有価証券報告書-第32期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)
(1)経営成績等の概要
当社は、2005年4月25日、福知山線塚口駅~尼崎駅間において、106名のお客様の尊い命を奪い、500名を超えるお客様を負傷させるという、極めて重大な事故を惹き起こしました。事故現場については、昨年9月に「祈りの杜 福知山線列車事故現場」として、整備が完了しました。福知山線列車事故のような事故を二度と発生させないとの変わらぬ決意のもと、引き続き被害に遭われた方々へ真摯に向き合い対応するとともに、安全性の向上に向けて、弛まぬ努力を積み重ねていきます。
当社グループは、2018年度より「JR西日本グループ中期経営計画2022」(以下、「中計2022」)と、その中核をなす安全の具体的計画として、「JR西日本グループ鉄道安全考動計画2022」(以下、「安全考動計画2022」)をスタートさせました。また、当社グループの「ありたい姿」の実現を技術面から模索していく「JR西日本グループ技術ビジョン」を策定しました。「中計2022」に掲げるグループ共通戦略である「地域価値の向上」、「線区価値の向上」、「事業価値の向上」に向けて、鉄道事業、創造事業それぞれの基本戦略、事業戦略を推進し、「めざす未来」である「人々が出会い、笑顔が生まれる、安全で豊かな社会」づくりに貢献していきます。
これらの計画のもと、中長期的な企業価値向上に向けて、各種施策を推進しました。一方で、当社エリアにおいて、大阪北部地震(昨年6月)、「平成30年7月豪雨」(同7月)、台風21号、24号(同9月)等の自然災害が発生しました。特に「平成30年7月豪雨」に関しては、現在も芸備線の一部区間で運転を見合わせていますが、地域の皆様と協力しながら復旧に全力で取り組むとともに、被災地復興に向けての取り組みを継続していきます。
また、昨年11月に大阪・関西での開催が決定した2025年日本国際博覧会(以下、「大阪・関西万博」)に向けて、訪日のお客様の受け入れ体制の充実、国内外双方に向けた誘客等、運営面及び営業面での準備を行うとともに、この機会を捉え、社会インフラを担う企業として貢献しつつ、中長期的な成長に向けた取り組みを進めていきます。あわせて、ラグビーワールドカップ2019日本大会、2020年東京オリンピック・パラリンピックといった国際的な大型イベント等、グループ一体での成長機会を捉えた取り組みも進めていきます。
当連結会計年度においては、上期は自然災害による影響があったものの、各種施策の効果等により各セグメントとも堅調に推移し、営業収益は前期比1.9%増の1兆5,293億円、営業利益は同2.9%増の1,969億円、経常利益は同3.1%増の1,833億円、法人税等を控除した親会社株主に帰属する当期純利益は、自然災害による特別損失を計上したことにより、同7.0%減の1,027億円となりました。なお、営業利益の増の主な要因は、運輸業で、災害復旧優先のため、計画していた工事の工程調整を行ったことによる営業費用の減であります。
2019年度は、集中的に安全対策等を行うことに加え、復旧工事を優先して工程調整した工事の着実な実施や人材確保に向けた待遇改善等により、当連結会計年度を大きく上回る費用を計画していますが、「中計2022」期間中では、目標達成に向け、成長の機会を捉え、計画に掲げた施策を着実に推進していきます。その成果を踏まえ、「中計2022」の株主還元方針に基づき、株主還元を安定的に行っていきます。
今後も、人口減少に伴う市場の縮小や労働力の減少、激甚化する自然災害等、当社グループを取り巻く経営環境は厳しい状況にありますが、当社グループの強みに磨きをかけ続け、社会インフラ企業としての使命を果たすとともに、新たな市場や事業領域への展開に挑戦し、中長期的な企業価値向上に向けて取り組んでいきます。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
① 運輸業
[安全性向上等]
当社グループは、「安全考動計画2022」のもと、「組織全体で安全を確保する仕組み」、「安全最優先の風土」の構築に向け、安全の取り組みを積み重ねています。
安全性向上の取り組みとして、ホームや踏切の安全対策、地震対策や豪雨対策等の自然災害対策、新技術の導入による保安度向上の取り組み等を推進しています。
ホームの安全対策として、乗降10万人以上の駅等におけるホーム柵の整備等を引き続き進めるとともに、東淀川駅橋上化に伴う「開かずの踏切」の廃止など、踏切の安全対策も進めました。
自然災害対策のうち、地震対策については、過去の震災の経験等を踏まえ、高架橋柱や駅舎等の耐震補強工事、山陽新幹線における逸脱防止ガードの整備等を引き続き推進しています。
また、豪雨対策については、京阪神エリアにおいて集中的に取り組んでいる斜面防災対策により、対象線区における運転規制時間を対策実施前と比較して約45%削減するレベルに到達しています。さらに、2022年度までの計画において、琵琶湖線、JR京都線、JR神戸線の主に特急・新快速列車が走行する区間についても斜面防災対策を進めていき、工事完了後は実施前と比較して運転規制時間を大幅に削減できる見込みです。なお、これらの対策とあわせて、安全最優先の観点から、列車運行に極めて大きな影響が予想される台風接近に際して、事前にお知らせをしたうえで、計画的な列車の運休を各エリアで実施しました。今後も必要に応じて実施し、引き続き適切な情報提供等により、お客様や地域のご理解を得られるよう努めていきます。
加えて、新技術の導入による保安度向上の取り組みとして、運転支援機能の充実を図った車上主体式の新保安システム(D-TAS)を山陽本線西広島駅~岩国駅間で昨年5月に使用開始しました。
新幹線の安全性向上については、一昨年12月の新幹線重大インシデントを踏まえ、安全管理体制を強化するため、鉄道本部内に「新幹線鉄道事業本部」を設置し、ハード・ソフト両面からの対策を実行しています。ハード面では、超音波探傷検査の実施や目視による台車の入念点検等により車両の安全確保に万全を尽くすとともに、走行中の台車の異常を検知する装置の導入等の対策を進めており、3月までに、台車異常検知装置をN700A(16両編成)の全編成に設置するとともに、地上に設置する台車温度検知装置の1台目を稼働させました。ソフト面では、現場との意思疎通や系統間連携の円滑化、迅速な意思決定による速やかな施策の策定・実行を可能にするとともに、社員が異常を認めた場合や安全が確認できない場合は迷わず列車を止めることや、関係者に報告し速やかな組織的対応により安全の確保を行うことを徹底し、異常時の適切な対応に向けた対策を着実に実施しています。
3月には、「新幹線重大インシデントに係る有識者会議」の社外委員による評価書を受領しました。評価書では、発生直後から当社が取り組んできた対策について一定の評価をしていただくとともに、取り組みの継続が求められました。また、運輸安全委員会の調査報告書が公表されました。それらの内容を含め、引き続きハード・ソフト両面にわたり対策を計画的に推進し、高いレベルの安全を追求していきます。
加えて、新幹線のセキュリティ確保のため、防護装備品の配備、防犯カメラの増設、警備員の巡回強化等に努めていきます。
[営業施策等]
営業施策については、CS(お客様満足)の向上を鉄道事業の基本戦略の一つに位置付け、お客様の多様なニーズにお応えする施策を推進しながら、ビジネス・観光需要の獲得、創出に取り組んでいます。
引き続き、CSの向上に向けた各種施策に取り組むとともに、新幹線における輸送サービスの品質向上、近畿エリアでの線区価値向上、西日本各エリアでの地域と連携した観光誘客、訪日のお客様への対応強化等を進めました。
また、「平成30年7月豪雨」からの復興を目的とした「がんばろう!西日本」キャンペーンの実施等、割引切符の設定や観光地のPRに努め、観光需要の喚起等に取り組みました。
さらに、3月に実施したダイヤ改正では、新線・新駅の開業、有料座席サービスの開始等の輸送サービスの品質向上の取り組みを実施しました。
