四半期報告書-第32期第3四半期(平成30年10月1日-平成30年12月31日)
(1)経営成績の状況
当社は、2005年4月25日、福知山線塚口駅~尼崎駅間において、106名のお客様の尊い命を奪い、500名を超えるお客様を負傷させるという、極めて重大な事故を惹き起こしました。事故現場については、昨年9月に「祈りの杜 福知山線列車事故現場」として、整備が完了しました。福知山線列車事故のような事故を二度と発生させないとの変わらぬ決意で、引き続き被害に遭われた方々へ真摯に向き合い対応するとともに、安全性の向上に向け、弛まぬ努力を積み重ねていきます。
当社グループは、今年度より「JR西日本グループ中期経営計画2022」(以下、「中計2022」)と、その中核をなす安全の具体的計画として、「JR西日本グループ鉄道安全考動計画2022」(以下、「安全考動計画2022」)をスタートさせました。また、当社グループのありたい姿の実現を技術面から模索していく「JR西日本グループ技術ビジョン」を策定しました。
これらのもと、中長期的な企業価値向上に向けて、各種施策を推進しました。一方で、当社エリアにおいて、大阪北部地震(昨年6月)、「平成30年7月豪雨」(同7月)、台風21号、24号(同9月)等の自然災害が発生しました。特に「平成30年7月豪雨」に関しては、現在も芸備線の一部区間で運転を見合わせていますが、地域の皆様と協力しながら復旧に全力で取り組むとともに、被災地復興に向けての取り組みを継続していきます。
引き続き、「中計2022」に掲げるグループ共通戦略である「地域価値の向上」、「線区価値の向上」、「事業価値の向上」に加え、鉄道事業、創造事業それぞれの基本戦略、事業戦略を推進し、めざす未来である「人々が出会い、笑顔が生まれる、安全で豊かな社会」づくりに貢献していきます。
また、昨年11月に大阪・関西での開催が決定した2025年国際博覧会(いわゆる万博)に向けて、訪日のお客様の受け入れ体制充実、国内外双方に向けた誘客等、運営面及び営業面での準備を行うとともに、この機会を捉え、社会インフラを担う企業として貢献しつつ、中長期的な成長に向けた取り組みを進めていきます。あわせて、ラグビーワールドカップ2019日本大会、2020年東京オリンピック・パラリンピックといった国際的な大型イベント等、グループ一体での成長機会を捉えた取り組みも進めていきます。
当第3四半期連結累計期間においては、運輸業セグメントで自然災害によるご利用減等のため減収となりましたが、その他の各セグメントが堅調に推移し、営業収益は前年同期比1.6%増の1兆1,290億円、運輸業セグメントで災害復旧工事を優先するため工事の工程調整等を行ったこと等による営業費用の減少により営業利益は同2.6%増の1,797億円、経常利益は同3.5%増の1,678億円となりました。しかしながら、法人税等を控除した親会社株主に帰属する四半期純利益は、自然災害による特別損失を計上したことにより、同9.8%減の977億円となりました。自然災害により一時的に影響を受けたものの、引き続き「中計2022」で掲げた各種施策に着実に取り組んでいきます。
今後も、人口減少に伴う市場の縮小や労働力の減少、激甚化する自然災害等、当社グループを取り巻く経営環境は厳しい状況にありますが、当社グループの強みに磨きをかけ続けるとともに、新たな市場や事業領域への展開に挑戦し、中長期的な企業価値向上に向けて取り組んでいきます。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
① 運輸業
[安全性向上等]
当社グループは、「安全考動計画2022」のもと、「組織全体で安全を確保する仕組み」、「安全最優先の風土」の構築に向け、安全の取り組みを積み重ねています。
安全性向上の取り組みとして、ホームや踏切の安全対策、地震対策や豪雨対策等の自然災害対策、新技術による保安度向上の取り組み等を推進しています。
ホームの安全対策として、乗降10万人以上の駅等におけるホーム柵の整備等を引き続き進めるとともに、東淀川駅橋上化に伴う「開かずの踏切」の廃止など、踏切の安全対策も進めました。
自然災害対策のうち、地震対策については、過去の震災の経験等を踏まえ、高架橋柱や駅舎等の耐震補強工事、山陽新幹線における逸脱防止ガードの整備等を引き続き推進しています。
