有価証券報告書-第83期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

【提出】
2018/06/28 12:58
【資料】
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【項目】
115項目
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
(a)財政状態に関する分析
当連結会計年度末(以下「当期末」という)の総資産は、前連結会計年度末(以下「前期末」という)比15,331百万円増加(+1.6%)して978,563百万円となりました。流動資産は同8,203百万円増加(+1.6%)の523,603百万円、固定資産は同7,128百万円増加(+1.6%)の454,960百万円となりました。
流動資産増加の主な要因は、受取手形及び売掛金の増加等です。固定資産増加の主な要因は、有形固定資産の増加等です。
当期末の負債合計は、前期末比11,181百万円減少(△3.2%)して342,201百万円となりました。流動負債は同12,649百万円増加(+6.8%)の198,435百万円、固定負債は同23,831百万円減少(△14.2%)の143,766百万円となりました。
流動負債増加の主な要因は、1年内償還予定の社債の増加等です。固定負債減少の主な要因は、退職給付に係る負債の減少等です。
当期末の純資産は、前期末比26,513百万円増加(+4.3%)して636,361百万円となりました。純資産増加の主な要因は、利益剰余金の増加等です。
これらの結果、自己資本比率は前期末の61.8%から63.5%となりました。また1株当たり純資産額は、前期末の496千円から518千円となりました。
(b)経営成績の分析
当連結会計年度(以下「当期」という)の連結業績は、売上高は前連結会計年度(以下「前期」という)を上回り、前期に比べて34,979百万円増加(+4.9%)の747,762百万円となりました。営業利益は935百万円減少(△1.6%)の59,347百万円となり、経常利益は1,621百万円減少(△2.6%)の59,924百万円となり、親会社株主に帰属する当期純利益は6,452百万円減少(△14.3%)の38,728百万円となりました。この結果、1株当たり当期純利益額は32,302円となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当期末における現金及び現金同等物は、前期末に比べ16,182百万円減少し、155,076百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によって得られたキャッシュ・フローは57,525百万円と、前期に比べ24,093百万円減少しました。これは主に、売上債権の増減額が前期は1,725百万円の増加であったのに対し、当期は12,760百万円の増加となったこと、税金等調整前当期純利益が57,307百万円と前期に比べ3,099百万円減少したこと等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動に使用されたキャッシュ・フローは67,661百万円と、前期に比べ8,315百万円増加しました。これは主に、定期預金の払戻による収入が前期と比べ10,749百万円減少し、7,439百万円となったこと等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動に使用されたキャッシュ・フローは4,470百万円と、前期に比べ10,099百万円減少しました。これは主に、前期は社債の償還による支出が10,000百万円あったこと等によるものです。
③ 生産、受注及び販売の実績
当連結会計年度末における実績は、次のとおりであります。
(a)生産実績
セグメントの名称生産高(百万円)前年同期比(%)
ファスニング272,266112.1%
AP374,260101.2%

(注) 1. 上記の金額は、販売価格で表示しております。
2. その他については、そのほとんどがグループ内への販売のため記載を省略しております。
(b)受注実績
セグメントの名称受注高(百万円)前年同期比(%)受注残高(百万円)前年同期比(%)
ファスニング315,924110.8%15,138102.8%
AP409,958104.6%165,959114.5%

(注) 1. 上記の金額は、販売価格で表示しております。
2. その他については、そのほとんどがグループ内への販売のため記載を省略しております。
(c)販売実績
セグメントの名称販売高(百万円)前年同期比(%)
ファスニング323,703110.6%
AP417,314101.0%
その他6,74498.7%
合計747,762104.9%

