有価証券報告書-第88期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
① 財政状態の状況
当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末と比べ687億円増加の6,942億円、自己資本は、退職給付に係る調整累計額の増加と、利益剰余金、自己株式の減少等により、204億円増加の3,449億円となり、自己資本比率は49.7%となりました。
流動資産は、受取手形及び売掛金、現金及び預金の増加等により、前連結会計年度末と比べ561億円増加の4,252億円となりました。
固定資産は、投資有価証券、機械装置及び運搬具の増加等により、前連結会計年度末と比べ126億円増加の2,689億円となりました。
流動負債は、支払手形及び買掛金、未払費用の増加と、短期借入金の減少等により、前連結会計年度末と比べ264億円増加の2,244億円となりました。
固定負債は、長期借入金の増加と、退職給付に係る負債の減少等により、前連結会計年度末と比べ195億円増加の914億円となりました。
② 経営成績の状況
当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルスの感染拡大により、各国で感染対策と経済活動の両立を模索する状況となりました。米国では、上期に行った外出制限の影響もあり個人消費の落ち込みが見られましたが、下期は経済対策の効果が表れて緩やかな回復傾向となりました。欧州各国では、上期に都市封鎖が緩和されて以降、緩やかな景気回復へと向かいましたが、その後の感染再拡大による経済活動の制限により、下期は減速しました。中国では、2020年3月から経済活動を再開したことにより輸出が感染前の水準よりも拡大し、景気は総じて回復傾向が継続しました。日本においては、上期に全国で、下期に一部の地域で緊急事態宣言が発令された影響によって経済活動は低迷しました。政府の各種支援策等による個人消費の回復や製造業を中心とした輸出の持ち直しも見られましたが、総じて景気は軟調となりました。
経営者が認識しているセグメントごとの経営成績は次のとおりです。
[電子部品事業]
エレクトロニクス業界においては、自動車市場では、新型コロナウイルスの影響が一時的に収束に向かった第2四半期から、各国での経済活動の再開や経済対策の効果により、世界の新車販売台数は回復基調となったものの、前期比では減少となりました。加えて、第4四半期は、世界的な半導体不足や米国テキサス州を襲った大寒波による原材料の供給不足の影響等により、市況は直前四半期と比較して軟調に推移しました。スマートフォン市場では、5G対応の新商品への買い替え需要により、スマートフォンの世界販売台数は回復傾向となりましたが、前期比では減少しました。EHII各市場では、IoTの進展、及びAIとの組み合わせによる新たなビジネスの展開が進んでいますが、新型コロナウイルスの影響により低調に推移しました。
この中で、電子部品事業における車載市場では、新車販売台数の落ち込みが大きく影響し、車載市場向け各種製品が低調となりました。民生その他市場は、北米向けスマートフォンの販売台数が好調に推移したものの、米中貿易摩擦による中国向けスマートフォンの販売台数の減少などの影響もあり、全体としては軟調に推移しました。
これらの結果、当事業の売上高及び営業利益ともに前期比で減少しました。
また、当社グループが過去に製造・販売した自動車用部品の一部の製品に関連し、得意先で当該製品を組み込んだ自動車の品質不具合が発生したことから、当該品質不具合に伴う市場措置費用に関わる当社グループの負担金額68億円を特別損失として計上しています。
(車載市場)
電子部品事業における車載市場では、CASEへの開発活動が一段と加速している中、幅広いニーズに対応すべく、次世代技術を使用した製品開発を推進、また、ブロードコム株式会社とのBluetooth® Low Energyを応用した測距システムでの協業、Acconeer ABとの次世代センシング技術共同開発契約締結など、よりスピーディーな事業化に向けて、各有力企業とのアライアンスも積極的に進めました。
当連結会計年度における当市場の売上高は、世界的に自動車市場が減速した影響を受け、全般的に各種製品が低調に推移し、2,091億円(前期比13.6%減)となりました。
(民生その他市場)
電子部品事業における民生その他市場では、日本企業初のCellular-V2X機能搭載の車載用5G通信モジュールの開発をはじめ、株式会社キユーソー流通システム・損害保険ジャパン株式会社との物流資材遠隔管理システムの共創、またSkyhook Wireless, Inc.の精密測位システムを採用したクラウドサービスMonoTra™の開発などを進めました。
当連結会計年度における当市場の売上高は、スマートフォンの販売台数の減少による影響を受けましたが、スマートフォン向けカメラ用アクチュエータが好調に推移した効果もあり、1,869億円(前期比2.4%増)となりました。
以上の結果、当連結会計年度の電子部品事業の売上高は3,960億円(前期比6.7%減)、営業利益は114億円(前期比29.2%減)となりました。
[車載情報機器事業]
CASEやADAS(先進運転支援システム)の進展により、IT・通信など業種、業態の垣根を越えた企業間の開発競争が激化していますが、新車販売台数は前期比で減少し、市況は低調に推移しました。この中で、車載情報機器事業では、電子部品事業とのシナジーによって生まれた「デジタルキャビン」製品群の提案及び製品開発の加速、ブロックチェーン技術を活用したカーシェアリング向けデジタルキーシステムの開発や、コネクテッドカーの車両情報管理等でのビジネス強化を図りました。また、グローバル競争力及び顧客価値の向上を目的として、日本精機株式会社と資本業務提携契約を締結しました。