また、豪雨対策については、京阪神エリアにおいて集中的に取り組んでいる斜面防災対策により、対象線区における運転規制時間を対策実施前と比較して約45%削減するレベルに到達しています。さらに、2022年度までの計画において、琵琶湖線、JR京都線、JR神戸線の主に特急・新快速列車が走行する区間についても斜面防災対策を進めており、工事完了後は実施前と比較して運転規制時間を大幅に削減できる見込みです。なお、これらの対策と合わせて、安全最優先の観点から、著しく勢力の強い台風接近に際して、事前にお知らせをしたうえで、計画的な列車の運休を各エリアで実施しました。今後も必要に応じて実施し、その際にはお客様や地域のご理解を得るため、引き続き適切な情報提供等に努めていきます。
加えて、新技術による保安度向上の取り組みとして、運転支援機能の充実を図った車上主体式の新保安システム(D-TAS)を山陽本線西広島駅~岩国駅間で昨年5月に使用開始しました。
新幹線の安全性向上については、一昨年12月の新幹線の重大インシデントを踏まえ、安全管理体制を強化するため、鉄道本部内に「新幹線鉄道事業本部」を設置し、ハード・ソフト両面からの対策を実行しています。ハード面では、超音波探傷検査の実施や目視による台車の入念点検等により車両の安全確保に万全を尽くすとともに、走行中の台車の異常を検知する装置の導入等の対策を進めており、まず今年度中に、台車異常検知装置をN700A(16両編成)の全編成に設置するとともに、地上に設置する台車温度検知装置の1台目を稼働させる予定です。ソフト面では、現場との意思疎通や系統間連携の円滑化、迅速な意思決定による速やかな施策の策定・実行を可能にするとともに、社員が異常を認めた場合や安全が確認できない場合は迷わず列車を止めることや、関係者に報告し速やかな組織的対応により安全の確保を行うことを徹底し、異常時の適切な対応に向けた対策を着実に実施しています。
今後も、ハード・ソフト両面にわたり対策を計画的に推進し、レベルアップを図っていきます。
加えて、車内防犯カメラの増設や警備員の車内巡回強化、防護用品の整備等を進め、新幹線車内のセキュリティ確保に努めていきます。
[営業施策等]
営業施策については、CS(お客様満足)の向上を鉄道事業の基本戦略の一つに位置付け、お客様の多様なニーズにお応えする施策を推進しながら、ビジネス・観光需要の獲得、創出に取り組んでいます。
引き続き、CSの向上に向けた各種施策に取り組むとともに、新幹線における輸送サービスの品質向上、近畿エリアでの線区価値向上、西日本各エリアでの地域と連携した観光誘客、訪日外国人のお客様への対応等を進めました。
また、「平成30年7月豪雨」からの復興を目的とした「がんばろう!西日本」キャンペーンの実施等、割引切符の設定やPRに努め、観光需要の喚起等に取り組みました。
さらに、3月に実施予定のダイヤ改正では、新線・新駅の開業、着席サービスの充実などの輸送改善に向けた取り組みを実施する予定です。
(主な具体的取り組み)
ア.新幹線
・500系「ハローキティ新幹線」の運行開始(昨年6月)
・「日本の美は、北陸にあり。」キャンペーン及び「Japanese Beauty Hokuriku」キャンペーンの実施(同4~3月)
イ.近畿エリア
・茨木駅のリニューアル(同4月)
・おおさか東線新大阪駅~放出駅間の開業(本年3月予定)
・嵯峨野線京都駅~丹波口駅間の梅小路京都西駅の開業(同3月予定)
・特急「らくラクはりま」の運転開始及び新快速「Aシート」の導入(同3月予定)
ウ.西日本各エリア
・「せとうちキャンペーン」の実施(昨年3~6月)
・「山陰デスティネーションキャンペーン」の実施(同7~9月)
・観光列車「あめつち」運行開始(同7月)
・「がんばろう!西日本」キャンペーンの実施(同8月~)
・ICOCAの利用可能エリアの拡大(山陽本線、赤穂線、北陸本線)(同9月)
・ICOCAポイントサービス、PiTaPaポストペイサービスの開始(同10月)
エ.CSの向上
・チャットによるお忘れ物問い合わせ窓口の設置及びお忘れ物専用ダイヤルの開設(同5月)
・公式Twitterでの運行情報提供の開始(同8月)
オ.訪日のお客様への対応、需要の創出
・京都駅の「みどりの窓口」内における訪日のお客様専用窓口の機能強化(同4月)
・シンガポール事務所の支店化による現地旅行業者との販売連携や宣伝活動の強化(同4月)
