有価証券報告書-第122期(平成31年1月1日-令和1年12月31日)

【提出】
2020/03/27 13:09
【資料】
PDFをみる
【項目】
163項目
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在における判断に基づくものであり、その達成を保証するものではありません。
(1)経営成績等の状況の概要
①経営成績
当連結会計年度の業績は次のとおりです。
(単位:億円)
前連結会計年度当連結会計年度前年同期比現地通貨ベース
前年同期比
売上高8,0557,686△4.6%△1.3%
営業利益484413△14.6%△8.7%
経常利益487413△15.2%-
親会社株主に帰属する当期純利益320235△26.6%-
EBITDA814674△17.2%-
US$/円(平均)110.46109.11△1.2%-
EUR/円(平均)130.46122.13△6.4%-

EBITDA:親会社株主に帰属する当期純利益+法人税等合計+支払利息-受取利息+減価償却費+のれん償却額
当連結会計年度(2019年1月~12月)における当社グループの業績は、売上高は前年同期比4.6%減の7,686億円でした。現地通貨ベースでは1.3%の減収となりました。世界的に景気減速の影響がみられ、電気・電子や自動車向け材料を中心に広範な分野で出荷が落ち込みました。
営業利益は、前年同期比14.6%減の413億円でした。現地通貨ベースでは8.7%の減益となりました。高付加価値製品を中心に出荷数量が落ち込んだことに加えて、一部品目で製品価格が低下したことにより減益となりました。また、円高による海外事業の換算目減りも利益を押し下げました。減益幅は、原料価格の低下や合理化によるコスト削減効果により第1四半期を底に改善しました。特に、中国・東南アジアにおいては第2四半期から増益に転じました。
経常利益は、前年同期比15.2%減の413億円でした。
親会社株主に帰属する当期純利益は、前年同期比26.6%減の235億円でした。事業の効率化に係る特別損益が発生したことに加えて、災害や買収関連の一時費用が発生しました。
EBITDAは、前年同期比17.2%減の674億円でした。親会社株主に帰属する当期純利益の減少などにより減益となりました。
また、各セグメントの業績は次のとおりです。
(単位:億円)
セグメント売 上 高営 業 利 益
前連結
会計年度
当連結
会計年度
前年
同期比
現地通貨
ベース
前年同期比
前連結
会計年度
当連結
会計年度
前年
同期比
現地通貨
ベース
前年同期比
パッケージング&
グラフィック
4,3474,164△4.2%+0.6%199192△3.6%+8.0%
カラー&ディスプレイ1,2411,164△6.2%△3.8%150108△28.0%△25.4%
ファンクショナル
プロダクツ
2,8212,686△4.8%△3.6%208192△7.6%△6.6%
その他、全社・消去△354△328--△73△79--
8,0557,686△4.6%△1.3%484413△14.6%△8.7%

(注)2019年度より中期経営計画「DIC111」の開始に伴い、セグメントを変更しました。なお、前連結会計年度については、変更後のセグメントに組み替えて記載しています。
中期経営計画「DIC111」の詳細は、https://www.dic-global.com/ja/ir/management/plan.html をご覧ください。
[パッケージング&グラフィック]
前連結会計年度当連結会計年度前年同期比現地通貨ベース
前 年 同 期 比
売 上 高4,347億円4,164億円△4.2%+0.6%
営 業 利 益199億円192億円△3.6%+8.0%

売上高は、前年同期比4.2%減の4,164億円でした。現地通貨ベースでは0.6%の増収となりましたが、ユーロ及び新興国通貨安の影響により円貨ベースで目減りしました。食品包装分野では、パッケージ用インキは、アジアや南米などの新興国を中心として増収となりました。ポリスチレンは、出荷数量は増加しましたが、原料価格の低下に伴う製品値下げの影響により減収となりました。出版や新聞を主用途とする出版用インキは、需要減少により減収となりました。一方で、デジタル印刷で使用されるジェットインキは増収となりました。
営業利益は、前年同期比3.6%減の192億円でした。現地通貨ベースでは8.0%の増益となりました。品目構成の改善や合理化の効果に加えて、主にアジアで原料価格が低下しました。しかしながら、売上高と同様に円貨ベースでは目減りしました。
[カラー&ディスプレイ]
前連結会計年度当連結会計年度前年同期比現地通貨ベース
前 年 同 期 比
売 上 高1,241億円1,164億円△6.2%△3.8%
営 業 利 益150億円108億円△28.0%△25.4%