(主な具体的取り組み)
ア.新幹線
・500系「ハローキティ新幹線」の運行開始(昨年6月)
・「日本の美は、北陸にあり。」キャンペーン及び「Japanese Beauty Hokurikuキャンペーン」の実施(同4~3月)
・法人向けネット予約「e5489コーポレートサービス」の開始(同11月)
イ.近畿エリア
・茨木駅のリニューアル(同4月)
・おおさか東線新大阪駅~放出駅間の開業(3月)
・嵯峨野線京都駅~丹波口駅間の梅小路京都西駅の開業(3月)
・特急「らくラクはりま」の運転開始及び新快速「Aシート」の導入(3月)
・和歌山線等における新型車両「227系」の導入(3月)
ウ.西日本各エリア
・「せとうちキャンペーン」の実施(昨年3~6月)
・「山陰デスティネーションキャンペーン」の実施(同7~9月)
・観光列車「あめつち」運行開始(同7月)
・「がんばろう!西日本」キャンペーンの実施(同8月~3月)
・ICOCAの利用可能エリアの拡大(山陽本線、赤穂線、北陸本線(いずれも昨年9月)、宇野線(3月))
・車載型IC改札機によるICOCA利用可能エリアの拡大(境線)(3月)
・ICOCAポイントサービス、PiTaPaポストペイサービスの開始(昨年10月)
・新たな長距離列車の列車名(「WEST EXPRESS 銀河」)等の決定(3月)
エ.CSの向上
・チャットによるお忘れ物問い合わせ窓口の設置及びお忘れ物専用ダイヤルの開設(昨年5月)
・公式Twitterアカウントでの運行情報提供の開始(同8月)及び多言語での情報提供開始(3月)
・列車走行位置サービスの拡大等による列車運行情報のご案内充実(3月)
オ.訪日のお客様への対応、需要の創出
・京都駅の「みどりの窓口」内における訪日のお客様専用窓口の機能強化(昨年4月)
・シンガポール事務所の支店化による現地旅行業者との販売連携や宣伝活動の強化(同4月)
・訪日のお客様向けのインターネット予約サービス「JR-WEST ONLINE TRAIN RESERVATION」の提供開始(3月)
・災害時等を含めた多言語での情報発信等のさらなる強化
バス事業、船舶事業(宮島航路)については、安全輸送を基本とし、お客様のご利用に応じた輸送改善等の実施により、利便性向上に努めました。
運輸業セグメントでは、上期には自然災害による影響があったものの、各種キャンペーン等の効果により多客期等のご利用が堅調に推移したことで、営業収益は前期比0.3%増の9,539億円となりました。また、復旧工事に最優先で取り組んだため、計画していた工事の一部について工程調整等を行ったことで営業費用が減少したこともあり、営業利益は同4.6%増の1,362億円となりました。
② 流通業
流通業については、直営業態の運営力を強化し、駅ナカの利便性向上を図るとともに、駅ソトへの展開も推進し、競争力のあるブランドの確立に向けて取り組んでいます。
当連結会計年度においても、㈱セブン-イレブン・ジャパン(以下、SEJ)との提携店舗の新規出店拡大を推進するとともに、既存店舗の収益性向上に取り組みました。
百貨店においては、訪日観光需要の獲得等に取り組むとともに、さらなる魅力向上のため、ジェイアール京都伊勢丹では開業以来最大規模となるリニューアル工事を進め、地下1階食品フロアの増床に取り組みました。
さらに、流通業セグメントに区分される宿泊特化型ホテルについては、「ヴィアイン新大阪正面口」(昨年7月)、「ヴィアイン名古屋駅前椿町」(同8月)、「ヴィアイン飯田橋後楽園」(同9月)を開業しました。
その結果、流通業セグメントでは、SEJ提携店舗をはじめとする物販・飲食業の売上げが堅調に推移し、営業収益は前期比2.4%増の2,455億円となりましたが、上記ヴィアイン3店舗の新規開業に伴う費用等により、営業利益は同15.8%減の61億円となりました。
③ 不動産業
不動産業については、当社グループの保有資産の活用により、お客様の利便性向上や沿線価値向上につながる鉄道事業と親和性の高い事業と捉えて、ショッピングセンターの開発、運営や住宅分譲をはじめとする販売事業等を進めました。
昨年4月には、「LUCUA osaka」地下2階に新しい食のエリア「LUCUA FOOD HALL」を開業し、一昨年からの地下階リニューアルが完了しました。また、同9月には広島駅の商業施設「ekie(エキエ)」第3期を開業しました。同11月には岸辺駅北側に北大阪健康医療都市(健都)の中核となる複合施設として「VIERRA岸辺健都」を開業しました。
さらに、当社鉄道の沿線外及びエリア外の有望市場についても、不動産販売、賃貸事業展開を進めました。
その結果、不動産業セグメントでは、商業施設のリニューアル効果等により、営業収益は前期比6.3%増の1,485億円となりましたが、上記「VIERRA岸辺健都」等の大型賃貸物件の新規開業に伴う費用等により、営業利益は同0.3%減の356億円となりました。
④ その他
ホテル業については、堅調な宿泊需要とお客様の多様なニーズに対応するため、訪日のお客様の受入体制整備等の運営力の強化や、新規ホテルの出店拡大等を推進しました。
昨年6月には、当社グループホテルの新業態であるハイクラス宿泊主体型ホテル「ホテルヴィスキオ大阪」を開業するとともに、尼崎駅直結の「ホテルホップインアミング」を「ホテルヴィスキオ尼崎」としてリブランドオープンしました。また、同8月にはキャビンスタイルホテル「ファーストキャビンステーション和歌山駅」を、3月には「ファーストキャビンST.京都梅小路RYOKAN」をそれぞれ開業しました。さらに、経営判断の迅速化や客室改装等により、ブランド価値のさらなる向上を図るため、㈱奈良ホテルの株式を追加取得し、完全子会社化しました。今後も「ホテルグランヴィア」をはじめとするシティホテル、宿泊特化型ホテル「ヴィアイン」等、多様なブランド構成で沿線外及びエリア外も含めて展開していきます。
旅行業については、訪日のお客様への営業展開を強化するとともに、法人営業における受注拡大、WEB専用商品をはじめとする個人向け商品の販売拡大等に取り組みました。
その結果、その他セグメントでは、工事業において受注が増加したこと等により、営業収益は前期比6.7%増の1,813億円、営業利益は同6.6%増の212億円となりました。
運輸業のうち、当社の鉄道事業の営業成績は以下のとおりであります。
ア.輸送実績
(注)1.キロ程欄の上段括弧書は、外数で第三種鉄道事業のキロ程であり、それ以外は第一種鉄道事業及び第二種鉄道事業のキロ程であります。また、前事業年度比は、前事業年度末の数値を記載しております。
2.客車走行キロ数には、試運転、営業回送を含めておりません。
3.輸送人キロ欄の近畿圏は、近畿統括本部の地域について記載しております。
4.乗車効率欄の前事業年度比は、前事業年度の数値を記載しております。
なお、乗車効率は次の方法により算出しております。
イ.収入実績
(注) 旅客収入欄の近畿圏は、近畿統括本部の地域について記載しております。
(2)資産、負債及び純資産の状況
当連結会計年度末の総資産額は、3兆2,375億円となり、前連結会計年度末と比較し、1,657億円増加しました。これは主に、固定資産の増加によるものです。
負債総額は、2兆577億円となり、前連結会計年度末と比較し、1,022億円増加しました。これは主に、社債の増加によるものです。
純資産総額は、1兆1,798億円となり、前連結会計年度末と比較し、635億円増加しました。これは主に、利益剰余金の増加によるものです。
なお、「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 平成30年2月16日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、資産、負債及び純資産の状況については当該会計基準等を遡って適用した前連結会計年度末の数値で比較を行っております。
(3)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ351億円多い1,365億円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
