訂正有価証券報告書-第87期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
① 財政状態の状況
当連結会計年度末における総資産は前連結会計年度末と比べ501億円減少の6,255億円、自己資本は、利益剰余金の減少と、自己株式の増加等により、408億円減少の3,244億円となり、自己資本比率は51.9%となりました。
流動資産は、受取手形及び売掛金の減少と、現金及び預金の増加等により、前連結会計年度末と比べ337億円減少の3,691億円となりました。
固定資産は、機械装置及び運搬具、繰延税金資産の減少と、無形固定資産の増加等により、前連結会計年度末と比べ164億円減少の2,563億円となりました。
流動負債は、短期借入金の増加と、支払手形及び買掛金の減少等により、前連結会計年度末と比べ100億円増加の1,980億円となりました。
固定負債は、長期借入金の減少と、退職給付に係る負債の増加等により、前連結会計年度末と比べ204億円減少の718億円となりました。
② 経営成績の状況
当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、先行きも厳しい状況が続いています。2019年4月から2019年12月において、米国の製造業に減速傾向が見られましたが、金融緩和や良好な雇用環境を背景に個人消費の下支え効果もあり堅調に推移しました。一方、欧州では世界経済の景気減速により輸出の低迷が続き、英国のEU離脱をめぐる混乱も景気に悪影響を及ぼしました。中国では、米国との貿易協議が第1段階の合意をしたものの、貿易摩擦の長期化の影響を受け米国向け輸出の減少や個人消費の減少等から景気の低迷が続きました。日本経済では製造業において減速傾向が見られたものの、良好な雇用環境が続き総じて景気は堅調に推移しました。2020年1月から2020年3月では、全世界に感染拡大した新型コロナウイルスの影響が2020年2月に中国から始まり、その後、同時かつ連鎖的に欧米、アジアへの感染が広がりました。3月以降は各国政府の感染拡大抑制策により、各国製造業の工場停止等が発表され、当連結会計年度の世界経済に多大な影響を及ぼしました。
経営者が認識しているセグメントごとの経営成績は次のとおりです。
[電子部品事業]
エレクトロニクス業界においては、自動車市場ではCASE(Connected、Autonomous、Shared & Services、Electric)への開発は活発化したものの、新車の世界販売台数が前年比で減少するなど、低調に推移しました。スマートフォン市場において、一部の製品は好調に推移したものの、新型コロナウイルスの影響が大きく全体ではマイナス成長となりました。EHII(Energy、Healthcare、Industry、IoT)各市場では、IoT(Internet of Things)を活用した具体的な展開が進み、更にAIを組み合わせた新たなビジネスが提案される等、動きが活発に進んでいます。
この中で、電子部品事業における車載市場では、自動車市場の景気減速の影響を受けモジュール製品や通信用高周波製品等が全般にわたり軟調傾向となりました。また、民生その他市場においても、スマートフォン向けに新規顧客開拓や拡販活動を進めたものの軟調傾向となりました。これらに加え、新型コロナウイルスの全世界における感染拡大の影響もあり、前期比で売上高及び営業利益ともに減少しました。
(車載市場)
電子部品事業における車載市場では、自動運転時代を見据えて車室内の高品位な入力デバイス(Premium-HMI)やCASEへの取り組みにおいて、タッチインプットモジュール等次世代への具体的な提案活動を進めました。しかし、2020年2月以降の中国における当社工場での新型コロナウイルスの感染拡大抑制対応及びサプライチェーンの寸断により、生産、販売への影響が拡大しました。その後、中国各工場では順次再稼働しましたが、同時かつ連鎖的な欧米、アジアへの感染が拡大しました。3月以降は各国政府の感染拡大抑制策により、欧米アジア及び日本国内の顧客においても工場稼働の停止が発表され、これらにより車載市場はグローバル全般にわたり低調となりました。
当連結会計年度における当市場の売上高は2,420億円(前期比12.9%減)となりました。
(民生その他市場)
電子部品事業における民生その他市場では、スマートフォン向け各種製品を生産する当社中国工場の稼働停止措置が春節明け以降も継続して生産に影響を受けました。この中で、スマートフォン向けカメラ用アクチュエータやタッチパネルの新規顧客開拓や拡販活動を継続していましたが、新型コロナウイルスの影響もあり、一部の商品においては好調に推移したものの全体として低調に推移しました。EHIIでは、IoTを用いた物流トラッカーがAGC株式会社の製品輸送用パレットに日本国内で初めて採用される等、具体的な活動を展開しました。
当連結会計年度における当市場の売上高は1,826億円(前期比4.2%減)となりました。
以上の結果、当連結会計年度の電子部品事業の売上高は4,247億円(前期比9.4%減)、営業利益は161億円(前期比45.5%減)となりました。
[車載情報機器事業]
自動車業界においては、世界最大の市場である中国での新車販売が景気悪化や米中貿易摩擦等の影響を受けて減少し、欧米市場においても販売台数が前期比で減少するなど、世界の自動車市場は総じて厳しい状況で推移しました。また、コネクテッドカーや自動運転に次世代移動通信規格5Gを活用するためのIT・通信等の業種・業態を超えた企業間の開発競争が激化しました。