・訪日のお客様向けのインターネット予約サービスの提供開始(本年3月予定)
・災害時等を含めた多言語での情報発信等の更なる強化
バス事業、船舶事業(宮島航路)については、安全輸送を基本とし、お客様のご利用に応じた輸送改善等の実施により、利便性向上に努めました。
運輸業セグメントでは、自然災害によるご利用減等のため、営業収益は前年同期比0.1%減の7,193億円となりましたが、復旧工事に最優先で取り組んだため、計画していた工事の一部について工程調整を行ったことにより、営業費用が減少し、営業利益は同5.6%増の1,383億円となりました。
② 流通業
流通業については、直営業態の運営力を強化し、駅ナカの利便性向上を図るとともに、駅ソトへの展開も推進し、競争力のあるブランドの確立に向けて取り組んでいます。
当第3四半期連結累計期間においては、㈱セブン-イレブン・ジャパン(以下、SEJ)との提携店舗の新規出店拡大を推進するとともに、既存店舗の収益性向上に取り組みました。
百貨店においては、訪日観光需要の獲得等に取り組むとともに、さらなる魅力向上のため、ジェイアール京都伊勢丹では開業以来最大規模となるリニューアル工事を進め、地下1階食品フロアの増床に取り組みました。
さらに、流通業セグメントに区分される宿泊特化型ホテルについては、「ヴィアイン新大阪正面口」(昨年7月)、「ヴィアイン名古屋駅前椿町」(同8月)、「ヴィアイン飯田橋後楽園」(同9月)を開業しました。
その結果、流通業セグメントでは、SEJ提携店舗をはじめとする物販・飲食業の売上げが堅調に推移し、営業収益は前年同期比2.2%増の1,843億円となりましたが、ヴィアイン開業経費等の増加に伴い、営業利益は同9.4%減の56億円となりました。
③ 不動産業
不動産業については、当社グループの保有資産の活用によりお客様の利便性向上や沿線価値向上につながる鉄道事業と親和性の高い事業と捉えて、ショッピングセンターの開発、運営や住宅分譲をはじめとする販売事業等を進めました。
昨年4月には、「LUCUA osaka」地下2階に、新しい食のエリア「LUCUA FOOD HALL」を開業し、一昨年からの地下階リニューアルが完了しました。また、同9月には広島駅の商業施設「ekie(エキエ)」第3期を開業しました。同11月には岸辺駅北側に北大阪健康医療都市(健都)の中核となる複合施設として「VIERRA岸辺健都」を開業しました。
さらに、当社鉄道の沿線外及びエリア外の有望市場についても、不動産販売、賃貸事業展開を進めました。
その結果、不動産業セグメントでは商業施設のリニューアル効果等により、営業収益は前年同期比4.2%増の1,050億円となりましたが、大型賃貸物件の開業経費等により、営業利益は同3.7%減の280億円となりました。
④ その他
ホテル業については、堅調な宿泊需要とお客様の多様なニーズに対応するため、訪日のお客様の受入体制整備等の運営力の強化や、新規ホテルの出店拡大等を推進しました。
昨年6月には、当社グループホテルの新業態であるハイクラス宿泊主体型ホテル「ホテルヴィスキオ大阪」を開業するとともに、尼崎駅直結の「ホテルホップインアミング」を「ホテルヴィスキオ尼崎」としてリブランドオープンしました。また、同8月にはキャビンスタイルホテル「ファーストキャビンステーション和歌山駅」を開業しました。さらに、経営判断を迅速化し、客室改装等によりブランド価値のさらなる向上を図るため、㈱奈良ホテルの株式を追加取得し、完全子会社化しました。今後も「ホテルグランヴィア」をはじめとするシティホテル、宿泊特化型ホテル「ヴィアイン」等、様々なニーズに対応するため、多様なブランド構成で沿線外及びエリア外も含めて展開していきます。
旅行業については、訪日のお客様への営業展開を強化するとともに、法人営業における受注拡大、WEB専用商品をはじめとする個人向け商品の販売拡大等に取り組みました。
その結果、その他セグメントでは工事業において受注が増加し、営業収益は前年同期比9.5%増の1,202億円となりましたが、ホテル業における新規開業の経費増や「三宮ターミナルホテル」閉館の影響等により、営業利益は同9.0%減の71億円となりました。
運輸業のうち、当社の鉄道事業の営業成績は以下のとおりであります。
ア.輸送実績