仕入債務の増減額が増加したことなどから、営業活動において得た資金は前連結会計年度に比べ146億円多い2,897億円となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
固定資産の取得による支出が増加したことなどから、投資活動において支出した資金は前連結会計年度に比べ810億円多い2,474億円となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
短期社債の償還による支出が減少したことなどから、財務活動において支出した資金は前連結会計年度に比べ642億円少ない71億円となりました。
(4)生産、受注及び販売の実績
当社及びその連結子会社(以下「当社グループ」という。)の大多数は、受注生産形態を取らない業態であります。このため、生産、受注及び販売の状況については、「3[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析]」における各事業のセグメント別経営成績に関連付けて示しております。
(5)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
文中における将来に関する事項は、当有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって採用している「重要な会計方針」については、「第5[経理の状況][注記事項](連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しているため省略しております。なお、将来の見通しに関する記述については、現在入手可能な情報に基づき作成したものであり、実際の業績・結果は異なる場合があります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループは、基幹事業である鉄道事業において安全性の向上に全力で取り組むとともに、その他のグループ事業においては、各事業の特性を活かした様々な施策の展開及び保有資産の有効活用等に努めてまいりました。
当連結会計年度においては、上期は自然災害による影響があったものの、各種施策の効果等により各セグメントとも堅調に推移しました。その結果、営業収益、営業利益、経常利益のいずれも増加しました。しかしながら、親会社株主に帰属する当期純利益は、自然災害による特別損失を計上したことにより減少しました。
ア.営業収益
営業収益は、前連結会計年度に比べ1.9%、288億円増加の1兆5,293億円となりました。
運輸業セグメントについては、当社の運輸収入の増加などにより、営業収益は前連結会計年度に比べ0.3%、30億円増加の9,539億円となりました。
このうち、新幹線については、山陽新幹線において上期に災害影響を受けたものの、顧客利便性の向上に加え、各種キャンペーン等の施策効果により、多客期等のご利用が増加しました。また、北陸新幹線においても出張応援キャンペーン等の施策効果により、対首都圏を中心にご利用が前年度を上回りました。これらの結果により、前連結会計年度に比べ2.1%、93億円増加の4,570億円となりました。
一方、在来線については、近畿エリアでの線区価値向上に向けた施策や、西日本各エリアでの地域と連携した観光誘客、訪日のお客様への対応強化等を進めるとともに、3月に実施したダイヤ改正では、新線・新駅の開業、有料座席サービスの開始等の輸送サービスの品質向上に取り組みました。しかしながら、上期の災害が大きく影響し、前連結会計年度に比べ0.9%、37億円減少の4,163億円となりました。
流通業セグメントについては、㈱セブン-イレブン・ジャパンとの提携店舗の新規出店拡大を推進するとともに、既存店舗の収益性向上に取り組みました。また、百貨店においては、訪日観光需要の獲得やジェイアール京都伊勢丹では開業以来最大規模となるリニューアル工事を進め、地下1階食品フロアの増床に取り組みました。さらに、流通業セグメントに区分される宿泊特化型ホテルについては、「ヴィアイン新大阪正面口」、「ヴィアイン名古屋駅前椿町」、「ヴィアイン飯田橋後楽園」を開業しました。その結果、前連結会計年度に比べ2.4%、57億円増加の2,455億円となりました。
不動産業セグメントについては、当社鉄道の沿線内の住宅分譲をはじめとする販売事業等を進めるとともに、広島駅の商業施設「ekie(エキエ)」第3期の開業や、岸辺駅北側に北大阪健康医療都市(健都)の中核となる複合施設として「VIERRA岸辺健都」を開業したほか、沿線外及びエリア外の有望市場についても、不動産販売、賃貸事業展開を進めたことにより、前連結会計年度に比べ6.3%、88億円増加の1,485億円となりました。
その他セグメントについては、ハイクラス宿泊主体型ホテル「ホテルヴィスキオ大阪」を開業するとともに、尼崎駅直結の「ホテルホップインアミング」を「ホテルヴィスキオ尼崎」としてリブランドオープンしました。旅行業については、訪日のお客様への営業展開を強化するとともに、法人営業における受注拡大、WEB専用商品をはじめとする個人向け商品の販売拡大等に取り組みました。その結果、工事業における受注が増加したこと等により、前連結会計年度に比べ6.7%、113億円増加の1,813億円となりました。
イ.営業費
災害復旧優先のため、計画していた工事の工程調整を行ったことによる費用の減少はあったものの、大型賃貸物件やホテルの新規開業に伴う費用の増加などにより、前連結会計年度に比べ1.8%、232億円増加の1兆3,323億円となりました。
ウ.営業利益
営業利益は、前連結会計年度に比べ2.9%、55億円増加の1,969億円となりました。
エ.営業外損益
営業外損益については、前連結会計年度から微減の136億円の損失となりました。
オ.経常利益
経常利益は、前連結会計年度に比べ3.1%、55億円増加の1,833億円となりました。
カ.特別損益
特別損益については、「平成30年7月豪雨」等による被害に対する復旧費用を計上したことなどにより、前連結会計年度に比べ190億円悪化し、261億円の損失となりました。
キ.親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ7.0%、77億円減少の1,027億円となりました。
③ 経営成績に重要な影響を与える要因
ア.収益に影響する要因
[運輸業]
運輸業セグメントは鉄道運輸収入が大宗を占めております。鉄道運輸収入は、主に鉄道利用者数により左右され、航空機を含めた他の輸送モード、同業他社との競争や、経済情勢、少子高齢化等、多くの要因により影響を受けます。また、鉄道利用者は、安全性、信頼性をベースに、所要時間・ネットワーク性・運賃・快適性を基準として選択を行うと考えております。
新幹線の収入は、主として、ビジネスや観光旅行客の数に左右され、経済環境や航空機との競争、訪日観光客の動向などに影響を受けます。
アーバンネットワークの収入は通勤・通学客が多いことから、経済情勢の影響を受けにくいと考えておりますが、少子高齢化や都市化等の人口推移による影響を受けると考えております。
その他在来線のうち、都市間輸送の収入は経済情勢や高速バス、自家用車との競争による影響を受けます。また、ローカル線の収入は自家用車との競争や地域の経済情勢及び人口の推移による影響を受けます。
[流通業]
流通業セグメントの収入は、主に百貨店業、物品販売業及び飲食業からの収入で構成されております。当セグメントの収入は、経済情勢及び他の百貨店、物販店舗、レストランとの競争に左右されます。当セグメントの事業の多くが駅やその周辺で行われているため、鉄道輸送量も影響を受ける要因です。しかし、駅は比較的安定したご利用があるため、当セグメントの収益は同業他社に比べ、これらの影響は少ないと考えております。また、新規店舗の開発や既存店舗の廃止によっても左右されます。
[不動産業]
