有価証券報告書-第33期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

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2020/06/24 10:45
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(1)経営成績等の概要
当社グループは、「中計2022」及びその中核をなす「安全考動計画2022」に基づき、中長期的な企業価値向上に向けて、各種施策を着実に推進しました。
鉄道事業では、おおさか東線の全線開業や新駅の開業による鉄道ネットワークの充実を通じた線区価値向上等に取り組みました。また、「平成30年7月豪雨」の被災により長期間運転を見合わせていた芸備線を昨年10月に全線復旧するなど、自然災害からの復旧・復興の取り組みも進めました。創造事業においても、「ホテルヴィスキオ京都」をはじめとした複数ホテルの開業、広島駅の商業施設「エキエ」の全面開業等、各事業で取り組みを進めました。また、鉄道事業と創造事業が連携し相乗効果を発揮するさまざまな事業展開にグループ一体で取り組みました。しかしながら、第4四半期に入り新型コロナウイルス感染症が国内外で拡大する中、当社では、お客様や社員の感染防止を図るため、迅速な対応に努めてきましたが、観光のご利用減、出張の抑制等の出控えや、消費の減退等、非常に厳しい経営環境となりました。
当連結会計年度においては、上記の取り組み等により、第3四半期決算までは営業収益、営業利益ともに前年を上回る形で堅調に推移していましたが、新型コロナウイルス感染症の拡大でご利用状況が一変して減少したことにより、営業収益は前期比1.4%減の1兆5,082億円、営業利益は同18.4%減の1,606億円、経常利益は同19.1%減の1,483億円、法人税等を控除した親会社株主に帰属する当期純利益は同13.0%減の893億円となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
① 運輸業
[安全性向上等]
当社は、2005年4月25日に福知山線列車事故を発生させたことを踏まえ、引き続き被害に遭われた方々への真摯な対応、安全性向上への弛まぬ努力を積み重ねるとともに、このような重大な事故を二度と発生させないとの決意のもと、「安全考動計画2022」を策定し、ハード、ソフト両面から安全性向上の取り組みや安全マネジメントの仕組みづくりを進めました。
新幹線では、より安全性、信頼性を追求した新製車両への置き換えを進めました。また、走行中の台車の異常を把握するための装置の整備も推進しました。
ホームの安全対策としては、山陽新幹線の主要駅及び在来線のご利用の多い駅等におけるホーム柵の整備等を引き続き進めました。
激甚化する自然災害への対策としては、引き続き、斜面防災対策をはじめとした豪雨対策を行うとともに、地震に対しては、山陽新幹線における逸脱防止ガードの整備や、建物、高架橋等の耐震補強等の対策を進めました。
加えて、列車内における防犯対策も推進しました。
(主な具体的取り組み)
ア.新幹線安全対策
・東海道・山陽新幹線を直通する700系車両の新製車両(N700A)への置き換え
・山陽新幹線での地上に設置する台車温度検知装置の整備推進
・N700系への台車異常検知装置の整備推進
イ.ホーム、踏切の安全対策
・京橋駅の全のりば、三ノ宮駅、大阪駅、明石駅の一部のりばのホーム柵使用開始(昨年10月~3月)
・岡山駅(新幹線)の一部のりばのホーム柵使用開始(昨年12月)
ウ.自然災害対策
・琵琶湖線、JR京都線の主に特急・新快速列車が走行する区間等における斜面防災対策の継続
エ.車内防犯対策
・特急「はるか」車内への防護装具等の搭載や駅への防護盾の配備拡大(昨年6月以降順次)
・新幹線客室内への防犯カメラ増設推進(N700A、N700系)
[営業施策等]
営業施策についてはCS(お客様満足)の向上を鉄道事業の基本戦略の一つに位置付け、お客様の多様なニーズにお応えする施策を推進しながら、訪日のお客様も含めたビジネス・観光需要の獲得、創出に取り組みました。
加えて、新幹線における輸送サービスの品質向上、近畿エリアでの線区価値向上、西日本各エリアでの地域と連携した観光誘客等に取り組みました。
(主な具体的取り組み)
ア.新幹線
・「観光で地域を元気に」北陸信越エリアへの旅を応援する取り組みの実施(北陸新幹線開業5周年キャンペーン等)(昨年10月~)
・北陸新幹線における「新幹線eチケットサービス」の開始(3月)
イ.近畿エリア