(注)1.キロ程欄の上段括弧書は、外数で第三種鉄道事業のキロ程であり、それ以外は第一種鉄道事業及び第二種鉄道事業のキロ程であります。また、前年同期比は、前年第3四半期末の数値を記載しております。
2.輸送人キロ欄の近畿圏は、近畿統括本部の地域について記載しております。
イ.収入実績
(注) 旅客収入欄の近畿圏は、近畿統括本部の地域について記載しております。
(2)資産、負債及び純資産の状況
当第3四半期連結会計期間末の総資産額は3兆1,460億円となり、前連結会計年度末と比較し741億円増加しました。これは主に、たな卸資産の増加によるものです。
負債総額は1兆9,723億円となり、前連結会計年度末と比較し168億円増加しました。これは主に、社債の増加によるものです。
純資産総額は1兆1,736億円となり、前連結会計年度末と比較し573億円増加しました。これは主に、利益剰余金の増加によるものです。
なお、「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 平成30年2月16日)等を第1四半期連結会計期間の期首から適用しており、資産、負債及び純資産の状況については当該会計基準等を遡って適用した前連結会計年度末の数値で比較を行っております。
(3)経営方針、事業上及び財務上の対処すべき課題
当第3四半期連結累計期間において、当連結会社の経営方針、事業上及び財務上の対処すべき課題について重要な変更はありません。
(4)研究開発活動
当第3四半期連結累計期間の研究開発費の総額は37億円であります。
なお、当第3四半期連結累計期間における研究開発活動の状況に、重要な変更はありません。
(5)主要な設備
① 新設、休止、大規模改修、除却、売却等について、当第3四半期連結累計期間に著しい変動があったものは、次のとおりであります。
当第3四半期連結累計期間において完成した重要な設備の新設
② 前連結会計年度末において計画中であった重要な設備の新設、除却等について、当第3四半期連結累計期間に著しい変更があったものは、次のとおりであります。
当第3四半期連結累計期間に新たに確定した重要な設備の新設の計画
当社は、2005年4月25日、福知山線塚口駅~尼崎駅間において、106名のお客様の尊い命を奪い、500名を超えるお客様を負傷させるという、極めて重大な事故を惹き起こしました。事故現場については、昨年9月に「祈りの杜 福知山線列車事故現場」として、整備が完了しました。福知山線列車事故のような事故を二度と発生させないとの変わらぬ決意で、引き続き被害に遭われた方々へ真摯に向き合い対応するとともに、安全性の向上に向け、弛まぬ努力を積み重ねていきます。
当社グループは、今年度より「JR西日本グループ中期経営計画2022」(以下、「中計2022」)と、その中核をなす安全の具体的計画として、「JR西日本グループ鉄道安全考動計画2022」(以下、「安全考動計画2022」)をスタートさせました。また、当社グループのありたい姿の実現を技術面から模索していく「JR西日本グループ技術ビジョン」を策定しました。
これらのもと、中長期的な企業価値向上に向けて、各種施策を推進しました。一方で、当社エリアにおいて、大阪北部地震(昨年6月)、「平成30年7月豪雨」(同7月)、台風21号、24号(同9月)等の自然災害が発生しました。特に「平成30年7月豪雨」に関しては、現在も芸備線の一部区間で運転を見合わせていますが、地域の皆様と協力しながら復旧に全力で取り組むとともに、被災地復興に向けての取り組みを継続していきます。
引き続き、「中計2022」に掲げるグループ共通戦略である「地域価値の向上」、「線区価値の向上」、「事業価値の向上」に加え、鉄道事業、創造事業それぞれの基本戦略、事業戦略を推進し、めざす未来である「人々が出会い、笑顔が生まれる、安全で豊かな社会」づくりに貢献していきます。
また、昨年11月に大阪・関西での開催が決定した2025年国際博覧会(いわゆる万博)に向けて、訪日のお客様の受け入れ体制充実、国内外双方に向けた誘客等、運営面及び営業面での準備を行うとともに、この機会を捉え、社会インフラを担う企業として貢献しつつ、中長期的な成長に向けた取り組みを進めていきます。あわせて、ラグビーワールドカップ2019日本大会、2020年東京オリンピック・パラリンピックといった国際的な大型イベント等、グループ一体での成長機会を捉えた取り組みも進めていきます。