当連結会計年度は、新車販売台数減少の影響が大きく、売上高及び営業利益ともに前期比で減少しました。
以上の結果、当連結会計年度における車載情報機器事業の売上高は2,406億円(前期比21.4%減)、営業損失は39億円(前期における営業利益は56億円)となりました。
[物流事業]
物流事業の主要顧客である電子部品業界において、新型コロナウイルスの影響により、第1四半期は世界各国で自動車や電子機器の生産が停滞し電子部品の物量全体が大きく落ち込みましたが、第2四半期後半から車載関連を中心に回復傾向となりました。
このような需要動向のもと、物流事業((株)アルプス物流・東証第一部 ※2021年1月21日市場第二部銘柄から市場第一部銘柄へ上場)では、新規拡販に取り組むとともに、生産性向上の施策として国内で新たに大型自動化設備を導入した倉庫を稼働しました。消費物流においては、企業間物流の取り込み、メディカル・化粧品などの商品センター業務及び生協宅配ビジネスの拡大に取り組みました。また、海外においては、拠点・ネットワークの拡充を継続し、中国では通関業の専門子会社を設立するなど、業務の迅速化による輸出入事業拡大に向けた体制の強化を図りました。
当連結会計年度における業績は、新規拡販と生産性向上によるコスト削減に取り組み、更に電子部品業界の荷動きが活発になったことから、前期比で売上高、営業利益ともに増加しました。
以上の結果、当連結会計年度における物流事業の売上高は692億円(前期比3.5%増)、営業利益は47億円(前期比14.7%増)となりました。
以上により、上記の3事業セグメントにその他を加えた当連結会計年度における当社グループの連結業績は、売上高7,180億円(前期比11.4%減)、営業利益131億円(前期比51.1%減)、経常利益132億円(前期比29.1%減)、親会社株主に帰属する当期純損失38億円(前期における親会社株主に帰属する当期純損失は40億円)となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末と比べ235億円増加し、当連結会計年度末の残高は、1,517億円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度末における営業活動による資金の増加は、426億円(前期は872億円の増加)となりました。
この増加は、主に減価償却費413億円、たな卸資産の減少額91億円、仕入債務の増加額70億円、未払費用の増加額59億円及び税金等調整前当期純利益50億円による資金の増加と、売上債権の増加額147億円、法人税等の支払額63億円及び退職給付に係る負債の減少額19億円による資金の減少によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度末における投資活動による資金の減少は、411億円(前期は424億円の減少)となりました。
この減少は、主に有形及び無形固定資産の取得による支出379億円、投資有価証券の取得による支出39億円及び定期預金の預入による支出12億円による資金の減少と、定期預金の払戻による収入13億円の増加によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度末における財務活動による資金の増加は、145億円(前期は316億円の減少)となりました。
この増加は、主に短期借入金及び長期借入金の増加額451億円、自己株式の処分による収入37億円による資金の増加と、長期借入金の返済による支出280億円、配当金の支払額40億円による資金の減少によるものです。
④ 生産、受注及び販売の実績
1)生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注)1. セグメント間取引については、相殺消去しています。
2. 金額は、販売価格によっています。
3. 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
2)受注実績
当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注)1. セグメント間取引については、相殺消去しています。
2. 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
3. 当連結会計年度において、受注残高に著しい変動がありました。これは電子部品事業セグメントでは、新型コロナウイルス拡大影響によりスマートフォンの販売開始が後ろ倒しとなったため受注残高が維持されました。またスマートフォン向けコンポーネント製品の販売が好調だったことにより受注高が緩やかに回復しています。車載情報機器事業セグメントでは、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う移動規制や顧客工場の稼働停止等により、前年度末において、純正品等の販売が急速に減速した影響を受けましたが、下期以降、感染対策と経済活動の両立が進み、受注高が緩やかに回復した影響によるものです。
3)販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注)1. セグメント間取引については、相殺消去しています。
2. 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成されています。