・大阪環状線への新型車両「323系」の投入完了(昨年6月)
・新大阪駅~奈良駅間での特急「まほろば」臨時運行(同11~12月、3月~)
・特急「はるか」への新型車両「271系」投入(3月)
ウ.西日本各エリア
・せとうちエリアにおけるプレデスティネーションキャンペーンの実施及び「観光型MaaS『setowa』」実証実験の実施(昨年10月~3月)
・和歌山線、きのくに線におけるICOCA利用可能エリア拡大(3月)
エ.訪日のお客様への対応
・「JR-WEST ONLINE TRAIN RESERVATION」での訪日のお客様向け専用商品の取り扱い開始(昨年5月)
・新大阪駅に「Travel Service Center SHIN-OSAKA」の開設(同8月)
・有力プラットフォーム(KLOOK、アリババ)等と連携した商品の販売促進(同9月~)
・訪日のお客様向けの券売機QRコード決済サービスの開始(3月)
バス事業、船舶事業(宮島航路)については、安全輸送を基本とし、お客様のご利用に応じた輸送改善等の実施により、利便性向上に努めました。
運輸業セグメントでは、第3四半期決算までは、これらの取り組みに加え、多客期等のご利用が好調であったこと等により堅調に推移していましたが、新型コロナウイルス感染症の拡大によるご利用減等により、営業収益は前期比2.1%減の9,334億円、営業利益は同22.7%減の1,053億円となりました。
② 流通業
流通業については、直営業態の運営力を強化し、駅ナカの利便性向上を図るとともに、駅ソトへの展開も推進し、競争力のあるブランドの確立に向けて取り組みました。
「ジェイアール京都伊勢丹」では2~5階の大規模リニューアルが2月に完了しました。
また、流通業セグメントに区分される宿泊特化型ホテルについては、「ヴィアイン」4店舗(京都駅八条口、博多口駅前、心斎橋四ツ橋、日本橋人形町)を昨年5月から8月にかけて開業しました。
しかしながら、流通業セグメントでは、駅ナカテナントとの契約方式の変更や新型コロナウイルス感染症の拡大によるご利用減等により、営業収益は前期比7.9%減の2,260億円、営業利益は同37.2%減の38億円となりました。
③ 不動産業
不動産業については、当社グループの保有資産の活用によりお客様の利便性向上や沿線価値向上につながる鉄道事業と親和性の高い事業と捉えて、ショッピングセンターの開発、運営や住宅分譲をはじめとする販売事業等を進めました。
昨年7月には、「ルクア大阪」を運営するJR西日本SC開発㈱と「天王寺ミオ」を運営する天王寺SC開発㈱とを合併しました。両社が保有するノウハウや人材等の経営資源を一元化し、グループSC全体で活用し、専門性に磨きをかけていきます。
また、同9月にはJR西日本グループショッピングセンター共通ポイント及びスマートフォン向けアプリ「WESPO」のサービスを開始しました。同10月には広島駅の商業施設「エキエ」がグランドオープンしたほか、同11月には駅ソト立地のショッピングセンター「甲子園口グリーンプレイス」を開業しました。
さらに、当社鉄道の沿線外及びエリア外の有望市場についても、不動産販売、賃貸事業展開を進め、同11月には商業施設「ビエラ」が東京エリアへ初めて進出しました。
不動産業セグメントでは、営業収益は不動産販売が好調であったこと等により、前期比11.2%増の1,651億円となりましたが、営業利益は新型コロナウイルス感染症の拡大によるショッピングセンターのご利用減の影響や一部施設のリニューアル工事等により、同2.2%減の349億円となりました。
④ その他
ホテル業については、訪日のお客様の受入体制整備等の運営力の強化や、新規ホテルの出店拡大等を推進しました。
昨年5月には、ハイクラス宿泊主体型ホテル「ホテルヴィスキオ京都」を開業しました。また、同11月には、「ホテルグランヴィア大阪」の館内全面リニューアル第1期が完了しました。
旅行業については、訪日のお客様への営業展開を強化するとともに、法人営業における受注拡大、WEB専用商品をはじめとする個人向け商品の販売拡大等に取り組みました。
その他セグメントでは、営業収益は昨年のホテル新規開業等により、前期比1.2%増の1,836億円となりましたが、営業利益は新型コロナウイルス感染症の拡大によるホテルのご利用減やホテルの新規開業に伴う費用増等により、同7.3%減の197億円となりました。
運輸業のうち、当社の鉄道事業の営業成績は以下のとおりであります。
ア.輸送実績
区分単位当事業年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
前事業年度比
