当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、一部では弱さも見られるものの、企業収益の改善や設備投資に持ち直しの動きが見られる等、緩やかな回復基調にあります。しかしながら、米国の金融・通商政策や中国の不動産市場の停滞による影響のほか、地政学リスクの拡大等、先行きは依然として不透明な状況が続いております。
物流業界におきましては、実質賃金のプラス基調が定着していない中、消費者マインドの改善にも足踏みが見られることや、一部大手EC事業者による自社配送網拡大の動きも見られること等から、競争環境は引き続き厳しい状況にあります。また、「2024年問題」への対応、継続的な物価・人件費等のコスト上昇等、不安定な事業環境が継続しております。国際物流市場では、地政学リスク等を背景とした紅海の通航回避の長期化や、米国の通商政策の影響等、海上・航空貨物の需要及び運賃の動向については不確実性が高まっております。
当社グループにおきましては、2023年3月期から2025年3月期までの中期経営計画「SGH Story 2024」の最終年度として、総合物流ソリューションの高度化を推し進め、グループ横断の先進的ロジスティクスプロジェクトチーム「GOAL」を中心に、脱炭素をはじめとした社会・環境課題解決に向けたサービスや、宅配便以外の付加価値を提供するソリューション「TMS」などの提案営業を積極的に行ってまいりました。加えて、2050年のカーボンニュートラル達成に向けて、再生可能エネルギーの活用や環境に配慮した物流施設の開発等、当社グループのGHG排出量を削減することにとどまらず、効率的な物流サービスの提供によりお客さまの環境負荷低減に貢献する物流サービスの提供も進めてまいりました。また、当社は、成長戦略の一環として、2024年7月に低温物流に強みを持つ株式会社C&Fロジホールディングス株式を取得し、第3四半期連結会計期間に完全子会社化いたしました。株式会社C&Fロジホールディングス(現:名糖運輸株式会社)が当社グループの傘下に入ることにより、当社グループが持つラストワンマイルの機能と、株式会社C&Fロジホールディングスが持つサプライチェーンの上流から中流の低温物流機能を組み合わせた、国内屈指のコールドチェーンを創出することが可能となります。また、2025年2月には、台湾に拠点を置くグローバル・フレイトフォワーダーである、Morrison Express Worldwide Corporationの全株式取得に関する基本合意を締結いたしました。Morrison Express Worldwide Corporationの持つ航空フォワーディングのノウハウや半導体関連の顧客基盤と、EXPOLANKA HOLDINGS Limitedの持つ海上フォワーディングにおける強みを掛け合わせることで、グローバルの物流機能を強化いたします。これらの取組み等を通じて総合物流ソリューションの高度化を図ってまいりました。
このような状況のもと、当社グループの中核事業であるデリバリー事業におきましては、競争環境が厳しくなっていること等の影響を受け、宅配便の取扱個数は減少いたしました。一方で、2024年4月からの届出運賃の改定や、取引ごとの適正運賃収受の取組み等により、平均単価は上昇いたしました。ロジスティクス事業におきましては、紅海の通航回避による海上輸送の混乱やそれに伴う航空輸送へのシフトによる市場価格の変動に加え、価格交渉が進捗したこと等を背景に、海上・航空運賃は上昇いたしました。海上・航空貨物の取扱量は、上記の紅海の影響や新規顧客の獲得等により好調に推移いたしました。なお、第3四半期連結会計期間から、株式会社C&Fロジホールディングスの業績を当社グループの連結業績(ロジスティクス事業)に含めております。
この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は次のとおりとなりました。
イ.財政状態
資産及び負債は、第2四半期連結会計期間において株式会社C&Fロジホールディングスを新たに連結子会社としたことによる影響で大幅に増加しております。
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は3,705億65百万円となり、前連結会計年度末に比べ268億12百万円減少いたしました。主な要因は、現金及び預金が304億4百万円、販売用不動産が101億99百万円それぞれ減少した一方で、受取手形、営業未収金及び契約資産が117億36百万円増加したことによるものであります。固定資産は6,700億50百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,703億78百万円増加いたしました。主な要因は、のれんが563億24百万円、土地が305億16百万円、建物及び構築物が291億94百万円、建設仮勘定が209億45百万円、車両運搬具が103億27百万円それぞれ増加したことによるものであります。
この結果、総資産は1兆406億15百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,435億65百万円増加いたしました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は2,225億96百万円となり、前連結会計年度末に比べ42億94百万円増加いたしました。主な要因は、未払法人税等が135億14百万円増加した一方で、短期借入金が100億12百万円、1年内返済予定の長期借入金が58億84百万円それぞれ減少したことによるものであります。固定負債は2,334億29百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,449億43百万円増加いたしました。主な要因は、長期借入金の借入れ等により有利子負債が1,347億58百万円増加したことによるものであります。