不動産業セグメント収入は、主に駅やその周辺施設の賃貸収入、沿線におけるマンションの分譲販売により得られます。当セグメントは、経済情勢の影響を受けることや、マンション分譲事業の販売数の増減により業績が変動するものの、賃貸事業において、駅は比較的安定したご利用があり、テナントは立地の利便性から駅構内及びその周辺オフィスを好むことから、同業他社に比べ、経済情勢による影響は少ないと考えております。
[その他]
その他セグメントの収入は、主としてホテル業及び旅行業によるものです。ホテル業の収益は、経済情勢や宿泊料金、他ホテルとの競争、訪日観光客の動向に影響されます。また、旅行業による収入は主に他旅行業者との競争、経済情勢やテロなど旅行を妨げる状況により影響を受けます。
その他セグメントには、ホテル業、旅行業のほか、建設事業、広告業等がありますが、そのほとんどが基幹事業である鉄道事業の顧客基盤、駅及びその他の施設の強化を目的としたものであります。
イ.費用に影響する要因
[人件費]
当社は、年齢構成等により退職者数が多い状況にある中で、新規採用等により事業運営に必要な社員数を確保してきております。当事業年度の人件費は2,158億円となっております。
なお、高年齢層の人材を確保し、一層円滑な技術継承を図ること及び高年齢者雇用安定法など法令への対応の観点から、定年後の再雇用制度を設定しております。また、将来にわたり事業を運営しうる体制を構築するという視点で、長期雇用を前提とした新卒採用を中心に採用を行うほか、多様な人材確保等の観点から、契約社員からの採用、中途採用等を実施しており、当事業年度においては950名を超える採用を行いました。
[物件費]
当社は、鉄道事業の特徴である、(ⅰ)多くの設備を有し、安全の確保のために必要なメンテナンスに係るコストの比重が大きい、(ⅱ)収益に連動しない「固定費用」の割合が高いなどの事情から、安全性の確保を大前提として、メンテナンスが容易な車両及び設備の導入、機械化、既存のインフラの改良などにより、これらの経費を構造的に削減する取り組みを行っております。
しかしながら、福知山線列車事故の責任とその重大性及び新幹線重大インシデントを重く受け止め、安全で安心・信頼していただける鉄道を築き上げるために全力で取り組んでいるところであり、当分の間、安全性の向上に必要となる費用の増加が想定されます。
また、対抗輸送機関との競争力向上のため、サービスレベルの向上、販売促進のためのIT化、効率化に寄与する外注化などによる費用の増加も想定されます。
さらに、電気料金の値上げによる費用の増加が想定されます。
[線路使用料等]
当社は、JR東西線を関西高速鉄道株式会社から借り受けており、2004年度以降の線路使用料の年額については、3年度毎に協議し、金利変動等を勘案して決定することとなっております。また、2018年度以降の線路使用料については減額を行い、当事業年度の費用は129億円となっております。
[支払利息]
営業外費用のうち、重要なものとして支払利息があります。当社グループとしては、経営の安定性を保つために長期債務残高や支払利息の水準を注視しております。当連結会計年度の当社グループの支払利息については200億円となり、前連結会計年度に比べ8億円減少しております。
④ 流動性と資本の源泉
ア.キャッシュ・フロー
[営業活動によるキャッシュ・フロー]
仕入債務の増減額が増加したことなどから、営業活動において得た資金は前連結会計年度に比べ146億円多い2,897億円となりました。
[投資活動によるキャッシュ・フロー]
固定資産の取得による支出が増加したことなどから、投資活動において支出した資金は前連結会計年度に比べ810億円多い2,474億円となりました。
[財務活動によるキャッシュ・フロー]
短期社債の償還による支出が減少したことなどから、財務活動において支出した資金は前連結会計年度に比べ642億円少ない71億円となりました。
以上の結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末に比べ351億円多い1,365億円となりました。
イ.資本需要と設備投資
当社グループは、当連結会計年度において総額2,657億円の設備投資を実施し、そのうち運輸業では2,072億円、流通業、不動産業及びその他では、56億円、448億円及び80億円をそれぞれ実施しました。運輸業に関する設備投資においては、安全性の向上を中心とした鉄道インフラの整備や、老朽車両の更新等を目的とした新型車両の購入を行っております。流通業、不動産業及びその他における当社グループの設備投資においては、新設備の建設や老朽設備の改築等を行っております。
さらに、福知山線列車事故の責任とその重大性及び新幹線重大インシデントを重く受け止め、安全で安心・信頼していただける鉄道を築き上げるために全力で取り組んでいるところであり、安全をより一層高めるために必要な運転保安設備の整備等ハード対策を盛り込むとともに、今後も様々な検討を行うこととしております。
ウ.流動性
当社グループは、鉄道事業を中心に日々の収入金が潤沢にあり、流動性資金は十分な水準を確保しているものと考えております。
一方、資金効率の向上は企業経営にとって極めて重要と認識しており、その一環として、2002年10月からキャッシュ・マネジメント・サービス(CMS)を導入し、グループ内資金の有効活用を図っております。
エ.資金調達
資金調達については、既存債務の返済資金や設備投資資金等のうち当社グループのフリー・キャッシュ・フローで賄いきれない分の調達を主としており、その調達手段は社債及び銀行等からの長期借入金など、市場動向や金利動向等を総合的に勘案しながら決定しております。また、短期的に資金を必要とする場合には、主として短期社債で賄うことを基本としております。
さらに、地震が発生した場合でも、あらかじめ定めた条件によって資金調達が可能なコミットメントライン契約を締結しております。
当社は、2005年4月25日、福知山線塚口駅~尼崎駅間において、106名のお客様の尊い命を奪い、500名を超えるお客様を負傷させるという、極めて重大な事故を惹き起こしました。事故現場については、昨年9月に「祈りの杜 福知山線列車事故現場」として、整備が完了しました。福知山線列車事故のような事故を二度と発生させないとの変わらぬ決意のもと、引き続き被害に遭われた方々へ真摯に向き合い対応するとともに、安全性の向上に向けて、弛まぬ努力を積み重ねていきます。
当社グループは、2018年度より「JR西日本グループ中期経営計画2022」(以下、「中計2022」)と、その中核をなす安全の具体的計画として、「JR西日本グループ鉄道安全考動計画2022」(以下、「安全考動計画2022」)をスタートさせました。また、当社グループの「ありたい姿」の実現を技術面から模索していく「JR西日本グループ技術ビジョン」を策定しました。「中計2022」に掲げるグループ共通戦略である「地域価値の向上」、「線区価値の向上」、「事業価値の向上」に向けて、鉄道事業、創造事業それぞれの基本戦略、事業戦略を推進し、「めざす未来」である「人々が出会い、笑顔が生まれる、安全で豊かな社会」づくりに貢献していきます。
これらの計画のもと、中長期的な企業価値向上に向けて、各種施策を推進しました。一方で、当社エリアにおいて、大阪北部地震(昨年6月)、「平成30年7月豪雨」(同7月)、台風21号、24号(同9月)等の自然災害が発生しました。特に「平成30年7月豪雨」に関しては、現在も芸備線の一部区間で運転を見合わせていますが、地域の皆様と協力しながら復旧に全力で取り組むとともに、被災地復興に向けての取り組みを継続していきます。
また、昨年11月に大阪・関西での開催が決定した2025年日本国際博覧会(以下、「大阪・関西万博」)に向けて、訪日のお客様の受け入れ体制の充実、国内外双方に向けた誘客等、運営面及び営業面での準備を行うとともに、この機会を捉え、社会インフラを担う企業として貢献しつつ、中長期的な成長に向けた取り組みを進めていきます。あわせて、ラグビーワールドカップ2019日本大会、2020年東京オリンピック・パラリンピックといった国際的な大型イベント等、グループ一体での成長機会を捉えた取り組みも進めていきます。