このような中、車載情報機器事業では経営統合のシナジー効果の早期実現を目指し、ディスプレイ製品と電子部品事業のセンサを連動させた新製品開発や、ナビゲーションのGPS(Global Positioning System)にセンサ及び画像処理技術を組み合わせたドローンシステムの実用化に注力しました。また、音響スピーカーの開発で培った技術を応用し、歩行者に自動車の接近を知らせる車両接近通報システムの開発に着手し、更にブロックチェーン技術を活用したカーシェアリング向けデジタルキーの開発やコネクテッドカーの車両情報管理のため、IT企業のフリービット株式会社との業務提携によるMaaS(Mobility as a Service)ビジネスの強化を図りました。
当連結会計年度の業績は、電子部品事業における車載市場と同様に、新型コロナウイルスの欧米各国への感染拡大により、移動規制や顧客工場の稼働停止等、3月以降の純正品等の販売が急速に減速した影響を受けました。前期比で一部製品が好調に推移したため売上高は増加しましたが、将来の受注獲得による研究開発費等により営業利益は減少しました。
以上の結果、当連結会計年度における車載情報機器事業の売上高は3,062億円(前期比0.9%増)、営業利益は56億円(前期比59.4%減)となりました
[物流事業]
物流事業の主要顧客である電子部品業界において、各種電子機器、自動車、産業用機器などの市況悪化を受けて荷動きが減少しました。また、新型コロナウイルスの感染拡大による顧客の工場稼働停止、各国における様々な規制の強化もあり、2020年2月以降は中国、3月には主に北米・アセアンにおいて、貨物の取扱高に一部影響が出ました。一方、将来的には次世代移動通信規格5G、IoT、自動車の電子化など、次世代技術の進展により半導体や電子部品は需要拡大が見込まれています。
このような需要動向のもと、物流事業((株)アルプス物流・東証第二部)では、中長期的に電子部品の需要拡大が見込まれる地域を中心に、新たにHUB拠点の整備とネットワークの充実を進め、新規取扱貨物量の拡大に努めました。アセアン、南アジア地域においては、7月にタイで大型の新倉庫を竣工、営業を開始しました。欧州では、東欧展開の足掛かりとしてハンガリーに事務所を開設しました。更に、これまで拡充した拠点の充実を図るとともに、安定稼働と生産性向上に取り組みました。また、車載関連物流強化策の一つとして、株式会社ロジコムと合弁会社を設立し、その海外展開の第一段階としてインドに現地法人を設立し、車載関連ビジネスの拡大を目指しています。
当連結会計年度の業績は、国内外で新規顧客の獲得に取り組みましたが、米中貿易摩擦等による電子部品全体の荷動きが減少したことに加え、新型コロナウイルスの影響が拡大し、減収減益となりました。
以上の結果、当連結会計年度における物流事業の売上高は668億円(前期比0.0%減)、営業利益は41億円(前期比12.8%減)となりました。
以上により、上記の3事業セグメントにその他を加えた当連結会計年度の当社グループにおける連結業績は、売上高8,105億円(前期比4.8%減)、営業利益267億円(前期比46.0%減)、経常利益186億円(前期比57.2%減)、親会社株主に帰属する当期純損失40億円(前期における親会社株主に帰属する当期純利益は221億円)となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末と比べ98億円増加し、当連結会計年度末の残高は、1,282億円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度末における営業活動による資金の増加は、872億円(前期は726億円の増加)となりました。
この増加は、主に減価償却費460億円、売上債権の減少額311億円及び税金等調整前当期純利益155億円による資金の増加と、法人税等の支払額96億円及びたな卸資産の増加額40億円による資金の減少によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度末における投資活動による資金の減少は、424億円(前期は674億円の減少)となりました。
この減少は、主に有形及び無形固定資産の取得による支出406億円、連結の範囲の変更を伴う子会社持分の取得による支出35億円及び定期預金の預入による支出30億円による資金の減少と、定期預金の払戻による収入52億円による資金の増加によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度末における財務活動による資金の減少は、316億円(前期は69億円の減少)となりました。
この減少は、主に自己株式取得による支出123億円、配当金の支払額93億円、長期借入金の返済による支出88億円による資金の減少によるものです。
④ 生産、受注及び販売の実績
1)生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注)1. セグメント間取引については、相殺消去しています。
2. 金額は、販売価格によっています。
3. 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
2)受注実績
当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注)1. セグメント間取引については、相殺消去しています。
2. 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
3. 当連結会計年度において、受注残高に著しい変動がありました。これは車載情報機器事業セグメントに
おいて新型コロナウイルスの欧米各国への感染拡大により、移動規制や顧客工場の稼働停止等、3月以
降の純正品等の販売が急速に減速した影響によるものです。
3)販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注)1. セグメント間取引については、相殺消去しています。