営業日数366-
キロ程新幹線キロ812.6812.6
在来線キロ(28.0)
4,090.5
(28.0)
4,090.5
キロ(28.0)
4,903.1
(28.0)
4,903.1
客車走行キロ新幹線千キロ560,858100.8%
在来線千キロ803,842103.2
千キロ1,364,700102.2
輸送人員定期千人1,189,705100.8
定期外千人721,86098.6
千人1,911,565100.0




新幹線定期千人キロ892,865101.4
定期外千人キロ19,717,31196.4
千人キロ20,610,17796.6




定期千人キロ18,827,532100.3
定期外千人キロ10,866,31998.5
千人キロ29,693,85199.7


定期千人キロ3,967,16199.5
定期外千人キロ4,316,844101.4
千人キロ8,284,006100.5
定期千人キロ22,794,694100.2
定期外千人キロ15,183,16399.3
千人キロ37,977,85799.8
合計定期千人キロ23,687,559100.2
定期外千人キロ34,900,47597.6
千人キロ58,588,03498.7
乗車効率新幹線%47.149.2
在来線%37.739.1
%40.642.2

(注)1.キロ程欄の上段括弧書は、外数で第三種鉄道事業のキロ程であり、それ以外は第一種鉄道事業及び第二種鉄道事業のキロ程であります。また、前事業年度比は、前事業年度末の数値を記載しております。
2.客車走行キロ数には、試運転、営業回送を含めておりません。
3.輸送人キロ欄の近畿圏は、近畿統括本部の地域について記載しております。
4.乗車効率欄の前事業年度比は、前事業年度の数値を記載しております。
なお、乗車効率は次の方法により算出しております。
乗車効率 =輸送人キロ
客車走行キロ × 客車平均定員(標準定員)

イ.収入実績
区分単位当事業年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
前事業年度比








新幹線定期百万円11,406101.8%
定期外百万円429,82296.4
百万円441,22896.5




定期百万円117,289100.5
定期外百万円190,21199.4
百万円307,50099.8


定期百万円24,713100.1
定期外百万円83,41899.9
百万円108,13299.9
定期百万円142,002100.4
定期外百万円273,63099.5
百万円415,63399.8
合計定期百万円153,409100.5
定期外百万円703,45297.6
百万円856,86198.1
荷物収入百万円398.7
合計百万円856,86498.1
鉄道線路使用料収入百万円5,360124.5
運輸雑収百万円69,61794.4
収入合計百万円931,84297.9

(注) 旅客収入欄の近畿圏は、近畿統括本部の地域について記載しております。
(2)資産、負債及び純資産の状況
当連結会計年度末の総資産額は、3兆2,752億円となり、前連結会計年度末と比較し、376億円増加しました。これは主に、固定資産の増加によるものです。
負債総額は、2兆521億円となり、前連結会計年度末と比較し、55億円減少しました。これは主に、社債の減少によるものです。
純資産総額は、1兆2,231億円となり、前連結会計年度末と比較し、432億円増加しました。これは主に、利益剰余金の増加によるものです。
(3)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ582億円少ない782億円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
税金等調整前当期純利益が減少したことなどから、営業活動において得た資金は前連結会計年度に比べ495億円少ない2,401億円となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
固定資産の取得による支出が増加したことなどから、投資活動において支出した資金は前連結会計年度に比べ212億円多い2,686億円となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
長期債務の償還による支出が増加したことなどから、財務活動において支出した資金は前連結会計年度に比べ219億円多い291億円となりました。
(4)生産、受注及び販売の実績