当連結会計年度においては、上期は自然災害による影響があったものの、各種施策の効果等により各セグメントとも堅調に推移し、営業収益は前期比1.9%増の1兆5,293億円、営業利益は同2.9%増の1,969億円、経常利益は同3.1%増の1,833億円、法人税等を控除した親会社株主に帰属する当期純利益は、自然災害による特別損失を計上したことにより、同7.0%減の1,027億円となりました。なお、営業利益の増の主な要因は、運輸業で、災害復旧優先のため、計画していた工事の工程調整を行ったことによる営業費用の減であります。
2019年度は、集中的に安全対策等を行うことに加え、復旧工事を優先して工程調整した工事の着実な実施や人材確保に向けた待遇改善等により、当連結会計年度を大きく上回る費用を計画していますが、「中計2022」期間中では、目標達成に向け、成長の機会を捉え、計画に掲げた施策を着実に推進していきます。その成果を踏まえ、「中計2022」の株主還元方針に基づき、株主還元を安定的に行っていきます。
今後も、人口減少に伴う市場の縮小や労働力の減少、激甚化する自然災害等、当社グループを取り巻く経営環境は厳しい状況にありますが、当社グループの強みに磨きをかけ続け、社会インフラ企業としての使命を果たすとともに、新たな市場や事業領域への展開に挑戦し、中長期的な企業価値向上に向けて取り組んでいきます。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
① 運輸業
[安全性向上等]
当社グループは、「安全考動計画2022」のもと、「組織全体で安全を確保する仕組み」、「安全最優先の風土」の構築に向け、安全の取り組みを積み重ねています。
安全性向上の取り組みとして、ホームや踏切の安全対策、地震対策や豪雨対策等の自然災害対策、新技術の導入による保安度向上の取り組み等を推進しています。
ホームの安全対策として、乗降10万人以上の駅等におけるホーム柵の整備等を引き続き進めるとともに、東淀川駅橋上化に伴う「開かずの踏切」の廃止など、踏切の安全対策も進めました。
自然災害対策のうち、地震対策については、過去の震災の経験等を踏まえ、高架橋柱や駅舎等の耐震補強工事、山陽新幹線における逸脱防止ガードの整備等を引き続き推進しています。
また、豪雨対策については、京阪神エリアにおいて集中的に取り組んでいる斜面防災対策により、対象線区における運転規制時間を対策実施前と比較して約45%削減するレベルに到達しています。さらに、2022年度までの計画において、琵琶湖線、JR京都線、JR神戸線の主に特急・新快速列車が走行する区間についても斜面防災対策を進めていき、工事完了後は実施前と比較して運転規制時間を大幅に削減できる見込みです。なお、これらの対策とあわせて、安全最優先の観点から、列車運行に極めて大きな影響が予想される台風接近に際して、事前にお知らせをしたうえで、計画的な列車の運休を各エリアで実施しました。今後も必要に応じて実施し、引き続き適切な情報提供等により、お客様や地域のご理解を得られるよう努めていきます。
加えて、新技術の導入による保安度向上の取り組みとして、運転支援機能の充実を図った車上主体式の新保安システム(D-TAS)を山陽本線西広島駅~岩国駅間で昨年5月に使用開始しました。
新幹線の安全性向上については、一昨年12月の新幹線重大インシデントを踏まえ、安全管理体制を強化するため、鉄道本部内に「新幹線鉄道事業本部」を設置し、ハード・ソフト両面からの対策を実行しています。ハード面では、超音波探傷検査の実施や目視による台車の入念点検等により車両の安全確保に万全を尽くすとともに、走行中の台車の異常を検知する装置の導入等の対策を進めており、3月までに、台車異常検知装置をN700A(16両編成)の全編成に設置するとともに、地上に設置する台車温度検知装置の1台目を稼働させました。ソフト面では、現場との意思疎通や系統間連携の円滑化、迅速な意思決定による速やかな施策の策定・実行を可能にするとともに、社員が異常を認めた場合や安全が確認できない場合は迷わず列車を止めることや、関係者に報告し速やかな組織的対応により安全の確保を行うことを徹底し、異常時の適切な対応に向けた対策を着実に実施しています。
3月には、「新幹線重大インシデントに係る有識者会議」の社外委員による評価書を受領しました。評価書では、発生直後から当社が取り組んできた対策について一定の評価をしていただくとともに、取り組みの継続が求められました。また、運輸安全委員会の調査報告書が公表されました。それらの内容を含め、引き続きハード・ソフト両面にわたり対策を計画的に推進し、高いレベルの安全を追求していきます。
加えて、新幹線のセキュリティ確保のため、防護装備品の配備、防犯カメラの増設、警備員の巡回強化等に努めていきます。
[営業施策等]
営業施策については、CS(お客様満足)の向上を鉄道事業の基本戦略の一つに位置付け、お客様の多様なニーズにお応えする施策を推進しながら、ビジネス・観光需要の獲得、創出に取り組んでいます。
引き続き、CSの向上に向けた各種施策に取り組むとともに、新幹線における輸送サービスの品質向上、近畿エリアでの線区価値向上、西日本各エリアでの地域と連携した観光誘客、訪日のお客様への対応強化等を進めました。
また、「平成30年7月豪雨」からの復興を目的とした「がんばろう!西日本」キャンペーンの実施等、割引切符の設定や観光地のPRに努め、観光需要の喚起等に取り組みました。
さらに、3月に実施したダイヤ改正では、新線・新駅の開業、有料座席サービスの開始等の輸送サービスの品質向上の取り組みを実施しました。
(主な具体的取り組み)
ア.新幹線
・500系「ハローキティ新幹線」の運行開始(昨年6月)
・「日本の美は、北陸にあり。」キャンペーン及び「Japanese Beauty Hokurikuキャンペーン」の実施(同4~3月)
・法人向けネット予約「e5489コーポレートサービス」の開始(同11月)
イ.近畿エリア
・茨木駅のリニューアル(同4月)
・おおさか東線新大阪駅~放出駅間の開業(3月)
・嵯峨野線京都駅~丹波口駅間の梅小路京都西駅の開業(3月)
・特急「らくラクはりま」の運転開始及び新快速「Aシート」の導入(3月)
・和歌山線等における新型車両「227系」の導入(3月)
ウ.西日本各エリア
・「せとうちキャンペーン」の実施(昨年3~6月)
・「山陰デスティネーションキャンペーン」の実施(同7~9月)
・観光列車「あめつち」運行開始(同7月)
・「がんばろう!西日本」キャンペーンの実施(同8月~3月)
・ICOCAの利用可能エリアの拡大(山陽本線、赤穂線、北陸本線(いずれも昨年9月)、宇野線(3月))
・車載型IC改札機によるICOCA利用可能エリアの拡大(境線)(3月)
・ICOCAポイントサービス、PiTaPaポストペイサービスの開始(昨年10月)
・新たな長距離列車の列車名(「WEST EXPRESS 銀河」)等の決定(3月)
エ.CSの向上
・チャットによるお忘れ物問い合わせ窓口の設置及びお忘れ物専用ダイヤルの開設(昨年5月)
・公式Twitterアカウントでの運行情報提供の開始(同8月)及び多言語での情報提供開始(3月)
・列車走行位置サービスの拡大等による列車運行情報のご案内充実(3月)
オ.訪日のお客様への対応、需要の創出
・京都駅の「みどりの窓口」内における訪日のお客様専用窓口の機能強化(昨年4月)
・シンガポール事務所の支店化による現地旅行業者との販売連携や宣伝活動の強化(同4月)
・訪日のお客様向けのインターネット予約サービス「JR-WEST ONLINE TRAIN RESERVATION」の提供開始(3月)
・災害時等を含めた多言語での情報発信等のさらなる強化
バス事業、船舶事業(宮島航路)については、安全輸送を基本とし、お客様のご利用に応じた輸送改善等の実施により、利便性向上に努めました。