この連結財務諸表の作成に際し、連結決算日における資産・負債の数値及び連結会計年度の収益・費用の数値に影響を与える会計上の見積りを用いています。
当社は、特に以下の会計上の見積りが、当社グループの連結財務諸表に重要な影響を与えるものと考えています。
1)たな卸資産の評価
たな卸資産は取得原価又は正味売却価額のいずれか低い金額で評価しています。正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、取得原価と正味売却価額との差額について評価損を計上しています。正味売却価額は、主に顧客との販売契約に基づく予定売価を基に見積もっています。また、一定の保有期間を超えた場合、滞留又は陳腐化しているとみなし、評価損を計上しています。更に、保有期間にかかわらず将来廃却が見込まれるたな卸資産についても評価損を計上しています。
市場環境の悪化による顧客の需要減少や製品ライフサイクルの変化等に伴い、たな卸資産の収益性の低下、滞留、陳腐化が生じた場合、将来において追加の評価損の計上が必要となる可能性があります。
2)繰延税金資産
繰延税金資産については、回収可能性があると判断できる金額のみ計上しています。将来の収益力に基づく課税所得を見積り、繰延税金資産の回収可能性を判断しています。将来課税所得の見積りは、事業計画並びにグループ会社間の取引価格を基礎としています。事業計画は、主に、各事業の主要顧客への販売数量及び販売価格、予測されている営業利益率、売上規模に応じた固定費の見積り及び想定為替レートを前提に策定しています。また、各市場における新型コロナウイルス感染拡大の影響も勘案しています。
将来において顧客の需要減少や移転価格を含む、税務関連の動向の変化や新型コロナウイルスの影響により課税所得が予想を下回り、すでに計上されている繰延税金資産の全部又は一部を回収できないと判断した場合、当該判断を行った期間に繰延税金資産を取崩し、税金費用が計上される可能性があります。
当連結会計年度の繰延税金資産の回収可能性を判断するに当たり、将来課税所得の見積りに用いた重要な仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
3)退職給付に係る負債
退職給付費用及び退職給付に係る負債は、数理計算上の前提条件に基づいて算出されています。前提条件には、割引率、長期期待運用収益率、退職率、死亡率及び昇給率等の仮定が含まれています。このうち、退職給付費用及び退職給付に係る負債の計算に影響を与える最も重要な仮定は、割引率及び年金資産に係る長期期待運用収益率です。
割引率は優良債券の利回りを参考に決定しており、連結会計年度末において割引率を再検討した結果、割引率の変動が退職給付債務に重要な影響を及ぼすと判断した場合にはこれを見直した上で、退職給付債務を算定しています。長期期待運用収益率は、保有している年金資産のポートフォリオに基づく一定期間における運用実績を基に、今後の運用方針及び市場動向を考慮して設定しています。
これらの仮定が実際の結果と異なる場合、又は仮定を変更した場合、将来期間における退職給付費用及び退職給付に係る負債に影響を及ぼすことがあります。
当連結会計年度の退職給付費用の計算に使用した割引率及び長期期待運用収益率は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(退職給付関係)」に記載のとおりです。
4)固定資産の減損
当社グループの資産又は資産グループに減損が生じている可能性を示す事象があり、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額がこれらの帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しています。減損損失の測定に当たって見積られる回収可能価額は、資産又は資産グループの正味売却価額と使用価値のいずれか高い方の金額を使用しています。
減損損失を認識するかどうかの判定及び使用価値の算定において見積られる将来キャッシュ・フローは、中期経営計画や外部環境に照らして算定した受注予測等に基づき算定しています。また、使用価値の算定に使用する割引率は、当社に要求される加重平均資本コストを採用しています。将来、事業環境の変化等により固定資産の収益性が低下した場合や新型コロナウイルスの業績へ与える影響が仮定と大きく異なる場合、減損損失の計上が必要となる可能性があります。
また、固定資産の耐用年数については、各市場における製品ライフサイクルを基礎として、生産設備等の経済的耐用年数を設定しています。製品ライフサイクルについては、事業・市場・顧客単位などの性質を勘案して決定しています。
当連結会計年度において減損会計を適用するに当たり、将来キャッシュ・フローの見積りに用いた重要な仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
② 当連結会計年度の財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度の当社グループにおける連結業績は、売上高7,180億円(前期比11.4%減)、営業利益131億円(前期比51.1%減)、経常利益132億円(前期比29.1%減)、親会社株主に帰属する当期純損失38億円(前期における親会社株主に帰属する当期純損失は40億円)となりました。