売上高は、前年同期比6.2%減の1,164億円でした。色材分野では、化粧品用顔料や一般顔料の出荷が貿易摩擦の影響などにより低調に推移しました。ディスプレイ分野では、カラーフィルタ用顔料の出荷は堅調に推移しましたが、TFT液晶は競争激化に伴う製品価格の低下により減収となりました。
営業利益は、前年同期比28.0%減の108億円でした。TFT液晶の製品価格低下のほか、一般顔料の出荷低調により大幅減益となりました。また、中国における環境規制の強化や貿易摩擦に伴って顔料の原料価格が上昇したことも利益を圧迫しました。
[ファンクショナルプロダクツ]
前連結会計年度当連結会計年度前年同期比現地通貨ベース
前 年 同 期 比
売 上 高2,821億円2,686億円△4.8%△3.6%
営 業 利 益208億円192億円△7.6%△6.6%

売上高は、前年同期比4.8%減の2,686億円でした。自動車の軽量化や電装化に伴って用途が拡大しているPPSコンパウンドは、世界的な自動車生産台数の減少影響を受けて出荷が低調に推移しました。スマートフォンや半導体分野を主用途とするエポキシ樹脂や工業用テープは、景気減速の影響を受けて出荷が落ち込みました。合成樹脂全般も景気減速の影響を受けて低調に推移しましたが、概ね第1四半期を底に回復がみられました。
営業利益は、前年同期比7.6%減の192億円でした。全般的な出荷の落ち込みにより減益となりました。営業利益率は、エポキシ樹脂など高付加価値製品の出荷が第1四半期を底に回復したことや原料価格が低下したことより徐々に改善しました。
②キャッシュ・フロー
[営業活動によるキャッシュ・フロー] 506億円(前連結会計年度 510億円)
当連結会計年度は、税金等調整前当期純利益が347億円、減価償却費が331億円となりました。また、法人税等に71億円を支払い、運転資本の増加により82億円の資金を使用しました。以上の結果、営業活動により得られた資金の総額は506億円となりました。
[投資活動によるキャッシュ・フロー] △249億円(前連結会計年度 △384億円)
当連結会計年度は、設備投資に350億円、子会社株式の取得により13億円の資金を使用しました。一方で、関係会社株式及び出資金の売却により95億円を取得しました。以上の結果、投資活動に使用した資金の総額は249億円となりました。
[財務活動によるキャッシュ・フロー] △268億円(前連結会計年度 △118億円)
当連結会計年度は、有利子負債の返済に126億円の資金を使用し、剰余金の配当として118億円を支払いました。以上の結果、財務活動に使用した資金の総額は268億円となりました。
(キャッシュ・フロー関連指標の推移)
2017年度2018年度2019年度
自己資本比率(%)37.937.338.9
時価ベースの自己資本比率(%)48.539.835.8
キャッシュ・フロー対
有利子負債比率
(年)4.95.25.0
事業収益インタレスト・
カバレッジ・レシオ
(倍)16.510.311.9

(注)1.各指標の算式は以下のとおりです。
自己資本比率 :(純資産-非支配株主持分)/総資産
時価ベースの自己資本比率 :株式時価総額(期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後))/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率 :有利子負債/営業キャッシュ・フロー
事業収益インタレスト・カバレッジ・レシオ:(営業利益+受取利息+受取配当金)/支払利息
2.各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しています。
3.有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている借入金、社債及びリース債務を対象にしています。
営業キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しています。
また、支払利息については、連結損益計算書の支払利息を使用しています。
4.「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 平成30年2月16日) 等を当連結会計年度の期首から適用しており、2018年度に係るキャッシュ・フロー関連指標については、当該会計基準等を遡って適用した後の指標となっています。
③生産、受注及び販売の実績
(イ) 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと次のとおりです。
セグメント金額(百万円)前年同期比(%)
パッケージング&グラフィック386,022-
カラー&ディスプレイ109,594-
ファンクショナルプロダクツ262,450-
報告セグメント計758,066-
その他--
758,066-

