有価証券報告書-第19期(2024/04/01-2025/03/31)

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2025/06/26 15:30
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(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、一部では弱さも見られるものの、企業収益の改善や設備投資に持ち直しの動きが見られる等、緩やかな回復基調にあります。しかしながら、米国の金融・通商政策や中国の不動産市場の停滞による影響のほか、地政学リスクの拡大等、先行きは依然として不透明な状況が続いております。
物流業界におきましては、実質賃金のプラス基調が定着していない中、消費者マインドの改善にも足踏みが見られることや、一部大手EC事業者による自社配送網拡大の動きも見られること等から、競争環境は引き続き厳しい状況にあります。また、「2024年問題」への対応、継続的な物価・人件費等のコスト上昇等、不安定な事業環境が継続しております。国際物流市場では、地政学リスク等を背景とした紅海の通航回避の長期化や、米国の通商政策の影響等、海上・航空貨物の需要及び運賃の動向については不確実性が高まっております。
当社グループにおきましては、2023年3月期から2025年3月期までの中期経営計画「SGH Story 2024」の最終年度として、総合物流ソリューションの高度化を推し進め、グループ横断の先進的ロジスティクスプロジェクトチーム「GOAL」を中心に、脱炭素をはじめとした社会・環境課題解決に向けたサービスや、宅配便以外の付加価値を提供するソリューション「TMS」などの提案営業を積極的に行ってまいりました。加えて、2050年のカーボンニュートラル達成に向けて、再生可能エネルギーの活用や環境に配慮した物流施設の開発等、当社グループのGHG排出量を削減することにとどまらず、効率的な物流サービスの提供によりお客さまの環境負荷低減に貢献する物流サービスの提供も進めてまいりました。また、当社は、成長戦略の一環として、2024年7月に低温物流に強みを持つ株式会社C&Fロジホールディングス株式を取得し、第3四半期連結会計期間に完全子会社化いたしました。株式会社C&Fロジホールディングス(現:名糖運輸株式会社)が当社グループの傘下に入ることにより、当社グループが持つラストワンマイルの機能と、株式会社C&Fロジホールディングスが持つサプライチェーンの上流から中流の低温物流機能を組み合わせた、国内屈指のコールドチェーンを創出することが可能となります。また、2025年2月には、台湾に拠点を置くグローバル・フレイトフォワーダーである、Morrison Express Worldwide Corporationの全株式取得に関する基本合意を締結いたしました。Morrison Express Worldwide Corporationの持つ航空フォワーディングのノウハウや半導体関連の顧客基盤と、EXPOLANKA HOLDINGS Limitedの持つ海上フォワーディングにおける強みを掛け合わせることで、グローバルの物流機能を強化いたします。これらの取組み等を通じて総合物流ソリューションの高度化を図ってまいりました。
このような状況のもと、当社グループの中核事業であるデリバリー事業におきましては、競争環境が厳しくなっていること等の影響を受け、宅配便の取扱個数は減少いたしました。一方で、2024年4月からの届出運賃の改定や、取引ごとの適正運賃収受の取組み等により、平均単価は上昇いたしました。ロジスティクス事業におきましては、紅海の通航回避による海上輸送の混乱やそれに伴う航空輸送へのシフトによる市場価格の変動に加え、価格交渉が進捗したこと等を背景に、海上・航空運賃は上昇いたしました。海上・航空貨物の取扱量は、上記の紅海の影響や新規顧客の獲得等により好調に推移いたしました。なお、第3四半期連結会計期間から、株式会社C&Fロジホールディングスの業績を当社グループの連結業績(ロジスティクス事業)に含めております。
この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は次のとおりとなりました。
イ.財政状態
資産及び負債は、第2四半期連結会計期間において株式会社C&Fロジホールディングスを新たに連結子会社としたことによる影響で大幅に増加しております。
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は3,705億65百万円となり、前連結会計年度末に比べ268億12百万円減少いたしました。主な要因は、現金及び預金が304億4百万円、販売用不動産が101億99百万円それぞれ減少した一方で、受取手形、営業未収金及び契約資産が117億36百万円増加したことによるものであります。固定資産は6,700億50百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,703億78百万円増加いたしました。主な要因は、のれんが563億24百万円、土地が305億16百万円、建物及び構築物が291億94百万円、建設仮勘定が209億45百万円、車両運搬具が103億27百万円それぞれ増加したことによるものであります。