2. 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成されています。
この連結財務諸表の作成に際し、連結決算日における資産・負債の数値及び連結会計年度の収益・費用の数値に影響を与える会計上の見積りを用いています。
当社は、特に以下の会計上の見積りが、当社グループの連結財務諸表に重要な影響を与えるものと考えています。
なお、当連結会計年度末において、新型コロナウィルスによる影響を反映しています。詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載のとおりです。
1)たな卸資産の評価
たな卸資産は取得原価又は正味売却価額のいずれか低い金額で評価しています。正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、取得原価と正味売却価額との差額について評価損を計上しています。正味売却価額は、主に顧客との販売契約に基づく予定売価を基に見積もっています。また、一定の保有期間を超えた場合、滞留又は陳腐化しているとみなし、評価損を計上しています。更に、保有期間にかかわらず将来廃却が見込まれるたな卸資産についても評価損を計上しています。
市場環境の悪化による顧客の需要減少や製品ライフサイクルの変化等に伴い、たな卸資産の収益性の低下、滞留、陳腐化が生じた場合、将来において追加の評価損の計上が必要となる可能性があります。
2)繰延税金資産
繰延税金資産については、回収可能性があると判断できる金額のみ計上しています。繰延税金資産の回収可能性を判断するにあたり、将来の課税所得を見積もっています。将来の見積課税所得は、顧客からの受注見込みや過去の業績、移転価格を考慮した連結会社間の利益の配分等に基づいて算定しています。
将来において顧客の需要減少や移転価格を含む、税務関連の動向の変化や新型コロナウィルスの影響により課税所得が予想を下回り、すでに計上されている繰延税金資産の全部又は一部を回収できないと判断した場合、当該判断を行った期間に繰延税金資産を取崩し、税金費用が計上される可能性があります。
3)退職給付に係る負債
退職給付費用及び退職給付に係る負債は、数理計算上の前提条件に基づいて算出されています。前提条件には、割引率、長期期待運用収益率、退職率、死亡率及び昇給率等の仮定が含まれています。このうち、退職給付費用及び退職給付に係る負債の計算に影響を与える最も重要な仮定は、割引率及び年金資産に係る長期期待運用収益率です。
割引率は優良債券の利回りを参考に決定しており、連結会計年度末において割引率を再検討した結果、割引率の変動が退職給付債務に重要な影響を及ぼすと判断した場合にはこれを見直した上で、退職給付債務を算定しています。長期期待運用収益率は、保有している年金資産のポートフォリオに基づく一定期間における運用実績を基に、今後の運用方針及び市場動向を考慮して設定しています。
これらの仮定が実際の結果と異なる場合、又は仮定を変更した場合、将来期間における退職給付費用及び退職給付に係る負債に影響を及ぼすことがあります。
当連結会計年度の退職給付費用の計算に使用した割引率及び期待運用収益率は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(退職給付関係)」に記載のとおりです。
4)固定資産の減損
当社グループの資産又は資産グループに減損が生じている可能性を示す事象があり、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額がこれらの帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しています。減損損失の測定に当たって見積もられる回収可能価額は、資産又は資産グループの正味売却価額と使用価値のいずれか高い方の金額を使用しています。
減損損失を認識するかどうかの判定及び使用価値の算定において見積もられる将来キャッシュ・フローは、中期経営計画や外部環境に照らして算定した受注予測等に基づき算定しています。また、使用価値の算定に使用する割引率は、当社に要求される加重平均資本コストを採用しています。将来、事業環境の変化等により固定資産の収益性が低下した場合や新型コロナウイルスの業績へ与える影響が仮定と大きく異なる場合、減損損失の計上が必要となる可能性があります。
また、固定資産の耐用年数については、各市場における製品ライフサイクルを基礎として、生産設備等の経済的耐用年数を設定しています。製品ライフサイクルについては、事業・市場・顧客・シリーズ単位などの性質を勘案して見積もっています。
② 当連結会計年度の財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度の当社グループにおける連結業績は、売上高8,105億円(前期比4.8%減)、営業利益267億円(前期比46.0%減)、経常利益186億円(前期比57.2%減)、親会社株主に帰属する当期純損失40億円(前期における親会社株主に帰属する当期純利益は221億円)となりました。
減収減益の主な要因は、電子部品事業において、車載市場は新車の世界販売台数が前期比で減少するなど低調に推移しました。民生その他市場では、スマートフォン市場において一部製品が好調に推移し、EHII(Energy、Healthcare、Industry、IoT)各市場では、IoT(Internet of Things)を活用した具体的な展開が進むなど、活発に動きが進みましたが、各市場ともに新型コロナウイルスの影響が大きく、前期比で売上高及び営業利益ともに減少しました。