運輸業セグメントでは、上期には自然災害による影響があったものの、各種キャンペーン等の効果により多客期等のご利用が堅調に推移したことで、営業収益は前期比0.3%増の9,539億円となりました。また、復旧工事に最優先で取り組んだため、計画していた工事の一部について工程調整等を行ったことで営業費用が減少したこともあり、営業利益は同4.6%増の1,362億円となりました。
② 流通業
流通業については、直営業態の運営力を強化し、駅ナカの利便性向上を図るとともに、駅ソトへの展開も推進し、競争力のあるブランドの確立に向けて取り組んでいます。
当連結会計年度においても、㈱セブン-イレブン・ジャパン(以下、SEJ)との提携店舗の新規出店拡大を推進するとともに、既存店舗の収益性向上に取り組みました。
百貨店においては、訪日観光需要の獲得等に取り組むとともに、さらなる魅力向上のため、ジェイアール京都伊勢丹では開業以来最大規模となるリニューアル工事を進め、地下1階食品フロアの増床に取り組みました。
さらに、流通業セグメントに区分される宿泊特化型ホテルについては、「ヴィアイン新大阪正面口」(昨年7月)、「ヴィアイン名古屋駅前椿町」(同8月)、「ヴィアイン飯田橋後楽園」(同9月)を開業しました。
その結果、流通業セグメントでは、SEJ提携店舗をはじめとする物販・飲食業の売上げが堅調に推移し、営業収益は前期比2.4%増の2,455億円となりましたが、上記ヴィアイン3店舗の新規開業に伴う費用等により、営業利益は同15.8%減の61億円となりました。
③ 不動産業
不動産業については、当社グループの保有資産の活用により、お客様の利便性向上や沿線価値向上につながる鉄道事業と親和性の高い事業と捉えて、ショッピングセンターの開発、運営や住宅分譲をはじめとする販売事業等を進めました。
昨年4月には、「LUCUA osaka」地下2階に新しい食のエリア「LUCUA FOOD HALL」を開業し、一昨年からの地下階リニューアルが完了しました。また、同9月には広島駅の商業施設「ekie(エキエ)」第3期を開業しました。同11月には岸辺駅北側に北大阪健康医療都市(健都)の中核となる複合施設として「VIERRA岸辺健都」を開業しました。
さらに、当社鉄道の沿線外及びエリア外の有望市場についても、不動産販売、賃貸事業展開を進めました。
その結果、不動産業セグメントでは、商業施設のリニューアル効果等により、営業収益は前期比6.3%増の1,485億円となりましたが、上記「VIERRA岸辺健都」等の大型賃貸物件の新規開業に伴う費用等により、営業利益は同0.3%減の356億円となりました。
④ その他
ホテル業については、堅調な宿泊需要とお客様の多様なニーズに対応するため、訪日のお客様の受入体制整備等の運営力の強化や、新規ホテルの出店拡大等を推進しました。
昨年6月には、当社グループホテルの新業態であるハイクラス宿泊主体型ホテル「ホテルヴィスキオ大阪」を開業するとともに、尼崎駅直結の「ホテルホップインアミング」を「ホテルヴィスキオ尼崎」としてリブランドオープンしました。また、同8月にはキャビンスタイルホテル「ファーストキャビンステーション和歌山駅」を、3月には「ファーストキャビンST.京都梅小路RYOKAN」をそれぞれ開業しました。さらに、経営判断の迅速化や客室改装等により、ブランド価値のさらなる向上を図るため、㈱奈良ホテルの株式を追加取得し、完全子会社化しました。今後も「ホテルグランヴィア」をはじめとするシティホテル、宿泊特化型ホテル「ヴィアイン」等、多様なブランド構成で沿線外及びエリア外も含めて展開していきます。
旅行業については、訪日のお客様への営業展開を強化するとともに、法人営業における受注拡大、WEB専用商品をはじめとする個人向け商品の販売拡大等に取り組みました。
その結果、その他セグメントでは、工事業において受注が増加したこと等により、営業収益は前期比6.7%増の1,813億円、営業利益は同6.6%増の212億円となりました。
運輸業のうち、当社の鉄道事業の営業成績は以下のとおりであります。
ア.輸送実績
区分 | 単位 | 当事業年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | |||||
前事業年度比 | |||||||
営業日数 | 日 | 365 | - | ||||
キロ程 | 新幹線 | キロ | 812.6 | 812.6 | |||
在来線 | キロ | (28.0) 4,090.5 | (28.0) 4,196.1 | ||||
計 | キロ | (28.0) 4,903.1 | (28.0) 5,008.7 | ||||
客車走行キロ | 新幹線 | 千キロ | 556,519 | 100.0 | % | ||
在来線 | 千キロ | 779,231 | 98.3 | ||||
計 | 千キロ | 1,335,750 | 99.0 | ||||
輸送人員 | 定期 | 千人 | 1,179,988 | 100.3 | |||
定期外 | 千人 | 732,005 | 99.4 | ||||
計 | 千人 | 1,911,994 | 99.9 | ||||
輸 送 人 キ ロ | 新幹線 | 定期 | 千人キロ | 880,309 | 104.0 | ||
定期外 | 千人キロ | 20,457,875 | 101.4 | ||||
計 | 千人キロ | 21,338,184 | 101.5 | ||||
在 来 線 | 近 畿 圏 | 定期 | 千人キロ | 18,766,090 | 99.9 | ||
定期外 | 千人キロ | 11,031,394 | 99.5 | ||||
計 | 千人キロ | 29,797,484 | 99.8 | ||||
そ の 他 | 定期 | 千人キロ | 3,985,792 | 98.6 | |||
定期外 | 千人キロ | 4,257,608 | 97.8 | ||||
計 | 千人キロ | 8,243,401 | 98.2 | ||||
計 | 定期 | 千人キロ | 22,751,882 | 99.7 | |||
定期外 | 千人キロ | 15,289,002 | 99.0 | ||||
計 | 千人キロ | 38,040,885 | 99.4 | ||||
合計 | 定期 | 千人キロ | 23,632,192 | 99.8 | |||
定期外 | 千人キロ | 35,746,877 | 100.4 | ||||
計 | 千人キロ | 59,379,070 | 100.1 | ||||
乗車効率 | 新幹線 | % | 49.2 | 48.4 | |||
在来線 | % | 39.1 | 38.6 | ||||
計 | % | 42.2 | 41.6 |
(注)1.キロ程欄の上段括弧書は、外数で第三種鉄道事業のキロ程であり、それ以外は第一種鉄道事業及び第二種鉄道事業のキロ程であります。また、前事業年度比は、前事業年度末の数値を記載しております。
2.客車走行キロ数には、試運転、営業回送を含めておりません。
3.輸送人キロ欄の近畿圏は、近畿統括本部の地域について記載しております。
4.乗車効率欄の前事業年度比は、前事業年度の数値を記載しております。
なお、乗車効率は次の方法により算出しております。
乗車効率 = | 輸送人キロ |
客車走行キロ × 客車平均定員(標準定員) |
イ.収入実績
区分 | 単位 | 当事業年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | ||||||
前事業年度比 | ||||||||
旅 客 運 輸 収 入 | 旅 客 収 入 | 新幹線 | 定期 | 百万円 | 11,207 | 103.9 | % | |
定期外 | 百万円 | 445,881 | 102.0 | |||||
計 | 百万円 | 457,088 | 102.1 | |||||
在 来 線 | 近 畿 圏 | 定期 | 百万円 | 116,699 | 99.7 | |||
定期外 | 百万円 | 191,453 | 99.7 | |||||
計 | 百万円 | 308,153 | 99.7 | |||||
そ の 他 | 定期 | 百万円 | 24,689 | 98.4 | ||||