この結果、負債合計は4,560億26百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,492億38百万円増加いたしました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は5,845億89百万円となり、前連結会計年度末に比べ56億72百万円減少いたしました。主な要因は、子会社であるEXPOLANKA HOLDINGS Limited株式の追加取得に伴い利益剰余金が243億25百万円、非支配株主持分が96億81百万円それぞれ減少したことに加え、剰余金の配当318億98百万円を実施した一方で、親会社株主に帰属する当期純利益を581億20百万円計上したことによるものであります。
この結果、自己資本比率は55.8%となり、前連結会計年度末に比べ8.6ポイント低下いたしました。
ロ.経営成績
(営業収益)
デリバリー事業におきましては、実質賃金のプラス基調が定着していない中、消費者マインドの改善にも足踏みが見られることや、一部大手EC事業者による自社配送網拡大の動きにより競争環境が厳しくなっていること等の影響を受け、主にBtoCの荷物を中心に取扱個数が減少いたしました。平均単価は、2024年4月からの届出運賃の改定や、取引ごとの適正運賃収受の取組みを継続したこと等により上昇いたしました。「TMS」については、「GOAL」による提案営業の活動等により、前期を上回って推移いたしました。ロジスティクス事業におきましては、紅海の通航回避による海上輸送の混乱やそれに伴う航空輸送へのシフトによる市場価格の変動に加え、価格交渉が進捗したこと等を背景に、海上・航空運賃は上昇いたしました。また、海上・航空貨物の取扱量は、上記の紅海の影響や新規顧客の獲得等により好調に推移いたしました。加えて、第3四半期連結会計期間から株式会社C&Fロジホールディングスの業績を、当社グループの連結業績に含めたことにより、営業収益は増加しております。不動産事業におきましては、第2四半期連結会計期間及び第4四半期連結会計期間に保有不動産を売却いたしました。その他の事業におきましては、BPO案件の減少のほか、大型トラック等の新車販売が減少いたしました。
この結果、営業収益は1兆4,792億39百万円となり、前連結会計年度に比べ12.3%の増加となりました。
(営業原価、販売費及び一般管理費、営業利益)
デリバリー事業におきましては、取扱個数に応じてコストコントロールを行っておりますが、期初からのパートナー企業への委託単価の引き上げ、従業員の給与水準維持を目的とした追加的な費用の計上等、持続的・安定的なサービス提供のためのリソース確保に係る費用が増加傾向にあります。ロジスティクス事業におきましては、フォワーディングビジネスにおける営業収益の増加に伴う費用増や、株式会社C&Fロジホールディングスの業績を当社グループの連結業績に含めたことにより、営業費用が増加しているほか、株式会社C&Fロジホールディングスの株式取得に伴うのれん償却費等も費用増加要因となっております。
この結果、営業原価は1兆3,188億9百万円(前期比13.4%増)、販売費及び一般管理費は725億82百万円(同12.0%増)となりました。営業利益は878億47百万円(同1.5%減)となり、営業利益率は5.9%と前連結会計年度に比べ0.9ポイント低下いたしました。
(営業外損益、経常利益)
営業外収益は、受取保険配当金や受取利息の計上等により47億56百万円(前期比4.6%増)となりました。営業外費用は、支払利息の計上等により37億36百万円(同28.8%増)となりました。
この結果、経常利益は888億67百万円となり、前連結会計年度に比べ2.2%の減少となりました。
(特別損益、税金等調整前当期純利益)
特別利益は、固定資産売却益の計上により5億70百万円(前期比398.5%増)となりました。特別損失は、減損損失の計上等により10億10百万円(同58.7%減)となりました。
この結果、税金等調整前当期純利益は884億27百万円となり、前連結会計年度に比べ0.1%の減少となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
法人税等301億14百万円(前期比5.0%減)、非支配株主に帰属する当期純利益は1億93百万円(前期は非支配株主に帰属する当期純損失14億73百万円)を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は581億20百万円となり、前連結会計年度に比べ0.3%の減少となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
・デリバリー事業
デリバリー事業におきましては、実質賃金のプラス基調が定着していない中、消費者マインドの改善にも足踏みが見られることや、一部大手EC事業者による自社配送網拡大の動きにより競争環境が厳しくなっていること等の影響を受け、主にBtoCの荷物を中心に取扱個数が減少いたしました。平均単価は、2024年4月からの届出運賃の改定や、取引ごとの適正運賃収受の取組みを継続したこと等により上昇いたしました。「TMS」については、「GOAL」による提案営業の活動等により、前期を上回って推移いたしました。費用面に関しては、取扱個数に応じてコストコントロールを行っておりますが、期初からのパートナー企業への委託単価の引き上げ、従業員の給与水準維持を目的とした追加的な費用の計上等、持続的・安定的なサービス提供のためのリソース確保に係る費用が増加傾向にあります。このような中、2024年9月から、従来の「指定場所配送サービス」の内容を拡大し、お客さまが荷物の受取方法として置き配を選択できるサービスを開始したほか、2025年3月には九州エリアにおける物流の効率化等を目的とした大型中継センターの新設(2028年6月稼働予定)を発表する等、利便性や、生産性の向上への取組みも継続して行ってまいりました。