このような経済環境の中、第1次中期経営計画の1年目が終了し、「革新的T型企業“ITC101”」の目標実現に向け、経営構造改革の実行による更なる統合シナジー効果の発揮を加速させ、売上の拡大や企業体質の強化等を推進します。今回の新型コロナウイルスの急速な感染拡大に伴い、当社の各事業における売上の減少や当社グループ海外工場の操業度低下等、当社事業に多大な影響を及ぼしています。そのため、当社はこの影響を軽減すべく、急速に変化する状況に応じて必要な対策を継続していきます。新型コロナウイルスによる当社への業績影響は、2021年3月期の業績にも影響すると思われますが、この影響は一過性なものと捉えています。また、更なるグローバルネットワークの拡充により一層の事業拡大を目指す物流事業を含め、これまで以上にグループ一丸となった事業運営を推進し、企業価値の向上を図っていきます。
なお各セグメントの状況については以下のとおりです。
[電子部品事業]
当連結会計年度は、車載市場で自動車市場の景気減速の影響を受けモジュール製品や通信用高周波製品等が全般にわたり軟調傾向となりました。また、民生その他市場においてもスマートフォン向けに新規顧客開拓や拡販活動を進めたものの軟調傾向となりました。これらに加え、新型コロナウイルスの全世界における感染拡大の影響もあり、前期比で売上高及び営業利益ともに減少しました。
[車載情報機器事業]
当連結会計年度は、ディスプレイ製品と電子部品事業のセンサを連動させた新製品開発や、ナビゲーションのGPS(Global Positioning System)にセンサ及び画像処理技術を組み合わせたドローンシステムの実用化に注力しました。また、音響スピーカーの開発で培った技術を応用し、歩行者に自動車の接近を知らせる車両接近通報システムの開発に着手し、更にブロックチェーン技術を活用したカーシェアリング向けデジタルキーの開発やコネクテッドカーの車両情報管理のため、IT企業のフリービット株式会社との業務提携によるMaaS(Mobility as a Service)ビジネスの強化を図りました。しかし、新型コロナウイルスの欧米各国への感染拡大により、移動規制や顧客工場の稼働停止等、3月以降の純正品等の販売が急速に減速した影響を受けました。前期比で一部製品が好調に推移したため売上高は増加しましたが、将来の受注獲得による研究開発費等により営業利益は減少しました。
[物流事業]
当連結会計年度は、中長期的に電子部品の需要拡大が見込まれる地域を中心に、新たにHUB拠点の整備とネットワークの充実を進め、新規取扱貨物量の拡大に努めました。アセアン、南アジア地域においては、7月にタイで大型の新倉庫を竣工、営業を開始しました。欧州では、東欧展開の足掛かりとしてハンガリーに事務所を開設しました。更に、これまで拡充した拠点の充実を図るとともに、安定稼働と生産性向上に取り組みました。国内外で新規顧客の獲得に取り組みましたが、米中貿易摩擦等による電子部品全体の荷動きが減少したことに加え、新型コロナウイルスの影響が拡大し、前期比で売上高及び営業利益ともに減少しました。
③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループにおいては、新製品対応、顧客に満足される品質の確保と原価低減などを目的として、生産設備の更新や合理化など設備投資を行いました。また、投資案件については十分に精査を行い、不要不急の執行を抑えるなどの対応を取りました。
電子部品事業については、国内外の各事業拠点において、新製品の増産対応や合理化、生産体制の強化などを目的とした機械設備や金型等に対し、総額257億円(前期比74億円減)の投資を行いました。
車載情報機器事業については、新製品開発など戦略投資に絞り込み、総額115億円(前期比20億円減)の投資を行いました。
物流事業については、国内外における拠点や倉庫の整備を目的とした建物や車両運搬具など、総額45億円(前期比9億円減)の投資を行いました。
以上の結果、その他子会社での投資及び連結消去を含む当連結会計年度の当社グループにおける設備投資の総額は、423億円(前期比105億円減)となりました。
当社グループにおける運転資金及び設備投資資金については、主に営業活動によるキャッシュ・フローにて調達しています。当連結会計年度末の借入金残高は998億円(前期比89億円減)となり、運転資金安定のための短期借入金が561億円(前期比179億円増)、将来の事業基盤確立に向けた研究開発や設備投資資金の確保などのための長期借入金が436億円(前期比268億円減)となりました。
今後の重要な設備投資としては、電子部品事業は当社を中心に生産体制強化を図るため、主にコンポーネント製品の生産設備への投資を行う予定です。
車載情報機器事業は、新製品の研究開発・生産設備の更新や合理化のため、国内外の主要な拠点で投資を行う予定です。
物流事業は、国内外における倉庫建設を中心とした拠点・ネットワーク投資を行う予定です。
なお、当社グループにおける運転資金及び設備投資資金については、主に営業活動によるキャッシュ・フローにて調達する予定です。
また、当社は、2020年4月24日開催の取締役会において、新型コロナウイルスの感染拡大による不測の事態に備えた短期運転資金を使途として、資金の借入及びコミットメントライン契約を締結することを決議しました。詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」に記載のとおりです。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
① 財政状態の状況
当連結会計年度末における総資産は前連結会計年度末と比べ501億円減少の6,255億円、自己資本は、利益剰余金の減少と、自己株式の増加等により、408億円減少の3,244億円となり、自己資本比率は51.9%となりました。
流動資産は、受取手形及び売掛金の減少と、現金及び預金の増加等により、前連結会計年度末と比べ337億円減少の3,691億円となりました。