定期外 | 百万円 | 83,540 | 97.2 | |||||
計 | 百万円 | 108,229 | 97.4 | |||||
計 | 定期 | 百万円 | 141,388 | 99.5 | ||||
定期外 | 百万円 | 274,993 | 98.9 | |||||
計 | 百万円 | 416,382 | 99.1 | |||||
合計 | 定期 | 百万円 | 152,596 | 99.8 | ||||
定期外 | 百万円 | 720,875 | 100.8 | |||||
計 | 百万円 | 873,471 | 100.6 | |||||
荷物収入 | 百万円 | 3 | 64.5 | |||||
合計 | 百万円 | 873,474 | 100.6 | |||||
鉄道線路使用料収入 | 百万円 | 4,306 | 90.8 | |||||
運輸雑収 | 百万円 | 73,765 | 98.0 | |||||
収入合計 | 百万円 | 951,546 | 100.4 |
(注) 旅客収入欄の近畿圏は、近畿統括本部の地域について記載しております。
(2)資産、負債及び純資産の状況
当連結会計年度末の総資産額は、3兆2,375億円となり、前連結会計年度末と比較し、1,657億円増加しました。これは主に、固定資産の増加によるものです。
負債総額は、2兆577億円となり、前連結会計年度末と比較し、1,022億円増加しました。これは主に、社債の増加によるものです。
純資産総額は、1兆1,798億円となり、前連結会計年度末と比較し、635億円増加しました。これは主に、利益剰余金の増加によるものです。
なお、「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 平成30年2月16日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、資産、負債及び純資産の状況については当該会計基準等を遡って適用した前連結会計年度末の数値で比較を行っております。
(3)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ351億円多い1,365億円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
仕入債務の増減額が増加したことなどから、営業活動において得た資金は前連結会計年度に比べ146億円多い2,897億円となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
固定資産の取得による支出が増加したことなどから、投資活動において支出した資金は前連結会計年度に比べ810億円多い2,474億円となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
短期社債の償還による支出が減少したことなどから、財務活動において支出した資金は前連結会計年度に比べ642億円少ない71億円となりました。
(4)生産、受注及び販売の実績
当社及びその連結子会社(以下「当社グループ」という。)の大多数は、受注生産形態を取らない業態であります。このため、生産、受注及び販売の状況については、「3[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析]」における各事業のセグメント別経営成績に関連付けて示しております。
(5)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
文中における将来に関する事項は、当有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって採用している「重要な会計方針」については、「第5[経理の状況][注記事項](連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しているため省略しております。なお、将来の見通しに関する記述については、現在入手可能な情報に基づき作成したものであり、実際の業績・結果は異なる場合があります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループは、基幹事業である鉄道事業において安全性の向上に全力で取り組むとともに、その他のグループ事業においては、各事業の特性を活かした様々な施策の展開及び保有資産の有効活用等に努めてまいりました。
当連結会計年度においては、上期は自然災害による影響があったものの、各種施策の効果等により各セグメントとも堅調に推移しました。その結果、営業収益、営業利益、経常利益のいずれも増加しました。しかしながら、親会社株主に帰属する当期純利益は、自然災害による特別損失を計上したことにより減少しました。
ア.営業収益
営業収益は、前連結会計年度に比べ1.9%、288億円増加の1兆5,293億円となりました。
運輸業セグメントについては、当社の運輸収入の増加などにより、営業収益は前連結会計年度に比べ0.3%、30億円増加の9,539億円となりました。
このうち、新幹線については、山陽新幹線において上期に災害影響を受けたものの、顧客利便性の向上に加え、各種キャンペーン等の施策効果により、多客期等のご利用が増加しました。また、北陸新幹線においても出張応援キャンペーン等の施策効果により、対首都圏を中心にご利用が前年度を上回りました。これらの結果により、前連結会計年度に比べ2.1%、93億円増加の4,570億円となりました。
一方、在来線については、近畿エリアでの線区価値向上に向けた施策や、西日本各エリアでの地域と連携した観光誘客、訪日のお客様への対応強化等を進めるとともに、3月に実施したダイヤ改正では、新線・新駅の開業、有料座席サービスの開始等の輸送サービスの品質向上に取り組みました。しかしながら、上期の災害が大きく影響し、前連結会計年度に比べ0.9%、37億円減少の4,163億円となりました。
流通業セグメントについては、㈱セブン-イレブン・ジャパンとの提携店舗の新規出店拡大を推進するとともに、既存店舗の収益性向上に取り組みました。また、百貨店においては、訪日観光需要の獲得やジェイアール京都伊勢丹では開業以来最大規模となるリニューアル工事を進め、地下1階食品フロアの増床に取り組みました。さらに、流通業セグメントに区分される宿泊特化型ホテルについては、「ヴィアイン新大阪正面口」、「ヴィアイン名古屋駅前椿町」、「ヴィアイン飯田橋後楽園」を開業しました。その結果、前連結会計年度に比べ2.4%、57億円増加の2,455億円となりました。
不動産業セグメントについては、当社鉄道の沿線内の住宅分譲をはじめとする販売事業等を進めるとともに、広島駅の商業施設「ekie(エキエ)」第3期の開業や、岸辺駅北側に北大阪健康医療都市(健都)の中核となる複合施設として「VIERRA岸辺健都」を開業したほか、沿線外及びエリア外の有望市場についても、不動産販売、賃貸事業展開を進めたことにより、前連結会計年度に比べ6.3%、88億円増加の1,485億円となりました。
その他セグメントについては、ハイクラス宿泊主体型ホテル「ホテルヴィスキオ大阪」を開業するとともに、尼崎駅直結の「ホテルホップインアミング」を「ホテルヴィスキオ尼崎」としてリブランドオープンしました。旅行業については、訪日のお客様への営業展開を強化するとともに、法人営業における受注拡大、WEB専用商品をはじめとする個人向け商品の販売拡大等に取り組みました。その結果、工事業における受注が増加したこと等により、前連結会計年度に比べ6.7%、113億円増加の1,813億円となりました。
イ.営業費
災害復旧優先のため、計画していた工事の工程調整を行ったことによる費用の減少はあったものの、大型賃貸物件やホテルの新規開業に伴う費用の増加などにより、前連結会計年度に比べ1.8%、232億円増加の1兆3,323億円となりました。
ウ.営業利益
営業利益は、前連結会計年度に比べ2.9%、55億円増加の1,969億円となりました。
エ.営業外損益