この結果、当セグメントの営業収益は1兆211億37百万円(前期比0.7%減)、営業利益は692億57百万円(同15.0%減)となりました。
・ロジスティクス事業
ロジスティクス事業におきましては、紅海の通航回避による海上輸送の混乱やそれに伴う航空輸送へのシフトによる市場価格の変動に加え、価格交渉が進捗したこと等を背景に、海上・航空運賃は上昇いたしました。また、海上・航空貨物の取扱量は、上記の紅海の影響や新規顧客の獲得等により好調に推移いたしました。加えて、第3四半期連結会計期間から株式会社C&Fロジホールディングスの業績を、当社グループの連結業績に含めたことにより、営業収益が増加しております。
この結果、当セグメントの営業収益は3,813億39百万円(前期比73.5%増)、営業利益は68億56百万円(前期は営業損失48億54百万円)となりました。
・不動産事業
不動産事業におきましては、第2四半期連結会計期間及び第4四半期連結会計期間に保有不動産を売却いたしました。不動産賃貸・管理等のビジネスにつきましては、計画どおり進捗いたしました。
この結果、当セグメントの営業収益は239億76百万円(前期比89.9%増)、営業利益は105億18百万円(同47.3%増)となりました。
・その他
その他の事業におきましては、BPO案件の減少のほか、大型トラック等の新車販売が減少いたしました。
この結果、当セグメントの営業収益は527億86百万円(前期比5.8%減)、営業利益は18億93百万円(同44.5%減)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ304億4百万円減少し1,168億61百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により得た資金は1,186億円(前期比52.8%増)となりました。
主な要因は、収入要因として税金等調整前当期純利益884億27百万円、減価償却費401億29百万円をそれぞれ計上した一方で、支出要因として法人税等の支払額又は還付額152億72百万円を計上したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動に使用した資金は1,647億27百万円(前期は413億57百万円の支出)となりました。
主な要因は、支出要因として株式会社C&Fロジホールディングス株式の取得に係る連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出1,120億11百万円、有形固定資産の取得による支出487億70百万円、無形固定資産の取得による支出44億32百万円をそれぞれ計上したことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により得た資金は139億94百万円(前期は703億10百万円の支出)となりました。
主な要因は、収入要因として長期借入れによる収入1,300億円を計上した一方で、支出要因としてEXPOLANKA HOLDINGS Limited株式の取得に係る連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出340億24百万円、配当金の支払額318億95百万円、長期借入金の返済による支出316億27百万円、短期借入金の純減額114億90百万円、リース債務の返済による支出86億65百万円をそれぞれ計上したことによるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
セグメント別の営業収益及び当社グループの中核事業であるデリバリー事業の商品別取扱個数は次のとおりであります。
なお、当社グループは、デリバリー事業、ロジスティクス事業、不動産事業を中心とするサービス提供を主たる業務としているため、生産及び受注の状況は記載しておりません。
イ.セグメント別の営業収益
当連結会計年度のセグメント別の営業収益は、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 前連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) | ||
金額(百万円) | 前期比(%) | 金額(百万円) | 前期比(%) | |
デリバリー事業 | 1,028,530 | 98.2 | 1,021,137 | 99.3 |
ロジスティクス事業 | 219,761 | 69.8 | 381,339 | 173.5 |
不動産事業 | 12,623 | 64.6 | 23,976 | 189.9 |
その他 | 56,024 | 106.1 | 52,786 | 94.2 |
合計 | 1,316,940 | 91.8 | 1,479,239 | 112.3 |
商品の名称 | 前連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) | ||
取扱個数 | (百万個) | 1,373 | 1,317 | |
飛脚宅配便 | (百万個) | 1,325 | 1,271 | |
その他 | (百万個) | 47 | 46 |
前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 増減 | |
営業活動によるキャッシュ・フロー | 77,629 | 118,600 | 40,970 |
投資活動によるキャッシュ・フロー | △41,357 | △164,727 | △123,370 |
フリーキャッシュ・フロー | 36,272 | △46,126 | △82,399 |