有価証券報告書-第87期(令和3年4月1日-令和4年3月31日)
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当期における日本経済は、新型コロナウイルス感染症による厳しい状況が徐々に緩和される中、消費者マインドの持ち直しが見られ、経済社会活動の正常化が緩やかに進みました。世界経済は、米国や欧州各国においては経済対策等により個人消費が堅調に推移した一方で、中国においては電力制限による企業の生産活動停滞や新型コロナウイルスの感染再拡大等により、年度後半に景気の減速感が見られました。世界的な半導体の需給逼迫や供給面での制約、原材料価格の高騰が続く中、ウクライナ情勢による先行き不透明感も増しており、今後の動向を引き続き注視する必要があります。
このような環境の中、第6次中期経営計画(2021年度~2024年度)の初年度である当期は、前中期から継承する中期経営ビジョン「Technology Oriented Value Creation『技術に裏付けられた価値創造』」のもと、第6次中期事業方針として、当社では「新常態下での持続的成長~多様な顧客要望の実現と顧客創造~」の実現を、YKK AP㈱では「商品による社会価値の提供とモノづくり改革の実現」を目指し、それぞれの事業を推進してまいりました。前期は年間を通じて新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けた一年でしたが、当期はその反動による需要増加に上手く対応できたことや、原材料・資材価格高騰等の減益要因を各種コストダウン施策により最小限に抑えられたことで、ファスニング事業を中心に、未曾有の事態に陥った前期から大きく業績を回復しました。
その結果、当期の連結業績は、売上高は過去最高となる797,019百万円(前期比21.9%増)、営業利益は60,161百万円(前期比128.3%増)、経常利益は63,964百万円(前期比112.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は44,097百万円(前期比154.3%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
当連結会計年度において当社グループは、当社の機械製造事業の一部を当社の完全子会社であるYKK AP㈱に承継させる吸収分割を実施するとともに、工機技術本部をファスニング事業とAP事業にそれぞれ融合しました。当該組織再編に伴い、前連結会計年度において「その他」に含めていたファスニング加工用機械・建材加工用機械・金型及び機械部品の製造・販売等を、ファスニング・APの両事業セグメントに含めております。
以下の前年同期比較は、当該組織再編を反映した組替後の数値で比較しております。
(a)ファスニング事業
当期のファスニング事業を取り巻く事業環境は、世界的な新型コロナウイルスワクチンの普及とそれに伴う活動制限緩和により、欧米を中心とした消費市場が回復基調となり、アパレル小売市場でも回復の傾向が見られました。一方で、各地で繰り返される変異株による感染再拡大により工場の操業停止等を余儀なくされるなど、事業活動への影響が生じました。世界的なサプライチェーン混乱や半導体供給不足に加え、ウクライナ情勢等の地政学リスクも懸念されており、先行きを見通しにくい環境が継続しております。
このような事業環境のもと、市況の回復に伴う増販と継続したコストダウンと納期対応、各地域での供給体制強化による顧客対応強化によって、販売を大きく伸ばしました。
地域別では、すべての地域で増収となりました。日本では、ファスニング事業全体の販売好調により材料供給等のグループ会社向け販売が増加しました。Americasでは、半導体不足により自動車向けでは低調となったものの、アパレル需要の回復に伴う販売増加により増収となりました。Europeでは、トルコ社のジーンズ向けを筆頭に加工輸出好調、高級鞄向けの販売も好調となりました。ISAMEA(India/South Asia/Middle East/Africa)では、米国市場での需要回復を着実に捕捉し販売を伸ばしました。ASEANでは、日米欧向けの加工輸出市場の回復および施策による顧客獲得により販売を大きく伸ばしました。中国では、市況回復による需要の高まりに加え納期対応等の施策による新規顧客の獲得等で増収となりました。
その結果、売上高(セグメント間の内部売上高を含む)は、過去最高となる、前期比40.7%増の348,197百万円となりました。営業利益は、原材料価格高騰や輸送運賃上昇の減益要因があったものの、市況回復に伴う販売ボリュームの増加と操業度の向上、価格改定及び継続的なコストダウンによる増益要因が大きく、前期比601.6%増の42,367百万円となりました。
(b)AP事業
当期のAP事業を取り巻く事業環境は、日本国内においては、新型コロナウイルス感染症が再拡大したものの、ワクチンの普及が進む中、経済活動の正常化や各種住宅取得支援制度の下支えもあり、新設住宅着工戸数は前年を上回りました。海外においては、北米では、ビル建材の市場が回復するとともに、住宅建材では着工戸数が好調に推移しました。中国では2020年から続く政府による不動産規制の厳格化継続を受け市場は低迷、台湾では住宅着工が回復したものの、職人不足による現場遅延が深刻化、インドネシアでは同感染症の拡大があったものの、政府の景気刺激策を受け、高級戸建市場が回復しました。日本国内・海外とも、経済の回復等による需要増や環境規制等の影響による供給不足に起因した需給逼迫と原材料・資材価格の高騰が続きました。