この結果、総資産は1兆406億15百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,435億65百万円増加いたしました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は2,225億96百万円となり、前連結会計年度末に比べ42億94百万円増加いたしました。主な要因は、未払法人税等が135億14百万円増加した一方で、短期借入金が100億12百万円、1年内返済予定の長期借入金が58億84百万円それぞれ減少したことによるものであります。固定負債は2,334億29百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,449億43百万円増加いたしました。主な要因は、長期借入金の借入れ等により有利子負債が1,347億58百万円増加したことによるものであります。
この結果、負債合計は4,560億26百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,492億38百万円増加いたしました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は5,845億89百万円となり、前連結会計年度末に比べ56億72百万円減少いたしました。主な要因は、子会社であるEXPOLANKA HOLDINGS Limited株式の追加取得に伴い利益剰余金が243億25百万円、非支配株主持分が96億81百万円それぞれ減少したことに加え、剰余金の配当318億98百万円を実施した一方で、親会社株主に帰属する当期純利益を581億20百万円計上したことによるものであります。
この結果、自己資本比率は55.8%となり、前連結会計年度末に比べ8.6ポイント低下いたしました。
ロ.経営成績
(営業収益)
デリバリー事業におきましては、実質賃金のプラス基調が定着していない中、消費者マインドの改善にも足踏みが見られることや、一部大手EC事業者による自社配送網拡大の動きにより競争環境が厳しくなっていること等の影響を受け、主にBtoCの荷物を中心に取扱個数が減少いたしました。平均単価は、2024年4月からの届出運賃の改定や、取引ごとの適正運賃収受の取組みを継続したこと等により上昇いたしました。「TMS」については、「GOAL」による提案営業の活動等により、前期を上回って推移いたしました。ロジスティクス事業におきましては、紅海の通航回避による海上輸送の混乱やそれに伴う航空輸送へのシフトによる市場価格の変動に加え、価格交渉が進捗したこと等を背景に、海上・航空運賃は上昇いたしました。また、海上・航空貨物の取扱量は、上記の紅海の影響や新規顧客の獲得等により好調に推移いたしました。加えて、第3四半期連結会計期間から株式会社C&Fロジホールディングスの業績を、当社グループの連結業績に含めたことにより、営業収益は増加しております。不動産事業におきましては、第2四半期連結会計期間及び第4四半期連結会計期間に保有不動産を売却いたしました。その他の事業におきましては、BPO案件の減少のほか、大型トラック等の新車販売が減少いたしました。
この結果、営業収益は1兆4,792億39百万円となり、前連結会計年度に比べ12.3%の増加となりました。
(営業原価、販売費及び一般管理費、営業利益)
デリバリー事業におきましては、取扱個数に応じてコストコントロールを行っておりますが、期初からのパートナー企業への委託単価の引き上げ、従業員の給与水準維持を目的とした追加的な費用の計上等、持続的・安定的なサービス提供のためのリソース確保に係る費用が増加傾向にあります。ロジスティクス事業におきましては、フォワーディングビジネスにおける営業収益の増加に伴う費用増や、株式会社C&Fロジホールディングスの業績を当社グループの連結業績に含めたことにより、営業費用が増加しているほか、株式会社C&Fロジホールディングスの株式取得に伴うのれん償却費等も費用増加要因となっております。
この結果、営業原価は1兆3,188億9百万円(前期比13.4%増)、販売費及び一般管理費は725億82百万円(同12.0%増)となりました。営業利益は878億47百万円(同1.5%減)となり、営業利益率は5.9%と前連結会計年度に比べ0.9ポイント低下いたしました。
(営業外損益、経常利益)
営業外収益は、受取保険配当金や受取利息の計上等により47億56百万円(前期比4.6%増)となりました。営業外費用は、支払利息の計上等により37億36百万円(同28.8%増)となりました。
この結果、経常利益は888億67百万円となり、前連結会計年度に比べ2.2%の減少となりました。
(特別損益、税金等調整前当期純利益)
特別利益は、固定資産売却益の計上により5億70百万円(前期比398.5%増)となりました。特別損失は、減損損失の計上等により10億10百万円(同58.7%減)となりました。
この結果、税金等調整前当期純利益は884億27百万円となり、前連結会計年度に比べ0.1%の減少となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
法人税等301億14百万円(前期比5.0%減)、非支配株主に帰属する当期純利益は1億93百万円(前期は非支配株主に帰属する当期純損失14億73百万円)を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は581億20百万円となり、前連結会計年度に比べ0.3%の減少となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