固定資産は、機械装置及び運搬具、繰延税金資産の減少と、無形固定資産の増加等により、前連結会計年度末と比べ164億円減少の2,563億円となりました。
流動負債は、短期借入金の増加と、支払手形及び買掛金の減少等により、前連結会計年度末と比べ100億円増加の1,980億円となりました。
固定負債は、長期借入金の減少と、退職給付に係る負債の増加等により、前連結会計年度末と比べ204億円減少の718億円となりました。
② 経営成績の状況
当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、先行きも厳しい状況が続いています。2019年4月から2019年12月において、米国の製造業に減速傾向が見られましたが、金融緩和や良好な雇用環境を背景に個人消費の下支え効果もあり堅調に推移しました。一方、欧州では世界経済の景気減速により輸出の低迷が続き、英国のEU離脱をめぐる混乱も景気に悪影響を及ぼしました。中国では、米国との貿易協議が第1段階の合意をしたものの、貿易摩擦の長期化の影響を受け米国向け輸出の減少や個人消費の減少等から景気の低迷が続きました。日本経済では製造業において減速傾向が見られたものの、良好な雇用環境が続き総じて景気は堅調に推移しました。2020年1月から2020年3月では、全世界に感染拡大した新型コロナウイルスの影響が2020年2月に中国から始まり、その後、同時かつ連鎖的に欧米、アジアへの感染が広がりました。3月以降は各国政府の感染拡大抑制策により、各国製造業の工場停止等が発表され、当連結会計年度の世界経済に多大な影響を及ぼしました。
経営者が認識しているセグメントごとの経営成績は次のとおりです。
[電子部品事業]
エレクトロニクス業界においては、自動車市場ではCASE(Connected、Autonomous、Shared & Services、Electric)への開発は活発化したものの、新車の世界販売台数が前年比で減少するなど、低調に推移しました。スマートフォン市場において、一部の製品は好調に推移したものの、新型コロナウイルスの影響が大きく全体ではマイナス成長となりました。EHII(Energy、Healthcare、Industry、IoT)各市場では、IoT(Internet of Things)を活用した具体的な展開が進み、更にAIを組み合わせた新たなビジネスが提案される等、動きが活発に進んでいます。
この中で、電子部品事業における車載市場では、自動車市場の景気減速の影響を受けモジュール製品や通信用高周波製品等が全般にわたり軟調傾向となりました。また、民生その他市場においても、スマートフォン向けに新規顧客開拓や拡販活動を進めたものの軟調傾向となりました。これらに加え、新型コロナウイルスの全世界における感染拡大の影響もあり、前期比で売上高及び営業利益ともに減少しました。
(車載市場)
電子部品事業における車載市場では、自動運転時代を見据えて車室内の高品位な入力デバイス(Premium-HMI)やCASEへの取り組みにおいて、タッチインプットモジュール等次世代への具体的な提案活動を進めました。しかし、2020年2月以降の中国における当社工場での新型コロナウイルスの感染拡大抑制対応及びサプライチェーンの寸断により、生産、販売への影響が拡大しました。その後、中国各工場では順次再稼働しましたが、同時かつ連鎖的な欧米、アジアへの感染が拡大しました。3月以降は各国政府の感染拡大抑制策により、欧米アジア及び日本国内の顧客においても工場稼働の停止が発表され、これらにより車載市場はグローバル全般にわたり低調となりました。
当連結会計年度における当市場の売上高は2,420億円(前期比12.9%減)となりました。
(民生その他市場)
電子部品事業における民生その他市場では、スマートフォン向け各種製品を生産する当社中国工場の稼働停止措置が春節明け以降も継続して生産に影響を受けました。この中で、スマートフォン向けカメラ用アクチュエータやタッチパネルの新規顧客開拓や拡販活動を継続していましたが、新型コロナウイルスの影響もあり、一部の商品においては好調に推移したものの全体として低調に推移しました。EHIIでは、IoTを用いた物流トラッカーがAGC株式会社の製品輸送用パレットに日本国内で初めて採用される等、具体的な活動を展開しました。
当連結会計年度における当市場の売上高は1,826億円(前期比4.2%減)となりました。
以上の結果、当連結会計年度の電子部品事業の売上高は4,247億円(前期比9.4%減)、営業利益は161億円(前期比45.5%減)となりました。
[車載情報機器事業]
自動車業界においては、世界最大の市場である中国での新車販売が景気悪化や米中貿易摩擦等の影響を受けて減少し、欧米市場においても販売台数が前期比で減少するなど、世界の自動車市場は総じて厳しい状況で推移しました。また、コネクテッドカーや自動運転に次世代移動通信規格5Gを活用するためのIT・通信等の業種・業態を超えた企業間の開発競争が激化しました。
このような中、車載情報機器事業では経営統合のシナジー効果の早期実現を目指し、ディスプレイ製品と電子部品事業のセンサを連動させた新製品開発や、ナビゲーションのGPS(Global Positioning System)にセンサ及び画像処理技術を組み合わせたドローンシステムの実用化に注力しました。また、音響スピーカーの開発で培った技術を応用し、歩行者に自動車の接近を知らせる車両接近通報システムの開発に着手し、更にブロックチェーン技術を活用したカーシェアリング向けデジタルキーの開発やコネクテッドカーの車両情報管理のため、IT企業のフリービット株式会社との業務提携によるMaaS(Mobility as a Service)ビジネスの強化を図りました。