このような事業環境の中、第6次中期事業方針として掲げた「商品による社会価値の提供とモノづくり改革の実現」のもと、事業を推進してまいりました。
日本国内においては、ウィズコロナにおける取組みとして、オンラインイベントやWEB展示会等の新しいコミュニケーション手段を継続し、営業・消費者接点の強化を図ってまいりました。住宅事業では、樹脂窓とアルミ樹脂複合窓による高断熱化を推進し、高断熱窓化率を70%まで高めることができ、また、コロナ禍における在宅ニーズの高まりもあり、住宅リノベーション事業が伸長しました。エクステリア事業では、耐積雪・耐風圧カーポート及び門扉・フェンス等の提案強化により販売が増加しました。ビル事業では、新築分野の受注強化と改装提案の強化を進めてまいりました。
海外においては、米国のビル建材では市場の回復を受け販売が増加、住宅建材では着工戸数の増加により販売が増加しました。中国内需においては、厳しい事業環境を受け、販売は前年を下回る結果となりました。台湾では高級住宅市場において販売が増加、インドネシアでは市場の回復により販売が増加しました。
その結果、AP事業の売上高(セグメント間の内部売上高を含む)は、過去最高となる、前期比10.8%増の446,360百万円となりました。営業利益は、国内では販売増加や価格改定、製造コストダウンによる増益要因があったものの、原材料・資材価格の高騰や市場競争の激化、販管費の増加などにより減益となり、全体では前期比15.2%減の17,375百万円となりました。
(c)その他
その他の事業につきましては、不動産、アルミ製錬事業等を行っております。
その他の事業の売上高(セグメント間の内部売上高を含む)は、前期比22.8%増の26,535百万円、営業利益については、前期比32.6%増の1,695百万円となりました。
当社グループの財政状態については、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容」に記載しております。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、営業活動によるキャッシュ・フローの収入が、投資活動によるキャッシュ・フロー及び財務活動によるキャッシュ・フローの支出を上回り、これらに現金および現金同等物に係る換算差額を加えた結果、前連結会計年度末に比べ53,261百万円増加し、264,639百万円となりました。
当社グループのキャッシュ・フローの状況の詳細については、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報」に記載しております。
③ 生産、受注及び販売の実績
当連結会計年度末における実績は、次のとおりであります。
(a)生産実績
(注) 1. 上記の金額は、販売価格で表示しております。
2. その他については、そのほとんどがグループ内への販売のため記載を省略しております。
(b)受注実績
(注) 1. 上記の金額は、販売価格で表示しております。
2. その他については、そのほとんどがグループ内への販売のため記載を省略しております。
(c)販売実績
(注) セグメント間の取引については相殺消去しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの財政状態は、当連結会計年度末(以下「当期末」という)の総資産は、前連結会計年度末(以下「前期末」という)比142,023百万円増加(+14.0%)して1,156,941百万円となりました。流動資産は前期末比125,967百万円増加(+23.3%)の665,701百万円、固定資産は前期末比16,056百万円増加(+3.4%)の491,239百万円となりました。
流動資産増加の主な要因は、現金及び預金の増加等です。固定資産増加の主な要因は、投資有価証券の増加等です。
当期末の負債合計は、前期末比40,286百万円増加(+14.4%)して319,677百万円となりました。流動負債は前期末比31,835百万円増加(+17.6%)の212,606百万円、固定負債は前期末比8,450百万円増加(+8.6%)の107,071百万円となりました。
流動負債増加の主な要因は、仕入債務の増加等です。固定負債増加の主な要因は、退職給付に係る負債の増加等です。
当期末の純資産は、前期末比101,736百万円増加(+13.8%)して837,264百万円となりました。純資産増加の主な要因は、為替換算調整勘定の増加等です。
これらの結果、自己資本比率は前期末の70.8%から70.7%となりました。また1株当たり純資産額は、前期末の599千円から682千円となりました。
当社グループの経営成績は、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
(a)キャッシュ・フローの状況