減収減益の主な要因は、電子部品事業において、車載市場は世界的に自動車市場が減速した影響を受け、全般的に各種製品が低調に推移しました。EHII各市場では、IoT(Internet of Things)の進展、及びAI(人工知能)との組み合わせによる新たなビジネスの展開が進んでいますが、新型コロナウイルスの影響により低調に推移しました。車載情報機器事業においても、新車販売台数の減少が大きく影響し低調に推移しました。
このような事業環境の中、第1次中期経営計画の2年目が終了し、「革新的T型企業“ITC101”」の目標実現に向け、「デジタルキャビン」製品群の提案活動も一層拍車をかけ、事業構造改革におけるコスト構造改革においては固定費の削減などが計画通り進んでいます。他にも、コロナ禍を働き方改革推進の好機と捉え、そのインフラとなるITの活用によるDX(Digital Transformation)を推進しています。当社は、今後も新型コロナウイルス感染拡大に伴う事業への影響を最小限とすべく、急速に変化する状況に応じて必要な対策を継続していきます。そして、更なるグローバルネットワークの拡充により一層の事業拡大を目指す物流事業を含め、これまで以上にグループ一丸となった事業運営を推進し、企業価値の向上を図っていきます。
なお各セグメントの状況については以下のとおりです。
[電子部品事業]
当連結会計年度は、車載市場で世界的に自動車市場が減速した影響を受け、各種製品が全般的に低調傾向となりました。民生その他市場においてはスマートフォンの販売台数の減少による影響を受けましたが、スマートフォン向けカメラ用アクチュエータは好調に推移しました。しかし、新型コロナウイルスの感染再拡大の影響もあり、前期比で売上高及び営業利益ともに減少しました。
[車載情報機器事業]
当連結会計年度は、CASEやADAS(先進運転支援システム)の進展により、IT・通信など業種、業態の垣根を越えた企業間の開発競争が激化していますが、新車販売台数は前期比で減少し、市況は低調に推移しました。この中で、車載情報機器事業では、電子部品事業とのシナジーによって生まれた「デジタルキャビン」製品群の提案及び製品開発の加速、ブロックチェーン技術を活用したカーシェアリング向けデジタルキーシステムの開発や、コネクテッドカーの車両情報管理等でのビジネス強化を図りました。また、グローバル競争力及び顧客価値の向上を目的として、日本精機株式会社と資本業務提携契約を締結しました。しかし、新車販売台数減少の影響が大きく、売上高及び営業利益ともに減少しました。
[物流事業]
当連結会計年度は、新規拡販に取り組むとともに、生産性向上の施策として国内で新たに大型自動化設備を導入した倉庫を稼働しました。消費物流においては、企業間物流の取り込み、メディカル・化粧品などの商品センター業務及び生協宅配ビジネスの拡大に取り組みました。また、海外においては、拠点・ネットワークの拡充を継続し、中国では通関業の専門子会社を設立するなど、業務の迅速化による輸出入事業拡大に向けた体制の強化を図りました。新規拡販と生産性向上によるコスト削減に取り組み、更に電子部品業界の荷動きが活発になったことから、前期比で売上高、営業利益ともに増加しました。
③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループにおいては、既存事業と新規事業における新製品対応や品質の確保及び原価低減などを目的として、生産設備の更新や合理化などの設備投資を行いました。
電子部品事業については、国内外の各事業拠点において、新製品の増産対応や合理化、生産体制の強化などを目的とした主にコンポーネント製品の機械設備や金型等に対し、総額254億円(前期比2億円減)の投資を行いました。
車載情報機器事業については、新製品の開発や品質の向上などを目的として、CASE領域など将来の成長に備え、自動車メーカーに対応した金型や機械設備などに、総額102億円(前期比13億円減)の投資を行いました。
物流事業については、国内で新たに大型自動化設備を導入した倉庫などに対し、総額40億円(前期比4億円減)の投資を行いました。
以上の結果、その他子会社での投資及び連結消去を含む当連結会計年度の当社グループにおける設備投資の総額は、403億円(前期比20億円減)となりました。
当社グループにおける運転資金及び設備投資資金については、主に営業活動によるキャッシュ・フロー及び金融機関からの借入金にて調達しています。当連結会計年度末の借入金残高は1,179億円(前期比180億円増)となり、運転資金安定のための短期借入金が508億円(前期比53億円減)、将来の事業基盤確立に向けた研究開発や設備投資資金の確保などのための長期借入金が670億円(前期比233億円増)となりました。
今後の重要な設備投資としては、電子部品事業は当社を中心に生産体制強化を図るため、主にコンポーネント製品の生産設備への投資を行う予定です。
車載情報機器事業は、新製品の研究開発・生産設備の更新や合理化のため、国内外の主要な拠点で投資を行う予定です。
物流事業は、国内外における倉庫建設を中心とした拠点・ネットワーク投資を行う予定です。
なお、当社グループにおける運転資金及び設備投資資金については、主に営業活動によるキャッシュ・フロー及び金融機関からの借入金にて調達する予定です。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
① 財政状態の状況
当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末と比べ687億円増加の6,942億円、自己資本は、退職給付に係る調整累計額の増加と、利益剰余金、自己株式の減少等により、204億円増加の3,449億円となり、自己資本比率は49.7%となりました。