当連結会計年度の業績は、電子部品事業における車載市場と同様に、新型コロナウイルスの欧米各国への感染拡大により、移動規制や顧客工場の稼働停止等、3月以降の純正品等の販売が急速に減速した影響を受けました。前期比で一部製品が好調に推移したため売上高は増加しましたが、将来の受注獲得による研究開発費等により営業利益は減少しました。
以上の結果、当連結会計年度における車載情報機器事業の売上高は3,062億円(前期比0.9%増)、営業利益は56億円(前期比59.4%減)となりました
[物流事業]
物流事業の主要顧客である電子部品業界において、各種電子機器、自動車、産業用機器などの市況悪化を受けて荷動きが減少しました。また、新型コロナウイルスの感染拡大による顧客の工場稼働停止、各国における様々な規制の強化もあり、2020年2月以降は中国、3月には主に北米・アセアンにおいて、貨物の取扱高に一部影響が出ました。一方、将来的には次世代移動通信規格5G、IoT、自動車の電子化など、次世代技術の進展により半導体や電子部品は需要拡大が見込まれています。
このような需要動向のもと、物流事業((株)アルプス物流・東証第二部)では、中長期的に電子部品の需要拡大が見込まれる地域を中心に、新たにHUB拠点の整備とネットワークの充実を進め、新規取扱貨物量の拡大に努めました。アセアン、南アジア地域においては、7月にタイで大型の新倉庫を竣工、営業を開始しました。欧州では、東欧展開の足掛かりとしてハンガリーに事務所を開設しました。更に、これまで拡充した拠点の充実を図るとともに、安定稼働と生産性向上に取り組みました。また、車載関連物流強化策の一つとして、株式会社ロジコムと合弁会社を設立し、その海外展開の第一段階としてインドに現地法人を設立し、車載関連ビジネスの拡大を目指しています。
当連結会計年度の業績は、国内外で新規顧客の獲得に取り組みましたが、米中貿易摩擦等による電子部品全体の荷動きが減少したことに加え、新型コロナウイルスの影響が拡大し、減収減益となりました。
以上の結果、当連結会計年度における物流事業の売上高は668億円(前期比0.0%減)、営業利益は41億円(前期比12.8%減)となりました。
以上により、上記の3事業セグメントにその他を加えた当連結会計年度の当社グループにおける連結業績は、売上高8,105億円(前期比4.8%減)、営業利益267億円(前期比46.0%減)、経常利益186億円(前期比57.2%減)、親会社株主に帰属する当期純損失40億円(前期における親会社株主に帰属する当期純利益は221億円)となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末と比べ98億円増加し、当連結会計年度末の残高は、1,282億円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度末における営業活動による資金の増加は、872億円(前期は726億円の増加)となりました。
この増加は、主に減価償却費460億円、売上債権の減少額311億円及び税金等調整前当期純利益155億円による資金の増加と、法人税等の支払額96億円及びたな卸資産の増加額40億円による資金の減少によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度末における投資活動による資金の減少は、424億円(前期は674億円の減少)となりました。
この減少は、主に有形及び無形固定資産の取得による支出406億円、連結の範囲の変更を伴う子会社持分の取得による支出35億円及び定期預金の預入による支出30億円による資金の減少と、定期預金の払戻による収入52億円による資金の増加によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度末における財務活動による資金の減少は、316億円(前期は69億円の減少)となりました。
この減少は、主に自己株式取得による支出123億円、配当金の支払額93億円、長期借入金の返済による支出88億円による資金の減少によるものです。
④ 生産、受注及び販売の実績
1)生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前連結会計年度比(%) |
電子部品事業 | 434,291 | △8.3 |
車載情報機器事業 | 261,438 | 0.3 |
物流事業 | ― | ― |
合計 | 695,729 | △5.3 |
(注)1. セグメント間取引については、相殺消去しています。
2. 金額は、販売価格によっています。
3. 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
2)受注実績
当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称 | 受注高(百万円) | 前連結会計年度比(%) | 受注残高(百万円) | 前連結会計年度比(%) |
電子部品事業 | 423,756 | △8.2 | 38,521 | △2.4 |
車載情報機器事業 | 290,546 | △5.1 | 10,240 | △60.6 |
物流事業 | ― | ― | ― | ― |
合計 | 714,302 | △7.0 | 48,761 | △25.5 |
(注)1. セグメント間取引については、相殺消去しています。
2. 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
3. 当連結会計年度において、受注残高に著しい変動がありました。これは車載情報機器事業セグメントに
おいて新型コロナウイルスの欧米各国への感染拡大により、移動規制や顧客工場の稼働停止等、3月以
降の純正品等の販売が急速に減速した影響によるものです。