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によって得られたキャッシュ・フローは81,132百万円と、前期に比べ1,109百万円減少しました。これは主に、売上債権及び棚卸資産の増加と法人税等の支払額の増加等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動に使用されたキャッシュ・フローは40,414百万円と、前期に比べ237百万円増加しました。これは主に、無形固定資産の取得による支出が前期と比べ373百万円増加し、3,936百万円となったこと等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動に使用されたキャッシュ・フローは5,776百万円と、前期に比べ492百万円増加しました。これは主に、ファイナンス・リース債務の返済による支出が前期と比べ1,009百万円増加し、2,447百万円となったこと等によるものです。
また、為替変動の影響により、当連結会計年度は現金及び現金同等物が18,319百万円増加しました。
以上の結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末の211,378百万円から53,261百万円増加(+25.2%)して264,639百万円となりました。
(b)流動性及び資金の源泉
(ⅰ) 資金調達の基本方針および資金調達手段
当社グループは、当連結会計年度末において現金及び現金同等物を264,639百万円保有し、また、換金性の高い金融資産を5,745百万円保有しております。そのうち、海外の連結子会社が保有する現金及び現金同等物と換金性の高い金融資産の合計額は186,892百万円でありますが、これらは将来における海外事業の成長投資に充当する予定であります。なお、連結子会社は原則として銀行等の外部からの資金調達は行わず、当社や地域統括会社が連携して効率的なグループファイナンスを行っております。
当社グループは、当連結会計年度末において手許現金及び現金同等物を十分に確保しておりますが、将来における成長投資に備えて、安定的な外部資金調達能力の維持向上を図っております。当社グループにおける当連結会計年度末の外部からの借入金残高は6,711百万円であり、総資産に対して0.6%と非常に低い依存度となっており、かつ、流動比率は313.1%、自己資本比率は70.7%と、強固な財務基盤を保っております。また、当社グループは、外部機関から格付を取得しておりますが、当連結会計年度末における格付投資情報センター(R&I)の格付はAA-(信用力は極めて高く、優れた要素がある)となっております。これらに基づき、金融機関から低コストにて借入金等による追加の資金調達が可能と考えております。
なお、一時的な余資は安全性の高い金融資産で運用し、投機的な取引は一切行わないという基本方針に従い取り組んでおります。
(ⅱ) 資金需要
当社グループの主な資金の源泉は営業活動によって獲得した資金であり、当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは81,132百万円であります。当社グループは、投資活動に使用されるキャッシュ・フローを営業活動により得られたキャッシュ・フローの範囲内とする方針を掲げており、これらキャッシュ・フローの合計をフリーキャッシュ・フローと定義しております。当連結会計年度のフリーキャッシュ・フローは40,718百万円であり、ここから配当金の支払い、および有利子負債の返済等の財務活動に5,776百万円を使用しました。当連結会計年度においては、当社グループとして過去最高となる売上高を記録するなど業績が好調に推移した一方で、新型コロナウイルス感染症再拡大およびウクライナ情勢による先行き不透明感を含む将来の不確実性への対応として、前連結会計年度から引き続き新規の設備投資を抑制したこと等により、将来における成長投資に向けた現金及び現金同等物を増加させております。
当社グループの当連結会計年度における主な資金需要は、増収に伴い増加した運転資金、設備投資資金(特にAP事業における国内設備投資資金)、研究開発資金、配当金支払い資金、納税資金、および有利子負債の返済資金等となり、当社グループは、これらの資金需要に対して主に自己資金で賄いました。翌連結会計年度における主な資金需要として、増収計画に伴いさらなる増加が見込まれる運転資金、設備投資資金、研究開発資金、配当金支払い資金、納税資金、および有利子負債の返済資金等を見込んでおります。
なお、配当政策については、「第4 提出会社の状況 3.配当政策」に記載しております。
③重要な会計方針及び見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当期における日本経済は、新型コロナウイルス感染症による厳しい状況が徐々に緩和される中、消費者マインドの持ち直しが見られ、経済社会活動の正常化が緩やかに進みました。世界経済は、米国や欧州各国においては経済対策等により個人消費が堅調に推移した一方で、中国においては電力制限による企業の生産活動停滞や新型コロナウイルスの感染再拡大等により、年度後半に景気の減速感が見られました。世界的な半導体の需給逼迫や供給面での制約、原材料価格の高騰が続く中、ウクライナ情勢による先行き不透明感も増しており、今後の動向を引き続き注視する必要があります。