営業外損益については、前連結会計年度から微減の136億円の損失となりました。
オ.経常利益
経常利益は、前連結会計年度に比べ3.1%、55億円増加の1,833億円となりました。
カ.特別損益
特別損益については、「平成30年7月豪雨」等による被害に対する復旧費用を計上したことなどにより、前連結会計年度に比べ190億円悪化し、261億円の損失となりました。
キ.親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ7.0%、77億円減少の1,027億円となりました。
③ 経営成績に重要な影響を与える要因
ア.収益に影響する要因
[運輸業]
運輸業セグメントは鉄道運輸収入が大宗を占めております。鉄道運輸収入は、主に鉄道利用者数により左右され、航空機を含めた他の輸送モード、同業他社との競争や、経済情勢、少子高齢化等、多くの要因により影響を受けます。また、鉄道利用者は、安全性、信頼性をベースに、所要時間・ネットワーク性・運賃・快適性を基準として選択を行うと考えております。
新幹線の収入は、主として、ビジネスや観光旅行客の数に左右され、経済環境や航空機との競争、訪日観光客の動向などに影響を受けます。
アーバンネットワークの収入は通勤・通学客が多いことから、経済情勢の影響を受けにくいと考えておりますが、少子高齢化や都市化等の人口推移による影響を受けると考えております。
その他在来線のうち、都市間輸送の収入は経済情勢や高速バス、自家用車との競争による影響を受けます。また、ローカル線の収入は自家用車との競争や地域の経済情勢及び人口の推移による影響を受けます。
[流通業]
流通業セグメントの収入は、主に百貨店業、物品販売業及び飲食業からの収入で構成されております。当セグメントの収入は、経済情勢及び他の百貨店、物販店舗、レストランとの競争に左右されます。当セグメントの事業の多くが駅やその周辺で行われているため、鉄道輸送量も影響を受ける要因です。しかし、駅は比較的安定したご利用があるため、当セグメントの収益は同業他社に比べ、これらの影響は少ないと考えております。また、新規店舗の開発や既存店舗の廃止によっても左右されます。
[不動産業]
不動産業セグメント収入は、主に駅やその周辺施設の賃貸収入、沿線におけるマンションの分譲販売により得られます。当セグメントは、経済情勢の影響を受けることや、マンション分譲事業の販売数の増減により業績が変動するものの、賃貸事業において、駅は比較的安定したご利用があり、テナントは立地の利便性から駅構内及びその周辺オフィスを好むことから、同業他社に比べ、経済情勢による影響は少ないと考えております。
[その他]
その他セグメントの収入は、主としてホテル業及び旅行業によるものです。ホテル業の収益は、経済情勢や宿泊料金、他ホテルとの競争、訪日観光客の動向に影響されます。また、旅行業による収入は主に他旅行業者との競争、経済情勢やテロなど旅行を妨げる状況により影響を受けます。
その他セグメントには、ホテル業、旅行業のほか、建設事業、広告業等がありますが、そのほとんどが基幹事業である鉄道事業の顧客基盤、駅及びその他の施設の強化を目的としたものであります。
イ.費用に影響する要因
[人件費]
当社は、年齢構成等により退職者数が多い状況にある中で、新規採用等により事業運営に必要な社員数を確保してきております。当事業年度の人件費は2,158億円となっております。
なお、高年齢層の人材を確保し、一層円滑な技術継承を図ること及び高年齢者雇用安定法など法令への対応の観点から、定年後の再雇用制度を設定しております。また、将来にわたり事業を運営しうる体制を構築するという視点で、長期雇用を前提とした新卒採用を中心に採用を行うほか、多様な人材確保等の観点から、契約社員からの採用、中途採用等を実施しており、当事業年度においては950名を超える採用を行いました。
[物件費]
当社は、鉄道事業の特徴である、(ⅰ)多くの設備を有し、安全の確保のために必要なメンテナンスに係るコストの比重が大きい、(ⅱ)収益に連動しない「固定費用」の割合が高いなどの事情から、安全性の確保を大前提として、メンテナンスが容易な車両及び設備の導入、機械化、既存のインフラの改良などにより、これらの経費を構造的に削減する取り組みを行っております。
しかしながら、福知山線列車事故の責任とその重大性及び新幹線重大インシデントを重く受け止め、安全で安心・信頼していただける鉄道を築き上げるために全力で取り組んでいるところであり、当分の間、安全性の向上に必要となる費用の増加が想定されます。
また、対抗輸送機関との競争力向上のため、サービスレベルの向上、販売促進のためのIT化、効率化に寄与する外注化などによる費用の増加も想定されます。
さらに、電気料金の値上げによる費用の増加が想定されます。
[線路使用料等]
当社は、JR東西線を関西高速鉄道株式会社から借り受けており、2004年度以降の線路使用料の年額については、3年度毎に協議し、金利変動等を勘案して決定することとなっております。また、2018年度以降の線路使用料については減額を行い、当事業年度の費用は129億円となっております。
[支払利息]
営業外費用のうち、重要なものとして支払利息があります。当社グループとしては、経営の安定性を保つために長期債務残高や支払利息の水準を注視しております。当連結会計年度の当社グループの支払利息については200億円となり、前連結会計年度に比べ8億円減少しております。
④ 流動性と資本の源泉
ア.キャッシュ・フロー
[営業活動によるキャッシュ・フロー]
仕入債務の増減額が増加したことなどから、営業活動において得た資金は前連結会計年度に比べ146億円多い2,897億円となりました。
[投資活動によるキャッシュ・フロー]
固定資産の取得による支出が増加したことなどから、投資活動において支出した資金は前連結会計年度に比べ810億円多い2,474億円となりました。
[財務活動によるキャッシュ・フロー]
短期社債の償還による支出が減少したことなどから、財務活動において支出した資金は前連結会計年度に比べ642億円少ない71億円となりました。
以上の結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末に比べ351億円多い1,365億円となりました。
イ.資本需要と設備投資
当社グループは、当連結会計年度において総額2,657億円の設備投資を実施し、そのうち運輸業では2,072億円、流通業、不動産業及びその他では、56億円、448億円及び80億円をそれぞれ実施しました。運輸業に関する設備投資においては、安全性の向上を中心とした鉄道インフラの整備や、老朽車両の更新等を目的とした新型車両の購入を行っております。流通業、不動産業及びその他における当社グループの設備投資においては、新設備の建設や老朽設備の改築等を行っております。
さらに、福知山線列車事故の責任とその重大性及び新幹線重大インシデントを重く受け止め、安全で安心・信頼していただける鉄道を築き上げるために全力で取り組んでいるところであり、安全をより一層高めるために必要な運転保安設備の整備等ハード対策を盛り込むとともに、今後も様々な検討を行うこととしております。
ウ.流動性
当社グループは、鉄道事業を中心に日々の収入金が潤沢にあり、流動性資金は十分な水準を確保しているものと考えております。
一方、資金効率の向上は企業経営にとって極めて重要と認識しており、その一環として、2002年10月からキャッシュ・マネジメント・サービス(CMS)を導入し、グループ内資金の有効活用を図っております。
エ.資金調達
資金調達については、既存債務の返済資金や設備投資資金等のうち当社グループのフリー・キャッシュ・フローで賄いきれない分の調達を主としており、その調達手段は社債及び銀行等からの長期借入金など、市場動向や金利動向等を総合的に勘案しながら決定しております。また、短期的に資金を必要とする場合には、主として短期社債で賄うことを基本としております。
さらに、地震が発生した場合でも、あらかじめ定めた条件によって資金調達が可能なコミットメントライン契約を締結しております。