流動資産は、受取手形及び売掛金、現金及び預金の増加等により、前連結会計年度末と比べ561億円増加の4,252億円となりました。
固定資産は、投資有価証券、機械装置及び運搬具の増加等により、前連結会計年度末と比べ126億円増加の2,689億円となりました。
流動負債は、支払手形及び買掛金、未払費用の増加と、短期借入金の減少等により、前連結会計年度末と比べ264億円増加の2,244億円となりました。
固定負債は、長期借入金の増加と、退職給付に係る負債の減少等により、前連結会計年度末と比べ195億円増加の914億円となりました。
② 経営成績の状況
当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルスの感染拡大により、各国で感染対策と経済活動の両立を模索する状況となりました。米国では、上期に行った外出制限の影響もあり個人消費の落ち込みが見られましたが、下期は経済対策の効果が表れて緩やかな回復傾向となりました。欧州各国では、上期に都市封鎖が緩和されて以降、緩やかな景気回復へと向かいましたが、その後の感染再拡大による経済活動の制限により、下期は減速しました。中国では、2020年3月から経済活動を再開したことにより輸出が感染前の水準よりも拡大し、景気は総じて回復傾向が継続しました。日本においては、上期に全国で、下期に一部の地域で緊急事態宣言が発令された影響によって経済活動は低迷しました。政府の各種支援策等による個人消費の回復や製造業を中心とした輸出の持ち直しも見られましたが、総じて景気は軟調となりました。
経営者が認識しているセグメントごとの経営成績は次のとおりです。
[電子部品事業]
エレクトロニクス業界においては、自動車市場では、新型コロナウイルスの影響が一時的に収束に向かった第2四半期から、各国での経済活動の再開や経済対策の効果により、世界の新車販売台数は回復基調となったものの、前期比では減少となりました。加えて、第4四半期は、世界的な半導体不足や米国テキサス州を襲った大寒波による原材料の供給不足の影響等により、市況は直前四半期と比較して軟調に推移しました。スマートフォン市場では、5G対応の新商品への買い替え需要により、スマートフォンの世界販売台数は回復傾向となりましたが、前期比では減少しました。EHII各市場では、IoTの進展、及びAIとの組み合わせによる新たなビジネスの展開が進んでいますが、新型コロナウイルスの影響により低調に推移しました。
この中で、電子部品事業における車載市場では、新車販売台数の落ち込みが大きく影響し、車載市場向け各種製品が低調となりました。民生その他市場は、北米向けスマートフォンの販売台数が好調に推移したものの、米中貿易摩擦による中国向けスマートフォンの販売台数の減少などの影響もあり、全体としては軟調に推移しました。
これらの結果、当事業の売上高及び営業利益ともに前期比で減少しました。
また、当社グループが過去に製造・販売した自動車用部品の一部の製品に関連し、得意先で当該製品を組み込んだ自動車の品質不具合が発生したことから、当該品質不具合に伴う市場措置費用に関わる当社グループの負担金額68億円を特別損失として計上しています。
(車載市場)
電子部品事業における車載市場では、CASEへの開発活動が一段と加速している中、幅広いニーズに対応すべく、次世代技術を使用した製品開発を推進、また、ブロードコム株式会社とのBluetooth® Low Energyを応用した測距システムでの協業、Acconeer ABとの次世代センシング技術共同開発契約締結など、よりスピーディーな事業化に向けて、各有力企業とのアライアンスも積極的に進めました。
当連結会計年度における当市場の売上高は、世界的に自動車市場が減速した影響を受け、全般的に各種製品が低調に推移し、2,091億円(前期比13.6%減)となりました。
(民生その他市場)
電子部品事業における民生その他市場では、日本企業初のCellular-V2X機能搭載の車載用5G通信モジュールの開発をはじめ、株式会社キユーソー流通システム・損害保険ジャパン株式会社との物流資材遠隔管理システムの共創、またSkyhook Wireless, Inc.の精密測位システムを採用したクラウドサービスMonoTra™の開発などを進めました。
当連結会計年度における当市場の売上高は、スマートフォンの販売台数の減少による影響を受けましたが、スマートフォン向けカメラ用アクチュエータが好調に推移した効果もあり、1,869億円(前期比2.4%増)となりました。
以上の結果、当連結会計年度の電子部品事業の売上高は3,960億円(前期比6.7%減)、営業利益は114億円(前期比29.2%減)となりました。
[車載情報機器事業]
CASEやADAS(先進運転支援システム)の進展により、IT・通信など業種、業態の垣根を越えた企業間の開発競争が激化していますが、新車販売台数は前期比で減少し、市況は低調に推移しました。この中で、車載情報機器事業では、電子部品事業とのシナジーによって生まれた「デジタルキャビン」製品群の提案及び製品開発の加速、ブロックチェーン技術を活用したカーシェアリング向けデジタルキーシステムの開発や、コネクテッドカーの車両情報管理等でのビジネス強化を図りました。また、グローバル競争力及び顧客価値の向上を目的として、日本精機株式会社と資本業務提携契約を締結しました。
当連結会計年度は、新車販売台数減少の影響が大きく、売上高及び営業利益ともに前期比で減少しました。
以上の結果、当連結会計年度における車載情報機器事業の売上高は2,406億円(前期比21.4%減)、営業損失は39億円(前期における営業利益は56億円)となりました。
[物流事業]