このような環境の中、第6次中期経営計画(2021年度~2024年度)の初年度である当期は、前中期から継承する中期経営ビジョン「Technology Oriented Value Creation『技術に裏付けられた価値創造』」のもと、第6次中期事業方針として、当社では「新常態下での持続的成長~多様な顧客要望の実現と顧客創造~」の実現を、YKK AP㈱では「商品による社会価値の提供とモノづくり改革の実現」を目指し、それぞれの事業を推進してまいりました。前期は年間を通じて新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けた一年でしたが、当期はその反動による需要増加に上手く対応できたことや、原材料・資材価格高騰等の減益要因を各種コストダウン施策により最小限に抑えられたことで、ファスニング事業を中心に、未曾有の事態に陥った前期から大きく業績を回復しました。
その結果、当期の連結業績は、売上高は過去最高となる797,019百万円(前期比21.9%増)、営業利益は60,161百万円(前期比128.3%増)、経常利益は63,964百万円(前期比112.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は44,097百万円(前期比154.3%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
当連結会計年度において当社グループは、当社の機械製造事業の一部を当社の完全子会社であるYKK AP㈱に承継させる吸収分割を実施するとともに、工機技術本部をファスニング事業とAP事業にそれぞれ融合しました。当該組織再編に伴い、前連結会計年度において「その他」に含めていたファスニング加工用機械・建材加工用機械・金型及び機械部品の製造・販売等を、ファスニング・APの両事業セグメントに含めております。
以下の前年同期比較は、当該組織再編を反映した組替後の数値で比較しております。
(a)ファスニング事業
当期のファスニング事業を取り巻く事業環境は、世界的な新型コロナウイルスワクチンの普及とそれに伴う活動制限緩和により、欧米を中心とした消費市場が回復基調となり、アパレル小売市場でも回復の傾向が見られました。一方で、各地で繰り返される変異株による感染再拡大により工場の操業停止等を余儀なくされるなど、事業活動への影響が生じました。世界的なサプライチェーン混乱や半導体供給不足に加え、ウクライナ情勢等の地政学リスクも懸念されており、先行きを見通しにくい環境が継続しております。
このような事業環境のもと、市況の回復に伴う増販と継続したコストダウンと納期対応、各地域での供給体制強化による顧客対応強化によって、販売を大きく伸ばしました。
地域別では、すべての地域で増収となりました。日本では、ファスニング事業全体の販売好調により材料供給等のグループ会社向け販売が増加しました。Americasでは、半導体不足により自動車向けでは低調となったものの、アパレル需要の回復に伴う販売増加により増収となりました。Europeでは、トルコ社のジーンズ向けを筆頭に加工輸出好調、高級鞄向けの販売も好調となりました。ISAMEA(India/South Asia/Middle East/Africa)では、米国市場での需要回復を着実に捕捉し販売を伸ばしました。ASEANでは、日米欧向けの加工輸出市場の回復および施策による顧客獲得により販売を大きく伸ばしました。中国では、市況回復による需要の高まりに加え納期対応等の施策による新規顧客の獲得等で増収となりました。
その結果、売上高(セグメント間の内部売上高を含む)は、過去最高となる、前期比40.7%増の348,197百万円となりました。営業利益は、原材料価格高騰や輸送運賃上昇の減益要因があったものの、市況回復に伴う販売ボリュームの増加と操業度の向上、価格改定及び継続的なコストダウンによる増益要因が大きく、前期比601.6%増の42,367百万円となりました。
(b)AP事業
当期のAP事業を取り巻く事業環境は、日本国内においては、新型コロナウイルス感染症が再拡大したものの、ワクチンの普及が進む中、経済活動の正常化や各種住宅取得支援制度の下支えもあり、新設住宅着工戸数は前年を上回りました。海外においては、北米では、ビル建材の市場が回復するとともに、住宅建材では着工戸数が好調に推移しました。中国では2020年から続く政府による不動産規制の厳格化継続を受け市場は低迷、台湾では住宅着工が回復したものの、職人不足による現場遅延が深刻化、インドネシアでは同感染症の拡大があったものの、政府の景気刺激策を受け、高級戸建市場が回復しました。日本国内・海外とも、経済の回復等による需要増や環境規制等の影響による供給不足に起因した需給逼迫と原材料・資材価格の高騰が続きました。
このような事業環境の中、第6次中期事業方針として掲げた「商品による社会価値の提供とモノづくり改革の実現」のもと、事業を推進してまいりました。
日本国内においては、ウィズコロナにおける取組みとして、オンラインイベントやWEB展示会等の新しいコミュニケーション手段を継続し、営業・消費者接点の強化を図ってまいりました。住宅事業では、樹脂窓とアルミ樹脂複合窓による高断熱化を推進し、高断熱窓化率を70%まで高めることができ、また、コロナ禍における在宅ニーズの高まりもあり、住宅リノベーション事業が伸長しました。エクステリア事業では、耐積雪・耐風圧カーポート及び門扉・フェンス等の提案強化により販売が増加しました。ビル事業では、新築分野の受注強化と改装提案の強化を進めてまいりました。