当第3四半期連結累計期間においては、運輸業セグメントで自然災害によるご利用減等のため減収となりましたが、その他の各セグメントが堅調に推移し、営業収益は前年同期比1.6%増の1兆1,290億円、運輸業セグメントで災害復旧工事を優先するため工事の工程調整等を行ったこと等による営業費用の減少により営業利益は同2.6%増の1,797億円、経常利益は同3.5%増の1,678億円となりました。しかしながら、法人税等を控除した親会社株主に帰属する四半期純利益は、自然災害による特別損失を計上したことにより、同9.8%減の977億円となりました。自然災害により一時的に影響を受けたものの、引き続き「中計2022」で掲げた各種施策に着実に取り組んでいきます。
今後も、人口減少に伴う市場の縮小や労働力の減少、激甚化する自然災害等、当社グループを取り巻く経営環境は厳しい状況にありますが、当社グループの強みに磨きをかけ続けるとともに、新たな市場や事業領域への展開に挑戦し、中長期的な企業価値向上に向けて取り組んでいきます。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
① 運輸業
[安全性向上等]
当社グループは、「安全考動計画2022」のもと、「組織全体で安全を確保する仕組み」、「安全最優先の風土」の構築に向け、安全の取り組みを積み重ねています。
安全性向上の取り組みとして、ホームや踏切の安全対策、地震対策や豪雨対策等の自然災害対策、新技術による保安度向上の取り組み等を推進しています。
ホームの安全対策として、乗降10万人以上の駅等におけるホーム柵の整備等を引き続き進めるとともに、東淀川駅橋上化に伴う「開かずの踏切」の廃止など、踏切の安全対策も進めました。
自然災害対策のうち、地震対策については、過去の震災の経験等を踏まえ、高架橋柱や駅舎等の耐震補強工事、山陽新幹線における逸脱防止ガードの整備等を引き続き推進しています。
また、豪雨対策については、京阪神エリアにおいて集中的に取り組んでいる斜面防災対策により、対象線区における運転規制時間を対策実施前と比較して約45%削減するレベルに到達しています。さらに、2022年度までの計画において、琵琶湖線、JR京都線、JR神戸線の主に特急・新快速列車が走行する区間についても斜面防災対策を進めており、工事完了後は実施前と比較して運転規制時間を大幅に削減できる見込みです。なお、これらの対策と合わせて、安全最優先の観点から、著しく勢力の強い台風接近に際して、事前にお知らせをしたうえで、計画的な列車の運休を各エリアで実施しました。今後も必要に応じて実施し、その際にはお客様や地域のご理解を得るため、引き続き適切な情報提供等に努めていきます。
加えて、新技術による保安度向上の取り組みとして、運転支援機能の充実を図った車上主体式の新保安システム(D-TAS)を山陽本線西広島駅~岩国駅間で昨年5月に使用開始しました。
新幹線の安全性向上については、一昨年12月の新幹線の重大インシデントを踏まえ、安全管理体制を強化するため、鉄道本部内に「新幹線鉄道事業本部」を設置し、ハード・ソフト両面からの対策を実行しています。ハード面では、超音波探傷検査の実施や目視による台車の入念点検等により車両の安全確保に万全を尽くすとともに、走行中の台車の異常を検知する装置の導入等の対策を進めており、まず今年度中に、台車異常検知装置をN700A(16両編成)の全編成に設置するとともに、地上に設置する台車温度検知装置の1台目を稼働させる予定です。ソフト面では、現場との意思疎通や系統間連携の円滑化、迅速な意思決定による速やかな施策の策定・実行を可能にするとともに、社員が異常を認めた場合や安全が確認できない場合は迷わず列車を止めることや、関係者に報告し速やかな組織的対応により安全の確保を行うことを徹底し、異常時の適切な対応に向けた対策を着実に実施しています。
今後も、ハード・ソフト両面にわたり対策を計画的に推進し、レベルアップを図っていきます。
加えて、車内防犯カメラの増設や警備員の車内巡回強化、防護用品の整備等を進め、新幹線車内のセキュリティ確保に努めていきます。
[営業施策等]
営業施策については、CS(お客様満足)の向上を鉄道事業の基本戦略の一つに位置付け、お客様の多様なニーズにお応えする施策を推進しながら、ビジネス・観光需要の獲得、創出に取り組んでいます。