・デリバリー事業
デリバリー事業におきましては、実質賃金のプラス基調が定着していない中、消費者マインドの改善にも足踏みが見られることや、一部大手EC事業者による自社配送網拡大の動きにより競争環境が厳しくなっていること等の影響を受け、主にBtoCの荷物を中心に取扱個数が減少いたしました。平均単価は、2024年4月からの届出運賃の改定や、取引ごとの適正運賃収受の取組みを継続したこと等により上昇いたしました。「TMS」については、「GOAL」による提案営業の活動等により、前期を上回って推移いたしました。費用面に関しては、取扱個数に応じてコストコントロールを行っておりますが、期初からのパートナー企業への委託単価の引き上げ、従業員の給与水準維持を目的とした追加的な費用の計上等、持続的・安定的なサービス提供のためのリソース確保に係る費用が増加傾向にあります。このような中、2024年9月から、従来の「指定場所配送サービス」の内容を拡大し、お客さまが荷物の受取方法として置き配を選択できるサービスを開始したほか、2025年3月には九州エリアにおける物流の効率化等を目的とした大型中継センターの新設(2028年6月稼働予定)を発表する等、利便性や、生産性の向上への取組みも継続して行ってまいりました。
この結果、当セグメントの営業収益は1兆211億37百万円(前期比0.7%減)、営業利益は692億57百万円(同15.0%減)となりました。
・ロジスティクス事業
ロジスティクス事業におきましては、紅海の通航回避による海上輸送の混乱やそれに伴う航空輸送へのシフトによる市場価格の変動に加え、価格交渉が進捗したこと等を背景に、海上・航空運賃は上昇いたしました。また、海上・航空貨物の取扱量は、上記の紅海の影響や新規顧客の獲得等により好調に推移いたしました。加えて、第3四半期連結会計期間から株式会社C&Fロジホールディングスの業績を、当社グループの連結業績に含めたことにより、営業収益が増加しております。
この結果、当セグメントの営業収益は3,813億39百万円(前期比73.5%増)、営業利益は68億56百万円(前期は営業損失48億54百万円)となりました。
・不動産事業
不動産事業におきましては、第2四半期連結会計期間及び第4四半期連結会計期間に保有不動産を売却いたしました。不動産賃貸・管理等のビジネスにつきましては、計画どおり進捗いたしました。
この結果、当セグメントの営業収益は239億76百万円(前期比89.9%増)、営業利益は105億18百万円(同47.3%増)となりました。
・その他
その他の事業におきましては、BPO案件の減少のほか、大型トラック等の新車販売が減少いたしました。
この結果、当セグメントの営業収益は527億86百万円(前期比5.8%減)、営業利益は18億93百万円(同44.5%減)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ304億4百万円減少し1,168億61百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により得た資金は1,186億円(前期比52.8%増)となりました。
主な要因は、収入要因として税金等調整前当期純利益884億27百万円、減価償却費401億29百万円をそれぞれ計上した一方で、支出要因として法人税等の支払額又は還付額152億72百万円を計上したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動に使用した資金は1,647億27百万円(前期は413億57百万円の支出)となりました。
主な要因は、支出要因として株式会社C&Fロジホールディングス株式の取得に係る連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出1,120億11百万円、有形固定資産の取得による支出487億70百万円、無形固定資産の取得による支出44億32百万円をそれぞれ計上したことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により得た資金は139億94百万円(前期は703億10百万円の支出)となりました。
主な要因は、収入要因として長期借入れによる収入1,300億円を計上した一方で、支出要因としてEXPOLANKA HOLDINGS Limited株式の取得に係る連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出340億24百万円、配当金の支払額318億95百万円、長期借入金の返済による支出316億27百万円、短期借入金の純減額114億90百万円、リース債務の返済による支出86億65百万円をそれぞれ計上したことによるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
セグメント別の営業収益及び当社グループの中核事業であるデリバリー事業の商品別取扱個数は次のとおりであります。
なお、当社グループは、デリバリー事業、ロジスティクス事業、不動産事業を中心とするサービス提供を主たる業務としているため、生産及び受注の状況は記載しておりません。
イ.セグメント別の営業収益
当連結会計年度のセグメント別の営業収益は、次のとおりであります。
セグメントの名称前連結会計年度
(自 2023年4月1日
至 2024年3月31日)
当連結会計年度
(自 2024年4月1日
至 2025年3月31日)
金額(百万円)前期比(%)金額(百万円)前期比(%)