(注) 1. 上記の金額は、消費税等抜きで表示しております。
2. セグメント間の取引については相殺消去しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表作成にあたって採用している「重要な会計方針」については、「第5[経理の状況][注記事項](連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しているため省略しております。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループは2017年度を初年度とする第5次中期経営計画を実行に移しています。この第5次中期経営計画では、当社グループの中期経営ビジョン「Technology Oriented Value Creation 『技術に裏付けられた価値創造』」の下、ファスニング事業本部と工機技術本部を擁する当社では2017年4月に代表取締役社長に大谷裕明が就任し、第5次中期事業方針である「『ものづくりの進化と革新』~Standard向けのYKKものづくりへの挑戦~」の実現を目指し、AP事業を中核とするYKK AP㈱では、第5次中期事業方針である「高付加価値化と需要創造によるAP事業の持続的成長」の実現を目指し、それぞれの事業を推進しています。2017年度は、事業環境が激しく変化する中にあっても、ファスニング事業・AP事業それぞれの課題に取り組み、当社グループの根幹にある技術に基づく市場要望実現のための施策を実行してまいりました。
当期の連結業績については、売上高は前期比4.9%増の747,762百万円、営業利益は前期比1.6%減の59,347百万円、経常利益は前期比2.6%減の59,924百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比14.3%減の38,728百万円となりました。
当社グループは、事業の収益性と資産効率を高めるとともに得た利益を更なる事業成長に積極的に投資するために、第5次中期経営目標を「売上高営業利益率8.0%以上」と「ROA5.0%以上」と定めております。2年目である当期は当社グループの営業利益が減益となった結果、売上高営業利益率は7.9%、ROAは4.0%と目標に届きませんでしたが、引き続き当該目標達成に向け事業収益ならびに資産効率の向上に取組んでまいります。
当期の事業別売上高及び営業利益は、次のとおりであります。
(a)ファスニング事業
当期のファスニング事業を取り巻く事業環境は、世界経済の緩やかな回復に支えられ、アパレル小売市場では在庫水準の適正化が進むとともに、eコマース取引の急速な拡大により小売業界の市場環境が変化しました。また、アジア(中国・日本を除く)地域では縫製市場の拡大が継続する一方で、中国では労働力減少の影響等がありました。こうした事業環境の中、ファスニング事業の業績は、グローバルマーケティング活動による欧米量販店向けの増販や各国内需市場深耕による増販に加え、成長するアジア地域での需要捕捉と増産体制構築による増販、また商品開発拠点の増強や商品バリエーション強化への対応等の施策の効果がありました。
地域別では、北中米では安全・車両分野向けの需要を獲得したことにより増収、日本ではグループ会社向けの材料供給が増加したことにより増収、EMEA(欧州・中東・アフリカ)では、トルコでの内需顧客向け販売、フランス・イタリアでの高付加価値品や高級鞄顧客向けへの販売が好調に推移し増収となりました。中国では、アジア地域への縫製移行に伴う販売減少の影響を受けたものの、内需顧客深耕の施策が奏功したことで増収となり、アジア地域では、ベトナム・バングラデシュ等での顧客増産やアジア地域への縫製移行に伴う需要増を供給体制の強化により着実に捕捉し、増収となりました。
その結果、売上高(セグメント間の内部売上高を含む)は前期比10.6%増の324,079百万円となりました。営業利益は、銅・亜鉛等の原材料価格上昇や、中国・アジア地域の増産に向けた投資に伴う償却費や労務費等の製造固定費の増加、開発基盤強化費用増加等の減益要因があったものの、販売ボリューム増加による操業度の向上に加え、継続的なコスト削減の取り組みによる増益要因が大きく、前期比11.0%増の52,616百万円となりました。
(b)AP事業
当期のAP事業を取り巻く事業環境は、日本国内において、新設住宅着工戸数は微減で推移し、今後の市場も縮小傾向と予測される中、エネルギー基本計画に基づき開口部の断熱性能に対する要望は更に高まる傾向となりました。また、海外においては、米国で緩やかな景気回復が継続し、中国においては不動産取引の引き締め策の影響が続くものの、華東・華南の一部の都市は好調となり、二極化が進みました。また、台湾経済は緩やかに回復し、インドネシア経済は堅調に推移しました。こうした事業環境の中、第5次中期事業方針である「高付加価値化と需要創造によるAP事業の持続的成長」に向け、事業を推進してまいりました。
日本国内では、住宅事業においては窓の高断熱化に向けて、樹脂窓の拡充に加え、新しいアルミ樹脂複合窓「エピソードNEO」を発売しました。10月に発売した「防火窓Gシリーズ アルミ樹脂複合NEO」では、高断熱化だけでなく、「網」のない耐熱強化複層ガラスとクリアネット網戸による「Wクリア」を標準設定することにより、防火機能をそのままに、都市部に多く分布する防火・準防火地域の住宅窓にもクリアな眺望を提供し、高付加価値化を図りました。それにより、樹脂窓、アルミ樹脂複合窓では増収となりましたが、住宅用アルミサッシでは販売減少となりました。エクステリア事業では、外構を中心とした新商品投入や一棟トータルコーディネイト提案により、拡販に結びつけることができました。リノベーション事業では、断熱・耐震を軸とした開口部リフォームの需要創造に取り組みました。海外では、米国の高成長地域において更に販売を伸ばし、中国においては伸長市場での販売が好調に推移、台湾・インドネシアでは高級市場において販売が拡大しました。
その結果、AP事業の売上高(セグメント間の内部売上高を含む)は、前期比1.0%増の417,598百万円となりました。営業利益は、継続的なコスト削減の取り組みによる増益要因があったものの、原材料・資材価格の上昇や海外請負物件における損失等の影響により、全体では前期比20.4%減の22,112百万円となりました。
(c)その他
その他の事業につきましては、ファスニング加工用機械・建材加工用機械・金型及び機械部品製造・販売、不動産、アルミ製錬事業などを行っています。
その他の事業の売上高(セグメント間の内部売上を含む)は、前期比8.2%減の59,549百万円、営業利益については、前期比1.4%増の976百万円となりました。
③ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループは、主にファスニング、建材の製造・販売事業を行うために、短期的な運転資金は自己資金およびCP発行や銀行借入により調達し、長期的に必要な資金は自己資金およぴ社債発行や銀行借入により調達しております。一時的な余資は安全性の高い金融資産で運用し、投機的な取引は一切行わないという基本方針に従い取り組んでおります。
なお、当社グループでは、増産・合理化・省力化・更新入替・IT関連投資を中心に当連結会計年度は全体で57,977百万円の設備投資を実施しました。当連結会計年度末における有利子負債の残高は41,688百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金および現金同等物の残高は155,076百万円となっております。