物流事業の主要顧客である電子部品業界において、新型コロナウイルスの影響により、第1四半期は世界各国で自動車や電子機器の生産が停滞し電子部品の物量全体が大きく落ち込みましたが、第2四半期後半から車載関連を中心に回復傾向となりました。
このような需要動向のもと、物流事業((株)アルプス物流・東証第一部 ※2021年1月21日市場第二部銘柄から市場第一部銘柄へ上場)では、新規拡販に取り組むとともに、生産性向上の施策として国内で新たに大型自動化設備を導入した倉庫を稼働しました。消費物流においては、企業間物流の取り込み、メディカル・化粧品などの商品センター業務及び生協宅配ビジネスの拡大に取り組みました。また、海外においては、拠点・ネットワークの拡充を継続し、中国では通関業の専門子会社を設立するなど、業務の迅速化による輸出入事業拡大に向けた体制の強化を図りました。
当連結会計年度における業績は、新規拡販と生産性向上によるコスト削減に取り組み、更に電子部品業界の荷動きが活発になったことから、前期比で売上高、営業利益ともに増加しました。
以上の結果、当連結会計年度における物流事業の売上高は692億円(前期比3.5%増)、営業利益は47億円(前期比14.7%増)となりました。
以上により、上記の3事業セグメントにその他を加えた当連結会計年度における当社グループの連結業績は、売上高7,180億円(前期比11.4%減)、営業利益131億円(前期比51.1%減)、経常利益132億円(前期比29.1%減)、親会社株主に帰属する当期純損失38億円(前期における親会社株主に帰属する当期純損失は40億円)となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末と比べ235億円増加し、当連結会計年度末の残高は、1,517億円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度末における営業活動による資金の増加は、426億円(前期は872億円の増加)となりました。
この増加は、主に減価償却費413億円、たな卸資産の減少額91億円、仕入債務の増加額70億円、未払費用の増加額59億円及び税金等調整前当期純利益50億円による資金の増加と、売上債権の増加額147億円、法人税等の支払額63億円及び退職給付に係る負債の減少額19億円による資金の減少によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度末における投資活動による資金の減少は、411億円(前期は424億円の減少)となりました。
この減少は、主に有形及び無形固定資産の取得による支出379億円、投資有価証券の取得による支出39億円及び定期預金の預入による支出12億円による資金の減少と、定期預金の払戻による収入13億円の増加によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度末における財務活動による資金の増加は、145億円(前期は316億円の減少)となりました。
この増加は、主に短期借入金及び長期借入金の増加額451億円、自己株式の処分による収入37億円による資金の増加と、長期借入金の返済による支出280億円、配当金の支払額40億円による資金の減少によるものです。
④ 生産、受注及び販売の実績
1)生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前連結会計年度比(%) |
電子部品事業 | 400,382 | △7.8 |
車載情報機器事業 | 205,608 | △21.4 |
物流事業 | ― | ― |
合計 | 605,990 | △12.9 |
(注)1. セグメント間取引については、相殺消去しています。
2. 金額は、販売価格によっています。
3. 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
2)受注実績
当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称 | 受注高(百万円) | 前連結会計年度比(%) | 受注残高(百万円) | 前連結会計年度比(%) |
電子部品事業 | 416,269 | △1.8 | 58,748 | 52.5 |
車載情報機器事業 | 248,484 | △14.5 | 18,107 | 76.8 |
物流事業 | ― | ― | ― | ― |
合計 | 664,754 | △6.9 | 76,856 | 57.6 |
(注)1. セグメント間取引については、相殺消去しています。
2. 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
3. 当連結会計年度において、受注残高に著しい変動がありました。これは電子部品事業セグメントでは、新型コロナウイルス拡大影響によりスマートフォンの販売開始が後ろ倒しとなったため受注残高が維持されました。またスマートフォン向けコンポーネント製品の販売が好調だったことにより受注高が緩やかに回復しています。車載情報機器事業セグメントでは、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う移動規制や顧客工場の稼働停止等により、前年度末において、純正品等の販売が急速に減速した影響を受けましたが、下期以降、感染対策と経済活動の両立が進み、受注高が緩やかに回復した影響によるものです。
3)販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前連結会計年度比(%) |