デリバリー事業1,028,53098.21,021,13799.3
ロジスティクス事業219,76169.8381,339173.5
不動産事業12,62364.623,976189.9
その他56,024106.152,78694.2
合計1,316,94091.81,479,239112.3

(注) 営業収益は外部顧客に対する売上高を示しております。
ロ.デリバリー事業の商品別取扱個数
当連結会計年度のデリバリー事業の商品別取扱個数は、次のとおりであります。
商品の名称前連結会計年度
(自 2023年4月1日
至 2024年3月31日)
当連結会計年度
(自 2024年4月1日
至 2025年3月31日)
取扱個数(百万個)1,3731,317
飛脚宅配便(百万個)1,3251,271
その他(百万個)4746

(注) 1.取扱個数は、当社グループの主要商品の取扱個数であります。
2.飛脚宅配便は、佐川急便株式会社が国土交通省に届け出ている宅配便の個数であります。
3.その他は、佐川急便株式会社の提供する飛脚ラージサイズ宅配便及びその他の会社の取扱個数であります。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの事業セグメントは、デリバリー事業、ロジスティクス事業、不動産事業とその他で構成され、主要セグメントであるデリバリー事業が、当連結会計年度において営業収益の7割程度を占めております。
・デリバリー事業
デリバリー事業におきましては、主力の宅配便に加え、あらゆるお客さまのニーズに応えた「運ぶ」を実現する「TMS」をはじめとした、「GOAL」による付加価値の高い物流ソリューションの開発・提供を行っております。また、これらの物流ソリューションの提供は、自社のセールスドライバーや外部輸送業者を通じて行うことから、営業費用の80%以上を人件費と外注費が占めております。そのため、働き方改革の推進、輸送品質の維持・向上や輸送インフラの強化、デジタライゼーションによる生産性向上等に継続的に取り組み、人件費・外注費の適切なコストコントロールに注力しております。
当連結会計年度の宅配便の取扱個数は、実質賃金のプラス基調が定着していない中、消費者マインドの改善にも足踏みが見られることや、一部大手EC事業者による自社配送網拡大の動きにより競争環境が厳しくなっていること等の影響を受け、通期で1,317百万個(前期比4.1%減)となりました。一方、平均単価は、2024年4月からの届出運賃の改定や、取引ごとの適正運賃収受の取組みを継続したこと等により、662円(同2.1%増)と上昇いたしました。また、「TMS」は、「GOAL」による提案営業等により、通期で営業収益1,249億50百万円(同10.5%増加)となりました。この結果、当セグメントの営業収益は1兆211億37百万円(同0.7%減)となりました。
営業費用に関して、まず人件費は、継続的な生産性向上の取組みや、取扱個数減少を踏まえたコストコントロール等により全体としては減少いたしました。一方で、当連結会計年度においては従業員の給与水準維持を目的とした追加的な費用の計上を行う等、持続的・安定的なサービス提供のためのリソース確保に係る費用は増加傾向にあります。次に、外注費については、取扱個数減少を踏まえたコストコントロール等を実施したものの、期初からのパートナー企業への委託単価の引き上げの影響や、「TMS」の売上高増加等により増加いたしました。この結果、営業利益は692億57百万円(同15.0%減)となり、営業利益率は6.8%と前連結会計年度から1.1ポイント低下いたしました。
・ロジスティクス事業
ロジスティクス事業におきましては、主に当社の連結子会社であるEXPOLANKA HOLDINGS Limitedを中心に海外で展開するフレイトフォワーディングに加え、デリバリー事業と連携した3PLや日本発着の国際輸送を展開しております。また、当社グループは、2024年7月に低温物流に強みを持つ株式会社C&Fロジホールディングス株式を取得し、第3四半期連結会計期間に完全子会社化することで、低温物流領域の基盤を獲得いたしました。このように当セグメントは、フレイトフォワーディングを中心とする国際物流事業と低温物流領域や3PLを中心とする国内物流事業の機能を有しており、当セグメントにおけるEXPOLANKA HOLDINGS Limitedの営業収益の構成比は、おおよそ6割程度となっております。
当連結会計年度におきましては、国際物流事業に関して、紅海の通航回避による海上輸送の混乱やそれに伴う航空輸送へのシフトによる市場価格の変動に加え、価格交渉が進捗したこと等を背景に、海上・航空運賃は上昇いたしました。また、海上・航空貨物の取扱量は、上記の紅海の影響や新規顧客の獲得等により好調に推移いたしました。加えて、国内物流事業に関しては、第3四半期連結会計期間から株式会社C&Fロジホールディングスの業績を、当社グループの連結業績に含めたことにより、営業収益が増加しております。この結果、営業収益は3,813億39百万円(前期比73.5%増)、営業利益は68億56百万円(前期は営業損失48億54百万円)となりました。
・不動産事業
不動産事業におきましては、当社グループの物流施設を中心に不動産の開発、賃貸、管理を行っております。
当連結会計年度におきましては、第2四半期連結会計期間及び第4四半期連結会計期間に保有不動産を売却したことにより、営業収益は239億76百万円(前期比89.9%増)、営業利益は105億18百万円(同47.3%増)となり、営業利益率は43.9%と前連結会計年度から12.7ポイント低下いたしました。
