有価証券報告書-第84期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

【提出】
2019/06/27 14:05
【資料】
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【項目】
134項目
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
(a)財政状態に関する分析
当連結会計年度末(以下「当期末」という)の総資産は、前連結会計年度末(以下「前期末」という)比33,370百万円増加(+3.4%)して1,011,934百万円となりました。流動資産は同18,121百万円増加(+3.5%)の535,180百万円、固定資産は同15,248百万円増加(+3.3%)の476,753百万円となりました。
流動資産増加の主な要因は、たな卸資産の増加等です。固定資産増加の主な要因は、有形固定資産の増加等です。
当期末の負債合計は、前期末比1,463百万円減少(△0.4%)して340,738百万円となりました。流動負債は同3,972百万円減少(△2.0%)の193,774百万円、固定負債は同2,509百万円増加(+1.7%)の146,963百万円となりました。
流動負債減少の主な要因は、1年内償還予定の社債の減少等です。固定負債増加の主な要因は、社債の増加等です。
当期末の純資産は、前期末比34,834百万円増加(+5.5%)して671,195百万円となりました。純資産増加の主な要因は、利益剰余金の増加等です。
これらの結果、自己資本比率は前期末の63.5%から64.8%となりました。また1株当たり純資産額は、前期末の518千円から546千円となりました。
(b)経営成績の分析
当連結会計年度(以下「当期」という)の連結業績は、売上高は前連結会計年度(以下「前期」という)を上回り、前期に比べて18,018百万円増加(+2.4%)の765,781百万円となりました。営業利益は2,428百万円増加(+4.1%)の61,775百万円となり、経常利益は4,542百万円増加(+7.6%)の64,466百万円となり、親会社株主に帰属する当期純利益は7,095百万円増加(+18.3%)の45,824百万円となりました。この結果、1株当たり当期純利益は38,220円となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ11,164百万円増加し、166,241百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によって得られたキャッシュ・フローは68,607百万円と、前期に比べ11,082百万円増加しました。これは主に、売上債権の増減額が前期は12,760百万円の増加であったのに対し、当期は7,761百万円の増加となったこと、税金等調整前当期純利益が63,876百万円と前期に比べ6,568百万円増加したこと等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動に使用されたキャッシュ・フローは53,888百万円と、前期に比べ13,773百万円減少しました。これは主に、定期預金の預入による支出が前期と比べ11,488百万円減少し、5,865百万円となったこと等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動に使用されたキャッシュ・フローは3,255百万円と、前期に比べ1,214百万円減少しました。これは主に、短期借入金の純増減額が前期と比べ1,234百万円増加し、768百万円となったこと等によるものです。
③ 生産、受注及び販売の実績
当連結会計年度末における実績は、次のとおりであります。
(a)生産実績
セグメントの名称生産高(百万円)前年同期比(%)
ファスニング279,605102.7
AP375,423100.3

(注) 1. 上記の金額は、販売価格で表示しております。
2. その他については、そのほとんどがグループ内への販売のため記載を省略しております。
(b)受注実績
セグメントの名称受注高(百万円)前年同期比(%)受注残高(百万円)前年同期比(%)
ファスニング323,019102.215,400101.7
AP427,045104.2166,909100.6

(注) 1. 上記の金額は、販売価格で表示しております。
2. その他については、そのほとんどがグループ内への販売のため記載を省略しております。
(c)販売実績
セグメントの名称販売高(百万円)前年同期比(%)
ファスニング332,534102.7
AP427,734102.5
その他5,51281.7
合計765,781102.4