電子部品事業 | 396,042 | △6.7 |
車載情報機器事業 | 240,616 | △21.4 |
物流事業 | 69,213 | 3.5 |
報告セグメント計 | 705,873 | △11.5 |
その他 | 12,140 | △4.3 |
合計 | 718,013 | △11.4 |
(注)1. セグメント間取引については、相殺消去しています。
2. 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成されています。
この連結財務諸表の作成に際し、連結決算日における資産・負債の数値及び連結会計年度の収益・費用の数値に影響を与える会計上の見積りを用いています。
当社は、特に以下の会計上の見積りが、当社グループの連結財務諸表に重要な影響を与えるものと考えています。
1)たな卸資産の評価
たな卸資産は取得原価又は正味売却価額のいずれか低い金額で評価しています。正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、取得原価と正味売却価額との差額について評価損を計上しています。正味売却価額は、主に顧客との販売契約に基づく予定売価を基に見積もっています。また、一定の保有期間を超えた場合、滞留又は陳腐化しているとみなし、評価損を計上しています。更に、保有期間にかかわらず将来廃却が見込まれるたな卸資産についても評価損を計上しています。
市場環境の悪化による顧客の需要減少や製品ライフサイクルの変化等に伴い、たな卸資産の収益性の低下、滞留、陳腐化が生じた場合、将来において追加の評価損の計上が必要となる可能性があります。
2)繰延税金資産
繰延税金資産については、回収可能性があると判断できる金額のみ計上しています。将来の収益力に基づく課税所得を見積り、繰延税金資産の回収可能性を判断しています。将来課税所得の見積りは、事業計画並びにグループ会社間の取引価格を基礎としています。事業計画は、主に、各事業の主要顧客への販売数量及び販売価格、予測されている営業利益率、売上規模に応じた固定費の見積り及び想定為替レートを前提に策定しています。また、各市場における新型コロナウイルス感染拡大の影響も勘案しています。
将来において顧客の需要減少や移転価格を含む、税務関連の動向の変化や新型コロナウイルスの影響により課税所得が予想を下回り、すでに計上されている繰延税金資産の全部又は一部を回収できないと判断した場合、当該判断を行った期間に繰延税金資産を取崩し、税金費用が計上される可能性があります。
当連結会計年度の繰延税金資産の回収可能性を判断するに当たり、将来課税所得の見積りに用いた重要な仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
3)退職給付に係る負債
退職給付費用及び退職給付に係る負債は、数理計算上の前提条件に基づいて算出されています。前提条件には、割引率、長期期待運用収益率、退職率、死亡率及び昇給率等の仮定が含まれています。このうち、退職給付費用及び退職給付に係る負債の計算に影響を与える最も重要な仮定は、割引率及び年金資産に係る長期期待運用収益率です。
割引率は優良債券の利回りを参考に決定しており、連結会計年度末において割引率を再検討した結果、割引率の変動が退職給付債務に重要な影響を及ぼすと判断した場合にはこれを見直した上で、退職給付債務を算定しています。長期期待運用収益率は、保有している年金資産のポートフォリオに基づく一定期間における運用実績を基に、今後の運用方針及び市場動向を考慮して設定しています。
これらの仮定が実際の結果と異なる場合、又は仮定を変更した場合、将来期間における退職給付費用及び退職給付に係る負債に影響を及ぼすことがあります。
当連結会計年度の退職給付費用の計算に使用した割引率及び長期期待運用収益率は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(退職給付関係)」に記載のとおりです。
4)固定資産の減損
当社グループの資産又は資産グループに減損が生じている可能性を示す事象があり、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額がこれらの帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しています。減損損失の測定に当たって見積られる回収可能価額は、資産又は資産グループの正味売却価額と使用価値のいずれか高い方の金額を使用しています。
減損損失を認識するかどうかの判定及び使用価値の算定において見積られる将来キャッシュ・フローは、中期経営計画や外部環境に照らして算定した受注予測等に基づき算定しています。また、使用価値の算定に使用する割引率は、当社に要求される加重平均資本コストを採用しています。将来、事業環境の変化等により固定資産の収益性が低下した場合や新型コロナウイルスの業績へ与える影響が仮定と大きく異なる場合、減損損失の計上が必要となる可能性があります。
また、固定資産の耐用年数については、各市場における製品ライフサイクルを基礎として、生産設備等の経済的耐用年数を設定しています。製品ライフサイクルについては、事業・市場・顧客単位などの性質を勘案して決定しています。
当連結会計年度において減損会計を適用するに当たり、将来キャッシュ・フローの見積りに用いた重要な仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