当社及びその連結子会社(以下「当社グループ」という。)の大多数は、受注生産形態を取らない業態であります。このため、生産、受注及び販売の状況については、「3[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析]」における各事業のセグメント別経営成績に関連付けて示しております。
(5)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
文中における将来に関する事項は、当有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成における重要な会計上の見積りに退職給付債務があります。退職給付債務の算定は、割引率、昇給率、退職率及び死亡率など数理計算上の基礎率に基づき見積ったものであり、実績と見積りの差が将来の財政状態および経営成績に影響を及ぼします。連結財務諸表では、実績と見積りとの差(数理計算上の差異)はその他の包括利益として認識後、従業員の平均残存勤務期間以内の一定の年数(主として10年)で償却し利益剰余金に振替えられます。
この数理計算上の仮定については、過去の退職実績や給与支払実績に基づく適切なものであると考えていますが、実績との差異や仮定の変動は将来の財政状態および経営成績に影響を及ぼします。
退職給付に関する見積りや前提条件については連結財務諸表注記事項(退職給付関係)を参照願います。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響を含めた繰延税金資産の回収可能性の判断等の会計上の見積りに用いた仮定については、第5[経理の状況]の 1[連結財務諸表等]及び 2[財務諸表等]の(追加情報)に記載しております。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループは、基幹事業である鉄道事業において安全性の向上に全力で取り組むとともに、その他のグループ事業においては、各事業の特性を活かした様々な施策の展開及び保有資産の有効活用等に努めてまいりました。
当連結会計年度においては、各種施策の効果等により第3四半期決算までは営業収益、営業利益ともに前年を上回る形で堅調に推移していましたが、新型コロナウイルス感染症の拡大でご利用状況が一変して減少したことにより、営業収益、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益のいずれも減少しました。
ア.営業収益
営業収益は、前連結会計年度に比べ1.4%、211億円減少の1兆5,082億円となりました。
運輸業セグメントについては、当社の運輸収入の減少などにより、営業収益は前連結会計年度に比べ2.1%、204億円減少の9,334億円となりました。
このうち、新幹線については、顧客利便性の向上に加え、各種キャンペーン等の施策効果により、多客期等のご利用が増加しました。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の拡大によるご利用減等により、前連結会計年度に比べ3.5%、158億円減少の4,412億円となりました。
一方、在来線については、近畿エリアでの線区価値向上に向けた施策や、西日本各エリアでの地域と連携した観光誘客等に取り組みました。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の拡大によるご利用減等により、前連結会計年度に比べ0.2%、7億円減少の4,156億円となりました。
流通業セグメントについては、「ジェイアール京都伊勢丹」では2~5階の大規模リニューアルが完了しました。さらに、流通業セグメントに区分される宿泊特化型ホテルについては、「ヴィアイン」4店舗(京都駅八条口、博多駅前、心斎橋四ツ橋、日本橋人形町)を開業しました。しかしながら、駅ナカテナントとの契約方式の変更や新型コロナウイルス感染症の拡大によるご利用減等に等により、前連結会計年度に比べ7.9%、194億円減少の2,260億円となりました。
不動産業セグメントについては、当社鉄道の沿線内の住宅分譲をはじめとする販売事業等を進めるとともに、広島駅の商業施設「エキエ」がグランドオープンしたほか、駅ソト立地のショッピングセンター「甲子園口グリーンプレイス」を開業しました。さらに、沿線外及びエリア外の有望市場についても、不動産販売、賃貸事業展開を進めたことにより、前連結会計年度に比べ11.2%、166億円増加の1,651億円となりました。