引き続き、CSの向上に向けた各種施策に取り組むとともに、新幹線における輸送サービスの品質向上、近畿エリアでの線区価値向上、西日本各エリアでの地域と連携した観光誘客、訪日外国人のお客様への対応等を進めました。
また、「平成30年7月豪雨」からの復興を目的とした「がんばろう!西日本」キャンペーンの実施等、割引切符の設定やPRに努め、観光需要の喚起等に取り組みました。
さらに、3月に実施予定のダイヤ改正では、新線・新駅の開業、着席サービスの充実などの輸送改善に向けた取り組みを実施する予定です。
(主な具体的取り組み)
ア.新幹線
・500系「ハローキティ新幹線」の運行開始(昨年6月)
・「日本の美は、北陸にあり。」キャンペーン及び「Japanese Beauty Hokuriku」キャンペーンの実施(同4~3月)
イ.近畿エリア
・茨木駅のリニューアル(同4月)
・おおさか東線新大阪駅~放出駅間の開業(本年3月予定)
・嵯峨野線京都駅~丹波口駅間の梅小路京都西駅の開業(同3月予定)
・特急「らくラクはりま」の運転開始及び新快速「Aシート」の導入(同3月予定)
ウ.西日本各エリア
・「せとうちキャンペーン」の実施(昨年3~6月)
・「山陰デスティネーションキャンペーン」の実施(同7~9月)
・観光列車「あめつち」運行開始(同7月)
・「がんばろう!西日本」キャンペーンの実施(同8月~)
・ICOCAの利用可能エリアの拡大(山陽本線、赤穂線、北陸本線)(同9月)
・ICOCAポイントサービス、PiTaPaポストペイサービスの開始(同10月)
エ.CSの向上
・チャットによるお忘れ物問い合わせ窓口の設置及びお忘れ物専用ダイヤルの開設(同5月)
・公式Twitterでの運行情報提供の開始(同8月)
オ.訪日のお客様への対応、需要の創出
・京都駅の「みどりの窓口」内における訪日のお客様専用窓口の機能強化(同4月)
・シンガポール事務所の支店化による現地旅行業者との販売連携や宣伝活動の強化(同4月)
・訪日のお客様向けのインターネット予約サービスの提供開始(本年3月予定)
・災害時等を含めた多言語での情報発信等の更なる強化
バス事業、船舶事業(宮島航路)については、安全輸送を基本とし、お客様のご利用に応じた輸送改善等の実施により、利便性向上に努めました。
運輸業セグメントでは、自然災害によるご利用減等のため、営業収益は前年同期比0.1%減の7,193億円となりましたが、復旧工事に最優先で取り組んだため、計画していた工事の一部について工程調整を行ったことにより、営業費用が減少し、営業利益は同5.6%増の1,383億円となりました。
② 流通業
流通業については、直営業態の運営力を強化し、駅ナカの利便性向上を図るとともに、駅ソトへの展開も推進し、競争力のあるブランドの確立に向けて取り組んでいます。
当第3四半期連結累計期間においては、㈱セブン-イレブン・ジャパン(以下、SEJ)との提携店舗の新規出店拡大を推進するとともに、既存店舗の収益性向上に取り組みました。
百貨店においては、訪日観光需要の獲得等に取り組むとともに、さらなる魅力向上のため、ジェイアール京都伊勢丹では開業以来最大規模となるリニューアル工事を進め、地下1階食品フロアの増床に取り組みました。
さらに、流通業セグメントに区分される宿泊特化型ホテルについては、「ヴィアイン新大阪正面口」(昨年7月)、「ヴィアイン名古屋駅前椿町」(同8月)、「ヴィアイン飯田橋後楽園」(同9月)を開業しました。
その結果、流通業セグメントでは、SEJ提携店舗をはじめとする物販・飲食業の売上げが堅調に推移し、営業収益は前年同期比2.2%増の1,843億円となりましたが、ヴィアイン開業経費等の増加に伴い、営業利益は同9.4%減の56億円となりました。
③ 不動産業
不動産業については、当社グループの保有資産の活用によりお客様の利便性向上や沿線価値向上につながる鉄道事業と親和性の高い事業と捉えて、ショッピングセンターの開発、運営や住宅分譲をはじめとする販売事業等を進めました。
昨年4月には、「LUCUA osaka」地下2階に、新しい食のエリア「LUCUA FOOD HALL」を開業し、一昨年からの地下階リニューアルが完了しました。また、同9月には広島駅の商業施設「ekie(エキエ)」第3期を開業しました。同11月には岸辺駅北側に北大阪健康医療都市(健都)の中核となる複合施設として「VIERRA岸辺健都」を開業しました。