3)販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前連結会計年度比(%) |
電子部品事業 | 424,709 | △9.4 |
車載情報機器事業 | 306,299 | 0.9 |
物流事業 | 66,872 | △0.0 |
報告セグメント計 | 797,881 | △4.9 |
その他 | 12,688 | 3.6 |
合計 | 810,570 | △4.8 |
(注)1. セグメント間取引については、相殺消去しています。
2. 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成されています。
この連結財務諸表の作成に際し、連結決算日における資産・負債の数値及び連結会計年度の収益・費用の数値に影響を与える会計上の見積りを用いています。
当社は、特に以下の会計上の見積りが、当社グループの連結財務諸表に重要な影響を与えるものと考えています。
なお、当連結会計年度末において、新型コロナウィルスによる影響を反映しています。詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載のとおりです。
1)たな卸資産の評価
たな卸資産は取得原価又は正味売却価額のいずれか低い金額で評価しています。正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、取得原価と正味売却価額との差額について評価損を計上しています。正味売却価額は、主に顧客との販売契約に基づく予定売価を基に見積もっています。また、一定の保有期間を超えた場合、滞留又は陳腐化しているとみなし、評価損を計上しています。更に、保有期間にかかわらず将来廃却が見込まれるたな卸資産についても評価損を計上しています。
市場環境の悪化による顧客の需要減少や製品ライフサイクルの変化等に伴い、たな卸資産の収益性の低下、滞留、陳腐化が生じた場合、将来において追加の評価損の計上が必要となる可能性があります。
2)繰延税金資産
繰延税金資産については、回収可能性があると判断できる金額のみ計上しています。繰延税金資産の回収可能性を判断するにあたり、将来の課税所得を見積もっています。将来の見積課税所得は、顧客からの受注見込みや過去の業績、移転価格を考慮した連結会社間の利益の配分等に基づいて算定しています。
将来において顧客の需要減少や移転価格を含む、税務関連の動向の変化や新型コロナウィルスの影響により課税所得が予想を下回り、すでに計上されている繰延税金資産の全部又は一部を回収できないと判断した場合、当該判断を行った期間に繰延税金資産を取崩し、税金費用が計上される可能性があります。
3)退職給付に係る負債
退職給付費用及び退職給付に係る負債は、数理計算上の前提条件に基づいて算出されています。前提条件には、割引率、長期期待運用収益率、退職率、死亡率及び昇給率等の仮定が含まれています。このうち、退職給付費用及び退職給付に係る負債の計算に影響を与える最も重要な仮定は、割引率及び年金資産に係る長期期待運用収益率です。
割引率は優良債券の利回りを参考に決定しており、連結会計年度末において割引率を再検討した結果、割引率の変動が退職給付債務に重要な影響を及ぼすと判断した場合にはこれを見直した上で、退職給付債務を算定しています。長期期待運用収益率は、保有している年金資産のポートフォリオに基づく一定期間における運用実績を基に、今後の運用方針及び市場動向を考慮して設定しています。
これらの仮定が実際の結果と異なる場合、又は仮定を変更した場合、将来期間における退職給付費用及び退職給付に係る負債に影響を及ぼすことがあります。
当連結会計年度の退職給付費用の計算に使用した割引率及び期待運用収益率は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(退職給付関係)」に記載のとおりです。
4)固定資産の減損
当社グループの資産又は資産グループに減損が生じている可能性を示す事象があり、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額がこれらの帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しています。減損損失の測定に当たって見積もられる回収可能価額は、資産又は資産グループの正味売却価額と使用価値のいずれか高い方の金額を使用しています。
減損損失を認識するかどうかの判定及び使用価値の算定において見積もられる将来キャッシュ・フローは、中期経営計画や外部環境に照らして算定した受注予測等に基づき算定しています。また、使用価値の算定に使用する割引率は、当社に要求される加重平均資本コストを採用しています。将来、事業環境の変化等により固定資産の収益性が低下した場合や新型コロナウイルスの業績へ与える影響が仮定と大きく異なる場合、減損損失の計上が必要となる可能性があります。
また、固定資産の耐用年数については、各市場における製品ライフサイクルを基礎として、生産設備等の経済的耐用年数を設定しています。製品ライフサイクルについては、事業・市場・顧客・シリーズ単位などの性質を勘案して見積もっています。
② 当連結会計年度の財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度の当社グループにおける連結業績は、売上高8,105億円(前期比4.8%減)、営業利益267億円(前期比46.0%減)、経常利益186億円(前期比57.2%減)、親会社株主に帰属する当期純損失40億円(前期における親会社株主に帰属する当期純利益は221億円)となりました。
