みとして、運転支援機能の充実を図った車上主体式の新保安システム(D-TAS)を山陽本線西広島駅~岩国駅間で5月に使用開始しました。
[営業施策等]
営業施策については、CS(お客様満足)を鉄道事業の基本戦略の一つに位置付け、お客様の多様なニーズにお応えする施策を推進しながら、ビジネス・観光需要の獲得、創出に取り組んでいます。
引き続き、CSの向上に向けた各種施策に取り組むとともに、新幹線における輸送サービスの品質向上、近畿エリアでの線区価値向上、西日本各エリアでの地域と連携した観光誘客等を進めました。
また、「平成30年7月豪雨」からの復興を目的とした「がんばろう!西日本」キャンペーンの実施等により、割引切符の設定やPRに努め、観光需要の喚起等に取り組んでいきます。この他、10月1日の「ICOCAポイント」のサービス開始に向け、準備を進めました。
(主な具体的取り組み)
ア.新幹線
・500系「ハローキティ新幹線」の運行開始(6月)
・「日本の美は、北陸にあり。」キャンペーンの実施(4~11月)
イ.近畿エリア
・茨木駅のリニューアル工事完了、グランドオープン(4月)
・嵯峨野線京都駅~丹波口駅間の新駅の駅名決定(7月)
・おおさか東線新大阪駅~放出駅間の新駅の駅名決定(7月)
ウ.西日本各エリア
・「せとうちキャンペーン」の実施(3~6月)
・「山陰デスティネーションキャンペーン」の実施(7~9月)
・観光列車「あめつち」運行開始(7月)
・「がんばろう!西日本」キャンペーンの実施(8月~)
・「ICOCA」の利用可能エリアの拡大(山陽本線、赤穂線、北陸本線)(9月)
エ.CSの向上
・チャットによるお忘れ物問い合わせ窓口の設置及びお忘れ物専用ダイヤルの開設(5月)
・公式Twitterでの運行情報提供の開始(8月)
オ.訪日のお客様への対応、需要の創出
・京都駅の「みどりの窓口」内における訪日のお客様専用窓口の機能強化(4月)
・シンガポール事務所の支店化による現地旅行業者との販売連携や宣伝活動の強化(4月)
バス事業、船舶事業(宮島航路)については、安全輸送を基本とし、お客様のご利用に応じた輸送改善等の実施により、利便性向上に努めました。
運輸業セグメントでは、自然災害によるご利用減等のため、営業収益は前年同期比0.3%減の4,713億円となりましたが、復旧工事に最優先で取り組んだため、計画していた工事の一部について工程調整を行ったことにより、営業費用が減少し、営業利益は同5.1%増の878億円となりました。
② 流通業
流通業については、直営業態の運営力を強化し、駅ナカの利便性向上を図るとともに、駅ソトへの展開も推進し、競争力のあるブランドの確立に向けて取り組んでいます。
当第2四半期連結累計期間においては、㈱セブン-イレブン・ジャパン(以下、SEJ)との提携店舗の新規出店拡大を推進するとともに、既存店舗の収益性向上に取り組みました。
百貨店においては、訪日観光需要の獲得等に取り組むとともに、さらなる魅力向上のため、ジェイアール京都伊勢丹では開業以来最大規模となるリニューアル工事を進めました。
さらに、流通業セグメントに区分される宿泊特化型ホテルについては、「ヴィアイン新大阪正面口」(7月)、「ヴィアイン名古屋駅前椿町」(8月)、「ヴィアイン飯田橋後楽園」(9月)を開業しました。
その結果、流通業セグメントではSEJ提携店舗をはじめとする物販・飲食業の売上げが堅調に推移し、営業収益は前年同期比1.8%増の1,196億円となりましたが、ヴィアイン開業経費等の増加に伴い、営業利益は同11.5%減の29億円となりました。
③ 不動産業
不動産業については、当社グループの保有資産の活用によりお客様の利便性向上や沿線価値向上につながる鉄道事業と親和性の高い事業と捉えて、ショッピングセンターの開発、運営や住宅分譲をはじめとする販売事業等を進めました。
4月には、「LUCUA osaka」地下2階に、新しい食のエリア「LUCUA FOOD HALL」を開業し、昨年からの地下階リニューアルが完了しました。また、9月には広島駅の商業施設「ekie(エキエ)」第3期を開業しました。
さらに、当社鉄道の沿線外及びエリア外の有望市場についても、不動産販売、賃貸事業展開を進めました。
その結果、不動産業セグメントでは商業施設のリニューアル効果等により、営業収益は前年同期比0.7%増の692億円となりましたが、昨年の不動産販売の反動等により、営業利益は同7.9%減の182億円となりました。
④ その他
ホテル業については、堅調な宿泊需要とお客様の多様なニーズに対応するため、訪日のお客様の受入体制整備等の運営力の強化や、新規ホテルの出店拡大等を推進しました。
6月には、当社グループホテルの新業態であるハイクラス宿泊主体型ホテル「ホテルヴィスキオ大阪」を開業するとともに、尼崎駅直結の「ホテルホップインアミング」を「ホテルヴィスキオ尼崎」としてリブランドオープンしました。また、8月にはキャビンスタイルホテル「ファーストキャビンステーション和歌山駅」を開業しました。さらに、経営判断を迅速化し、客室改装等によりブランド価値のさらなる向上を図るため、株式会社奈良ホテルの株式を追加取得し、完全子会社化しました。今後も「ホテルグランヴィア」をはじめとするシティホテルや、宿泊特化型ホテル「ヴィアイン」等とあわせて、多様なブランド構成で沿線外及びエリア外も含めて展開していきます。
旅行業については、訪日のお客様への営業展開を強化するとともに、法人営業における受注拡大、WEB専用商品をはじめとする個人向け商品の販売拡大等に取り組みました。
その結果、その他セグメントでは工事業において受注が増加し、営業収益は前年同期比12.8%増の768億円となりましたが、ホテル業における新規開業の経費増や「三宮ターミナルホテル」閉館の影響等により、営業利益は同9.2%減の29億円となりました。
運輸業のうち、当社の鉄道事業の営業成績は以下のとおりであります。
ア.輸送実績
区分単位第32期第2四半期累計期間
(自 2018年4月1日
至 2018年9月30日)
前年同期比
営業日数183-
キロ程新幹線キロ812.6812.6
在来線キロ( 28.0 )
4,088.0
( 28.0 )
4,196.1
キロ( 28.0 )
4,900.6
( 28.0 )
5,008.7
輸送人員定期千人607,641100.2%
定期外千人361,17597.8
千人968,81699.3