海外においては、米国のビル建材では市場の回復を受け販売が増加、住宅建材では着工戸数の増加により販売が増加しました。中国内需においては、厳しい事業環境を受け、販売は前年を下回る結果となりました。台湾では高級住宅市場において販売が増加、インドネシアでは市場の回復により販売が増加しました。
その結果、AP事業の売上高(セグメント間の内部売上高を含む)は、過去最高となる、前期比10.8%増の446,360百万円となりました。営業利益は、国内では販売増加や価格改定、製造コストダウンによる増益要因があったものの、原材料・資材価格の高騰や市場競争の激化、販管費の増加などにより減益となり、全体では前期比15.2%減の17,375百万円となりました。
(c)その他
その他の事業につきましては、不動産、アルミ製錬事業等を行っております。
その他の事業の売上高(セグメント間の内部売上高を含む)は、前期比22.8%増の26,535百万円、営業利益については、前期比32.6%増の1,695百万円となりました。
当社グループの財政状態については、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容」に記載しております。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、営業活動によるキャッシュ・フローの収入が、投資活動によるキャッシュ・フロー及び財務活動によるキャッシュ・フローの支出を上回り、これらに現金および現金同等物に係る換算差額を加えた結果、前連結会計年度末に比べ53,261百万円増加し、264,639百万円となりました。
当社グループのキャッシュ・フローの状況の詳細については、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報」に記載しております。
③ 生産、受注及び販売の実績
当連結会計年度末における実績は、次のとおりであります。
(a)生産実績
セグメントの名称 | 生産高(百万円) | 前年同期比(%) |
ファスニング | 305,234 | 142.4 |
AP | 387,566 | 107.6 |
(注) 1. 上記の金額は、販売価格で表示しております。
2. その他については、そのほとんどがグループ内への販売のため記載を省略しております。
(b)受注実績
セグメントの名称 | 受注高(百万円) | 前年同期比(%) | 受注残高(百万円) | 前年同期比(%) |
ファスニング | 357,378 | 146.9 | 17,658 | 131.9 |
AP | 482,667 | 123.4 | 202,949 | 123.5 |
(注) 1. 上記の金額は、販売価格で表示しております。
2. その他については、そのほとんどがグループ内への販売のため記載を省略しております。
(c)販売実績
セグメントの名称 | 販売高(百万円) | 前年同期比(%) |
ファスニング | 346,234 | 140.2 |
AP | 446,172 | 110.8 |
その他 | 4,611 | 115.9 |
合計 | 797,019 | 121.9 |
(注) セグメント間の取引については相殺消去しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの財政状態は、当連結会計年度末(以下「当期末」という)の総資産は、前連結会計年度末(以下「前期末」という)比142,023百万円増加(+14.0%)して1,156,941百万円となりました。流動資産は前期末比125,967百万円増加(+23.3%)の665,701百万円、固定資産は前期末比16,056百万円増加(+3.4%)の491,239百万円となりました。
流動資産増加の主な要因は、現金及び預金の増加等です。固定資産増加の主な要因は、投資有価証券の増加等です。
当期末の負債合計は、前期末比40,286百万円増加(+14.4%)して319,677百万円となりました。流動負債は前期末比31,835百万円増加(+17.6%)の212,606百万円、固定負債は前期末比8,450百万円増加(+8.6%)の107,071百万円となりました。
流動負債増加の主な要因は、仕入債務の増加等です。固定負債増加の主な要因は、退職給付に係る負債の増加等です。
当期末の純資産は、前期末比101,736百万円増加(+13.8%)して837,264百万円となりました。純資産増加の主な要因は、為替換算調整勘定の増加等です。
これらの結果、自己資本比率は前期末の70.8%から70.7%となりました。また1株当たり純資産額は、前期末の599千円から682千円となりました。
当社グループの経営成績は、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
(a)キャッシュ・フローの状況
(単位:百万円) | 前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 増減額 |
営業活動によるキャッシュ・フロー | 82,241 | 81,132 | △1,109 |