その他セグメントについては、ハイクラス宿泊主体型ホテル「ホテルヴィスキオ京都」を開業するとともに、「ホテルグランヴィア大阪」の館内全面リニューアル第1期が完了しました。旅行業については、訪日のお客様への営業展開を強化するとともに、法人営業における受注拡大、WEB専用商品をはじめとする個人向け商品の販売拡大等に取り組みました。その結果、昨年のホテル新規開業等により、前連結会計年度に比べ1.2%、22億円増加の1,836億円となりました。
イ.営業費
システム関連経費等の業務費の増加やホテルの新規開業に伴う費用の増加などにより、前連結会計年度に比べ1.1%、152億円増加の1兆3,475億円となりました。
ウ.営業利益
営業利益は、前連結会計年度に比べ18.4%、363億円減少の1,606億円となりました。
エ.営業外損益
営業外損益については、支払利息の減少などにより、前連結会計年度に比べ13億円改善し、122億円の損失となりました。
オ.経常利益
経常利益は、前連結会計年度に比べ19.1%、349億円減少の1,483億円となりました。
カ.特別損益
特別損益については、前連結会計年度に「平成30年7月豪雨」による被害に対する復旧費用の計上があったことの反動などで184億円改善し、76億円の損失となりました。
キ.親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ13.0%、133億円減少の893億円となりました。
③ 経営成績に重要な影響を与える要因
ア.収益に影響する要因
[運輸業]
運輸業セグメントは鉄道運輸収入が大宗を占めております。鉄道運輸収入は、主に鉄道利用者数により左右され、航空機を含めた他の輸送モード、同業他社との競争や、経済情勢、少子高齢化等、多くの要因により影響を受けます。また、鉄道利用者は、安全性、信頼性をベースに、所要時間・ネットワーク性・運賃・快適性を基準として選択を行うと考えております。
新幹線の収入は、主として、ビジネスや観光旅行客の数に左右され、経済環境や航空機との競争、訪日観光客の動向などに影響を受けます。
アーバンネットワークの収入は通勤・通学客が多いことから、経済情勢の影響を受けにくいと考えておりますが、少子高齢化や都市化等の人口推移による影響を受けると考えております。
その他在来線のうち、都市間輸送の収入は経済情勢や高速バス、自家用車との競争による影響を受けます。また、ローカル線の収入は自家用車との競争や地域の経済情勢及び人口の推移による影響を受けます。
[流通業]
流通業セグメントの収入は、主に百貨店業、物品販売業及び飲食業からの収入で構成されております。当セグメントの収入は、経済情勢及び他の百貨店、物販店舗、レストランとの競争に左右されます。当セグメントの事業の多くが駅やその周辺で行われているため、鉄道輸送量も影響を受ける要因です。しかし、駅は比較的安定したご利用があるため、当セグメントの収益は同業他社に比べ、これらの影響は少ないと考えております。また、新規店舗の開発や既存店舗の廃止によっても左右されます。
[不動産業]
不動産業セグメント収入は、主に駅やその周辺施設の賃貸収入、沿線におけるマンションの分譲販売により得られます。当セグメントは、経済情勢の影響を受けることや、マンション分譲事業の販売数の増減により業績が変動するものの、賃貸事業において、駅は比較的安定したご利用があり、テナントは立地の利便性から駅構内及びその周辺オフィスを好むことから、同業他社に比べ、経済情勢による影響は少ないと考えております。
[その他]
その他セグメントの収入は、主としてホテル業及び旅行業によるものです。ホテル業の収益は、経済情勢や宿泊料金、他ホテルとの競争、訪日観光客の動向に影響されます。また、旅行業による収入は主に他旅行業者との競争、経済情勢やテロなど旅行を妨げる状況により影響を受けます。
その他セグメントには、ホテル業、旅行業のほか、建設事業、広告業等がありますが、そのほとんどが基幹事業である鉄道事業の顧客基盤、駅及びその他の施設の強化を目的としたものであります。
イ.費用に影響する要因
[人件費]
当社は、年齢構成等により退職者数が多い状況にある中で、新規採用等により事業運営に必要な社員数を確保してきております。当事業年度の人件費は2,146億円となっております。
なお、高年齢層の人材を確保し、一層円滑な技術継承を図ること及び高年齢者雇用安定法など法令への対応の観点から、定年後の再雇用制度を設定しております。また、将来にわたり事業を運営しうる体制を構築するという視点で、長期雇用を前提とした新卒採用を中心に採用を行うほか、多様な人材確保等の観点から、契約社員からの採用、中途採用等を実施しており、当事業年度においては950名を超える採用を行いました。