(注)1.生産実績は期中平均販売価格により算出しています。
2.上記の金額には、消費税等は含まれていません。
3.当社は、中期経営計画「DIC111」の開始に伴い、2019年1月1日付けでセグメント区分を変更しています。
そのため、前年同期比については記載していません。
(ロ) 受注実績
当社グループは、主として見込生産を行っているため、該当事項はありません。
(ハ) 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと次のとおりです。
セグメント金額(百万円)前年同期比(%)
パッケージング&グラフィック416,377-
カラー&ディスプレイ86,500-
ファンクショナルプロダクツ265,248-
報告セグメント計768,125-
その他443-
768,568-

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しています。
2.上記の金額には、消費税等は含まれていません。
3.当社は、中期経営計画「DIC111」の開始に伴い、2019年1月1日付けでセグメント区分を変更しています。そのため、前年同期比については記載していません。
(2)経営者の視点による財政状態、経営成績等の状況の分析
① 経営成績の分析
経営成績の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績」に記載しています。
② 財政状態の分析
当連結会計年度の資産の部は、主に退職給付に係る資産及び有形固定資産の増加などにより、前連結会計年度末と比べて18億円増加し、8,031億円となりました。負債の部は、主に有利子負債の減少などにより、前連結会計年度末比144億円減の4,596億円となりました。また、純資産の部は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上や配当金の支払に加えて、株価の上昇の影響などにより、前連結会計年度比162億円増の3,435億円となりました。
なお、「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 平成30年2月16日) 等を当連結会計年度の期首から適用しており、当該会計基準等を遡って適用した後の前連結会計年度末の数値で比較しています。
③ 資本の財源及び資金の流動性
キャッシュ・フローの状況については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フロー」に記載しています。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、原材料等の購入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用です。投資を目的とした資金需要は、設備投資、子会社株式及び出資金の取得、関連会社株式及び出資金の取得等によるものです。今後の設備投資計画等については、「第3 設備の状況 3.設備の新設、除却等の計画」に記載しています。
これらの資金需要に対して当社グループは、運転資金については、自己資金のほか短期借入金及びコマーシャル・ペーパーの発行により、また設備投資等の長期資金については、長期借入金及び社債で調達を行っています。
なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は2,526億円です。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は167億円です。
(3)経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当連結会計年度における中期経営計画「DIC111」の達成状況は次のとおりです。
(単位:億円)
2019年度計画2019年度実績2020年度計画2021年度計画
売上高8,5007,6869,0009,500
営業利益520413600700
売上高営業利益率6.1%5.4%6.7%7.4%
親会社株主に帰属する
当期純利益
350235370450
EBITDA(注)8706749101,020
売上高EBITDA率10.2%8.8%10.1%10.7%
ROE10~12%7.7%10~12%10~12%

(注)EBITDA=親会社株主に帰属する当期純利益+法人税等合計+支払利息-受取利息+減価償却費+のれん償却額
翌連結会計年度の経済状況については、国内外において、緩やかな回復が期待されますが、通商問題の動向、中国経済の先行き、英国のEU離脱、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動などによるリスクに留意する必要があります。
このような状況の下、当社グループは中期経営計画「DIC111」の基本戦略である「事業体質の強化」と「新事業の創出」の取り組みを加速しつつ、パッケージ材料、機能性顔料やサステナブル樹脂の拡販を進めるとともにコストダウン施策に取り組んでいくことにより全セグメントで増収増益を見込んでいます。
また、2019年8月29日に発表したBASF社グローバル顔料事業の買収については、2020年12月末までのクロージング及びその後のスムーズな事業移管に向けて引き続き作業を進めていきます。