新幹線定期千人キロ447,062103.6
定期外千人キロ10,101,387101.3
千人キロ10,548,450101.3




定期千人キロ9,661,65999.8
定期外千人キロ5,418,19497.9
千人キロ15,079,85499.1


定期千人キロ2,089,92198.4
定期外千人キロ2,024,52294.7
千人キロ4,114,44396.5
定期千人キロ11,751,58099.6
定期外千人キロ7,442,71797.0
千人キロ19,194,29898.6
合計定期千人キロ12,198,64399.7
定期外千人キロ17,544,10599.4
千人キロ29,742,74899.5

(注)1.キロ程欄の上段括弧書は、外数で第三種鉄道事業のキロ程であり、それ以外は第一種鉄道事業及び第二種鉄道事業のキロ程であります。また、前年同期比は、前年第2四半期末の数値を記載しております。
2.輸送人キロ欄の近畿圏は、近畿統括本部の地域について記載しております。
イ.収入実績
区分単位第32期第2四半期累計期間
(自 2018年4月1日
至 2018年9月30日)
前年同期比








新幹線定期百万円5,631103.6%
定期外百万円221,582102.0
百万円227,213102.0




定期百万円59,432100.0
定期外百万円92,79496.4
百万円152,22797.8


定期百万円12,65798.4
定期外百万円39,64293.4
百万円52,29994.5
定期百万円72,08999.7
定期外百万円132,43795.5
百万円204,52796.9
合計定期百万円77,720100.0
定期外百万円354,01999.5
百万円431,74099.6
荷物収入百万円154.7
合計百万円431,74199.6
鉄道線路使用料収入百万円2,24391.6
運輸雑収百万円36,298102.9
収入合計百万円470,28399.8

(注) 旅客収入欄の近畿圏は、近畿統括本部の地域について記載しております。
(2)資産、負債及び純資産の状況
当第2四半期連結会計期間末の総資産額は3兆1,241億円となり、前連結会計年度末と比較し522億円増加しました。これは主に、現金及び預金の増加によるものです。
負債総額は1兆9,747億円となり、前連結会計年度末と比較し192億円増加しました。これは主に、社債の増加によるものです。
純資産総額は1兆1,493億円となり、前連結会計年度末と比較し330億円増加しました。これは主に、利益剰余金の増加によるものです。
なお、「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 平成30年2月16日)等を第1四半期連結会計期間の期首から適用しており、資産、負債及び純資産の状況については当該会計基準等を遡って適用した前連結会計年度末の数値で比較を行っております。
(3)キャッシュ・フローの状況
当第2四半期連結累計期間末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ337億円増加し、1,352億円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当第2四半期連結累計期間において、税金等調整前四半期純利益が減少したことなどから、営業活動において得た資金は前年同期に比べ60億円少ない935億円となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当第2四半期連結累計期間において、固定資産の取得による支出が増加したことなどから、投資活動において支出した資金は前年同期に比べ183億円多い810億円となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当第2四半期連結累計期間において、短期社債の償還が減少したことなどから、財務活動において得た資金は前年同期に比べ449億円多い212億円となりました。
(4)経営方針、事業上及び財務上の対処すべき課題
当第2四半期連結累計期間において、当連結会社の経営方針、事業上及び財務上の対処すべき課題について重要な変更はありません。
(5)研究開発活動
当第2四半期連結累計期間の研究開発費の総額は21億円であります。
なお、当第2四半期連結累計期間における研究開発活動の状況に、重要な変更はありません。
(6)主要な設備
新設、休止、大規模改修、除却、売却等について、当第2四半期連結累計期間に著しい変動があったものは、次のとおりであります。
当第2四半期連結累計期間において完成した重要な設備の新設
工事件名セグメントの名称総工事費完成年月
車両新造工事運輸業百万円
11,6942018年6月
12,5662018年9月