② 当連結会計年度の財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度の当社グループにおける連結業績は、売上高7,180億円(前期比11.4%減)、営業利益131億円(前期比51.1%減)、経常利益132億円(前期比29.1%減)、親会社株主に帰属する当期純損失38億円(前期における親会社株主に帰属する当期純損失は40億円)となりました。
減収減益の主な要因は、電子部品事業において、車載市場は世界的に自動車市場が減速した影響を受け、全般的に各種製品が低調に推移しました。EHII各市場では、IoT(Internet of Things)の進展、及びAI(人工知能)との組み合わせによる新たなビジネスの展開が進んでいますが、新型コロナウイルスの影響により低調に推移しました。車載情報機器事業においても、新車販売台数の減少が大きく影響し低調に推移しました。
このような事業環境の中、第1次中期経営計画の2年目が終了し、「革新的T型企業“ITC101”」の目標実現に向け、「デジタルキャビン」製品群の提案活動も一層拍車をかけ、事業構造改革におけるコスト構造改革においては固定費の削減などが計画通り進んでいます。他にも、コロナ禍を働き方改革推進の好機と捉え、そのインフラとなるITの活用によるDX(Digital Transformation)を推進しています。当社は、今後も新型コロナウイルス感染拡大に伴う事業への影響を最小限とすべく、急速に変化する状況に応じて必要な対策を継続していきます。そして、更なるグローバルネットワークの拡充により一層の事業拡大を目指す物流事業を含め、これまで以上にグループ一丸となった事業運営を推進し、企業価値の向上を図っていきます。
なお各セグメントの状況については以下のとおりです。
[電子部品事業]
当連結会計年度は、車載市場で世界的に自動車市場が減速した影響を受け、各種製品が全般的に低調傾向となりました。民生その他市場においてはスマートフォンの販売台数の減少による影響を受けましたが、スマートフォン向けカメラ用アクチュエータは好調に推移しました。しかし、新型コロナウイルスの感染再拡大の影響もあり、前期比で売上高及び営業利益ともに減少しました。
[車載情報機器事業]
当連結会計年度は、CASEやADAS(先進運転支援システム)の進展により、IT・通信など業種、業態の垣根を越えた企業間の開発競争が激化していますが、新車販売台数は前期比で減少し、市況は低調に推移しました。この中で、車載情報機器事業では、電子部品事業とのシナジーによって生まれた「デジタルキャビン」製品群の提案及び製品開発の加速、ブロックチェーン技術を活用したカーシェアリング向けデジタルキーシステムの開発や、コネクテッドカーの車両情報管理等でのビジネス強化を図りました。また、グローバル競争力及び顧客価値の向上を目的として、日本精機株式会社と資本業務提携契約を締結しました。しかし、新車販売台数減少の影響が大きく、売上高及び営業利益ともに減少しました。
[物流事業]
当連結会計年度は、新規拡販に取り組むとともに、生産性向上の施策として国内で新たに大型自動化設備を導入した倉庫を稼働しました。消費物流においては、企業間物流の取り込み、メディカル・化粧品などの商品センター業務及び生協宅配ビジネスの拡大に取り組みました。また、海外においては、拠点・ネットワークの拡充を継続し、中国では通関業の専門子会社を設立するなど、業務の迅速化による輸出入事業拡大に向けた体制の強化を図りました。新規拡販と生産性向上によるコスト削減に取り組み、更に電子部品業界の荷動きが活発になったことから、前期比で売上高、営業利益ともに増加しました。
③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループにおいては、既存事業と新規事業における新製品対応や品質の確保及び原価低減などを目的として、生産設備の更新や合理化などの設備投資を行いました。
電子部品事業については、国内外の各事業拠点において、新製品の増産対応や合理化、生産体制の強化などを目的とした主にコンポーネント製品の機械設備や金型等に対し、総額254億円(前期比2億円減)の投資を行いました。
車載情報機器事業については、新製品の開発や品質の向上などを目的として、CASE領域など将来の成長に備え、自動車メーカーに対応した金型や機械設備などに、総額102億円(前期比13億円減)の投資を行いました。
物流事業については、国内で新たに大型自動化設備を導入した倉庫などに対し、総額40億円(前期比4億円減)の投資を行いました。
以上の結果、その他子会社での投資及び連結消去を含む当連結会計年度の当社グループにおける設備投資の総額は、403億円(前期比20億円減)となりました。
当社グループにおける運転資金及び設備投資資金については、主に営業活動によるキャッシュ・フロー及び金融機関からの借入金にて調達しています。当連結会計年度末の借入金残高は1,179億円(前期比180億円増)となり、運転資金安定のための短期借入金が508億円(前期比53億円減)、将来の事業基盤確立に向けた研究開発や設備投資資金の確保などのための長期借入金が670億円(前期比233億円増)となりました。
今後の重要な設備投資としては、電子部品事業は当社を中心に生産体制強化を図るため、主にコンポーネント製品の生産設備への投資を行う予定です。
車載情報機器事業は、新製品の研究開発・生産設備の更新や合理化のため、国内外の主要な拠点で投資を行う予定です。
物流事業は、国内外における倉庫建設を中心とした拠点・ネットワーク投資を行う予定です。
なお、当社グループにおける運転資金及び設備投資資金については、主に営業活動によるキャッシュ・フロー及び金融機関からの借入金にて調達する予定です。