投資活動によるキャッシュ・フロー | △40,176 | △40,414 | △237 |
フリーキャッシュ・フロー | 42,065 | 40,718 | △1,347 |
財務活動によるキャッシュ・フロー | △5,284 | △5,776 | △492 |
現金及び現金同等物に係る換算差額 | 9,888 | 18,319 | 8,431 |
現金及び現金同等物の期末残高 | 211,378 | 264,639 | 53,261 |
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によって得られたキャッシュ・フローは81,132百万円と、前期に比べ1,109百万円減少しました。これは主に、売上債権及び棚卸資産の増加と法人税等の支払額の増加等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動に使用されたキャッシュ・フローは40,414百万円と、前期に比べ237百万円増加しました。これは主に、無形固定資産の取得による支出が前期と比べ373百万円増加し、3,936百万円となったこと等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動に使用されたキャッシュ・フローは5,776百万円と、前期に比べ492百万円増加しました。これは主に、ファイナンス・リース債務の返済による支出が前期と比べ1,009百万円増加し、2,447百万円となったこと等によるものです。
また、為替変動の影響により、当連結会計年度は現金及び現金同等物が18,319百万円増加しました。
以上の結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末の211,378百万円から53,261百万円増加(+25.2%)して264,639百万円となりました。
(b)流動性及び資金の源泉
(ⅰ) 資金調達の基本方針および資金調達手段
当社グループは、当連結会計年度末において現金及び現金同等物を264,639百万円保有し、また、換金性の高い金融資産を5,745百万円保有しております。そのうち、海外の連結子会社が保有する現金及び現金同等物と換金性の高い金融資産の合計額は186,892百万円でありますが、これらは将来における海外事業の成長投資に充当する予定であります。なお、連結子会社は原則として銀行等の外部からの資金調達は行わず、当社や地域統括会社が連携して効率的なグループファイナンスを行っております。
当社グループは、当連結会計年度末において手許現金及び現金同等物を十分に確保しておりますが、将来における成長投資に備えて、安定的な外部資金調達能力の維持向上を図っております。当社グループにおける当連結会計年度末の外部からの借入金残高は6,711百万円であり、総資産に対して0.6%と非常に低い依存度となっており、かつ、流動比率は313.1%、自己資本比率は70.7%と、強固な財務基盤を保っております。また、当社グループは、外部機関から格付を取得しておりますが、当連結会計年度末における格付投資情報センター(R&I)の格付はAA-(信用力は極めて高く、優れた要素がある)となっております。これらに基づき、金融機関から低コストにて借入金等による追加の資金調達が可能と考えております。
なお、一時的な余資は安全性の高い金融資産で運用し、投機的な取引は一切行わないという基本方針に従い取り組んでおります。
(ⅱ) 資金需要
当社グループの主な資金の源泉は営業活動によって獲得した資金であり、当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは81,132百万円であります。当社グループは、投資活動に使用されるキャッシュ・フローを営業活動により得られたキャッシュ・フローの範囲内とする方針を掲げており、これらキャッシュ・フローの合計をフリーキャッシュ・フローと定義しております。当連結会計年度のフリーキャッシュ・フローは40,718百万円であり、ここから配当金の支払い、および有利子負債の返済等の財務活動に5,776百万円を使用しました。当連結会計年度においては、当社グループとして過去最高となる売上高を記録するなど業績が好調に推移した一方で、新型コロナウイルス感染症再拡大およびウクライナ情勢による先行き不透明感を含む将来の不確実性への対応として、前連結会計年度から引き続き新規の設備投資を抑制したこと等により、将来における成長投資に向けた現金及び現金同等物を増加させております。
当社グループの当連結会計年度における主な資金需要は、増収に伴い増加した運転資金、設備投資資金(特にAP事業における国内設備投資資金)、研究開発資金、配当金支払い資金、納税資金、および有利子負債の返済資金等となり、当社グループは、これらの資金需要に対して主に自己資金で賄いました。翌連結会計年度における主な資金需要として、増収計画に伴いさらなる増加が見込まれる運転資金、設備投資資金、研究開発資金、配当金支払い資金、納税資金、および有利子負債の返済資金等を見込んでおります。
なお、配当政策については、「第4 提出会社の状況 3.配当政策」に記載しております。
③重要な会計方針及び見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。