(注) 1. 上記の金額は、消費税等抜きで表示しております。
2. セグメント間の取引については相殺消去しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表作成にあたって採用している「重要な会計方針」については、「第5[経理の状況][注記事項](連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しているため省略しております。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループは2017年度を初年度とする第5次中期経営計画を実行に移しています。この第5次中期経営計画では、当社グループの中期経営ビジョン「Technology Oriented Value Creation『技術に裏付けられた価値創造』」のもと、当社では第5次中期事業方針である「『ものづくりの進化と革新』~Standard向けのYKKものづくりへの挑戦~」の実現を目指し、AP事業を中核とするYKK AP㈱では、第5次中期事業方針である「高付加価値化と需要創造によるAP事業の持続的成長」の実現を目指し、それぞれの事業を推進しています。2018年度は、経済やマーケットの先行きの見通しが不透明な中にあっても、引き続きファスニング事業・AP事業それぞれの課題に取り組み、当社グループの根幹にある技術に基づいた市場要望実現のための施策を実行してまいりました。
当期の連結業績については、売上高は前期比2.4%増の765,781百万円、営業利益は前期比4.1%増の61,775百万円、経常利益は前期比7.6%増の64,466百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比18.3%増の45,824百万円となりました。
当社グループは、事業の収益性と資産効率を高めるとともに得た利益を更なる事業成長に積極的に投資するために、第5次中期経営目標を「売上高営業利益率8.0%以上」と「ROA5.0%以上」と定めております。2年目である当期は当社グループの営業利益が増益となった結果、売上高営業利益率は8.1%、ROAは4.6%となりましたが、引き続き当該目標達成に向け事業収益ならびに資産効率の向上に取組んでまいります。
当期の事業別売上高及び営業利益は、次のとおりであります。
(a)ファスニング事業
当期のファスニング事業を取り巻く事業環境は、米国において個人消費が堅調に推移する等、安定的な経済成長が継続しましたが、中国経済の伸びの鈍化や米国・中国間の通商問題、英国のEU離脱交渉等の不安定な要素が増加しております。このような事業環境のもと、ファスニング事業は中国・アジア(中国・日本を除く。以下、同じ。)地域における供給体制の増強、米国や欧州では高付加価値品の増販に取り組みました。また、グローバルマーケティング活動による欧米量販店への対応を強化するとともに、各国内需市場に対しても積極的にアプローチを行い、商品開発拠点の増強や商品バリエーション強化にも継続的に取り組みました。
地域別では、北中米においては、安全・官需分野向けの需要を獲得し、EMEA(欧州・中東・アフリカ)においては、トルコでは現地通貨安やインフレにより内需市場が減速したものの、フランス・イタリアでは高付加価値品や高級鞄向け商品の販売が好調でした。中国においては、アジア地域への縫製移行に伴う販売減少の影響を受けたものの、内需顧客深耕の施策が奏功したことで増収となり、アジア地域においては、ベトナム・バングラデシュ等で顧客の増産や縫製移行に伴う需要増を供給体制の強化により着実に捕捉することで販売を伸ばしました。
その結果、売上高(セグメント間の内部売上高を含む)は前期比2.7%増の332,857百万円となりました。営業利益は、銅・亜鉛等の原材料価格上昇や、中国・アジア地域の増産に向けた投資に伴う償却費や労務費等の製造固定費の増加、開発基盤強化のための費用増加等の減益要因があったものの、販売ボリュームの増加及び操業度の向上に加え、継続的なコスト削減効果による増益要因が大きく、前期比1.9%増の53,627百万円となりました。
(b)AP事業
当期のAP事業を取り巻く事業環境は、日本国内において、貸家は減少しましたが持家と分譲住宅が増加し、新設住宅着工戸数全体としては前年並みとなりました。また、海外においては、米国経済は底堅いものの住宅市場は利上げの影響もあり後半鈍化し、中国においては地方都市で不動産取得税の規制緩和により改善があったものの、大都市では不動産取引抑制策の影響が残りターゲット市場は減少しました。台湾では成長率は小幅に低下するも建築市場は堅調に推移し、インドネシアでは急激な現地通貨安による連続利上げなどの影響により市場が鈍化しました。こうした事業環境の中、第5次中期事業方針である「高付加価値化と需要創造によるAP事業の持続的成長」に向け、事業を推進してまいりました。
日本国内では、高付加価値化への取り組みとして高断熱化を推進するため、住宅向け樹脂窓の拡販に加え、2018年12月にホテル専用商品として開発した高断熱樹脂窓「HOTEL MADO」を発売しました。また、住宅防火エリアにおいて、「網」のない耐熱強化複層ガラスとクリアネット網戸を組み合わせて使用する「Wクリア」の提案では、窓辺の眺望性や通風性が大幅にアップすると好評をいただき、「2018年度グッドデザイン賞」を受賞しました。需要創造への取り組みとしては、エクステリア商品では、窓・玄関ドアと外構のトータルコーディネート提案の継続に加え、大雪や台風・地震など自然災害対策への需要対応により、カーポートおよびフェンスを中心に販売を伸ばしました。2018年9月に発売した住宅向けリフォーム商品「かんたんマドリモ シャッター」は、防犯・防音・遮光・防災に有効なシャッターを、これまで後付けが難しかった納まりの窓にも取り付けることができ、より快適で安全な暮らしを提供できる商品として販売が好調に推移しました。海外においては、米国では建築市場が堅調に推移する中、西部地域での営業戦略を遂行し、中国では大手不動産開発市場での提案力強化による受注拡大、台湾・インドネシアでは差別化商品開発・アイテム拡充に取り組みました。また、インドネシアでは2018年8月に「YKK AP R&Dセンター(インドネシア)」を開設し、蒸暑地域における窓の研究開発を開始しました。
その結果、AP事業の売上高(セグメント間の内部売上高を含む)は、前期比2.5%増の428,019百万円となりました。営業利益は、国内では販売増や製造コストダウン、販売価格の改定等の増益要因があったものの、原材料・資材価格の高騰等により減益、海外では米国と中国の好調な販売が牽引し増益となり、全体では前期比6.4%増の23,533百万円となりました。
(c)その他
その他の事業につきましては、ファスニング加工用機械・建材加工用機械・金型及び機械部品製造・販売、不動産、アルミ製錬事業などを行っております。
その他の事業の売上高(セグメント間の内部売上を含む)は、前期比1.2%減の58,863百万円、営業利益については、前期比54.8%減の440百万円となりました。
③ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループは、主にファスニング、建材の製造・販売事業を行うために、短期的な運転資金は自己資金およびCP発行や銀行借入により調達し、長期的に必要な資金は自己資金および社債発行や銀行借入により調達しております。一時的な余資は安全性の高い金融資産で運用し、投機的な取引は一切行わないという基本方針に従い取り組んでおります。
なお、当社グループでは、増産・合理化・省力化・更新入替・IT関連投資を中心に当連結会計年度は全体で67,108百万円の設備投資を実施しました。当連結会計年度末における有利子負債の残高は52,206百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金および現金同等物の残高は166,241百万円となっております。