さらに、当社鉄道の沿線外及びエリア外の有望市場についても、不動産販売、賃貸事業展開を進めました。
その結果、不動産業セグメントでは商業施設のリニューアル効果等により、営業収益は前年同期比4.2%増の1,050億円となりましたが、大型賃貸物件の開業経費等により、営業利益は同3.7%減の280億円となりました。
④ その他
ホテル業については、堅調な宿泊需要とお客様の多様なニーズに対応するため、訪日のお客様の受入体制整備等の運営力の強化や、新規ホテルの出店拡大等を推進しました。
昨年6月には、当社グループホテルの新業態であるハイクラス宿泊主体型ホテル「ホテルヴィスキオ大阪」を開業するとともに、尼崎駅直結の「ホテルホップインアミング」を「ホテルヴィスキオ尼崎」としてリブランドオープンしました。また、同8月にはキャビンスタイルホテル「ファーストキャビンステーション和歌山駅」を開業しました。さらに、経営判断を迅速化し、客室改装等によりブランド価値のさらなる向上を図るため、㈱奈良ホテルの株式を追加取得し、完全子会社化しました。今後も「ホテルグランヴィア」をはじめとするシティホテル、宿泊特化型ホテル「ヴィアイン」等、様々なニーズに対応するため、多様なブランド構成で沿線外及びエリア外も含めて展開していきます。
旅行業については、訪日のお客様への営業展開を強化するとともに、法人営業における受注拡大、WEB専用商品をはじめとする個人向け商品の販売拡大等に取り組みました。
その結果、その他セグメントでは工事業において受注が増加し、営業収益は前年同期比9.5%増の1,202億円となりましたが、ホテル業における新規開業の経費増や「三宮ターミナルホテル」閉館の影響等により、営業利益は同9.0%減の71億円となりました。
運輸業のうち、当社の鉄道事業の営業成績は以下のとおりであります。
ア.輸送実績
区分 | 単位 | 第32期第3四半期累計期間 (自 2018年4月1日 至 2018年12月31日) | |||||
前年同期比 | |||||||
営業日数 | 日 | 275 | ― | ||||
キロ程 | 新幹線 | キロ | 812.6 | 812.6 | |||
在来線 | キロ | ( 28.0 ) 4,088.0 | ( 28.0 ) 4,196.1 | ||||
計 | キロ | ( 28.0 ) 4,900.6 | ( 28.0 ) 5,008.7 | ||||
輸送人員 | 定期 | 千人 | 903,310 | 100.2 | % | ||
定期外 | 千人 | 549,257 | 98.7 | ||||
計 | 千人 | 1,452,568 | 99.7 | ||||
輸 送 人 キ ロ | 新幹線 | 定期 | 千人キロ | 665,196 | 103.6 | ||
定期外 | 千人キロ | 15,584,077 | 101.0 | ||||
計 | 千人キロ | 16,249,273 | 101.1 | ||||
在 来 線 | 近 畿 圏 | 定期 | 千人キロ | 14,364,770 | 99.8 | ||
定期外 | 千人キロ | 8,272,373 | 98.9 | ||||
計 | 千人キロ | 22,637,144 | 99.5 | ||||
そ の 他 | 定期 | 千人キロ | 3,090,461 | 98.4 | |||
定期外 | 千人キロ | 3,163,548 | 97.0 | ||||
計 | 千人キロ | 6,254,010 | 97.7 | ||||
計 | 定期 | 千人キロ | 17,455,232 | 99.6 | |||
定期外 | 千人キロ | 11,435,922 | 98.4 | ||||
計 | 千人キロ | 28,891,154 | 99.1 | ||||
合計 | 定期 | 千人キロ | 18,120,428 | 99.7 | |||
定期外 | 千人キロ | 27,019,999 | 99.9 | ||||
計 | 千人キロ | 45,140,428 | 99.8 |
(注)1.キロ程欄の上段括弧書は、外数で第三種鉄道事業のキロ程であり、それ以外は第一種鉄道事業及び第二種鉄道事業のキロ程であります。また、前年同期比は、前年第3四半期末の数値を記載しております。
2.輸送人キロ欄の近畿圏は、近畿統括本部の地域について記載しております。