[物件費]
当社は、鉄道事業の特徴である、(ⅰ)多くの設備を有し、安全の確保のために必要なメンテナンスに係るコストの比重が大きい、(ⅱ)収益に連動しない「固定費用」の割合が高いなどの事情から、安全性の確保を大前提として、メンテナンスが容易な車両及び設備の導入、機械化、既存のインフラの改良などにより、これらの経費を構造的に削減する取り組みを行っております。
しかしながら、福知山線列車事故の責任とその重大性及び新幹線重大インシデントを重く受け止め、安全で安心・信頼していただける鉄道を築き上げるために全力で取り組んでいるところであり、当分の間、安全性の向上に必要となる費用の増加が想定されます。
また、対抗輸送機関との競争力向上のため、サービスレベルの向上、販売促進のためのIT化、効率化に寄与する外注化などによる費用の増加も想定されます。
さらに、電気料金の値上げによる費用の増加が想定されます。
[線路使用料等]
当社は、JR東西線を関西高速鉄道株式会社から借り受けており、2004年度以降の線路使用料の年額については、3年度毎に協議し、金利変動等を勘案して決定することとなっております。また、2018年度以降の線路使用料については減額を行い、当事業年度の費用は129億円となっております。
[支払利息]
営業外費用のうち、重要なものとして支払利息があります。当社グループとしては、経営の安定性を保つために長期債務残高や支払利息の水準を注視しております。当連結会計年度の当社グループの支払利息については194億円となり、前連結会計年度に比べ5億円減少しております。
④ 流動性と資本の源泉
ア.キャッシュ・フロー
[営業活動によるキャッシュ・フロー]
税金等調整前当期純利益が減少したことなどから、営業活動において得た資金は前連結会計年度に比べ495億円少ない2,401億円となりました。
[投資活動によるキャッシュ・フロー]
固定資産の取得による支出が増加したことなどから、投資活動において支出した資金は前連結会計年度に比べ212億円多い2,686億円となりました。
[財務活動によるキャッシュ・フロー]
長期債務の償還による支出が増加したことなどから、財務活動において支出した資金は前連結会計年度に比べ219億円多い291億円となりました。
以上の結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末に比べ582億円少ない782億円となりました。
イ.資本需要と設備投資
当社グループは、当連結会計年度において総額2,724億円の設備投資を実施し、そのうち運輸業では1,892億円、流通業、不動産業及びその他では、103億円、640億円及び87億円をそれぞれ実施しました。運輸業に関する設備投資においては、安全性の向上を中心とした鉄道インフラの整備や、老朽車両の更新等を目的とした新型車両の購入を行っております。流通業、不動産業及びその他における当社グループの設備投資においては、新設備の建設や老朽設備の改築等を行っております。
さらに、福知山線列車事故の責任とその重大性及び新幹線重大インシデントを重く受け止め、安全で安心・信頼していただける鉄道を築き上げるために全力で取り組んでいるところであり、安全をより一層高めるために必要な運転保安設備の整備等ハード対策を盛り込むとともに、今後も様々な検討を行うこととしております。
ウ.流動性
当社グループは、鉄道事業を中心に日々の収入金が潤沢にあり、流動性資金は十分な水準を確保しているものと考えております。
また、現下の新型コロナウイルス感染症の流行等により収入金が減少した場合においても、短期社債やコミットメントラインによる短期借入等を活用し、流動性資金を十分に確保しているものと考えております。
一方、資金効率の向上は企業経営にとって極めて重要と認識しており、その一環として、2002年10月からキャッシュ・マネジメント・サービス(CMS)を導入し、グループ内資金の有効活用を図っております。
エ.資金調達
資金調達については、既存債務の返済資金や設備投資資金等のうち当社グループのフリー・キャッシュ・フローで賄いきれない分の調達を主としており、その調達手段は社債及び銀行等からの長期借入金等、市場動向や金利動向等を総合的に勘案しながら決定しております。
また、短期的に資金を必要とする場合には、主として短期社債やコミットメントラインで賄うことを基本としております。
なお、コミットメントラインの一部については、地震が発生した場合でも、あらかじめ定めた条件によって資金調達が可能な契約内容となっております。