・その他
その他の事業におきましては、人材派遣・請負、自動車整備・販売、宅配便の代金引換サービスや物流システムの開発・運用等の物流附帯サービスを提供しております。
当連結会計年度におきましては、BPO案件の減少のほか、大型トラック等の新車販売が減少したことにより、営業収益は527億86百万円(前期比5.8%減)、営業利益は18億93百万円(同44.5%減)となり、営業利益率は3.6%と前連結会計年度から2.5ポイント低下いたしました。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
・財務戦略の基本的な考え方
当社グループは、高い財務健全性と資本効率を両立しつつ、中長期的な企業価値向上のための成長投資の実施と株主還元の充実を図ることを財務戦略の基本方針としております。
・財務健全性の状況
当社グループは、中長期的な企業価値向上のための成長投資を支える強固な財務基盤が必要と考えております。当連結会計年度末の自己資本比率は55.8%となり、前連結会計年度末に比べ8.6ポイント低下いたしました。今後も財務健全性の維持に努めてまいります。
・資本効率の向上
当社グループは資本コストを重視し、投資において投下資本利益率が資本コストを上回るよう管理し、ROEの維持・向上を意識した経営を実施しております。当連結会計年度のROEは10.0%と、前連結会計年度から0.3ポイント低下いたしました。今後も成長が期待される分野へ規律ある投資を行うことで、企業価値の最大化に努めてまいります。
・フリーキャッシュ・フローの状況
当社グループは、フリーキャッシュ・フローを営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローの合計と定義し、成長投資、内部留保や株主還元などを検討する際の指標の一つとして重視しております。
(単位:百万円)
前連結会計年度当連結会計年度増減
営業活動によるキャッシュ・フロー77,629118,60040,970
投資活動によるキャッシュ・フロー△41,357△164,727△123,370
フリーキャッシュ・フロー36,272△46,126△82,399

・株主還元
当社グループは、株主へ配当金による利益還元を実施しております。配当政策については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載のとおりであります。
・流動性の状況
当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、1,168億61百万円となりました。当連結会計年度末の短期借入金49億5百万円と、1年内返済予定の長期借入金242億円の返済に必要な流動性を十分に満たしていると認識しております。
・資金調達手段
当社グループの事業活動における運転資金については、原則として手持資金(利益等の内部留保資金)で賄っております。設備資金等については、手持資金とのバランスを勘案し、必要に応じて外部から長期借入金で調達しております。
当社グループは、当社及び国内子会社を対象に、CMS(キャッシュマネジメントシステム)を利用し、グループ内資金の包括的管理を実施しており、国内子会社において、設備投資等に伴う大規模な資金が必要となる場合は、当社が国内各子会社に長期貸付を行っております。なお、当社の連結子会社である株式会社C&Fロジホールディングス(現:名糖運輸株式会社)においては、資金調達の一部を金融機関から直接行っております。
海外子会社においては、当社が、投資計画・資金計画に基づいて貸付又は増資引受けを行い、地域に所在する海外各子会社の資金を管理する体制としております。また、外貨資金需要への機動的な対応と調達手段の多様化を目的として、金融機関との間に外貨建貸越極度枠を設定しております。なお、当社の連結子会社であるEXPOLANKA HOLDINGS Limited及び上海虹迪物流科技有限公司においては、資金調達の一部を金融機関から直接行っております。
翌連結会計年度につきましても、上記の方針に基づき資金調達を行う予定であります。なお、重要な設備の新設計画については、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画 (1) 重要な設備の新設」に記載のとおりであります。また、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)(取得による企業結合)」に記載のとおり、2025年5月20日にMorrison Express Worldwide Corporationの全株式を取得しております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たり、当社グループが採用している重要な会計方針や重要な会計上の見積りは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」及び「注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。当社グループは連結財務諸表を作成するに当たり、のれんの評価、退職給付に係る負債、税効果会計、貸倒引当金の計上等において、過去の実績等を勘案するなど合理的な見積りを行い、その結果を反映させておりますが、実際の結果は見積りの不確実性があるためこれらの見積りとは異なる場合があります。