減収減益の主な要因は、電子部品事業において、車載市場は新車の世界販売台数が前期比で減少するなど低調に推移しました。民生その他市場では、スマートフォン市場において一部製品が好調に推移し、EHII(Energy、Healthcare、Industry、IoT)各市場では、IoT(Internet of Things)を活用した具体的な展開が進むなど、活発に動きが進みましたが、各市場ともに新型コロナウイルスの影響が大きく、前期比で売上高及び営業利益ともに減少しました。
このような経済環境の中、第1次中期経営計画の1年目が終了し、「革新的T型企業“ITC101”」の目標実現に向け、経営構造改革の実行による更なる統合シナジー効果の発揮を加速させ、売上の拡大や企業体質の強化等を推進します。今回の新型コロナウイルスの急速な感染拡大に伴い、当社の各事業における売上の減少や当社グループ海外工場の操業度低下等、当社事業に多大な影響を及ぼしています。そのため、当社はこの影響を軽減すべく、急速に変化する状況に応じて必要な対策を継続していきます。新型コロナウイルスによる当社への業績影響は、2021年3月期の業績にも影響すると思われますが、この影響は一過性なものと捉えています。また、更なるグローバルネットワークの拡充により一層の事業拡大を目指す物流事業を含め、これまで以上にグループ一丸となった事業運営を推進し、企業価値の向上を図っていきます。
なお各セグメントの状況については以下のとおりです。
[電子部品事業]
当連結会計年度は、車載市場で自動車市場の景気減速の影響を受けモジュール製品や通信用高周波製品等が全般にわたり軟調傾向となりました。また、民生その他市場においてもスマートフォン向けに新規顧客開拓や拡販活動を進めたものの軟調傾向となりました。これらに加え、新型コロナウイルスの全世界における感染拡大の影響もあり、前期比で売上高及び営業利益ともに減少しました。
[車載情報機器事業]
当連結会計年度は、ディスプレイ製品と電子部品事業のセンサを連動させた新製品開発や、ナビゲーションのGPS(Global Positioning System)にセンサ及び画像処理技術を組み合わせたドローンシステムの実用化に注力しました。また、音響スピーカーの開発で培った技術を応用し、歩行者に自動車の接近を知らせる車両接近通報システムの開発に着手し、更にブロックチェーン技術を活用したカーシェアリング向けデジタルキーの開発やコネクテッドカーの車両情報管理のため、IT企業のフリービット株式会社との業務提携によるMaaS(Mobility as a Service)ビジネスの強化を図りました。しかし、新型コロナウイルスの欧米各国への感染拡大により、移動規制や顧客工場の稼働停止等、3月以降の純正品等の販売が急速に減速した影響を受けました。前期比で一部製品が好調に推移したため売上高は増加しましたが、将来の受注獲得による研究開発費等により営業利益は減少しました。
[物流事業]
当連結会計年度は、中長期的に電子部品の需要拡大が見込まれる地域を中心に、新たにHUB拠点の整備とネットワークの充実を進め、新規取扱貨物量の拡大に努めました。アセアン、南アジア地域においては、7月にタイで大型の新倉庫を竣工、営業を開始しました。欧州では、東欧展開の足掛かりとしてハンガリーに事務所を開設しました。更に、これまで拡充した拠点の充実を図るとともに、安定稼働と生産性向上に取り組みました。国内外で新規顧客の獲得に取り組みましたが、米中貿易摩擦等による電子部品全体の荷動きが減少したことに加え、新型コロナウイルスの影響が拡大し、前期比で売上高及び営業利益ともに減少しました。
③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループにおいては、新製品対応、顧客に満足される品質の確保と原価低減などを目的として、生産設備の更新や合理化など設備投資を行いました。また、投資案件については十分に精査を行い、不要不急の執行を抑えるなどの対応を取りました。
電子部品事業については、国内外の各事業拠点において、新製品の増産対応や合理化、生産体制の強化などを目的とした機械設備や金型等に対し、総額257億円(前期比74億円減)の投資を行いました。
車載情報機器事業については、新製品開発など戦略投資に絞り込み、総額115億円(前期比20億円減)の投資を行いました。
物流事業については、国内外における拠点や倉庫の整備を目的とした建物や車両運搬具など、総額45億円(前期比9億円減)の投資を行いました。
以上の結果、その他子会社での投資及び連結消去を含む当連結会計年度の当社グループにおける設備投資の総額は、423億円(前期比105億円減)となりました。
当社グループにおける運転資金及び設備投資資金については、主に営業活動によるキャッシュ・フローにて調達しています。当連結会計年度末の借入金残高は998億円(前期比89億円減)となり、運転資金安定のための短期借入金が561億円(前期比179億円増)、将来の事業基盤確立に向けた研究開発や設備投資資金の確保などのための長期借入金が436億円(前期比268億円減)となりました。
今後の重要な設備投資としては、電子部品事業は当社を中心に生産体制強化を図るため、主にコンポーネント製品の生産設備への投資を行う予定です。
車載情報機器事業は、新製品の研究開発・生産設備の更新や合理化のため、国内外の主要な拠点で投資を行う予定です。
物流事業は、国内外における倉庫建設を中心とした拠点・ネットワーク投資を行う予定です。
なお、当社グループにおける運転資金及び設備投資資金については、主に営業活動によるキャッシュ・フローにて調達する予定です。
また、当社は、2020年4月24日開催の取締役会において、新型コロナウイルスの感染拡大による不測の事態に備えた短期運転資金を使途として、資金の借入及びコミットメントライン契約を締結することを決議しました。詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」に記載のとおりです。