イ.収入実績
区分 | 単位 | 第32期第3四半期累計期間 (自 2018年4月1日 至 2018年12月31日) | ||||||
前年同期比 | ||||||||
旅 客 運 輸 収 入 | 旅 客 収 入 | 新幹線 | 定期 | 百万円 | 8,460 | 103.7 | % | |
定期外 | 百万円 | 339,803 | 101.9 | |||||
計 | 百万円 | 348,263 | 101.9 | |||||
在 来 線 | 近 畿 圏 | 定期 | 百万円 | 88,678 | 99.8 | |||
定期外 | 百万円 | 142,617 | 98.4 | |||||
計 | 百万円 | 231,296 | 98.9 | |||||
そ の 他 | 定期 | 百万円 | 18,896 | 98.3 | ||||
定期外 | 百万円 | 61,950 | 95.8 | |||||
計 | 百万円 | 80,847 | 96.3 | |||||
計 | 定期 | 百万円 | 107,575 | 99.6 | ||||
定期外 | 百万円 | 204,568 | 97.6 | |||||
計 | 百万円 | 312,143 | 98.3 | |||||
合計 | 定期 | 百万円 | 116,035 | 99.9 | ||||
定期外 | 百万円 | 544,372 | 100.2 | |||||
計 | 百万円 | 660,407 | 100.2 | |||||
荷物収入 | 百万円 | 2 | 58.8 | |||||
合計 | 百万円 | 660,409 | 100.2 | |||||
鉄道線路使用料収入 | 百万円 | 3,509 | 97.2 | |||||
運輸雑収 | 百万円 | 53,752 | 97.7 | |||||
収入合計 | 百万円 | 717,671 | 100.0 |
(注) 旅客収入欄の近畿圏は、近畿統括本部の地域について記載しております。
(2)資産、負債及び純資産の状況
当第3四半期連結会計期間末の総資産額は3兆1,460億円となり、前連結会計年度末と比較し741億円増加しました。これは主に、たな卸資産の増加によるものです。
負債総額は1兆9,723億円となり、前連結会計年度末と比較し168億円増加しました。これは主に、社債の増加によるものです。
純資産総額は1兆1,736億円となり、前連結会計年度末と比較し573億円増加しました。これは主に、利益剰余金の増加によるものです。
なお、「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 平成30年2月16日)等を第1四半期連結会計期間の期首から適用しており、資産、負債及び純資産の状況については当該会計基準等を遡って適用した前連結会計年度末の数値で比較を行っております。
(3)経営方針、事業上及び財務上の対処すべき課題
当第3四半期連結累計期間において、当連結会社の経営方針、事業上及び財務上の対処すべき課題について重要な変更はありません。
(4)研究開発活動
当第3四半期連結累計期間の研究開発費の総額は37億円であります。
なお、当第3四半期連結累計期間における研究開発活動の状況に、重要な変更はありません。
(5)主要な設備
① 新設、休止、大規模改修、除却、売却等について、当第3四半期連結累計期間に著しい変動があったものは、次のとおりであります。
当第3四半期連結累計期間において完成した重要な設備の新設
工事件名 | セグメントの名称 | 総工事費 | 完成年月 |
車両新造工事 | 運輸業 | 百万円 | |
11,694 | 2018年6月 | ||
12,566 | 2018年9月 | ||
18,503 | 2018年12月 | ||
岸辺駅ビル開発 | 不動産業 | 5,873 | 2018年11月 |
② 前連結会計年度末において計画中であった重要な設備の新設、除却等について、当第3四半期連結累計期間に著しい変更があったものは、次のとおりであります。
当第3四半期連結累計期間に新たに確定した重要な設備の新設の計画
工事件名 | セグメントの 名称 | 予算総額 | 工事着手年月 | 完成予定年月 |
百万円 | ||||
博多総合車両所のリニューアル | 運輸業 | 27,114 | 2018年11月 | 2028年度 |